(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の吸収性物品は、外面側に外装シートを有するものである。本発明の吸収性物品の態様としては、使い捨ておむつや尿パッド(失禁パッドを含む)、生理用ナプキン等が示される。
【0013】
吸収性物品は、吸収性物品の厚み方向に対して肌面側と外面側を有する。吸収性物品の肌面側とは、吸収性物品を着用した際に着用者の肌に近くなる側を意味し、吸収性物品の外面側とは、吸収性物品を着用した際の着用者とは反対側を意味する。
【0014】
外装シートは、吸収性物品の外面側に配される、例えば、吸収性物品はトップシートとバックシートの間に吸収性コアが配されて構成されるが、バックシートが吸収性物品の外面側に配される場合、バックシートが本発明の外装シートに相当する。また吸収性物品がパンツ型使い捨ておむつである場合は、パンツ形状に形成されたパンツ部材の肌面側に、トップシートとバックシートの間に吸収性コアが配された吸収性本体が設けられて、パンツ型使い捨ておむつが構成される場合があるが、この場合、パンツ部材の少なくとも一部が本発明の外装シートから構成されてもよい。このように、外装シートは吸収性物品の外面を構成するように設けられることが好ましい。
【0015】
吸収性物品の形状は特に限定されない。吸収性物品が尿パッドである場合、吸収性物品の形状としては、略長方形、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型等が示される。
【0016】
吸収性物品が使い捨ておむつである場合、吸収性物品は、例えば、前腹部と後背部とこれらの間に位置し吸収性コアが備えられた股部とから構成される。使い捨ておむつは、後背部の左右側端に一対の止着部材が設けられ、当該止着部材により着用時にパンツ形状に形成するオープン型(テープ型)使い捨ておむつであったり、パンツ形状に形成され、ウェスト開口部と一対の脚開口部とを有するパンツ型使い捨ておむつであってもよい。使い捨ておむつは、例えば、前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とからなる外装部材の肌面側に、トップシートとバックシートの間に吸収性コアが配された吸収性本体が設けられて構成されてもよい。また、トップシートとバックシートの間に吸収性コアが配された積層体が、前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とを形成して、使い捨ておむつを構成してもよい。なお、前腹部は、使い捨ておむつを着用の際に着用者の腹側に当てる部分に相当し、後背部は、使い捨ておむつを着用の際に着用者の背側に当てる部分に相当する。股部は、前腹部と後背部との間に位置し、着用者の股間に当てる部分に相当する。
【0017】
外装シートは不織布から構成され、熱エンボスされることにより複数のエンボス部が形成されている。不織布から構成される外装シートは、熱エンボスすることにより強度を高めることができ、例えば、引っ張っても破断しにくくすることができる。また外装シートは、吸収性物品の使用の際に着用者の下着や衣類に強く接し得るが、外装シートを熱エンボスすることにより、外装シートの不織布の構成繊維を脱落しにくくすることができる。その結果、吸収性物品を使用の際の外観を向上させたり、あるいは外装シートから繊維が脱落して下着等へ付着するのを抑えることができる。一方、不織布は熱エンボスすることにより硬化するため、熱エンボスによって外装シートの柔軟性が低下し、手触りが悪化しやすくなる。従って、外装シートの風合いを向上させる点からは、エンボス部を設ける面積をできるだけ狭くする方が好ましい。
【0018】
そこで本発明の吸収性物品では、外装シートに、エンボス部を、3個以上の頂部とそれと同数の谷部を有する外形を有するように設けている。このようにエンボス部を設けることにより、頂部によってエンボス部を広範に設け、谷部によってエンボス部の面積を狭く設けることができる。その結果、外装シートの強度や耐久性を高めつつ、外装シートの手触りを良好なものとすることができる。
【0019】
