(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
層および特徴の多くは、プロセスステップおよび結果をより良く図示するよう誇張されている。種々の図面において、同様の参照番号および記号は、同様の要素を示している。
【0023】
圧電超音波トランスデューサデバイスは、高周波の時変駆動電圧に応じて振動する圧電トランスデューサアレイを使用して、伝播媒体(例えば、空気、水、組織、骨、金属など)内に高周波の圧力波を生じさせることができる。振動しているトランスデューサアレイの露出外面を伝播媒体に近づけてまたは接触させて設置し、露出外面の振動により伝えられるエネルギーを、伝播媒体内で1以上の方向に沿って伝播している圧力波により伝えられるエネルギーと結合させることができる。超音波トランスデューサデバイスは、典型的には、人の聴覚範囲を超えた周波数の音波を生成する。しかしながら、いくつかの実施態様では、本明細書の説明に従って作製された圧電トランスデューサデバイスを用いて、人の聴覚範囲の範囲内またはこれを下回る周波数の音波も生成することができる。
【0024】
圧力波が伝播媒体内または媒体間の境界のいずれかにおいて、密度または弾性係数(または両方)の変化に直面すると、この圧力波は反射される。反射された圧力波の中には、トランスデューサアレイの露出外面に捉えられて、超音波トランスデューサデバイスの感知回路により感知される電圧信号に変換されるものもあり得る。感知電圧信号を駆動電圧信号とともに処理して、伝播媒体内または媒体間の境界での、密度または弾性係数(または両方)の変化に関する情報を得ることができる。
【0025】
振動しているトランスデューサアレイの各振動素子の振動を、個々に制御し、かつ夫々の時間遅延および周波数とタイミングを調整すると、所望の形状、サイズ、方向、および速さを有する、波面を生成することができる。振動素子のサイズおよびピッチ、トランスデューサアレイの配置、駆動周波数、および振動素子の各時間遅延と位置を、振動素子上の感知電圧信号の各強度およびタイミングとともに使用すると、伝播媒体内の密度または弾性係数のいずれか(または両方)の変化を判定することが可能であり、さらに伝播媒体内において圧力波がぶつかった物体および/または構造変化の、位置、サイズ、形状、および/または速さを推定することができる。伝播媒体内の物体および/または構造変化の、位置、サイズ、形状、および/または速さに関する推定された情報は、外部ディスプレイ装置上に、例えばカラーまたは単色の画像として表すことができる。超音波トランスデューサデバイスは、ある媒体または複数の媒体内の内部構造変化の画像化に関心がある、例えば医療診断、製品不良検出、低侵襲手術設備などの多くの用途を見出すことができる。
【0026】
本明細書では、湾曲した振動素子から形成されたトランスデューサアレイを備えている、圧電トランスデューサデバイスが開示される。湾曲した振動素子は、一対の湾曲した電極間に配置された湾曲した圧電素子を含み、この湾曲した電極対の各湾曲表面は圧電素子の湾曲表面に合致している。湾曲した振動素子は平坦な振動素子に比べると、所定の駆動電圧に応じてより大きい変位を呈し、またより優れた感知感度を示す。
【0027】
さらに、半導体製造プロセスを用いて、トランスデューサアレイを製造し、かつ特定用途向け集積回路(ASIC)ウエハとトランスデューサアレイを一体化させることができる。ASICウエハは、トランスデューサデバイスの駆動および感知機能を制御する集積回路を含み、またトランスデューサアレイの多数の振動素子へと駆動信号を伝送したり多数の振動素子から感知信号を集めたりするためにASICウエハに必要とされる外部接続部の数はごく少数である。
【0028】
従って、本明細書において開示される、湾曲した振動素子のアレイと一体型ASICウエハとを含んでいるトランスデューサデバイスは、小型、軽量であり、優れた駆動および感知効率を有し、さらに、平坦な圧電フィルムから、またはダイシングされたバルク圧電材料で作製された素子から形成された、従来のトランスデューサアレイに比べて、必要な駆動電圧を低くすることができる。
【0029】
いくつかの実施態様では、ASICウエハを含まず、トランスデューサデバイスは電気的相互接続層を含んでもよい。高密度の振動素子アレイが依然得られるように、個々のトランスデューサ用のトレースを相互接続層に移動してもよい。トランスデューサデバイスの駆動および感知機能を制御する回路は、デバイス内の他の場所(例えば、基部の外部または相互接続層の上流)に位置付けてもよい。
【0030】
いくつかの実施態様においてトランスデューサデバイスは、一体型ASICウエハとともに、平坦な振動素子のアレイを含み得る。平坦な振動素子は、圧電材料のスパッタリング、またはバルク圧電材料のエッチング(例えば、プラズマエッチング)により形成することができる。鋸切断ではなく、圧電材料のスパッタリングまたはバルク圧電材料のエッチングによれば、振動素子を、角丸形状、円形形状、五角形、六角形、または任意の他の形状など、幅広い種類の所望の形状を有するものとすることができる。これはMEMSデバイスへのウエハレベル集積化を助ける。さらに、トランスデューサアレイの密度は、ダイシングされたバルク圧電振動素子の場合のように、鋸刃のサイズに制限されることはない。
【0031】
図1A〜1Gは、湾曲した振動素子のアレイを含んでいる、圧電トランスデューサデバイスの構成例を示している。
【0032】
いくつかの実施態様において、トランスデューサデバイスは、線形または1次元のトランスデューサアレイを含んでいる。1次元トランスデューサアレイ内の湾曲した振動素子は、直線に沿って配列される。線形トランスデューサアレイの振動外面は、この直線に平行な平面の実質的に範囲内となり得る。
図1Aに示したように、トランスデューサデバイス102はハンドル部分104を含む。線形トランスデューサアレイ106は、ハンドル104の一方の遠心端108でハンドル104に取り付けられ得、この場合ハンドル104の形状は、トランスデューサアレイ106の形状およびサイズに適応するよう変形される(例えば、拡大させる、平坦化するなど)。この例においてトランスデューサアレイ106の振動外面は、ハンドル104長軸沿いの前方を向き、すなわちアレイ106が加工された基板の外面105はハンドル104の長軸に垂直である。他の実施態様において、線形トランスデューサアレイ106の露出外面は、ハンドル104の長軸に垂直な(または鋭角の)方向に沿って横を向いたものでもよい。トランスデューサデバイス102のオペレータは、ハンドル104を操作して、所望のように(例えば、画像化するエリアに向けて)線形トランスデューサアレイ106の振動外面の向きおよび位置を変化させることができる。
【0033】
圧電トランスデューサデバイス102は随意的に、振動素子の線形アレイ106下方のハンドル部分104内(例えば、拡大されかつ平坦化された第1遠心端108内)に、一体型ASICウエハ(図示なし)を含んでもよい。ASICウエハの外部入力接続部に接続しているワイヤ110を、ハンドル104の後端から出して、外部設備(制御装置および/またはディスプレイ装置など)に接続させることができる。
【0034】
いくつかの実施態様において、トランスデューサデバイスは2次元のトランスデューサアレイを含み得る。各2次元のトランスデューサアレイは、2次元アレイで配列された、多数の湾曲した振動素子を含み得る。2次元アレイがカバーするエリアは、例えば、長方形、正方形、円形、八角形、六角形など、種々の形状のものとすることができる。2次元アレイの振動素子は、直線から成る格子(例えば、正方形格子または六角形格子)や、あるいはより複雑なパターンから成る格子上に配列してもよい。2次元トランスデューサアレイの振動外面は、さらに1平面の実質的範囲内にあるものとし得る。2次元トランスデューサアレイをハンドルに(例えば、真っ直ぐな円筒状ハンドルの一方の遠心端に)取り付けて、トランスデューサデバイスを形成してもよい。トランスデューサアレイの振動外面の平面を、(例えば、
