特許第6263003号(P6263003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6263003-ロータリダンパ 図000002
  • 特許6263003-ロータリダンパ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263003
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ロータリダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/14 20060101AFI20180104BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20180104BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20180104BHJP
   B60G 13/06 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   F16F9/14 A
   F16F9/54
   F16F9/32 Q
   B60G13/06
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-234837(P2013-234837)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-94437(P2015-94437A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】作田 敦
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−273922(JP,A)
【文献】 特開2000−313218(JP,A)
【文献】 特開2012−056381(JP,A)
【文献】 特開平08−216640(JP,A)
【文献】 特開昭60−049148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00− 9/58
B60G 1/00−99/00
F15B 15/00−15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、上記ハウジングに軸支され自軸回りに回転可能なシャフトとを備えるとともに上記シャフトの回転を抑制する減衰力を発生するロータリダンパにおいて、
上記ハウジングを車体に連結する取付装置を備え
上記取付装置は、上記車体または上記ハウジングの一方に固定される第一プレートと、上記車体または上記ハウジングの他方に固定される第二プレートと、上記第一プレートと上記第二プレートとの間に介装される弾性変形可能な一以上のクッション部材とを有し、
上記クッション部材は、上記シャフトの軸方向に入力される力に対する剛性よりも、上記シャフトを回転させる方向に入力される力に対する剛性の方が高くなるように設定されている
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項2】
上記クッション部材は、ゴムからなり、上記シャフトの軸方向に力が入力されたとき、せん断力が作用し、上記シャフトを回転させる方向に力が入力されたとき、圧縮力が作用するように設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリダンパ。
【請求項3】
記第一プレートは、対を成して上記シャフトの中心線に沿って上記中心線の両側に並んで配置されており、それぞれ、一端が上記車体または上記ハウジングの一方に固定され鉛直方向に延びる第一延設片と、上記第一延設片の他端から水平方向に延びる中間片とを有するとともに、
上記第二プレートは、対を成して上記第一プレートと向かい合い上記中心線に沿って上記中心線の両側に水平方向に並んで配置されており、それぞれ、上記車体または上記ハウジングの他方に固定される固定挟持片と、一端が上記固定挟持片に固定されて鉛直方向に延びる第二延設片と、上記第二延設片の他端から上記固定挟持片と対向しながら水平方向に延びる対向挟持片とを有し、
