(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
多くの場合、フィルム状の薄状物はリール状に巻回され流通し、これを用いる製造現場等においては目的に応じて所定長さ切り出して使用している。
【0003】
例えば、商品等を包装するために薄状物を用いる場合には商品等を囲繞可能な程度の比較的大きな矩形状に切り出せる幅広なリールを用いたり、また、商品や部品等の所定箇所に薄状物を貼着させて該箇所を保護したり等する場合には帯状で一側面に粘着層を有する幅狭なリールから所望する長さに切り出して使用される。
【0004】
また、リール状の薄状物は手作業により切り出して所定の作業を行う場合もあるが、対象となる商品や部品等が多い場合や、正確な長さや大きさに切り出す必要がある場合には装置による自動化が図られる。
【0005】
自動化においては、例えば、特許文献1に蛍光管に所定長さのアルミニュームテープを貼着する技術が開示されており、本技術によれば、巻回されたテープリールから送出された一側面に粘着層を有する帯状のアルミニュームテープAは、該テープAを短辺方向から挟持可能な3つのチャック1,6,8を有し、最もテープリール側に配置され該テープの長辺方向に進退自在の送りチャック1が該テープAの先端部を露出させた状態で挟持したまま固定配置された固定チャック6近傍に移動し、固定チャック6の反対側においては固定チャック6よりも更にテープリールから離れた位置に配置され該テープの長辺方向に進退自在の可動チャック8が固定チャック6近傍に移動する。
【0006】
すなわち、該テープAの先端部を露出させた状態で挟持する送りチャック1と、可動チャック8は、固定チャック6近傍の左右側に移動する。このとき、固定チャック6と可動チャック8の上下の爪6a,6b,8a,8bは上下方に拡開しており、該テープAの先端部は固定チャック6が障害となることなく可動チャック8の上下の爪8a,8bで挟持することができる。
【0007】
該テープAを挟持した可動チャック8は固定チャック6から離反する方向に移動すると共に、送りチャック1はテープリール側に戻り、その後、固定チャック6により該テープAを挟持する。
【0008】
固定チャック6と可動チャック8により挟持された該テープAは、固定チャック6の近傍でテープリール側に配設されたカッターにより切断された後、固定チャック6と可動チャック8の上側の爪6a,8aが各々内側に回動し、他の機構により蛍光管Bの真上に移動した後、該テープAを蛍光管Bの側面に押し付け、固定チャック6と可動チャック8の上下の爪6a,6b,8a,8bを開放させることで蛍光管Bに該テープAを貼着させることができる。
【0009】
また、例えば、特許文献2には折詰弁当40の側面にテープTにより割箸42を貼り付ける技術が開示されており、本技術によれば、巻回されたテープリールから送出された一側面に粘着層を有する帯状のテープTは、ローラーガイド部10により送出され、テープTの長辺方向でテープTに向かって進退自在のテープ引出し機構28がローラーガイド部10近傍に移動しテープ引出し機構28の2つの爪32,34によりにテープTの先端部を正面から挟持したまま離反することで切り出すための所定長さを確保する。
【0010】
その後、テープ搬送機構20に形成された2つの搬送ローラー22,24が該テープTの粘着側から付勢しつつローラーガイド部10近傍に配設されたカッター18により該テープTが切断され、テープ引出し機構28の2つの爪32,34を開放した後、折詰弁当40の側面に載置された割箸42に対してテープ搬送機構20により割箸42が折詰弁当40に固定される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態に係る送り装置の要旨は、長尺物を順次送り出す一対の把持機構からなる送り装置であって、把持機構は、長尺物を短手方向から挟持するよう配設すると共に、長尺物の長手方向及び短手方向に進退自在に構成し、しかも、把持機構は、長尺物の長手方向に対し交互に前後移動自在に構成したことを特徴とする。すなわち、長尺物を効率よく送出する送り装置の提供を図ろうとするものである。
【0028】
