(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで前記した特許文献1の折り畳み容器は、折り畳む前の形状から折り畳み後の形状に至る途中過程で三角形の折り畳み片に大きな変形力が加わる。原理を説明すれば、折り畳み前後及びその途中過程において容器の開口面と底面とは、形状が正多角形のまま不変であり、正多角形である各辺及び各頂点は、平面視して同心を保たれながら相対的に回転することになる。このとき各折り畳み片の三辺のうち一辺は、開口面又は底面を構成する一辺でもあることからも、形状が不変であり、不動でもある。そしてこの形状を不変とする一辺に対して離れた頂点は、同心を保たれながら回転することから、平面視して円弧状の軌跡を描くことになる。つまり回転角度が増す毎にその頂点は、位置を円周方向に僅かにずれていく。またその頂点の位置は、円周方向については円弧状にずらしながら、高さ方向については下がっていく。従って回転する角度毎にその頂点の位置は、円周方向については円弧状の軌跡の一点に拘束されており、また開口面又は底面を構成する一辺もその形状を拘束されていることになる。一方、各三角形の他の二辺(高さ方向の二辺)は、その形状を拘束されていないので、折り畳む過程で捻じれるように変形することになる。
【0005】
図7を用いて、より詳しく説明する。まず以下の(1)〜(3)を仮定する。
(1)
図7(イ)(ロ)には折り畳み前の折り畳み容器について開口面、底面、1枚の台形片が示されている。折り畳み容器は、同心の正多角形のうち小さな正多角形を開口面側、大きな正多角形を底面側とする。
(2)ある1つの三角形の3つの頂点をA・B・C点とし、底面の2点をA・B点とし、開口の1点をC点とする。またBC線を谷折り線の対角線とし、AC線を山折り線とする。
(3)底面側に対して開口面側を回転させる(C点を(イ)図のC’点に移動させる)ことにより、
図7(ハ)(ニ)に示すように折り畳むものとする。
【0006】
以上の(1)〜(3)の仮定から以下の事が導き出される。底面は動かないので、底面を構成する一辺の2点A・B点は不動点となる。従ってC点は可動点となり、平面視したC点の軌跡は、開口面を形成する多角形の外接円の一部(円弧部)となり、C’点に移動する。またC点は、高さ方向にも移動することから、C点の軌跡は全体として螺旋状となる。そうするとC点が螺旋状に移動する際に、AC線とBC線には捻られる力(変形力)が作用することになる。
【0007】
この変形力に逆らう形状維持力(変形をさせないように耐える力)が各折り畳み片に作用するので、全ての折り畳み片の形状維持力の総和よりも、変形力の総和すなわち折り畳み力(底面に対する開口面の回転力)が大きくなったときに初めて容器は折り畳まれることになる。容器が固くなればなるほど、折り畳み力は大きくなり、容易に折り畳むことができなくなる。
【0008】
また折り畳んで体積を小さくしたとしても、三角形の各折り畳み片は単に上下に重なり合っているだけであり、折り畳み力を解放すると復元力によって容器は元の体積の大きな形状に戻ろうとする。
【0009】
本発明の折り畳み容器は上記実情を考慮して創作されたものであり、その目的はより折り畳みやすくすると共にできるだけ折り畳んだ状態を維持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、筒状の胴と胴の下端を塞ぐ底とを備える折り畳み容器であって、折り畳み前の胴は、その上下方向の全高のうちに筒状の胴本体部を備えている。胴本体部は、その上下両端の形状を平面視して頂点数及び中心が同一の正多角形に形成すると共に、その周方向の全長に亘って側面視して上辺と下辺とが平行な同一形状の台形片を繰り返し連続したものである。そして同一形状の各台形片は、台形領域を二分する対角線としての谷折り線の両側に2枚の三角形の折り畳み片を備える。また各折り畳み片の三角領域は、上から下に向かって順に上折り片と中折り片と下折り片とに区画される。その上で隣り合う2つの台形片の境界線を、中折り片を