向かい合う上記第一プレートと上記第二プレートにおいて、上記固定挟持片と上記対向挟持片との間に上記中間片がそれぞれ挿入されるとともに、上記固定挟持片と中間片との間と、上記対向挟持片と上記中間片との間に、それぞれ上記クッション部材が介装されている
ことを特徴とする請求項2に記載のロータリダンパ。
【請求項4】
上記クッション部材は、それぞれ、上記各クッション部材を挟む上記第一プレートと上記第二プレートの両方に接着されている
ことを特徴とする請求項3に記載のロータリダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリダンパは、ハウジングと、このハウジングに軸支され自軸回りに回転可能なシャフトとを備え、このシャフトの回転を抑制する減衰力を発生するようになっている。ロータリダンパが車両のサスペンション用に利用される場合、ハウジングを車体に固定し、シャフトを車輪にリンク機構を介して連結することが一般的であり、上記リンク機構で車輪の上下運動をシャフトの回転運動に変換している。
【0003】
ここで、リンク機構を構成する揺動可能なアームは、ブッシュの撓みによってある程度揺動方向以外に動くことができる構造となっている。このため、ロータリダンパが車両のサスペンション用に利用されて、外力が車輪及びリンク機構を介してロータリダンパに入力されると、ロータリダンパのシャフトには、当該シャフトの回転方向以外にも、軸方向の力が作用することになる。
【0004】
従来、ロータリダンパのハウジングと車体は、ボルトで剛結合されるとともに(例えば、特許文献1)、シャフトとリンク機構は、セレーション嵌合により剛結合されており(例えば、特許文献2)、上記軸方向の力を吸収することができない。このため、特許文献2に開示のロータリダンパでは、シャフトに固定されるベーンと、シャフトを軸支するサイドパネルとの間に耐摩耗性に優れたサイドプレートを介装し、このサイドプレートでシャフトに入力される軸方向の力を受けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−303466号公報
【特許文献2】特開2012−197861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したように、軸方向の力を受けながらシャフトが回転すると、ベーンがサイドプレートに高い圧力で押し付けられながら回転するので、フリクションの増加を避けられない。このような、シャフトの軸方向に作用する外力に起因するフリクションの増加は、サイドプレートの有無によらず発生する。
【0007】
また、特に、特許文献2に開示のように、サイドプレートにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)被膜を形成する場合、当該被膜を形成する母材として、高硬質で高価な素材を使用する必要があるので、サイドプレートが高価になり、延いては、ロータリダンパが高価になる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、シャフトが回転する際のフリクションを低減し、安価にすることが可能なロータリダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、ハウジングと、上記ハウジングに軸支され自軸回りに回転可能なシャフトとを備えるとともに上記シャフトの回転を抑制する減衰力を発生するロータリダンパにおいて、上記ハウジングを車体に連結する取付装置を備え、上記取付装置は、上記車体または上記ハウジングの一方に固定される第一プレートと、上記車体または上記ハウジングの他方に固定される第二プレートと、上記第一プレートと上記第二プレートとの間に介装される弾性変形可能な一以上のクッション部材とを有し、上記クッション部材は、上記シャフトの軸方向に入力される力に対する剛性よりも、上記シャフトを回転させる方向に入力される力に対する剛性の方が高くなるように設定されていることである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロータリダンパによれば、シャフトが回転する際のフリクションを低減し、安価にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係るロータリダンパを示した図であり、図2のXX線断面を示す。
