特許第6262851号(P6262851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6262851老化した皮膚の外観を改善するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262851
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】老化した皮膚の外観を改善するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20180104BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20180104BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180104BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20180104BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20180104BHJP
【FI】
   A61K8/9789
   A61K8/67
   A61Q19/00
   A61P17/00
   A61K31/455
   A61K45/00
   A61K36/28
   A61K125:00
   A61K127:00
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-527072(P2016-527072)
(86)(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公表番号】特表2016-525116(P2016-525116A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】US2014046844
(87)【国際公開番号】WO2015009824
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2016年1月15日
(31)【優先権主張番号】61/847,024
(32)【優先日】2013年7月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】ローズマリー オズボーン
(72)【発明者】
【氏名】リサ アン マリンズ
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−206532(JP,A)
【文献】 特開2002−212053(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0283112(US,A1)
【文献】 特表2008−507522(JP,A)
【文献】 特開2012−082177(JP,A)
【文献】 KWON, W. Y. ET AL,Critical care medicine,2010年10月,Vol.39, No.2,pp.328-334
【文献】 TANAKA, Y. T. ET AL,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2012年11月21日,Vol.23,pp.518-523
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 31/33−33/44
A61K 36/00−36/9068
A61K 45/00−45/08
A61P 17/00−17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
老化した皮膚の外観を改善する方法であって、
a.老化の兆候を示す皮膚の目標部分を特定する工程と、
b.1重量%〜5重量%のアーティチョーク葉抽出物とビタミンB3化合物との組み合わせを含む化粧品組成物を、アーティチョーク葉抽出物とビタミンB3化合物との組み合わせが皮膚の目標部分の外観を改善するのに十分な期間、皮膚の目標部分に適用する工程と、を含む方法(治療方法を除く)
【請求項2】
前記有効量のアーティチョーク葉抽出物とビタミンB3化合物は、NF−κBの阻害において相乗的な増加をもたらす、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記皮膚の目標部分は顔の皮膚である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記顔の皮膚は、額、口周囲、顎、眼窩周囲、鼻及び頬の皮膚の表面からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物は、少なくとも4週間にわたって、少なくとも1日1回適用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ビタミンB3化合物はナイアシンアミドである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物は、日焼け止め活性物質、抗炎症剤及び皮膚色調活性物質からなる群から選択される、少なくとも1つの追加の皮膚活性物質を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記皮膚の目標部分の外観の改善は、しわ、小じわ、皮膚しわ、裂け目、瘤、凹凸、肌荒れ、皮膚弾力性、たるみ、不安定な皮膚及びこれらの組み合わせの改善からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
a.有効量のアーティチョーク葉抽出物及びビタミンB3化合物であって、NF−κBの阻害において相乗的な増加をもたらす、1重量%〜5重量%のアーティチョーク葉抽出物及びビタミンB3化合物と、
b.皮膚科学的に許容可能なキャリアと、
を含む、老化した皮膚の外観を改善する化粧品組成物。
