特許第6262997号(P6262997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6262997圧縮ガスのレギュレータと該レギュレータを備えた炭酸ミスト美顔器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262997
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】圧縮ガスのレギュレータと該レギュレータを備えた炭酸ミスト美顔器
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/12 20060101AFI20180104BHJP
   G05D 16/16 20060101ALI20180104BHJP
   A61H 33/02 20060101ALI20180104BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   A61H33/12 A
   G05D16/16 J
   A61H33/02 A
   B65D83/00 L
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-229145(P2013-229145)
(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公開番号】特開2015-89389(P2015-89389A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】509219073
【氏名又は名称】株式会社リード
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】井上 智広
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 実公平02−016767(JP,Y2)
【文献】 特開2003−247700(JP,A)
【文献】 特開2010−174912(JP,A)
【文献】 特開2010−051774(JP,A)
【文献】 実開平04−034570(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00−33/12
B65D 83/00
G05D 16/16
A61M 16/20
F16K 17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を弁孔を有する弁座によって一次側と二次側とに仕切り、前記一次側端部に圧縮ガスボンベを装着する一方、前記二次側端部に圧縮ガスの開閉ハンドルを正逆に回転自在に設け、さらに、該二次側に圧縮ガスの出口を設けると共に該出口よりも前記ハンドル寄りに異常圧の逃し孔を設けた本体と、
前記弁孔と連通するガス流路を有して前記本体の一次側内部に設けたスリーブと、
該スリーブの前記ガス流路内を軸方向に移動可能に支持され、先端部が前記二次側に突出した状態で前記弁孔を閉塞する方向に付勢されたピンと、
外周にパッキンを有して、該パッキンによって前記異常圧の逃し孔と前記弁座間の気密を維持しながら、前記ピンを前記付勢力に抗して開方向に押圧可能に前記二次側内部を摺動するピン押さえと、
該ピン押さえと前記開閉ハンドル間に設けられ、前記開閉ハンドルの開方向の操作によって圧縮されて前記ピン押さえを前記ピンの開方向に付勢する圧力調整バネとを備え、
前記ピン押さえは前記異常圧により前記圧力調整バネの付勢力に抗して前記パッキンが前記逃し孔を超える位置まで変位して、前記異常圧が前記逃し孔から放出されることを特徴とした圧縮ガスのレギュレータ。
【請求項2】
スリーブのガス流路を分岐して本体の一次側内部に開口する分岐孔を設けると共に、前記本体の一次側には可溶栓を設けた請求項1記載の圧縮ガスのレギュレータ。
【請求項3】
本体の二次側にその内圧によって可動するガス残量のインジケータをさらに設けた請求項1または2記載の圧縮ガスのレギュレータ。
【請求項4】
請求項1から3のうち一項記載のレギュレータと、化粧水の収納カップを備えたスプレー本体と、一端を前記レギュレータの圧縮ガスの出口に接続すると共に、他端を前記スプレー本体に接続するガスホースとを備え、前記レギュレータから導入する圧縮ガスによって前記化粧水を前記スプレー本体から霧状に噴出することを特徴とした美顔器。
【請求項5】
圧縮ガスは炭酸ガスである請求項4記載の美顔器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮ガスのレギュレータに係り、例えば、化粧水を炭酸ガスと共に肌に噴霧する炭酸ミスト美顔器における炭酸ガスのレギュレータに使用するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スプレー本体に備え付けのカップに化粧水を収納し、炭酸ガスボンベからホースを介して導かれた炭酸ガスを前記カップ内の化粧水と共に前記スプレー本体から霧状に噴射するようにした炭酸ミスト美顔器は公知である(特許文献1〜3)。