図2】本発明の一実施の形態に係るロータリダンパを部分的に切り欠いて示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施の形態に係るロータリダンパについて、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。また、図面は、符号の向きに見るとする。
【0013】
図1,2に示すように、本実施の形態に係るロータリダンパRは、ハウジング1と、このハウジング1に軸支され自軸回りに回転可能なシャフト2とを備え、このシャフト2の回転を抑制する減衰力を発生する。さらに、上記ロータリダンパRは、上記ハウジング1を車体に連結する取付装置Aを備えるとともに、この取付装置Aは、弾性変形可能な一以上のクッション部材3A,3B,3C,3Dを備えており、このクッション部材3A,3B,3C,3Dは、上記シャフト2の軸方向(図1中前後方向)に入力される力(外力F1)に対する剛性よりも、上記シャフト2を回転させる方向に入力される力(外力F2)に対する剛性の方が高くなるように設定されている。
【0014】
以下、詳細に説明すると、本実施の形態に係るロータリダンパRは、車両のサスペンション用に利用されており、ハウジング1とシャフト2とを備えて減衰力を発生する緩衝器本体Dと、ハウジング1を車体Bのクロスメンバに連結する取付装置Aとを備えている。また、ハウジング1から突出するシャフト2の先端部には、セレーション2aが設けられており、このセレーション2aは、車輪に連結される図示しないリンク機構に接続されている。このリンク機構は、車輪の上下運動をシャフト2の回転運動に変換するので、路面凹凸による衝撃が車輪に入力されると、シャフト2がハウジング1に軸支されながら自軸回りに回転するようになっている。この自軸回りに回転するとは、自身(シャフト)の中心線2xを軸として、この軸回りに回転することをいう。
【0015】
緩衝器本体Dの構成は、シャフト2とハウジング1とを備え、シャフト2の自軸回りの回転を抑制する減衰力を発生可能であれば、如何なる構成を採用するとしてもよいが、以下にその一例について説明する。緩衝器本体Dは、上記したように、ハウジング1と、シャフト2とを備えるとともに、シャフト2の外周に軸方向に沿って起立するベーン4と、ハウジング1の内部に形成されて上記ベーン4で区画され作動油が充填される一方室L1及び他方室L2と、これら一方室L1と他方室L2とを連通する流路5と、この流路5を通過する作動油の流れに抵抗を与える減衰弁Vと、温度変化による作動油の体積変化を補償する図示しないアキュムレータとを備えている。なお、減衰力を発生できれば、作動油以外の流体を利用してもよい。
【0016】
ハウジング1は、シャフト2が挿通されてシャフトとの間に空間を形成する筒状のケース10と、同じくシャフト2が挿通されてケース10の軸方向の両側に積層される一対のサイドプレート11,12と、これらサイドプレート11,12の反ケース側に積層されてシャフト2を軸支する一対のサイドパネル13,14とを備えている。そして、ケース10とサイドプレート11,12とサイドパネル13,14は、ハウジング1の外側からサイドパネル13とサイドプレート11を貫通しケース10の図2中左部に螺合される複数のボルト15と、ハウジング1の外側からサイドパネル14とサイドプレート12を貫通しケース10の図2中右部に螺合される複数のボルト16で一体化されている。
【0017】
ケース10の内周には、相対向してシャフト2側に突出しシャフト2の軸方向に沿って延びる一対の隔壁部10a,10bが設けられており、ケース10とシャフト2との間に形成される空間を二つの断面扇状の圧力室P1,P2に区画している。これらの圧力室P1,P2には、それぞれ、作動油が充填されている。また、隔壁部10a,10bには、それぞれ、両サイドプレート11,12に密着するとともに、シャフト2の外周面に摺接するコ字状のシール17が取り付けられており、隔壁部10a,10bとシャフト2との間、及び、隔壁部10a,10bとサイドプレート11,12との間を通って、作動油が二つの圧力室P1,P2の間を移動することを防いでいる。
【0018】
