【文献】
Poult. Sci.,2009年,Vol. 88,p. 1694-1702
【文献】
Proceeding of the Eleventh Veterinary Scientific Conference,2012年,p. 56-63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に関してより詳しく説明する。本明細書に記載されなかった内容は、当該技術分野又は類似分野の熟練者なら十分に認識・類推できるため、その説明を省略する。
【0023】
本発明の一様態は、鳥類病原性大腸菌(Avian Pathogenic Escherichia coli, APEC)に特異的な死滅能を有する、新たなバクテリオファージΦCJ24(KCCM11462P)(以下、「ΦCJ24」ともいう)を提供する。
【0024】
鳥類病原性大腸菌は、鶏、アヒル、七面鳥などの鳥類の呼吸器を介して感染する大腸菌であり、鳥類感染性疾病、具体的には鳥類大腸菌症を誘発する。具体的には、前記鳥類病原性大腸菌は、呼吸器の粘膜を通して鳥類の体内に進入し、敗血症、肉芽腫、気嚢炎、卵管炎、関節炎などの様々な疾病を誘発する大腸菌である。前記鳥類病原性大腸菌は、一般的な大腸菌と同様にグラム陰性の桿菌であり、周毛性鞭毛があるため運動性があり、ラクトース(Lactose)、フルクトース(Fructose)を分解して酸とガスを生成する好気性又は通性嫌気性菌である。
【0025】
前記鳥類病原性大腸菌は、普通の培地でもよく育ち約7℃〜48℃の温度で発育が可能であり、発育最適温度は約35℃ないし約37℃である。特に鳥類の体温に近い約42℃で病原性因子の発現が効果的に行われる。また、鳥類病原性大腸菌は、pH4.5〜pH9.0の範囲で発育が可能である。
【0026】
バクテリオファージ(bacteriophage)は、特定の細菌に感染し、当該細菌の成長を抑制・阻害する細菌特異的ウイルスであり、単一あるいは二重鎖のDNA(Deoxyribonucleic acid)又はRNA(Ribonucleic acid)を遺伝物質として含むウイルスを意味する。
【0027】
具体的に、本発明の一様態のバクテリオファージΦCJ24は、鳥類病原性大腸菌に選択的に感染する種特異性を有するバクテリオファージであり、正二十面体ヘッド(icosahedral capsid)と収縮性のないテール(long non−contractile tail)で構成された形態型(morphotype)B1のサイフォウイルス科(Siphoviridae)に属するバクテリオファージである(
図1参照)。バクテリオファージΦCJ24の塩基配列と他のバクテリオファージの解読塩基配列の相同性を比較した結果を表1に示した。バクテリオファージΦCJ24の耐酸性においてpH3.5からpH11.0まで活性を失うことなく安定的であり(
図4)、耐熱性においては50℃以上で2時間暴露しても1ログ(log)以上減少しなかった(
図5)。耐乾性においてはバクテリオファージΦCJ24のタイターは、60℃で2時間乾燥したとき約1ログ(log)減少した(
図6)。バクテリオファージΦCJ24の塩基配列の一部は、フリーテキスト上の配列番号1及び2である。
【0028】
前記バクテリオファージΦCJ24は、本発明者らが新たに分離したバクテリオファージであり、2013年10月25日に韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、ソウル市西大門区弘濟1洞361−221)に寄託番号第KCCM11462Pで寄託した。
【0029】
本発明の他の一様態によれば、前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む、鳥類病原性大腸菌による感染性疾病の予防又は治療用組成物が提供される。
【0030】
前記バクテリオファージΦCJ24は、鳥類病原性大腸菌を特異的に死滅させる抗菌活性を有するため、鳥類病原性大腸菌の感染で誘発される疾病を予防・治療する目的として利用することができる。前記鳥類病原性大腸菌の感染性疾病例として、鳥類大腸菌症(Avian colibacillosis)を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0031】
前記鳥類大腸菌症は、鳥類の呼吸器などに病原性大腸菌が感染して発生する疾病であり、その症状として気嚢炎(airsacculitis)、肝包膜炎(perihepatitis)、腹膜炎(peritonitis)、心臓周囲炎(pericarditis)、卵管炎(salpingitis)、臍炎(omphalitis)、骨髄炎(osteomyelitis)又は敗血症(septicemia)など様々な病変を示し、感染した鳥類の成長低下及びへい死を誘発する。
