(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から5のいずれか一項に記載の吸気ダクトにおいて、前記ダクト本体の前端部が、前記ダクトフロントの後端部を径方向外方から全周にわたって覆っている自動二輪車の吸気ダクト。
請求項1から9のいずれか一項に記載の吸気ダクトと、前記吸気ダクトから吸入された空気を浄化するクリーナエレメントと、前記クリーナエレメントの下流側に接続された過給機と、前記過給機の下流側の圧力を調整するリリーフ弁と、前記リリーフ弁の出口を前記クリーナエレメントの下流側の清浄室に連通させるリリーフ通路とを備え、
前記清浄室に、前記リリーフ通路の出口から排出されたリリーフ空気が前記クリーナエレメントに直接当たるのを防止する保護部材が設けられている自動二輪車の吸気装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の吸気ダクトは、前後方向寸法が長いので、車体から取り外すのが困難である。したがって、吸気ダクトの車幅方向内側に配置された車体装備品へのアクセスが困難である。
【0005】
本発明は、吸気ダクトよりも車体内側に配置される内側機器の取付け、取外しを容易に行うことができる自動二輪車の吸気ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の自動二輪車の吸気ダクトは、車体前部の空気取入口から吸入した空気を車体の前後方向中央部のエンジンに供給する自動二輪車の吸気ダクトであって、前記エンジンの車幅方向側方を通って前後方向に延びて、後端部で前記エンジンに着脱自在に接続されるダクト本体と、前記ダクト本体の前端部に着脱自在に連結され、前記空気取入口を形成して車体フレームに支持されるダクトフロントとを備え、前記ダクト本体が前記エンジンから取り外された状態で、前記ダクト本体の車幅方向内側に位置する内側機器の少なくとも一部を露出させて、取付けおよび取外しを可能にする。
【0007】
ここで、「内側機器」とは、ダクト本体の車幅方向内側に位置する車載機器であって、ダクト本体が車体に取り付けられた状態では外部からアクセス不能で、ダクト本体を車体から取り外した状態で外部からアクセス可能となる機器をいう。前記内側機器は、例えば、エアクリーナである。
【0008】
上記構成によれば、ダクトフロントを車体に取り付けたままダクト本体を取り外すことで、内側機器にアクセスできるので、内側機器の取り付け、取り外しを容易に行うことができる。これにより、内側機器のメンテナンス、故障確認、消耗品の交換が容易になる。例えば、内側機器がエアクリーナである場合、クリーナエレメントの交換が容易になる。
【0009】
本発明において、前記ダクトフロントが、車体前部のカウリングにより外側方から覆われ、前記ダクト本体が、前記カウリングから外側方に露出していることが好ましい。この構成によれば、ダクト本体がカウリングから露出しているので、カウリングを取り外すことなく、ダクト本体を取り外すことが可能となる。これにより、内側機器の取り付け、取り外しがさらに容易になる。また、ダクトフロントをカウリングで覆うことで、ダクト本体とダクトフロントとの継ぎ目を隠すことができる。
【0010】
前記ダクトフロントがカウリングにより外側方から覆われている場合、前記ダクトフロントの後部に、前記ダクト本体の前部が、前後方向の差込により連結されていることが好ましい。この構成によれば、車幅方向の差込みで接続されるのに比べて、ダクト本体の着脱時にカウリングとダクト本体との干渉を防ことができる。
【0011】
前記ダクト本体が前記カウリングから露出している場合、前記ダクト本体と前記ダクトフロントとが異なる材料で形成されていることが好ましい。ダクトフロントは、例えば、ポリプロピレン(PP)で形成され、ダクトフロントは、例えば、ダクトフロントよりも表面の装飾処理が容易な材料で形成される。表面の装飾処理が容易な材料とは、塗装、金属めっき等の装飾用被膜を形成し易い材料であり、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)共重合合成樹脂)である。この構成によれば、自動二輪車の外観が向上するとともに、外部に露出しないダクトフロントの材料の選択肢が増え、設計の自由度が向上する。
