【文献】
DICKINSON,R.P. et al,Novel antifungal 2-aryl-1-(1H-1,2,4-triazol-1-yl)butan-2-ol derivatives with high activity against Aspergillus fumigatus,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,1996年,Vol.6, No.16,p.2031-2036
【文献】
SUZUKI,M. et al,Catalytic Enantioselective Synthesis of Key Intermediates for Triazole Antifungal Agents,Organic Letters,2005年,Vol.7, No.13,p.2527-2530
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(一般式(2)で表される化合物)
本発明の化合物は、下記一般式(2)で表される。
【化13】
ただし、前記一般式(2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
5は、ハロゲン原子を表す。
【0012】
前記R
3及びR
4における水酸基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Greenら、Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition,1999,John Wiley & Sons, Inc.などの成書を参照することができる。
前記水酸基の保護基としては、例えば、アラルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシアルキル基、アルカノイル基、アリールカルボニル基、トリフェニルメチル基(トリチル基)、パラメトキシフェニル基、tert−ブトキシカルボニル基などが挙げられる。前記水酸基の保護基におけるアリール環(ベンゼン環など)が置換基を有する場合には、前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−アミノベンジル基などが挙げられる。
前記トリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。前記トリアルキルシリル基のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
前記アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基などが挙げられる。
前記アルカノイル基としては、例えば、アセチル基、トリフルオロアセチル基などが挙げられる。
前記アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、置換フェニルカルボニル基などが挙げられる。
これらの中でも、前記R
1及びR
2における水酸基の保護基は、収率に優れる点、エナンチオ選択性に優れる点、及び温和な条件で脱保護が可能な点から、トリアルキルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基がより好ましい。
【0013】
本明細書の以下の記載における水酸基の保護基の例示は、特に明示のない限り、前記水酸基の保護基の例示と同じものが挙げられる。好ましい態様も同様である。
【0014】
前記R
5のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらの中でも、原料の価格が安い点、原料の入手が容易な点、及び反応性が優れている点から、塩素原子が好ましい。
【0015】
前記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、下記一般式(2−1)で表される化合物が好ましい。
【化14】
ただし、前記一般式(2−1)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
5は、ハロゲン原子を表す。
【0016】
前記一般式(2−1)において、前記水酸基の保護基としては、収率に優れる点、エナンチオ選択性に優れる点、及び温和な条件で脱保護が可能な点から、トリアルキルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基がより好ましい。
前記一般式(2−1)において、前記R
5のハロゲン原子としては、原料の価格が安い点、原料の入手が容易な点、及び反応性が優れている点から、塩素原子が好ましい。
【0017】
前記一般式(2)で表される化合物、及び前記一般式(2−1)で表される化合物は、後述するように、Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従って合成することができる一般式(1)で表される化合物、及び一般式(1−1)で表される化合物からそれぞれ合成できる。そして、Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従えば、触媒的不斉シアノアシル化反応を利用して、ボリコナゾールを製造する上でキーとなる不斉4級炭素を効率よく構築できる。そのため、前記一般式(2)で表される化合物、又は前記一般式(2−1)で表される化合物を用いてボリコナゾールを製造するにあたり、光学分割が不要となる。
【0018】
(一般式(3)で表される化合物)
本発明の化合物は、下記一般式(3)で表される。
【化15】
ただし、前記一般式(3)中、Xは、下記構造式で表される2価基のいずれかを表す。
【化16】
【0019】
前記一般式(3)で表される化合物としては、例えば、下記一般式(3−1)で表される化合物が好ましい。
【化17】
ただし、前記一般式(3−1)中、Xは、下記構造式で表される2価基のいずれかを表す。前記一般式(3−1)及び下記構造式中の「*」は同じ結合手であることを表す。
【化18】
【0020】
前記一般式(3)で表される化合物、及び前記一般式(3−1)で表される化合物は、後述するように、Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従って合成することができる一般式(1)で表される化合物、及び一般式(1−1)で表される化合物からそれぞれ合成できる。そして、Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従えば、触媒的不斉シアノアシル化反応を利用して、ボリコナゾールを製造する上でキーとなる不斉4級炭素を効率よく構築できる。そのため、前記一般式(3)で表される化合物、又は前記一般式(3−1)で表される化合物を用いてボリコナゾールを製造するにあたり、光学分割が不要となる。
【0021】
(一般式(2)で表される化合物の製造方法)
本発明の一般式(2)で表される化合物の製造方法は、下記一般式(1)で表される化合物を下記一般式(2)で表される化合物に転化する工程(転化工程)を含む。
【化19】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