【0032】
本明細書で用いられる用語「予防」は、前記バクテリオファージΦCJ24及び/又は前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む組成物を対象体に提供して、該当疾病を抑制したり、発病を遅延させたりする全ての行為を意味する。
【0033】
本明細書で用いられる用語「治療」は、前記バクテリオファージΦCJ24及び/又は前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む組成物を対象体に提供して、既に感染した該当疾病の症状を好転又は改善させる全ての行為を意味する。
【0034】
本様態の前記鳥類病原性大腸菌による感染性疾病の予防又は治療用組成物は、前記バクテリオファージΦCJ24を5×10
2〜5×10
12pfu/ml含有してもよく、好ましくは、前記バクテリオファージΦCJ24を1×10
6〜1×10
10pfu/ml含有してもよい。
【0035】
本様態の前記鳥類病原性大腸菌による感染性疾病の予防又は治療用組成物は、薬学的に許容可能な担体を追加的に含むことができ、前記担体とともに製剤化され、食品、医薬品、飼料添加剤又は飲用水添加剤などに提供され得る。本明細書で用いられる用語「薬学的に許容可能な担体」は、生物体を刺激せず投与化合物の生物学的活性及び特性を阻害しない担体又は希釈剤を意味する。
【0036】
本様態で使用可能な前記担体の種類は、特に制限されず、当該技術分野で通常的に使用され、薬学的に許容される担体ならいずれも使用することができる。前記担体の非制限的な例として、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、テキストローズ溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールなどがある。これらは単独又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0037】
また、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液及び/又は静菌剤など他の通常の添加剤を添加して使用することができ、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び/又は潤滑剤などを付加的に添加し、水溶液、懸濁液、油濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は精製などで製剤化して用いることができる。
【0038】
本様態の前記鳥類病原性大腸菌による感染性疾病の予防又は治療用組成物の投与方式は、特に制限されず、当該技術分野で通常的に使用される方式で行うことができる。前記投与方式の非制限的な例として、組成物を経口投与又は非経口投与方式で投与することが挙げられる。
【0039】
前記経口投与用の剤形の非制限的な例として、トローチ剤(troches)、ローゼンジ(lozenge)、錠剤、水溶性懸濁液、油性懸濁液、調剤粉末、顆粒、エマルジョン、ハードカプセル、ソフトカプセル、シロップ又はエリキシル剤(elixirs)などを挙げることができる。
【0040】
本様態の組成物を錠剤又はカプセルなどの剤形に製剤化するため、ラクトース、サッカロース(Saccharose)、ソルビトール(Sorbitol)、マンニトール(Mannitol)、デンプン、アミロペクチン(Amylopectin)、セルロース(Cellulose)又はゼラチン(Gelatin)などの結合剤;ジカルシウムホスフェート(dicalcium phosphate)などの賦形剤;トウモロコシデンプン又はサツマイモデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム(magnesium stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、フマル酸ステアリルナトリウム(sodium stearyl fumarate)又はポリエチレングリコールワックス(polyethylene glycol wax)などの潤滑剤などを含ませることが可能であり、カプセル剤形の場合には上述した物質以外にも脂肪油などの液体担体などを更に含ませることができる。
