特許第6262968号(P6262968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262968
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】電子部品搭載基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20180104BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20180104BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20180104BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   H01L21/52 D
   H01L23/12 C
   H01L23/12 F
   H05K3/32 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-185997(P2013-185997)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-53414(P2015-53414A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】砂地 直也
(72)【発明者】
【氏名】小山内 英世
(72)【発明者】
【氏名】栗田 哲
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/061112(WO,A1)
【文献】 特表平8−509844(JP,A)
【文献】 特開2006−202586(JP,A)
【文献】 特開2011−80147(JP,A)
【文献】 特開2014−130989(JP,A)
【文献】 国際公開第98/054761(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/52
H01L21/58
H01L23/12−23/15
H05K3/32
C25D7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅板または銅めっき板の一方の面に電子部品が搭載された電子部品搭載基板の製造方法において、銅板または銅めっき板の一方の面の表面粗さを0.4μm以上にする表面加工を行った後、その銅板または銅めっき板を焼鈍し、その一方の面に銀ペーストを塗布して電子部品を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によって電子部品を銅板または銅めっき板の一方の面に接合することを特徴とする、電子部品搭載基板の製造方法。
【請求項2】
前記焼鈍により前記銅板または銅めっき板のビッカース硬さHvを40以下にすることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品搭載基板の製造方法。
【請求項3】
前記表面加工がウエットブラスト処理であることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子部品搭載基板の製造方法。
【請求項4】
前記銅板または銅めっき板の他方の面にセラミックス基板の一方の面を接合することを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の電子部品搭載基板の製造方法。
【請求項5】
前記セラミックス基板の他方の面に金属ベース板を接合することを特徴とする、請求項に記載の電子部品搭載基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品搭載基板およびその製造方法に関し、特に、銅板また銅めっき板の一方の面がセラミックス基板に接合した金属−セラミックス接合基板の金属板の他方の面に半導体チップなどの電子部品が取り付けられた電子部品搭載基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車、電車、工作機械などの大電流を制御するために、パワーモジュールが使用されている。従来のパワーモジュールでは、ベース板と呼ばれている金属板または複合材の一方の面に金属−セラミックス絶縁基板が固定され、この金属−セラミックス絶縁基板の金属板上に半導体チップが半田付けにより固定されている。
【0003】
近年、銀微粒子を含む銀ペーストを接合材として使用し、銅板などの被接合物間に接合材を介在させ、被接合物間に圧力を加えながら所定時間加熱して、接合材中の銀を焼結させて、被接合物同士を接合することが提案されており(例えば、特許文献1参照)、このような銀微粒子を含む銀ペーストからなる接合材を半田の代わりに使用して、金属−セラミックス絶縁基板の金属板上に半導体チップなどの電子部品を固定する試みがなされている。
【0004】
このように電子部品を基板上に固定する方法として、半導体素子の端子と基板の電極との間に低温で焼結するAgナノ粒子を介在させ、Agナノ粒子を焼結させて、半導体素子の端子と基板の電極とを接合する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、半導体素子のAg部分とセラミックス絶縁基板上のCu回路板とを、Agナノ粒子を有機系溶媒中に分散させた金属ナノペーストを介在させて、加熱して接合する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この方法では、Cu回路板が半導体素子のAg部分と接合するCu回路板の表面に凹部を形成して、大面積の接合に有利にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−80147号公報(段落番号0014−0020)
