【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、この目的を請求項1の特徴によって達成する。本発明の有利な実施形態は従属請求項において開示されている。
【0009】
従って、本発明によれば、それぞれのシリンダの第1シリンダ信号のためにシリンダ特有基準シリンダ値が設定される。シリンダの少なくとも1つの燃焼パラメータが、基準シリンダ値からの第1シリンダ信号の偏差(逸脱度)の関数として調整され、第1シリンダ信号は基準シリンダ値に追従する。
【0010】
本発明の方法では、シリンダ特有第1シリンダ信号がそれぞれのシリンダ特有基準シリンダ値に追従するように、シリンダ特有差、すなわち例えば、吸気、付着物および磨耗、燃焼中心あるいは機械的許容誤差に関するシリンダ特有差が、シリンダ特有形態のシリンダの燃焼パラメータを調整することにより考慮される。よって、シリンダの第1シリンダ信号は共通の基準値に追従せず、適した基準シリンダ値がそれぞれのシリンダのために設定されるため、シリンダパラメータのシリンダ特有差の考慮が可能となる。よって、例えば、シリンダパラメータのシリンダ特有差が存在しようとも、内燃機関のシリンダは、類似した排出物
量を排出し、及び/又は類似した効率を発揮することができる。
【0011】
好適には、以下のシリンダ特有信号の少なくとも1つがそれぞれのシリンダから取得される。すなわち、シリンダ内圧、シリンダ排出物温度、窒素酸化排出物
量、および燃焼空気比のうちの少なくとも1つが取得される。1特定実施形態では、取得されるシリンダ特有第1シリンダ信号は燃焼サイクルの最大シリンダ内圧である。
【0012】
さらに改善された信号品質および制御機能を取得するため、シリンダのシリンダ特有第1シリンダ信号は、好適には、10から1000燃焼サイクル、さらに好適には、40から100燃焼サイクルで取得され、時間的フィルター処理されたシリンダ特有第1シリンダ信号である。
【0013】
一般的に、基準値からの第1シリンダ信号の偏差が明記可能な
(任意に規定可能な)許容誤差を超える場合には、シリンダの燃焼パラメータは調整される。このように、さらに滑らかな制御性が得られる。
【0014】
好適には、シリンダ特有基準シリンダ値は、全シリンダの第1シリンダ信号の統計変数、好適には算術平均、特に好適にはメジアンを含み、シリンダ特有オフセットを含む。よって、この統計変数は全シリンダからの第1シリンダ信号の統計評価の結果でよい。特に好適な実施例では、シリンダ特有基準シリンダ値は、全シリンダの第1シリンダ信号のメジアンと、シリンダ特有オフセットとを含んでいる。
【0015】
好適には、シリンダ特有オフセットは差値特徴マッピングの手段で決定され、この差値特徴マッピングは内燃機関の出力のパワー均等物及び/又は内燃機関の吸気圧を考慮し、好適には、さらに、内燃機関の吸気温度及び/又はエンジン速度を考慮する。
【0016】
所望の最良化目標のための差値特徴マッピングは、試験リグ上で、または内燃機関を運用状態にすることで設定が可能である。最良化目標の例は、シリンダのNOx排出物
量または内燃機関の機械的荷重制限または運用制限を考慮に入れて可能な限り最大化されるシリンダ効率に可能な限り類似したものである。シリンダ特有オフセットの決定は、適した計算方法を利用して、例えば、多項式形態の計算によって、あるいは内燃機関の効率点の知られた値間の補間処理によって特徴マッピングを設定することで実行できる。
【0017】
特に好適な実施形態によれば、シリンダ特有オフセットは、次のシリンダ特有パラメータの少なくとも1つの関数として決定される。すなわち、点火前の圧縮相中のシリンダ圧、空気量均等物、燃焼中心、圧縮比および点火(着火)遅延のうちの少なくとも1つの関数として決定される。
【0018】
一般的に、シリンダ特有オフセットは、少なくとも1つのシリンダ特有シリンダパラメータの関数として、および、試験リグ上の最良化目標の関数として決定でき、特徴マッピングに記録できる。
【0019】
