特許第6262969号(P6262969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262969
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】A型インフルエンザウイルスの測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20180104BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20180104BHJP
   C07K 16/10 20060101ALN20180104BHJP
【FI】
   G01N33/569 L
   G01N33/543 521
   !C07K16/10ZNA
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-187141(P2013-187141)
(22)【出願日】2013年9月10日
(65)【公開番号】特開2015-55475(P2015-55475A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】591125371
【氏名又は名称】デンカ生研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 恭
(72)【発明者】
【氏名】石川 治
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0294879(US,A1)
【文献】 Bucher D et al.,M protein (M1) of influenza virus: antigenic analysis and intracellular localization with monoclonal antibodies,J Virol,1989年 9月,63(9),3622-3633
【文献】 He JL et al.,Preparation of monoclonal antibodies against poor immunogenic avian influenza virus proteins,J Immunol Methods,2013年 1月31日,387(1-2),43-50
【文献】 Ye ZP et al.,Functional and antigenic domains of the matrix (M1) protein of influenza A virus,J Virol,1987年 2月,61(2),239-246
【文献】 Bucher D et al.,JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY,1991年,Vol. 29, No. 11,2484-2488
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A型インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M1)の173〜186番目のアミノ酸領域又は232〜241番目のアミノ酸領域と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と、検体中のA型インフルエンザウイルスとの抗原抗体反応を利用した免疫測定によりA型インフルエンザウイルスを測定することを含む、A型インフルエンザウイルスの測定方法。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体が、A型インフルエンザウイルスの、H1N1、H1N2、H2N2、H2N3、H3N2、H3N8、H4N6、H5N1、H5N2、H6N2、H7N1、H7N7、H7N9、H8N4、H9N2、H10N7、H11N6、H12N5、H13N6、H14N5、H15N8およびH16N3の各亜型ウイルスと抗原抗体反応する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記免疫測定がサンドイッチ法である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
A型インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M1)に同時に結合できる2種類のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を用いる請求項記載の方法。
【請求項5】
前記2種類のモノクローナル抗体が、いずれもA型インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M1)の173〜186番目のアミノ酸領域又は232〜241番目のアミノ酸領域に結合する、請求項記載の方法。
【請求項6】
A型インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M1)の173〜186番目のアミノ酸領域に結合する第1のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と、A型インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M1)の232〜241番目のアミノ酸領域に結合する第2のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片とを用いる請求項記載の方法。
【請求項7】