2は、ハロゲン原子を表す。前記一般式(2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
5は、ハロゲン原子を表す。
【0022】
ここで、前記一般式(2)で表される化合物の製造方法において、前記一般式(1)中のR
1における水酸基の保護基と、前記一般式(2)中のR
3及びR
4における水酸基の保護基とは、同じ保護基であることが好ましい。また、前記一般式(1)中のR
2におけるハロゲン原子と、前記一般式(2)中のR
5におけるハロゲン原子とは、同じハロゲン原子であることが好ましい。
【0023】
前記一般式(2)で表される化合物の製造方法において、前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1−1)で表される化合物であり、前記一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(2−1)で表される化合物であることが好ましい。
【化20】
ただし、前記一般式(1−1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
2は、ハロゲン原子を表す。前記一般式(2−1)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
5は、ハロゲン原子を表す。
【0024】
ここで、前記一般式(2)で表される化合物の製造方法において、前記一般式(1−1)中のR
1における水酸基の保護基と、前記一般式(2−1)中のR
3及びR
4における水酸基の保護基とは、同じ保護基であることが好ましい。また、前記一般式(1−1)中のR
2におけるハロゲン原子と、前記一般式(2−1)中のR
5におけるハロゲン原子とは、同じハロゲン原子であることが好ましい。
【0025】
ここで、前記一般式(1)で表される化合物は、例えば、Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従って合成することができる。例えば、Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従えば、下記構造式1の化合物を出発物質として、下記構造式2の化合物を経由する下記反応式によって、前記一般式(1)で表される化合物である下記構造式3の化合物を合成することができる。
【化21】
上記反応式中、「Ph」は「フェニル基」を表す。「Et」は、「エチル基」を表す。「TMS」は「トリメチルシリル基」を表す。「HMDS」は「ヘキサメチルジシラザン」を表す。「DIBAL」は「水素化ジイソブチルアルミニウム」を表す。
【0026】
Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従えば、触媒的不斉シアノアシル化反応を利用して、ボリコナゾールを製造する上でキーとなる不斉4級炭素を効率よく構築できる。そのため、ボリコナゾールを製造するにあたり、光学分割が不要となる。
【0027】
<反応A>
前記一般式(2)で表される化合物の製造方法における前記転化工程においては、例えば、前記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(A)で表される化合物とを、アルキルリチウムの存在下で反応させること(反応A)により、前記一般式(2)で表される化合物を合成することができる。前記反応Aにおいては、主に、前記一般式(2)中のR
3及びR
4のいずれかが水酸基の保護基である化合物が得られる。
【化22】
ただし、前記一般式(A)中、R
10は、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子のいずれかを表す。
【0028】
前記一般式(A)で表される化合物としては、反応性の点から、下記構造式(A)で表される化合物が好ましい。
【化23】
【0029】
前記アルキルリチウムとしては、例えば、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどが挙げられる。
【0030】
前記反応Aの反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、収率の点から、−78℃〜0℃が好ましく、−78℃〜−50℃がより好ましい。
【0031】
前記反応Aの反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、収率の点から、0.3時間〜3時間が好ましく、0.5時間〜1時間がより好ましい。
【0032】
前記反応Aにおいては、溶媒を用いてもよい。前記溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ヘキサンなどが挙げられる。
【0033】
<反応B>
前記一般式(2)で表される化合物の製造方法における前記転化工程においては、例えば、前記反応Aの後に、前記水酸基の保護基の脱保護(反応B)を行うことにより、前記一般式(2)中のR
3及びR
4が水素原子である化合物が合成される。
【0034】
前記脱保護の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩酸を用いて行う方法などが挙げられる。
【0035】
前記一般式(2)で表される化合物の製造方法は、前記一般式(1)で表される化合物を用いる。前記一般式(1)で表される化合物は、例えば、Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従って合成することができる。Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従えば、触媒的不斉シアノアシル化反応を利用して、ボリコナゾールを製造する上でキーとなる不斉4級炭素を効率よく構築できる。そのため、ボリコナゾールを製造するにあたり、本発明の前記一般式(2)で表される化合物の製造方法を用いると、光学分割が不要となる。
【0036】
(一般式(3)で表される化合物の製造方法)
本発明の一般式(3)で表される化合物の製造方法は、下記一般式(2)で表される化合物を下記一般式(3)で表される化合物に転化する工程(転化工程)を含む。
【化24】
ただし、前記一般式(2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
5は、ハロゲン原子を表す。前記一般式(3)中、Xは、下記構造式で表される2価基のいずれかを表す。
【化25】
【0037】
前記一般式(3)で表される化合物の製造方法において、前記一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(2−1)で表される化合物であり、前記一般式(3)で表される化合物は、下記一般式(3−1)で表される化合物であることが好ましい。
【化26】
ただし、前記一般式(2−1)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
5は、ハロゲン原子を表す。前記一般式(3−1)中、Xは、下記構造式で表される2価基のいずれかを表す。前記一般式(3−1)及び下記構造式中の「*」は同じ結合手であることを表す。