【0041】
本様態の組成物を非経口投与する方法として、例えば静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与又は局部投与などを利用することが可能であり、前記組成物を疾患部位に塗布又は噴霧する方法も利用することができるが、これらに制限されることはない。
【0042】
前記非経口投与用の剤形として、例えば皮下注射、静脈注射又は筋肉内注射などの注射用形態;坐剤注入方式;又は呼吸器を通して吸入を可能とするエアロゾル剤などのスプレー用として製剤化することができるが、これらに制限されることはない。前記注射用剤形として製剤化するためには、本様態の組成物を安定剤又は緩衝剤とともに水に混合した溶液又は懸濁液として製造し、これをアンプル(ampoule)又はバイアル(vial)の単位投与用に製剤化することができる。前記エアロゾル剤などのスプレー用として剤形化する場合、水分散された濃縮物又は湿潤粉末が分散できるように、推進剤などを添加剤とともに配合することができる。
【0043】
本様態の前記鳥類病原性大腸菌による感染性疾病の予防又は治療用組成物の適切な塗布、噴霧又は投与量は、前記組成物の製剤化方法、投与方式、投与時間及び/又は投与経路と、投与対象となる動物の年齢、体重、性別、疾病症状の程度、摂取する食べ物、排泄速度などの要因によって可変的であり、一般的に熟練した獣医師なら目的とする治療に効果的な投与量を容易に決定して処方することができる。
【0044】
本発明の更に他の一様態によれば、前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む抗生剤が提供される。
【0045】
本明細書で用いられる用語「抗生剤」は、薬剤の形態としてヒトを含む対象体に提供され、菌を死滅させることが可能な効能を有する製剤を意味し、防腐剤、殺菌剤及び抗菌剤を総称する概念である。
【0046】
本様態の前記バクテリオファージΦCJ24又はこれが含まれた組成物を有効成分として含む抗生剤は、従来の抗生剤に比べて鳥類病原性大腸菌に対する特異性が非常に高いため、益菌は殺さずに特定の病原菌のみを死滅させることができ、薬物耐性を誘導しないため、従来の抗生剤に比べて製品寿命を延長できる効果がある。
【0047】
本発明の更に他の一様態によれば、前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む鳥類用飼料添加剤又は飲用水添加剤が提供される。
【0048】
前記鳥類用飼料添加剤又は飲用水添加剤の適用対象である「鳥類」は、特に限定されるものではなく、本様態において、前記鳥類は、具体的には家禽類であってもよい。
【0049】
本明細書で用いられる用語「家禽類」は、家畜の中で鳥類に属する動物を総称する概念である。前記家禽類は特に限定されないが、鶏、アヒル及び七面鳥などからなる群より選択される一つ以上を含むことができる。
【0050】
本様態の前記鳥類用飼料添加剤又は飲用水添加剤は、前記バクテリオファージΦCJ24又はこれを含む組成物を飼料添加剤又は飲用水添加剤の形態として別に製造して飼料又は飲用水に混合する方式で使用するか、前記バクテリオファージΦCJ24又はこれを含む組成物を、飼料又は飲用水を製造する際に、直接添加する方式で使用することができる。
【0051】
本様態の前記飼料添加剤又は飲用水添加剤として用いられる前記バクテリオファージΦCJ24又は前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む組成物は、液状又は乾燥状態であり、例えば、乾燥した粉末形態であってもよい。
【0052】
例えば、本発明のバクテリオファージΦCJ24は、粉末形態として飼料添加剤重量の0.05〜10重量%、好ましくは、0.1〜2重量%の割合で混合され得る。
【0053】
本様態の前記飼料添加剤又は飲用水添加剤を乾燥した粉末形態として製造するための乾燥方法は、特に制限されず、当該技術分野における通常的な方法を用いることができる。前記乾燥方法の非制限的な例として、通風乾燥、自然乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥などがある。これらは単独又は二つ以上の方法を共に利用する方式で行うことができる。
【0054】