前記免疫測定がイムノクロマト法である請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
A型インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M1)と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と、A型インフルエンザウイルスの核タンパク質(NP)と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片との混合物を用いる請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
第1の抗体またはその抗原結合性断片が支持体上に固定化された検出領域、第2の抗体またはその抗原結合性断片を検体と共に供給する標識体領域および検体移動領域を備えた免疫測定器具であって、前記第1の抗体及び第2の抗体の少なくとも1つはA型インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M1)の173〜186番目のアミノ酸領域又は232〜241番目のアミノ酸領域と特異的に反応するモノクローナル抗体である免疫測定器具。
【請求項10】
前記第1及び第2の抗体が、A型インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M1)に同時に結合できる2種類のモノクローナル抗体である請求項記載の免疫測定器具。
【請求項11】
A型インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M1)の173〜186番目のアミノ酸領域又は232〜241番目のアミノ酸領域と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項12】
A型インフルエンザウイルスの、H1N1、H1N2、H2N2、H2N3、H3N2、H3N8、H4N6、H5N1、H5N2、H6N2、H7N1、H7N7、H7N9、H8N4、H9N2、H10N7、H11N6、H12N5、H13N6、H14N5、H15N8およびH16N3の各亜型ウイルスと抗原抗体反応する、請求項11記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A型インフルエンザウイルスの測定方法並びにそれに用いられる免疫測定器具及びモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは冬期に流行する感染症で、高熱、上気道炎、倦怠感などの臨床症状を呈するが、それらの症状のみではアデノ、RS、パラインフルエンザ、ヒトメタニューモなど他のウイルスに起因する感染症と区別することは必ずしも容易ではない。
【0003】
インフルエンザの確定診断法としては、ウイルス分離、血清学的診断、核酸検出(PCR法)などがあるが、これらの方法は診察室等の日常の医療現場で簡単に行えるものではないため、より簡便な診断方法が求められていた。近年になり、簡便性と迅速性を兼ね備えた、イムノクロマト法を原理とする抗原検出試薬が開発されると、広く診断補助に利用されるようになった。
【0004】
インフルエンザウイルスは分節状のマイナス鎖RNAをゲノム遺伝子とするウイルスで、HA、NA、PA、PB1、PB2、M、NP、NSの8分節から成る。インフルエンザウイルスは、構成するタンパク質のうち、マトリックスタンパク質(M1)と核タンパク質(NP)の抗原性の違いにより、A型、B型およびC型に分類される。該タンパク質は抗原性がそれぞれ異なるため、異なる型の間で交差反応を示さない。
【0005】
A型インフルエンザウイルスのM分節にはM1とM2という異なる2つの遺伝子がコードされており、それぞれから構成タンパク質が合成される。これらのタンパク質はB型インフルエンザウイルスのM1とBM2に相当するが、A型のM2はB型のBM2と構造が大きく異なる。M1はウイルスエンベロープの内側を裏打ちする形で局在しており、これが実質的な殻の役割を果たしていると考えられている。
【0006】
インフルエンザに対する治療薬として、オセルタミビルリン酸塩、ザナミビル水和物、ペラミビル水和物、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物、アマンタジン塩酸塩が用いられているが、M2阻害剤であるアマンタジン塩酸塩はB型インフルエンザウイルスの感染増殖を阻害しないためA型インフルエンザの治療にのみ用いられる。さらに前4者はノイラミニダーゼ(NA)阻害剤として同一の作用点を示す治療薬であるが、インフルエンザの型によって解熱時間やウイルス残存率などの有効性に差異があることが指摘されている。(非特許文献2)。したがって、インフルエンザの型の鑑別は、その後の適切な治療薬選択のために重要である。
【0007】
A型インフルエンザウイルス同士であっても、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)の抗原性の違いから、複数の亜型に細分類される。これまでに16種類のHA、9種類のNAが報告されており、その組み合わせにより宿主の動物種が限定される要因となるが、ヒトのインフルエンザの原因として知られるH1N1、H3N2、H1N2、H2N2の4種類の他に、H5N1やH7N9のようにまれに他の動物宿主からヒトへの感染も起こりうる。従来の免疫測定器具においても、各亜型に対する反応は確認されていたが、その反応性は一様ではなく、低い反応性の亜型も存在していた。
【0008】