【請求項10】
前記アーティチョーク葉抽出物の少なくとも一部分は、アーティチョーク植物の根出葉から得られる、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記アーティチョーク葉抽出物は、乾燥したアーティチョークの葉から得られる、請求項9又は請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
皮膚抗老化剤、皮膚色調剤、抗炎症剤及び日焼け止め活性物質のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記アーティチョーク葉抽出物、ビタミンB3化合物、追加の皮膚抗老化剤、皮膚色調剤、抗炎症剤及び日焼け止め活性物質のうちの少なくとも1つと化学的に結合した複合体を形成しない、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
未満のpHを有する、請求項9〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ビタミンB3化合物はナイアシンアミドである、請求項9〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーティチョーク葉抽出物及びビタミンB3化合物の相乗的組み合わせを使用して、老化した皮膚(特に、小じわ及びしわ)の外観を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の最外層である表皮は、以下の4層:角質層、顆粒層、有棘層、及び基底層、の連続細胞層を含む。表皮中の細胞の各層は、基底層の表皮ケラチノサイトが、増殖、分化、及びアポトーシスの連続的なサイクルを経て、基底層から上方に移動し最終的に角質細胞となるプロセスに沿った様々な工程を表す。これらの角質細胞は、角質層として知られる角化層を形成する。
【0003】
基底ケラチノサイトは表皮の下部に存在する。これらの有糸分裂的に活性である細胞は、増殖サイクルを受けて娘細胞を産生し、娘細胞は物理的に上方に有棘層及び顆粒層へと移行し、角質細胞に分化するプロセスを受ける。有棘層及び顆粒層を通過する際に、細胞は、細胞生存能を失うことにより構造が平坦化する形態変化を受け、代替ケラチン発現プロフィールを経て、細胞残遺物に変化する。平均で、若い年齢の表皮は約1カ月で代謝回転し、古い細胞を脱落させ新しい細胞と置き換わるが、老齢の皮膚ではこのプロセスが40日以上に延長し得る。
【0004】
角質層の角質細胞はタンパク質及び脂質によって相互(to one other)結合を維持し、生物とその外部環境との間に保護バリアを作り出す。この緊密に調節された表皮透過性バリアは、化学的傷害及び生物学的傷害に対して物理的且つ選択的なバリアとして機能する。このバリアの重要な機能としては、深層へのフリーラジカルの侵入を減らし、紫外線を含む有害放射線の侵入を防止することが挙げられる。角質層は、透過性バリアとしても作用し、身体の水分が外部環境に失われるのを防ぐ働きをする。このバリアの機能障害は、慢性的な皮膚状態、疾病を招き、極端な場合には生物の生存能までも脅かす恐れもある。
【0005】
皮膚の老化は、内因性(経年的老化)要因、並びに、紫外線(UV)暴露(すなわち、光老化)、環境毒物、汚染物質、及び喫煙などの外因性(環境的)要因の両方によって起こる多元的なプロセスである。角質層が周期的に新しい皮膚層を産生する能力は年齢とともに減少し、その結果、老化した皮膚では角質層の代謝回転速度が実質的に低下し、同時に角質層が徐々に薄くなることは当該技術分野において周知である。これによってバリアが機能する能力の低下が起こり、その結果、有害な刺激がより容易に角質層に浸透し、例えば、下層の真皮層の紫外線ダメージ、コラーゲン及びエラスチンの分解を招き、ついにはしわ及び皮膚萎縮として外観に現れる。内因性及び外因性の老化要因の総和による角質層の薄化によって、目に見える小じわ及びしわの外観が増加する。更に、バリアは、加齢に伴うフリーラジカル透過性の増加、及び細胞間マトリクス中の脂質量の減少を受けて、バリアが深層からの毒素を拡散する能力が減少する。外界からの傷害に対するバリアの回復能力も年齢とともに実質的に減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、皮膚の表皮バリア機能は、皮膚の再生能並びに小じわ及びしわなどの老化兆候の外観から皮膚を守る能力にとって重要である。それ故、皮膚の表皮機能を改善して、それによって老化した皮膚の外観をも改善することができる組成物及び処置方法を提供することが好ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の問題の解決策を提供するために、老化した皮膚の外観を改善する方法を本明細書に開示する。いくつかの実施形態では、本方法は、有効量のアーティチョーク葉抽出物及び有効量のビタミンB3化合物を含む組成物を、老化した皮膚の外観を改善するのに十分な期間老化した皮膚領域に適用する工程を含む。いくつかの実施形態では、老化した皮膚領域は、老化した顔の皮膚であり得る。特定の実施形態では、老化した皮膚の外観の改善は、しわ、小じわ、粗く深いしわ、裂け目、瘤などの老化した皮膚の肌理の外観を改善すること;例えば、機能的な皮膚エラスチンの喪失、損傷及び/又は不活性化による皮膚の弾力性の喪失によって、弾性線維症、たるみ、変形からの皮膚の回復の喪失などの状態を引き起こすことを防止すること、及びこれらの組み合わせを含む。
【0008】
本発明は、背景技術にて特定された問題に応えて、他の形態をとってもよい。本明細書の更なる形態は、以下の詳細な説明にて認識されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特に指示のない限り、本明細書で使用される全ての百分率及び比率は、全組成物の重量を基準とし、且つ全ての測定は25℃にて行われる。全ての数値範囲は、より狭い範囲を包含する。明示された範囲の上限及び下限は相互交換可能であり、明示されていない更なる範囲を作る。