また、本発明の実施形態に係る送り切出し装置の要旨は、送り装置と、切断部と、からなり、長尺物を送りながら先端部から順次切出す送り切出し装置であって、切断部は、把持機構の一方が長尺物の先端部を挟持し、他方が中途部を挟持した際、2つの把持機構の間であって他方の把持機構の近傍に配設したことを特徴とする。すなわち、長尺物を効率よく送出し切り出す送り切出し装置の提供を図ろうとするものである。
【0029】
以下、本発明に係る送り装置、及び送り切出し装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。また、本説明中において左右同一又は左右対称の構造や部品については、原則として同一の符号を付し、左右何れか一方のみを説明して、他方については説明を適宜省略する。
【0030】
また、本説明中で長尺物は下面に粘着層を有するフィルム状で帯状の薄状物として説明しているが、材質や厚み、形状や大きさ、粘着層の有無等、本実施形態に記載の対象物に限定されるものではなく、例えば、電気配線やロープ、リボン等であってもよい。
【0031】
[送り装置及び送り切出し装置]
本発明の実施形態に係る送り装置102は、
図1、
図3(a)、(b)に示すように、長尺物Tを順次送り出す一対の把持機構1(1a,1b)からなる送り装置102であって、把持機構1は、長尺物Tを短手方向から挟持するよう配設すると共に、長尺物Tの長手方向及び短手方向に進退自在に構成し、しかも、把持機構1は、長尺物Tの長手方向に対し交互に前後移動自在に構成している。
【0032】
また、把持機構1a,1bは、長尺物Tを介して対向配置している。
【0033】
また、送り切出し装置101は、上述した送り装置102と、切断部106(
図1では省略)と、からなり、長尺物Tを送りながら先端部から順次切出すものであり、切断部106は、把持機構の一方1aが長尺物Tの先端部を挟持し、他方1bが中途部を挟持した際、2つの把持機構1a,1bの間であって他方の把持機構1bの近傍に配設したものである。
【0034】
また、送り切出し装置101には支持移載部115を備え、支持移載部115は、本体部116の先端に支持部118を有し、長尺物Tを支持部118により支持自在に構成すると共に、本体部116は少なくとも長尺物Tに対して近接・離反自在となるよう構成している。
【0035】
なお、本実施形態では、支持部118は本体部116の先端面117に形成され、真空吸着により長尺物である薄状物Tを真空吸着自在に構成しているが、支持移載部115は送出する対象物により機械的に把持したり等、種々の変形・変更が可能である。
【0036】
具体的には、送り切出し装置101は、送り装置102と移載装置110とで構成され、送り装置102には一対の把持機構1a,1bと切断部106を備え、移載装置110には支持移載部115を備えている。
【0037】
送り装置102には、帯状の薄状物TからなるリールRがセットされ、リールRはモーターの回動により薄状物Tを送出するが、送出のタイミングは、他の箇所に配設されたセンサー等で薄状物Tが把持機構1a,1bにより挟持されている状況なのか等の検知によりなされ、送出された薄状物Tは支持ローラー103により所定の張力が付加されつつ薄状物Tの送出高さを規定する。
【0038】
一対の把持機構1a,1bは、支持ローラー103により水平方向に送出される薄状物Tの高さが水平方向を維持したまま薄状物Tを把持可能なように配設している。
【0039】
また、一対の把持機構1a,1bは、移動機構104を構成するスライドベアリングやエアシリンダー、モーター等の別途の手段により薄状物Tの長手方向及び短手方向に進退自在に構成している。
【0040】
なお、本実施形態では、移動機構104は、把持機構1a,1bの下部側と連結したL字状のステーが送り装置102の下部側に内設されたスライドベアリング等と連結し、把持機構1a,1bを任意の方向に移動自在に構成しているが、移動機構104は本実施形態に限定されるものではなく、例えば、スライドベアリング等の移動機構104を送り装置102の安定した上端面に配設し、把持機構1a,1bをその上に連結することでステーを省略してガタの少ない構造にしたり等、本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。
【0041】