【0003】
この美顔器では、炭酸ガスボンベ側の構成として、炭酸ガスボンベを装着する上側筒体を備え、その内部にガス流通路の開閉機構(レギュレータ)を設けている。即ち、特許文献1〜3の美顔器においてガス流通路の開閉機構は、上側筒体の内部構造として、炭酸ガスボンベの装着時にボンベ口部の封印膜を貫通してボンベ内に嵌入する噴出用管と、スプレー本体とホースで接続するノズル孔との間に内孔を設けてガス流通路を構成し、上側筒体の上部に設けた円形調整用摘子を回転操作することによって弁杆を上下動させて前記内孔を開閉する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−165976号公報
【特許文献2】特開2011−235116号公報
【特許文献3】特開2010−051774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3の美顔器によれば、円形調整用摘子を回転させることにより、炭酸ガスの噴出、停止、さらには噴出調整を行うことができ、平温安定下では使用上の問題は生じない。しかし、高温環境下では炭酸ガスボンベの内圧が高まり、そのままでは異常圧によりスプレー本体からの噴霧圧や噴霧量も増加してしまうが、特許文献1〜3の構造では使用者側で円形調整用摘子を締め直すしか方法がない。特に、停止状態でボンベの内圧が規定以上に高まっていると、円形調整用摘子を開方向に回した途端、使用者の予想を超える勢いで化粧水が噴き出すという問題がある。
【0006】
さらに進んで、より高温下に美顔器を放置すれば、極度の異常圧によって、内部機構が故障したり、最悪の場合、ボンベが破裂するおそれもあるが、特許文献1〜3では何ら対策が講じられていない。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、異常圧が発生した場合に、これを自動的に開放することで、便利で安全な圧縮ガスボンベのレギュレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために本発明では、内部を弁孔を有する弁座によって一次側と二次側とに仕切り、前記一次側端部に圧縮ガスボンベを装着する一方、前記二次側端部に圧縮ガスの開閉ハンドルを正逆に回転自在に設け、さらに、該二次側に圧縮ガスの出口を設けると共に該出口よりも前記ハンドル寄りに異常圧の逃し孔を設けた本体と、
前記弁孔と連通するガス流路を有して前記本体の一次側内部に設けたスリーブと、
該スリーブの前記ガス流路内を軸方向に移動可能に支持され、先端部が前記弁孔を介して前記二次側に突出した状態で前記弁孔を閉塞する方向に付勢されたピンと、
外周にパッキンを有して、該パッキンによって前記異常圧の逃し孔と前記弁座間の気密を維持しながら、前記ピンを前記付勢力に抗して開方向に押圧可能に前記二次側内部を摺動するピン押さえと、
該ピン押さえと前記開閉ハンドル間に設けられ、前記開閉ハンドルの開方向の操作によって圧縮されて前記ピン押さえを前記ピンの開方向に付勢する圧力調整バネとを備え、
前記ピン押さえは前記異常圧により前記圧力調整バネの付勢力に抗して前記パッキンが前記逃し孔を超える位置まで変位して、前記異常圧を前記逃し孔から放出するという手段を用いた。
【0009】
本発明のレギュレータは、開閉ハンドルを開閉操作するのと連動してピン押さえをピンの開閉範囲で変位させる。この間、ピン押さえの底面、即ちピンの押圧面には弁孔を通じて二次側に導入された圧縮ガスが作用し、多少の内圧変化は圧力調整バネが伸縮することによって吸収され、圧縮ガスの噴出圧を安定させている。一方、使用中に温度上昇等によって前記内圧が異常に高まった場合、ピン押さえは異常圧によって大きく変位し、パッキンが逃し孔を超える位置まで変位することで前記異常圧を前記逃し孔から自動的に放出する。
【0010】
さらに進んで、より高温の環境下においては、過度な異常圧によってレギュレータが故障したり、最悪の場合、圧縮ガスボンベが破裂するおそれがあるため、その対策として、スリーブのガス流路を分岐して本体の一次側内部に開口する分岐孔を設けると共に、前記本体の一次側には可溶栓を設けるという手段を用いる。この手段によれば、高温によって可溶栓の内部金属が溶解して開栓状態となり、過度の異常圧を自動的に外部に放出することができる。
【0011】
また、本体の二次側にその内圧によって可動するガス残量のインジケータをさらに設けることが好ましいものである。
【0012】