エンボス部は、外形が頂部と谷部を交互に有するように形成されている。頂部と谷部はそれぞれ3個以上設けられる。頂部は、エンボス部の外形の出っ張った部分に相当し、谷部は、エンボス部の外形のへこんだ部分に相当する。頂部は、鋭角状に形成されてもよく、外方に膨らんだ弧状に形成されてもよく、先端が所定の幅を有していてもよい。エンボス部は、好ましくは中心部を有し、中心部から3方向以上に延在することにより頂部が形成される。谷部は、鈍角状(エンボス部の中心側から見て鈍角状)に形成されてもよく、内方にへこんだ弧状に形成されてもよい。谷部には底が形成されていてもよい。
【0020】
エンボス部は、外装シートの不織布を熱エンボスすることにより形成される。エンボス部は、外装シートの外面側から見て凹状に形成されていることが好ましい。エンボス部は、例えば、外装シートに加熱された熱伝導材料を当てて、外装シートの不織布の一部を溶融することにより形成したり、超音波振動子を外装シートに当てて、超音波振動によって外装シートの不織布の一部を溶融することにより形成することができる。この際、加熱された熱伝導材料や超音波振動子を外装シートの外面側から当てることが好ましく、これにより外装シートに外面側から見て凹状に形成されたエンボス部を設けることができる。外装シートのエンボス部形成方法の好ましい例として、外装シートを、熱エンボスロール(表面に所定のエンボスパターンが形成されて、加熱可能なロール)とフラットロールの間に、外装シートの外面側が熱エンボスロールに接するように挟んで、送り出す方法が挙げられる。
【0021】
外装シートに設けるエンボス部の例について、
図1〜
図5を参照して説明する。
図1〜
図5にはいずれも、3個以上の頂部とそれと同数の谷部を有する外形を有するエンボス部が複数配された例を示している。
【0022】
図1では、4個の頂部2と4個の谷部3を有する外形を有するエンボス部1が縦横に複数配されている。各エンボス部1は、凹部(谷部3)が曲線状に形成された星型四角形を有している。頂部2は4方向に延び、頂部2の先端に向かって幅狭に形成されている。複数のエンボス部1は、格子(四角格子)4の各格子点に配置されている。
【0023】
図2では、8個の頂部2と8個の谷部3を有する外形を有するエンボス部1が縦横(図では斜め方向に縦横)に複数配されている。各エンボス部1は、棒状の8本スポーク(4本交差スポーク)アスタリスク形状を有している。各エンボス部1は、頂部2の先端に向かって等幅に形成され、頂部2が8方向に放射状に延びるように形成されている。複数のエンボス部1は、格子(四角格子)4の各格子点に配置されている。
【0024】
図3では、6個の頂部2と6個の谷部3を有する外形を有するエンボス部1が縦横に配されている。各エンボス部1は、先端が膨らんだ6本スポーク(3本交差スポーク)アスタリスク形状を有している。頂部2は6方向に延び、頂部2の先端が膨らんで形成されている。複数のエンボス部1は、格子(四角格子)4の各格子点に配置されている。
【0025】
図4では、3個の頂部2と3個の谷部3を有する外形を有するエンボス部1が六角格子状に配されている。各エンボス部1は、凹部(谷部3)が曲線状に形成された星型三角形を有している。頂部2は3方向に延び、頂部2の先端に向かって幅狭に形成されている。複数のエンボス部1は、格子(六角格子)4の各格子点に配置されている。
【0026】
図5では、6個の頂部2と6個の谷部3を有する外形を有するエンボス部1が三角格子状に配されている。各エンボス部1は、星型六角形に形成されている。頂部2は6方向に延び、頂部2の先端に向かって幅狭に形成されている。複数のエンボス部1は、格子(三角格子)4の各格子点に配置されている。
【0027】
エンボス部の外形について、頂部と谷部の数の下限は3個である。一方、頂部と谷部の数の上限は特に制限されないが、エンボス部の面積を狭く設けやすくする点から、頂部と谷部の数はそれぞれ10個以下であることが好ましく、8個以下であることがより好ましく、6個以下であることがさらに好ましい。
【0028】
エンボス部の頂部は、多角形(詳細には凸多角形)の頂点の位置に配されることが好ましい。このようにエンボス部が形成されていれば、全ての頂部が中心部から所定以上の長さで延在することとなり、エンボス部を広い範囲で設けることができる。
【0029】
エンボス部は、
図1、
図4および
