【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)抗A型インフルエンザウイルスM1モノクローナル抗体の作製
1.A型インフルエンザウイルスM1抗原の調製
A/Brisbane/59/2007株ウイルスRNAから逆転写反応により構築したcDNAライブラリーを基にM1をコードするDNAをプラスミドベクターにサブクローニングした。該プラスミドベクターを導入した大腸菌株を通気攪拌培養することでM1を発現させた。M1は、菌体を破砕し遠心分離により回収した後、クロマトグラフィーに供して精製した。本明細書において、該精製品を精製M1抗原と呼ぶ。
【0051】
2.抗A型インフルエンザウイルスM1モノクローナル抗体の作製
精製M1抗原をBALB/cマウスに免疫し、一定期間飼育したマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、精製M1抗原を固相したプレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。取得した該細胞株をプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。
【0052】
得られた腹水から、プロテインAカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィー法によりIgGを精製し、精製抗A型インフルエンザウイルスM1抗体を得た。
【0053】
(参考例1)
1.抗A型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体の作製
A型インフルエンザウイルス抗原をBALB/cマウスに免疫し、一定期間飼育したマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、A型インフルエンザウイルスNP抗原を固相したプレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。取得した該細胞株をプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。
【0054】
得られた腹水からプロテインAカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィー法により、それぞれIgGを精製し、精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体を得た。本明細書において、該精製抗体を抗A−NP抗体と呼ぶ。
【0055】
(実施例2)着色ポリスチレン粒子を用いたインフルエンザウイルス抗原検出試薬
1.抗A型インフルエンザウイルスM1抗体のニトロセルロースメンブレンへの固定化
実施例1で作製した抗A−M1抗体を1.0mg/mLになるように精製水で希釈した液をPETフィルムで裏打ちされたニトロセルロースメンブレンの所定の位置に線状に塗布し、45℃、30分間乾燥させ、抗A型インフルエンザウイルスM1抗体固定化メンブレンを得た。本明細書において、抗M1抗体固定化メンブレンと呼ぶ。
【0056】
2.抗A型インフルエンザウイルスNP抗体のニトロセルロースメンブレンへの固定化
参考例1で作製した抗NP抗体を用いて前述の実施例2−1と同様の方法により、抗A型インフルエンザウイルスNP抗体固定化メンブレンを得た。本明細書において、抗NP抗体固定化メンブレンと呼ぶ。
【0057】
3.抗A型インフルエンザウイルスM1抗体および抗A型インフルエンザウイルスNP抗体のニトロセルロースメンブレンへの固定化
実施例1で作製した抗A−M1抗体および参考例1で作製した抗A−NP抗体を所定の割合で混合して、1.0mg/mLになるように精製水で希釈した液をPETフィルムで裏打ちされたニトロセルロースメンブレンの所定の位置に線状に塗布し、45℃、30分間乾燥させ、抗A型インフルエンザウイルスM1抗体+抗A型インフルエンザウイルスNP抗体固定化メンブレンを得た。本明細書において、抗M1+NP抗体固定化メンブレンと呼ぶ。
【0058】
4.抗A型インフルエンザウイルスM1抗体の着色ポリスチレン粒子への固定化
実施例1で作製した抗A−M1抗体を1.0mg/mLになるように精製水で希釈し、これに着色ポリスチレン粒子を0.1%になるように加え、攪拌後、カルボジイミドを1%になるように加え、さらに攪拌する。遠心操作により上清を除き、50mM Tris(pH9.0)、3%BSAに再浮遊し、抗A型インフルエンザウイルスM1抗体結合着色ポリスチレン粒子を得た。本明細書において、抗M1抗体固定化粒子と呼ぶ。