前記のシリンダパラメータの決定自体は知られている。従って、例えば、点火前の圧縮相におけるシリンダ圧、空気量均等物および燃焼中心は、対応シリンダの燃焼サイクルにわたる内燃機関圧力プロフィールからのシリンダ圧センサーによって決定できる。圧縮比および点火遅延は、シリンダ圧プロフィールから、特定条件のもとで決定できる。
【0020】
適したシリンダ特有オフセットを決定するため、全シリンダのこのシリンダパラメータの平均(例えば、算術平均あるいはメジアン)からの、少なくとも1つのシリンダ特有シリンダパラメータのそれぞれの偏差が利用できる。
【0021】
このように、シリンダ特有オフセットは、加数の合計として表すことができ、これら加数は、正または負の係数が提供されたシリンダ特有シリンダパラメータの対応偏差に対応する。
【0022】
点火前の圧縮相時のシリンダのシリンダ圧の偏差は、全シリンダの対応するシリンダ圧の算術平均またはメジアンに対して、たとえば百分率で表すことができる。このように、点火前の圧縮相中の平均に対して増加したシリンダ圧は、シリンダ特有オフセットのための正加数とすることができる。
【0023】
シリンダの空気量の偏差は、全シリンダの空気量均等物の算術平均またはメジアンに対して、例えば百分率で表すことができる。よって、平均に対して増加した空気量は、シリンダ特有オフセットの正加数とすることができる。
【0024】
シリンダの燃焼中心の偏差は、全シリンダの燃焼中心の算術平均またはメジアンとのシリンダ特有燃焼中心の差異として、たとえばクランク角度で表すことができる。よって、シリンダの燃焼中心の負の偏差(すなわち、全シリンダの燃焼中心の平均と較べて早目の燃焼中心)は、シリンダ特有オフセットの正加数とすることができる。
【0025】
シリンダの圧縮比の偏差は、全シリンダの圧縮比の算術平均またはメジアンに対して、例えば百分率で表すことができる。よって、平均に対して増加した圧縮比は、シリンダ特有オフセットの正加数とすることができる。
【0026】
シリンダの点火遅延の偏差は、全シリンダの点火遅延の算術平均またはメジアンとのシリンダ特有点火遅延の差異として、例えばクランク角度で表すことができる。よって、シリンダの点火遅延の正偏差(すなわち、全シリンダの点火遅延の平均と比較して長目の点火遅延)は、シリンダ特有オフセットの負加数とすることができる。
【0027】
言い換えると、シリンダ特有オフセット△mは、以下の式を利用してシリンダパラメータのそれぞれの偏差から決定できる。
△m=a
*△pverd+b
*△air+c
*△MFB+d
*△ε+e
*△delay
ここで、△pverdは、点火前の圧縮相時のシリンダ圧の偏差であり、△airは空気量均等物の偏差であり、△MFBは燃焼中心の偏差であり、△εは圧縮比(例えば、部材許容誤差の結果)の偏差であり、△delayは点火遅延(例えば、スパークプラグ及び/又は予燃チャンバの磨耗に起因)の偏差である。シリンダパラメータの偏差に関連する係数a、b、c、d、eを使用して、それぞれのシリンダ特有オフセット△mの決定のために加数の加重が実施できる。1以上のこれら係数を0に設定することで、シリンダ特有オフセット△mを決定するための対応する偏差は無視できる。さらに、正または負の係数の選択は、シリンダ特有オフセット△mのために正偏差が正加数になるか、または負加数になるかを決定することが可能であることを意味する。
【0028】
係数a、b、c、d、eの微調整は、例えば、試験リグで可能であり、あるいは内燃機関を運用状態にしたときに可能である。よって、これら係数はそれぞれ特定値に設定できる。係数は、シミュレーションにより、または計測に基づいた分析的中断によって決定することもできる。内燃機関の運用中にシリンダパラメータおよび対応する偏差をオンラインで取得すること、並びに運用中に最良化の関数として係数を変更することも同様に可能である。このように、例えば、不着火の場合にシリンダに高オフセット△mを得させることで、あるいは、ノッキング及び/又は自己発火した場合にシリンダに低オフセット△mを得させることで燃焼状態に反応することができる。
【0029】