従来のインフルエンザの検出には抗NP抗体(特許文献1ないし3)、抗M2抗体(特許文献4)などが特に用いられていた。また、M1と抗原抗体反応する抗M1抗体を研究に用いた報告(非特許文献3および4)等があるが、診断補助を目的とした免疫測定器具には用いられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-285749
【特許文献2】特許4936428号掲載公報
【特許文献3】WO 2005/007698
【特許文献4】特許4932940号掲載公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ウイルス 第 56 巻 第1号,pp.109-116,2006
【非特許文献2】J Infect. 2008 Jan;56(1):51-7. Epub 2007 Oct 15.(A comparison of the effectiveness of zanamivir and oseltamivir for the treatment of influenza A and B.)
【非特許文献3】Journal of Immunological Methods Volume 387, Issues 1-2, 31 January 2013, Pages 43-50(Preparation of monoclonal antibodies against poor immunogenic avian influenza virus proteins)
【非特許文献4】Virus Genes. 1989 Nov;3(2):111-26.(Monoclonal antibody analysis of influenza virus matrix protein epitopesinvolved in transcription inhibition.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の免疫測定法では、抗NPモノクローナル抗体などが用いられていたが、A型インフルエンザウイルスの亜型によっては反応性が低かった。
【0012】
本発明の目的は、広い亜型に対して反応性の高い抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を用いた免疫測定によるA型インフルエンザウイルスの測定方法を提供することである。また、本発明の目的は、上記本発明の方法に用いる免疫測定器具及びモノクローナル抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、A型インフルエンザウイルスのM1を抗原とし、A型インフルエンザウイルスと特異的に反応する抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を作出することに成功し、さらに、このモノクローナル抗体を用いてA型インフルエンザウイルスを免疫測定することにより、従来の抗NPモノクローナル抗体を用いる免疫測定では検出困難なA型インフルエンザウイルス亜型も測定できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、A型インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M1)の173〜186番目のアミノ酸領域又は232〜241番目のアミノ酸領域と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と、検体中のA型インフルエンザウイルスとの抗原抗体反応を利用した免疫測定によりA型インフルエンザウイルスを測定することを含む、A型インフルエンザウイルスの測定方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、第1の抗体またはその抗原結合性断片が支持体上に固定化された検出領域、第2の抗体またはその抗原結合性断片を検体と共に供給する標識体領域および検体移動領域を備えた免疫測定器具であって、前記第1の抗体及び第2の抗体の少なくとも1つはA型インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M1)の173〜186番目のアミノ酸領域又は232〜241番目のアミノ酸領域と特異的に反応するモノクローナル抗体である免疫測定器具を提供する。さらに、本発明は、A型インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質(M1)の173〜186番目のアミノ酸領域又は232〜241番目のアミノ酸領域と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法によれば、広い亜型のA型インフルエンザウイルスを免疫測定することができる。また、本発明により、上記本発明の方法に用いられる新規な免疫測定器具及びモノクローナル抗体が提供された。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のイムノクロマト免疫測定器具の好ましい1形態を模式的に示した図である。
図2】下記実施例において作製した本発明のモノクローナル抗体の反応性をウェスタンブロット法により調べた結果を示す図である。
図3】下記実施例において作製した本発明のモノクローナル抗体の反応性を調べたペプチドアレイ解析の結果を示す図である。