ケース10の両側に積層されるサイドプレート11,12は、それぞれ、サイドパネル13,14よりも薄肉の円板状とされていて、中央部にシャフト2の挿通を許容する挿通孔11a,12aが形成されている。また、サイドプレート11,12は、ベーン4に摺接してサイドパネル13,14を保護するために設けられており、耐摩耗性の観点から、耐摩耗性に優れた性質を有する。また、一方のサイドプレート11の図2中左右両側には、それぞれ、サイドプレート11の周方向に沿ってOリング18が設けられており、サイドプレート11とケース10との間と、サイドプレート11とサイドパネル13との間を塞いでいる。同様に、他方のサイドプレート12の図2中左右両側にも、それぞれ、サイドプレート12の周方向に沿ってOリング19が設けられており、サイドプレート12とケース10との間と、サイドプレート12とサイドパネル14との間を塞いでいる。
【0019】
ケース10との間に一方のサイドプレート11を挟む一方のサイドパネル13と、ケース10との間に他方のサイドプレート12を挟む他方のサイドパネル14は、共に、例えば、アルミニウムといった軽量な材料で形成されており、これによりロータリダンパRの全重量を軽減することができる。
【0020】
一方のサイドパネル13は、筒状でシャフト2の図2中左部が挿通されるシャフト保持部13aと、このシャフト保持部13aの図2中右端から外側に張り出すフランジ状のキャップ部13bとを備えている。シャフト保持部13aの内周には、反ケース側から順に、環状のダストシール20と、環状のオイルシール21と、筒状のベアリング22と、環状のサイドシール23が、軸方向に並んで保持されている。そして、ダストシール20はシャフト2の外周面に摺接して塵や埃がハウジング1内に侵入することを防ぎ、オイルシール21は同じくシャフト2の外周面に摺接してハウジング1内の作動油が流出することを防ぐ。また、サイドシール23は、シャフト2とサイドプレート11との間を塞ぐので、一方のサイドパネル13は、ベアリング22を介してシャフト2の図2中左部を自軸回りに回転可能に軸支しながら、ケース10とシャフト2との間に形成される空間の図2中左側開口を塞ぐことができる。また、キャップ部13bには、上記ボルト15が挿通されるとともに、このボルト15よりも内周側の図2中右側面に上記Oリング18が密着している。
【0021】
他方のサイドパネル14は、この実施の形態の場合、有底筒状であってシャフト2の図2中右部が挿入されるシャフト保持部14aと、このシャフト保持部14aの図2中左端から外側に張り出すフランジ状のキャップ部14bとを備えている。シャフト保持部14aの内周には、反ケース側から順に、環状のオイルシール24と、筒状のベアリング25と、環状のサイドシール26が、軸方向に並んで保持されている。そして、シャフト保持部14aの底部は塵や埃がハウジング1内に侵入することを防ぎ、オイルシール24はシャフト2の外周面に摺接してハウジング1内の作動油が流出することを防ぐ。また、サイドシール26はシャフト2とサイドプレート12との間を塞ぐので、他方のサイドパネル14は、ベアリング25を介してシャフト2の図2中右部を自軸回りに回転可能に軸支しながら、ケース10とシャフト2との間に形成される空間の図2中右側開口を塞ぐことができる。また、キャップ部14bには、上記ボルト16が挿通されるとともに、このボルト16よりも内周側の図2中左側面に上記Oリング19が密着している。なお、本実施の形態においては、シャフト保持部14aが有底筒状に形成されるので、ダストシールを設けていないが、一方のサイドパネル13と同様に、シャフト保持部14aを筒状に形成してシャフト2を貫通させ、ダストシールを設けるとしてもよい。
【0022】
シャフト2は、図2中左側をハウジング1から突出させており、この突出端から図2中右側に順に連なり、同軸上に配置されるセレーション2aと、第一軸部2bと、この第一軸部2bよりも外径が大きい拡径部2cと、この拡径部2cよりも外径が小さい第二軸部2dとを備えている。そして、第一軸部2bの外周面に、一方のサイドパネル13に保持されるダストシール20、オイルシール21及びベアリング22が摺接し、第一軸部2bと拡径部2cの境界の段差面にサイドシール23が摺接し、第二軸部2dの外周面に、他方のサイドパネル14に保持されるオイルシール24及びベアリング25が摺接し、第二軸部2dと拡径部2cの境界の段差面にサイドシール26が摺接している。また、拡径部2cがケース10に収容されるようになっており、この拡径部2cの外周面に隔壁部10a,10bのシール17が摺接し、拡径部2cの外周であって、両隔壁部10a,10bの間に上記圧力室P1,P2がそれぞれ形成されている。