【0010】
本明細書の組成物は、本明細書に記載の必須構成成分並びに任意成分を含み得る、それらから本質的になり得る、又はそれらからなり得る。本明細書で使用するとき、「から本質的になる」とは、組成物又は構成成分は追加成分を包含し得るが、この追加成分が特許請求される組成物又は方法の基本的及び新規の特性を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそれ以外であることを明らかに示さない限り、同様に複数形を含むものとする。
【0011】
「相加作用」は、活性物質の組み合わせによりもたらされる効果が、それらの個々の効果の合計と等しい又は実質的に等しいことを意味する。例えば、相加作用は、単独で使用した場合に、所望の特性(例えば、以下でより詳しく記載される、NF−κBの阻害)に10%の改善をもたらす第1の活性物質と、単独で使用した場合に、所望の特性に20%の改善をもたらす第2の活性物質とを組み合わせて使用した場合に、所望の特性の30%の改善をもたらす場合に、実証される。本例において、「相加作用を越える」は、第1及び第2の活性物質の組み合わせが、所望の特性を30%超改善する場合に実証される。
【0012】
組成物について言及する際、「適用する」又は「適用」は、表皮などのヒト皮膚の表面に本発明の組成物を適用すること又は塗布することを意味する。
【0013】
「化粧品組成物」は、哺乳類の皮膚及び/又は他のケラチン性組織、例えば、毛髪及び爪に局所適用するのに好適な組成物を意味する。局所とは、皮膚又は他のケラチン性組織の表面を意味する。化粧品組成物には、任意のカラー化粧品、ネイル、又はスキンケア製品を含む。「スキンケア」は、皮膚の状態の調節及び/又は改善を意味する。スキンケアの非限定例として、よりなめらかでより均一な外観及び/又は感触の提供による皮膚外観及び/又は感触の改善、油っぽい及び/又はてかてかとした皮膚の外観の低減が挙げられる。化粧品組成物の非限定例として、ファンデーション、マスカラ、コンシーラー、アイライナー、アイブロウ、アイシャドウ、頬紅、口紅、リップクリーム、フェイスパウダー、固形エマルションコンパクトなどの、顔面に着色を残す製品が挙げられる。「スキンケア製品」としては、スキンクリーム、保湿剤、ローション、及びボディソープが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書において使用するとき、「誘導体」としては、特定の化合物のアミド誘導体、エーテル誘導体、エステル誘導体、アミノ誘導体、カルボキシル誘導体、アセチル誘導体、及び/又はアルコール誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
「皮膚科学的に許容可能な」は、記載される組成物又は構成成分が、過度の毒性、不適応性、不安定性、アレルギー反応などがなく、ヒトの皮膚組織と接触して使用するのに好適であることを意味する。
【0016】
「有効量」は、肯定的な利益を有意に誘導するのに十分な化合物及び組成物の量を意味する。例えば、有効量とは、外観上及び/又は感触上の利益を有意に誘導するのに十分なアーティチョーク葉抽出物及び/又はビタミンB3化合物の量を意味し得る。有効量とは、NF−κBの阻害を相乗的に増加するのに十分である、アーティチョーク葉抽出物及び/又はビタミンB3化合物を組み合わせた量も意味し得る。
【0017】
本明細書において、「抽出物」とは、抽出プロセスにおいて、植物と外因性溶媒(すなわち、植物材料中に本来存在していない任意の溶媒)とを接触させることで植物又は植物材料から分離される1つ以上の化合物を指す。例えば、抽出物は以下の手順:(i)乾燥した植物材料(例えば、茎、樹皮、葉など)の指定された部分をコニカルガラスパーコレーターに入れる;(ii)植物材料1に対して抽出溶媒2の割合の重量比率で、指定された百分率の抽出溶媒(指定された抽出溶媒の百分率が100%未満である場合、残りの溶媒は水である(例えば、95%のエタノールと5%の水、50%のエタノールと50%の水など))を加える;(iii)約16〜約24時間抽出を続ける;(iv)濾過液を収集し、生じた濾過液が植物性追加抽出物を実質的に含まなくなるまで上記のプロセスを繰り返す;(v)濾過液を混和し、減圧下で蒸発して乾燥させ、生じた抽出物を摂氏4度未満の窒素下で保管する;ことによって得ることができる。抽出物は、更にいかなる修飾をもすることなく使用することができるか、又は修飾して(例えば、エトキシル化、エステル化)誘導体材料を形成することができる。
【0018】
「顔の皮膚表面」とは、額、眼窩周囲、頬、口周囲、顎及び鼻の皮膚表面の1つ以上を意味する。
【0019】
「スキンケア活性物質」又は「活性物質」とは、皮膚に適用したとき皮膚に利益又は改善をもたらす化合物を意味する。
【0020】
「相乗効果」及びその変化形とは、ビタミンB3化合物とアーティチョーク葉抽出物との組み合わせが、その活性物質のいずれかを単独で使用するよりも利益をもたらすことを意味する。いくつかの実施態様では、相乗効果は、ビタミンB3化合物とアーティチョーク葉抽出物の組み合わせを協調作用させて、組み合わせにより通常提供されることが予測されるものよりも抗老化利益をもたらすことによって実証され得る。例えば、組み合わせが相加作用をもたらすことが予測される場合に、実際には相加作用を越える効果をもたらす場合、この組み合わせは相乗効果である。
【0021】
「老化した皮膚の外観の改善」又は「老化した皮膚の肌理の改善」とは、皮膚の肌理の外観及び/又は感触において、視覚的及び/又は触覚的に知覚可能な肯定的な変化、又は利益をもたらすことを意味する。これらの用語には、皮膚の老化における1つ以上の肌理の兆候の外観を防止又は遅延させることも含む。もたらされ得る利益としては、以下:しわ、小じわ、粗く深い小じわ、裂け目、瘤などの外観の改善;例えば、機能的な皮膚のエラスチンの喪失、損傷及び/又は不活性化によるような皮膚の弾力性の喪失によって、弾性線維症、たるみ、変形からの皮膚の回復の喪失などの状態を生じることの防止;及びこれらの組み合わせ;のうちの1つ以上が挙げられるがこれらに限定されない。