【0059】
5.抗A型インフルエンザウイルスNP抗体の着色ポリスチレン粒子への固定化
参考例1で作製した抗A−NP抗体を用いて前述の実施例2−3と同様の方法により、抗A型インフルエンザウイルスNP抗体結合着色ポリスチレン粒子を得た。本明細書において、抗NP抗体固定化粒子と呼ぶ。
【0060】
6.抗A型インフルエンザウイルスM1抗体および抗A型インフルエンザウイルスNP抗体の着色ポリスチレン粒子への固定化
実施例1で作製した抗A−M1抗体および参考例1で作製した抗A−NP抗体を所定の割合で混合して、1.0mg/mLになるように精製水で希釈し、これに着色ポリスチレン粒子を0.1%になるように加え、攪拌後、カルボジイミドを1%になるように加え、さらに攪拌する。遠心操作により上清を除き、50mM Tris(pH9.0)、3%BSAに再浮遊し、抗A型インフルエンザウイルスM1抗体+抗A型インフルエンザウイルスNP抗体結合着色ポリスチレン粒子を得た。本明細書において、抗M1+NP抗体固定化粒子と呼ぶ。
【0061】
7.抗A型インフルエンザウイルス抗体結合着色ポリスチレン粒子の塗布・乾燥
4および5で作製した抗体固定化粒子をグラスファイバー不織布に所定量1.0μgを塗布し、45℃、30分間乾燥させた。本明細書において、乾燥パッドと呼ぶ。
【0062】
また、上記とは別に6で作製した抗M1+NP抗体固定化粒子をグラスファイバー不織布に所定量1.0μgを塗布し、45℃、30分間乾燥させた。本明細書において、M1+NP乾燥パッドと呼ぶ。
【0063】
8.A型インフルエンザウイルス試験片の作製
1および2で作製した抗体固定化メンブレンと7で作製した乾燥パッドを他部材(バッキングシート、吸収帯、サンプルパッド)とを貼り合せて5mm幅に切断し、A型インフルエンザウイルス試験片とした。本明細書において、M1試験片と呼ぶ。なお、貼り合わせの際に、抗体固定化メンブレンおよび乾燥パッドの少なくとも一方に抗A−M1抗体が含まれる組み合わせとなるようにM1試験片を作製した。
【0064】
また、上記とは別に3で作製した抗M1+NP抗体固定化メンブレンと7で作製したM1+NP乾燥パッドを他部材(バッキングシート、吸収帯、サンプルパッド)とを貼り合せて5mm幅に切断し、A型インフルエンザウイルスM1+NP試験片とした。本明細書において、M1+NP試験片と呼ぶ。
【0065】
9.A型インフルエンザウイルス抗原の検出
8で作製したM1試験片およびM1+NP試験片のサンプルパッドに、A型インフルエンザウイルス抗原を含む検体浮遊液(10mM ADA(pH6.0)、2%ポリオキシエチレンセチルエーテル、1%ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、0.25M塩化カリウムと0.25M塩化リチウム、3%BSA)を60μL滴加し、8分間静置する。抗原と反応した抗体固定化粒子が抗体固定化メンブレンの抗体塗布位置において捕捉され、それによる発色を目視で確認できた場合に+と判定する。発色を目視で確認できない場合は−と判定する。本試験において、全ての組み合わせの試験片、すなわち抗体固定化メンブレンおよび乾燥パッドの一方または両方に抗A−M1抗体が含まれるとき+となった。
【0066】
(実施例3)抗A−M1抗体の抗原認識領域(エピトープ)の解析
1.A型インフルエンザウイルスリコンビナントM1の調製
実施例1−1で構築したcDNAライブラリーを基に、M1アミノ酸配列の1〜126番目をコードするDNAおよび127〜252番目をコードするDNAをそれぞれプラスミドベクターにサブクローニングした。該プラスミドベクターを導入した大腸菌株を通気攪拌培養することでリコンビナントM1を発現させた。リコンビナントM1は、菌体を破砕し遠心分離により回収した後、クロマトグラフィーに供して精製した。本明細書において、前者のアミノ酸配列から成るリコンビナントM1をM1−N、後者のアミノ酸配列から成るリコンビナントM1をM1−Cと呼ぶ。
【0067】
2.ウェスタンブロット法による反応性確認
A/New Caledonia/20/99株、M1−N、M1−Cを用いて実施例1で得られた抗体の反応性を確認した。SDS−PAGEは10%アクリルアミドゲルを用いて常法で行った。電気泳動後、PVDF膜に転写した。スキムミルクでブロッキングを行った後、PBS−Tweenで十分に洗浄した。PBS−Tweenで1μg/mLに調整した抗A−M1抗体を室温で1時間反応させた。PBS−Tweenで十分に洗浄した後、3000倍に希釈したHRP標識抗マウス抗体を室温で1時間反応させた。PBS−Tweenで十分に洗浄した後、化学発光検出試薬を用いてシグナルを検出した。試験した抗体はA/New Caledonia/20/99株と反応することが確認され、M1−Nとは反応せず、M1−Cと反応した。結果を