本様態の前記飼料添加剤又は飲用水添加剤には、非病原性の他の微生物を追加的に添加することができる。添加できる前記微生物の非制限的な例として、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素及び/又は糖転換酵素の生産が可能であるバチルスズ・ブチリス(Bacillus subtilis)などの枯草菌;牛の胃のような嫌気的条件で生理的活性及び有機物分解能を有するラクトバチルス菌株(Lactobacillus sp.)などの乳酸菌;家畜の体重と牛乳の産乳量を増加させ飼料の消化吸収率を高める効果があるアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)などの糸状菌;及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母;からなる群より選択され得る。これらは、単独又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0055】
本様態の前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む飼料添加剤又は飲用水添加剤は、必要に応じて他の添加剤を更に含ませることができる。使用できる前記添加剤の非制限的な例として、飼料又は飲用水の品質低下を防止するために添加する決着剤、油化剤、保存剤など;飼料又は飲用水の効用増大のため添加するアミノ酸剤、ビタミン剤、酵素剤、生菌剤、香味剤、非タンパク質態窒素化合物、ケイ酸塩剤、緩衝剤、着色剤、抽出剤又はオリゴ糖などがあり、その他飼料混合剤などが含まれ得る。これらは単独で使用されてもよいし、2種類以上が共に添加されてもよい。
【0056】
本発明の前記飼料添加剤は、飼料100重量部に対して、0.05〜10重量部で含まれることが好ましく、0.1〜2重量部で含まれることがより好ましい。本発明の前記飲用水添加剤は、飲用水100重量部に対して、0.0001〜0.01の重量部で含まれることが好ましく、0.001〜0.005重量部で含まれることがより好ましい。前記範囲内では、鳥類病原性大腸菌に対するバクテリオファージΦCJ24の活性が十分に発揮できるという利点がある。
【0057】
本発明の更に他の一様態によれば、前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む飼料添加剤又は飲用水添加剤を飼料又は飲用水に添加するか、前記バクテリオファージΦCJ24を飼料又は飲用水に直接添加して製造する飼料又は飲用水が提供される。
【0058】
本様態で用いられる飼料は、特に制限されず、当該技術分野における通常的な飼料を用いることができる。前記飼料の非制限的な例として、穀物類、根果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、デンプン類、フクベ類又は穀物副産物類などの植物性飼料;タンパク質類、無機物類、油脂類、鉱物性類、 単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類又は飲食物などの動物性飼料などがある。これらは、単独または2種類以上を混合して使用することができる。
【0059】
本様態で用いられる飲用水は、特に制限されず、当該技術分野における通常的な飲用水を用いることができる。
【0060】
本発明の更に他の一様態によれば、前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む、消毒剤又は洗浄剤が提供される。前記消毒剤又は洗浄剤の剤形は特に制限されず、当該技術分野で知られた剤形で製造されて使用され得る。
【0061】
前記消毒剤は、鳥類病原性大腸菌を除去するために撒布することができ、鳥類の活動領域、屠畜場、へい死地域、調理場所又は調理設備などに撒布することができるが、これらに制限されることはない。
【0062】
前記洗浄剤は、鳥類病原性大腸菌に暴露されたか、暴露される可能性のある鳥類の皮膚表面又は身体の各部位などを洗浄する用途で用いることができるが、これらに制限されることはない。
【0063】
本発明の更に他の一様態によれば、前記バクテリオファージΦCJ24又はこれを有効成分として含む組成物を利用し、鳥類病原性大腸菌による感染性疾病を予防又は治療する方法が提供される。
【0064】
本発明の更に他の一様態によれば、鳥類病原性大腸菌に感染したか感染する恐れがある鳥類に前記バクテリオファージΦCJ24又は前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む組成物を薬学的に有効な量で投与する段階を含む。前記バクテリオファージΦCJ24又はこれを含む組成物の適切な1日当たりの総使用量は、正しい医学的判断の範囲内で医師によって決定され、これは当該技術分野における通常の知識を有する者において自明なことである。