【特許文献2】特開2007−208082号公報(段落番号0007−0016)
【特許文献3】特開2006−202586号公報(段落番号0009−0012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜3の方法では、(電子部品搭載用)金属板として銅板または(アルミニウム板に銅めっきを施した)銅めっき板を使用して、銀ペーストからなる接合材によって、金属板上に半導体チップなどの電子部品を接合した場合、接合欠陥が少ない状態で接合することができず、接合後にヒートサイクルを付与すると、良好な接合状態を保持することができなかった。
【0008】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、銅板または銅めっき板上に電子部品を接合欠陥が少ない状態で接合して、ヒートサイクルを付与した後にも良好な接合状態を保持することができる、耐熱衝撃性に優れた電子部品搭載基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、銅板または銅めっき板の一方の面に電子部品が搭載された電子部品搭載基板の製造方法において、銅板または銅めっき板の一方の面の表面粗さを0.4μm以上にする表面加工を行い、その面に銀ペーストを塗布して電子部品を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によって電子部品を銅板または銅めっき板の一方の面に接合することにより、銅板または銅めっき板上に電子部品を接合欠陥が少ない状態で接合して、ヒートサイクルを付与した後にも良好な接合状態を保持することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明による電子部品搭載基板の製造方法は、銅板または銅めっき板の一方の面に電子部品が搭載された電子部品搭載基板の製造方法において、銅板または銅めっき板の一方の面の表面粗さを0.4μm以上にする表面加工を行い、その面に銀ペーストを塗布して電子部品を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によって電子部品を銅板または銅めっき板の一方の面に接合することを特徴とする。
【0011】
この電子部品搭載基板の製造方法において、表面加工がウエットブラスト処理であるのが好ましい。また、表面加工を行った後、銀ペーストを塗布する前に、銅板または銅めっき板を焼鈍するのが好ましく、この焼鈍により銅板または銅めっき板のビッカース硬さHvを40以下にするのが好ましい。また、銀ペースト中の銀の焼結は、銅板または銅めっき板に対して電子部品を加圧しながら加熱するのが好ましい。また、電子部品の銅板または銅めっき板の一方の面に接合される面が、金、銀およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合金でめっきされているのが好ましい。また、銅板または銅めっき板の他方の面にセラミックス基板の一方の面を接合するのが好ましく、セラミックス基板の他方の面に金属ベース板を接合するのが好ましい。
【0012】
また、本発明による電子部品搭載基板は、銅板または銅めっき板の一方の面に電子部品が搭載された電子部品搭載基板において、銅板または銅めっき板の一方の面の表面粗さが0.4μm以上であり、この銅板または銅めっき板の一方の面に銀接合層により電子部品が接合されていることを特徴とする。
【0013】
この電子部品搭載基板において、銅板または銅めっき板の一方の面の表面粗さが0.5〜2.0μmであるのが好ましい。また、銅板または銅めっき板の一方の面のビッカース硬さHvが100以下であるのが好ましく、40以下であるのがさらに好ましい。また、電子部品の銅板または銅めっき板の一方の面に接合される面が、金、銀およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合金でめっきされているのが好ましい。また、銀接合層が銀の焼結体を含むのが好ましい。また、銅板または銅めっき板の他方の面にセラミックス基板の一方の面が接合されているのが好ましく、セラミックス基板の他方の面に金属ベース板が接合されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、銅板または銅めっき板上に電子部品を接合欠陥が少ない状態で接合して、ヒートサイクルを付与した後にも良好な接合状態を保持することができる、耐熱衝撃性に優れた電子部品搭載基板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による電子部品搭載基板の実施の形態の断面図である。
図2図1の電子部品搭載基板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明による電子部品搭載基板およびその製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、本発明による電子部品搭載基板の実施の形態では、平面形状が略矩形の(電子部品搭載用)金属板10の一方の主面に、(銀の焼結体を含む)銀接合層12により電子部品14が接合されている。また、金属板10の他方の主面に、平面形状が略矩形のセラミックス基板16の一方の主面を接合し、このセラミックス基板16の他方の主面に、平面形状が略矩形の放熱用金属板(金属ベース板)18を接合してもよい。また、金属板10の一方の主面に銅めっき皮膜20を形成し、その銅めっき皮膜20上に、銀接合層12により電子部品14を接合してもよい。