図1Bに示したように)ハンドルの長軸に対して前向きに、例えばこの長軸に垂直にしてもよいし、あるいは横向きに、すなわち(例えば、
図1Cに示したように)ハンドルの長軸に平行に(または鋭角に)してもよい。
【0035】
トランスデューサデバイスのオペレータは、トランスデューサデバイスのハンドルを操作して、所望のように(例えば、画像化するエリアに向けて)2次元トランスデューサアレイの振動外面の向く方向および位置を変化させることができる。
【0036】
図1Bに示したように圧電トランスデューサデバイス112は、ハンドル114の第1遠心端118に取り付けられた、前向きの六角形トランスデューサアレイ116を含んでいる。圧電トランスデューサデバイス112は随意的に、振動素子の六角形アレイ下方のハンドル部分114内に、一体型ASICウエハ(図示なし)を含んでもよい。ASICウエハの外部接続部に接続しているワイヤ120を、ハンドル114の後ろ(例えば、第2遠心端)から出して、外部設備(制御装置および/またはディスプレイ装置など)に接続させることができる。前向きのトランスデューサデバイス112は、従来の超音波画像化では実行不可能であった、血管内の超音波(IVUS)画像化に使用することができる。
【0037】
図1Cは、横向きの正方形トランスデューサアレイ126をハンドル124の第1遠心端128に取り付けて含んでいる、圧電トランスデューサデバイス122を示している。圧電トランスデューサデバイス122は随意的に、振動素子の正方形アレイ背面かつハンドル部分124内部に、一体型ASICウエハ(図示なし)を含み得る。ASICウエハの外部接続部に接続しているワイヤ130を、ハンドル124の後ろ(例えば、第2遠心端)から出して、外部設備(制御装置および/またはディスプレイ装置など)に接続させることができる。
【0038】
いくつかの実施態様において、トランスデューサデバイスは、トランスデューサアレイの振動外面が曲線または湾曲表面となるように、曲線に沿って巻き付けられた1次元トランスデューサアレイ、または湾曲表面の周りに巻き付けられた2次元トランスデューサアレイを含み得る。
【0039】
例えば
図1Dは、ハンドル134の第1遠心端138(例えば、拡大、湾曲、かつ平坦化された部分)に、曲線に沿って延びている線形トランスデューサアレイ136を取り付けて含んでいる、一例のトランスデューサデバイス132を示したものである。トランスデューサデバイス132は、ASICウエハ(図示なし)に接続されかつハンドル134の後端から出ている、ワイヤ140をさらに含んでいる。
【0040】
図1Eは、ハンドル144の遠心端148に、円の円周周りに延びている前向きの線形トランスデューサアレイ146を取り付けて含んでいる、一例のトランスデューサデバイス142を示したものである。トランスデューサデバイス142は、ASICウエハ(図示なし)に接続されかつハンドル144の後端から出ている、ワイヤ150をさらに含んでいる。
【0041】
図1Fは、ハンドル154の遠心端158に、円の円周周りに延びている横向きの線形トランスデューサアレイ156を取り付けて含んでいる、一例のトランスデューサデバイス152を示したものである。トランスデューサデバイス152は、ASICウエハ(図示なし)に接続されかつハンドル154の後端から出ている、ワイヤ160をさらに含んでいる。
【0042】
いくつかの実施態様において、
図1D、1E、および1Fに示した線形トランスデューサアレイ136、146、および156の各振動素子を、小さい2次元下位アレイで置き換えてもよい。例えば、各下位アレイは、小さい正方形トランスデューサアレイでもよい。
図1Gに示したように、トランスデューサデバイス162は、振動素子の多数の正方形下位アレイ(例えば、正方形下位アレイ168)から形成された前向きの2次元環状アレイ166を、トランスデューサデバイス162のハンドル164の第1遠心端に取り付けて含んでいる。トランスデューサデバイス162は、ASICウエハ(図示なし)に接続されかつハンドル164の後端から出ている、ワイヤ170をさらに含んでいる。
【0043】
同様に、
図1Hに示したように、トランスデューサデバイス172は、振動素子の多数の正方形下位アレイ(例えば、正方形下位アレイ178)から形成された横向きのアレイ176を、トランスデューサデバイス172のハンドル174の第1遠心端に取り付けて含んでいる。トランスデューサデバイス172は、ASICウエハ(図示なし)に接続されかつハンドル174の後端から出ている、ワイヤ180をさらに含んでいる。
【0044】
図1A〜1Hに示したトランスデューサデバイスの構成は、単なる実例である。トランスデューサアレイ全体の振動外面の向きの方向(例えば、前向き、横向き、または他の角度の向き)および全体形状(例えば、平坦または湾曲、線形、多角形、または環状)、ハンドル上のトランスデューサアレイの位置、およびトランスデューサアレイ上の振動素子の配置に関する様々な組合せが、トランスデューサデバイスの種々の実施態様において可能である。
【0045】
さらに、用途(例えば、所望の動作周波数、画像化エリア、画像分解能など)に応じて、トランスデューサアレイ内の振動素子の総数、トランスデューサアレイのサイズ、およびトランスデューサアレイ内の振動素子のサイズおよびピッチを、変化させることも可能である。一例において線形アレイは、半径50μm、ピッチ200μmの、128個の振動素子を含む。別の例において正方形アレイは、75μm、ピッチ200μmの16個の振動素子を含む。他の構成例を、本明細書の他の部分で説明する。
【0046】
本明細書において開示されるように、トランスデューサデバイスのトランスデューサアレイは、多数の湾曲した圧電振動素子を含む。
図2A〜2Bは、湾曲した圧電振動素子の2つの構成例を示している。
【0047】
図2Aには、凸状すなわちドーム型の振動素子202が図示されている。凸状振動素子202は、トランスデューサアレイの振動外面の一部を(例えば、トランスデューサアレイ内の他の振動素子の上部表面とともに)形成する、露出した上部表面204を含んでいる。振動素子202はさらに、基部208の上部表面に取り付けられる、底部表面206を含んでいる。
【0048】
図2Aに示したように、ドーム型振動素子202は、基準電極212と駆動電極214との間に配置された、凸状すなわちドーム型の圧電素子210を含んでいる。この例において、基準電極212は凸状圧電素子210の(基部208から離れた方の)上部表面の上に配置され、一方駆動電極214は凸状圧電素子210の(基部208に近い方の)底部表面の下方に配置されている。代替例では(図示なし)、駆動電極を凸状圧電素子の上部表面の上に配置してもよく、一方基準電極は凸状圧電素子の底部表面の下方に配置される。
【0049】
図2Aに示したように、凸状圧電素子210は、全体を通じて実質的に同じ厚さを有した圧電材料の薄層である。この圧電材料の薄層は、平面部分220に包囲されている湾曲部分218を含む。中心湾曲部分218は、振動素子202が取り付けられた基部208から離れるように湾曲している。凸状圧電素子210は、例えば平面的な上部表面上にドームを形成して備えているプロファイル転写基板上に圧電材料の粒子を均一な層として堆積させること(スパッタリングなど)により形成することができる。圧電素子210を形成するために使用し得る一例の圧電材料として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が挙げられる。
