【実施例】
【0030】
以下、本発明による電子部品搭載基板およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0031】
[実施例1]
まず、48mm×57mm×0.25mmの無酸素銅からなる(電子部品搭載用)金属板と(放熱用)金属ベース板を用意した。
【0032】
次に、活性金属としてTiを含有するAg−Cu系ろう材を介して、(電子部品搭載用)金属板の一方の面を49mm×58mm×0.64mmのAlNからなるセラミックス基板の一方の主面に接合するとともに、(放熱用)金属ベース板をそのセラミックス基板の他方の面に接合して、金属−セラミックス接合基板を作製した。
【0033】
次に、ウエットブラスト装置(マコー株式会社製の型番NFR−737)により、金属−セラミックス接合基板の(電子部品搭載用)金属板の他方の面の表面処理を行った。なお、ウエットブラスト装置の処理条件として、エアー圧0.20MPa、処理速度0.3m/分、投射距離20mm、投射角度90°とし、水中に砥粒として平均粒径40μmのアルミナ#320を15体積%含む研磨材スラリーを使用した。このウエットブラスト処理後の(電子部品搭載用)金属板について、超深度表面形状測定顕微鏡(株式会社キーエンス製のVK−8500)の線粗さ測定機能を使用して、金属板の表面の任意の100μm×100μmの正方形の領域の1辺に平行な長さ100μmの任意の直線に沿った線粗さを測定した結果から、JIS B0601(2001年)に基づいて表面粗さ(算術平均粗さRa)を算出したところ、0.81μmであった。なお、この金属板の他方の面のビッカース硬さHvを微小硬さ試験機(ヘルモートフィッシャー社製のフィッシャースコープHM2000)により300mN/10sの条件で測定したところ、97.8であった。
【0034】
次に、銀微粒子と銀粒子が分散媒に分散した銀ペーストとして、ソルビン酸で被覆された平均一次粒子径100nmの銀微粒子(銀ナノ粒子)の凝集体の乾燥粉末と平均一次粒径(D
50径)1.0μmの球状銀粒子の粉末(DOWAエレクトロニクス株式会社製の2−1C球状銀粉末)とを分散剤とともに分散媒に混合した銀ペースト(DOWAエレクトロニクス株式会社製のPA−HT−1001L)を用意した。この銀ペーストを上記の金属−セラミックス接合基板の(電子部品搭載用)金属板の(表面処理した)表面の電子部品搭載部分に塗布し、その上に電子部品として底面(裏面)が金めっきされた(13mm×13mmの大きさの)Siチップを配置し、大気中において、100℃で10分間予備加熱した後、Siゴムシートを介して7MPaで加圧しながら260℃で2分間加熱して、(電子部品搭載用)金属板にSiチップを接合した。
【0035】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、(電子部品搭載用)金属板とSiチップとの接合部を超音波探傷装置(SAT)(日立建機ファインテック株式会社製のFS100II)により観察したところ、接合部の剥がれはなく、ボイドなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。
【0036】
また、作製した電子部品搭載基板を−40℃で15分間保持した後に室温で1分間保持し、その後、175℃で15分間保持した後に室温で1分間保持するヒートサイクルの100サイクル後と300サイクル後の接合状態を確認したところ、100サイクル後の電子部品搭載基板では、(電子部品搭載用)金属板とSiチップが良好に接合されていたが、300サイクル後の電子部品搭載基板では、(わずかにボイドなどの接合欠陥による不良状態が見られたが)ほぼ良好に接合されていた。
【0037】
[実施例2]
(電子部品搭載用)金属板の表面処理を行った金属−セラミックス接合基板を還元ガス雰囲気として水素ガス中において370℃で30分間加熱して焼鈍した以外は、実施例1と同様の方法により、電子部品搭載基板を作製した。なお、焼鈍後の(電子部品搭載用)金属板の(表面処理した)表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は0.77μmであり、その(電子部品搭載用)金属板の(表面処理した)表面のビッカース硬さHvは36.1であった。
【0038】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、実施例1と同様の方法により、(電子部品搭載用)金属板とSiチップとの接合部を観察したところ、接合部の剥がれはなく、良好に接合されていた。
【0039】
また、作製した電子部品搭載基板について、実施例1と同様のヒートサイクル後の接合状態を確認したところ、100サイクル後と300サイクル後のいずれも、(電子部品搭載用)金属板とSiチップが良好に接合されていた。