【0018】
なお、金属板10は、銅あるいは(銅めっき皮膜20を形成する場合には)アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、金属板10の一方の主面(または銅めっき皮膜20の表面)(電子部品14が接合される面)の表面粗さが0.4μm以上、好ましくは0.5〜2.0μmになっている。また、金属板10の一方の主面(または銅めっき皮膜20の表面)(電子部品14が接合される面)のビッカース硬さHvが100以下であるのが好ましく、40以下であるのがさらに好ましい。
【0019】
また、電子部品14の金属板10の一方の主面(電子部品14が接合される面)(銅めっき皮膜20を形成する場合には銅めっき皮膜20の表面)に接合される面が、金、銀、銅およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合金のように、銀接合層12で接合可能な金属で覆われているのが好ましく、金、銀およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合金でめっきされているのが好ましい。
【0020】
本発明による電子部品搭載基板の製造方法の実施の形態では、銅あるいは(銅めっき皮膜20を形成する場合には)アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板10の一方の主面(または銅めっき皮膜20の表面)に電子部品14が搭載された電子部品搭載基板の製造方法において、金属板10の一方の主面(または銅めっき皮膜20の表面)(電子部品14が接合される面)を粗くしてその表面粗さを0.4μm以上、好ましくは0.5〜2.0μmにする表面加工を行い、その主面(または銅めっき皮膜20の表面)に銀ペーストを塗布して電子部品14を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層12を形成し、この銀接合層12によって電子部品14を金属板10の一方の主面(または銅めっき皮膜20の表面)に接合する。
【0021】
また、表面加工を行った後、銀ペーストを塗布する前に、金属板10の一方の主面(または銅めっき皮膜20の表面)(電子部品14が接合される面)を加熱処理して焼鈍するのが好ましく、この焼鈍により金属板10(または銅めっき皮膜20)のビッカース硬さHvを(小さくして)40以下に(軟らかく)するのが好ましい。この焼鈍の際の加熱温度は、300〜650℃であるのが好ましく、350〜450℃であるのがさらに好ましい。また、この焼鈍の際の加熱時間は、15〜90分間であるのが好ましく、30〜60分間であるのがさらに好ましい。
【0022】
なお、銀ペースト中の銀の焼結は、金属板10(または銅めっき皮膜20)に対して電子部品14を加圧しながら加熱することによって行うのが好ましい。この焼結の際の加熱温度は、200〜400℃であるのが好ましく、220〜300℃であるのがさらに好ましい。また、この焼結の際の加熱時間は、1〜10分間であるのが好ましい。また、この焼結の際に加圧する圧力は、10MPa以下でよく、2〜10MPaであるのが好ましく、3〜8MPaであるのがさらに好ましい。
【0023】
また、金属板10の他方の主面に、平面形状が略矩形のセラミックス基板16の一方の主面を接合し、このセラミックス基板16の他方の主面に、平面形状が略矩形の放熱用金属板(金属ベース板)18を接合してもよい。この場合、これらの金属板10とセラミックス基板16の間およびセラミックス基板16と金属ベース板18の間の接合の後に、金属板10の一方の主面(または銅めっき皮膜20の表面)(電子部品14が接合される面)の表面加工を行い、その主面(または銅めっき皮膜20の表面)に銀ペーストを塗布して電子部品14を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層12を形成し、この銀接合層12によって電子部品14を金属板10の一方の主面(または銅めっき皮膜20の表面)に接合すればよい。
【0024】
なお、金属板10が銅板からなる場合には、金属板10とセラミックス基板16の間およびセラミックス基板16と金属ベース板18の間を直接接合してもよいし、ろう材を介して接合してもよい。これらの場合、金属板10とセラミックス基板16の間(およびセラミックス基板16と金属ベース板18の間)の接合の前に、金属板10の一方の主面(または銅めっき皮膜20の表面)の表面加工を行ってもよい。この場合、表面加工後に加熱処理による焼鈍をしなくても、接合の際に金属板10(または銅めっき皮膜20)が加熱されることにより、金属板10(または銅めっき皮膜20)のビッカース硬さHvを(小さくして)40以下に(軟らかく)することができる。
【0025】
また、金属板10がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる場合には、金属板10とセラミックス基板16の間およびセラミックス基板16と金属ベース板18の間の接合では、(図示しない)鋳型内にセラミックス基板16を配置した後、セラミックス基板16の両主面に接触するようにアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を注湯した後に溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板16の各々の主面に金属板10および金属ベース板18を形成して直接接合させるのが好ましい。