図5に示されるように、頂部の先端に向かって狭くなるように形成されていることが好ましい。すなわち、エンボス部は、谷部から頂部の先端に向かって幅が漸減するように形成されていることが好ましい。頂部がこのように形成されていれば、エンボス部の面積を狭く形成しやすくなり、外装シートの柔軟性を高めやすくなる。また、後述するように、各エンボス部の頂部が格子の辺に沿って延びるように形成される場合は、複数のエンボス部によって外装シートに四角形や六角形等の格子模様が形成されやすくなる。
【0030】
エンボス部の谷部は、内方にへこんだ弧状に形成されていることが好ましい。例えば、エンボス部は、隣接する頂部が弧状に繋げられ、それにより谷部が形成されていることが好ましい。このように谷部が形成されることにより、外装シートの手触りを向上させることができる。すなわち、外装シートのエンボス部以外の部分(非エンボス部)は、エンボス部に対して吸収性物品の厚み方向にふくらんで形成されやすくなるところ、谷部がエンボス部の内方にへこんだ弧状に形成されることにより、非エンボス部はエンボス部との境界で外縁が曲線状に形成され、当該部分での手触りが良好なものとなる。
【0031】
一方、エンボス部が、
図3に示すように、頂部の先端が膨らんで形成されたり、あるいは
図2に示すように、頂部の先端に向かって等幅に形成されていれば、頂部の先端まで外装シートの不織布がしっかりと熱エンボスされ、外装シートの強度や耐久性を高めやすくなる。
【0032】
エンボス部の大きさは特に限定されないが、エンボス部は、最も遠い頂部間の距離が1mm以上となることが好ましく、また7mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
【0033】
エンボス部は、吸収性物品の長手方向に対する長さが吸収性物品の幅方向に対する長さよりも長いことが好ましい。吸収性物品は、着用した状態で歩いたりして活動をすると、吸収性物品の長手方向に負荷がかかりやすくなるところ、エンボス部が吸収性物品の長手方向に対して長い形状で設けられていれば、外装シートは吸収性物品の長手方向に対しての強度が高まる。そのため、外装シートに対して吸収性物品の長手方向の負荷がかかっても、外装シートが破断しにくくなり、また、外装シートの不織布からその構成繊維が脱落しにくくなる。この場合、エンボス部は、吸収性物品の長手方向に対する長さが、吸収性物品の幅方向に対する長さの1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、3.0倍以下が好ましく、2.0倍以下がより好ましい。
【0034】
エンボス部は、隣接する頂部を直線で繋ぐことにより形成される仮想図形の10%以上75%以下の面積を有することが好ましい。エンボス部が前記仮想図形の10%以上の面積を有していれば、エンボス部によって外装シートの強度を高めやすくなる。エンボス部が前記仮想図形の75%以下の面積を有していれば、外装シートの手触りを向上させやすくなる。エンボス部は、より好ましくは前記仮想図形の15%以上の面積を有し、さらに好ましくは20%以上の面積を有する。エンボス部はまた、前記仮想図形の60%以下の面積を有することが好ましく、50%以下の面積を有することがさらに好ましい。なお、隣接する頂部を直線で繋ぐことにより形成される仮想図形は、エンボス部を全て包含するように形成される。例えば、頂部が丸まった形状で設けられる場合は、隣接する頂部を繋ぐ直線は、丸まった形状の接線として形成されることが好ましい。
【0035】
複数のエンボス部は、任意の格子の各格子点(任意の格子点における全ての格子点)に配置されることが好ましい。このようにエンボス部が配されれば、エンボス部が規則的に外装シートに配置されることとなり、外装シートの見た目が良好なものとなる。格子の形状は特に限定されず、四角格子、六角格子、三角格子等が挙げられる。四角格子には、正方格子、斜方格子、矩形格子等が含まれ、好ましくは、四角格子は、正方格子または矩形格子(単位格子が正方形または長方形となる格子)である。
【0036】
複数のエンボス部が格子の各格子点に配置される場合、各エンボス部は頂部が格子の辺に沿って延びるように形成されることが好ましい。この際、各エンボス部は互いに離間して設けられる。格子の辺とは、隣接する格子点を繋ぐ線分を意味する。より好ましくは、各エンボス部の全ての頂部が格子のそれぞれの辺に沿って延びるように形成される。このようにエンボス部が形成されれば、複数のエンボス部によって外装シートに四角形や六角形等の格子模様が形成され、格子で囲まれた非エンボス部がエンボス部よりも吸収性物品の厚み方向にふくらむように形成される。その結果、外装シートには、四角形や六角形等の形状の膨らみ部が隙間なくタイルのように規則的に並べられたような模様が浮き出され、外装シートの外観や手触りが良好なものとなる。