図4】A型インフルエンザウイルスの各亜型のM1のC末端側のアミノ酸配列と、下記実施例で作製した本発明のモノクローナル抗体が結合する領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のモノクローナル抗体は、A型インフルエンザウイルスM1(以下A−M1と略す)と抗原抗体反応する。A−M1は252アミノ酸残基から構成されるタンパク質であり、ウェスタンブロット法による検出に該抗体を用いることで、分子量20〜35kDに抗原抗体反応による特異的なシグナルを検知することができる。本明細書において「特異的」とは、タンパク質と該抗体が混じり合う液系において、該抗体がA−M1以外のタンパク質成分と検出可能なレベルで抗原抗体反応を起こさないか、または何らかの結合反応や会合反応を起こしたとしても、該抗体のA−M1との抗原抗体反応よりも明らかに弱い反応しか起こさないことを意味する。
【0019】
A−M1のアミノ酸配列は公知であり、例えばGenBank:ACD37490等に記載されている(配列番号1)。各亜型のA−M1アミノ酸配列のうち、127〜252番目のアミノ酸配列を並べて比較したものを図4に示す。
【0020】
本発明のモノクローナル抗体はA−M1アミノ酸配列の173〜186番目のアミノ酸領域、または232〜241番目のアミノ酸領域と結合する(下記実施例参照)。
【0021】
本発明のモノクローナル抗体を基に、抗原結合部位のみを分離させて反応に使用することができる。すなわち、公知の方法により作製された、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(scFv)などの特異的な抗原結合性を有する断片(抗原結合性断片)は本発明の範囲に含まれる。また、モノクローナル抗体のクラスはIgGに限定されず、IgMやIgYでもよい。
【0022】
本発明のモノクローナル抗体は、A型インフルエンザウイルスの、H1N1、H1N2、H2N2、H2N3、H3N2、H3N8、H4N6、H5N1、H5N2、H6N2、H7N1、H7N7、H7N9、H8N4、H9N2、H10N7、H11N6、H12N5、H13N6、H14N5、H15N8およびH16N3の各亜型ウイルスのM1と特異的に反応する。より好ましくは、公知の全てのA型インフルエンザウイルス株のM1と特異的に反応する(下記実施例参照)。
【0023】
好ましい形態では、本発明に用いるモノクローナル抗体は、他の感染症の病原体と特異的な抗原抗体反応しない。例えば、B型インフルエンザウイルス、アデノウイルス 、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、オウム病クラミジア、トラコーマ・クラミジア、肺炎マイコプラズマ、百日咳菌、大腸菌、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、リステリア菌、緑膿菌、セラチア菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、肺炎球菌、化膿レンサ球菌、B群レンサ球菌、C群レンサ球菌、G群レンサ球菌、と抗原抗体反応をしない。
【0024】
本発明に用いるモノクローナル抗体は、公知の免疫学的手法を用い、A−M1又はその部分ペプチド(127〜252番目のアミノ酸領域から成るポリペプチド又はその部分ペプチド)を被免疫動物に免疫し、被免疫動物の細胞を用いてハイブリドーマを作製することにより得ることができる。免疫に用いるペプチドの長さは特に限定されないが、好ましくは5アミノ酸以上、より好ましくは10アミノ酸以上のペプチドを用いて免疫原とすることができる。
【0025】
免疫原とするA−M1は培養ウイルス液から得ることもできるが、A−M1をコードするDNAをプラスミドベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入して発現させることにより得ることもできる。
【0026】
免疫原とするA−M1またはその部分ペプチドは以下に例示するようなタンパク質と融合タンパク質として発現させ、精製の後、または未精製のまま免疫原として用いることもできる。融合タンパク質の作製には、当業者が「タンパク質発現・精製タグ」として一般的に用いる、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(TRX)、Nusタグ、Sタグ、HSVタグ、FRAGタグ、ポリヒスチジンタグなどが利用できる。これらとの融合タンパク質は、消化酵素を用いてM1あるいはその部分ペプチド部分とそれ以外のタグ部分とを切断し、分離精製した後に免疫原として用いることが好ましい。
【0027】
免疫した動物からのモノクローナル抗体の調製は、周知のケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))により容易に行うことができる。すなわち、免役した動物から、脾細胞やリンパ球等の抗体産生細胞を回収し、これを常法によりマウスミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを作製し、得られたハイブリドーマを限界希釈法等によりクローニングし、クローニングされた各ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体のうち、A−M1と抗原抗体反応するモノクローナル抗体を選択する。
【0028】
腹水や培養上清からのモノクローナル抗体の精製は、公知のイムノグロブリン精製法を用いることができる。例えば、硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウムを用いた塩析による分画法、PEG分画法、エタノール分画法、DEAEイオン交換クロマトグラフィー法、ゲルろ過法などが挙げられる。また免疫動物種とモノクローナル抗体のクラスに応じて、プロテインA、プロテインG、プロテインLのいずれかを結合させた担体を用いたアフィニティクロマトグラフィー法によっても精製することが可能である。