【0022】
「肌理の皮膚老化徴候」としては、老化による皮膚の肌理の望ましくない変化による、全ての外面上の視覚的及び触覚的に認知可能な皮膚の肌理の症状発現、並びに任意の肉眼的又は微視的な影響が挙げられるが、これらに限定されない。これらの兆候は、限定はされないが、しわ及び粗く深いしわ、小じわ、皮膚しわ、裂け目、瘤、凹凸又は肌荒れなどの肌理の不連続性の発生;皮膚の弾力性の喪失;角化症;分化異常;過角化症;弾性線維症;コラーゲン分解;及び角質層、真皮、又は表皮における他の組織学的変化;及びこれらの組み合わせが挙げられる過程に起因し得る。
【0023】
I.組成物
本発明は、様々な組成物、より具体的には、幅広い種類の化粧品組成物などの皮膚表面への適用のための組成物に関する。組成物は、限定はされないが、溶液、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル、化粧水、スティック、ペンシル、スプレー、エアゾール、軟膏、クレンジング洗剤液及びクレンジング棒状固形物、シャンプー及びヘアコンディショナー、パスタ、フォーム、パウダー、ムース、髭剃りクリーム、ワイプ、ストリップ、パッチ、電動パッチ、創傷被覆材及び粘着性包帯、ヒドロゲル、フィルム形成製品、顔及び皮膚マスク(不溶性シートを有する及び有さない)、ファンデーション、アイライナー及びアイシャドウなどのメイクアップ用品などの様々な製品形態であり得る。組成物の形態は、組成物中に存在する場合、選択される具体的な皮膚科学的に許容可能な担体に従い得る。
【0024】
A.アーティチョーク葉抽出物及びビタミンB3化合物
驚くべきことに、ビタミンB3化合物及びアーティチョーク葉抽出物を組み合わせて使用すると、(nuclear factor kappa−light−chain−enhancer of activated B cells)(「NF−κB」)の阻害の改善において相乗効果をもたらし得ることが発見されている。NF−κBは、ほぼ全ての動物細胞種で見出され、例えば、DNA転写、ストレス、サイトカイン、フリーラジカル、紫外線照射、酸化LDL、及び細菌又はウィルス抗原などの刺激に対する細胞応答などの様々な生物学的プロセスに関与することが知られている。皮膚の健康及び老化に関連する生化学的経路にNF−κBの関与が認められることによって、NF−κBはスキンケア活性物質の抗老化活性の予測における好適な指示薬となる。特に、NF−κBは、皮膚のバリア機能、並びに皮膚の再生能及び肌理の皮膚老化の兆候からの保護能に関連する炎症経路に関与することが知られている。したがって、本明細書の好適な組成物は、有効量のアーティチョーク葉抽出物とビタミンB3化合物との組み合わせを含む。本明細書で使用するとき、「組み合わせ」とは、同じ組成物中に存在する(例えば、混合物として)か、異なる組成物中に存在するが同時(例えば、2つの材料を合わせた相乗的利益を得るのに十分に近い時間で)に適用される、又はその組み合わせを意味する。
【0025】
「有効」であるアーティチョーク葉抽出物の量は、抽出物の具体的な供給元(例えば、製造業者)によって異なる場合があり、当業者であれば具体的な抽出物製品の活性レベル(例えば、存在する活性構成成分のレベル)に基づいて決定することができる。任意の抽出物と同様に、用いられる具体的な抽出物製品中の活性構成成分の濃度は、抽出物製品の最終希釈体積、使用される具体的な抽出方法、個々の植物間の固有のばらつき範囲等の要因、及び当業者に公知の他の一般的な要因に依存する。
【0026】
本明細書で使用するのに好適なアーティチョーク葉抽出物(INCI名称:Cynara scolymus抽出物;CAS番号:84012−14−6)は、アーティチョーク植物の長く、深い鋸状の根出葉から誘導され得る。これらの葉は、コーヒー酸誘導体(例えば、シナリン);フラボノイド;及びセスキテルペンラクトン(例えば、シナロピクリン)などの生物活性化合物を高濃度で含有する。より優れた効能を有する特定の活性材料を得るために、抽出前に葉を乾燥させることが好ましい。例えば、シナリンは、新鮮な葉には微量しか見出されないが、植物材料の乾燥及び抽出中に起こる自然の化学変化によって形成される。アーティチョーク葉抽出物は、例えば、水、増粘剤、保湿剤、溶媒、可溶化剤などの他の好適な材料を含んでもよい。アーティチョーク葉抽出物は、当該技術分野において既知の好適なプロセスによって精製され得る。本明細書で使用するのに好適な市販のアーティチョーク葉抽出物の一例は、Ichimaru Pharcos Corp.(Gifu,Japan)製のBiobenefity(商標)である。いくつかの実施形態では、組成物は、全組成物に対して0.0001重量%〜15重量%、0.0002重量%〜10重量%、0.001重量%〜15重量%、0.025重量%〜10重量%、0.05重量%〜10重量%、0.05重量%〜5重量%、又は更には0.1重量%〜5重量%の量でアーティチョーク葉抽出物を含み得る。
【0027】
本発明の組成物は、ビタミンB3化合物を含む。本発明で使用するとき、「ビタミンB3化合物」とは、次式:
【0028】
【化1】
(式中、Rは、−CONH2(すなわち、ナイアシンアミド)、−COOH(すなわち、ニコチン酸)又は−CH2OH(すなわち、ニコチニルアルコール);これらの誘導体;及び前述のいずれかの塩である)を有する化合物を意味する。ビタミンB3化合物は、全組成物の0.0001重量%〜15重量%、0.0002重量%〜10重量%、0.001重量%〜15重量%、0.025重量%〜10重量%、0.05重量%〜10重量%、0.05重量%〜5重量%、又は更には0.1重量%〜5重量%の量で存在し得る。特に好適なビタミンB3化合物は、DSMから入手可能なNiacinamide PCブランドのナイアシンアミドである。
【0029】
皮膚科学的に許容可能なキャリア