特に好適な実施形態では、燃焼パラメータは対応するシリンダのための燃料量でよい。予燃チャンバ点火型内燃機関では、それはシリンダのそれぞれの主燃焼チャンバのための燃料量でよい。シリンダ特有第1シリンダ信号が、シリンダ特有基準シリンダ値よりも小さい場合には、シリンダの燃料量は増加させることができ、シリンダ特有第1シリンダ信号がシリンダ特有基準シリンダ値よりも大きい場合には、シリンダの燃料量は減少させることができる。好適には、燃料制御(計測)バルブがそれぞれのシリンダに提供でき、シリンダの燃料量を調節するために、対応する燃料制御バルブの開放時間が調整される。このような燃料制御バルブは、好適にはシリンダの吸気管領域に配置されるポート噴入バルブである。ポート噴入バルブは、例えば、完全に開いた位置または完全に閉じた位置のみを有している場合にも使用できる。このように、開放時間はバルブが完全に開いた位置にある時間として定義できる。しかし、一般的には、シリンダの燃料量を調節するためにストローク制御バルブが使用可能であり、バルブの開放時間及び/又は開放ストロークが調節される。
【0030】
それぞれのシリンダ特有第1シリンダ信号が、シリンダ特有第1シリンダ信号の関数として、それぞれのシリンダ特有基準シリンダ値を追従するよう、燃料量燃焼パラメータの制御は下の表1に従って実行できる。表1の欄1は、それぞれのシリンダ特有第1シリンダ信号およびそれぞれの第1シリンダ信号を取得するための好適なシナリオを掲載する。表1の欄2によれば、それぞれの第1シリンダ信号が対応するシリンダ特有基準シリンダ値よりも小さい場合にはシリンダの燃料量は増加する。表1の欄3によれば、それぞれの第1シリンダ信号が対応するシリンダ特有基準シリンダ値よりも大きい場合にはシリンダの燃料量は減少する。例えば、シリンダに関連する燃料制御バルブの開放時間を増加させることでそのシリンダのための燃料量を増加させることができる。一方、シリンダに関連する燃料制御バルブの開放時間を減少させることでそのシリンダのための燃料量を減少できる。
【表1】
【0031】
さらに別な好適実施形態では、対応シリンダの着火点が燃焼パラメータとして設定できる。好適には、点火装置はそれぞれのシリンダに提供され、点火装置の着火点は、TDC(シリンダ内のピストン上死点)
前のクランク角度で設定される。
【0032】
通常において着火点はTDC(シリンダ内のピストン上死点)
前のクランク角度で表され、シリンダ内または燃焼チャンバ内で燃料または燃料・空気混合物に点火するために適した点火装置の発火時点を示す。この場合、点火装置はスパークプラグ(例えば、電極スパークプラグあるいはレーザスパークプラグ)または、例えばジーゼル燃料のパイロット噴入を実行するためのパイロット噴入装置でよい。点火装置は予燃チャンバであってもよい。通常では、内燃機関のそれぞれのシリンダの着火点は、TDC
前のクランク角度で表される同一の全体的な設定値(全体的デフォルト値)に設定される。1例として、この値はTDC
前のクランク角20°から30°であり、この値は、内燃機関のエンジン速度から決定でき、及び/又は使用される点火装置の関数として決定できる。この全体的デフォルト値は、内燃機関のパワー及び/又は吸気圧及び/又は吸気温度及び/又はエンジン速度の関数として着火点のために適した値を設定する着火点に特徴的な特徴マッピングから推定することができる。
【0033】
本発明の1好適実施形態では、それぞれのシリンダ特有第1シリンダ信号が対応するシリンダ特有基準シリンダ値よりも小さいなら、シリンダの着火点は(全体的デフォルト値に対して)早目に設定され、それぞれのシリンダ特有第1シリンダ信号が対応するシリンダ特有基準シリンダ値よりも大きいなら、シリンダの着火点は(全体的デフォルト値に対して)遅目に設定される。
【0034】
それぞれのシリンダ特有第1シリンダ信号が、シリンダ特有第1シリンダ信号の関数として、それぞれのシリンダ特有基準シリンダ値に追従するよう、着火点燃焼パラメータに関する制御が以下の表2に従って実行できる。表2では、欄1はそれぞれのシリンダ特有第1シリンダ信号と、それぞれの第1シリンダ信号を取得するための適したシナリオとを掲載する。表2の欄2では、シリンダのそれぞれの第1シリンダ信号がそれぞれのシリンダ特有基準シリンダ値よりも小さいならシリンダの着火点を早目に設定している。表2の欄3では、それぞれの第1シリンダ信号が対応するシリンダ特有基準シリンダ値よりも大きいなら着火点を遅目に設定している。