【0050】
さらに
図2Aに示したように、凸状圧電素子210は駆動電極214の上部表面の上に配置される。駆動電極214は、凸状圧電素子210の底部表面に接触している上部表面を備えかつこの底部表面に形状が一致した、導電材料の薄層でもよい。従って駆動電極214は、基部208から離れるように湾曲している中心湾曲部分と、この中心湾曲部分に隣接している(例えば、包囲している)平面部分とをさらに含む。駆動電極214の中心湾曲部分および凸状圧電素子210の中心湾曲部分は、合致した表面プロファイルを有している。
【0051】
いくつかの実施態様において、駆動電極214は、平面的な上部表面上にドームを形成して備えているプロファイル転写基板上に導電材料の薄層を堆積させることにより形成することができる。導電材料の層(すなわち、本例においては駆動電極層)がプロファイル転写基板上に堆積されると、堆積された駆動電極層は次いで、圧電素子210用の圧電材料の薄層をその上に堆積させることができる、プロファイル転写基板としての役割を果たし得る。駆動電極層のための導電材料は、例えば、種々の金属(例えば、Au、Pt、Ni、Irなど)、合金(例えば、Au/Sn、Ir/TiW、Au/TiW、AuNiなど)、金属酸化物(例えば、IrO
2、NiO
2、PtO
2など)、またはこれらの組合せのうちの、1以上を含むものでもよい。
【0052】
いくつかの実施態様において、圧電材料を駆動電極層上に堆積させる適切な方法として、例えば、スパッタリング、化学蒸着、物理蒸着、原子層堆積、プラズマ強化化学蒸着などが挙げられる。スパッタ蒸着の種類としては、マグネトロンスパッタ蒸着(RFスパッタリングなど)、イオンビームスパッタリング、反応性スパッタリング、イオンアシスト蒸着、高ターゲット利用率スパッタリング、および高出力インパルスマグネトロンスパッタリングを挙げることができる。圧電層の厚さは、圧電素子210が駆動電圧の下で十分に柔軟に屈曲することができ、さらにその振動を振動素子202の露出外面204に接している伝播媒体に伝達するのに十分な堅さとなるよう選択することができる。
【0053】
さらに
図2Aに示したように、基準電極212は凸状圧電素子210の上部表面の上に配置される。基準電極212は、凸状圧電素子210の上部表面に接触している底部表面を備えかつこの上部表面に形状が一致した、導電材料の薄層でもよい。従って基準電極212は、基部208から離れるように湾曲している中心湾曲部分と、この中心湾曲部分に隣接している(例えば、包囲している)平面部分とをさらに含む。基準電極212の中心湾曲部分および凸状圧電素子210の中心湾曲部分は、合致した表面プロファイルを有している。
【0054】
いくつかの実施態様において、基準電極212は、例えば堆積された圧電層が圧電素子210を画成するようパターン化された後に、堆積された圧電層の上に導電材料の薄層を堆積させることにより形成してもよい。基準電極層のための導電材料は、例えば、種々の金属(例えば、Au、Pt、Ni、Irなど)、合金(例えば、Au/Sn、Ir/TiW、Au/TiW、AuNiなど)、金属酸化物(例えば、IrO
2、NiO
2、PtO
2など)、またはこれらの組合せのうちの、1以上を含むものでもよい。
【0055】
さらに
図2Aに示したように、いくつかの実施態様において、振動素子202は随意的に、駆動電極214の底部表面と接触している薄膜層222を駆動電極214の下方に含む。いくつかの実施態様では、振動素子202に合わせて形成するために、薄膜層222をドーム状のプロファイル転写基板上に最初に堆積させてもよい。その後、駆動電極層を薄膜層222の上部表面上に堆積させ、駆動電極層の堆積後、圧電層を駆動電極層の上に堆積させてもよい。基準電極層を圧電素子上に堆積させる前に、圧電層および駆動電極層をパターン化して、個々の駆動電極214および圧電素子210を形成してもよい。いくつかの実施態様では、薄膜層222が堆積されたプロファイル転写基板を、薄膜222の底部表面の中心湾曲部分を露出させるよう完全にエッチングで除去して、電圧が印加されたときに中心湾曲部分が屈曲できるようにしてもよい。いくつかの実施態様では、薄膜層222を、エッチングプロセスにおいてエッチング停止層として機能する酸化層としてもよい。
【0056】
いくつかの実施態様では、圧電素子210が駆動電極214の上部表面上に形成された後、基準電極層が堆積される前に、誘電体膜224の層(例えば、SiO
2、SiN
2、またはこれらの組合せ)を圧電素子210の上部表面上に堆積させてもよい。圧電素子210の湾曲部分218内の中心部分の上に位置する、膜224の中心部分を、圧電素子210の上部表面の中心を露出させるようエッチングで開口させてもよい。次いで、基準電極212の底部表面が誘電体膜224の露出上部表面と圧電素子210の露出上部表面とに接触しかつこれらの露出上部表面と形状が一致するように、基準電極層を圧電素子210の露出上部表面の上に堆積させてもよい。誘電体膜224は、駆動電極214を基準電極212から絶縁する役割を果たすことができる。さらに誘電体膜224は、動作中に静止したままの(例えば、圧電素子210の周囲部分238および平面部分220を含む)圧電素子210のエリアにおいて、基準電極212を圧電素子210から絶縁する役割も果たし得る。この静止したままのエリアにおいて基準電極212を圧電素子210から絶縁させると、このエリア内において印加される駆動電圧により圧電素子が受ける内部応力を低減させることができる。
【0057】
いくつかの実施態様では、トランスデューサアレイ内に少数の振動素子しか存在していない場合、各振動素子の駆動電極および基準電極への電気的接続部を、基部208の上部表面に平行な同一平面内に延びる導電トレースを使って作製することができる。いくつかの実施態様では、いくつかの振動素子の基準電極を連結させて、多数の振動素子に及ぶ共通の基準電極を形成してもよい。いくつかの実施態様において、多くの振動素子が小さい横領域内に配列されている場合には、基部208の上部表面に平行な単一平面内に、個々の振動素子間に導電トレースを走らせるだけの十分な空間がない可能性がある。代わりに、各鉛直に配向された電気的相互接続部を、トランスデューサアレイ内のいくつかまたは全ての振動素子夫々に対して作製して、振動素子を基部208内の制御/感知回路に接続してもよい。
図2Aに示したように、鉛直に配向された電気的相互接続部226を使用して、駆動電極214を基部208内の制御/感知回路230のアクティブ接続パッド228に電気的に接続させる。さらに、鉛直に配向された電気的相互接続部232を使用して、基準電極212を基部208内の制御/感知回路230の接地接続パッド234に電気的に接続させる。いくつかの実施態様において、トランスデューサアレイ全体に及ぶ共通の基準電極が使用される場合には、共通の基準電極を基部208内の接地接続パッドに電気的に接続するために必要な電気的接続部は1つのみである。
【0058】
いくつかの実施態様では、