さらに本発明では、上述したレギュレータと、化粧水の収納カップを備えたスプレー本体と、一端を前記レギュレータの圧縮ガスの出口に接続すると共に、他端を前記スプレー本体に接続するガスホースとを備え、前記レギュレータから導入する圧縮ガスによって前記化粧水を前記スプレー本体から霧状に噴出する美顔器を構成するという手段も用いる。
【0013】
このような美顔器においては、圧縮ガスは炭酸ガスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、予定値を超えるような異常圧が発生した場合には、これを自動的に逃し孔から外部に開放するので、使用者が開閉ハンドルを締め直す手間がなく便利であると共に、安全である。また、異常な高温環境下では可溶栓が機能して、内圧の過度の上昇が防止されるため、ボンベ破裂等の危険も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のレギュレータを美顔器に適用した実施形態の全体構成図
図2】同、炭酸ガスボンベ側の分解斜視図
図3】同、レギュレータの分解断面図
図4】同、レギュレータの断面組図(閉状態)
図5】同、(開状態)
図6】同、要部の拡大図(開状態)
図7】同、本体の別角度の断面図
図8】同、別角度におけるレギュレータの断面図(閉状態)
図9】同、(開状態)
図10】同、異常圧発生時の動作を示した断面図
図11】同、スリーブの別角度の断面図
図12】同、異常高温時の動作を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。この実施形態では、本発明を炭酸ミスト美顔器における炭酸ガスのレギュレータとして使用する例を示す。図1は、美顔器全体を示し、化粧水を入れるカップ付きのスプレー本体Sに、炭酸ガスボンベを収容したボンベ容器VをガスホースPで接続したものである。使用に際しては、ボンベ容器Vの上部ハンドルHを開方向に回した状態で、スプレー本体SのトリガTを指で引くことによって、ボンベ容器VからホースPを介して導かれた炭酸ガスを前記カップ内の化粧水と共に前記スプレー本体から霧状に噴射することができる。なお、ボンベ容器Vには、ホースPのカプラCとともに、ガス残量を目視するインジケータIを設けている。
【0017】
ボンベ容器Vは、図2の分解図に示すように、上下に二分割の筒状ケース体V1・V2からなる。このうち上部ケース体V1に、上述したハンドルHとカプラC、インジケータIを設け、その下側の開口に、カートリッジ式の比較的小型な炭酸ガスボンベBをねじ込みにより装着するものである。そして、上部ケース体V1に本発明のレギュレータを装備している。なお、下部ケース体V2は、ボンベBの交換の際に、上部ケース体V1に脱着するもので、これを装着することによって、炭酸ガスボンベBを内蔵した状態で、ボンベ容器Vを図1に示したように安定して机上に置くことができる。
【0018】
図3は上部ケース体V1の内部に装備されるレギュレータRの分解図、図4は組図であり、カプラCとインジケータIをそれぞれ側方に接続する本体1をベースとして、その内部を一次側と二次側とで上下に仕切り、下室1aに弁部、上室1bに該弁部の制御部を構成したものである。具体的には、本体1は略筒状部材の内部を仕切り1cによって下室1aと上室1bに仕切り、このうち上室1bと連通するように、カプラCとインジケータIの接続口1d・1eそれぞれを設けている。カプラCの接続口1dは、即ち炭酸ガスの出口である。そして、仕切り1cの中央には通孔1fを上下貫通して設けており、その一次側となる下室1aには、前記通孔1fを挿通して上端一部が上室1bに突出するようにピン2とスリーブ3とを装備して弁部を構成している。一方、仕切り1cの二次側となる上室1bには、ピン2の突出部を下方に押圧自在なようにピン押さえ4と圧力調整バネ5を装備して前記弁部の制御部を構成している。
【0019】
次に、弁部とその制御部を構成する部材について詳述する。まず、本体1の下室1aにおいて弁部を構成するスリーブ3は、図3に示すように、内部にガス流路3aを上下貫通して設け、上面の凹陥部にはパッキン3bを装着している。このパッキン3bは、スリーブ3の上面を本体1の仕切り1cの下面に気密に密着させつつ、ピン2を弁とする弁座として機能する。即ち、パッキン3bには本体1の仕切り1cの通孔1fと連通する弁孔3cを設けている。これに対してピン2は、スリーブ3のガス流路3a内に軸方向(上下方向)に移動に支持され、弁孔3cを介して本体1の上室1bに突出する上半部2aと、該上半部2aよりも大径とした下半部2bと間に末広がりのテーパ部2cを形成したもので、該テーパ部2cがパッキン3bの弁孔3cを下方から気密に閉塞するものである。このため、この実施形態では、弁孔3cにおける下側開口の形状をピン2のテーパ部2cに対応してテーパ状としている。なお、この実施形態では、弁孔3cの上側開口もテーパ状としているが、これは、パッキン3bと仕切り1cとの界面において、弁孔3cと本体1の通孔1fとを確実に連通させ、効率よく炭酸ガスを上室1bに送出するためである。