【0012】
前記ダクトフロントがカウリングにより外側方から覆われている場合、前記ダクト本体と前記ダクトフロントとは、上部で締結部材により着脱可能に接続され、前記カウリングは、前記締結部材を外側方から覆うとともに、前記締結部材を上方に露出させる開口が形成されていることが好ましい。この構成によれば、締結部材が外側方から見えるのを防ぐとともに、上方から締結部材へのアクセスが容易になる。その結果、ダクト本体の取付け、取外しが容易になる。
【0013】
本発明において、前記ダクト本体の前端部が、前記ダクトフロントの後端部を径方向外方から全周にわたって覆っていることが好ましい。この構成によれば、ダクト本体がダクトフロントの内側となるように接続するのに比べて、吸気ダクト内の空気抵抗が少なくなる。
【0014】
本発明において、前記ダクト本体がブロー成形による単一物によって形成されていることが好ましい。この構成によれば、ダクト本体が分割体の結合により構成される場合と異なり、ダクト本体に結合線がないので、ダクト本体内の凹凸を減らして空気抵抗が小さくなる。
【0015】
本発明において、前記ダクト本体に、車体フレームに向かって突出する突起が成形加工によって一体に形成され、前記突起が、前記車体フレームに形成された係合孔に係合されていることが好ましい。この構成によれば、ダクト本体内に突出物が形成されるのを防いで空気抵抗の増大を回避しつつ、支持部を形成できる。
【0016】
本発明に係る自動二輪車の吸気装置は、本発明の吸気ダクトと、前記吸気ダクトから吸入された空気を浄化するクリーナエレメントと、前記クリーナエレメントの下流側に接続された過給機と、前記過給機の下流側の圧力を調整するリリーフ弁と、前記リリーフ弁の出口を前記クリーナエレメントの下流側の清浄室に連通させるリリーフ通路とを備え、前記清浄室に、前記リリーフ通路の出口から排出されたリリーフ空気が前記クリーナエレメントに直接当たるのを防止する保護部材が設けられている。この構成によれば、保護部材により高温のリリーフ空気がクリーナエレメントに直接衝突するのを防ぐことができるので、クリーナエレメントが保護される。
【0017】
請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。この明細書中の左右方向は、自動二輪車に乗車したライダーから見た左右を言う。
【0020】
図1は本発明の第1実施形態に係る吸気ダクトを備えた自動二輪車の側面図である。この自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を形成するメインフレーム1と、後半部を形成するリヤフレーム2とを有している。メインフレーム1の前端にヘッドパイプ4が設けられ、このヘッドパイプ4にステアリングシャフト(図示せず)を介してフロントフォーク8が回動自在に軸支されている。フロントフォーク8の上端部に操向用のハンドル6が固定され、フロントフォーク8の下端部に前輪10が取り付けられている。
【0021】
メインフレーム1の後端部に、スイングアームブラケット9が設けられている。このスイングアームブラケット9に取り付けたピボット軸16の回りに、スイングアーム12が上下揺動自在に軸支されている。このスイングアーム12の後端部に、後輪14が回転自在に支持されている。
【0022】
車体フレームFRの中央下部でスイングアームブラケット9の前側に、エンジンEが取り付けられている。エンジンEがドライブチェーン11を介して後輪14を駆動する。エンジンEは、クランク軸26の軸線方向に複数気筒が並ぶ並列多気筒エンジンで、本実施形態では、4気筒4サイクルの多気筒エンジンである。ただし、エンジンEの形式はこれに限定されるものではない。
【0023】