本明細書の組成物は、活性物質(すなわち、アーティチョーク葉抽出物及びビタミンB3化合物)及び他の任意の成分を保管及び輸送するのに好適なマトリクスを提供する皮膚科学的に許容可能なキャリア(「担体」)を含み得る。本明細書で使用するとき、「皮膚科学的に許容可能なキャリア」という語句は、キャリアがケラチン組織への局所適用に好適であり、良好な審美特性を有し、組成物中の活性物質と適合性があり、安全性又は毒性についていかなる不当な問題も起こさないことを意味する。1つの実施形態では、キャリアは、組成物の約50重量%〜約99重量%、約60重量%〜約98重量%、約70重量%〜約98重量%、あるいは約80重量%〜約95重量%の濃度で存在する。
【0030】
キャリアは幅広い種類の形態であり得る。非限定的な例としては、単純な溶液(例えば、水性、有機溶媒又は油ベース)、エマルション、及び固体形態(例えば、ゲル、スティック、流動性固体、又は無定形材料)が挙げられる。特定の実施形態では、皮膚科学的に許容可能なキャリアは、エマルションの形態である。エマルションは、一般的には、連続水相(例えば、水中油型及び水中油中水型)、又は連続油相(例えば、油中水型及び油中水中油型)を有するものとして分類され得る。本明細書の油相は、シリコーン油、非シリコーン油(炭化水素油、エステル、エーテルなど)、及びこれらの混合物を含み得る。
【0031】
水相は、典型的には、水を含む。しかしながら、他の実施形態では、水相は、水溶性保湿剤、コンディショニング剤、抗菌剤、湿潤剤、及び/又は他の水溶性スキンケア活性物質が挙げられるが、これらに限定されない水以外の構成成分を含み得る。1つの実施形態では、組成物の非水性構成成分は、グリセリン及び/又は他のポリオールなどの湿潤剤を含む。しかしながら、組成物が、実質的に(すなわち、1%未満の水)又は完全に非水性であり得ることが認識されるべきである。
【0032】
所望の製品形態を得るように、好適なキャリアが選択される。更には、構成成分(例えば、抽出物、日焼け止め活性物質、追加構成成分)の溶解性又は分散性は、キャリアの形態及び特性に影響し得る。1つの実施形態では、水中油型又は油中水型のエマルションが好ましい。
【0033】
エマルションは、乳化剤を更に含み得る。組成物は、キャリアを十分に乳化する任意の好適な百分率で乳化剤を含有し得る。好適な重量範囲は、組成物の重量に対して、約0.1重量%〜約10重量%、又は約0.2重量%〜約5重量%の乳化剤を含む。乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、又は陽イオン性であってよい。好適な乳化剤は、例えば、米国特許第3,755,560号、同第4,421,769号、及びMcCutcheon’s Detergents and Emulsifiers(North American Edition,pages 317〜324(1986))に開示されている。好適なエマルションは、所望の製品形態に応じて様々な範囲の粘度を有し得る。
【0034】
キャリアは、好適な粘度及び流動学的特性を有する組成物を提供することが当該技術分野で周知である増粘剤を更に含み得る。
【0035】
任意構成成分
いくつかの実施形態では、本明細書における本発明の組成物は、任意の成分が組成物の所望の利益を容認できないほどに変化させない限り、局所化粧品組成物で使用するために公知の1つ以上の任意構成成分を含み得る。存在する場合、任意構成成分は、組成物の約50重量%、40重量%、30重量%、20重量%、10重量%、5重量%、又は3重量%、例えば、少なくとも組成物の0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%又は1重量%の量で含まれ得る。好適な範囲は、組成物の約0.1重量%〜約50重量%、約0.2重量%〜約20重量%、又は約1重量%〜約10重量%の好適な範囲を含む、下限及び上限の任意の組み合わせを含む。
【0036】
組成物中に配合される場合、任意構成成分は、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などを示すことなく、ヒトの皮膚組織に接触させて用いるのに好適でなければならない。任意構成成分の非限定例としては、追加の皮膚抗老化剤、皮膚色調剤、抗炎症剤、日焼け止め活性物質、抗ニキビ活性物質、落屑活性物質、抗セルライト剤、キレート剤、フラボノイド、日焼け活性物質、非ビタミン酸化防止剤及びラジカルスカベンジャー、育毛調整剤、抗しわ活性物質、抗皮膚萎縮活性物質、鉱物、フィトステロール及び/又は植物ホルモン、N−アシルアミノ酸化合物、抗菌活性物質又は抗真菌活性物質、並びに他の有用なスキンケア活性物質などの任意構成成分が挙げられるが、これらは、米国特許出願公開第2006/0275237(A1)号及び同第2004/0175347(A1)号に更に詳細に記載されている。
【0037】
Personal Care Product CouncilのInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(第13版)には、スキンケア業界において通常使用されている非常に様々な非限定的な美容及び医薬成分が記載され、それらは本発明の組成物中で使用するのに好適な任意構成成分である。これらの成分クラスの例としては、研磨剤、吸収剤、芳香剤などの美容成分、色素、顔料/着色剤、精油、アンチケーキング剤、消泡剤、抗菌剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、充填剤、キレート化剤、化学添加剤、着色剤、美容収斂剤、美容殺生物剤、変性剤、薬物収斂剤、皮膚軟化剤、外用鎮痛剤、フィルム形成剤又は材料、乳白剤、pH調整剤、保存剤、噴霧剤、還元剤、捕捉剤、皮膚冷却剤、皮膚保護剤、増粘剤粘度調節剤、ビタミン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