【0026】
また、表面加工は、(液体中に微粒子を含む研磨材スラリーを金属板の表面に噴射するウエットブラスト処理などの)ブラスト処理や、(砥粒としてラップ剤を介してラップ盤上に金属板を配置して金属板に圧力を加えてスライディングさせて研磨する)ラップ加工によって行うのが好ましい。
【0027】
また、銀ペーストとして、400℃以下の温度で焼結可能な銀微粒子を含むペーストを使用することができ、ソルビン酸などの炭素数8以下(好ましくは6〜8)の有機化合物で被覆された平均一次粒子径1〜200nmの銀微粒子が分散媒(好ましくは極性溶媒)に分散した接合材(例えば、DOWAエレクトロニクス株式会社製のPA−HT−1503M−C)を使用するのが好ましい。このような銀微粒子が分散した分散媒に平均一次粒径(D50径)が0.5〜3.0μmの(球状)銀粒子がさらに分散した接合材(例えば、DOWAエレクトロニクス株式会社製のPA−HT−1001L)を使用してもよい。
【0028】
本発明による電子部品搭載基板の製造方法の実施の形態では、銀ペースト中の銀の焼結の際に5〜7MPa程度の低い圧力で加圧しながら250〜260℃程度の低温で加熱した場合でも、金属板(銅板または銅めっき板)上に(接合部に空隙などの接合欠陥が殆どなく)十分な接合強度で電子部品を接合することができる。
【0029】
なお、本明細書中において、「表面粗さ」とは、JIS B0601(2001年)に基づいて算出した算術平均粗さRaをいう。また、「銀粒子の平均一次粒径(D50径)」とは、レーザー回折法により測定した銀粒子の50%粒径(D50径)(累積50質量%粒径)をいい、「銀微粒子の平均一次粒子径」とは、透過型電子顕微鏡写真(TEM像)による銀微粒子の一次粒子径の平均値をいう。
【実施例】
【0030】
以下、本発明による電子部品搭載基板およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0031】
[実施例1]
まず、48mm×57mm×0.25mmの無酸素銅からなる(電子部品搭載用)金属板と(放熱用)金属ベース板を用意した。
【0032】
次に、活性金属としてTiを含有するAg−Cu系ろう材を介して、(電子部品搭載用)金属板の一方の面を49mm×58mm×0.64mmのAlNからなるセラミックス基板の一方の主面に接合するとともに、(放熱用)金属ベース板をそのセラミックス基板の他方の面に接合して、金属−セラミックス接合基板を作製した。
【0033】
次に、ウエットブラスト装置(マコー株式会社製の型番NFR−737)により、金属−セラミックス接合基板の(電子部品搭載用)金属板の他方の面の表面処理を行った。なお、ウエットブラスト装置の処理条件として、エアー圧0.20MPa、処理速度0.3m/分、投射距離20mm、投射角度90°とし、水中に砥粒として平均粒径40μmのアルミナ#320を15体積%含む研磨材スラリーを使用した。このウエットブラスト処理後の(電子部品搭載用)金属板について、超深度表面形状測定顕微鏡(株式会社キーエンス製のVK−8500)の線粗さ測定機能を使用して、金属板の表面の任意の100μm×100μmの正方形の領域の1辺に平行な長さ100μmの任意の直線に沿った線粗さを測定した結果から、JIS B0601(2001年)に基づいて表面粗さ(算術平均粗さRa)を算出したところ、0.81μmであった。なお、この金属板の他方の面のビッカース硬さHvを微小硬さ試験機(ヘルモートフィッシャー社製のフィッシャースコープHM2000)により300mN/10sの条件で測定したところ、97.8であった。
【0034】
次に、銀微粒子と銀粒子が分散媒に分散した銀ペーストとして、ソルビン酸で被覆された平均一次粒子径100nmの銀微粒子(銀ナノ粒子)の凝集体の乾燥粉末と平均一次粒径(D50径)1.0μmの球状銀粒子の粉末(DOWAエレクトロニクス株式会社製の2−1C球状銀粉末)とを分散剤とともに分散媒に混合した銀ペースト(DOWAエレクトロニクス株式会社製のPA−HT−1001L)を用意した。この銀ペーストを上記の金属−セラミックス接合基板の(電子部品搭載用)金属板の(表面処理した)表面の電子部品搭載部分に塗布し、その上に電子部品として底面(裏面)が金めっきされた(13mm×13mmの大きさの)Siチップを配置し、大気中において、100℃で10分間予備加熱した後、Siゴムシートを介して7MPaで加圧しながら260℃で2分間加熱して、(電子部品搭載用)金属板にSiチップを接合した。
【0035】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、(電子部品搭載用)金属板とSiチップとの接合部を超音波探傷装置(SAT)(日立建機ファインテック株式会社製のFS100II)により観察したところ、接合部の剥がれはなく、ボイドなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。
【0036】
また、作製した電子部品搭載基板を−40℃で15分間保持した後に室温で1分間保持し、その後、175℃で15分間保持した後に室温で1分間保持するヒートサイクルの100サイクル後と300サイクル後の接合状態を確認したところ、100サイクル後の電子部品搭載基板では、(電子部品搭載用)金属板とSiチップが良好に接合されていたが、300サイクル後の電子部品搭載基板では、(わずかにボイドなどの接合欠陥による不良状態が見られたが)ほぼ良好に接合されていた。