中心として屈曲可能な山折り線にすると共に、
屈曲した際には境界線の両側の2枚の中折り片が境界線の一部を対称軸として重なり合うように構成されている。
【0011】
しかも本発明の折り畳み容器は、中折り片は、三角形であると共に、三角形の3つの頂点のうち一点を対角線上の高さ中間部に、残りの二点を境界線上の高さ中間部に有し、三角形の一辺を
前記対称軸とし、三角形の残りの二辺の一方を谷折り線、他方を山折り線にする。
【0012】
ちなみに折り畳み容器の材質は問わない。また中折り片を三角形とした場合、中折り片の三つの頂点のうち一点は、対角線上に配置されることになる。この一点を固定点とするようにして中折り片は折り畳まれるので、固定点には折り畳む際の力が加わる。仮に、対角線の両側に存在する2つの中折り片の固定点が対角線上の同じ位置に存在すれば、その位置には折り畳む際の力が集中するので、固定点が破損しやすくなる。それを防ぐには次のようにすることが望ましい。
すなわち、胴本体部は合成樹脂製であり、各台形片は、各中折り片の三つの頂点のうち一点を対角線上の異なる位置に配置してあることである。
【0013】
また折り畳み作業は、同心を保ちながら底に対して胴を一方向に回転させるものであるので、使用者は回転力を折り畳み容器に加える。このとき胴は、回転しながらその全高を低くしていく。回転力を解放すると、折り畳み容器は復元力によって元の形状に戻ろうとする。しかし折り畳みによって、各片の周囲を構成する辺には折り目が付くので、その折り目によって元の形状に戻ることはできず、境界線
が屈曲した状態が保持される。この復元力に逆らう力が折り畳まれた状態の折り畳み容器に存在する場合には、その折り畳み状態が保持される。また胴の回転角度が大きいほど、折り畳まれた状態の折り畳み容器の全高が低くなる。
それには次のようにすることが望ましい。すなわち、折り畳み前において境界線が一直線の状態では、境界線上の中折り片の一辺は一直線の一部を形成しており、折り畳み途中において境界線が屈曲した状態では、境界線上の中折り片の一辺は鉛直線に対して一方向に傾斜する
と共に、前記中折り片の一辺と、当該一辺の直下の境界線を始線として反時計回り方向になす角度が、側面視すると鋭角になっており、折り畳み後において境界線が屈曲した状態では、境界線上の中折り片の一辺は、鉛直線に対して他方向に傾斜すると共に、
前記中折り片の一辺と、当該一辺の直下の境界線を始線として反時計回り方向になす角度が、側面視すると鈍角であることである。
【0014】
さらに胴は胴本体部のみで構成されていても良いが、飲みやすくするには、口をつける部分いわゆる口部があった方が望ましい。また胴はどの部分も同じ肉厚であっても良いが、そうすると折り畳みにくい。従って飲みやすく且つ折り畳み易くするには次のようにすることが望ましい。
すなわち、胴は、胴本体部の上側にその周方向全周に亘る環状の口部を備え、各片の本体部よりも各片の本体部の周囲を囲む各辺を薄肉に形成する。
【0015】
また胴本体部の形状は、下端から上端に亘って同一の径であるか否かは問われない。但し折り畳み易く且つ成形しやすくするには次のようにすることが望ましい。
すなわち、折り畳み前の胴本体部の径は下端から上端へ向かって徐々に広がるものであり、折り畳み前の各台形片の2つの折り畳み片は、対角線を中心にして胴本体部の半径方向内側に屈曲していることである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の折り畳み容器によれば、各折り畳み片を上折り片と中折り片と下折り片とから形成してあるので、胴本体部の上下両端の正多角形を同心を保ちながら相対的に捻ると、捻られる力が各折り畳み片の上、中、下折り片に分散するので、折り畳みやすくなる。また、捻られる力が分散するということは復元力も分散するということになり、しかも、隣り合う2つの台形片の境界線である山折り線の両側には、2枚の中折り片が境界線の一部を対称軸として重なり合うように構成され、境界線の両側における2枚の折り畳み片が境界線