【0023】
シャフト2の外周に軸方向に沿って起立するベーン4は、拡径部2cの外周に、周方向に180度の角度をもって一対設けられており、一方のベーン4が一方の圧力室P1を二つの部屋p10,p11に区画するとともに、他方のベーン4が他方の圧力室P2を二つの部屋p20,p21に区画している。ベーン4には、両サイドプレート11,12に摺接するとともに、ケース10の内周面に摺接するコ字状のシール40が取り付けられており、ベーン4とケース10との間、及び、ベーン4とサイドプレート11,12との間を通って、作動油が二つの部屋(p10とp11、p20とp21)の間を移動することを防いでいる。
【0024】
シャフト2が図1中時計回りに回転するとき、ベーン4,4の進行方向に位置し、対角線上に配置される二つの部屋p10,p20は、シャフト2に形成される一方通路2eを介して連通し、一方室L1を構成する。また、シャフト2が図1中反時計回りに回転するとき、ベーン4,4の進行方向に位置し、対角線上に配置される二つの部屋p11,p21は、上記シャフト2に形成されて上記一方通路2eと交わらないように配置される他方通路2fを介して連通し、他方室L2を構成する。つまり、一方室L1と他方室L2は、一対のベーン4,4で区画され、シャフト2が図1中時計回りに回転するとき、一方室L1が縮小され、反時計回りに回転するとき、他方室L2が縮小されるようになっている。また、一方室L1と他方室L2は、流路5を介して連通しており、この流路5の途中には、この流路5を通過する作動油の流れに抵抗を与える減衰弁Vが設けられている。
【0025】
上記構成を備えることにより、外力の入力により、シャフト2が図1中時計回りに回転すると、縮小される一方室L1の作動油が流路5を通って拡大する他方室L2に移動し、反対に、シャフト2が図1中反時計回りに回転すると、縮小される他方室L2の作動油が流路5を通って拡大する一方室L1に移動する。このため、シャフト2の自軸回りの回転に伴い、緩衝器本体Dは、作動油が上記流路5を通過する際の減衰弁Vの抵抗に起因する減衰力を発生し、上記シャフト2の回転を抑制できる。なお、上記したように、緩衝器本体Dの構成は、上記の限りではない。例えば、上記流路5や減衰弁Vは、ハウジング1に取り付けられるとしても、シャフト2内に設けられるとしてもよい。また、減衰弁Vの構成も適宜変更することが可能であり、一方室L1から他方室L2に移動する作動液の流れに抵抗を与える減衰弁と、他方室L2から一方室L1に移動する作動液の流れに抵抗を与える減衰弁とを分け、シャフト2の回転方向に従い緩衝器本体Dの発生する減衰力を変えられるようにしてもよい。
【0026】
つづいて、上記緩衝器本体Dのハウジング1を車体Bに連結する取付装置Aは、本実施の形態において、シャフト2の中心線2xに沿うとともにこの中心線2xの両側に水平方向に並んで配置される一対の第一プレート6A,6Bと、これら第一プレート6A,6Bと向い合せに配置され同じくシャフト2の中心線2xに沿うとともにこの中心線2xの両側に水平方向に並んで配置される一対の第二プレート7A,7Bと、向かい合う第一プレート6Aと第二プレート7Aとの間、及び、向かい合う第一プレート6Bと第二プレート7Bとの間に介装される複数のクッション部材3A,3B,3C,3Dとを備えている。
【0027】
第一プレート6A,6Bは、それぞれ、シャフト2の中心線2xに沿って配置される板状部材であり、車体Bにボルト60で固定される固定片61と、上端がこの固定片61を介して車体Bに固定され鉛直方向に延びる第一延設片62と、この第一延設片62の自由端となる下端から固定片61と逆側に水平方向に延びる中間片63とを備えている。本実施の形態において、両第一プレート6A,6Bは、一枚の金属製板状母材を折り曲げて、固定片61、第一延設片62及び中間片63を形成しており、加工が簡易である。なお、第一プレート6A,6Bの素材や形成方法は、適宜変更することが可能であり、例えば、複数の板体を溶接等で結合して第一プレート6A,6Bを形成するとしてもよい。