図2Aに示したように、振動素子202の柔軟部分は基部208の上部表面上方で懸架されている。基部208の上部表面と振動素子202の底部表面206との間の間隔は、振動素子202の湾曲部分218に鉛直方向に位置合わせされた孔241を有している、環状支持体などの支持体236によって作り出すことができる。支持体236は、基部208の上部表面に取り付けられた底部表面と、振動素子202の底部表面206に取り付けられた上部表面とを有している。駆動電極214の下方に膜222が存在していない実施態様では、駆動電極の底部表面が振動素子202の底部表面206としての役割を果たし得る。膜222が存在している場合、膜222の底部表面が振動素子202の底部表面としての役割を果たし得る。支持体236はさらに、基部208上の個々の振動素子を絶縁させて、隣接する振動素子間のクロストークを低減する役割も果たし得る。いくつかの実施態様において、支持体の高さは、極小さい(例えば数μmの)間隙が振動素子202の中心振動部分(言い換えれば、柔軟部分)と基部208の上部表面との間に存在するよう、極小さくてもよい。いくつかの実施態様において、支持体236の高さは、例えば10〜50μm以上など、より厚いものでもよい。
【0059】
図2Aに示した構成例において、基準電極212は圧電素子210の上に位置付けられ、一方駆動電極214は圧電素子210の下方に位置付けられている。代替の構成では、基準電極を圧電素子の下方に位置付けてもよく、一方駆動電極は圧電素子の上方に位置付けられる。この代替の構成を有する振動素子は、低い方の金属層を基準電極層として使用し得、一方高い方の金属層を駆動電極層として使用し得ることを除き、上述したものに類似した手法で形成することができる。さらに、鉛直に配向された電気的相互接続部は、振動素子内の異なる金属層へと夫々達することになる。
【0060】
図2Aに示した例で続けると、いくつかの実施態様において、例えば非湿潤コーティング(non-wetting coating)、PECVD酸化物コーティングなどの保護膜(図示なし)を、基準電極212の上部表面上に堆積させてもよい。いくつかの実施態様において、保護膜は、トランスデューサアレイの上部表面全体の上に堆積された連続層でもよい。保護膜の上部表面は、堆積された任意の追加の層をその上部の上に含まない、露出されたものでもよい。動作時には、トランスデューサアレイ内の振動素子の振動を伝播媒体内の圧力波に結合させることができるよう、随意的な保護膜の露出した上部表面を、伝播媒体(組織などの関心材料、または超音波伝達ゲルなどの接触媒質もあり得る)と直接接触させるようにしてもよい。
【0061】
随意的な保護膜は、振動素子202を埃や汚染から、そして場合によっては伝播媒体内の水分または他の物質に起因する腐食から、保護することができる。さらに保護膜は、駆動電極が圧電素子210の上方に置かれかつ基準電極が圧電素子210の下方に置かれ、保護膜が駆動電極(ここでは振動素子の最上部に位置している)と伝播媒体(例えば、患者の肌または組織)との間の絶縁層としての役割を果たし得る実施態様において有利になり得る。
【0062】
いくつかの実施態様では、振動素子202に保護膜を用いずに、使用中、基準電極212の上部表面を直接伝播媒体に露出してもよい。例えば、腐食および汚染に耐性のある不活性金属(例えば、AuまたはPt)から作製された連続的な基準電極を用いてトランスデューサアレイ全体を覆い、かつ基準電極が地電位で維持される事例において、連続的な基準電極は、振動素子の振動を伝播媒体に結合させるために使用されるトランスデューサデバイスの露出外面としての役割を果たし得る。
【0063】
いくつかの実施態様では、
図2Aに示したように、振動素子202の湾曲部分(基準電極、圧電素子、および駆動電極と、基準電極、圧電素子、および/または駆動電極の、上方、下方、またはこれらの間の、任意の追加の薄膜層とから成る中心の柔軟部分を含む)は、駆動電極と基準電極との間に全く電圧が印加されていない状態でも湾曲したままである。時変駆動電圧が駆動電極214と基準電極212との間に印加されると、振動素子202の湾曲部分(またはその中心部分)が時変駆動電圧に応じて振動し得る。
【0064】
いくつかの実施態様では、振動素子202の平面部分のみが基部208に(例えば、支持体236を介して)付着して動作中に静止したままとなり、一方振動素子202の湾曲部分全体は時変駆動電圧に応じて振動する。しかしながら、いくつかの実施態様では、湾曲部分の周囲部分238が動作中に静止したままとなり得、かつ湾曲部分の中心部分240のみが時変駆動電圧に応じて振動するよう、湾曲部分の周囲部分238を支持体236によって基部208にさらに付着させてもよい。湾曲部分の周囲部分238を基部に付着させるいくつかの実施態様では、振動素子の平面部分の全てまたはいくらかを、取り外してもよい。
【0065】
いくつかの実施態様において、付着して静止したままとなる周囲部分238は、湾曲部分218の横寸法に対して極小さい幅を占めるものでもよい。本明細書において後に示すが、湾曲部分218の小さい周囲部分238を動作中に静止したままとすることにより、圧電素子210の湾曲部分218と平面部分220との間の移行点での応力を低減させることができ、振動素子202の寿命を延長させることができる。
【0066】
動作中に圧電素子210の湾曲部分218の周囲部分238を付着させて静止したままとするいくつかの実施態様において、支持体236による周囲部分238の保持の強度と耐久性が、圧電トランスデューサデバイスの許容できる寿命の間に圧電素子210が電極212および214から剥離するのを防ぐのに十分なものであれば、湾曲部分218の周囲部分238を包囲している平面部分220は、サイズを小さくしてもよいし、あるいは振動素子202の中から完全に取り除いてもよい。
【0067】
図2Bは、凹状の圧電素子250を使用した、振動素子242の別の構成例を示している。振動素子242は、以下に述べる点を除き、振動素子202と同様に構成することができる。本例の振動素子242において、基準電極252は凹状圧電素子250の底部表面の下方に配置され、一方駆動電極254は凹状圧電素子250の上部表面の上方に配置されている。随意的な薄膜層262を基準電極252の底部表面の下方に配置してもよい。振動素子242の底部表面246は、薄膜層262が設けられる場合には薄膜層262の底部表面であり得、あるいは薄膜層262が使用されない場合には基準電極252の底部表面であり得る。さらに、誘電体層264を圧電素子および基準電極層の上に堆積させて、駆動電極254を基準電極252から絶縁し、かつ圧電素子250の上部表面上の中心エリア外のエリアにおいて、駆動電極254を圧電素子250から絶縁させることができる。
【0068】
さらに、随意的な保護膜263を使用して、駆動電極254の上部表面を覆ってもよい。保護膜263の上部表面は、動作中に伝播媒体と接触する、振動素子242の露出上部表面としての役割を果たし得る。いくつかの実施態様において、保護膜263は、駆動電極254を伝播媒体から絶縁する役割を果たす薄い誘電体層である。
【0069】
さらに、鉛直に配向された電気的相互接続部266により、駆動電極254を基部248内の制御/感知回路270のアクティブ接続パッド268に電気的に接続させることができる。鉛直に配向された電気的相互接続部272は、基準電極252を基部248内の制御/感知回路270の接地接続パッド274に電気的に接続させることができる。いくつかの実施態様において、基準電極252はトランスデューサデバイス内のトランスデューサアレイ全体に及ぶ連続した導電層でもよい。
【0070】
図2Bに示した例の基準電極252は基部248により近づけて配置され、かつ駆動電極254は基部248からより離して配置されているが、代替の実施態様では、基準電極252および駆動電極254の位置を逆にしてもよい。基準電極252および駆動電極254の位置を逆にした場合には、電気的相互接続部266および272の長さを調節して、振動素子242内の適切な電極に接続させてもよい。
【0071】
図2Bに示したように振動素子242は、圧電素子250、駆動電極254、および基準電極252夫々が、基部248に向かって湾曲した各湾曲部分を含んでいることを除き、