エンジンEは、クランク軸26を支持するクランクケース28と、クランクケース28の前部の上面から上方に突出したシリンダブロック30と、その上方のシリンダヘッド32と、クランクケース28の下部に連結されたオイルパン33とを有している。シリンダブロック30およびシリンダヘッド32は前方に傾斜している。つまり、エンジンEは、側面視でほぼL字形である。
【0024】
シリンダヘッド32の前面の4つの排気ポート35に、4本の排気管36が接続されている。これら4本の排気管36が、エンジンEの下方で集合され、後輪14の右側に配置された排気マフラ38に接続されている。エンジンEの前方にラジエータ25が配置されている。
【0025】
メインフレーム1の上部に燃料タンク15が配置され、リヤフレーム2に操縦者用シート18および同乗者用シート20が支持されている。また、車体前部に、樹脂製のカウリング22が装着されている。カウリング22は、車体フレームFRに固定されたカウルステー(図示せず)に支持されており、前記ヘッドパイプ4の前方から車体前部の側方、詳細にはハンドル6の下方でラジエータ25の外側方にかけての部分を覆っている。カウリング22には、空気取入口24が形成されている。空気取入口24は、カウリング22の前端に位置し、外部からエンジンEへの吸気を取り入れる。
【0026】
車体フレームFRの左側に、吸気ダクト50が配置されている。吸気ダクト50は、前端開口50aをカウリング22の空気取入口24に臨ませた配置でヘッドパイプ4に支持されている。吸気ダクト50の前端開口50aから導入された空気は、ラム効果により昇圧される。吸気ダクト50の詳細は後述する。
【0027】
シリンダブロック30の後方でクランクケース28の後部の上面に、吸気を浄化するエアクリーナ40および過給機42が、エアクリーナ40を外側にして車幅方向に並んで配置されている。エアクリーナ40は、本発明の内側機器の一つである。吸気ダクト50は、エンジンEの前方からシリンダブロック30およびシリンダヘッド32の左外側方を通過して、エアクリーナ40に走行風を吸気として導いている。過給機42は、エアクリーナ40からの清浄空気を加圧してエンジンEに供給する。
【0028】
過給機42とエンジンEの吸気ポート54との間に、吸気チャンバ52が配置され、過給機42と吸気チャンバ52とが直接接続されている。吸気チャンバ52は、過給機42から供給された高圧の吸気を貯留する。吸気チャンバ52と吸気ポート54との間には、スロットルボディ44が配置されている。吸気チャンバ52は、過給機42およびスロットルボディ44の上方でシリンダヘッド32の後方に配置されている。エアクリーナ40は、側面視で、クランクケース28と吸気チャンバ52との間に配置されている。吸気チャンバ52およびスロットルボディ44の上方に、前記燃料タンク15が配置されている。
【0029】
図2に示すように、過給機42はエアクリーナ40の右側に隣接して配置され、図示しないボルトによりクランクケース28の上面に固定されている。過給機42は車幅方向に延びる回転軸心AXを有し、クランクケース28の上方でエンジンEの幅方向の中央部に、左向きに開口した吸込口46が位置し、エンジンEの車幅方向の中央部で回転軸心AXよりも後方に吐出口48が位置している。
【0030】
過給機42は、吸気を加圧するインペラ60と、インペラ60を覆うインペラインペラハウジング61と、エンジンEの動力をインペラ60に伝達する伝達機構63と、伝達機構63を覆う伝達機構ハウジング67とを有し、インペラハウジング61を挟んで車幅方向に伝達機構63とエアクリーナ40とが配置されている。過給機42のインペラハウジング61は、複数のボルト100により伝達機構ハウジング67に連結され、複数のボルト102によりエアクリーナ40に連結されている。
【0031】