【0065】
特定の鳥類に対する前記バクテリオファージΦCJ24又は前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む組成物の具体的な薬学的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、該当個体の年齢、体重、一般的な健康状態、性別又は食餌はもちろん、前記バクテリオファージΦCJ24又はこれを含む組成物の投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間などを考慮して決定することが可能であり、同時又は異時において共に使用される薬物とその他の組成物の成分などをはじめとした多数の因子及び医薬分野においてよく知られている類似因子にしたがって可変的である。
【0066】
本発明の前記バクテリオファージΦCJ24又は前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む組成物は、薬学的製剤の形態として鳥類に噴霧式鼻腔投与、鳥類の飼料又は飲用水に直接添加しこれを摂食させる方式で投与することが可能であり、飼料添加剤又は飲用水添加剤の形態で飼料又は飲用水に混合して投与することができる。
【0067】
本様態の前記バクテリオファージΦCJ24又は前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む組成物の投与経路及び投与方式は、特に制限されず、目的とする該当組織に前記バクテリオファージΦCJ24又はこれを含む組成物を到達させることができる限り、任意の投与経路及び投与方式で行うことができる。すなわち、前記バクテリオファージΦCJ24又は前記バクテリオファージΦCJ24を有効成分として含む組成物は、経口又は非経口の様々な経路を介して投与することが可能であり、その投与経路の非制限的な例として、口腔、直腸、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、経皮、鼻側内又は吸入などに投与され得る。
【0068】
以下、実施例をもって本発明をより詳しく説明する。ただし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されることはない。
【0069】
[実施例1]
鳥類病原性大腸菌に感染するバクテリオファージの分離
【0070】
<実施例1−1>
バクテリオファージスクリーニング及び単一バクテリオファージの分離
韓国忠清道清原郡にある養鶏農場で鶏の糞便から得た試料50mlを4000rpmで10分間遠心分離した後、その上澄み液を0.45μmのフィルターで濾過して、試料液を用意し、これを利用してソフトアガーオーバーレイ(soft agar overlay)方法を行った。前記ソフトアガーオーバーレイ方法は、トップアガー(top−agar、0.7%の寒天を利用して固体培地上に付着させたもの)で成長した宿主細胞を利用してバクテリオファージが溶菌することを観察する方法をいう。
【0071】
具体的には、建国大学校獣医科大学で入手した鳥類病原性大腸菌(E10−4)の振とう培養液(OD
600=2)150μlと、10×LB培地(トリプトファン(tryptophane))10g/l;酵母抽出物5g/l;NaCl(10g/l)2mlに前記試料液18mlを混合し、これを30℃で18時間培養した後、前記培養液を4000rpmで10分間遠心分離し、その上澄み液を0.45μmのフィルターで濾過した。その後、LB平板培地上に0.7%(w/v)寒天3mlと鳥類病原性大腸菌(E10−4)振とう培養液(OD
600=2)150μlの混合液を注いで固まった後、その上に試料液10μlを滴下し、30℃で18時間培養して、溶菌斑の形成を確認した。
【0072】
一つの溶菌斑には一種類のバクテリオファージが存在すると知られているため、形成された前記溶菌斑から単一バクテリオファージを分離した。具体的には、前記溶菌斑を400μlのSM溶液(NaCl 5.8g/l;MgSO
47H
2O 2g/l;1M Tris−HCl(pH7.5) 50ml)に加えて室温で4時間放置し、バクテリオファージ溶液を得た。
【0073】
続いて、前記バクテリオファージ溶液100μlを0.7%(w/v)寒天12ml及び鳥類病原性大腸菌(E10−4)振とう培養液(OD