【0028】
第二プレート7A,7Bも、それぞれ、シャフト2の中心線2xに沿って配置される板状部材であり、ハウジング1にボルト70で固定される固定挟持片71と、下端が固定挟持片71に固定されて鉛直方向に延びる第二延設片72と、この第二延設片72の自由端となる上端から固定挟持片71と対向しながら水平方向に延びる対向挟持片73とを備えている。本実施の形態において、両第二プレート7A,7Bも、一枚の金属製板状母材を折り曲げて、固定挟持片71、第二延設片72及び対向挟持片73を形成しており、加工が簡易である。なお、第二プレート7A,7Bの素材や形成方法は、適宜変更することが可能であり、例えば、複数の板体を溶接等で結合して第二プレート7A,7Bを形成するとしてもよい。
【0029】
そして、一対の第一プレート6A,6Bと、一対の第二プレート7A,7Bが、図1中左右対称に配置されており、背中合わせに配置される第二プレート7A,7Bの固定挟持片71と対向挟持片73との間に、向い合せに配置される第一プレート6A,6Bの中間片63をそれぞれ挿入している。また、上下に並ぶ第一プレート6Aと第二プレート7Aや、第一プレート6Bと第二プレート7Bが直接接触しないようになっており、中間片63の先端63aと第二延設片72との間や、対向挟持片73の先端73aと第一延設片62との間に隙間が形成されている。
【0030】
クッション部材3A,3B,3C,3Dは、弾性変形可能なゴムからなり、本実施の形態においては、四か所に設けられている。具体的には、図1中左側の上下に並ぶ第一、第二プレート6A,7Aの対向挟持片73と中間片63との間に介装されるクッション部材3Aと、同中間片63と固定挟持片71との間に介装されるクッション部材3Bと、図1中右側の上下に並ぶ第一、第二プレート6B,7Bの対向挟持片73と中間片63との間に介装されるクッション部材3Cと、同中間片63と固定挟持片71との間に介装されるクッション部材3Dとがある。図1中左側のクッション部材3A,3Bと同左側の第二延設片72との間と、図1中右側のクッション部材3C,3Dと同右側の第二延設片72との間には、それぞれ、隙間が設けられており、各クッション部材3A,3B,3C,3Dの弾性変形を許容できるようになっている。なお、クッション部材3A,3B,3C,3Dの弾性変形を許容する隙間を設ける位置は、適宜変更することが可能である。
【0031】
また、図1中左側のクッション部材3A,3Bは、図1中左側の第一、第二プレート6A,7Aに接着されるとともに、図2中右側のクッション部材3C,3Dは、図1中右側の第一、第二プレート6B,7Bに接着されている。つまり、全てのクッション部材3A,3B,3C,3Dが、それぞれ、各クッション部材3A,3B,3C,3Dを挟む第一プレート6A,6Bと第二プレート7A,7Bの両方に接着されているので、クッション部材3A,3Bと第一、第二プレート6A,7Aとの図2中左右方向のずれが抑制され、クッション部材3C,3Dと第一、第二プレート6B,7Bとの図2中左右方向のずれが抑制されている。
【0032】
以下、本実施の形態に係るロータリダンパRの作動について説明する。
【0033】
シャフト2を図1中時計回りに回転させる方向に外力F2が入力されると、図1中左側の固定挟持片71が中間片63に接近しようとするとともに、図1中右側の対向挟持片73が中間片63に接近しようとするので、対角線上に配置される図1中左下のクッション部材3Bと、図1中右上のクッション部材3Cに圧縮力(圧縮しようとする力)が作用する。反対に、シャフト2を図1中反時計回りに回転させる方向に外力F2が入力されると、図1中左側の対向挟持片73が中間片63に接近しようとするとともに、図1中右側の固定挟持片71が中間片63に接近しようとするので、他方の対角線上に配置される図1中左上のクッション部材3Aと、図1中右下のクッション部材3Dに圧縮力が作用する。
【0034】
つまり、シャフト2を回転させる方向に外力F2が入力される場合には、回転方向がどちらであっても、対角線上に配置される二つのクッション部材(3Aと3D、または、3Bと3C)が圧縮されるようになっている。クッション部材3A,3B,3C,3Dは、ゴムからなり、ゴムは、圧縮力に対する剛性が高いので、上記外力F2に対するクッション部材3A,3B,3C,3Dの剛性を高くできる。このため、上記外力F2をシャフト2に伝達しやすく、シャフト2が上記外力F2の入力を受けて回転し、ロータリダンパRが減衰力を発生することができる。