【0040】
[比較例1]
ウエットブラスト処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、電子部品搭載基板を作製した。なお、(電子部品搭載用)金属板の(表面処理した)表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は0.09μmであり、(電子部品搭載用)金属板のビッカース硬さHvは35.4であった。
【0041】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、実施例1と同様の方法により、(電子部品搭載用)金属板とSiチップとの接合部を観察したところ、(わずかに不良状態が見られたが)ほぼ良好に接合されていた。
【0042】
また、作製した電子部品搭載基板について、実施例1と同様のヒートサイクル後の接合状態を確認したところ、100サイクル後の電子部品搭載基板では、(わずかに不良状態が見られたが)ほぼ良好に接合されていたか、一部不良状態があったが接合部の剥がれまでには至っておらず、300サイクル後の電子部品搭載基板では、一部不良状態があったが接合部の剥がれまでには至っていなかった。
【0043】
[実施例3]
鋳型内に78mm×95mm×0.64mmの大きさのAlNからなるセラミックス基板を配置し、このセラミックス基板の両主面に接触するように99.9質量%のアルミニウムの溶湯を注湯した後に溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板の各々の主面に68mm×85mm×0.2mmの大きさの(電子部品搭載用)金属板と68mm×85mm×0.2mmの大きさの(放熱用)金属ベース板を形成して、それぞれセラミックス基板の主面に直接接合させた。
【0044】
次に、実施例1と同様のウエットブラスト装置により(電子部品搭載用)金属板の表面処理を行った。なお、ウエットブラスト装置の処理条件として、エアー圧0.20MPa、処理速度0.3m/分、投射距離30mm、投射角度90°とし、水中に砥粒として平均粒径40μmのアルミナ#320を15体積%含む研磨材スラリーを使用した。このウエットブラスト処理後の(電子部品搭載用)金属板について、実施例1と同様の方法により、表面粗さ(算術平均粗さRa)を算出したところ、1.6μmであった。なお、この金属板のビッカース硬さHvは29.1であった。
【0045】
次に、表面処理後の(電子部品搭載用)金属板の表面の脱脂および化学研磨を行い、この脱脂および化学研磨後の(電子部品搭載用)金属板を、25℃の亜鉛置換液(奥野製薬工業株式会社製のサブスターZN−111)に30秒間浸漬して亜鉛置換を行い、水洗し、硝酸に室温で30秒間浸漬して酸洗し、水洗し、上記と同じ亜鉛置換液に30秒間浸漬して2回目の亜鉛置換を行った後、水洗することにより、(電子部品搭載用)金属板のダブルジンケート処理(2回亜鉛置換)を行った。
【0046】
次に、ダブルジンケート処理後の(電子部品搭載用)金属板を無電解ニッケルめっき液(奥野製薬工業株式会社製のトップニコロンTOM−LF)に浸漬することにより、(電子部品搭載用)金属板上に厚さ4〜5μmのNiめっき層を形成した。
【0047】
次に、Niめっき層を形成した(電子部品搭載用)金属板を無電解銅めっき液(奥野製薬工業株式会社製のAIS−アドカッパーCT)に浸漬することにより、電子部品搭載用)金属板上のNiめっき層上に厚さ0.4〜0.5μmのCuめっき層を形成した。
【0048】
なお、Cuめっき層を形成した後の(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層の表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は1.6μmであり、ビッカース硬さHvは29.1であった。
【0049】
次に、接合の際の圧力を5MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により、電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層にSiチップを接合した。
【0050】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、実施例1と同様の方法により、(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層とSiチップとの接合部を観察したところ、接合部の剥がれはなく、良好に接合されていた。
【0051】