【表2】
【0035】
好適な実施形態では、その少なくとも1つの燃焼パラメータを設定するため、好適にはパラメータの値が所定の全体的エンジン
目標値およびシリンダ特有差値を含むようにパラメータを決定させることができる。
【0036】
着火点燃焼パラメータを設定する場合には、シリンダ特有差値はTDC
前のクランク角±4°、好適には±2°の範囲でよい。
【0037】
明記可能な
目標値は内燃機関の全シリンダに対して同一である全体的値でよい。
【0038】
燃焼パラメータとして着火点を設定する場合には、明記可能な
目標値は、固定ガスエンジンのシリンダの着火点の全体的デフォルト値でよい。この点に関して、明記可能な
目標値は着火点の特徴マッピングから推定できる。着火点の特徴マッピングは、パワー及び/又は吸気圧及び/又は吸気温度及び/又は内燃機関のエンジン速度の関数として着火点の適した値を設定できる。着火点の特徴マッピングで設定される値は試験リグで決定できる。
【0039】
燃焼パラメータとして燃料量を設定する場合には、明記可能な
目標値は、固定ガスエンジンのシリンダの燃料制御バルブまたはガス噴入バルブの開放時間のための全体的エンジン基礎値でよい。
【0040】
基本的には、内燃機関の燃焼プロセスは、空気導入燃焼プロセスと燃料導入燃焼プロセスに分類できる。空気導入燃焼プロセスでは、特定排出レベルまたは特定吸気圧を得るために、計測される燃料量は、例えば、内燃機関の効率点および燃料・空気混合比の明記可能な
目標値の関数として決定される。それによって実行されるエンジン制御は排出コントローラを利用する。燃料導入燃焼プロセスまたはガス導入燃焼プロセスでは、計測される燃料量は、内燃機関の効率点および内燃機関のパワー及び/又はエンジン速度の明記可能な
目標値の関数として決定される。燃料導入燃焼プロセスは、内燃機関の可変速運用中の隔絶された運用時には、エンジンスタート中または内燃機関のアイドリング中における特定の形態である。従って利用されるエンジン制御は大抵の場合にはパワーコントローラ及び/又は速度コントローラを含んでいる。
【0041】
排出コントローラが使用される空気導入燃焼プロセスの場合には、例えば好適には明記可能な
目標値は、明記可能な燃料・空気混合比(好適には、この明記可能な燃料・空気混合比は、内燃機関の出力のパワー均等物、好適には、内燃機関に連結された発電機からの電力)から、及び/又は内燃機関の吸気圧から、及び/又はエンジン速度から決定される。
【0042】
本発明に関して使用される“パワー均等物”とは、内燃機関の実際の機械パワーまたは機械パワーに対応する代替可変物を意味すると理解されるべきである。この1例は、発電機の出力から計測される内燃機関に連結された発電機からの電力である。また、エンジン速度およびトルクあるいは発電機の電力および発電機の効率から計算される内燃機関のために算出される機械パワーであってもよい。もし消費パワー量がエンジン速度から正確に計算されるならエンジン速度であってもよい。さらにパワー均等物は、シリンダ内圧から従来方法で決定可能な表示される平均圧であっても、出力トルクから、または電力あるいは機械パワーから計算できる実効平均圧であってもよい。この点において、内燃機関のパワー均等物は、実効平均圧、シリンダキャパシティ、およびパワーストロークから得られる仕事量の間の知られた関係から決定することができる。
【0043】
明記可能な燃料・空気混合比は、内燃機関の吸気圧およびパワーから従来方法によって決定できる。よって、ガスエンジンとして構築されている内燃機関の明記可能な燃料・空気混合比は、例えば、EP0259382B1に従って決定できる。
【0044】
ガス噴入時間のための明記可能な