また、切断部106もスライドベアリングやエアシリンダー、モーター等の別途の手段により上下及び前後に可動自在に構成し、薄状物Tを短手方向から切断することができるよう構成している。
【0042】
移載装置110は、上下動する本体部116を備えた支持移載部115を水平方向に回動させ、切り出した薄状物Tを所定箇所に移載するものであり、具体的には、水平方向に伸延するアーム部111の一方の端部側に支持移載部115を配設し、他方の端部側においては鉛直上方に軸心を有するモーターのモーター軸112と連結している。
【0043】
このように構成することで、切り出された薄状物Tを支持部118で吸着したままモーター軸112の回動により作業台Sの上に載置された製品Pや箱内に薄状物Tを貼着したり収容させることができる。
【0044】
把持機構1は、
図2(a)、(b)、(c)に示すように、挟持部2と基部44とで構成し、挟持部2は、薄状物Tの挟持の際に対向する一対の第一爪部57と第二爪部31と、からなり、基部44は、第一爪部57と第二爪部31の少なくとも一方を動作自在とする駆動機構45からなる。
【0045】
また、把持機構1は、長尺物Tを挟持できれば如何なる構成であってもよく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。
【0046】
なお、送り装置102や移載装置110の駆動方法や構成については本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。
【0047】
以下、送り切出し装置101の動作について説明する。
【0048】
図3(a)は送り切出し装置101の主要部の正面図であり、
図3(b)は送り切出し装置101の一対の把持機構1a,1bとその周辺の平面図であり、把持機構1a,1bは薄状物Tを介して対向配置され、一方の把持機構1aが薄状物Tの端部を挟持し、他方1bが薄状物Tの中途部を挟持している。
【0049】
一対の把持機構1a,1bで挟持された薄状物Tに対して支持移載部115の本体部116が下降し、本体部116の支持部118により薄状物Tを吸着する。
【0050】
また、切断部106を構成するカッター刃107は、他方の把持機構1bの近傍に配設され、具体的には薄状物Tよりも下方で薄状物Tの後方に配設され、切断部106が上昇して挟持された薄状物Tを奥側から手前側に切断した後所定位置に戻る。
【0051】
切断された薄状物Tは、本体部116の上昇と共に支持移載部115により所定箇所へ移載される。
【0052】
本実施形態に係る送り切出し装置101は、上述した動作を一対の把持機構1a,1bが交互に位置を変えることで連続して薄状物Tを送出し切り出すことができるものである。
【0053】
このような動作について平面図による連続動作を示した
図4(a)〜(g)を用いて更に具体的に詳述する。
【0054】
まず、
図4(a)に示すように、他方の把持機構1bが一方の把持機構1aと干渉しないように手前に移動(A)し、その後、薄状物Tを挟持した一方の把持機構1が右側に移動(B)すると同時に、他方の把持機構1bが左側に移動(C)する。
【0055】
次に、
図4(b)、(c)に示すように、他方の把持機構1が奥側の薄状物T側に移動(D)して薄状物Tの中途部を挟持する。
【0056】
その後、
図4(d)に示すハッチング部Kを、図示しない本体部116により上方から吸着した後、
図4(e)に示すように、切断部106が上昇し挟持された薄状物Tを奥側から手前側に移動(E)して切断した後所定位置に戻ると共に、
図4(f)に示すように、切断された薄状物Tは、一方の把持機構1aが薄状物Tを開放し、図示しない本体部116が切断された薄状物Tを吸着したまま上昇して支持移載部115により所定箇所へ移載する。
【0057】
その後、
図4(g)に示すように、一方の把持機構1aが他方の把持機構1bと干渉しないように奥側に移動(F)し、その後、薄状物Tを挟持した他方の把持機構1bが右側に移動(G)すると同時に、一方の把持機構1aが左側に移動(H)して、順次上述の動作を繰り返す。
【0058】
このようにして帯状の薄状物Tを効率よく送り出して切り出すことが可能となる。
【0059】
次に、本実施形態の変形例に係る送り切出し装置121について簡単に説明する。