600=2)500μlと混合し、150mm直径のLB平板培地を利用したソフトアガーオーバーレイ方法を行い、完全に溶菌するまで培養した。培養が終わった後、前記LB平板培地に15mlのSM溶液を加えて室温で4時間放置し、バクテリオファージ溶液を得た。
【0074】
前記溶液を回収し、1%(v/v)クロロホルムを加えた後、10分間混合し4000rpmで10分間遠心分離して上澄み液を得て、前記上澄み液を0.45μmのフィルターで濾過し、最終試料を得た。
【0075】
<実施例1−2>
バクテリオファージの大量培養及び精製
実施例1−1で得た前記バクテリオファージを、鳥類病原性大腸菌(E10−4)を利用して大量培養し、これからバクテリオファージを精製した。
【0076】
具体的には、鳥類病原性大腸菌(E10−4)を振とう培養して1.0×10
10cfuとなるように分注し、4000rpmで10分間遠心分離した後、これを4mlのSM溶液に再浮遊させた。ここに前記バクテリオファージを1.0×10
6pfuで接種し、MOI(multiplicity of infection)=0.0001で滴定した後、常温で20分間静置した。
【0077】
続いて、これを150mlのLB培地に接種し、30℃で6時間培養した。培養が終了した後、最終体積の1%(v/v)となるようにクロロホルムを添加し、20分間撹拌し、制限酵素であるDNaseIとRNase Aの各々を最終濃度が1μg/mlとなるように添加し、30℃で30分間静置した。その後、最終濃度が各々1Mと10%(w/v)となるように塩化ナトリウムとポリエチレングリコール(polyethylene glycol, PEG)を加えて4℃で3時間更に静置し、4℃及び12000rpmで20分間遠心分離して沈殿物を得た。
【0078】
得られた前記沈殿物を5mlのSM溶液で懸濁させ20分間室温で静置した後、クロロホルム1mlを加えて撹拌し、4℃及び4000rpmで20分間遠心分離して上澄み液を得た。前記上澄み液を0.45μmのフィルターで濾過した後、グリセロール密度勾配法(密度:40%、5%グリセロール)を利用した超遠心分離(35000rpm、1時間、4℃)を行ってバクテリオファージを精製した。
【0079】
本発明者らは農場の糞便サンプルから試料を採取し、鳥類病原性大腸菌(Avian Pathogenic E. coli, APEC)に対する特異的死滅能を有する前記バクテリオファージを「BacteriophageΦCJ24」と命名し、2013年10月25日韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、ソウル市西大門区弘済1洞361−221)に寄託番号第KCCM11462P号で寄託した。
【0080】
<実施例2>
ΦCJ24の形態観察
前記実施例1で精製したバクテリオファージΦCJ24を0.01%のゼラチン溶液に希釈し、2.5%グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)溶液で固定した。これを炭素コーティングした雲母板(carbon−coated mica plate (約2.5mm×2.5mm))に滴下し、10分間適応させた後、滅菌蒸留水で洗浄した。
【0081】
その後、炭素被膜(carbon film)をカッパーグリッド(copper grid)に挟んで2%ウラニルアセテート(uranyl acetate)で60秒間染色して乾燥した後、透過電子顕微鏡(JEM−1011、80kV、倍率×200000)で検鏡した(
図1)。
【0082】
図1は、バクテリオファージΦCJ24の透過電子顕微鏡写真であり、バクテリオファージΦCJ24は、形態学的に正二十面体のヘッド(isometric capsid)と収縮性のないテール(long non−contractile tail)で構成された形態型(morphotype)B1のサイフォウイルス科(Siphoviridae)に属することが分かった。
【0083】
<実施例3>
ΦCJ24の全ゲノムDNAのサイズ分析
前記実施例1で精製したバクテリオファージΦCJ24からゲノムDNAを抽出した。
【0084】
具体的には、精製されたバクテリオファージΦCJ24の培養液に20mMのEDTA(Ethylenediaminetetraacetic acid)、50μg/mlのタンパク質分解酵素(proteinase K)、及び0.5%(w/v)のSDS(sodium dodecyl sulfate)を加えて、50℃で1時間静置し、同一体積のフェノール(pH8.0)を加えて撹拌した後、室温及び12000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を得た。