目標値はガス噴入バルブの流動作およびガス噴入バルブを支配する境界条件(例:燃焼ガスの圧力および温度、吸引マニフォールド圧または吸気圧)から決定できる。ガスエンジンの空気量均等物(空気量の対応値)は、ガスエンジンの吸込マニフォールドの状態、特に吸気圧および吸気温度から決定できる。明記可能な燃料・空気混合比を使用して、燃焼ガス量の基準値が決定できる。前もって決定された燃焼ガス量をガスエンジンに導入するため、要求されるガス噴入バルブの全体的開放時間またはガス噴入時間は、ガス噴入バルブの流動作およびガス噴入バルブでの境界条件から決定できる。この例では全体的ガス噴入時間は明記可能な
目標値に対応する。
【0045】
例えば、パワーコントローラ及び/又は速度コントローラを採用するガス導入燃焼プロセスにおいては、明記可能な
目標値は、明記可能な標的パワー均等物からの内燃機関の出力のパワー均等物の偏差の関数として決定され、及び/又は内燃機関の明記可能なエンジン速度からの内燃機関のエンジン速度の偏差の関数として決定される。
【0046】
よって、内燃機関の明記可能な標的パワー均等物(基準パワー)からの、内燃機関の出力(実際パワー)の実際パワー均等物(例:内燃機関に接続された発電機のために計測される電力)の偏差の関数として、燃料量流の全体的エンジンデフォルト値を決定できるパワーコントローラが利用できる。あるいは、または追加的に、内燃機関の明記可能な標的速度(基準速度)からの内燃機関の実際エンジン速度(実際速度)の偏差の関数として、燃料量流の全体的エンジンデフォルト値を決定する速度コントローラが利用できる。燃料量流の決定された
目標値から、明記可能な
目標値、例えば、燃料制御バルブの全体的エンジン開放時間、または点火装置の着火点のための全体的エンジンデフォルト値の明記可能な
目標値が決定できる。
【0047】
特定実施形態の場合には、シリンダ特有差値はシリンダ特有パイロット値を含んでおり、好適には、シリンダ特有パイロット値は吸気圧から決定され、好適には、さらに内燃機関の吸気温度から決定される。よって、内燃機関を運用させる際にシリンダ特有パイロット値は計測値から導出可能であり、例えば、シリンダ特有信号を取得するセンサーが全く作動しないか正常に作動しない場合に代替値として使用できる。
【0048】
シリンダ特有パイロット値は、例えば、吸込マニフォールド及び/又はガスエンジンのガスレールの気体運動力学および適した部品許容誤差を考慮することができる。ここで気体運動力学および部品許容誤差の作用は、特に吸気圧、エンジン速度および吸気温度によって影響を受ける。この点で、適したシリンダ特有パイロット値を、異なる吸気圧および吸気温度に対応する値を含んだ特徴マッピングから導き出すことが有利である。よって、ガスエンジンを運用するときに適した計測データが取得できるか、適した特徴マッピングが試験または模擬実験によって決定できる。ガスエンジンの運用時にオンライン計測によって適応性の特徴マッピングを発生させることも可能である。
【0049】
特に有利には、シリンダ特有差値には均等値が補充される。均等値はシリンダ特有差値の算術平均に該当する。これは、今までシリンダバランス処理なく運用され、あるいは汎用コントローラだけで運用されていた内燃機関に設置あるいは後付けするときに特に有利である。このようにシリンダ特有差値を補正することで、全体的な計測燃料量は本発明によって影響を受けず、内燃機関の全体的排出制御の調整は不要である。それぞれの着火点の値も全体的エンジン制御に導入できるので、シリンダ特有差値の補正によって、着火点の設定に関する全体的エンジン制御に対する不都合な作用も回避できる。
【0050】
本発明の1好適実施形態では、それぞれのシリンダに対して燃焼状態がモニター可能であり、明記可能な基準状態に関して正常または異常であると評価することが可能である。シリンダの燃焼状態が正常であると判断されれば、シリンダの燃焼パラメータは単に調節されるだけである。よって、燃焼状態としてノッキング及び/又は自己発火及び/又は燃焼妨害がモニター可能であり、ノッキング及び/又は自己発火及び/又は燃焼妨害が燃焼中に感知されなければ、シリンダの燃焼状態は正常であると判断される。燃焼時に異常な燃焼状態を示すか、あるいは熱機械的制限を超えるシリンダの場合、異常な燃焼状態に対抗するか、問題のシリンダを、熱機械的制限からさらに離脱した効率点にまで導くように、シリンダ特有基準シリンダ値を設定することも可能である。よって、例えば、異常燃焼(例えば、ノッキング、自己発火、ピーク圧制限超過)のシリンダでは、燃料制御バルブの噴入時間または開放時間は延長されず、必要ならば短縮される。よって、例えば、断続的燃焼