を屈曲した状態で重なり合うので、折り畳まれることによって生じる折り目や複雑な重なり合いによる形状安定力が作用し、折り畳み容器が折り畳まれた形状を維持しやすいものである。
【0017】
しかも中折り片を三角形にすると共に、
三角形の3つの頂点のうち一点を対角線上の高さ中間部に、残りの二点を境界線上の高さ中間部に有し、三角形の一辺を対称軸とし、
三角形の残りの二辺の一方を谷折り線、他方を山折り線にしてあるので、三角形の一点が対角線上に位置することになり、その一点を固定点とするようにして中折り片が折り畳まれるので、折り畳み容器を折り畳み易い。
【0018】
さらに各台形片は、各中折り片の三つの頂点のうち一点を対角線上の異なる位置に配置してあれば、折り畳まれる際にかかる力が異なる位置の二点に分散し、一点に集中する構成(各中折り片の三つの頂点のうち一点が対角線上の同じ位置に配置してある構成)よりも、破損しづらく、折り畳みやすい。しかも、対角線上の異なる位置の2つの頂点を結ぶ線分には、折り畳まれる際に捩じられる力が作用するが、胴本体部を合成樹脂製としてあるので、合成樹脂の弾性により前記線分が僅かに伸びることになり、その結果、折り畳み容器が破損しづらくなり、しかも折り畳み易くなる。
【0019】
また折り畳みが完成するまでに、境界線上の中折り片の一辺の傾斜方向が鉛直線に対して一方向から他方向に変わる場合には、より大きな回転角度で折り畳むことができるので、全高が低い折り畳み状態となる。しかも
折り畳み後において境界線
が屈曲した状態は、
折り畳み途中の境界線が屈曲した状態に比べて、各折り畳み片は元の三角形に近似した安定した形状であり、復元力に逆らう力が作用することになり、その上、各中折り片に対してはその隣りの台形片の上折り片や下折り片が上下から挟むように重なり合っており、各中折り片が鉛直方向に戻ろうとするのを阻止する力が作用することから、全体として大きな形状安定力が作用し、全高が低い折り畳み状態が維持される。
【0020】
さらに胴本体部の上側にその周方向全周に亘る環状の口部を備えていれば飲みやすくなり、しかも各片の本体部よりも各片の本体部の周囲を囲む各辺を薄肉に形成してあれば、各辺が折り曲げ易くなり、その結果、各片が折り畳みやすくなる。
【0021】
また合成樹脂製の折り畳み容器の胴本体部の径を下端から上端へ向かって徐々に広がるものとしてあれば、その形状が、折り畳み容器を射出成形する場合の抜きテーパーとなって成形し易い。しかも、各台形片の2つの折り畳み片を、対角線を中心にして胴本体部の半径方向内側に屈曲してあれば、折り畳み容器を折り畳みやすい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第一実施形態の折り畳み容器1は
図1、
図2に示すように、コップである。このコップは、合成樹脂製であり、それ故剛性と弾性を兼備しており、合成樹脂としては例えばポリプロピレンやエラストマー等を用いる。また、コップは、筒状の胴2と胴2の下端を塞ぐ底3とを備える。
【0024】
底3は、いわゆる上げ底であって、胴2の下端を塞ぐ底本体部3aと、底本体部3aの縁部から垂下する設置部3bとを備えている。底本体部3aの縁は、正多角形5b(より詳しくは正12角形)であって、設置部3bは、底本体部3aの縁部(より詳しくは底本体部3aの多角形の縁から僅かに半径方向の内側に位置する部分)の全周に亘って連続するように底面視して円形状に設けられている。
【0025】
折り畳み前の胴2は、その上下方向の全高のうち上端部を構成する環状の口部4と、その上下方向の全高のうち上端部よりも下側全域すなわち口部4以外の部分を構成する筒状の胴本体部5とを備えている。
【0026】