図2Aに示した振動素子202と類似している。いくつかの実施態様において、凹状の基準電極252、圧電素子250、および駆動電極254は、平面部分によって包囲された凹み部分(すなわち逆ドーム部)を有するプロファイル転写基板の上部表面上に、基準電極層、圧電層、および駆動電極層を順に堆積させることによって形成してもよい。
【0072】
いくつかの実施態様では、
図2Aに示した振動素子202と同様、圧電素子250の平面部分260に加えて圧電素子250の湾曲部分258の周囲部分278も動作中に静止したままとし、一方湾曲部分258の中心部分280のみが時変駆動電圧に応じて振動する。
【0073】
図2Aおよび2Bは、電極214、212、254、252の底部表面に接触している電気的相互接続部226、232、266、272を示しているが、いくつかの実施態様において電気的相互接続部は、電極の上部表面に接触し得る。
【0074】
いくつかの実施態様において、振動素子242は、基部248上方で懸架され、かつ支持体276(例えば、圧電素子250の湾曲部分258に位置合わせされた孔281を有している環状支持体)によって基部248に取り付けられている。
図2Bに示した構成例では凹状振動素子242が使用されているため、振動素子242の底部表面246と基部248の上部表面との間の間隔は、振動素子242が駆動電圧または衝突圧力下で最大の変位を受けたときに、振動部分280の底部が基部248の上部表面と接触しないようにするのに十分な大きさであるべきである。すなわち、支持体276の厚さは、予想される振動素子242の最大変位に適応するように選択するべきである。
【0075】
図2Aおよび2Bでは支持体276を使用して振動素子を支持および懸架しているが、いくつかの実施態様では、振動素子(振動素子202または242など)の柔軟部分下方で基部(基部208または248など)内にキャビティを形成し、動作(例えば、駆動および/または感知)している間の振動素子の変位に適応するための空間を作るようにしてもよい。あるいは、支持体236、276ではなく電気的相互接続部226、272を、振動素子202、242と基部208、248との間の高さを画成する支持体(例えば、環状支持体)としてもよい。
【0076】
図2Aおよび2Bでは、圧電素子210、250を個々の振動素子に対する別々の素子として示しているが、圧電素子は多数の振動素子に対する連続層でもよい。
【0077】
図2Aおよび2Bでは湾曲した振動素子202、242を示しているが、振動素子は代わりに平坦なものでもよい。
図3Aは、電圧の印加下(例えば、駆動中)および機械的圧力の印加下(例えば、感知中)での、凸状に湾曲した圧電素子302の変形を示した概略図である。
【0078】
図3Aでは、圧電素子302が、圧電素子302の左表面から圧電素子302の右表面を指し示しかつ圧電素子302の2表面に局所的に垂直な、堆積されたままのポーリング方向を有していると仮定する。さらに、駆動電極(図示なし)が圧電素子302の左表面に隣接して配置され、一方基準電極(図示なし)が圧電素子302の右表面に隣接して配置されていると仮定する。この構成は、例えば
図2Aに示した構成に対応する。上記構成に基づくと、駆動電極と基準電極との間で圧電素子302に亘って印加された正電圧により、圧電素子302の左表面から右表面へと指し示す電場が圧電素子302内に生じ得る。言い換えれば、印加された正電圧により、局所的に整列しかつ圧電素子302内のポーリング方向に平行な電場が、圧電素子302内に生成される。その結果、圧電素子302は収縮して圧電素子302の湾曲部分は左に後退し(圧電素子302”として示されている)、湾曲した振動素子302のその中心軸に沿った中心Oは、休止位置304から、位置304の左側の新たな位置308へと移動する。印加された正電圧を取り除くと、圧電素子302の湾曲部分が広がってその元の形状に戻り、湾曲した振動素子302の中心Oはその元の休止位置304に戻る。圧電素子302が振動すると、圧電素子302の右側の伝播媒体303内に圧力波310を送ることができる。
【0079】
いくつかの実施態様において、負電圧が圧電素子302に亘って駆動電極と基準電極との間で印加されると、圧電素子302は広がり得、かつ湾曲した圧電素子302(ここでは302’として図示されている)の中心Oは、休止位置304のさらに右側の新たな位置306まで移動され得る。負電圧を取り除くと、湾曲した圧電素子302の中心Oをその元の休止位置304まで戻すことができる。
【0080】
いくつかの実施態様では、交流の負電圧および正電圧の信号を含む駆動信号を使用して、最大正変位位置および最大負変位位置(例えば、中心位置306および308に関連した位置)の間で振動素子を振動させることができる。いくつかの実施態様では、正電圧のみを使用して振動素子を駆動させ、一定の基準電圧を超えるパルスとして正電圧信号を印加してもよい。いくつかの実施態様では、振動素子を駆動するときに、負電圧信号を使用しないようにすると有利である。例えば、
図3Aに示した構成において、負の駆動電圧は圧電素子302のポーリング方向に反平行な電場を誘導することになり、これにより圧電素子302が脱分極し易くなって、圧電素子302の性能を時間とともに劣化させることに繋がり得る。
【0081】
いくつかの実施態様では、振動素子が感知モードにあって、湾曲した圧電素子302に電圧が印加されていないとき、湾曲した圧電素子302は加えられた機械的圧力に応じて変形し得る。例えば、伝播媒体303内の圧力波が反射されて振動素子へと戻りかつ振動素子の露出表面により遮られると、圧電素子302の湾曲表面は休止位置から、休止位置の左側の位置まで押され得、湾曲した圧電素子302の中心Oは、休止位置304から、休止位置304の左側の新たな位置まで動かされ得る。この変形の結果、振動素子302の左表面と右表面との間で電圧差が生じ得る。この電圧差のタイミングおよび強度を使用して、伝播媒体303内において圧力波の反射を生じさせた、伝播媒体303内の密度および弾性係数の変化(従って、伝播媒体303内の物体または構造変化の位置)を判定することができる。
【0082】
いくつかの実施態様では、トランスデューサアレイ内の同じ振動素子を、伝播媒体303内で圧力波を駆動するためにも、伝播媒体303から反射された圧力波を感知するためにも使用することができる。振動素子は、基部内のスイッチング回路により生成される制御信号に基づいて、駆動モードと感知モードとの間で切り替えることができる。いくつかの実施態様では、駆動および感知のために使用される振動素子をトランスデューサアレイ内で分離させてもよく、例えば、駆動用振動素子および感知用振動素子をトランスデューサアレイ内で交互に配列させて、同調して動作するようにしてもよい。
【0083】
図3Aは、右を指し示している堆積されたままのポーリング方向を有したドーム型すなわち凸状の圧電素子302を示しているが、ドーム型圧電素子の振動の駆動および感知に使用される同じ原理が、窪んだ形状すなわち凹状の圧電素子の振動の駆動および感知にも当てはまる。
【0084】
例えば
図3Bに示したように、窪んだ形状の圧電素子322は、圧電素子322の左表面から右表面を指し示す堆積されたままのポーリング方向を有し、駆動電極(図示なし)が窪んだ形状の圧電素子322の左側に配置され、かつ基準電極(図示なし)が窪んだ形状の圧電素子322の右側に配置されていると仮定する。
【0085】