【0029】
本発明のA型インフルエンザウイルスの測定方法では、上記のようにして作製した抗A型インフルエンザウイルスM1抗体(以下、「抗A−M1抗体」と略すことがある)又はその抗原結合性断片と検体中のA型インフルエンザウイルスとの抗原抗体反応を利用した免疫測定によりA型インフルエンザウイルスを測定する。このための免疫測定法としては、競合法、凝集法、ウェスタンブロット法、免疫染色法、サンドイッチ法など、当業者にとって周知のいずれの方法も用いることができる。なお、本発明において、「測定」には、定量、半定量、検出のいずれもが包含される。
【0030】
固相に固定化された抗体(抗体1)(以下、実施例の前までの記述において、文脈からそうでないことが明らかな場合を除き、「抗体」は、「抗体又はその抗原結合性断片」を意味する)と、標識された抗体(抗体2)と、A−M1とを含む複合体を形成させる工程を含む、いわゆるサンドイッチ法を検出原理とした免疫測定においては、抗体1および抗体2のいずれか一方に、A−M1アミノ酸配列の173〜186番目のアミノ酸領域、または232〜241番目のアミノ酸領域と結合する抗A−M1抗体を用いる。さらに、抗体1及び抗体2のいずれかにいずれか一方に、A−M1アミノ酸配列の173〜186番目のアミノ酸領域と結合する抗体を用い、他方にA−M1アミノ酸配列の232〜241番目のアミノ酸領域と結合する抗A−M1抗体を用いることが好ましい。なお、これらの抗体は、当然ながら、A−M1に同時に結合できる。
【0031】
本発明のモノクローナル抗体は、A型インフルエンザウイルスの広範囲な亜型と高い親和性で結合するが、従来から用いられている、A型インフルエンザウイルスの核タンパク質(NP)に対する抗体もいくつかの亜型に対しては高い親和性で結合することができ、亜型によっては、本発明のモノクローナル抗体よりも公知の抗A−NP抗体の方がより高い親和性で結合するものもある。したがって、免疫測定に用いる抗体として、本発明のモノクローナル抗体と、公知の抗A−NP抗体との混合物とすることにより、広範囲の亜型の測定感度をさらに高めることが可能である(下記実施例5参照)。
【0032】
免疫測定としては、サンドイッチ法が好ましい。サンドイッチ法自体は免疫測定の分野において周知であり、例えばイムノクロマト法やELISA法により行うことができる。これらのサンドイッチ法自体はいずれも周知であり、本発明の方法は、上記した本発明の抗A−M1抗体を用いること以外は、周知のサンドイッチ法により行うことができる。
【0033】
サンドイッチ法を検出原理とする免疫測定において、抗体が固定化される固相としては、抗体を公知技術により固定可能なものは全て用いることができ、例えば、毛細管作用を有する多孔性薄膜(メンブレン)、粒子状物質、試験管、樹脂平板など公知のものを任意に選択できる。また、抗体を標識する物質としては、酵素、放射性同位体、蛍光物質、発光物質、有色粒子、コロイド粒子などを用いることができる。
【0034】
前述の種々の材料による免疫測定法の中でも、特に臨床検査の簡便性と迅速性の観点から、メンブレンを用いたラテラルフロー式の免疫測定法が好ましい。
【0035】
本発明では、抗A−M1抗体を用いてラテラルフロー式に免疫測定を行うことができる免疫測定器具をも提供する。本発明が提供する免疫測定器具は、測定対象物(抗原)を捕捉する抗体(抗体1)が固定化された検出領域を有する支持体、移動可能な標識抗体(抗体2)を有する標識体領域、検体を滴加するサンプルパッド、展開された検体液を吸収する吸収帯、これら部材を1つに貼り合わせるためのバッキングシートから成り、抗体1および抗体2の少なくとも一方が本発明の抗A−M1抗体である免疫測定器具である。
【0036】
なお、検出領域の数および標識体領域に含まれる標識抗体の種類は1に限られるものではなく、複数の測定対象物に対応する抗体を用いることで、2以上の抗原を同一の免疫測定器具にて検出することができる。
【0037】
図1は、本発明の免疫測定器具の好ましい1形態を示した図である。イが支持体、ロが標識体領域、ハが検出領域、ニがサンプルパッド、ホが吸収帯、ヘがバッキングシートを指している。
【0038】
図1の上が上面図、下が切断断面図である。図の例では、バッキングシート上に2個の検出領域が形成された支持体、吸収帯、標識体領域、サンプルパッドらがそれぞれ積層されている。そして図示のように、吸収帯の一方の端部と支持体の一方の端部、支持体の他方の端部と標識体領域の一方の端部、標識体領域の他方の端部とサンプルパッドの一方の端部がそれぞれ重ね合わされており、これにより連続したラテラルフローの流路が形成されている。
【0039】
支持体は、抗原を捕捉するための抗体を固定化する性能を持つ材料であり、かつ液体が水平方向に通行することを妨げない性能を持つ。好ましくは、毛細管作用を有する多孔性薄膜であり、液体およびそれに分散した成分を吸収により輸送可能な材料である。支持体を成す材質は特に限定されるものではなく、例えばセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ガラス繊維、ナイロン、ポリケトンなどが挙げられる。このうちニトロセルロースを用いて薄膜としたものがより好ましい。
【0040】
標識体領域は、標識抗体を含む多孔性基材から成り、基材の材質は一般的に用いられているガラス繊維や不織布等を用いることができる。該基材は、多量の標識抗体を含浸させるために、厚さ0.3mm〜0.6mm程度のパッド状であることが好ましい。
【0041】