吸気チャンバ52の前部に、吸気チャンバ52の空気圧力、すなわち過給機42の下流側の圧力を調整するリリーフ弁80が設けられている。リリーフ弁80に、高圧空気Aをエアクリーナ40に送るリリーフ通路82を構成する逃がし配管83が接続されている。逃がし配管83は、吸気チャンバ52の右側方を通って後方斜め下方に延びたのち、吸気チャンバ52の下方で、シリンダブロック30およびシリンダヘッド32と過給機42との間を左側方に延びてエアクリーナ40に接続される。これら吸気ダクト50、エアクリーナ40、過給機42、リリーフ弁80およびリリーフ通路82、つまり、吸気系機器群により自動二輪車の吸気装置ISが構成されている。
【0032】
過給機42の吸込口46にエアクリーナ40のクリーナ出口59が接続され、エアクリーナ40のクリーナ入口57に、前記吸気ダクト50の後端部50bが車幅方向外側から接続されている。エアクリーナ40の詳細は後述する。
【0033】
図3に示すように、吸気ダクト50は、上流側のダクトフロント69と下流側のダクト本体70とを有している。吸気ダクト50の断面形状は上流側から下流側にかけて一様ではないが、概ね、角部に丸みを有する矩形である。ダクトフロント69は、前端部69aに空気取入口24が形成され、後端部69aでダクト本体70の前端部70aに着脱自在に連結されている。ダクト本体70は、エンジンEの車幅方向側方、この実施形態では、左側方を通って前後方向に延びたのち、ダクト後端部50bを形成する後端部70bで、エアクリーナ40に着脱自在に接続されている。
【0034】
図1に示すように、ダクトフロント69は、ヘッドパイプ4よりも前方に位置し、その全体がカウリング22により外側方から覆われ、
図5からわかるとおり、その大部分がカウリング22により上方からも覆われている。ダクト本体70は、その前部を除いた大部分がカウリング22から外側方に露出している。
【0035】
ダクト本体70とダクトフロント69とは異なる材料で形成され、ダクト本体70が、ダクトフロント69よりも表面の装飾処理が容易な材料で形成されている。具体的には、本実施形態では、ダクト本体70は、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)のブロー成形による単一物によって形成されており、ダクトフロント69は、ポリプロピレン(PP)のブロー成形による単一物によって形成されている。ただし、ダクト本体70およびダクトフロント69の材料はこれに限定されない。
【0036】
また、ダクト本体70は、ダクトフロント69よりも前後方向長さが大きく、断面積が小さく形成されている。したがって、ダクト本体70は、ダクトフロント69よりも表面粗さが小さくなる製造方法で形成されるのが好ましく、このことからも、ダクト本体70はブロー成形による単一物によって形成されるのが好ましい。これにより、ダクト本体70の内部を通過する際の空気抵抗を抑制できる。
【0037】
ダクト本体70とダクトフロント69とは前後方向の差込により連結されている。詳細には、
図4に示すように、ダクトフロント69の後端部69bに、外表面を径方向内方へ凹入させた接続部74が形成され、この接続部74に第1貫通孔73が形成されている。吸気ダクト50は、横断面形状が概ね矩形であるが、以下では、横断面の中心から外方へ向かう方向を径方向外方と呼び、中心へ向かう方向を径方向内方と呼ぶ。第1貫通孔73は、上部に1箇所のみ設けられている。さらに、接続部74における第1貫通孔73の後部に全周に延びる周溝74aが形成され、この周溝74aにゴムのような弾性体からなるシール部材75が装着されている。
【0038】
シール部材75は、周溝74a内に収納されて全周に延びる基部75aと、基部75aから径方向外方に突出する複数の全周に延びる突部75bとを有している。基部75aは周溝74aの深さと同一または若干小さい厚みを有し、突部75bは周溝74aの頂部よりも径方向外方へ突出している。本実施形態では、突部75bが前後方向に並んで4つ設けられているが、突部75bの数はこれに限定されない。基部75aと突部75bとからなるシール部材75を用いることで、ダクト本体70をダクトフロント69に嵌め込みやすくなるから、連結部の気密性を確保しつつ、組立性も向上する。
【0039】