好適な皮膚色調剤としては、糖アミン、アルブチン、デオキシアルブチン、ヘキシルレゾルシノール等の1,3−ジヒドロキシ−4−アルキルベンゼン、ジラウリン酸スクロース、バクコイル(bakuchoil)(4−[(1E,3S)−3−エテニル−3,7−ジメチル−1,6オクタジエニル]フェノール又はモノテルペン(monterpene)フェノール)、ピレノイン(Biotech Marine,Franceから入手可能)、キビ(panicum miliaceum)種子抽出物、アーラトン(arlatone)二酸、ケイ皮酸、フェルラ酸、アクロマキシル(achromaxyl)、メチルニコチンアミド、油可溶性甘草抽出物、葉酸、ウンデシレン酸(即ち、ウンデセン酸)、ウンデシレン酸亜鉛、チアミン(ビタミンB1)及びその塩酸塩、L−トリプトファン、ヒマワリ(helianthus annuus)(サンフラワー)及びブドウ(vitis vinifera)(グレープ)葉抽出物、カルノシン(即ち、ドラゴシン)、ゲンチシン酸メチル、1,2−ヘキサンジオール及び1,2−オクタンジオール(即ち、Symrise AG,GermanyによりSymdiol 68として販売されている配合剤)、イノシトール、デシレノイルフェニルアラニン(decylenoylphenylalanine)(例えば、Seppic,Franceにより商標名Sepiwhiteで販売)、コウジ酸、ヘキサミジン化合物、サリチル酸、並びにプロピオン酸レチノール及びプロピオン酸レチニルを含むレチノイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
皮膚炎症に起因する色素沈着過剰の外観を改善するために、1つ以上の抗炎症剤を、本発明の組成物中に含めてもよい。色素沈着過剰、より詳細には炎症後色素沈着過剰を引き起こす一過性炎症事象としては、挫創病変、内方発育毛、引っ掻き傷、虫刺され、界面活性剤損傷、アレルゲン、及び短時間の紫外線暴露が挙げられるが、これらに限定されない。炎症後色素沈着過剰を含む、炎症誘発性の色素沈着過剰は、本明細書の組成物中に抗炎症剤を組み込むことにより対処することができる。存在する場合、本明細書の組成物は、組成物の約20重量%、10重量%、5重量%、3重量%又は1重量%までの抗炎症剤を含有する。存在する場合、本発明の組成物は、組成物の少なくとも約0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.5重量%又は1重量%の抗炎症剤を含有する。好適な範囲は、下限と上限との任意の組み合わせを含む。好適な抗炎症剤としては、非ステロイド系抗炎症剤(イブプロフェン、ナプロキセン、フルフェナム酸、エトフェナマート、アスピリン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ピロキシカム及びフェルビナクが挙げられるが、これらに限定されないNSAIDS)、グリチルリチン酸(グリチルリチン、グリチルヒキシニック酸(glycyrrhixinic acid)、及びグリチルレチン酸グリコシドとしても既知である)、及びグリチルリチン酸ジカリウムなどの塩、グリシルレテン酸(glycyrrhetenic acid)、甘草抽出物、ビサボロール(例えば、アルファビサボロール)、マンジスタ(アカネ属の植物、特にインドアカネ(Rubia cordifolia)から抽出される)、及びガッグル(guggal)(コンミフォラ属の植物、特にグッグル(Commiphora mukul)から抽出される)、コーラノキ抽出物、カミツレ、ムラサキツメクサ抽出物、及びムチサンゴ抽出物(ヤギ目の植物からの抽出物)、上記のいずれかの誘導体、及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0040】
本明細書の組成物は、1つ以上の日焼け止め活性物質(日焼け止め剤)及び/又は紫外線吸収剤を含み得る。本明細書において、「日焼け止め活性物質」は、集合的に、日焼け止め活性物質、日焼け止め剤、及び/又は紫外線吸収剤を包含する。日焼け止め活性物質には、日焼け止め剤と物理的日焼け防止剤の両方が含まれる。日焼け止め活性物質は、有機であっても又は無機であってもよい。好適な日焼け止め活性物質の例は、「日焼け止め剤」としてPersonal Care Product Councilの「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」(第13版)に開示されている。特に好適な日焼け止め活性物質は、2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート(PARSOL(商標)MCXとして市販されている)、4,4'−t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン(PARSOL(商標)1789として市販されている)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチル−p−アミノ安息香酸、ジガロイルトリオレエート、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、エチル−4−(ビス(ヒドロキシプロピル)アミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシルサリチレート、グリセリル−p−アミノベンゾエート、3,3,5−トリ−メチルシクロヘキシルサリチレート、アントラニル酸メチル、p−ジメチル−アミノ安息香酸又はアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−p−ジメチルアミノベンゾエート、2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸、2−(p−ジメチルアミノフェニル)−5−スルホンベンゾオキサゾイン酸、オクトクリレン、酸化亜鉛、ベンジリデンカンファー及びその誘導体、二酸化チタン、並びにこれらの混合物である。
【0041】