検出領域は、抗原を捕捉する抗体が固定化された支持体の一部の領域を指す。検出領域は、A−M1抗原を捕捉するための抗A−M1抗体を固定化した領域を少なくとも1つ設け、さらにB型インフルエンザウイルスを検出するための検出領域を設けることが、実際の診断補助のためには好ましい。
【0042】
サンプルパッドは、検体または検体を用いて調製された試料を滴加するための部位であり、吸水性を持つ多孔性材料である。該材料には一般的に用いられるセルロース、ガラス繊維、不織布等を用いることができる。多量の検体を免疫測定に用いるために、厚さ0.3mm〜1mm程度のパッド状であることが好ましい。なお、サンプルパッドと前述の標識体領域はあくまで機能的な区別であって、必ずしも個別の材料である必要はない。すなわち、サンプルパッドとして設置した材料の一部領域が標識体領域の機能を有することも可能である。
【0043】
吸収帯は、支持体に供給され検出領域で反応に関与しなかった成分を吸収するための部材である。該材料には、一般的な天然高分子化合物、合成高分子化合物等からなる保水性の高いろ紙、スポンジ等を用いることができるが、検体の展開促進のためには吸水性が高いものが好ましい。
【0044】
バッキングシートは、前述の全ての材料、すなわち支持体、サンプルパッド、標識体領域、吸収帯らが、部分的な重なりをもって貼付・固定されるための部材である。バッキングシートは、これら材料らが最適な間隔で配置・固定されるのであれば、必ずしも必要ではないが、製造上あるいは使用上の利便性から、一般的には用いたほうが好ましい。
【0045】
図1で説明した形態の免疫測定器具において、検体は、サンプルパッド、標識体領域、支持体、検出領域、吸収帯らの一連の接続により形成された多孔性流路を通過する。よって本形態においては、これら全てが検体移動領域となる。各構成材料の材質や形態によって、検体が材料内部を浸透せず界面を通行する形態もありうるが、本明細書で定義する検体移動領域は材料の内部か界面かを問わないため、該形態の免疫測定器具も本明細書の範囲に含まれる。
【0046】
図1の形態に基づき、本発明の免疫測定器具の使用方法について述べる。
【0047】
測定は、検体または検体を用いて調製された試料をサンプルパッドに滴加することにより開始される。滴加する検体試料は予め、界面活性剤を含む緩衝液を用いて2〜20倍程度に希釈されていることが好ましい。
【0048】
サンプルパッドに滴加された検体試料は毛管作用によって標識体領域、支持体、吸収帯へと順次、水平方向に展開される。標識体領域では検体試料の展開と共に標識抗体が液中に放出され支持体へと展開される。検体試料中に抗原が存在する場合において、支持体の検出領域では捕捉抗体により抗原が特異的に捕捉され、なおかつ抗原は標識抗体とも特異的反応により複合体を形成する。これにより検出領域では抗原を介した抗体のサンドイッチが成立し、標識抗体−抗原複合物を検出領域にて検知することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)抗A型インフルエンザウイルスM1モノクローナル抗体の作製
1.A型インフルエンザウイルスM1抗原の調製
A/Brisbane/59/2007株ウイルスRNAから逆転写反応により構築したcDNAライブラリーを基にM1をコードするDNAをプラスミドベクターにサブクローニングした。該プラスミドベクターを導入した大腸菌株を通気攪拌培養することでM1を発現させた。M1は、菌体を破砕し遠心分離により回収した後、クロマトグラフィーに供して精製した。本明細書において、該精製品を精製M1抗原と呼ぶ。
【0051】
2.抗A型インフルエンザウイルスM1モノクローナル抗体の作製
精製M1抗原をBALB/cマウスに免疫し、一定期間飼育したマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、精製M1抗原を固相したプレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。取得した該細胞株をプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。
【0052】
得られた腹水から、プロテインAカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィー法によりIgGを精製し、精製抗A型インフルエンザウイルスM1抗体を得た。
【0053】
(参考例1)
1.抗A型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体の作製
A型インフルエンザウイルス抗原をBALB/cマウスに免疫し、一定期間飼育したマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、A型インフルエンザウイルスNP抗原を固相したプレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。取得した該細胞株をプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。
【0054】
得られた腹水からプロテインAカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィー法により、それぞれIgGを精製し、精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体を得た。本明細書において、該精製抗体を抗A−NP抗体と呼ぶ。
【0055】
(実施例2)着色ポリスチレン粒子を用いたインフルエンザウイルス抗原検出試薬
1.抗A型インフルエンザウイルスM1抗体のニトロセルロースメンブレンへの固定化