口部4は、環状(より詳しくは円筒状)の口部本体4aと、口部本体4aの内周全周に亘って連続する環状(より詳しくは平面視して円形状)のリブ4bを備えている。リブ4bは、口部本体4aの上下に間隔をあけて複数本突出している。
【0027】
平面視すると胴本体部5の上下両端の形状は正多角形5a、5bである。上下の正多角形5a、5bは、中心が同一いわゆる同心であって、頂点数を同一とする相似形の関係にあり、上端の正多角形5aは、下端の正多角形5bよりも大きく形成されている。それ故に胴本体部5の径(内径及び外径)は、下端から上端へ向かって徐々に広がるものである。また側面視すると胴本体部5は、その周方向の全長に亘って同一形状の台形片6を繰り返し連続したものである。
【0028】
台形片6は、上辺6aと下辺6bが平行(より詳しくは水平)なものである。但し上辺6aは、下辺6bよりも長いため、左辺6cと右辺6cとは平行ではなく、それ故に台形片6は平行四辺形では無い。また台形片6には、自身の台形領域を二分する対角線6dが形成されており、図では対角線6dは右肩下がりに傾斜している。全ての台形片6は同一形状なので、各対角線6dの傾斜方向は揃うことになる。側面視した状態を基準として、隣り合う台形片6との境界線6c(左辺6cと右辺6c)は山折り線とし、対角線6dは谷折り線とする。境界線6cは、側面視して鉛直線を基準として傾斜している。また対角線6dの両側には2枚の三角形の折り畳み片7、7が形成される。ちなみに2枚の折り畳み片7、7は、対角線6dを中心にして、胴2の半径方向内側に僅かに屈曲している。言い換えれば胴本体部5の全高の途中で胴本体部5を水平方向に切断したと仮定すれば、その切断部端面5cの各辺(対角線6dに相当する一点)は、
図2(ハ)に示すように、台形片6の左右の境界線6c、6cに相当する二点を一直線に結ぶ線分5fよりも、胴本体部5の半径方向内側に配置されている。つまり左右の境界線6cと上辺6aと下辺6bとで包囲された仮想の平面よりも、各折り畳み片7は、その対角線6dの上下両端以外が胴2の半径方向内側に配置されている。また各折り畳み片7は、胴本体部5の下端から上端へ向かって胴2の半径方向外側に広がるように傾いて形成されている。これは射出成形の金型から取り出した成形直後の状態いわゆる成型品の状態である。従って成形直後でありながら、境界線6cと対角線6dは、後で詳述する山折り線、谷折り線として折り畳みやすくなっている。因みに折り畳み容器1を射出成型する場合、胴2の上下方向が型開き方向である。従って射出成型後に可動金型を型開き方向へ動かした場合に、胴本体部5の径(内径及び外径)は、下端から上端へ向かって徐々に広がっているので(各折り畳み片7が下端から上端へ向かって胴2の半径方向外側へ広がるように傾いているので)、いわゆる抜きテーパとなって、離型し易い。
【0029】
折り畳み片7は、自身の三角領域を上下方向に三分するための2つの区画線12a、12bが形成されており、それゆえ各折り畳み片7は、高さ方向の上側に位置する上折り片11、高さ方向の中間に位置する中折り片12、高さ方向の下側に位置する下折り片13とから構成される。対角線6dに対して左側に位置する折り畳み片7は、自身の三角形の一辺を台形片6の下辺6bとし、上折り片11と中折り片12を三角形とし、下折り片13を四角形とする。一方、対角線6dに対して右側に位置する折り畳み片7は、自身の三角形の一辺を台形片6の上辺6aとし、上折り片11を四角形とし、中折り片12と下折り片13を三角形とする。いわば対角線6dに対して左右の折り畳み片7、7は、相似形に近似する三角形である。なお近似としたのは、前述したように上辺6aと下辺6bとの長さが相違していることが一因である。
【0030】
中折り片12は、三角形の3つの頂点のうち一点を対角線6d上の高さ中間部に、残りの二点を境界線6c上の高さ中間部に有するものである。またこれら残りの二点間の線分が線対称の対称軸となり、対称軸に対して両側の中折り片12、12が線対称となっている。中折り片12の三辺のうち対称軸となる一辺以外は、上折り片11の一辺12aと、下折り片13の一辺12bをそれぞれ構成する。また、対角線6dに対して左右両側の中折り片12は、互いの対角線6d上の一点が離隔している。左側の中折り片12の対角線6d上の一点は、右側の中折り片12の対角線6d上の一点よりも上方に位置している。