ダクト本体70の前端部70aにおける第1貫通孔73に対応する位置に、第2貫通孔76が形成されている。ダクト本体70の前端部70aを、ダクトフロント69の後端部69bの接続部74の外周に後方から差し込んだ状態で、ボルトのような締結部材77を第2貫通孔76および第1貫通孔73の順に挿通し、ゴムナット78に締め付けることで、ダクト本体70とダクトフロント69とが着脱可能に接続される。接続状態では、ダクト本体70の前端部70aが、ダクトフロント69の接続部74を径方向外方から全周にわたって覆っており、ダクト本体70の前端部70aの外面と、ダクトフロント69の後端部69bの外面とが面一となっている。
【0040】
図5に示すように、締結部材77は、カウリング22により外側方から覆われるとともに、開口79から上方に露出している。また、ダクト本体70のブロー成形のパーティングライン(図示せず)は車体内側にある。
【0041】
図3のダクト本体70は、上流部である前端部70aから後方の下流部70cに向かって徐々に断面積が小さくなるように設定されており、前端部70aから下流部70cにかけて徐々に流速が増加する。ダクト本体70は、断面積が縮小する部分よりも上流側、つまり、流速が比較的小さい場所でダクトフロント69に接続されているので、ダクトフロント69とダクト本体70の継ぎ目J(
図4)による流路抵抗の増大を抑制できる。継ぎ目Jから離れた位置では、ダクトフロント69はダクト本体70よりも断面積が大きく形成されている。ダクト本体70は、下流部70cで車体内側に湾曲してエアクリーナ40に接続されている。
【0042】
つまり、
図5に示すように、ダクト本体70の下流部70cの後方には、取り外したダクト本体70を後方に移動させるための退避空間SPが形成されている。退避空間SPは、その前後方向寸法d1が、ダクト本体70の前端部70aからカウリング22の後端までの距離d2よりも大きく形成される。これにより、ダクト本体70を取り外す際に、ダクト本体70が車体および車載部品に干渉するのを防ぐことができる。
【0043】
図3の吸気ダクト50は、吸気Iの流れ方向の中間部で最下部50dを有している。このように、中間部に最下部50dを設けることで、吸気ダクト50が側面視でV字形状となる。この最下部50dに水抜孔(図示せず)を設けてもよい。ただし、吸気ダクト50の形状は、このようなV字形に限定されず、ストレート形状であってもよい。
【0044】
ダクトフロント69の上面に、取付片72が前後方向に並んで2つ設けられている。この取付片72を介してダクトフロント69は、ボルト(図示せず)により、
図5のカウリング22の内面に設けたステー(図示せず)に支持されている。つまり、ダクトフロント69は、カウリング22を介してメインフレーム1に支持されている。
【0045】
ダクト本体70に、メインフレーム1に向かって突出する突起68がインサート成形によって一体に形成されている。突起68は、ダクト本体70の前後方向中間部の内側面に設けられている。
図6に示すように、メインフレーム1に形成された係合孔65に、ゴムのような弾性体からなる筒状のグロメット66が装着され、このグロメット66の内部に突起68が外側から差し込まれて係合され、突起68の膨出した頭部68aによって抜け止めされる。
【0046】
以上のように、
図5のダクト本体50は、その前部が締結部材77によりダクトフロント69に着脱自在に連結され、後部がエアクリーナ40に後述のボルト104(
図7)により着脱自在に連結され、前後方向中間部が突起68によりメインフレーム1に着脱自在に支持されている。
【0047】
図6に示すように、ダクト本体50の横断面形状は、ほぼ上下方向に長軸を有する矩形である。より詳細には、ダクト本体50の横断面形状は、外側縁が車幅方向外側へ向かって円弧状に膨出したD字形状である。
【0048】
図2のエアクリーナ40は、そのケースが左右方向に分割可能な2つの分割体からなり、具体的には、クリーナ出口59を有するケース本体84と、クリーナ入口57を有するカバー85とを備えている。これらケース本体84とカバー85との間に吸気を浄化するクリーナエレメント87が介装されている。ケース本体84およびカバー85は、アルミニウム合金の鋳物で形成され、クリーナエレメント87を介在させた状態で複数のねじ体104により連結されている。