【化27】
【0038】
前記一般式(3)で表される化合物の製造方法の前記転化工程は、例えば、前記一般式(2)においてR
3及びR
4が水素原子である化合物から脱ハロゲン化水素を行ってオキシラン基を生成する反応により行うことができる。この反応の場合、前記一般式(3)において、Xが、−CH(OH)−で表される化合物が得られる。前記一般式(3)において、Xが、−CH(OH)−で表される化合物は結晶で得られるため、精製が容易である。
【0039】
前記脱ハロゲン化水素によるオキシラン基の生成は、例えば、4級アンモニウム塩及び酸を用いて行うことができる。前記4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラブチルアンモニウムフロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどが挙げられる。前記酸としては、例えば、酢酸などが挙げられる。
【0040】
前記一般式(3)で表される化合物の製造方法において、前記一般式(2)で表される化合物は、精製及び単離された化合物でなくてもよい。前記一般式(3)で表される化合物の製造方法においては、例えば、本発明の前記一般式(2)で表される化合物の製造方法において得られた前記一般式(2)で表される化合物を精製、及び単離せずに用いてもよい。
【0041】
前記一般式(3)で表される化合物の製造方法は、前記一般式(2)で表される化合物を用いる。前記一般式(2)で表される化合物は、Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従って合成することができる一般式(1)で表される化合物、及び一般式(1−1)で表される化合物から、本発明の前記一般式(2)で表される化合物の製造方法によって合成できる。Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従えば、触媒的不斉シアノアシル化反応を利用して、ボリコナゾールを製造する上でキーとなる不斉4級炭素を効率よく構築できる。そのため、ボリコナゾールを製造するにあたり、本発明の前記一般式(3)で表される化合物の製造方法を用いると、光学分割が不要となる。
【0042】
(ボリコナゾールの製造方法(その1))
本発明のボリコナゾールの製造方法(その1)は、下記一般式(3)で表される化合物をボリコナゾールに転化する工程(転化工程)を含む。
【化28】
ただし、前記一般式(3)中、Xは、下記構造式で表される2価基のいずれかを表す。
【化29】
【0043】
前記一般式(3)で表される化合物としては、例えば、下記一般式(3−1)で表される化合物が好ましい。
【化30】
ただし、前記一般式(3−1)中、Xは、下記構造式で表される2価基のいずれかを表す。前記一般式(3−1)及び下記構造式中の「*」は同じ結合手であることを表す。
【化31】
【0044】
ボリコナゾールは、下記構造式で表される。
【化32】
【0045】
前記転化工程としては、具体的には、例えば、以下のような工程(1)〜(4)が挙げられる。
(1)下記構造式Bの化合物を下記構造式Cの化合物へ転化する工程と、
前記構造式Cの化合物を下記構造式Dの化合物へ転化する工程と、
前記構造式Dの化合物を下記構造式Eの化合物へ転化する工程と、
前記構造式Eの化合物をボリコナゾールへ転化する工程とを含む工程。
(2)下記構造式Cの化合物を下記構造式Dの化合物へ転化する工程と、
前記構造式Dの化合物を下記構造式Eの化合物へ転化する工程と、
前記構造式Eの化合物をボリコナゾールへ転化する工程とを含む工程。
(3)下記構造式Dの化合物を下記構造式Eの化合物へ転化する工程と、
前記構造式Eの化合物をボリコナゾールへ転化する工程とを含む工程。
(3)下記構造式Eの化合物をボリコナゾールへ転化する工程を含む工程。
【化33】
【0046】
前記構造式Bの化合物としては、下記構造式B−1の化合物が好ましい。
前記構造式Cの化合物としては、下記構造式C−1の化合物が好ましい。
前記構造式Dの化合物としては、下記構造式D−1の化合物が好ましい。
前記構造式Eの化合物としては、下記構造式E−1の化合物が好ましい。
【化34】
【0047】
<構造式Bの化合物から構造式Cの化合物への転化>
前記構造式Bの化合物を前記構造式Cの化合物へ転化する方法としては、例えば、水酸基をカルボニル基へ酸化する方法などが挙げられる。前記酸化は、例えば、コーリー・キム酸化などにより行うことができる。また、前記酸化は、コーリー・キム酸化においてジメチルスルフィドをドデシルメチルスルフィドに代えて行ってもよい。
【0048】
<構造式Cの化合物から構造式Dの化合物への転化>
前記構造式Cの化合物を前記構造式Dの化合物へ転化する方法としては、例えば、Wittig試薬を用いたWittig反応などが挙げられる。前記Wittig反応において用いられるホスホニウムイリドとしては、例えば、Ph
3P
+MeBr
−(Phはフェニル基を表す。Meはメチル基を表す。)などが挙げられる。
前記構造式Dの化合物は結晶で得られるため、精製が容易である。
【0049】
<構造式Dの化合物から構造式Eの化合物への転化>
前記構造式Dの化合物を前記構造式Eの化合物へ転化する方法としては、例えば、アルケンのアルカンへの還元反応などが挙げられる。前記還元反応は、例えば、ヒドラジン系化合物を用いて行うことができる。前記ヒドラジン系化合物としては、例えば、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルヒドラジドなどが挙げられる。前記還元反応は、金属を用いることなく、また副生成物が窒素のみのため、環境にやさしい工程である。
【0050】
<構造式Eの化合物からボリコナゾールへの転化>
前記構造式Eの化合物をボリコナゾールへ転化する方法は、例えば、1,2,4−トリアゾールを用いて行うことができる。
【0051】
(ボリコナゾールの製造方法(その2))
本発明のボリコナゾールの製造方法(その2)は、
下記一般式(1)で表される化合物を下記一般式(2)で表される化合物に転化する工程(第1の転化工程)と、
前記一般式(2)で表される化合物を下記一般式(3)で表される化合物に転化する工程と(第2の転化工程)、
前記一般式(3)で表される化合物を下記一般式(3)で表される化合物をボリコナゾールに転化する工程を含む。
上記各工程は、それぞれ、本発明の前記一般式(2)で表される化合物の製造方法、本発明の前記一般式(3)で表される化合物の製造方法、及び本発明の前記ボリコナゾールの製造方法(その1)で詳述した工程と同様である。好ましい態様も同様である。
なお、前記第1の転化工程で得られた前記一般式(2)で表される化合物は、精製及び単離をして前記第2の転化工程に用いてもよいし、精製及び単離をせずに前記第2の転化工程に用いてもよい。
【化35】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
2は、ハロゲン原子を表す。前記一般式(2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