を示すシリンダでは、噴入時間は短縮されず、延長もあり得る。
【0051】
また一般的に、第1燃焼パラメータを調節することでシリンダ特有第1シリンダ信号を制御するのと同時的に、別なシリンダ特有シリンダ信号の制御が別な燃焼パラメータの調節によって実行できる。よって、例えば、本発明の方法は、シリンダ特有第1シリンダ信号として最大シリンダ内圧を使用し、燃焼パラメータとして燃料量を使用して実行でき、同時的に、燃焼着火点のシリンダ特有制御は、シリンダ特有燃焼中心の関数として実行される。よって、それぞれの着火点は明記可能な中央値からの、シリンダ特有燃焼中心の偏差の関数として調節される。明記可能な中央値は全体的中央値であることができる。すなわち、内燃機関の全シリンダに対して有効である。
【0052】
(項目1)
少なくとも2つのシリンダ(2)を有した内燃機関(1)、特にガスエンジンである内燃機関の運用方法であって、シリンダ特有第1シリンダ信号(pmax、E)がそれぞれのシリンダ(2)から取得され、対応するシリンダ(2)の少なくとも1つの燃焼パラメータ(Q、Z)が前記第1シリンダ信号(pmax、E)の関数として制御され、シリンダ特有規準シリンダ値(pmax’、E’)がそれぞれのシリンダ(2)に対して前記第1シリンダ信号(pmax、E)のために設定され、前記シリンダ(2)の前記少なくとも1つの燃焼パラメータ(Q、Z)が、前記規準シリンダ値(pmax’、E’)からの、前記第1シリンダ信号(pmax、E)の偏差の関数として調整され、前記第1シリンダ信号(pmax、E)は前記規準シリンダ値(pmax’、E’)に追従することを特徴とする方法。
(項目2)
シリンダ特有第1シリンダ信号である、シリンダ内圧(pcyl)、シリンダ排出物温度(TE)、窒素酸化排出物(E)および燃焼空気比のうちの少なくとも1つがそれぞれのシリンダ(2)から取得されることを特徴とする項目1記載の方法。
(項目3)
燃焼サイクルの最大シリンダ内圧(pmax)が前記シリンダ特有第1シリンダ信号として取得されることを特徴とする項目2記載の方法。
(項目4)
前記シリンダ特有規準シリンダ値(pmax’、E’)は、全シリンダ(2)の前記第1シリンダ信号(pmax、E)の統計的変数、好適には算術平均(pmean)、特に好適にはメジアン(Emedian)である統計的変数を含んでおり、およびシリンダ特有オフセット(△m)を含んでいることを特徴とする項目1から3のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記シリンダ特有オフセット(△m)は、差値特徴マッピング(26)の手段によって決定され、該差値特徴マッピング(26)は、前記内燃機関(1)の出力パワーの少なくともパワー均等物(P)及び/又は前記内燃機関(1)の吸気圧(pA)を考慮し、好適には追加的に、前記内燃機関(1)の吸気温度(TA)及び/又はエンジン速度(n)を考慮することを特徴とする項目4記載の方法。
(項目6)
前記シリンダ特有オフセット(△m)は、点火前の圧縮相時のシリンダ圧、空気量均等物、燃焼中心、圧縮比、および点火遅延であるシリンダ特有シリンダパラメータのうちの少なくとも1つの関数として決定されることを特徴とする項目4または5記載の方法。
(項目7)
前記シリンダ特有オフセット(△m)は、全シリンダのシリンダパラメータの平均からの、シリンダパラメータの少なくとも1つの偏差(△pverd、△air、△MFB、△ε、△delay)の関数として決定されることを特徴とする項目6記載の方法。
(項目8)
前記シリンダ特有オフセット(△m)は、以下の式を使用して、シリンダパラメータのそれぞれの偏差(△pverd、△air、△MFB、△ε、△delay)から決定され、