【0049】
詳細には、
図7に示すように、クリーナエレメント87は、枠を形成する保持部87aと、保持部87aに保持されたフィルタ部87bとを有し、保持部87aがケース本体84とカバー85とに挟持されている。具体的には、保持部87aの外周の係合突部87aaを、ケース本体84の結合面に設けられた第1係合溝84aに嵌め込んだ後、ケース本体84の結合面に設けられた係合突起84bが、カバー85の結合面に設けられた第2係合溝85aに係合されている。この状態で、
図2のねじ体104によりケース本体84とカバー85を連結することで、クリーナエレメント87がケース本体84とカバー85とにより挟持される。
【0050】
吸気ダクト50の後端50bは、複数のねじ体106によりカバー85に支持されている。つまり、エアクリーナ40のカバー85は、吸気ダクト50の後端50bを支持する支持体としても機能している。
【0051】
図7に示すように、カバー85の内部空間は、クリーナエレメント87の上流側のダーティ室92を構成し、ケース本体84の内部空間は、クリーナエレメント87の下流側の清浄室94を構成している。つまり、吸気ダクト50により導かれた吸気Iは、クリーナ入口57からダーティ室92に導入され、クリーナエレメント87で浄化されて清浄室94に入り、クリーナ出口59から導出される。
【0052】
清浄室94に、エンジン内部のブローバイガスGをエアクリーナ40内部に導くブローバイガス導入口86と、高圧空気導入口88とが形成されている。ブローバイガス導入口86には、エンジンEのブリーザ室(図示せず)からの接続パイプ90が挿入されて接続されている。高圧空気導入口88には、
図2の吸気チャンバ52のリリーフ弁80からの逃がし配管83が接続され、高圧空気Aがエアクリーナ40の内部に導入される。
図7の高圧空気導入口88はブローバイガス導入口86よりも上方に配置され、ブローバイガス導入口86は前方を向いて、高圧空気導入口88は右側方を向いてそれぞれ開口している。
【0053】
清浄室94に、リリーフ通路82の出口から排出された高圧空気Aがクリーナエレメント87に直接当たるのを防止する保護部材96が設けられている。保護部材96は、高圧空気導入口88とクリーナエレメント87との間に配置され、ケース本体84に着脱自在に支持されている。
【0054】
図8は、ケース本体84の内部を示す。同図に示すように、保護部材96は、板材を折り曲げ加工することで形成されており、高圧空気導入口88を導入口外側から覆って高圧空気Aをクリーナ出口59に導く本体部96aと、ケース本体84に支持される3つの被支持部96bとを有している。
【0055】
被支持部96bは、前方に1箇所と後方に2箇所形成されている。後方の2箇所の被支持部96bは、エアクリーナ40を過給機42に締結する前記ボルト102によってケース本体84に共締めされている。これにより、部品点数の増加を抑えている。前方の1箇所の被支持部96bは、ボルトのような締結部材108によってケース本体84に固定されている。
【0056】
つぎに、吸気装置ISの動作について説明する。自動二輪車が走行すると、走行風が
図1の空気取入口24から吸気ダクト50に吸気Iとして取り入れられる。吸気Iは、吸気ダクト50内を後方に向かって流れ、車幅方向内側に向きを変えながらエアクリーナ40へ導かれる。
【0057】
エアクリーナ40に導かれた吸気Iは、
図2に示すエレメント87により浄化され、過給機42に導入される。過給機42に導入された吸気Iは、インペラ60で昇圧されたのち、吐出口48から上方へ導出される。過給機42から導出された高圧空気Aは、上方の吸気チャンバ52に導かれたのち、
図1のスロットルボディ44を経由してエンジンEの吸気ポート54に供給される。
【0058】
過給機42よりも下流側の過給気通路内の圧力が所定値よりも高くなると、吸気チャンバ52に設けられた