5は、ハロゲン原子を表す。前記一般式(3)中、Xは、下記構造式で表される2価基のいずれかを表す。
【化36】
【0052】
ここで、前記ボリコナゾールの製造方法(その2)において、前記一般式(1)中のR
1における水酸基の保護基と、前記一般式(2)中のR
3及びR
4における水酸基の保護基とは、同じ保護基であることが好ましい。また、前記一般式(1)中のR
2におけるハロゲン原子と、前記一般式(2)中のR
5におけるハロゲン原子とは、同じハロゲン原子であることが好ましい。
【0053】
前記ボリコナゾールの製造方法(その2)において、前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1−1)で表される化合物であり、前記一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(2−1)で表される化合物であり、前記一般式(3)で表される化合物は、下記一般式(3−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0054】
ただし、前記一般式(1−1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
2は、ハロゲン原子を表す。前記一般式(2−1)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
5は、ハロゲン原子を表す。前記一般式(3−1)中、Xは、下記構造式で表される2価基のいずれかを表す。前記一般式(3−1)及び下記構造式中の「*」は同じ結合手であることを表す。
【化37】
【0055】
本発明のボリコナゾールの製造方法(その2)は、Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従って合成できる前記一般式(1)で表される化合物から少ない工程でボリコナゾールを製造できる。
【0056】
本発明のボリコナゾールの製造方法(その2)は、Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従って合成できる前記一般式(1)で表される化合物を用いる。Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法は、触媒的不斉シアノアシル化反応を利用して、ボリコナゾールを製造する上でキーとなる不斉4級炭素を効率よく構築できる。そのため、本発明のボリコナゾールの製造方法(その2)は、光学分割が不要である。
【0057】
Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の触媒的不斉シアノアシル化反応に用いる不斉触媒は、韓国公開特許第10−2011−111626号公報に記載のボリコナゾールの製造方法に使用される不斉触媒に比べて、少量の使用でよい。
【0058】
本発明のボリコナゾールの製造方法(その2)は、Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法で得られる前記一般式(1)で表される化合物を用いる。前記一般式(1)で表される化合物は、水酸基の保護基を有する場合がある。しかし、本発明のボリコナゾールの製造方法(その2)は、それ以外に保護基を付加する必要ないため、保護基の付加工程が必要なく、保護基の脱離も1回でよい。
【実施例】
【0059】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、「TMS」は「トリメチルシリル基」を表す。「n−Bu」は「ノルマルブチル基」を表す。「Et」は、「エチル基」を表す。「TBAF」は「テトラブチルアンモニウムフロリド」を表す。「AcOH」は「酢酸」を表す。「THF」は「テトラヒドロフラン」を表す。「NCS」は「N−クロロスクシンイミド」を表す。「Ph」は「フェニル基」を表す。
【0060】
まず、本実施例における合成のアウトラインを以下に示す。
【化38】
【0061】
(実施例1)
磁気撹拌子を入れて加熱乾燥した10mLの試験管をAr雰囲気下にしたのち、ジエチルエーテル0.2mLを入れ、2.69Mノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(0.19mL,0.52mmol)を−78℃にて加えた。4−ブロモ−5−フルオロピリミジン(91.3mg,0.52mmol、米国公開第2012−071461号公報に従って合成)をジエチルエーテル0.7mLに溶かした溶液を加え、その温度にて10分間撹拌した。ヨウ化亜鉛(165mg,0.52mmol)を加え、20分間撹拌したのち、文献(Oraganic Letters., 2005, 7, 2527)に記載の方法で得た下記構造式3のアルデヒド(137mg,0.47mmol)をジエチルエーテル1.0mLに溶かした溶液を加え、その温度にて30分間撹拌した。反応液に蒸留水と酢酸エチルを加えて分液し、水層を酢酸エチルで2回分液後、集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して濾過した。濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1(体積比))にて精製して(1R,2S)−3−クロロ−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(5−フルオロピリミジン−4−イル)−2−((トリメチルシリル)オキシ)プロパン−1−オール38mg(収率21%)(ジアステレオ選択性=93:7)(下記構造式4の化合物)を得た。
【化39】
【0062】
得られた生成物の
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトル、HRMSデータを以下に示した。
1H NMR(400MHz, CDCl
3) δ8.95(d, J=2.8Hz, 1H), 8.22(d, J=0.92Hz, 1H), 6.96−6.90(m, 1H), 6.83−6.78(m, 1H), 6.71−6.66(m, 1H), 5.32(d, J=9.7Hz, 1H), 4.56(d, J=12.6Hz, 1H), 4.45(d, J=9.7Hz, 1H), 4.42(d, J=12.6 Hz, 1H), 0.250(s, 9H)
【0063】
13C NMR(100MHz, CDCl
3) δ163.0(dd, J=250, 13Hz), 159.5(dd, J=247, 13Hz), 154.6(d, J=266Hz), 153.8(d, J=7.2Hz), 153.1−152.9(m), 144.3(d, J=22Hz), 130.2(dd, J=10, 5.8Hz), 122.9(dd, J=13, 2.9Hz), 110.8(dd, J=21, 3.6Hz), 104.0(dd, J=28, 25Hz), 83.7(d, J=5.8Hz), 71.6, 49.7(d, J=8.7Hz), 2.35
【0064】
HRMS (ESI) Anal. calcd. for C
16H
18O
2N
2ClSiF
3Na m/z 413.0670 [M+Na]
+, found 413.0666.