【0037】
[実施例2]
(電子部品搭載用)金属板の表面処理を行った金属−セラミックス接合基板を還元ガス雰囲気として水素ガス中において370℃で30分間加熱して焼鈍した以外は、実施例1と同様の方法により、電子部品搭載基板を作製した。なお、焼鈍後の(電子部品搭載用)金属板の(表面処理した)表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は0.77μmであり、その(電子部品搭載用)金属板の(表面処理した)表面のビッカース硬さHvは36.1であった。
【0038】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、実施例1と同様の方法により、(電子部品搭載用)金属板とSiチップとの接合部を観察したところ、接合部の剥がれはなく、良好に接合されていた。
【0039】
また、作製した電子部品搭載基板について、実施例1と同様のヒートサイクル後の接合状態を確認したところ、100サイクル後と300サイクル後のいずれも、(電子部品搭載用)金属板とSiチップが良好に接合されていた。
【0040】
[比較例1]
ウエットブラスト処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、電子部品搭載基板を作製した。なお、(電子部品搭載用)金属板の(表面処理した)表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は0.09μmであり、(電子部品搭載用)金属板のビッカース硬さHvは35.4であった。
【0041】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、実施例1と同様の方法により、(電子部品搭載用)金属板とSiチップとの接合部を観察したところ、(わずかに不良状態が見られたが)ほぼ良好に接合されていた。
【0042】
また、作製した電子部品搭載基板について、実施例1と同様のヒートサイクル後の接合状態を確認したところ、100サイクル後の電子部品搭載基板では、(わずかに不良状態が見られたが)ほぼ良好に接合されていたか、一部不良状態があったが接合部の剥がれまでには至っておらず、300サイクル後の電子部品搭載基板では、一部不良状態があったが接合部の剥がれまでには至っていなかった。
【0043】
[実施例3]
鋳型内に78mm×95mm×0.64mmの大きさのAlNからなるセラミックス基板を配置し、このセラミックス基板の両主面に接触するように99.9質量%のアルミニウムの溶湯を注湯した後に溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板の各々の主面に68mm×85mm×0.2mmの大きさの(電子部品搭載用)金属板と68mm×85mm×0.2mmの大きさの(放熱用)金属ベース板を形成して、それぞれセラミックス基板の主面に直接接合させた。
【0044】
次に、実施例1と同様のウエットブラスト装置により(電子部品搭載用)金属板の表面処理を行った。なお、ウエットブラスト装置の処理条件として、エアー圧0.20MPa、処理速度0.3m/分、投射距離30mm、投射角度90°とし、水中に砥粒として平均粒径40μmのアルミナ#320を15体積%含む研磨材スラリーを使用した。このウエットブラスト処理後の(電子部品搭載用)金属板について、実施例1と同様の方法により、表面粗さ(算術平均粗さRa)を算出したところ、1.6μmであった。なお、この金属板のビッカース硬さHvは29.1であった。
【0045】
次に、表面処理後の(電子部品搭載用)金属板の表面の脱脂および化学研磨を行い、この脱脂および化学研磨後の(電子部品搭載用)金属板を、25℃の亜鉛置換液(奥野製薬工業株式会社製のサブスターZN−111)に30秒間浸漬して亜鉛置換を行い、水洗し、硝酸に室温で30秒間浸漬して酸洗し、水洗し、上記と同じ亜鉛置換液に30秒間浸漬して2回目の亜鉛置換を行った後、水洗することにより、(電子部品搭載用)金属板のダブルジンケート処理(2回亜鉛置換)を行った。
【0046】
次に、ダブルジンケート処理後の(電子部品搭載用)金属板を無電解ニッケルめっき液(奥野製薬工業株式会社製のトップニコロンTOM−LF)に浸漬することにより、(電子部品搭載用)金属板上に厚さ4〜5μmのNiめっき層を形成した。
【0047】
次に、Niめっき層を形成した(電子部品搭載用)金属板を無電解銅めっき液(奥野製薬工業株式会社製のAIS−アドカッパーCT)に浸漬することにより、電子部品搭載用)金属板上のNiめっき層上に厚さ0.4〜0.5μmのCuめっき層を形成した。
【0048】
なお、Cuめっき層を形成した後の(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層の表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は1.6μmであり、ビッカース硬さHvは29.1であった。
【0049】
次に、接合の際の圧力を5MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により、電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層にSiチップを接合した。