1つの実施形態では、組成物は、組成物の約1重量%〜約20重量%、あるいは約2重量%〜約10重量%の日焼け止め活性物質を含み得る。正確な量は、選択された日焼け止め活性物質、及び当業者の知識の範囲内である所望の太陽光線保護指数(SPF)に応じて変動するであろう。
【0042】
II.使用方法
処置、適用、調節又は改善の様々な方法として、前述した組成物を利用することができる。老化した皮膚領域の特定は、身体の任意の皮膚表面上で行うことができる。最も関係がある皮膚表面は、顔皮膚表面、手及び腕の皮膚表面、足及び脚の皮膚表面、並びに首及び胸の皮膚表面などの一般的に衣服で覆われない皮膚表面である傾向がある。特に、老化した皮膚領域の特定は額、口周囲、顎、眼窩周囲、鼻及び/又は頬の皮膚表面を含む顔の皮膚表面であり得る。目標の皮膚表面には、当該技術分野で既知の皮膚老化の任意の兆候(例えば、小じわ、深い小じわ、しわ、粗い肌理、たるみ、締まりのない皮膚及び弾力性の欠如)を含み得る。
【0043】
方法は、事前に特定された老化した皮膚領域、又は老化した皮膚の外観を防止しようとする領域に、組成物を適用する工程を含む。本組成物を適用するための多くの処置計画が存在する。本組成物は、処置期間中、少なくとも1日1回、1日2回、又は1日により頻繁に適用され得る。1日2回適用する場合、1回目と2回目の適用には、少なくとも1〜12時間の間隔をあける。典型的には、組成物は、朝及び/又は就寝前の夜に適用され得る。
【0044】
処置期間は、ビタミンB3化合物及びアーティチョーク葉抽出物の組み合わせが老化した皮膚の外観を改善するのに十分な時間であることが理想的である。処置期間は、少なくとも1週間であってよく、いくつかの実施形態では、処置期間は少なくとも約4週間、8週間、又は12週間であってよい。特定の実施形態では、処置期間は、数ヶ月(すなわち3〜12ヶ月)又は数年間に及ぶ。1つの実施形態では、組成物は、少なくとも4週間、8週間、又は12週間の処置期間中、1日に少なくとも1回適用される。1つの実施形態では、組成物は、少なくとも4週間、8週間、又は12週間の処置期間中、1日に2回適用される。
【0045】
組成物を適用する工程は、局所適用により行うことができる。組成物の適用に関連して、用語「局所的な」、「局所」又は「局所的に」は、組成物が目標範囲(例えば、目周辺のしわ)に送達される一方、処置を必要としない皮膚表面への送達を最小限にすることを意味する。組成物は、老化した皮膚領域に適用され、軽くマッサージされ得る。組成物の形態又は皮膚科学的に許容可能なキャリアは、局所適用を促進するように選択されるべきである。本明細書の特定の実施形態は、組成物の領域への局所的な適用を企図するが、本明細書の組成物は、より一般的又はより広い範囲で1つ以上の皮膚表面に適用され得ることが認められるであろう。
【0046】
いくつかの実施形態では、組成物は局所的及び全身の適用に適切である様々なアプリケータにより送達され得る。かかるアプリケータには、点滴器、アプリケータワンド、綿棒、又は任意の他の好適な装置が挙げられる。他の好適なアプリケータとしては、Shya Hsin Plastic Works,Inc.(台湾)から入手可能なSH−0127ペン型アプリケータ、及びSwabPlus,Inc.(中国)から入手可能なXpress Tip又は液体充填された綿棒のいずれかが挙げられる。アプリケータは、小じわ及びしわなどの老化の兆候への組成物の適用を容易にして、及び組成物の約1〜約50μL/cm2又は約1〜約5μL/cm2の投与量が可能となるように構成され得る。別の実施形態では、組成物は、1つ以上の老化の兆候に、より一般的には、1つ以上の顔の皮膚表面に同時に(すなわち、30分未満の時間にわたって、又はより典型的には5分未満の時間にわたって)適用される。本明細書の組成物は、指を使用するか、又は他の従来の手段によって直接適用してもよいと認識されている。
【0047】
1つの実施形態では、方法は、有効量のアーティチョーク葉抽出物とビタミンB3化合物との組み合わせを含む第1組成物を皮膚表面に適用する工程、及び第2組成物を第1組成物の前後に皮膚表面に適用する工程を含む。第1及び第2組成物は、本明細書に記載される任意の組成物であってよいが、第2組成物は、第1組成物中に存在する有効量のアーティチョーク葉抽出物とビタミンB3化合物との混合物を任意で含んでもよい。第2組成物は、1つ以上の抗老化剤、色調剤、日焼け止め活性物質、抗炎症剤、又は任意構成成分を含み得る。第1組成物は、全身又は局所的に適用され得るが、第2組成物は、第1組成物が適用される老化した皮膚などの皮膚表面に全身又は局所的に適用され得る。特定の実施形態では、皮膚表面は、額、口周囲、顎、眼窩周囲、鼻及び頬の皮膚表面のうちの1つ以上を含む顔の皮膚表面である。別の実施形態では、第1及び第2の組成物は、少なくとも頬、額及び顎/口周囲の皮膚表面に同時に適用される。皮膚表面、特に顔の皮膚表面への全体的な適用に関して、第1又は第2の組成物の投与量は、適用当たり(すなわち、皮膚表面に対する1回の適用当たり)約1〜約50μL/cm2であり得る。特定の実施形態では、アーティチョーク葉抽出物及びビタミンB3化合物は、日々のスキンケア処置計画の一部として使用する2つの別個の組成物中に含まれ得る。
【0048】
好適な方法は、上記の工程のうちの任意の1つ以上を含み得る。上述の工程の全ては、老化した皮膚の外観における適用、処置、調節、及び/又は改善に適応される。老化した皮膚の外観を改善する1つの好適な方法は、有効量のアーティチョーク葉抽出物とビタミンB3化合物との混合物を含む組成物を、老化した皮膚表面に局所的に適用する工程を含み、この組成物は、老化した皮膚の外観を改善するのに十分な期間適用される。
【0049】
III.作用機序