図1、
図4および
図5には、このようにエンボス部が形成された例が示されている。
【0037】
例えば、格子模様の熱エンボスを外装シートに直接付与する場合には、このようなタイル状の模様を外装シートに形成することは難しく、外装シートの非エンボス部でのふくらみが不十分となったり、格子模様のエンボス部(すなわち格子模様に凹んだ部分)が目立ちやすくなる。これに対して、上記に説明したように格子の各格子点にエンボス部を配置して、エンボス部を格子の辺の一部のみ(格子点近傍のみ)を形成するように設けることにより、格子の辺が目立たなくなって、非エンボス部が吸収性物品の厚み方向にふくらんで形成されやすくなる。そのため、外装シートには、四角形や六角形のタイルが隙間なく規則的に並べられたような模様が浮き出されるようになる。
【0038】
図1では、複数のエンボス部が四角格子の各格子点に配置され、各エンボス部は、4個の頂部とそれと同数の谷部を有する外形を有し、頂部が四角格子の辺に沿って4方向に延びるように形成されている。
図1では、外装シートに四角形のタイルが規則的に並べられたような模様が形成される。
【0039】
図4では、複数のエンボス部が六角格子の各格子点に配置され、各エンボス部は、3個の頂部とそれと同数の谷部を有する外形を有し、頂部が六角格子の辺に沿って3方向に延びるように形成されている。
図4では、外装シートに六角形のタイルが規則的に並べられたような模様が形成される。
【0040】
図5では、複数のエンボス部が三角格子の各格子点に配置され、各エンボス部は、6個の頂部とそれと同数の谷部を有する外形を有し、頂部が三角格子の辺に沿って6方向に延びるように形成されている。
図5では、外装シートに三角形のタイルが規則的に並べられたような模様が形成される。
【0041】
複数のエンボス部が格子の各格子点に配置される場合、各エンボス部の頂部のうちの一部は吸収性物品の長手方向に延びるように形成されていることが好ましい。また、格子の辺の一部は、吸収性物品の長手方向に延びていることが好ましい。このようにエンボス部が形成されていれば、外装シートに吸収性物品の幅方向の内方に向かう負荷がかかった際に、外装シートに吸収性物品の長手方向に沿った皺が規則的に形成されやすくなり、外装シートの当該負荷に対する追従性が向上する。そのため、吸収性物品の着用感が良好なものとなる。
【0042】
エンボス部の配置間隔は特に限定されないが、エンボス部が格子の各格子点に配置される場合、エンボス部は次のように配されることが好ましい。すなわち、格子の辺に沿った隣接エンボス部の離間距離は、当該辺の延在方向に対するエンボス部の長さの0.3倍以上が好ましく、0.5倍以上がより好ましく、また10倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましく、3倍以下がさらに好ましい。なお、格子の辺の延在方向は複数存在するが、隣接エンボス部の離間距離はいずれの方向に対しても前記範囲にあることが好ましい。このようにエンボス部が設けられれば、外装シートの強度を高めつつ、外装シートの手触りを良好なものとしやすくなる。また、複数のエンボス部によって、格子の形状に基づくタイル状模様が浮き出されやすくなる。
【0043】
また、各エンボス部の頂部の一部が吸収性物品の長手方向に延びるように形成される場合は、吸収性物品の幅方向に対するエンボス部間の間隔が、吸収性物品の長手方向に対するエンボス部間の間隔よりも広くなるように設けられることが好ましい。このようにエンボス部が設けられていれば、外装シートに吸収性物品の幅方向の内方に向かう負荷がかかった際に、外装シートに吸収性物品の長手方向に沿った皺が規則的に形成されやすくなり、外装シートの当該負荷に対する追従性が向上する。そのため、吸収性物品の着用感が良好なものとなる。特に、エンボス部が格子の各格子点に配置され、格子の一部が吸収性物品の長手方向に延びるように形成される場合は、このようにエンボス部が設けられることが好ましく、この場合、格子としては四角格子であることがより好ましい。