【0050】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、実施例1と同様の方法により、(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層とSiチップとの接合部を観察したところ、接合部の剥がれはなく、良好に接合されていた。
【0051】
また、作製した電子部品搭載基板を−40℃で15分間保持した後に室温で1分間保持し、その後、250℃で5分間保持した後に室温で1分間保持するヒートサイクルの100サイクル後、300サイクル後および1000サイクル後の接合状態を確認したところ、100サイクル後、300サイクル後および1000サイクル後のいずれも、(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層とSiチップが良好に接合されていた。
【0052】
[比較例2]
表面処理としてウエットブラスト処理に代えてパフ研磨を行った以外は、実施例3と同様の方法により、電子部品搭載基板を作製した。なお、(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層の(表面処理した)表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は0.15μmであり、(電子部品搭載用)金属板のビッカース硬さHvは29.1であった。
【0053】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、実施例3と同様の方法により、(電子部品搭載用)金属板とSiチップとの接合部を観察したところ、接合部の剥がれはなく、良好に接合されていた。
【0054】
また、作製した電子部品搭載基板について、実施例1と同様のヒートサイクル後の接合状態を確認したところ、100サイクル後の電子部品搭載基板では、(電子部品搭載用)金属板とSiチップが良好に接合され、300サイクル後の電子部品搭載基板では、(わずかに不良状態が見られたが)ほぼ良好に接合されていたか、一部不良状態があったが接合部の剥がれまでには至っておらず、1000サイクル後の電子部品搭載基板では、一部不良状態があったが接合部の剥がれまでには至っていなかった。
【0055】
[実施例4]
鋳型内に34mm×31mm×0.6mmの大きさのAlNからなるセラミックス基板を配置し、このセラミックス基板の各々の主面に30mm×27mm×0.4mmの大きさの(電子部品搭載用)金属板と30mm×27mm×0.4mmの大きさの(放熱用)金属ベース板を形成した以外は、実施例3と同様の方法により、セラミックス基板の各々の主面に金属板を直接接合させて金属−セラミックス接合基板を作製した後、金属板の表面処理およびダブルジンケート処理を行い、Niめっき層及びCuめっき層を形成した。なお、Cuめっき層を形成した後の(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層の表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は1.5μmであり、ビッカース硬さHvは29.0であった。
【0056】
次に、作製した金属−セラミックス接合基板の(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層の表面の電子部品搭載部分に、実施例1と同様の銀ペーストを塗布し、その上に電子部品としてSiチップ(底面(裏面)に下地層として厚さ1μmのTiめっき層と(その上の)厚さ3μmのNiめっき層が形成されるとともにこれらの下地層が金めっきされた(7mm×7mmの大きさの)Siチップ)を配置し、窒素雰囲気中において、昇温速度1℃/sで昇温させた後、6MPaで加圧しながら250℃で5分間加熱して、(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層にSiチップを接合した。
【0057】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層とSiチップとの接合部を走査型超音波顕微鏡(SAM)(日立建機ファインテック株式会社製のFineSAT FS100II)により観察したところ、接合部の剥がれはなく、良好に接合されていた。また、(電子部品搭載用)金属板とSiチップとの接合部のせん断強度をせん断強度測定器(ライジ社製のDAGE200)により測定したところ、40MPa以上であり、良好に接合されていた。
【0058】
また、作製した電子部品搭載基板について、実施例3と同様のヒートサイクルの100サイクル後と500サイクル後と1000サイクル後の接合状態をSAMにより観察したところ、100サイクル後と500サイクル後と1000サイクル後のいずれも、(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層とSiチップが良好に接合されていた。また、実施例3と同様のヒートサイクルの100サイクル後と500サイクル後と1000サイクル後の(電子部品搭載用)金属板上のCuめっき層とSiチップとの接合部のせん断強度を測定したところ、100サイクル後と500サイクル後のせん断強度は40MPa以上、1000サイクル後のせん断強度は29MPaであり、良好に接合されていた。
【符号の説明】
【0059】
10 (電子部品搭載用)金属板
12 銀接合層
14 電子部品
16 セラミックス基板
18 (放熱用)金属ベース板
20 銅めっき皮膜
図1
図2