【0035】
これに対して、シャフト2の軸方向に外力F1が入力されると、第一プレート6A,6Bと、第二プレート7A,7Bが図2中左右方向にずれようとするので、全てのクッション部材3A,3B,3C,3Dに、せん断力が作用する。クッション部材3A,3B,3C,3Dを形成するゴムは、せん断力に対する剛性が低いので、上記外力F1に対するクッション部材3A,3B,3C,3Dの剛性を低くできる。このため、シャフト2に作用する上記外力F1を吸収し、サイドプレート11,12にかかる圧力を低減することで、フリクションを低減できる。
【0036】
また、全てのクッション部材3A,3B,3C,3Dが、対応する第一プレート6A,6Bと第二プレート7A,7Bに接着されているので、せん断力が作用して、向かい合う第一プレートと第二プレート(6Aと7A、6Bと7B)が一時的に図2中左右にずれたとしても、そのまま元の位置に戻らなくなることを防ぐことができる。
【0037】
以下、本実施の形態に係るロータリダンパRの作用効果について説明する。
【0038】
本実施の形態において、クッション部材3A,3B,3C,3Dは、それぞれ、上記各クッション部材3A,3B,3C,3Dを挟む第一プレートと第二プレート(6Aと7Aまたは6Bと7B)の両方に接着されている。
【0039】
上記構成によれば、シャフト2の軸方向に外力F1が入力されて、向かい合う第一プレートと第二プレート(6Aと7Aまたは6Bと7B)がずれたとき、ずれたまま元の位置に戻らなくなることを防ぐことが可能となる。
【0040】
なお、クッション部材3A,3B,3C,3Dと、各クッション部材3A,3B,3C,3Dを挟む第一プレートと第二プレート(6Aと7Aまたは6Bと7B)のずれを接着以外の方法により防止するとしてもよく、例えば、第一プレート6A,6Bや第二プレート7A,7Bの図2中左右両端にストッパを起立させるとしてもよい。
【0041】
本実施の形態において、取付装置Aは、シャフト2の中心線2xに沿うとともにこの中心線2xの両側に水平方向に並んで配置される一対の第一プレート6A,6Bと、これら第一プレート6A,6Bと向かい合い中心線2xに沿ってこの中心線2xの両側に水平方向に並んで配置される一対の第二プレート7A,7Bとを備えている。
【0042】
上記第一プレート6A,6Bは、それぞれ、一端が車体に固定され鉛直方向に延びる第一延設片62と、この第一延設片62の他端から水平方向に延びる中間片63とを備えるとともに、上記第二プレート7A,7Bは、それぞれ、ハウジング1に固定される固定挟持片71と、一端が上記固定挟持片71に固定されて鉛直方向に延びる第二延設片72と、この第二延設片72の他端から上記固定挟持片71と対向しながら水平方向に延びる対向挟持片73とを備えている。
【0043】
そして、向かい合う第一プレートと第二プレート(6Aと7A、6Bと7B)において、上記固定挟持片71と上記対向挟持片73との間に上記中間片63がそれぞれ挿入されるとともに、上記固定挟持片71と中間片63との間と、上記対向挟持片73と上記中間片63との間に、それぞれ上記クッション部材3A,3B,3C,3Dが介装されている。
【0044】
上記構成によれは、シャフト2の軸方向に外力F1が入力されると、クッション部材3A,3B,3C,3Dにせん断力が作用し、シャフト2に回転方向に外力F2が入力されると、シャフト2の中心線2xの図1中左右両側で、クッション部材(3A,3Dまたは3B,3C)に圧縮力が作用する。そして、クッション部材3A,3B,3C,3Dの素材であるゴムは、せん断力に対する剛性が低く、圧縮力に対する剛性が高い性質を有するので、上記外力F1に対するクッション部材3A,3B,3C,3Dの剛性よりも、上記外力F2に対するクッション部材3A,3B,3C,3Dの剛性を高くすることが容易である。
【0045】
なお、外力F1が入力されたとき、クッション部材3A,3B,3C,3Dにせん断力を作用させ、外力F2が入力されたとき、クッション部材3A,3B,3C,3Dに圧縮力を作用させるための構成は上記の限りではなく、適宜変更することが可能である。