【0065】
なお、前記構造式3の化合物は、例えば、Oraganic Letters., 2005, 7, 2527に記載の方法に従って、下記構造式1の化合物を出発物質として、下記構造式2の化合物を経由する下記反応式によって合成することができる。
【化40】
上記反応式中、「HMDS」は「ヘキサメチルジシラザン」を表す。「DIBAL」は「水素化ジイソブチルアルミニウム」を表す。
【0066】
(実施例2)
磁気撹拌子を入れて加熱乾燥した10mLの試験管をAr雰囲気下にしたのち、ジエチルエーテル0.2mLを入れ、2.69Mノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(0.21mL,0.56mmol)を−78℃にて加えた。4−ブロモ−5−フルオロピリミジン(99.3mg,0.56mmol、米国公開第2012−071461号公報に従って合成)をジエチルエーテル0.8mLに溶かした溶液を加え、その温度にて10分間撹拌した。文献(Oraganic Letters., 2005, 7, 2527)に記載の方法で得た下記構造式3のアルデヒド(117mg,0.40mmol)をジエチルエーテル1.0mLに溶かした溶液を加え、その温度にて30分間撹拌した。反応液に蒸留水と酢酸エチルを加えて分液し、水層を酢酸エチルで2回分液後、集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して濾過した。濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1(体積比))にて精製して(1R,2S)−3−クロロ−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(5−フルオロピリミジン−4−イル)−1−((トリメチルシリル)オキシ)プロパン−2−オール77mg(収率49%)(ジアステレオ選択性=72:28)(下記構造式5の化合物)を得た。
【化41】
【0067】
得られた生成物の
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトル、HRMSデータを以下に示した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ8.87(d, J=2.5Hz, 1H), 8.38(d, J=1.8Hz, 1H), 7.35−7.28(m, 1H), 6.77−6.71(m, 1H), 6.69−6.64(m, 1H), 5.51(s, 1H), 4.62(s, 1H), 4.27(d, J=11.2Hz, 1H), 4.11(dd, J=11.2, 1.2Hz, 1H), 0.046(s, 9H)
【0068】
13C NMR(150MHz,CDCl
3) δ162.8(dd, J=250, 13Hz), 159.1(dd, J=247, 12Hz), 155.1(d, J=267Hz), 154.5(d, J=10Hz), 153.8(d, J=7.2Hz), 145.4(d, J=22Hz), 130.5(dd, J=9.4, 6.5Hz), 122.3(dd, J=13, 4.3Hz), 111.3(dd, J=21, 3.6Hz), 103.9(dd, J=28, 25Hz), 78.5(d, J=5.8Hz), 70.3, 50.4(d, J=7.2Hz), −0.354
【0069】
HRMS (ESI) Anal. calcd. for C
16H
19O
2N
2ClSiF
3 m/z 391.0851 [M+H]
+, found 391.0853.
【0070】
(実施例3)
実施例2で得られた化合物64mgをテトラヒドロフラン326μLに溶解し、室温にて、0.01N塩酸326μLを加え、3時間攪拌した。反応液を減圧濃縮して得られた残渣を分取用薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1(体積比))にて精製して(1R,2S)−3−クロロ−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(5−フルオロピリミジン−4−イル)プロパン−1,2−ジオール46mg(収率88%)(下記構造式6)を得た。
【化42】
【0071】
得られた生成物の
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトル、HRMSデータを以下に示した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ8.93(d, J=2.5Hz, 1H), 8.36(d, J=1.4Hz, 1H), 7.26−7.20(m, 1H), 6.81−6.69(m, 2H), 5.50(d, J=10.6Hz, 1H), 4.41(d, J=11.4Hz, 1H), 4.26(d, J=11.4Hz, 1H), 4.09(d, J=10.6Hz, 1H), 4.02(s, 1H)
【0072】
13C NMR (150MHz,CDCl
3) δ163.0(dd, J=251, 12Hz), 159.3(dd, J=248, 11Hz), 154.7(d, J=276Hz), 153.8(d, J=4.3Hz), 153.6(d, J=8.7Hz), 145.4(d, J=22Hz), 130.0(dd, J=10, 5.8Hz), 122.2(dd, J=13, 4.3Hz), 111.4(dd, J=22, 2.9Hz), 104.2(dd, J=28, 25Hz), 78.6(d, J=5.8Hz), 68.4, 50.2 (d, J=7.2Hz)
【0073】
HRMS (ESI) Anal. calcd. for C
13H
10O
2N
2ClF
3Na m/z 341.0275 [M+Na]
+, found 341.0279.