【0044】
外装シートを構成する不織布の種類は特に限定されず、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、ケミカルボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布等を用いることができる。例えば、外装シートをスパンボンド不織布から構成すれば、外装シートの通気性を高めることができる。外装シートは吸収性物品の外面側に配されるものであるため、外装シートとしてスパンボンド不織布を採用することにより、外装シートの通気性を高めて、吸収性物品を着用した際の蒸れを低減させることができる。外装シートをエアスルー不織布から構成した場合は、外装シートを嵩高に形成して、外装シートのクッション性を高めることができる。
【0045】
外装シートが、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布等の構成繊維が一方向に配向した不織布から構成される場合、エンボス部は、外装シートの不織布の構成繊維の配向方向に対する長さが、その直交方向に対する長さよりも短いことが好ましい。構成繊維が一方向に配向した不織布は、構成繊維の配向方向と直交する方向に対して破断強度が弱くなるところ、エンボス部を当該不織布の繊維配向方向に対して短く(すなわち、当該不織布の繊維配向方向の直交方向に対して長く)なるように設けることにより、当該不織布の構成繊維どうしがエンボス部によって強固に接合され、不織布の破断強度を高めることができる。その結果、外装シートを引っ張っても破断しにくくすることができる。この場合、エンボス部は、繊維配向方向に対する長さが、その直交方向に対する長さの1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、3.0倍以下が好ましく、2.0倍以下がより好ましい。
【0046】
不織布の構成繊維の配向方向は、不織布の表面を顕微鏡等で観察することにより確認できる。例えばスパンボンド不織布では、構成繊維の配向方向について次のように説明される。スパンボンド不織布は、例えば、ポリマー原料を溶融し、紡糸口金から押し出して延伸し、これをコンベアベルト等の上に集積して、ウェブ状に形成することにより得られるが、この際、コンベアベルト上に集積されたウェブ(繊維)はコンベアベルトの進行方向に沿って配列されることとなる。従って、この場合、ウェブ(繊維)はコンベアベルトの進行方向(MD方向)に沿って配向することとなる。エアスルー不織布では、不織布を製造するに当たり、繊維塊形成の際の原料短繊維の集積方法やウェブ形成の際の開繊方法を適宜設定することにより、構成繊維の配向方向を揃えることができる。スパンレース不織布では、不織布を形成する際に、短繊維が分散した水流の流れを制御して繊維を堆積させることで、構成繊維の配向方向を揃えることができる。
【0047】
外装シートは、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。すなわち、外装シートは1枚のシート部材から構成されていてもよく、2枚以上のシート部材が積層されて構成されていてもよい。なお、外装シートが複数層から構成される場合は、少なくとも外面側の層に上記に説明したエンボス部が形成されていることが好ましい。
【0048】
外装シートが複数層から構成される場合、外装シートは複数層がエンボス部で相互に接合されることが好ましい。例えば、外装シートは、内層と外層を有し(すなわち、内層の外面側に外層が積層されて構成され)、内層と外層とが熱エンボスされることにより、エンボス部で相互に接合されていることが好ましい。外装シートの内層と外層がエンボス部で相互に接合されることにより、外装シートの非エンボス部が吸収性物品の厚み方向にふくらんで形成されやすくなり、外装シートの手触りが向上する。また、外装シートによる視覚的な遮蔽性(視覚遮蔽性)を高めて、例えば、外装シートの肌面側に設けられた吸収性コアが排泄物を収容して着色した場合など、吸収性物品を外側から見たときに吸収性コアを目立たなくさせることができる。
【0049】
外装シートは、3層以上の積層体であってもよい。外装シートは、例えば、外面側から第1層と第2層と第3層を有していてもよい。第1層と第2層と第3層はエンボス部で一括に熱エンボスされて相互に接合されてもよく、第1層と第2層と第3層の一部のみが相互に熱エンボスされてもよい。