【0060】
変形例に係る送り切出し装置121は、
図5に示すように、一対の把持機構1a,1bを薄状物Tの長手方向の一方の側に配設しており、その他の構成は上述した送り切出し装置101と同様である。
【0061】
図6(a)は変形例に係る送り切出し装置121の主要部の正面図であり、
図6(b),(c)は送り切出し装置121の一対の把持機構1a,1bとその周辺の平面図であり、2つの把持機構1a,1bは薄状物Tの奥側に配設され、一方の把持機構1aが薄状物Tの端部を挟持し、他方1bが薄状物Tの中途部を挟持している。
【0062】
一方の把持機構1aは、a→b→c→d→e→fの順で可動し、他方の把持機構1bは、u→v→w→x→w→zの順で可動する。
【0063】
すなわち、一方の把持機構1aは、薄状物Tを挟持して水平方向を保ったまま長手方向に沿って右側に移動(a)し、薄状物Tが切り出された後は、挟持開放して更に奥側に移動(b)する。
【0064】
その後、上方に移動(c)し、更にそのまま左側に移動(d)した後、下降(e)してから手前に移動(f)して薄状物Tを再び挟持する。
【0065】
また、他方の把持機構1bは、薄状物Tが切り出された後、挟持開放して奥側に移動(u)し、その後、下方に移動(v)し、更にそのまま左側に移動(w)する。
【0066】
その後、上昇(x)してから手前に移動(y)して薄状物Tを再び挟持し、薄状物Tが切り出された後、薄状物Tを挟持しながら水平方向を保ったまま長手方向に沿って右側に移動(z)する。
【0067】
この場合、薄状物Tを互いに挟持している位置は、一方の把持機構1aが右側に移動(a)した際、他方の把持機構1bが手前に移動(y)した位置であるか、他方の把持機構1bが右側に移動(z)した際、一方の把持機構1aが手前に移動(f)した位置であるかの何れかである。
【0068】
従って、切り出される薄状物Tの位置も常に2箇所となるため、これに応じて切断部106も2箇所に配設される。更に、支持移載部115による薄状物Tの吸着位置もこれに倣った位置で動作する。
【0069】
このように変形例に係る送り切出し装置121は構成しているが、一対の把持機構1a,1bが互いに干渉しない限り、2つの把持機構1a,1bを同様の位置で交互に移動させることもでき、この場合、切断部106は1つで足り、支持移載部115による薄状物Tの吸着位置も同様の位置で動作させることができる。
【0070】
以上、説明したように本実施形態に係る送り装置102及び送り切出し装置101,121は構成しており、長尺物Tを順次送り出す一対の把持機構1a,1bからなる送り装置102,121であって、把持機構1a,1bは、長尺物Tを短手方向から挟持するよう配設すると共に、長尺物Tの長手方向及び短手方向に進退自在に構成し、しかも、把持機構1a,1bは、長尺物Tの長手方向に対し交互に前後移動自在に構成したことより、一対の把持機構1a,1bが長尺物Tの持ち替え動作をすることなく交互に位置を変えながら連続稼働できるので効率よく長尺物Tを送出することができる。
【0071】
また、把持機構1は、長尺物Tを介して対向配置したことより、把持機構1a,1b同士の干渉を容易に回避できるので装置をシンプルに構成できる。
【0072】
また、送り切出し装置101では、把持機構1a,1bは、長尺物Tを介して対向配置したことより、把持機構1a,1bの互いの配設箇所が離間し、しかも、各々の移動機構104も離間するのでメンテナンス性を向上させることができる。
【0073】
また、送り装置102と、切断部106と、からなり、長尺物Tを送りながら先端部から順次切出す送り切出し装置101,121であって、切断部106は、把持機構1a,1bの一方1aが長尺物Tの先端部を挟持し、他方1bが中途部を挟持した際、2つの把持機構1a,1bの間であって他方の把持機構1bの近傍に配設したことより、一対の把持機構1a,1bが長尺物Tの持ち替え動作をすることなく交互に位置を変えながら効率よく長尺物Tを切り出すことができる。
【0074】