【0085】
前記上澄み液を同一体積のPC(フェノール:クロロホルム=1:1)と混合し、室温及び12000rpmで10分間遠心分離して、上澄み液を得た。前記上澄み液を同一体積のクロロホルムと混合し、室温及び12000rpmで10分間遠心分離して、その上澄み液を得た。前記上澄み液に3Mの酢酸ナトリウム(sodium acetate)を全体体積に対して10%(v/v)となるように加えて混合し、2倍体積の冷たい95%エタノールを更に加えて混合した後、−20℃で1時間静置した。
【0086】
続いて、0℃で10分間12000rpmで遠心分離した後、上澄み液を除去して沈殿物を得た後、これに50μlのTE緩衝液(Tris−EDTA、pH8.0)を加えて溶解させた。前記抽出したDNAを10倍希釈しOD
260で吸光度を測定し、濃度を測った。
【0087】
その後、1μgのDNAを1%PFGE(pulse−field gel electrophoresis)アガロースゲルにロードし、バイオラッド(BIORAD)PFGEシステムの7番のプログラム(サイズ範囲25kb〜100kb;スイッチタイムランプ(switch time ramp)0.4秒〜2.0秒、線形(linear shape);順方向電圧(forward voltage)180V;逆方向電圧(reverse voltage)120V)を利用して常温で20時間展開させた(
図2)。
【0088】
図2は、バクテリオファージΦCJ24のゲノムDNAの電気泳動写真であり、バクテリオファージΦCJ24のゲノムDNAは、約53kbpのサイズであることを確認することができた。
【0089】
<実施例4>
ΦCJ24のタンパク質パターンの分析
10
11pfu/mlタイター(titer)の精製されたバクテリオファージΦCJ24溶液15μlと、5×SDS試料溶液3μlとを混合し、5分間沸騰させた後、12%SDS−PAGEを行った(
図3)。
【0090】
図3は、バクテリオファージΦCJ24を対象として行ったSDS−PAGE結果を表す電気泳動写真であり、約10.3kDa、12.5kDa、15.1kDa、43kDa、49.3kDa、60.4kDa、94.9kDaサイズの主要タンパク質を確認することができた。
【0091】
<実施例5>
ΦCJ24の遺伝的特性の分析
前記実施例1で精製されたバクテリオファージΦCJ24の遺伝的特性を調べるため、バクテリオファージΦCJ24のDNAを遺伝子分析機器であるFLXチタニウムシークエンサー(titanium sequencer)(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製)を用いて分析した。株式会社マクロジェン(Macrogen Inc.)で、GSとデ・ノボアセンブリソフトウェア(de novo assembler software)(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製)を用いて遺伝子の組換えを行った。オープンリーディングフレーム(open reading frame)はGeneMArk.hmm、Glimmer v3.02及びFGENESBソフトウェアを用いて行われた。BLASTPとインタープロスキャン(InterProScan)プログラムを用いてオープンリーディングフレームの名称を命名(annotation)した。
【0092】
前記バクテリオファージの塩基配列は、従来に報告されたバクテリオファージ(Escherichia phage phiEB49, Escherichia phage KBNP21)の塩基配列と様々な類似性を示したが、全てのフラグメントが100%一致するバクテリオファージは存在しなかったことを確認した。これにより、前記バクテリオファージは、新たに分離されたバクテリオファージであることを確認することができた。
【0093】
表1は、バクテリオファージΦCJ24の塩基配列と、前記従来に報告された2種類のバクテリオファージを解読した塩基配列との相同性を比較した結果を示す。
【0095】
前記製造されたバクテリオファージΦCJ24のDNAを、遺伝子分析機器を用いて分析した塩基配列の一部結果は、配列表フリーテキスト上、配列番号1及び2である。
【0096】
<実施例6>
pHによるΦCJ24の安定性の調査
バクテリオファージΦCJ24が胃腸内の条件と同様に低いpHで安定性を保つことができるかを確認するため、様々なpH範囲(pH2.5、3.0、3.5、4.0、5.5、6.5、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0)で安定性の調査実験を行った。