【0050】
外装シートは、例えば、第1層と第2層と第3層が第1エンボス部で熱エンボスにより相互に接合され、第2層と第3層がさらに第2エンボス部で熱エンボスにより相互に接合されてもよい。この場合、外装シートは、強度と手触りの両方を向上させることができる。外装シートのうち、肌面側に位置する第2層と第3層を第1エンボス部と第2エンボス部の両方で熱エンボス接合することによって、外装シートの強度を高めることができ、そして、第2層の外面側に第1層を設け、第1層を第1エンボス部のみで第2層と接合することにより、熱エンボスによる接合箇所を減らして、外装シートの手触りを向上させることができる。
【0051】
上記に説明した各層(すなわち、内層や外層、あるいは第1層や第2層や第3層)は不織布から構成されることが好ましい。また、外装シートの耐水性を高めるために、外装シートの肌面側にプラスチックフィルムからなる層(フィルム層)を設けてもよい。
【0052】
外装シートには、弾性部材が設けられてもよい。外装シートに弾性部材が設けられる場合、弾性部材は、例えば外装シートの肌面側に取り付けられる。外装シートが複数層から構成される場合は、弾性部材は外装シートを構成する層間に配されてもよい。
【0053】
外装シートに弾性部材が設けられる場合、エンボス部は少なくとも外装シートの弾性部材が配されない領域に設けられることが好ましい。例えば、エンボス部は、外装シートの吸収性コアと重なる領域に設けられることが好ましい。詳細には、エンボス部は、外装シートにおいて、吸収性コアと重なりかつ弾性部材の配されない領域に設けられることが好ましい。エンボス部がこのように設けられれば、吸収性コアのクッション性と相まって、外装シートの手触りを良好なものとすることができる。また、エンボス部によって、外装シートに四角形や六角形等のタイルが隙間なく規則的に並べられたような模様が好適に浮き出されやすくなって、吸収性物品の外観が向上する。
【0054】
次に、本発明の吸収性物品の構成例について、図面を参照して説明する。なお、本発明の吸収性物品は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。
【0055】
図6および
図7には、本発明の吸収性物品を尿パッドに適用した例を示す。
図6は、尿パッドを肌面側から見た平面図を表し、
図7は、
図6に示した尿パッドのA−A断面図を表す。なお図面では、矢印xが幅方向、矢印yが長手方向を表し、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が厚み方向zを表す。長手方向yは、吸収性物品を着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向に相当し、幅方向xは、吸収性物品と同一面上にあり、長手方向yと直交する方向を意味する。
【0056】
吸収性物品(尿パッド)11は、トップシート12とバックシート13とこれらの間に配された吸収性コア14とを有する。トップシート12は吸収性物品11の肌面側に設けられ、着用者から排泄された尿等を透過する。トップシート12を透過した排泄物は、吸収性コア14により収容される。バックシート13は吸収性物品11の外面側に設けられ、排泄物が外部へ漏れるのを防いでいる。吸収性物品11では、吸収性コア14は砂時計形状に形成されている。
【0057】
吸収性物品11には、トップシート12の幅方向xの両側に、長手方向yに延在するサイドシート15が設けられることが好ましい。サイドシート15には、幅方向xの内方に起立用弾性部材16が設けられ、吸収性物品11の使用時には、起立用弾性部材16の収縮力によりサイドシート15の内方が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより尿等の排泄物の横漏れが防止される。
【0058】
吸収性物品11では、バックシート13に、本発明に係る外装シートを用いることができる。この場合、バックシート13が不織布から構成され、当該不織布に、3個以上の頂部とそれと同数の谷部を有する外形のエンボス部が複数形成されることとなる。バックシート13に外装シートを適用することにより、例えば、吸収性物品11を下着(パンツ)の内側に取り付けて使用する場合など、吸収性物品11の手触りが向上するとともに、吸収性物品11をバックシート13側から見たときの外観が向上する。また、バックシート13の強度も確保することができる。