【0031】
対角線6dに対して左側の上折り片11は、三角形の3つの頂点のうち一点を上辺6aの左端点とし、もう一点を左側の中折り片12の対称軸の上端点とし、残りの一点を左側の中折り片12の対角線6d上の一点とする。
一方対角線6dに対して右側の上折り片11は、四角形の4つの頂点のうち二点を上辺6aの左右端点とし、もう一点を右側の中折り片12の対称軸の上端点とし、残りの一点を右側の中折り片12の対角線6d上の一点とする。
【0032】
対角線6dに対して左側の下折り片13は、四角形の4つの頂点のうち二点を下辺6bの左右端点とし、もう一点を左側の中折り片12の対称軸の下端点とし、残りの一点を左側の中折り片12の対角線6d上の一点とする。
一方対角線6dに対して右側の下折り片13は、三角形の3つの頂点のうち一点を下辺6bの右端点とし、もう一点を右側の中折り片12の対称軸の下端点とし、残りの一点を右側の中折り片12の対角線6d上の一点とする。
【0033】
これら各片、すなわち台形片6や折り畳み片7だけでなく片の最小単位である上折り片11、中折り片12、下折り片13は、各々の形状を形作る本体部と、本体部の周囲を囲む各辺とから構成されている。言い換えれば各片は、その周囲を構成する各辺と、各辺によって囲まれた領域を塞ぐ本体部とから構成されている。そして、本体部の肉厚よりも各辺の肉厚を薄く形成し、各辺を折り曲げ易くしてある。なお、各辺は、図面では、殆ど幅の無い直線で示してあるが、現実の製品では、折り畳み容器1自体に肉厚があるので、当然折り畳めるように、ある程度の幅のある帯状の辺である。このような各辺を山折り線又は谷折り線としてある。
【0034】
図示の例では、山折り線は隣り合う台形片6の間に位置する境界線6cいい換えれば台形片6の左辺6cと右辺6cと、台形片6の上辺6aと下辺6bと、左側の上折り片11と中折り片12の間に位置する一辺12aと、右側の中折り片12と下折り片13の間に位置する一辺12bである。
一方谷折り線は、対角線6dと、左側の中折り片12と下折り片13の間に位置する一辺12aと、右側の上折り片11と中折り片12の間に位置する一辺12bである。
【0035】
上記した折り畳み容器1は、
図3、
図4の各(イ)〜(ホ)、
図5の(イ)(ロ)に示すように以下のようにして折り畳まれる。
(1)
図3、
図4、
図5の各(イ)に示すように折り畳み容器1は折り畳み前の状態(成形直後の状態)では胴2が筒状の状態となっている。また境界線6cが一直線の状態となっており、この一直線の一部は、境界線6c上の中折り片12の一辺でもある。この状態から各山折り線、谷折り線に折り目を少し付ける。その後、底3に対して胴2の上端部を相対的に捻るようにして周方向の一方向に回す。より具体的に言えば上下の正多角形5a、5bが同心を保つようにしながら平面視して時計方向に胴2の上端部を回す。
(2)捻るようにして回し始めると、捻られる力が上、中、下折り片11、12、13に分散し、各折り畳み片7が山折り線、谷折り線に従って容易に折り畳まれていく。また各中折り片12は、対角線6d上の一点を固定点とするようにして折り畳まれていくので、折り畳み易い。しかも2つの中折り片12、12の頂点の各一点を、対角線6d上の異なる位置に配置してあるので、折り畳まれる際にかかる力が異なる位置に分散するので、破損しづらく、折り畳み易い。しかも、対角線6d上の異なる二点の頂点を結ぶ線分には折り畳まれる際に捩じられる力が作用し、その作用を受けた線分が合成樹脂の弾性によって僅かに伸びるので、破損しづらくなり、しかも折り畳み易くなる。
(3)このような折り畳み途中の第1段階では