図2に示す。
【0068】
3.ペプチドアレイによるエピトープの解析
エピトープをより詳細に明らかにするため、M1−Cから更に細分化したペプチドを用いた。該ペプチドは、M1−C配列中の10または11の連続するアミノ酸配列から成り、セルロースメンブレン上に一定間隔となるように固定化した。該ペプチドの配列と固定化した位置番号を表1に示す。メンブレンはスキムミルクでブロッキングを行った後、TBS−Tweenで十分に洗浄した。TBS−Tweenで1μg/mLに調整した抗A−M1抗体を室温で1時間反応させた。TBS−Tweenで十分に洗浄した後、3000倍に希釈したHRP標識抗マウス抗体を室温で1時間反応させた。TBS−Tweenで洗浄後、TBSで十分に洗浄し、化学発光検出試薬を用いてシグナルを検出した。結果を
図3に示す。抗体aは位置番号10および11のペプチドと反応し、抗体bは位置番号22のペプチドと反応した。抗体aおよび抗体bのエピトープと推定されたアミノ酸配列を
図4に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例4)免疫測定器具を用いたA型インフルエンザウイルス各亜型株の免疫測定
1.抗A−M1抗体から成る免疫測定器具の作製
抗体固定化メンブレンと乾燥パッドに実施例3−3の抗体aおよび抗体bを用いた試験片を、実施例2に記載の方法と同様に作製した。(本発明器具1)
【0071】
2.抗NP抗体から成る免疫測定器具の作製
対照として、実施例2−6と同様の方法で、抗NP固定化メンブレンと抗NP固定化粒子を用いた試験片を作製した(従来器具)。
【0072】
3.A型インフルエンザウイルス各亜型株の免疫測定
1で作製した免疫測定器具のサンプルパッドに、A型インフルエンザウイルス抗原を含む検体浮遊液を50μL滴加し、8分間静置する。抗原と反応した抗体固定化粒子が抗体固定化メンブレンの抗体塗布位置において捕捉され、それによる発色を目視で確認できた場合に+と判定する。発色を目視で確認できない場合は−と判定する。本発明のモノクローナル抗体は、A型インフルエンザウイルスの、H1N1、H2N2、H2N3、H3N2、H3N8、H4N6、H5N1、H5N2、H6N2、H7N1、H7N7、H7N9、H8N4、H9N2、H10N7、H11N6、H12N5、H13N6、H14N5、H15N8およびH16N3の各亜型ウイルスの測定において+となった。
【0073】
4.A型インフルエンザウイルス各亜型株との反応性比較
1および2で作製した免疫測定器具を用いて3と同様の方法で免疫測定を行い、本発明器具1と従来器具の反応性を比較した。本発明器具1は、従来器具では検出できなかった7の亜型(12のウイルス株)においても全て検出が確認され、従来器具と比べて高い検出感度であることが示された。結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
(実施例5)A型インフルエンザウイルスM1試験片とA型インフルエンザウイルスNP試験片およびA型インフルエンザウイルスM1+NP試験片によるA型インフルエンザウイルスの検出感度の比較
1.抗A−M1抗体および抗A−NP抗体から成る免疫測定器具の作製
実施例2−8で作製したM1+NP試験片をそのまま使用した(本発明器具2)。
【0076】
2.抗A−M1抗体からなる免疫測定器具および抗A−NP抗体からなる免疫測定器具の作製
対照として、実施例4−1,2で作製した本発明器具1および従来器具をそのまま使用した。
【0077】
3.各測定器具を用いたA型インフルエンザウイルスの検出感度の比較
1および2で作製した各免疫測定器具のサンプルパッドに、A型インフルエンザウイルス(A/NewCaledonia/20/99)を適宜希釈して含んだ検体浮遊液をそれぞれ50μL滴加し、8分間静置する。抗原と反応した抗体固定化粒子が抗体固定化メンブレンの抗体塗布位置において捕捉され、それによる発色を目視で確認できた場合に+と判定する。発色を目視で確認できない場合は−と判定する。その結果、本発明器具1では従来器具よりも検出感度が低かったが、本発明器具2では従来器具に近い性能を得ることができた。このことからA型インフルエンザウイルスの株によってNPを検出する方が高感度に検出できる場合があることが明らかになったが、M1検出とNP検出を合わせることで、株による違いを緩和することができることが示された。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】