図2のリリーフ弁80が開動作し、吸気チャンバ52を含む過給気通路内の圧力を調整する。その際にリリーフ弁80から逃がされた高圧空気Aは、リリーフ通路82を構成する逃がし配管83を通って、
図7に示すエアクリーナ40に導入される。エアクリーナ40に導入された高圧空気Aは、保護部材96に案内されて清浄室94に戻される。
【0059】
一方、自動二輪車の走行中、エンジン内部のブローバイガスは、エンジン内部のブリーザ室(図示せず)で分離されたのち、接続パイプ90内を通って、ブローバイガス導入口86からエアクリーナ40の清浄室94に導入される。
【0060】
つづいて、エアクリーナ40のクリーナエレメント87の交換方法について説明する。まず、エアクリーナ40のカバー85とともに、吸気ダクト50のダクト本体70を車体から取り外す。具体的には、
図1のボルト104を取り外し、さらに、
図5のダクトフロント69の締結部材77を取り外す。この状態で、
図6のダクト本体70を外側方に引き出すことによってメインフレーム1の係合孔66とダクト本体70の突起68との係合を解除し、
図1のダクト本体70を後方に移動させて、ダクトフロント69からダクト本体70を取り外す。このとき、ダクト本体70の後方に退避空間SP(
図5)が形成されているので、ダクト本体70の取り外しが容易である。
【0061】
図7のカバー85およびダクト本体70を車体から取り外すと、左側面図である
図9に示すように、クリーナエレメント87が外部に露出する。したがって、クリーナエレメント87を容易に交換することができる。クリーナエレメント87の交換後、ダクト本体70およびカバー85を取り外しと逆の手順で車体に取り付ける。
【0062】
上記構成によれば、ダクトフロント69をメインフレーム1に取り付けたままで、ダクト本体70を取り外すことで、エアクリーナ40のクリーナエレメント87にアクセスできるので、クリーナエレメント87の取り付け、取り外しを容易に行うことができる。ダクト本体70は、エンジンEの外側方を通って前後方向に延びているので、外側方からアクセスして容易に取り外すことができる。また、ダクト本体70は、カバー85に接続されているので、ダクト本体70をカバー85ごと取り外して、クリーナエレメント87を交換することができる。
【0063】
さらに、カバー85とともにダクト本体70を取り外す際、
図1のボルト104が車体側方に露出し、
図5のダクトフロント69の締結部材77がカウリング22の開口79から上方に露出しているので、ボルト104および締結部材77の取り外しが容易であるとともに、ダクト本体70の後方に退避空間SPが形成されているので、ダクト本体70の取り外しも容易である。
【0064】
図1に示すダクトフロント69の全体がカウリング22により外側方から覆われ、ダクト本体70の大部分がカウリング22から外側方に露出している。これにより、
図4のダクト本体70とダクトフロント69との継ぎ目Jを隠して外観を向上させるとともに、カウリング22を取り外すことなく、ダクト本体70を取り外すことができる。
【0065】
ダクトフロント69の後端部69bに、ダクト本体70の前端部70aが前後方向の差込により連結されている。これにより、車幅方向の差込みで接続されるのに比べて、ダクト本体50の着脱時に、
図5のカウリング22と吸気ダクト50との干渉を防ぐことができる。
【0066】
図4のダクト本体70の前端部70aが、ダクトフロント69の後端部69bを径方向外方から全周にわたって覆っている。ダクト本体70が内側となるように接続した場合には、ダクト本体70の前端面がダクトフロント69の内周面よりも内側に露出して段部を形成するので、大きな圧力抵抗となる。これに対し、本実施形態では、ダクト本体70の前端部70aがダクトフロント69の後端部69bの外側になるように接続されているから、段部が生じないので、吸気ダクト50内の空気抵抗が少なくなる。
【0067】