実施例1で作製した抗A−M1抗体を1.0mg/mLになるように精製水で希釈した液をPETフィルムで裏打ちされたニトロセルロースメンブレンの所定の位置に線状に塗布し、45℃、30分間乾燥させ、抗A型インフルエンザウイルスM1抗体固定化メンブレンを得た。本明細書において、抗M1抗体固定化メンブレンと呼ぶ。
【0056】
2.抗A型インフルエンザウイルスNP抗体のニトロセルロースメンブレンへの固定化
参考例1で作製した抗NP抗体を用いて前述の実施例2−1と同様の方法により、抗A型インフルエンザウイルスNP抗体固定化メンブレンを得た。本明細書において、抗NP抗体固定化メンブレンと呼ぶ。
【0057】
3.抗A型インフルエンザウイルスM1抗体および抗A型インフルエンザウイルスNP抗体のニトロセルロースメンブレンへの固定化
実施例1で作製した抗A−M1抗体および参考例1で作製した抗A−NP抗体を所定の割合で混合して、1.0mg/mLになるように精製水で希釈した液をPETフィルムで裏打ちされたニトロセルロースメンブレンの所定の位置に線状に塗布し、45℃、30分間乾燥させ、抗A型インフルエンザウイルスM1抗体+抗A型インフルエンザウイルスNP抗体固定化メンブレンを得た。本明細書において、抗M1+NP抗体固定化メンブレンと呼ぶ。
【0058】
4.抗A型インフルエンザウイルスM1抗体の着色ポリスチレン粒子への固定化
実施例1で作製した抗A−M1抗体を1.0mg/mLになるように精製水で希釈し、これに着色ポリスチレン粒子を0.1%になるように加え、攪拌後、カルボジイミドを1%になるように加え、さらに攪拌する。遠心操作により上清を除き、50mM Tris(pH9.0)、3%BSAに再浮遊し、抗A型インフルエンザウイルスM1抗体結合着色ポリスチレン粒子を得た。本明細書において、抗M1抗体固定化粒子と呼ぶ。
【0059】
5.抗A型インフルエンザウイルスNP抗体の着色ポリスチレン粒子への固定化
参考例1で作製した抗A−NP抗体を用いて前述の実施例2−3と同様の方法により、抗A型インフルエンザウイルスNP抗体結合着色ポリスチレン粒子を得た。本明細書において、抗NP抗体固定化粒子と呼ぶ。
【0060】
6.抗A型インフルエンザウイルスM1抗体および抗A型インフルエンザウイルスNP抗体の着色ポリスチレン粒子への固定化
実施例1で作製した抗A−M1抗体および参考例1で作製した抗A−NP抗体を所定の割合で混合して、1.0mg/mLになるように精製水で希釈し、これに着色ポリスチレン粒子を0.1%になるように加え、攪拌後、カルボジイミドを1%になるように加え、さらに攪拌する。遠心操作により上清を除き、50mM Tris(pH9.0)、3%BSAに再浮遊し、抗A型インフルエンザウイルスM1抗体+抗A型インフルエンザウイルスNP抗体結合着色ポリスチレン粒子を得た。本明細書において、抗M1+NP抗体固定化粒子と呼ぶ。
【0061】
7.抗A型インフルエンザウイルス抗体結合着色ポリスチレン粒子の塗布・乾燥
4および5で作製した抗体固定化粒子をグラスファイバー不織布に所定量1.0μgを塗布し、45℃、30分間乾燥させた。本明細書において、乾燥パッドと呼ぶ。
【0062】
また、上記とは別に6で作製した抗M1+NP抗体固定化粒子をグラスファイバー不織布に所定量1.0μgを塗布し、45℃、30分間乾燥させた。本明細書において、M1+NP乾燥パッドと呼ぶ。
【0063】
8.A型インフルエンザウイルス試験片の作製
1および2で作製した抗体固定化メンブレンと7で作製した乾燥パッドを他部材(バッキングシート、吸収帯、サンプルパッド)とを貼り合せて5mm幅に切断し、A型インフルエンザウイルス試験片とした。本明細書において、M1試験片と呼ぶ。なお、貼り合わせの際に、抗体固定化メンブレンおよび乾燥パッドの少なくとも一方に抗A−M1抗体が含まれる組み合わせとなるようにM1試験片を作製した。
【0064】
また、上記とは別に3で作製した抗M1+NP抗体固定化メンブレンと7で作製したM1+NP乾燥パッドを他部材(バッキングシート、吸収帯、サンプルパッド)とを貼り合せて5mm幅に切断し、A型インフルエンザウイルスM1+NP試験片とした。本明細書において、M1+NP試験片と呼ぶ。
【0065】
9.A型インフルエンザウイルス抗原の検出
8で作製したM1試験片およびM1+NP試験片のサンプルパッドに、A型インフルエンザウイルス抗原を含む検体浮遊液(10mM ADA(pH6.0)、2%ポリオキシエチレンセチルエーテル、1%ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、0.25M塩化カリウムと0.25M塩化リチウム、3%BSA)を60μL滴加し、8分間静置する。抗原と反応した抗体固定化粒子が抗体固定化メンブレンの抗体塗布位置において捕捉され、それによる発色を目視で確認できた場合に+と判定する。発色を目視で確認できない場合は−と判定する。本試験において、全ての組み合わせの試験片、すなわち抗体固定化メンブレンおよび乾燥パッドの一方または両方に抗A−M1抗体が含まれるとき+となった。
【0066】
(実施例3)抗A−M1抗体の抗原認識領域(エピトープ)の解析
1.A型インフルエンザウイルスリコンビナントM1の調製
実施例1−1で構築したcDNAライブラリーを基に、M1アミノ酸配列の1〜126番目をコードするDNAおよび127〜252番目をコードするDNAをそれぞれプラスミドベクターにサブクローニングした。該プラスミドベクターを導入した大腸菌株を通気攪拌培養することでリコンビナントM1を発現させた。リコンビナントM1は、菌体を破砕し遠心分離により回収した後、クロマトグラフィーに供して精製した。本明細書において、前者のアミノ酸配列から成るリコンビナントM1をM1−N、後者のアミノ酸配列から成るリコンビナントM1をM1−Cと呼ぶ。