【0074】
(実施例4)
磁気撹拌子を入れて加熱乾燥した10mLの試験管をAr雰囲気下にしたのち、ジエチルエーテル0.3mLを入れ、2.65Mノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(0.23mL,0.60mmol)を−78℃にて加えた。4−ブロモ−5−フルオロピリミジン(106mg,0.60mmol、米国公開第2012−071461号公報に従って合成)をジエチルエーテル0.8mLに溶かした溶液を加え、その温度にて10分間撹拌した。文献(Oraganic Letters., 2005, 7, 2527)に記載の方法で得た下記構造式3のアルデヒド(117mg,0.40mmol)をジエチルエーテル0.9mLに溶かした溶液を加え、その温度にて30分間撹拌した。シリカゲル348mgを加え、室温にて30分間攪拌したのち、氷冷下、酢酸(50μL,0.88mmol)と1Mテトラブチルアンモニウムフロリドのテトラヒドロフラン溶液(1.8mL,1.8mmol)を加え、室温にて8時間攪拌した。リン酸バッファーを加えて濾過し、濾液に飽和重層水と酢酸エチルを加えて分液し、有機層を飽和重層水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥して濾過した。濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1(体積比))にて精製して(R)−((R−2−(2,4−ジフルオロフェニル)オキシラン−2−イル)(5−フルオロピリミジン−4−イル)メタノール55.2mg(収率49%、ジアステレオ選択性=85:15)(下記構造式7の化合物)を得た。
【化43】
【0075】
得られた生成物の
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトル、HRMSデータを以下に示した。
<major isomer>
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ8.96(d, J=2.8Hz, 1H), 8.45(s, 1H), 7.17−7.11(m, 1H), 6.76−6.67(m, 2H), 5.34(d, J=9.6Hz, 1H), 4.02(d, J=9.6Hz, 1H), 3.44(d, J=5.3Hz, 1H), 2.81(d, J=5.3Hz, 1H)
【0076】
13C NMR(100MHz,CDCl
3) δ163.1(dd, J=247, 10Hz), 160.5(dd, J=245, 9.6Hz), 155.0(d, J=267Hz), 153.9(d, J=7.7Hz), 153.3(d, J=14Hz), 144.6(d, J=21Hz), 130.8(dd, J=9.6, 5.8Hz), 119.1(dd, J=15, 3.8Hz), 111.4(dd, J=22, 3.4Hz), 103.6(dd, J=25, 25Hz), 68.2, 59.0, 50.5
【0077】
HRMS (ESI) Anal. calcd. for C
13H
9O
2N
2F
3Na m/z 305.0508 [M+Na]
+, found 305.0512:
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)
【0078】
<minor isomer>
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ8.97(d, J=2.8Hz, 1H), 8.55(d, J=1.2Hz,1H), 7.27−7.21(m, 1H), 6.83−6.78(m, 1H), 6.75−6.69(m, 1H), 5.31(d, J=7.4Hz, 1H), 3.82(d, J=7.4Hz, 1H), 3.20(d, J=4.6Hz, 1H), 2.93(d, J=4.6Hz, 1H)
【0079】
13C NMR(150MHz, CDCl
3) δ163.2(dd, J=250, 12Hz), 161.0(dd, J=250, 12Hz), 155.5(d, J=269Hz), 153.9(d, J=7.2Hz), 153.1(d, J=13Hz), 145.0(d, J=20Hz), 131.3(dd, J=10, 5.8Hz), 119.4−119.3(m), 111.4(dd, J=22, 2.9 Hz), 103.9(dd, J=25, 25 Hz), 69.5, 59.3, 51.2
【0080】
HRMS (ESI) Anal. calcd. for C
13H
9O
2N
2F
3Na m/z 305.0508 [M+Na]
+, found 305.0509.