【0097】
実験のための様々なpH溶液(酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH4.0、pH4.5、pH5.0、pH5.5)、クエン酸ナトリウム緩衝溶液(pH2.5、pH3.0、pH3.5)、リン酸ナトリウム緩衝溶液(pH6.5及びpH7.0)、Tris−HCl溶液(pH8.0、pH9.0、pH10.0、pH11.0))を各々0.2Mで製造した。
【0098】
前記各pH溶液180μlと、2.0×10
11pfu/mlタイターのバクテリオファージ溶液20μlとを混
ぜた後、2時間常温で静置した。対照群は同一方法で2.0×10
11pfu/mlバクテリオファージ溶液20μlをSM溶液180μlに混ぜた後、2時間常温で静置した。その後、これらを段階希釈し、ソフトアガーオーバーレイ方法を利用して各段階の希釈液を10μlずつ滴下した後、30℃で18時間培養し、溶菌の有無によってタイターを測定した(
図4)。
【0099】
図4は、バクテリオファージΦCJ24の耐酸性実験結果を表したものである。
図4に示した通り、対照群に比べてバクテリオファージΦCJ24は、pH3.5からpH11.0まで活性を失うことなく安定的であることが確認された。
【0100】
<実施例7>
温度によるΦCJ24の安定性の調査
バクテリオファージの製品剤形の中で飼料添加剤として利用した場合、バクテリオファージの剤形過程において熱が発生する可能性があり、熱に対する安定性を確認するため下記の実験を行った。
【0101】
具体的には、1.65×10
11pfu/ml濃度のバクテリオファージΦCJ24の溶液100μlを、37℃、45℃、53℃、60℃で、10分、30分、60分、120分静置した後、得られた実験培養液を段階希釈し、ソフトアガーオーバーレイ方法で各段階の希釈液を10μlずつ滴下した後、30℃で18時間培養して、溶菌の有無によってタイターを測定した(
図5)。
【0102】
図5は、バクテリオファージΦCJ24の耐熱性実験の結果を表したものである。
図5に示した通り、バクテリオファージΦCJ24は、53℃においては120分暴露されるまで1ログ(log)以上減少せず、60℃においては時間の経過に従って活性が減少した。
【0103】
<実施例8>
乾燥に対するΦCJ24の安定性の調査
バクテリオファージの製品剤形の中で飼料添加剤として利用する場合、バクテリオファージの剤形過程で乾燥過程があり、乾燥条件に対するΦCJ24の安定性を確認するため、下記の実験を行った。
【0104】
耐熱性確認実験によって導出した結果に基づいて、真空濃縮遠心分離機(SpeedVac concentrator)を利用し、乾燥実験を行った。2.5×10
10pfu/mlタイターのΦCJ24の溶液200ulを2時間60℃で真空乾燥し、得られたペレット(pellet)をSM溶液200ulに入れて4℃で1日間完全に再浮遊させた後、タイターを測定した(
図6)。
【0105】
図6は、バクテリオファージΦCJ24の耐乾性実験結果を表したものである。
図6に示した通り、乾燥後に、元のタイターと相対的な安定性を比較すると、60℃で2時間乾燥した場合、活性が約1ログ(log)減少することが分かった。
【0106】
<実施例9>
野生分離株の鳥類病原性大腸菌に対するΦCJ24の感染範囲の調査
バクテリオファージΦCJ24が、実験で用いられた鳥類病原性大腸菌(E10−4)以外に、建国大学校獣医科大学で分離した野生分離鳥類病原性大腸菌46株、検疫院で分離した鳥類病原性大腸菌10株、全北大獣医科大学で分離した鳥類病原性大腸菌7株、コミファーム農場で分離した病性鑑定鳥類病原性大腸菌26株に対して溶菌活性を有するか否かについて確認した。
【0107】
具体的には、各菌株の振とう培養液(OD
600=2)150μlを混ぜてソフトアガーオーバーレイ方法を行い、10
9pfu/mlタイターのバクテリオファージΦCJ24溶液を10μlずつ滴下した後、30℃で18時間培養して溶菌斑形成の有無を観察した(表2)。前記結果は表2に示した。
【0109】
表2で示した通り、バクテリオファージΦCJ24は、一般の養鶏農家で鳥類大腸菌症の原因菌である鳥類病原性大腸菌(O−1、O−78血清型を含む)に対して効果的な感染能を示すことを確認することができた。
【0110】
また、前記O−78血清型は一般的に養鶏農場で分離される鳥類病原性大腸菌のうち、最も頻繁に検出される菌株であると知られている。