年齢とともに、皮膚の表皮バリアの保護機能は損なわれるようになり得る。例えば、老化した表皮バリアでは、有害な刺激(例えば、フリーラジカル)に対する透過性の増大、細胞間マトリクス中の脂質量の低下、及び/又は深層からの毒素の拡散能の減少が起こり得て、それによって有害な刺激が角質層を容易に穿通し得る。結果として、下層の真皮層では、例えば、コラーゲン及びエラスチンの分解、及び角質層の薄化などの損傷の増加が起こり得る。したがって、表皮バリアの回復能は実質的に低下し、例えば、小じわ、しわ、及び/又は肌理の他の皮膚老化の兆候の外観によって老化の影響が視覚的に明らかとなり得る。
【0050】
NF−κBのアップレギュレーションは炎症に関連しており、これによって、表皮バリア機能の損傷が引き起こされ、肌理の皮膚老化の兆候の外観を生じる。逆に言えば、NF−κBの阻害は、真皮マトリクス機能の改善に相当し、それによって老化した皮膚の肌理の外観の改善がもたらされる。
【実施例】
【0051】
実施例1−例示的組成物
表1は、本明細書で使用するのに好適な組成物の非限定的な実施例を記載する。これらの実施例は単に説明のために示すものであり、本明細書を限定するものと解釈すべきでなく、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの改変が可能であり、当業者にはこれらのことが理解されよう。実施例においては、特に指定のない限り、全ての濃度は重量%として列挙されており、希釈剤、充填剤などの微量物質は除外し得る。そのため、列挙した処方物は、列挙した構成成分及びかかる構成成分に関連する任意の微量物質を含む。当業者に明からであるように、これらの微量物質の選択は、本明細書に記載したように本発明を作製するために選択した特定成分の物理的及び化学的特性によって変わる。
【0052】
全ての実施例は、1つ以上の老化の兆候である外観を処置又は改善するのに使用され得る。本明細書の方法は、更に、第1の組成物(例えば、実施例A又はB)によって1つ以上の老化兆候を局所的に処置し、第2の組成物(例えば、実施例C、D又はE)によって、より広い又は顔全体の皮膚を処置することを含む処置計画に関し、第2の組成物は、局所的な処置の前又は後に適用されて、特定の老化の兆候を改善(例えば、顔全体にわたって)することができる。
【0053】
【表1】
【0054】
本明細書の組成物は、一般的には、局所用組成物を作製する当該技術分野において既知であるような従来の方法によって調製される。かかる方法は、典型的には、加熱、冷却、真空の適用などを用いるか又は用いずに、成分を比較的均一な状態になるまで1つ以上の工程で混合することを含む。典型的には、エマルションは、最初に水相物質を脂肪相物質とは別個に混合し、その後2相を適宜混和して、所望の連続相を得ることにより調製される。組成物は、活性材料の安定性(物理的安定性、化学的安定性、光安定性)、及び/又は送達を最適化するように調製され得る。この最適化には、適切なpH(例えば7未満)、活性剤と複合体を形成して、安定性又は送達に有害な影響を与え得る材料の排除(例えば混入鉄の排除)、複合体形成を防止する手法(例えば、適切な分散剤又は二重区画包装)の使用、適切な光安定性の手法(例えば、日焼け止め剤/日焼け防止剤の配合、不透明包装の使用)の使用等を挙げることができる。
【0055】
実施例2−NF−κB阻害分析
本実施例において、アーティチョーク−ビタミンB3混合物のNF−κB阻害に及ぼす効果を評価する。使用されるビタミンB3化合物は、ナイアシンアミドである。
【0056】
インビトロ法
CellSensor(商標)NF−κB−bla HEK 293T細胞を、活性物質とともに1時間プレインキュベートし、TNFαで刺激し、その後インキュベートした。5時間後、プレートをInvitrogenのToxBLAzer Dual Screenkitで分析した。
【0057】
【表2】
** 統計的に有意。p=0.0237
【0058】
表2で示されるように、アーティチョーク葉抽出物及びビタミンB3化合物の組み合わせによって、炎症の減少、健康的な表皮バリア及び健康的でより若く見える皮膚と関連するNF−κBの阻害が相乗的に増加した。
【0059】
実施例3−処置方法
被験者は、3.5%のアーティチョーク葉抽出物、5.0%ビタミンB3化合物、及び皮膚科学的に許容可能なキャリアを含む組成物を、12週間にわたって1日当たり少なくとも1回、顔全体に局所的に適用する。被験者の顔の皮膚を、ベースライン、処置の4週目、8週目、及び12週目で評価する。デジタル撮像、専門家による等級付け及び/又は自身による評価によって評価したところ、製品の使用により、小じわ及びしわなどの顔の皮膚老化の兆候の外観が減少している。
【0060】
本明細書で開示する寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されないと理解されるべきである。むしろ、特に断らない限り、そのような大きさはそれぞれ、記載された値と、その値の前後の機能的同等範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味するものである。
【0061】
あらゆる相互参照又は関連特許若しくは特許出願を含む、本明細書に引用される文献は全て、明白に除外又は限定されている場合を除いて、本明細書中にその全容を援用するものである。いずれの文献の引用も、こうした文献が本願で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした文献が、単独で、あるいは他の任意の参照文献との任意の組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と競合する程度に、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0062】
本発明の特定の実施形態について説明し記載したが、様々な他の変更及び修正が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくなされ得ることが、当業者には明らかとなろう。したがって、本発明の範囲内に含まれるそのような全ての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図したものである。