【0067】
2.ウェスタンブロット法による反応性確認
A/New Caledonia/20/99株、M1−N、M1−Cを用いて実施例1で得られた抗体の反応性を確認した。SDS−PAGEは10%アクリルアミドゲルを用いて常法で行った。電気泳動後、PVDF膜に転写した。スキムミルクでブロッキングを行った後、PBS−Tweenで十分に洗浄した。PBS−Tweenで1μg/mLに調整した抗A−M1抗体を室温で1時間反応させた。PBS−Tweenで十分に洗浄した後、3000倍に希釈したHRP標識抗マウス抗体を室温で1時間反応させた。PBS−Tweenで十分に洗浄した後、化学発光検出試薬を用いてシグナルを検出した。試験した抗体はA/New Caledonia/20/99株と反応することが確認され、M1−Nとは反応せず、M1−Cと反応した。結果を図2に示す。
【0068】
3.ペプチドアレイによるエピトープの解析
エピトープをより詳細に明らかにするため、M1−Cから更に細分化したペプチドを用いた。該ペプチドは、M1−C配列中の10または11の連続するアミノ酸配列から成り、セルロースメンブレン上に一定間隔となるように固定化した。該ペプチドの配列と固定化した位置番号を表1に示す。メンブレンはスキムミルクでブロッキングを行った後、TBS−Tweenで十分に洗浄した。TBS−Tweenで1μg/mLに調整した抗A−M1抗体を室温で1時間反応させた。TBS−Tweenで十分に洗浄した後、3000倍に希釈したHRP標識抗マウス抗体を室温で1時間反応させた。TBS−Tweenで洗浄後、TBSで十分に洗浄し、化学発光検出試薬を用いてシグナルを検出した。結果を図3に示す。抗体aは位置番号10および11のペプチドと反応し、抗体bは位置番号22のペプチドと反応した。抗体aおよび抗体bのエピトープと推定されたアミノ酸配列を図4に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例4)免疫測定器具を用いたA型インフルエンザウイルス各亜型株の免疫測定
1.抗A−M1抗体から成る免疫測定器具の作製
抗体固定化メンブレンと乾燥パッドに実施例3−3の抗体aおよび抗体bを用いた試験片を、実施例2に記載の方法と同様に作製した。(本発明器具1)
【0071】
2.抗NP抗体から成る免疫測定器具の作製
対照として、実施例2−6と同様の方法で、抗NP固定化メンブレンと抗NP固定化粒子を用いた試験片を作製した(従来器具)。
【0072】
3.A型インフルエンザウイルス各亜型株の免疫測定
1で作製した免疫測定器具のサンプルパッドに、A型インフルエンザウイルス抗原を含む検体浮遊液を50μL滴加し、8分間静置する。抗原と反応した抗体固定化粒子が抗体固定化メンブレンの抗体塗布位置において捕捉され、それによる発色を目視で確認できた場合に+と判定する。発色を目視で確認できない場合は−と判定する。本発明のモノクローナル抗体は、A型インフルエンザウイルスの、H1N1、H2N2、H2N3、H3N2、H3N8、H4N6、H5N1、H5N2、H6N2、H7N1、H7N7、H7N9、H8N4、H9N2、H10N7、H11N6、H12N5、H13N6、H14N5、H15N8およびH16N3の各亜型ウイルスの測定において+となった。
【0073】
4.A型インフルエンザウイルス各亜型株との反応性比較
1および2で作製した免疫測定器具を用いて3と同様の方法で免疫測定を行い、本発明器具1と従来器具の反応性を比較した。本発明器具1は、従来器具では検出できなかった7の亜型(12のウイルス株)においても全て検出が確認され、従来器具と比べて高い検出感度であることが示された。結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
(実施例5)A型インフルエンザウイルスM1試験片とA型インフルエンザウイルスNP試験片およびA型インフルエンザウイルスM1+NP試験片によるA型インフルエンザウイルスの検出感度の比較
1.抗A−M1抗体および抗A−NP抗体から成る免疫測定器具の作製
実施例2−8で作製したM1+NP試験片をそのまま使用した(本発明器具2)。
【0076】
2.抗A−M1抗体からなる免疫測定器具および抗A−NP抗体からなる免疫測定器具の作製
対照として、実施例4−1,2で作製した本発明器具1および従来器具をそのまま使用した。
【0077】
3.各測定器具を用いたA型インフルエンザウイルスの検出感度の比較
1および2で作製した各免疫測定器具のサンプルパッドに、A型インフルエンザウイルス(A/NewCaledonia/20/99)を適宜希釈して含んだ検体浮遊液をそれぞれ50μL滴加し、8分間静置する。抗原と反応した抗体固定化粒子が抗体固定化メンブレンの抗体塗布位置において捕捉され、それによる発色を目視で確認できた場合に+と判定する。発色を目視で確認できない場合は−と判定する。その結果、本発明器具1では従来器具よりも検出感度が低かったが、本発明器具2では従来器具に近い性能を得ることができた。このことからA型インフルエンザウイルスの株によってNPを検出する方が高感度に検出できる場合があることが明らかになったが、M1検出とNP検出を合わせることで、株による違いを緩和することができることが示された。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【符号の説明】
【0079】
イ 支持体
ロ 標識体領域
ハ 検出領域
ニ サンプルパッド
ホ 吸収帯
ヘ バッキングシート
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]