更に、送り切出し装置101と、支持移載部115と、からなり、長尺物Tを送りながら先端部から順次切出す送り切出し装置101,121であって、支持移載部115は、本体部116の先端に支持部118を有し、長尺物Tを支持部118により支持自在に構成すると共に、本体部116は少なくとも長尺物Tに対して近接・離反自在となるよう構成したことより、一対の把持機構1a,1bが長尺物Tの持ち替え動作をすることなく交互に位置を変えながら効率よく長尺物Tを切り出しつつ切り出した長尺物Tを所定箇所に移載することができる。
【0075】
次に、本実施形態に係る送り装置102及び送り切出し装置101,121に使用でき、しかも、特に帯状の薄状物Tに対して精度よく送出と切り出しが可能な把持機構1について具体的に説明する。
【0076】
本発明の実施形態に係る把持機構1は、
図7(a)、
図8(a)、(b)に示すように、挟持部2と基部44とで構成し、挟持部2は、長尺物Tの挟持の際に対向する一対の第一爪部3と第二爪部31と、からなり、基部44は、第一爪部3と第二爪部31の少なくとも一方を動作自在とする駆動機構45からなり、第一・第二爪部31は各々基部44側を接続端27とし、先端側6を開放端28とし、第一爪部3には、第一爪部3に形成された回動軸20に軸支され長尺物Tと当接する倣い座面19を有する倣い回動片18を備えることで、長尺物Tの挟持の際に倣い座面19が第二爪部31の当接面40に倣って第一・第二爪部3,31により長尺物Tと密着当接自在となるよう構成することができる。
【0077】
具体的には、挟持部2を構成する第一爪部3は倣い座面19を上方に向けて配置し、第二爪部31は当接面40を下方に向け第一爪部3の上方に離間して略平行に対向配置している。
【0078】
また、基部44が有する駆動機構45は、
図9(a)に示すように、圧縮エアーや電気を動力源とするエアシリンダー48によるピストン運動やモーターによる回動と連動したリンク機構等であり、第一・第二爪部3,31はこの駆動機構45により倣い座面19と当接面40とを近接・離反させることができるよう構成している。
【0079】
以下、各部について具体的に詳述する。
【0080】
図7、
図10、
図11に示すように、第一爪部3は、雌ネジ孔5を2箇所有しスライドベアリング等により基部44と摺動自在に連結する略T字状の矩形ブロック体で形成された第一凸片4と、第一凸片4の前部を下方から囲繞して嵌合する第一爪片7と、で構成している。
【0081】
第一爪片7は、基部44側の接続端27である第一凸片4から前方に伸延する平面視略L字状の矩形ブロック体で形成し、第一凸片4との嵌合部は凹状に形成して第一嵌合凹部8として底部に2箇所のボルト孔9を穿設し、先端側6には側面視略L字状に切削した回動片収納部10を形成し、回動片収納部10には倣い座面19が形成された倣い回動片18の上部が突出するよう倣い回動片18を配設している。
【0082】
また、第一凸片4と第一爪片7とは嵌合時に連通状態となるよう形成されたボルト孔9と雌ネジ孔5に下方からボルト17を螺着して一体の第一爪部3を形成する。このように第一凸片4の前部を第一嵌合凹部8に上方から嵌合し囲繞しつつボルト17により締結することで強固な接続を行うことができる。
【0083】
倣い回動片18は、上面を倣い座面19とした矩形状に形成し、倣い座面19と直交する一側面の下部側において該面から鉛直に立設した回動軸20を一体に形成している。また、回動軸20の先端近傍には第一爪片7と遊嵌接続自在とするCリング22を係合するための係合溝21を形成している。
【0084】
倣い座面19は、平滑であることも必要であるが、薄状物Tに負荷がかかるような使用においては略均一な複数の細かい凹凸を形成して挟持の際の摩擦力を高めることが望ましい。
【0085】
また、倣い回動片18の上部、少なくとも倣い座面19には付着防止処理を施している。付着防止処理は、例えば、トシカル(東京シリコーン(株)の登録商標)処理やフッ素コーティング等により表面改質を行うものであり、特に、薄状物Tが粘着性を有する場合に倣い回動片18への粘着剤の付着や開放時の薄状物Tの剥離性向上が図られる。
【0086】
なお、倣い回動片18の2箇所の下端角部23には面取り加工を施し、回動片収納部10の側壁15や底部16との接触を回避できるよう形成している。
【0087】
回動片収納部10は、垂直壁11と側壁15と底部16とで形成し、垂直壁11の外側にはテーパ部12を形成している。
【0088】