【0081】
(実施例5)
磁気撹拌子を入れた200mLのナスフラスコをAr雰囲気下にしたのち、N−クロロスクシンイミド(2.2g,16mmol)とテトラヒドロフラン33mLを加え、氷冷下、ドデシルメチルスルフィド(4.9mL,19mmol、東京化成工業株式会社製)を加え、10分間撹拌した。反応液を−30℃に冷却したのち、テトラヒドロフラン40mLに溶解させた、実施例4で得られた化合物(1.5g,5.4mmol、構造式7の化合物)を加え、1時間撹拌した。トリエチルアミン(4.6mL,33mmol)を加え、−30℃にて2時間撹拌した。反応液に蒸留水と酢酸エチルを加えて分液し、有機層を蒸留水で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥して濾過した。濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3(体積比))にて精製して(R)−(2−(2,4−ジフルオロフェニル)オキシラン−2−イル)(5−フルオロピリミジン−4−イル)メタノン1.5g(収率97%)(下記構造式8の化合物)を得た。
【化44】
【0082】
得られた生成物の
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトル、HRMSデータを以下に示した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ9.00(d, J=2.8Hz, 1H), 8.73(d, J=1.4Hz, 1H), 7.48−7.42(m, 1H), 6.93−6.89(m, 1H), 6.86−6.80(m, 1H), 3.73(d, J=5.5Hz, 1H), 3.32(d, J=5.5Hz, 1H)
【0083】
13C NMR(100MHz,CDCl
3) δ193.1(d, J=3.8Hz), 163.6(dd, J=253, 11Hz), 161.7(dd, J=250, 13Hz), 154.8(d, J=275Hz), 153.7(d, J=7.7Hz), 148.1 (d, J=8.6Hz), 147(d, J=21Hz), 130.6(dd, J=11, 5.8Hz), 117.6(dd, J=16, 3.8Hz), 111.8(dd, J=23, 4.3Hz), 104.2(dd, J=25, 25Hz), 59.6, 52.4
【0084】
HRMS (ESI) Anal. calcd. for C
13H
8O
2N
2F
3 m/z 281.0532 [M+H]
+, found 281.0535.
【0085】
(実施例6)
磁気撹拌子を入れた50mLのナスフラスコをAr雰囲気下にしたのち、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(640mg,1.8mmol、東京化成工業株式会社製)、t−ブトキシカリウム(201mg,1.8mmol)とトルエン2mLを加え、120℃にて1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却したのち、氷冷下にて、トルエン7mLに溶解させた、実施例5で得られた化合物(251mg,0.90mmol、構造式8の化合物)を加え、室温にて3時間撹拌した。反応液に蒸留水と酢酸エチルを加えて分液し、有機層を蒸留水で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥して濾過した。濾液をトルエン5mLに溶解し、塩化マグネシウム(512mg,5.4mmol)を加え、65℃にて1時間撹拌した。反応液を濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3(体積比))にて精製して(R)−4−(1−(2−(2,4−ジフルオロフェニル)オキシラン−2−イル)ビニル)−5−フルオロピリミジン 212mg(収率85%)(下記構造式9の化合物)を得た。
【化45】
【0086】
得られた生成物の
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトル、HRMSデータを以下に示した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ8.92(d, J=3.0Hz, 1H), 8.50(d, J=3.2Hz, 1H), 7.55−7.49(m, 1H), 6.80−6.76(m, 1H), 6.73−6.68(m, 1H), 6.20(br s, 1H), 6.16(s, 1H), 3.33(d, J=5.3Hz, 1H), 3.17(d, J=5.3Hz, 1H)
【0087】
13C NMR(100MHz,CDCl
3) δ162.8(dd, J=250, 12Hz), 161.5(dd, J=252, 13Hz), 155.7(d, J=270Hz), 153.9(d, J=8.6Hz), 150.7(d, J=8.6Hz), 145.5(d, J=24Hz), 140.4(d, J=5.8Hz), 131.6(dd, J=9.6, 4.8Hz), 124.8(dd, J=9.6, 1.9Hz), 121.5(dd, J=13, 3.8Hz), 111.1(dd, J=21, 3.8Hz), 104.1(dd, J=25, 25Hz), 57.9, 54.8
【0088】
HRMS (ESI) Anal. calcd. for C
14H
10ON
2F
3 m/z 279.0740 [M+H]
+, found 279.0736.
【0089】
(実施例7)
磁気撹拌子を入れた10mLの試験管に実施例6で得られた化合物(23.5mg,0.085mmol、構造式9の化合物)を加え、メタノール85μLに溶解させた。反応液に炭酸水素ナトリウム(9.2mg,0.110mmol)と2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルヒドラジド(30mg,0.101mmol、東京化成工業株式会社製)を加え、室温にて、18時間撹拌した。反応液に蒸留水と酢酸エチルを加えて分液し、水層を酢酸エチルで2回分液したのち、集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して濾過した。濾液を減圧濃縮して得られた残渣を分取用薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(体積比))にて精製して4−((S)−1−((R)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)オキシラン−2−イル)エチル)5−フルオロピリミジン 19mg(収率80%)(ジアステレオ選択性=69:31)(下記構造式10の化合物)を得た。さらに、得られたジアステレオ混合物を分取用薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジイソプロピルエーテル=1:4(体積比))にて精製して、下記構造式10の化合物を単一のジアステレオマーとして、13mg(収率57%)を得た。
【化46】
【0090】
得られた生成物の
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトル、HRMSデータを以下に示した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ8.92(d, J=2.8Hz, 1H), 8.44(d, J=1.8Hz, 1H), 7.16−7.10(m, 1H), 6.77−6.69(m, 2H), 3.90(q, J=7.3Hz, 1H), 3.07(d, J=4.8Hz, 1H), 2.86(d, J=4.8Hz, 1H), 1.34(d, J=7.3Hz, 3H)
【0091】
13C NMR(100MHz,CDCl
3) δ162.8(dd, J=249, 13Hz), 160.7(dd, J=249, 11Hz), 157.1(d, J=11Hz), 156.4(d, J=267Hz), 154.3(d, J=7.7Hz), 144.3(d, J=22Hz), 130.8(dd, J=9.6, 5.8Hz), 122.1(dd, J=15, 3.8Hz), 111.1(dd, J=21, 4.3Hz), 103.9(dd, J=25, 25Hz), 59.1, 51.0, 38.9, 13.2
【0092】
HRMS (ESI) Anal. calcd. for C
14H
12ON
2F
3 m/z 281.0896 [M+H]
+, found 281.0890.