図5のダクト本体70とダクトフロント69とが異なる材料で形成され、ダクト本体70がダクトフロント69よりも表面の装飾処理が容易な材料で形成されている。これにより、カウリング22から露出するダクト本体70の表面に塗装または金属めっきのような装飾処理を施すことにより自動二輪車の外観が向上するとともに、露出しないダクトフロント69の材料の選択肢が増え、設計の自由度が向上する。
【0068】
また、ダクト本体70はブロー成形による単一物によって形成されている。これにより、ダクト本体70を分割体で構成した場合の結合線がなくなって、ダクト本体70内の空気抵抗が小さくなる。さらに、ダクト本体70の前後方向中央部の内側面に、メインフレーム1に向かって突出する突起68が成形加工によって一体に形成され、この突起68が、メインフレーム1に形成された係合孔66に係合されている。これにより、ダクト本体70内の空気抵抗が大きくなるのを防ぎつつ、ダクト本体70の前後方向中央部を支持できる。
【0069】
図7に示すように、清浄室94に、リリーフ通路82から排出された高圧空気Aがクリーナエレメント87に直接当たるのを防止する保護部材96が設けられているので、高圧空気Aによりクリーナエレメント87が変形するのを保護できる。
【0070】
図9に示すように、クリーナエレメント87は、エアクリーナ40のケースの横断面の全面に広範囲にわたって取り付けられている。これによりクリーナエレメント87の吸気抵抗が低減する。このようにクリーナエレメント87を広範囲にわたって設けることで、
図7に示す過給機42の吸込口46よりも大きくなり、高圧空気導入口88と対向するが、保護部材96を設けることで、高圧空気Aがクリーナエレメント87に衝突するのを回避できる。
【0071】
上記実施形態では、内側機器としてエアクリーナ40が用いられているが、内側機器は、エアクリーナ40に限定されず、ダクト本体70の車幅方向内側に位置する車載機器であって、ダクト本体70が車体に取り付けられた状態では外部からアクセス不能で、ダクト本体70を車体から取り外した状態で外部からアクセス可能となる機器であればよい。内側機器は、エアクリーナ40、過給機42等のエンジンEの吸気系の機器であることが好ましい。特に、クリーナエレメント87のような定期的に整備、交換が必要な機器であることが好ましい。
【0072】
また、内側機器は、エンジンEの吸気系の機器以外に限定されず、吸気ダクト50が配置される車幅方向一側方に配置されてダクト本体により外側方から覆われる機器であってもよく、例えば、エンジンEに取り付けられる機器、電装部品等であってもよい。このような機器、電装部品は、例えば、各種センサ、リレースイッチ、スタータスイッチ、ハーネスコネクタ、スロットルバルブ、スロットルセンサである。シリンダブロック30およびシリンダヘッド32の後方でクランクケース28の上方には、エンジンEを駆動させるための各種機器が配置されており、ダクト本体50を取り外すことで、これらの機器にアクセスできる。吸気ダクト50をエンジンEの外側方に配置することで、カウル、カバー等を用いることなく、これらの各種部品の外部への露出が抑制され、その結果、外観の向上および各種部品の保護が達成される。
【0073】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、ダクト本体70とフロントダクト69とは異なる材料で形成されていたが、同じ材料で異なる表面処理で形成されてもよい。具体的には、フロントダクト69は、大部分がカウリング22によって覆われており、車体外側方に露出しないので、ダクト本体50に比べて表面仕上げ工程を減らしてもよい。これにより、製造コストを低減できる。フロントダクト69は、例えば、表面処理なし(研磨なし、塗装なし)で形成され、ダクト本体50の表面には、研磨、塗装等が施される。
【0074】
ダクトフロント69は、カウリング22から露出していてもよく、その場合も本発明に含まれる。また、エアクリーナ40は、ダクト本体50の前端部に配置されていてもよい。本発明は、特に、過給機を搭載したエンジンのような、吸気ダクト内の流速が大きく吸気抵抗の変化に起因する出力の影響が大きいエンジンに好適に用いられる。