【0020】
このようにピン2はテーパ部2cがパッキン3bの弁孔3cを下方から気密に閉塞するものであるが、この動作を補助するために、ピン2の下半部2bにはスプリング6の受け部2dを設け、ピン2を閉弁方向に付勢している。
【0021】
より具体的には、スプリング6は、本体1の下室1aに螺合する炭酸ガスボンベBの開封部材7に内蔵したフィルタ8を下端側の受け部として、ピン2を閉弁方向、即ち上方に付勢する。
【0022】
ここで開封部材7は、炭酸ガスボンベBの口部の封膜を突き破る接続凸部7aを下部に有し、内部には炭酸ガスを導入してスリーブ3のガス流路3aと連通するガス導入孔7bを形成してなる。また、この開封部材7に内蔵されるフィルタ8には、金属焼結フィルタを採用している。
【0023】
なお、9は炭酸ガスボンベBをねじ込みにより装着するボンベ装着部材であり、開封部材7の下側に位置して、リング状のパッキン10を介して、本体1の下室1aに螺合して組み付けられるものである。
【0024】
続いて、本体1の上室1bにおける弁部の制御部の構成を詳述する。該制御部は、上室1b内を上下に摺動して、該上室1bに突出するピン2の上半部2a先端を下方に押し込み可能なピン押さえ4と、このピン押さえ4の上方に設けた圧力調整バネ5と、この圧力調整バネ5をバネ受け11を介してピン押さえ4との間で圧縮自在に上下動する棒状の押し込み部12とからなる。ピン押さえ4の外周にはリング状のYパッキン13を設け、上室1bに気密に装着している。また、この実施形態の場合、ハンドルHは本体1の上部にキャップ状に装着され、ネジ等によって正逆に回転自在としており、このハンドルHの天面内部に押し込み部12を設けて、ハンドルHの正逆の回転操作と連動して押し込み部12を上下動するようにしている。
【0025】
上記構成のレギュレータRにおいて、本発明の特徴は、異常圧が発生した場合に、これを自動的に開放することであるが、これは後述することとし、平時の基本動作を先に説明する。
【0026】
ハンドルHを閉方向に締め切った状態は図4のとおりで、このときハンドルHは最も上側に位置し、圧力調整バネ5も未圧縮の状態で、本体下室1a側のピン2もピン押さえ4によって押し込まれていない。したがって、パッキン3bの弁孔3cはピン2のテーパ部3cによって閉塞され、炭酸ガスの噴出は停止している。
【0027】
一方、ハンドルHを開方向に回すと、図5に示したように、これに連動して押し込み部12が下降し、圧力調整バネ5を圧縮する。この圧縮力によってピン押さえ4が下方に付勢され、ピン2をスプリング6に抗して下方に押し込む。そして、ピン2が下方に押し込まれることによって、パッキン3bの弁孔3c(の下面側テーパ部)とピン2(のテーパ部2c)との間に隙間ができる。この隙間が炭酸ガスの流路となり、その大きさに見合った量の炭酸ガスが仕切り1cの通孔1fを通り上室1bに流入することになるが、ハンドルHの開方向の回転量が大きい程、ピン2の下降長も大きくなり、弁孔3cの隙間も大きくなる。ただし、際限なくハンドルHの開方向回転を許容すると、ピン押さえ4が仕切り1cに接して通孔1fを閉塞してしまうため、ハンドルHの最大回転量または/およびピン押さえ4の最大下降位置を規制しておくことが好ましい。
【0028】
図5中の矢印は、炭酸ガスの流れを示したものであるが、途中、極めて狭い流路が存在するため、要部を拡大した図6を用いてあらためて説明すると、同図において黒く塗りつぶしたルートを辿って炭酸ガスが流れる。つまり、炭酸ガスボンベBの炭酸ガスは、開封部材7のガス導入孔7b、フィルタ8、スリーブ3内のガス流路3aとピン2の隙間、パッキン3bの弁孔3cとピン2の隙間、仕切り1cの通孔1f、上室1bにおける仕切り1cの上面とピン押さえ4の下面とで形成される空間、各接続口1d・1eの順で流れる。特に、ピン2と弁孔3cの隙間のうちテーパ部分の隙間が極めて狭くなっている。これは、ニードル弁の原理により、炭酸ガスを減圧してミスト状に噴出するためである。
【0029】
そして、カプラCの接続口1dに流れた炭酸ガスは、該カプラCに接続したホースPを通じてスプレー本体Sに導かれ、上述のようにスプレー本体SのトリガTを引くことによって、化粧水を混合した炭酸ミストとして噴射する。
【0030】
一方、インジケータIの接続口1eに流れた炭酸ガスの圧力によって、インジケータIが本体1から外方に向かって付勢される。したがって、炭酸ガスボンベBに炭酸ガスが十分に残っている場合には、インジケータIはより大きく付勢され、その先端に設けたインジケータリングの位置を目視することで、残量が十分であることが確認できる。
【0031】