垂直壁11には、軸孔13と摺動回避部14を形成し、軸孔13は垂直壁11との直交方向に穿設して倣い座面19を上方に向けた倣い回動片18の回動軸20が挿通される。
【0089】
軸孔13の内径は、回動軸20の外径に限りなく等しく可能な限り小さく形成することで倣い回動片18のガタを最小に抑えることができ、また、回動軸20が立設する倣い回動片18の一側面から係合溝21までの距離も垂直壁11の厚みに限りなく等しく可能な限り短く形成することで倣い回動片18のガタを最小に抑えることができる。
【0090】
また、垂直壁11の上面から倣い座面19までの距離、すなわち、垂直壁11の上面から突出する倣い座面19までの距離も短く形成した方が倣い回動片18のガタを抑えることができる。しかし、挟持対象の薄状物Tが一側面に粘着層を有するものであった場合、粘着面が倣い座面19だけでなく垂直壁11にも接触し易くなり、垂直壁11への糊付着による薄状物Tの切り出し精度への影響が生じてしまうため、該距離は挟持対象の薄状物Tに応じて適宜柔軟に設定することが望ましい。
【0091】
摺動回避部14は、垂直壁11の内側において軸孔13よりも上部側を切削して形成することにより、倣い回動片18の側面と垂直壁11とに間隙が形成されることで倣い回動片18と垂直壁11との接触による摩擦を軽減でき、倣い回動片18の滑らかな回動が可能となる。
【0092】
しかも、挟持対象の薄状物Tが一側面に粘着層を有するものであった場合、垂直壁11への粘着面の接触を抑えることが可能となるばかりか、倣い座面19に付着した粘着剤が倣い回動片18の側面と垂直壁11との間隙に回り込むことで堆積物が増加し、堆積物により倣い回動片18の回動が阻害されることを抑えることが可能となる。
【0093】
また、垂直壁11の外側を面取りして形成したテーパ部12は、挟持対象の薄状物Tが一側面に粘着層を有するものであった場合、粘着面が垂直壁11に接触することを防止できる。なお、テーパ部12には、上述した付着防止処理を施すこともできる。
【0094】
また、倣い回動片18の可動範囲は、倣い回動片18の下底面24と下端角部23、回動片収納部10の底部16と側壁15との接触により規制されるため、これらの間隙距離は挟持対象の薄状物Tの材質や形状、大きさや厚み、及び使用する装置の性能等により適宜設定すればよい。
【0095】
次に、第二爪部31は、第一爪部3と同様に、雌ネジ孔33を2箇所有しスライドベアリング等により基部44と摺動自在に連結する略T字状の矩形ブロック体で形成された第二凸片32と、第二凸片32の前部を上方から囲繞して嵌合する第二爪片35と、で構成している。
【0096】
第二爪片35は、基部44側の接続端27である第二凸片32から前方に伸延する平面視略L字状で、正面視で水平方向から視認して略T字状の前半部34からなる矩形ブロック体で形成し、第二凸片32との嵌合部は凹状に形成して第二嵌合凹部36として上部に2箇所のボルト孔37を穿設している。
【0097】
第二凸片32と第二爪片35とは嵌合時に連通状態となるよう形成されたボルト孔37と雌ネジ孔33に上方からボルト41を螺着して一体の第二爪部31を形成する。このように第二凸片32の前部を第二嵌合凹部36に下方から嵌合し囲繞しつつボルト41により締結することで強固な接続を行うことができる。
【0098】
また、略T字状をなす前半部34の鉛直方向に垂下する片を離脱防止片38とし、離脱防止片38は、薄状物Tを挟持する際に薄状物Tの基部44側への移動を防止する。
【0099】
また、略T字状をなす前半部34の水平方向に伸延する片を当接片39とし、当接片39は下側面を当接面40として形成し、当接面40は、第一爪部3の倣い回動片18に形成された倣い座面19との間で薄状物Tを挟持する際に薄状物Tの表面と当接する。
【0100】
当接面40は、平滑であることも必要であるが、薄状物Tに負荷がかかるような使用においては略均一な複数の細かい凹凸を形成して挟持の際の摩擦力を高めることが望ましい。
【0101】
また、当接片39の下部、少なくとも当接面40には付着防止処理を施している。付着防止処理は上述の通りである。
【0102】
この場合、例え薄状物Tの粘着面が当接面40と直に接触しない下方側であっても、薄状物Tの側端部に若干だけはみ出した粘着剤の当接面40への付着や堆積を防止することができる。