【0093】
(実施例8)
磁気撹拌子を入れた10mLの試験管に実施例7で得られた化合物(122mg,0.436mmol、構造式10の化合物)を加え、エタノール245μLと酢酸245μLの混合溶媒に溶解させた。反応液に1,2,4−トリアゾール(904mg,13mmol、東京化成工業株式会社製)を加え、80℃にて、12時間撹拌した。反応液に蒸留水と酢酸エチルを加えて分液し、水層を酢酸エチルで2回分液したのち、集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して濾過した。濾液を減圧濃縮して得られた残渣を分取用薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=1:1(体積比))にて精製して(2R、3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−(5−フルオロピリミジン−4−イル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール 76mg(収率50%、エナンチオ過剰率80%)(ボリコナゾール)を得た。これをイソプロパノールとヘキサンに65℃で溶解させ、氷冷下撹拌した。得られたスラリーを吸引濾過し、白色結晶を減圧乾燥することでボリコナゾールをエナンチオ過剰率99%以上で得た。
【化47】
【0094】
得られた生成物の
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトル、HRMSデータを以下に示した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ8.91(d, J=2.5Hz, 1H), 8.59(d, J=1.4Hz, 1H), 7.94(s, 1H), 7.61−7.55(m, 1H), 7.52(s, 1H), 6.84−6.77(m, 2H), 6.46(s, 1H), 4.69(d, J=14.2Hz, 1H), 4.29(d, J=14.2Hz, 1H), 4.11(q, J=7.1Hz, 1H), 1.08(d, J=7.1Hz, 3H)
【0095】
13C NMR(100MHz, CDCl
3) δ162.8(dd, J=250, 13Hz), 159.3(d, J=12.5Hz), 158.4(dd, J=248, 11Hz), 155.7(d, J=267Hz), 153.4(d, J=8.6Hz), 150.9, 145.3(d, J=21Hz), 143.9, 130.6(dd, J=9.6, 5.8Hz), 123.5(dd, J=12, 3.8Hz), 111.6(dd, J=20, 2.9Hz), 104.1(dd, J=28, 26Hz), 77.5(d, J=4.8Hz), 57.3(d, J=4.8 Hz), 36.8(d, J=4.8Hz), 16.1
【0096】
HRMS (ESI) Anal. calcd. for C
16H
14ON
5F
3Na m/z 372.1043 [M+Na]
+, found 372.1037.
【0097】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 下記一般式(1)で表される化合物を下記一般式(2)で表される化合物に転化する工程と、
前記一般式(2)で表される化合物を下記一般式(3)で表される化合物に転化する工程と、
前記一般式(3)で表される化合物をボリコナゾールに転化する工程とを含むことを特徴とするボリコナゾールの製造方法である。
【化48】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
2は、ハロゲン原子を表す。前記一般式(2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
5は、ハロゲン原子を表す。前記一般式(3)中、Xは、下記構造式で表される2価基のいずれかを表す。
【化49】
<2> 下記一般式(2)で表される化合物の製造方法であって、
下記一般式(1)で表される化合物を前記一般式(2)で表される化合物に転化する工程を含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
【化50】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
2は、ハロゲン原子を表す。前記一般式(2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
5は、ハロゲン原子を表す。
<3> 下記一般式(3)で表される化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)で表される化合物を前記一般式(3)で表される化合物に転化する工程を含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
【化51】
ただし、前記一般式(2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
5は、ハロゲン原子を表す。前記一般式(3)中、Xは、下記構造式で表される2価基のいずれかを表す。
【化52】
<4> ボリコナゾールの製造方法であって、
下記一般式(3)で表される化合物をボリコナゾールに転化する工程を含むことを特徴とするボリコナゾールの製造方法である。
【化53】
ただし、前記一般式(3)中、Xは、下記構造式で表される2価基のいずれかを表す。
【化54】
<5> 下記一般式(2)で表されることを特徴とする化合物である。
【化55】
ただし、前記一般式(2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表し、R
5は、ハロゲン原子を表す。
<6> 下記一般式(3)で表されることを特徴とする化合物である。
【化56】
ただし、前記一般式(3)中、Xは、下記構造式で表される2価基のいずれかを表す。
【化57】