【0059】
なお、図面には示されていないが、バックシート13は内層と外層を有し、内層と外層とが熱エンボスされることにより、内層と外層が複数のエンボス部で相互に接合されていてもよい。また、バックシート13の外面側に本発明に係る外装シートを設けてもよい。
【0060】
本発明の吸収性物品の他の構成例について説明する。
図8〜
図10には、本発明の吸収性物品をパンツ型使い捨ておむつに適用した例を示す。
図8は、パンツ型使い捨ておむつの斜視図を表し、
図9は、
図8に示した使い捨ておむつの前腹部と後背部との接合を解いて平面に展開した状態を肌面側から見た図を表し、
図10は、
図9に示した使い捨ておむつのB−B断面図を表す。
【0061】
吸収性物品(パンツ型使い捨ておむつ)21は、ウェスト開口部22と一対の脚開口部23を有するパンツ部材24と、パンツ部材24の肌面側に設けられた吸収性本体27を有する。パンツ部材24は、前腹部Pと後背部Qとこれらの間に位置する股部Rとから構成され、前腹部Pと後背部Qとが接合されることによりパンツ形状に形成されている。
【0062】
吸収性物品21では、パンツ部材24に本発明に係る外装シートを用いることができる。
図8〜
図10では、パンツ部材24の外面側に外装シート25(本発明に係る外装シート)が使用され、外装シート25の肌面側に内装シート26が積層されている。従って、外装シート25は不織布から構成され、当該不織布に、3個以上の頂部とそれと同数の谷部を有する外形のエンボス部が複数形成されることとなる。外装シート25が吸収性物品21の外面側に配されることにより、パンツ部材24の強度が確保されるとともに、吸収性物品21の手触りや外観を向上させることができる。なお、図面には示されていないが、外装シート25は内層と外層を有し、内層と外層とが熱エンボスされることにより、内層と外層が複数のエンボス部で相互に接合されていてもよい。
【0063】
吸収性本体27は、パンツ部材24の少なくとも股部Rの肌面側に備えられ、トップシート28とバックシート29とこれらの間に配された吸収性コア30とを有する(
図9および
図10)。吸収性物品21では、吸収性本体27と吸収性コア30は略長方形状に形成されている。また、バックシート29が吸収性コア30の幅方向xの端縁で折り返されて、トップシート28と接合されている。
【0064】
吸収性本体27には、幅方向xの両側に立ち上がりフラップ31が設けられている(
図9および
図10)。立ち上がりフラップ31を設けることにより、尿等の排泄物の横漏れを防ぐことができる。立ち上がりフラップ31は、液不透過性であることが好ましい。立ち上がりフラップ31が立ち上がった状態の上端部(着用者側の端部)には起立用弾性部材32が設けられ、起立用弾性部材32の収縮力により立ち上がりフラップ31の起立が促される。
【0065】
パンツ部材24の長手方向yの端部には、ウェスト開口部22の縁に沿って、複数のウェスト弾性部材33が設けられている。ウェスト弾性部材33により着用者の腰周りに沿ったウェストギャザーが形成され、背中側や腹部側からの尿等の排泄物の漏れが防止される。
【0066】
パンツ部材24の前腹部Pと後背部Qには、幅方向xに延びる複数の胴部弾性部材34が設けられている。胴部弾性部材34は、ウェスト弾性部材33よりも広い間隔で配されている。胴部弾性部材34により、着用者の胴周りのフィット性が高められる。
【0067】
パンツ部材24には、脚開口部23の縁に沿って、脚部弾性部材35,36が設けられている。脚部弾性部材は、脚開口部23の前側の縁に沿って設けられる前側脚部弾性部材35と、脚開口部23の後側の縁に沿って設けられる後側脚部弾性部材36とからなり、前側脚部弾性部材35と後側脚部弾性部材36により脚開口部23の縁のほぼ全周にわたり脚部弾性部材が設けられる。脚部弾性部材35,36により、着用者の脚周りに沿ったレッグギャザーが形成され、股部からの尿等の排泄物の漏れが防止される。
【0068】