図4(ロ)に示すように側面視して、胴本体部5はその全高の中間部を幅方向の中央部に絞ったような形態、恰も鼓状の形態となり、対称軸に対して両側に位置する2つの中折り片12、12が徐々に重なり合う方向に接近していく。またこの折り畳み途中において境界線6cが稲妻型に急な角度で屈曲した状態となり、境界線6c上の中折り片12の一辺(対称軸)は鉛直線に対して一方向に傾斜している。また
図3(ロ)に示すように平面視すると、対角線6dが中折り片12の付近が境界線6cよりも胴2の半径方向内側に移動し、それによって胴本体部5の上折り片11の下部が胴2の半径方向内側に向かって集中してきて、口部4の下方に星形状の孔5hが形成される。この状態が合成樹脂の剛性により維持される。
(4)さらに回すと折り畳み途中の第2段階では、
図4(ハ)に示すように側面視すると胴本体部5の全高が大幅に低くなり、対称軸に対して両側に位置する2つの中折り片12、12が重なり合う。また各境界線6cが水平にかなり近づいた状態で傾斜しながら稲妻型に急な角度で屈曲した状態となり、境界線6c上の中折り片12の一辺は鉛直線に対して一方向(右肩上がり)に傾斜し、その傾斜は鉛直方向に近づいている。また
図3(ハ)に示すように平面視すると、孔5hの口径が狭まって円形に近似してくる。この状態も剛性樹脂の剛性により維持される。
(5)さらに回すと折り畳み途中の第3段階では
図4(ニ)に示すように側面視すると境界線6cは稲妻型に屈曲した状態のまま、境界線6c上の中折り片12の一辺は鉛直状態となる。ちなみにこのとき対称軸に対して両側に位置する2つの中折り片12、12が重なり合ったままである。また
図3(ニ)に示すように平面視すると、孔5hの口径がより狭まってくる。この中折り片12の一辺が鉛直状態のときは、不安定な状態であり、復元力によって(4)の状態に戻りやすい状態である。
(6)さらに回すと折り畳みが完了する。この折り畳み後においては
図4(ホ)に示すように側面視すると境界線6cが稲妻型に緩い角度で屈曲した状態となり、境界線6c上の中折り片12の一辺は、鉛直線に対して他方向(右肩下がり)に傾斜している。ちなみに対称軸に対して両側に位置する2つの中折り片12、12が重なり合ったままである。しかも、各台形片6を構成する一対の折り畳み片7の上折り片11、11や一対の下折り片13、13も、折り畳まれて重なり合っている。そして、重なり合っている一対の中折り片12、12を、円周方向の隣りにおいて一対の上折り片11、11や一対の下折り片13、13が上下から挟むように重なり合っている。また
図3(ホ)に示すように平面視すると孔5hは非常に小さな状態になる。この状態では回転力を解放しても、その状態が持続され、(4)の状態に殆ど戻らなくなる。これは(2)の状態に戻ろうとする復元力に逆らう力が働いていることによるものと思われる。
図3(ホ)に示すように平面視すると、孔5hが小さくなった状態では、
図4(ホ)に示すように側面視すると境界線6cが稲妻型に緩い角度で屈曲した状態となり、各折り畳み片7は、折り畳み前の元の三角形状に近似した安定した形状となる。この三角形状に近似した形状によって、復元力に逆らう力が作用する。しかも、前記したように重なり合った一対の中折り片12、12に対してはその隣りの台形片6の一対の上折り片11、11や一対の下折り片13、13が上下から挟むように重なり合っており、各中折り片12が鉛直方向に戻ろうとするのを阻止する力が作用する。このような複合的な作用が大きな形状安定力となり、その折り畳み状態が維持されるものと思われる。また境界線6c上の中折り片12の一辺が鉛直線に対して一方向から他方向に変わるまでの間には大きな回転角度が加わっており、その結果折り畳み容器1の全高が非常に低くなっている。
【0036】
なお
図3〜
図5の各(ホ)に示すように完全に折り畳まれた状態から、折り畳み時とは逆方向に回転する力を作用させると、
図3、
図4の各(ハ)の状態を経て、その回転角度に応じて
図3、