また、作製した電子部品搭載基板を−40℃で15分間保持した後に室温で1分間保持し、その後、250℃で5分間保持した後に室温で1分間保持するヒートサイクルの100サイクル後、300サイクル後および1000サイクル後の接合状態を確認したところ、100サイクル後、300サイクル後および1000サイクル後のいずれも、(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層とSiチップが良好に接合されていた。
【0052】
[比較例2]
表面処理としてウエットブラスト処理に代えてパフ研磨を行った以外は、実施例3と同様の方法により、電子部品搭載基板を作製した。なお、(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層の(表面処理した)表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は0.15μmであり、(電子部品搭載用)金属板のビッカース硬さHvは29.1であった。
【0053】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、実施例3と同様の方法により、(電子部品搭載用)金属板とSiチップとの接合部を観察したところ、接合部の剥がれはなく、良好に接合されていた。
【0054】
また、作製した電子部品搭載基板について、実施例1と同様のヒートサイクル後の接合状態を確認したところ、100サイクル後の電子部品搭載基板では、(電子部品搭載用)金属板とSiチップが良好に接合され、300サイクル後の電子部品搭載基板では、(わずかに不良状態が見られたが)ほぼ良好に接合されていたか、一部不良状態があったが接合部の剥がれまでには至っておらず、1000サイクル後の電子部品搭載基板では、一部不良状態があったが接合部の剥がれまでには至っていなかった。
【0055】
[実施例4]
鋳型内に34mm×31mm×0.6mmの大きさのAlNからなるセラミックス基板を配置し、このセラミックス基板の各々の主面に30mm×27mm×0.4mmの大きさの(電子部品搭載用)金属板と30mm×27mm×0.4mmの大きさの(放熱用)金属ベース板を形成した以外は、実施例3と同様の方法により、セラミックス基板の各々の主面に金属板を直接接合させて金属−セラミックス接合基板を作製した後、金属板の表面処理およびダブルジンケート処理を行い、Niめっき層及びCuめっき層を形成した。なお、Cuめっき層を形成した後の(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層の表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は1.5μmであり、ビッカース硬さHvは29.0であった。
【0056】
次に、作製した金属−セラミックス接合基板の(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層の表面の電子部品搭載部分に、実施例1と同様の銀ペーストを塗布し、その上に電子部品としてSiチップ(底面(裏面)に下地層として厚さ1μmのTiめっき層と(その上の)厚さ3μmのNiめっき層が形成されるとともにこれらの下地層が金めっきされた(7mm×7mmの大きさの)Siチップ)を配置し、窒素雰囲気中において、昇温速度1℃/sで昇温させた後、6MPaで加圧しながら250℃で5分間加熱して、(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層にSiチップを接合した。
【0057】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層とSiチップとの接合部を走査型超音波顕微鏡(SAM)(日立建機ファインテック株式会社製のFineSAT FS100II)により観察したところ、接合部の剥がれはなく、良好に接合されていた。また、(電子部品搭載用)金属板とSiチップとの接合部のせん断強度をせん断強度測定器(ライジ社製のDAGE200)により測定したところ、40MPa以上であり、良好に接合されていた。
【0058】
また、作製した電子部品搭載基板について、実施例3と同様のヒートサイクルの100サイクル後と500サイクル後と1000サイクル後の接合状態をSAMにより観察したところ、100サイクル後と500サイクル後と1000サイクル後のいずれも、(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層とSiチップが良好に接合されていた。また、実施例3と同様のヒートサイクルの100サイクル後と500サイクル後と1000サイクル後の(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層とSiチップとの接合部のせん断強度を測定したところ、100サイクル後と500サイクル後のせん断強度は40MPa以上、1000サイクル後のせん断強度は29MPaであり、良好に接合されていた。