△m=a*△pverd+b*△air+c*△MFB+d*△ε+e*△delay
式中、△pverdは、点火前の圧縮相時のシリンダ圧の偏差であり、△airは空気量均等物の偏差であり、△MFBは燃焼中心の偏差であり、△εは圧縮比の偏差であり、△delayは点火遅延の偏差であることを特徴とする項目7記載の方法。
(項目9)
対応するシリンダ(2)の燃料量(Q)が燃焼パラメータとして使用されることを特徴とする項目1から8のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記シリンダ特有第1シリンダ信号(pmax、E)が前記シリンダ特有規準シリンダ値(pmax’、E’)より小さいなら、シリンダ(2)の燃料量(Q)は増加されることを特徴とする項目9記載の方法。
(項目11)
前記シリンダ特有第1シリンダ信号(pmax、E)が前記シリンダ特有規準シリンダ値(pmax’、E’)より大きいなら、シリンダ(2)の燃料量(Q)は減少されることを特徴とする項目9記載の方法。
(項目12)
燃料制御バルブ(3)がそれぞれのシリンダ(2)に提供され、シリンダ(2)の燃料量(Q)を調整するために、対応する燃料制御バルブ(3)の開放時間(tcyl)が調整されることを特徴とする項目9から11のいずれかに記載の方法。
(項目13)
対応するシリンダ(2)の着火点(Z)が燃焼パラメータとして調整されることを特徴とする項目1から12のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記シリンダ特有第1シリンダ信号(pmax、E)が前記シリンダ特有規準シリンダ値(pmax’、E’)より小さいなら、シリンダ(2)の着火点(Z)は早目に設定されることを特徴とする項目13記載の方法。
(項目15)
前記シリンダ特有第1シリンダ信号(pmax、E)が前記シリンダ特有規準シリンダ値(pmax’、E’)より大きいなら、シリンダ(2)の着火点(Z)は遅目に設定されることを特徴とする項目13記載の方法。
(項目16)
点火装置(18)がそれぞれのシリンダ(2)に提供され、該点火装置(18)の着火点(Z)はTDC前方のクランク角度(tcyl)で設定されることを特徴とする項目13から15のいずれかに記載の方法。
(項目17)
前記少なくとも1つの燃焼パラメータ(Q、Z)を設定するため、パラメータ(tcyl)が決定され、好適には該パラメータ(tcyl)は、明記可能な全体的エンジン目標値(tg)を含んでいることを特徴とする項目1から16のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記明記可能な目標値(tg)は明記可能な燃料・空気混合比(λ)から決定され、好適には、該明記可能な燃料・空気混合比(λ)は内燃機関(1)の出力パワーのパワー均等物(P)、好適には内燃機関(1)に接続された発電機からの電力から決定され、及び/又は内燃機関(1)の吸気圧(pA)から、及び/又はエンジン速度(n)から決定されることを特徴とする項目17記載の方法。
(項目19)
前記明記可能な目標値(tg)は、明記可能な標的パワー均等物(PS)からの、内燃機関(1)の出力パワーのパワー均等物(P)の偏差の関数として、及び/又は、内燃機関(1)の明記可能な標的速度(nS)からの、内燃機関(1)のエンジン速度(n)の偏差の関数として決定されることを特徴とする項目17記載の方法。
(項目20)
それぞれのシリンダ(2)の燃焼状態がモニターされ、明記可能な規準状態との比較により正常であるか異常であるかが評価され、シリンダ(2)の燃焼状態が正常であると評価されたら該シリンダ(2)の燃焼パラメータ(Q、Z)が単に調整されるだけであることを特徴とする項目1から19のいずれかに記載の方法。
(項目21)
燃焼状態としてノッキング及び/又は自己発火及び/又は燃焼妨害がモニターされ、燃焼状態にノッキング及び/又は自己発火及び/又は燃焼妨害が検知されなければ、シリンダ(2)の燃焼状態は正常であると評価されることを特徴とする項目20記載の方法。
本発明のさらなる詳細および利点は、添付図面の説明の助けを借りて以下において解説されている。