上記構成によれば、正電圧が駆動電極と基準電極との間に印加されると、圧電素子322内に電場を誘導することができる。誘導された電場は、整列しかつ圧電素子322のポーリング方向に平行である。その結果、圧電素子322を収縮させることができ(例えば、圧電素子322’で表されている)、湾曲した圧電素子322の中心Oは、休止位置324の右側の新たな位置326にシフトされ得る。正電圧が取り除かれると、圧電素子322はその元の休止形状に戻る。振動素子322の振動によって、振動素子の露出凹状表面に接触している伝播媒体333内に、圧力波330を励起することができる。
【0086】
同様に、反射された圧力波によって振動素子322の窪んだ形状の右表面上に機械的な圧力が加わると、圧電素子322は左に伸ばされ得る(例えば、圧電素子322”で表されている)。圧電素子322の中心Oは、その休止位置324から新たな位置328へと移動され得、圧電素子322の左表面と右表面との間に電圧差が誘導され得る。この電圧差のタイミングおよび強度を使用して、伝播媒体333内の密度および弾性係数の変化を判定し、反射された圧力波を生じさせた伝播媒体333内の物体または構造変化の位置を推定することができる。
【0087】
前に明記したように、スパッタ圧電材料は大きな堆積されたままのポーリングを有し得る。圧電材料のスパッタリングに使用される環境の中には、スパッタリング中に直流(DC)バイアスを含むものもある。DC電場によって、圧電材料はDC電場の方向に分極し得る。いくつかの実施態様において、堆積された圧電層(例えば、スパッタPZT)内での堆積されたままのポーリング方向は、下層のプロファイル転写基板の表面に局所的に垂直であって、基板表面から離れる方向を指し示しているものでもよい。
【0088】
圧電素子における所望のポーリング方向が、堆積されたままのポーリング方向とは異なっている場合、圧電膜をプロファイル転写基板上に堆積させた後に、これをひっくり返して別の基板に接合させて、所望のポーリング方向を得てもよい。
【0089】
図3Aおよび3Bは湾曲した圧電素子302、322を示しているが、圧電素子は代わりに平坦なものでもよい。
【0090】
図4Aは、凸状圧電膜の部分断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像400を示したものである。画像400は、ドーム型イリジウム電極層404上に堆積されたスパッタPZT層402の結晶粒構造を示している。ドーム型イリジウム電極層404はシリコン基板上に懸架されている。
【0091】
PZT層402内部の結晶粒構造は概略円柱状であり、全てのまたは実質的に全ての円柱状結晶粒は、湾曲したPZT層402の表面に対して局所的に垂直である。
図4Aに示されている整列した円柱状PZT結晶粒構造は、湾曲した下層上(例えば、エッチング停止層またはプロファイル転写基板の、湾曲表面上)にPZTを徐々に堆積または成長させると現れる。圧電膜の湾曲表面に局所的に垂直な整列した円柱状結晶粒構造は、湾曲した膜へと研削されたバルク圧電材料内では生じる可能性がないであろう。また、このような結晶粒の整列および配向は、射出成形により形成された湾曲した圧電膜内でも生じる可能性がないであろう。
【0092】
スパッタPZT膜内の結晶粒構造が、整列しかつPZT膜の湾曲表面に局所的に垂直であると、膜の振動中に膜内に生じる局所的な内部応力の量は、ランダムに配向された結晶粒構造を有している膜(例えば、バルクPZTまたは射出成形により形成された膜内など)に比べて減少する。局所的な内部応力の量が減少すると、
図4Aに示されているような整列した円柱状結晶粒を有しているPZT膜は、他の従来の方法(例えば、研削または射出成形によるもの)を用いて生成された膜よりも長い耐用期間を享受することができる。
【0093】
図4Bは、スパッタPZT膜402の湾曲部分と平面部分との間の移行領域412付近の、湾曲したスパッタPZT膜402を示した拡大SEM画像410である。移行領域412内のスパッタPZTの結晶粒構造は、移行領域412の中心に向かって押しつぶされている。移行領域412は、結晶粒構造がより平行かつ整列しているスパッタPZT膜402内の他のより均質な領域よりも、振動中の強度は弱い。
【0094】
通常は動作中、圧電膜の振動部分と静止部分との間の境界付近で、より大きな応力が圧電膜内に生成される。その結果、圧電膜402の平面部分と湾曲部分の間の移行点が、厳密に圧電膜402の振動部分と静止部分の間の移行点の位置に置かれた場合(例えば、圧電膜402の平面部分のみを基部に付着させ、圧電膜402の湾曲部分を付着させないとき)、圧電膜402は使用が長期になると破損し易くなる可能性がある。
【0095】
いくつかの実施態様では、PZT膜402の湾曲部分の周囲部分を基部に付着させて、動作中静止したままとしてもよい(例えば、
図2A〜2Bの構成において示したように)。言い換えれば、圧電膜402の湾曲部分と平面部分との間のより強度の弱い移行点を、圧電膜402の振動部分と静止部分との間の移行点から離れるよう移動させる。代わりに、振動部分と静止部分との間の移行点を、圧電膜402の、より強くより整列している均質部分(例えば、圧電膜402の湾曲部分内)に移動させる。高応力領域を圧電膜402内のより強い領域にシフトさせることによって、圧電膜402の振動中に生じる内部応力で圧電膜402が破損する傾向が少なくなる。
【0096】
図4Aおよび4Bは、スパッタ圧電層402および電極層404を含んだ湾曲した圧電膜を示しているが、圧電膜は代わりに平坦なものでもよい。平坦なスパッタ圧電層は、湾曲したスパッタ圧電層と同じ円柱状結晶粒構造の利点を有する。平坦な圧電層の表面に対し、円柱状結晶粒構造は局所的に垂直である。平坦な圧電層は平面的であるため、湾曲部分と平面部分との間の移行領域を有していない。すなわち平坦な圧電膜は、基部に取り付けられ得る位置において、より柔軟性がある。
【0097】
上で示したように、
図2A〜4Bは、トランスデューサデバイスのトランスデューサアレイ内で使用することができる個々の振動素子の設計および構造の例を示したものである。圧電トランスデューサデバイスは、夫々が多数の振動素子を含んだ、1以上のトランスデューサアレイを含み得る。
図5Aは、超音波トランスデューサデバイス504内に含まれ得る、一例の六角形トランスデューサアレイ502を示している。一実施態様例において、25μmのサイズを有する約1000個の振動素子506を、横寸法がおよそ3mmの六角形アレイ502内に配列してもよい。別の実施態様例において、60μmのサイズを有する約400個の振動素子を、横寸法がおよそ3mmの六角形アレイ内に配列してもよい。さらに別の実施態様例において、60μmのサイズを有する約378個の振動素子を、横寸法が2.13mmの正方形アレイ内に配列してもよい。上記の寸法は実例であって、他の寸法の振動素子およびアレイサイズ、ピッチ、および配置が可能である。上記の寸法例は、例えば血管内の診断または治療的用途のための超音波デバイスに適したものとし得る。
【0098】
図5Bは、
図5Aに示したトランスデューサデバイス504内のトランスデューサアレイ502の、断面の斜視図を示している。
図5Bに示したように、トランスデューサアレイ502の上部表面508は露出しており、伝播媒体と接触させることができる。トランスデューサアレイ502内の振動素子506の上部表面が駆動電圧に応じて振動すると、振動素子506の上部表面の振動により伝播媒体内に圧力波が生成され得る。
【0099】