【0103】
以上、説明したように第一・第二爪部31からなる挟持部2は構成されている。
【0104】
なお、本実施形態では回動片収納部10に垂直壁11を1つだけ形成しているが、垂直壁11を対向配置して2つ形成し、倣い回動片18の回動軸20も両側面に2つ形成して互いの垂直壁11に穿設された軸孔13に回動軸20を挿通するよう構成してもよい。すなわち、倣い回動片18を2つの垂直壁11で挟持して倣い回動片18の遊嵌固定の強化を図ることもできる。
【0105】
また、垂直壁11への倣い回動片18の遊嵌固定においては、倣い回動片18に回動軸20を一体に形成するのではなく、倣い回動片18に軸孔を穿設して別途の回動軸を垂直壁11の軸孔13から挿通するよう構成してもよい。
【0106】
基部44は、
図9(a)に示すように、吸気口46と排気口47を備えたエアシリンダー48と、ピストン49の先端に一方を遊嵌し他方を第一凸片4と第二凸片32に遊嵌したリンクステー50,50とで駆動機構45を構成し、本実施形態ではエアシリンダー48に圧縮空気を供給することでピストン49が後退し排気することで進出するよう動作するエアシリンダー48を用いている。
【0107】
従って、エアシリンダー48の吸気口46から圧縮エアーを供給することでピストン49が後退し、リンクステー50,50を介して第一凸片4と第二凸片32が上下方向に摺動自在なスライドベアリングにより互いに近接する。
【0108】
また、エアシリンダー48の排気口47から圧縮エアーを排出することでピストン49が進出し、リンクステー50,50を介して第一凸片4と第二凸片32は互いに離反する。
【0109】
このように基部44を構成することで第一・第二爪部3,31により薄状物Tを挟持したり開放させることが可能となる。
【0110】
なお、本実施形態では基部44の駆動機構45は第一・第二爪部3,31の挟持・開放の動作を圧縮エアーにより制御しているが、駆動機構45は本実施形態に限定されるものではなく、例えば、上述したエアシリンダー48を電磁ソレノイドに置き換え電気的にピストン49相当部を進退させて第一凸片4と第二凸片32とを近接・離反させることもできる。
【0111】
また、例えば、
図9(b)、(c)に示すように、電気配線54されたモーター51の駆動軸52の周側面にネジ山を螺刻し、第一凸片4と第二凸片32の各々の後端には駆動軸52と螺合するネジ山を螺刻すると共に紙面方向に支軸53を備え、駆動軸52の回動方向に応じて第一凸片4と第二凸片32は支軸53,53を中心に近接と離反が制御されて第一・第二爪部3,31の挟持・開放がなされるよう構成してもよい。
【0112】
このように、基部44の駆動機構45は第一・第二爪部3,31の挟持・開放を可能とする如何なる機構であっても本発明の要旨の範囲内において種々の構成を用いることができる。
【0113】
上述のように構成された把持機構1は、
図8(a)〜(c)に示すように、第一・第二爪部3,31との間で薄状物Tを挟持する際、倣い回動片18が薄状物Tと第二爪部31の当接面40に倣って回動することで薄状物Tの挟持面積全体において略均一な圧力で薄状物Tを挟持することが可能となる。
【0114】
ここで、
図2(a)〜(d)に示すように、倣い回動片18を有さない把持機構1の場合、機械的調整により第一爪部57と第二爪部31を平行に密着当接させるようにしても(
図2(a)、(b))、薄状物Tの挟持・開放を繰り返すことで経時的に基部44側寄りに挟持する圧力が集中してしまうため(
図2(d))、例えば、
図12(a)、(b)に示すように帯状の薄状物Tを挟持して移動させると圧力集中箇所58を起点として薄状物Tが捩れてしまう。
【0115】
しかしながら、倣い回動片18を備えた把持機構1を用いれば、薄状物Tの挟持面積全体において略均一な圧力で薄状物Tを挟持することが可能となるので薄状物Tを捩れることなく直線的に引き出すことができる。
【0116】
なお、本実施形態では第一爪部3を第二爪部31の下方に配設しているが、これに限定されるものではなく、例えば、
図13(a)、(b)に示すように上下逆に構成してもよく、挟持対象の種類や形状等により種々の構成を用いることができる。
【0117】