図4の各(ニ)又は各(ロ)の状態に戻る。一度折り畳まれると、山折り線、谷折り線に折り目が付くことから折り畳み前の
図3、
図4(イ)の状態には戻らない。この
図3、
図4の各(ロ)の状態は、胴本体部5の全高の中間部で径が絞られた形態なので、掴みやすい形態でもある。この形態で例えば飲料を入れて使用する。平面視すると、各上折り片11は口部4の内周から半径方向の内側における偏心位置(中心から外れた位置)に向かうように延長している。このため全ての上折り片11は、全体として渦巻き状に配置されていることになる。そうすると、折り畳み容器1に収容された飲料を飲もうとして、折り畳み容器1を傾けると、胴本体部5を通過する際に飲料が旋回流となって排出されてくる。そうすると、口部4に口をつけて飲もうとしたときに、口の中にではなく唇の左又は右の端部や頬の方に飲料が流れてきそうになる。しかし口部4には複数の環状のリブ4bが形成されているので、このリブ4bによって旋回流が弱められ、口の中に飲料が流れてくる。しかもリブ4bを複数備えているので、旋回流は大幅に弱められ、折り畳み容器1を傾けた傾斜角度に殆ど沿って飲料が流れてくることになる。仮にリブ4bが口部4の全周の一部にのみ円弧状に形成されている場合には、飲料を飲む際にリブ4bのある位置を口に近づけて折り畳み容器1を傾けないと、リブ4bによる旋回流を弱める効果が得られないが、本実施形態のように口部4の全周に亘って環状にリブ4bを形成してあれば、必ずリブ4bによる旋回流を弱める効果が得られる。ちなみに
図3、
図4の各(イ)の折り畳み前の状態で試した場合、この状態でも各折り畳み片7は渦巻き状に配置されており、リブ4bがある場合には同様の効果が得られる。なお実験例として、口部4の内周に対して鉛直方向に延びるリブ4bを、周方向に間隔をあけて設けた例があるが、この場合、リブ4bによる旋回流を弱める効果はほとんど得られなかった。
【0037】
本発明の第二実施形態の折り畳み容器1は
図6に示すように、中折り片12の三辺のうち対称軸となる境界線6cの一部を除く二辺12a、12bについて、山折り線と谷折り線を、第一実施形態のそれと逆にしたこと、各台形片6の左右の境界線6cを第一実施形態のそれよりもより水平方向に近づけて傾いていること、対角線6d上に離隔して配置される2つの頂点(2つの中折り片12の頂点同士)の距離が第一実施形態のそれよりも離れていることが、第一実施形態の折り畳み容器1と相違している点である。
【0038】
この第二実施形態の折り畳み容器1は、
図6(イ)に示す状態から山折り線、谷折り線に折り目を少しつけて、それから底3に対して胴2の上端部をその周方向の一方向に捻るようにして折り畳むと、
図6(ロ)に示す状態(胴本体部5の全高の中間部で径が絞られた形態)を経て、
図6(ハ)に示すような中折り片12を中心として境界線6cが稲妻形に屈曲した状態となり、対称軸に対して両側に位置する2つの中折り片12、12が重なり合った状態となる。ただし第一実施形態の折り畳み状態よりも全高の高い状態となる。また境界線6cの中折り片12の部分は折り畳む際に、
図6(ロ)と
図6(ハ)の状態になるだけであり、第一実施形態
図3、
図4(ハ)(ニ)の状態にはならない。これは前述したように中折り片12の二辺の山折り線と谷折り線を、第一実施形態のそれと逆にしたことによる。また折り畳まれた状態の折り畳み容器1を元に戻すようにして、胴本体部5の上端部をその周方向の反対方向に捻ると、
図6(ロ)に示すように、折り目が付いた状態となる。
【0039】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、胴本体部5の径(内径及び外径)は、下端から上端へ向かって徐々に広がる、いわゆるテーパー状にものに限らず、下端から上端に亘って均一の、いわゆるずん胴状であっても良い。また胴本体部5の正多角形5a、5bの角数は、12角に限らず、4角以上であれば良い。また口部4の断面は円形に限らず、胴本体部5と同じ正多角形であっても良い。