図5Bに示したように、トランスデューサアレイ502内の振動素子506は振動部分510を含み、この振動部分510は、振動部分510と基部516の上部表面とに取り付けられた環状支持体(例えば、環状金属シール514)により生成される、キャビティすなわち孔512の上方に懸架されている。環状金属シール514は、振動素子506の平面部分の他、振動素子506の湾曲部分の周囲部分に取り付けられている。さらに、各振動素子506を支持している環状金属シール514は、他の振動素子506を支持している環状金属シールから、例えば空気間隙または真空間隙518により絶縁されている。いくつかの実施態様において、環状シール514の厚さおよび幅は、シール514がトランスデューサアレイ502内の隣接する振動素子506間の振動クロストークを実質的に防ぐように選択される。いくつかの実施態様では、バッキング層を基部516の上部表面上方のキャビティ512内に入れ、反射された圧力波から振動素子506に伝達されるエネルギーを吸収することで、振動素子506の振動により生じる、感知信号およびキャビティ512内のエコーにおけるノイズを低減することができる。
【0100】
図5Bは湾曲した振動素子506を示しているが、振動素子は代わりに平坦なものでもよい。
【0101】
いくつかの実施態様において、環状金属シール514は共晶接合プロセスを用いて生成してもよい。例えば、トランスデューサアレイ502の振動素子506と基部516とを別個のプロセスで用意してもよい。次いで、振動素子506のアレイの底部表面と基部516の上部表面の夫々の対応する位置に、共晶接合技術を用いて接合させ得る金属をめっきしてもよい。その後、振動素子506のアレイを基部516の金属がめっきされた位置に接合させてもよい。この接合金属が、振動素子506を基部516に取り付ける環状シール514を形成し得る。いくつかの実施態様において、他の適切な材料(例えば、セラミック)を用いてシールを形成してもよい。
【0102】
いくつかの実施態様において基部516は、制御信号を振動素子に提供し、かつ振動素子から受信した感知信号を記録する(例えば、圧縮、一括、および送信する)、ASIC層を含んでいる。従って、環状シール514に加え、電気接続パッドおよび接続突起を、電気的アースとなる基部516の上部表面上と、基部516内のASIC層の駆動/感知回路のおよびアクティブ素子上とにめっきしてもよい。対応する電気接続パッドおよび接続突起をトランスデューサアレイ502の底部表面上にめっきしてもよく、この場合接続パッドは、トランスデューサアレイ502内の振動素子506の個々の駆動電極に電気的に接続される。
【0103】
基部516内のASIC層は、トランスデューサアレイ502に対応した駆動または感知用集積回路のアレイを含み、例えば振動素子506夫々に対して1回路を含む。ASIC層内のアレイの各回路は、同じ回路構造および機能を有していてもよい。さらに、トランスデューサアレイ502に対応しかつASIC層内の回路のアレイに対応している、鉛直に延在した電気的相互接続部のアレイが存在し、例えば振動素子506夫々に対して、この振動素子506の駆動電極に接続するための少なくとも1つの鉛直に延在した電気的相互接続部が存在している。トランスデューサアレイ502に対し共通の基準電極が存在している場合、少なくとも1つの鉛直に延在している電気的接続部が、基部516内のASIC層を基準電極に接続させる。鉛直に延在した電気的接続部のアレイを基準電極に対して設けてもよいが、駆動電極に対する鉛直に延在した電気的接続部よりも少なくてもよい。各振動素子に対して基準電極が存在している場合、各基準電極に対して鉛直に延在した電気的接続部が存在することになり、すなわち各振動素子に対して、駆動電極に対する1つと基準電極に対する1つの、2つの鉛直に延在した電気的接続部が存在することになる。
【0104】
鉛直に延在した電気的相互接続部は、環状シール514を用いて、または接合パッド520に接続する鉛直に配向された電気的相互接続部232(
図2A参照)などの他の導電素子を用いて、提供してもよい。すなわち振動素子506夫々を、ASIC内の関連する回路に、関連した鉛直に延在している相互接続部により接続してもよい。この構成では、振動素子からのリード線は、トランスデューサアレイの表面上で大きな空間を必要としない。結果として振動素子506は、横方向に延在したリード線を有するシステムと比較してより密接させて充填することができ、このようにより密接させて充填することで画質の向上が可能になる。
【0105】
トランスデューサアレイ502の底部表面および基部516の上部表面を金属環状シール514の位置で(例えば、共晶接合プロセスにより)接合すると、トランスデューサアレイ502の底部表面上にめっきされた電気的接続突起を基部516の上部表面上にめっきされた電気的接続突起に(例えば、共晶接合プロセスにより)接合して、トランスデューサアレイ502内の個々の駆動電極を基部516内のASIC層のその夫々の駆動および/または感知回路に電気的に接続させる、鉛直に配向された電気的相互接続部を形成することができる。さらに、いくつかの実施態様において、接地電極は共有の共通の接地電極でもよく、かつ接地電極と基部516内のASIC層の電気的アースとの間に、単一の鉛直に配向された相互接続部を設けてもよい。基準電極のための単一の鉛直に配向された相互接続部も、例えば共晶接合プロセスを用いて形成することができる。
【0106】
図5Cは、振動素子506の柔軟部分、この柔軟部分を支持している環状シール514、および駆動電極への電気接続パッド520を示した、トランスデューサアレイ502の拡大上面図を示している。いくつかの実施態様において、駆動電極は振動素子506の底部に位置し、駆動電極に対する電気的接続部は、駆動電極層内の電気接続パッドから基部516の上部表面内の対応する接続パッドまで鉛直下方に直接向かうことができる。いくつかの実施態様では、駆動電極は振動素子506の上部に位置し、駆動電極に対する電気的接続部は圧電層および基準電極層の各開口を通過して、駆動電極層内の電気接続パッドから基部516の上部表面上の電気接続パッドまで鉛直下方に向かうことができる。
【0107】
本明細書において上に明記したように、振動素子506の振動部分のサイズ(例えば、半径)およびトランスデューサアレイ502内の振動素子506の間隔(すなわちピッチ)は、超音波トランスデューサデバイス504の所望の画像分解能に基づいて選択してもよい。振動素子のサイズと振動素子間の間隔/ピッチが小さくなればなるほど、超音波トランスデューサの分解能は向上する。いくつかの実施態様において、振動素子506の柔軟部分のサイズ(例えば、半径)は、20μmから70μmまでの間の範囲のものでもよい。トランスデューサデバイスのアレイのサイズは、所望の画像化エリアと所望のトランスデューサデバイス504のサイズに基づいて選択してもよい。例えば、血管内用途では、アレイのサイズを少なくとも2つの直交方向において2mm未満としてもよい。
【0108】
いくつかの実施態様において、トランスデューサアレイにおける湾曲した振動素子の高さ(例えば、ドーム型または窪んだ形状の圧電素子の高さ)は、所望の動作範囲または共振周波数と、予想される伝播媒体のインピーダンスに合致する適切なインピーダンスとに基づいて選択してもよい。例えば、超音波トランスデューサでは、共振周波数は20kHzから30MHzまでの範囲のものでもよい。医学的用途では、共振周波数は典型的には1MHzから15MHzまでの範囲である。振動素子506内の圧電素子の厚さは、例えば3μmから6μmまでの範囲とし得る。湾曲した圧電素子の高さは、例えば1.5μmから10μmでもよい。トランスデューサアレイの共振周波数およびインピーダンスは、種々の用途におけるニーズに合うよう高度に調整可能である。一実施態様例において、半径50μmおよびドーム角度25°のドーム型振動素子では、共振周波数は約14.3MHz、かつ電気インピーダンスは15MHzで約1.2kΩである。変位は約82Å/Vである。
【0109】