【0046】
また、本実施の形態において、第一プレート6A,6Bを両方車体Bに固定し、第二プレート7A,7Bを両方ハウジング1に固定しているが、この限りではなく、第一プレート6A,6Bの一方を車体Bに、他方をハウジング1に固定するとともに、第二プレート7A,7Bの一方をハウジング1に、他方を車体Bに固定するとしてもよく、また、第一プレート6A,6Bを両方ハウジング1に固定するとともに、第二プレート7A,7Bを両方車体Bに固定するとしてもよい。
【0047】
また、本実施の形態において、第一延設片62の一端を固定片61に連ね、この固定片61をボルト60で車体Bに固定することで、第一延設片62の一端を車体に固定しているが、固定方法はこの限りではなく、例えば、第一延設片62の一端を溶接や、接着等により固定するとしてもよい。同様に、固定挟持片71は、ボルト70でハウジング1に固定されているが、固定方法はこの限りではなく、例えば、固定挟持片71を溶接や、接着等により固定するとしてもよい。
【0048】
また、本実施の形態において、クッション部材3A,3B,3C,3Dは、ゴムからなり、シャフト2の軸方向に力(外力F1)が入力されたとき、せん断力が作用し、シャフト2を回転させる方向に力(外力F2)が入力されたとき、圧縮力が作用するように設定されている
ゴムは、せん断力に対する剛性が低く、圧縮力に対する剛性が高い性質を持つので、上記構成によれば、クッション部材3A,3B,3C,3Dにおいて、シャフト2の軸方向に入力される力(外力F1)に対する剛性よりも、シャフト2を回転させる方向に入力される力(外力F2)に対する剛性を高く設定することが容易である。
【0049】
なお、クッション部材3A,3B,3C,3Dの剛性を上記したように設定するための構成は、適宜変更することが可能であり、例えば、ゴムの組成により実現するとしてもよい。また、ゴムの組成や、クッション部材3A,3B,3C,3Dに図2中左右方向に長い孔を形成したり、クッション部材3A,3B,3C,3Dにおける図2中左右方向長さを長くしたりすることで、上記剛性の実現を助けるとしてもよい。
【0050】
また、本実施の形態において、ロータリダンパRは、ハウジング1を車体に連結する取付装置Aを備えるとともに、この取付装置Aは、弾性変形可能な一以上のクッション部材3A,3B,3C,3Dを備えている。そして、このクッション部材3A,3B,3C,3Dは、シャフト2の軸方向に入力される力(外力F1)に対する剛性よりも、シャフト2を回転させる方向に入力される力(外力F2)に対する剛性の方が高くなるように設定されている。
【0051】
上記構成によれは、シャフト2の軸方向に入力される外力F1を、クッション部材3A,3B,3C,3Dで効果的に吸収することができるので、サイドプレート11,12にかかる圧力を低減することができる。したがって、サイドプレート11,12を廃したり、サイドプレート11,12の素材として、従来よりも耐摩耗性能や、硬度の低い安価な素材を選択したりすることが可能となり、延いては、ロータリダンパRを安価にすることが可能となる。
【0052】
また、サイドプレート11,12にかかる圧力を充分に低減できる程度に、クッション部材3A,3B,3C,3Dにおける外力F2に対する剛性も低くしてしまうと、外力F2がシャフト2に作用した時、この外力F2をクッション部材3A,3B,3C,3Dで吸収しすぎて、上記外力F2がシャフト2に充分に伝達されず、ロータリダンパRの減衰力が所望の減衰力よりも低下する虞がある。しかし、上記構成によれば、クッション部材3A,3B,3C,3Dにおける外力F1に対する剛性のみを低くし、外力F2に対する剛性を高く維持できるので、このような不具合の心配もない。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【符号の説明】
【0054】
A 取付装置
B 車体
F1 外力(シャフトの軸方向に入力される力)
F2 外力(シャフトを回転させる方向に入力される力)
R ロータリダンパ
1 ハウジング
2 シャフト
2x シャフトの中心線
3A,3B,3C,3D クッション部材
6A,6B 第一プレート
7A,7B 第二プレート
62 第一延設片
63 中間片
71 固定挟持片
72 第二延設片
73 対向挟持片
図1
図2