ここで、圧力調整バネ5の機能を説明すると、図5・6の開弁状態において、該圧力調整バネ5は上室1bの内圧と均衡するように伸縮する。したがって、炭酸ミストの使用中、室温の変化等により、上室1bの内圧が高まった場合、ピン押さえ4にはその下面を受圧面として上向きの力が作用し、該内圧が圧力調整バネ5の付勢力を上回る場合、ピン押さえ4は圧力調整バネ5を圧縮させながら上室1bを上昇する。ピン押さえ4が上昇すると、これに連動してピン2も上昇することによって弁孔3cの開度が小さくなり、炭酸ガスの過剰な噴出を抑制することができる。そして、上室1bの内圧が元に戻れば、圧力調整バネ5がピン押さえ4を下方に付勢することによりピン2が下降することで、常に、炭酸ガスの噴出量を一定としている。
【0032】
このように平時では、多少の圧力変化は圧力調整バネ5が伸縮することによって吸収され、炭酸ガスの噴出量を一定に保つが、この範囲を超える高圧な異常圧が発生した場合、圧力調整バネ5を大きく圧縮させながら、ピン押さえ4がピン2から離れるほど上昇してしまう。この状態では、ピン2が図4の閉弁位置となることから、弁孔3cが完全に閉塞されることになり、異常圧は開放されないまま、レギュレータR内に蓄積されることになって危険である。
【0033】
そこで、本発明では、閉弁後も継続する異常圧を大気に開放するようにしており、その手段として、図7に示したように、本体1の上室1bの所定位置に逃し孔14を設けている。なお、図7は、図3〜6の状態から本体1を90度回転させたときの断面を示したものである。この逃し孔14は、平時の開閉状態を示した図8・9に示したように、通常はピン押さえ4に設けたYパッキン13によって塞がれ、上室1bと大気の連通を阻止している。
【0034】
このような構成において、上室1bに異常圧が発生した場合は、図10に示したように、Yパッキン13が逃し孔14よりも上方に位置するまでピン押さえ4が押し上げられて、異常圧を逃し孔14を通じて自動的に大気に開放するようにしている。このとき、ピン押さえ4の上昇と共にピン2も上昇して閉弁状態となるが、上述した異常圧の開放により上室1bの圧力が正常復帰すれば、圧力調整バネ5の伸長方向の復元力によって、ピン押さえ4とともにピン2も平時の位置に復元する。
【0035】
上述したような異常圧は一般的に高温環境下で発生するが、仮に70度前後の極めて高温環境下に本レギュレータRを閉弁状態で放置すると、極度の異常圧が発生し、レギュレータRの故障のみならず、炭酸ガスボンベBが破裂する危険すらある。
【0036】
その対策として本発明では、図11に示したように、スリーブ3にガス流路3aの中途を側方に分岐して下室1aと連通する分岐孔3dを設けると共に、図7に示したように、本体1の側方に下室1aに通じる可溶栓15を設けることとした。なお、可溶栓15は、内外に通じる孔に、所定の温度で溶解する金属を充填固化してなり、一定温度以上となれば前記金属が溶解することにより、異常圧を孔から外部に開放するもので、溶栓や安全栓とも称されるものである。
【0037】
この構成では、平時は図8・9に示すように、可溶栓15は充填金属によって閉塞されており、通常どおりの使用が可能である。また、図10に示すように、逃し孔14からの開放を伴う異常圧発生時も、周辺温度が一定以上とならない限り、可溶栓15は機能しない。つまり、可溶栓15はレギュレータRの周辺温度に依存して、該温度が一定以上となった場合にのみ、可溶栓15の充填金属が溶けて、下室1aと外気を連通するという機能を発揮する。このとき、高温環境によって当然、炭酸ガスボンベBの内圧も極度に高まっているが、このような極度の異常圧は、図12に矢印をもって示したように、スリーブ3の分岐孔3dから下室1aを介し、可溶栓15の金属が溶けて発現した隙間を通って外気に開放され、各部の故障や炭酸ガスボンベBの破裂を防止しているのである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のレギュレータは圧縮ガスを噴霧させることから、炭酸ミスト美顔器に好適であるが、ピンと弁孔の大きさを変えることによって、圧縮ガスの噴出態様を変えることができるから、圧縮ガスを用いる他の機器にも広く利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
R レギュレータ
S スプレー本体
T トリガ
B 炭酸ガスボンベ
V ボンベ容器
H ハンドル
P ガスホース
C カプラ
I インジケータ
1 本体
1a 下室(一次側)
1b 上室(二次側)
1c 仕切り
2 ピン
3 スリーブ
3a ガス流路
3b パッキン(弁座)
3c 弁孔
4 ピン押さえ
5 圧力調整バネ
6 スプリング
7 開封部材
8 焼結フィルタ
9 ボンベ装着部材
10 パッキン
11 バネ受け
12 押し込み部材
13 Yパッキン
14 逃し孔
15 可溶栓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12