いくつかの実施態様では、従来の超音波トランスデューサを100〜200ボルト以上で使用して得られる信号強度と同等な信号強度を得るための、マイクロドーム/凹部のトランスデューサアレイの駆動電圧を、5〜10Vとすることができる。例えば、マイクロドーム/凹部アレイに基づく超音波トランスデューサデバイスは、15MHzの駆動周波数で最大3MPa/Vまでの駆動効率を有し得る。受信機として、マイクロドームアレイに基づく超音波トランスデューサデバイスは、15MHzの駆動周波数で最大0.5μV/Paまでの感度を有し得る。さらに、トランスデューサアレイに基づくマイクロドーム/凹部の挿入損失は、他の従来のトランスデューサ技術における20dBの損失に比較して、最大50%(6dB)の挿入損失を有し得る。
【0110】
いくつかの実施態様では、本明細書において説明した半導体製造プロセスに基づいて、マイクロドーム/凹部トランスデューサアレイの各振動素子を、トランスデューサアレイが生成し得る超音波の波長に比べて極小さく作製することができる。さらに、隣接する振動素子間のピッチは、バルク圧電材料から振動素子を作製する場合に使用されるダイシングブレードのサイズによって制限されることはない。トランスデューサアレイは小さい振動素子で作製可能であり、かつ駆動波長の半分未満のピッチを有しているため、各振動素子は均一な円形の波面を有する波を放出するための点波源として機能し得る。すなわち、振動するトランスデューサアレイ全体を使用して、望ましくないサイドローブを全く含まない、所望の波面方向、焦点、および形状のビームを形成することができる。さらに、トランスデューサアレイのエッジに位置する振動素子の放射パターンにより、振動素子の全方向放射パターンが、さらにトランスデューサデバイスの受容角度をより大きなものとする。
【0111】
前に明記したように、トランスデューサアレイ内の個々の振動素子に繋がる導電トレースを振動素子の駆動電極と同じ平面内に有することは可能であるが、このようなトレースは、少数の振動素子がトランスデューサアレイ内に存在し(例えば、4×4アレイ)かつ振動素子間の間隔が十分に広い(例えば、20〜30μm)ときに可能である。高分解能で小型のトランスデューサデバイスが望ましいとき、トランスデューサアレイの真下に一体型ASIC層を位置付けて提供することができ、このときトランスデューサアレイ内の駆動電極と一体型ASIC層との間に、鉛直に配向された電気的相互接続部を形成してもよい。高分解能で小型のトランスデューサデバイスは、例えば、1000個以上の振動素子など、200個超の振動素子を有するものでもよく、そのピッチは100〜200μm、65μm以下、または30μm以下など、約200μm未満でもよく、および/または、その分解能は0.1mm以下または0.06mm以下など、約0.25mm未満でもよい。
【0112】
例えば、多数(例えば、1000個)の振動素子が小さいエリア内(例えば、半径3mmの円内)にぎっしり充填されると、個々のトレースを駆動電極から延ばす十分な空間が駆動電極と同じ平面内に存在しない。代わりに、鉛直に配向された電気的接続部を、各駆動電極のための小さい電気接続パッドからトランスデューサアレイ下方の基部内の一体型ASIC層まで作製してもよい。一体型ASIC層は、NMOSトランジスタから作製された多層の回路を有し得る。ASIC層の設計は、トランスデューサアレイ内の各駆動電極に送られる多数の個々の制御出力部(例えば、1000〜2000)を収容し、外部入力接続部を100〜200のみ使用するものとすることができる。同じ外部入力接続部を、感知電圧信号を外部の画像化デバイスに送信する、出力接続部として使用することもできる。
【0113】
図6は、マイクロドーム/凹部トランスデューサアレイを含むトランスデューサデバイス602の、基部内の一体型ASIC層において実施可能な機能の例を示したものである。一体型ASIC層によって、トランスデューサデバイスを使用するために必要な外部接続部の数を大幅に減少させることができる。外部接続部が少なくなると、トランスデューサデバイスの全体的なサイズの縮小に繋がる。さらに、トランスデューサデバイスのASIC層内のボード上で多くのデータ処理を実行することができ、すなわちトランスデューサアレイを駆動するために必要な信号を処理したりトランスデューサアレイから受信した信号を分析したりするために要する、外部設備を減少または単純化することもできる。
【0114】
図6に示したように、いくつかの実施態様では、合成された制御信号をASIC層の少数の外部入力接続部を通してASIC層に提供してもよい。合成された制御信号を、デシリアライザ604によりデシリアライズしてもよい。デシリアライズされた制御信号は、デマルチプレクサ606により逆多重化され得、逆多重化信号に対する夫々のタイミング制御を逆多重化信号に加えてもよい。デジタル−アナログ変換器608をASIC層に提供し、デジタル制御信号をトランスデューサアレイ内の個々の振動素子に対する駆動電圧信号に変換することができる。各時間遅延を、プログラム可能な時間遅延コントローラ610により個々の駆動電圧信号に加えて、所望のビーム形状、焦点、および方向を生成することができる。スイッチ612を提供して、トランスデューサアレイの動作を駆動モードと受信モードとの間で切り替えることができる。トランスデューサデバイス602が受信モードにあるときには、アナログ−デジタル変換器614を使用して、受信した電圧信号をデジタル信号に変換することができる。デジタル信号はデータ圧縮ユニット616により圧縮され、さらにマルチプレクサ618により多重化される。多重化信号はシリアライザ620によりシリアライズしてもよく、かつASIC層の外部出力接続部(例えば、駆動モード中に入力の受信に使用した同一の外部接続部)を通して外部処理設備に返信することができる。上記機能は、一体型ASIC層を使用して実施することができる機能の単なる実例である。より多くまたはより少ない機能が、種々の実施態様のASIC層に含まれ得る。さらに、厳密な実施態様、ASIC層は、用途依存となり得、トランスデューサアレイのサイズ、形状、および配置に依存し得る。
【0115】
本明細書および請求項を通じて使用される「前」、「後」、「上部」、「底部」、「左」、「右」、「上」、「上方」および「下方」などの用語は、システムの種々の構成要素の相対位置や、本書において説明される種々の構成要素の種々の部分の相対位置を説明するためのものである。同様に、本明細書および請求項を通じて使用されている任意の水平または鉛直という用語は、システムの種々の構成要素の相対的配向や、本書において説明される種々の構成要素の種々の部分の相対的配向を説明するためのものである。以下に明記される相対的配向または相対位置が特定の構成要素、システム、またはデバイスに関する説明の中で明確に述べられている場合を除き、こういった用語を使用することで、(1)地球の重力の方向、(2)地球の地面またはグラウンド・プレーン、(3)システム、デバイス、またはその特定の構成要素が、実際の製造、使用、または輸送時に有し得る方向、または(4)システム、デバイス、またはその特定の構成要素が、実際の製造、使用、または輸送中に配置され得る表面、に対する、システム、デバイス、構成要素、またはその部分の、いかなる特定の位置または配向をも意味するものではない。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態を説明してきた。しかしながら、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の改変が作製可能であることを理解されたい。例えば、いくつかのプロセスステップは、異なる順で実行してもよいし、変更してもよいし、あるいは省略してもよい。振動素子、電極、および電気的接続部の配置および構成は変化させてもよい。