また、本実施形態では第一・第二爪部3,31の両方を可動自在としているが、これに限定されるものではなく、例えば、一方を固定し他方を可動自在として構成しても良い。
【0118】
このように本発明に係る一対の把持機構1を薄状物Tを介して対向配置したことで、
図8(a)〜(c)に示すように、第一・第二爪部3,31との間で薄状物Tを挟持する際、倣い回動片18が薄状物Tと第二爪部31の当接面40に倣って回動することで薄状物Tの挟持面積全体において略均一な圧力で挟持することが可能となり、
図14(a)、(b)に示すように、薄状物Tを正確な矩形状として直線的に複数連続して切り出す(t)ことが出来る。
【0119】
ここで、倣い回動片18を有さない把持機構1を用いて薄状物送り切出し装置101を構成した場合、
図2(a)、(b)に示すように、機械的調整により第一爪部3と第二爪部31を平行に密着当接させるようにしても、
図2(d)に示すように、薄状物Tの挟持・開放を繰り返すことで経時的に基部44側寄りに挟持する圧力が集中してしまうため、例えば、
図12(a)、(b)に示すように帯状の薄状物Tを挟持して移動させると圧力集中箇所58を起点として薄状物Tが捩れてしまう。
【0120】
この場合、倣い回動片18を有さない把持機構1を対向配置させると、
図15(a)に示すイメージ図(薄状物Tの平面図)のように、帯状の薄状物Tは山谷を示すようにジグザグに順次送出され切り出される(t)ため、
図15(b)に示すように、切り出される薄状物Tの形状は台形状となってしまう。
【0121】
また、一対の把持機構1a,1bを対向配置せず、薄状物Tの一側にのみ配設した場合、
図16(a)に示すように、帯状の薄状物Tは円弧を描くように順次送出され切り出される(t)ため、
図16(b)に示すように、切り出される薄状物Tの形状は平行四辺形状となってしまう。
【0122】
以上、説明したように本実施形態に係る把持機構1を備えた送り装置102または送り切出し装置101,121は、把持機構1を挟持部2と基部44とで構成し、挟持部2は、長尺物Tの挟持の際に対向する一対の第一爪部3と第二爪部31と、からなり、基部44は、第一爪部3と第二爪部31の少なくとも一方を動作自在とする駆動機構45からなり、第一・第二爪部31は各々基部44側を接続端27とし、先端側を開放端28とし、第一爪部3には、第一爪部3に形成された回動軸20に軸支され長尺物Tと当接する倣い座面19を有する倣い回動片18を備えることで、長尺物Tの挟持の際に倣い座面19が第二爪部31の当接面40に倣って第一・第二爪部3,31により長尺物Tと密着当接自在となるよう構成したことより、長尺物Tを略均一な圧力で挟持することができるので、長尺物Tを挟持したまま移動させたり、長尺物Tに負荷がかかる切断時であっても、挟持した長尺物Tが当接面40と倣い座面19との間で捩れることなく確実に挟持することができる。
【0123】
また、倣い座面19または/及び当接面40には付着防止処理を施すことで挟持開放した薄状物Tが第一爪部3と第二爪部31から容易に排出できるよう構成したことより、複数の薄状物Tを複数回連続して挟持・開放しても挟持精度や開放精度を長時間均一に維持することができる。
【0124】
特に、一側面を粘着面とする薄状物Tの場合、倣い座面19や当接面40への粘着物の付着を防止できるので挟持精度や開放精度を長時間均一に維持できるばかりか、把持機構1のメンテナンス頻度を最小に抑えることができる。
【0125】
更に、第一・第二爪部3,31は略平行に対向配置され、第一・第二爪部3,31の少なくとも一方が駆動機構45により略平行のまま近接・離反自在となるよう構成したことより、薄状物Tを挟持する際に薄状物Tの挟持面全面を略同時に挟持することができるので当接面40と倣い座面19との間で薄状物Tが捩れることを防止できる。
【0126】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【解決手段】本発明に係る送り装置102は、長尺物Tを順次送り出す一対の把持機構1a,1bからなる送り装置102であって、把持機構1a,1bは、長尺物Tを短手方向から挟持するよう配設すると共に、長尺物Tの長手方向及び短手方向に進退自在に構成し、しかも、把持機構1a,1bは、長尺物Tの長手方向に対し交互に前後移動自在に構成したことを特徴とする。