ウェスト弾性部材33、胴部弾性部材34、脚部弾性部材35,36は、外装シート25と内装シート26の間に設けられればよい。この際、各弾性部材は、外装シート25および/または内装シート26に伸張状態で接合されることが好ましい。ウェスト弾性部材33は、外装シート25が、パンツ部材24のウェスト開口部22の縁で、内装シート26側に折り返され、折り返された外装シート25の間に挟まれて外装シート25と接合されてもよい。
【0069】
本発明の吸収性物品を構成する各部材の材料について説明する。トップシートは、吸収性物品を着用の際に着用者側に位置するシートであり、液透過性であることが好ましい。トップシートとしては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等を用いることができる。また、トップシートとして、織布、編布、孔が形成されたプラスチックフィルム等を用いてもよい。
【0070】
バックシートは、吸収性物品を着用の際に着用者とは反対側、すなわち外面側に位置するシートであり、液不透過性であることが好ましい。バックシートとしては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布や、プラスチックフィルム等を用いることができる。また、不織布とプラスチックフィルムとの積層体を用いてもよい。本発明において、液不透過性とは撥水性の意味も含まれる。
【0071】
パンツ部材(内装シート、外装シート)は、液透過性であっても液不透過性であってもよく、トップシートやバックシートに使用可能なシート材料を用いることができる。
【0072】
上記説明した各シート材料として不織布を用いる場合、不織布としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、SMS不織布等を用いればよい。なお、本発明に係る外装シートは、各不織布層が熱エンボスにより相互に接合されることから、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の熱融着性繊維を含んでいることが好ましい。
【0073】
吸収性コアは、尿等の排泄物を吸収できる吸収性材料を含むものであれば特に限定されない。吸収性コアとしては、例えば、吸収性材料を所定形状に成形した成形体を用いることができる。吸収性コアは、紙シート(例えば、ティッシュペーパーや薄葉紙)や液透過性不織布等のシート部材で覆われてもよい。吸収性コアに含まれる吸収性材料としては、例えば、セルロース繊維(例えば、粉砕したパルプ繊維)等の親水性繊維や、ポリアクリル酸系、ポリアスパラギン酸系、セルロース系、デンプン・アクリロニトリル系等の吸水性樹脂等が挙げられる。また、吸収性材料には熱融着性繊維が含まれてもよい。これらの熱融着性繊維は、尿等の体液との親和性を高めるために、界面活性剤等により親水化処理がされていてもよい。
【0074】
吸収性材料は、尿等の吸収速度を高める点から、親水性繊維を含むことが好ましい。また、吸収容量を高める点からは、吸収性材料は吸水性樹脂を含むことが好ましい。従って、吸収性コアは親水性繊維(特にパルプ繊維)と吸水性樹脂を含むことが好ましい。この場合、例えば、親水性繊維の集合体に吸水性樹脂を混合または散布したものを用いることが好ましい。
【0075】
吸収性コアは、シート状吸収体であってもよい。シート状吸収体としては、不織布間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように形成されたものが挙げられる。このように形成されたシート状吸収体は不織布間に吸水性樹脂を有するため、高い吸収容量を実現できる。また、シート状吸収体は不織布間にパルプ繊維を有しないため、嵩張らず薄型に形成することができる。
【0076】
シート状吸収体としては、吸収性材料として吸水性繊維を用いてもよい。この場合もまた、シート状吸収体が嵩張らず薄型に形成される。吸水性繊維としては、プロトン化または塩形成したカルボキシル基を含有する繊維が挙げられる。例えば、特公昭52−42916号公報に開示されるように、アクリル繊維を加水分解して、アクリル繊維に含まれるニトリル基をカルボキシル基に変換することにより、吸水性繊維を得ることができる。このとき、吸水性繊維に含まれるカルボキシル基は、アルカリ金属塩またはアンモニア塩を形成していることが好ましい。また吸水性繊維は、親水性繊維をアクリル酸に浸漬し、繊維表面でアクリル酸を析出させることにより製造することができる。