特許第6263006号(P6263006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263006レーザー加飾部を備えた装飾用樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263006
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】レーザー加飾部を備えた装飾用樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/00 20180101AFI20180104BHJP
   F21S 43/00 20180101ALI20180104BHJP
   F21S 45/00 20180101ALI20180104BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20180104BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20180104BHJP
   F21W 105/00 20180101ALN20180104BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180104BHJP
【FI】
   F21S8/10 400
   F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-240836(P2013-240836)
(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公開番号】特開2015-103292(P2015-103292A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 康弘
【審査官】 丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−155702(JP,A)
【文献】 特開2009−132099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10 − 8/12
B23K 26/00 − 26/70
B29C 59/00 − 59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な樹脂基材に凹形意匠部が設けられ、凹形意匠部の内面に光輝性蒸着層が形成され、光輝性蒸着層が、レーザー光により加飾模様が形成される加飾領域と、加飾模様が形成されない非加飾領域とを含み、凹形意匠部が、加飾領域を画定する底壁と、非加飾領域を画定する側壁とを含み、側壁が底壁に対して100°以上の角度で開き、加飾模様が底壁と側壁との境界線より3mm以上離れた範囲において加飾領域に形成されていることを特徴とする装飾用樹脂成形品。
【請求項2】
前記底壁の内面が105°以上の開き角度で形成されている請求項1記載の装飾用樹脂成形品。
【請求項3】
前記底壁の幅(W)に対して側壁の高さ(H)が1/2W≦H≦Wである請求項1又は2記載の装飾用樹脂成形品。
【請求項4】
前記透明な樹脂基材が、凹形意匠部の周辺にレーザー光の照射基準位置を示す指標部を含む請求項1〜3の何れか一項に記載の装飾用樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光により光輝性蒸着層に加飾模様を形成した装飾用樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光輝性蒸着層の一部をレーザー光で除去することにより、透明な樹脂基材に加飾模様を形成する技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両用灯具の装飾用樹脂成形品であるアウターレンズにおいて、透明樹脂基材の表面に金属層と着色層を含む光輝性蒸着層を設け、この蒸着層の一部をレーザー光で切除することで、光反射性のコート部と光透過性の非コート部とからなる加飾模様を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−192217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この種の装飾用樹脂成形品によると、透明樹脂基材の形状によっては、レーザー光の反射光で対象部位以外の光輝性蒸着層が切除され、不良品が発生しやすいという問題点があった。例えば、図7(a)に示すような車両用灯具51のアウターレンズ52において、透明樹脂基材53の凹形意匠部54の内面に加飾模様55を加工する場合、図7(b)に示すように、レーザー光Lが光輝性蒸着層57で反射し、反射光の一部が反対側の蒸着層57に傷を付けることがあった。また、図7(c)に示すように、凹形意匠部54の開き角度を大きくした場合は、蒸着層57からの反射光が立壁部58の内面に当り、この部分の蒸着層57に傷を付けることもあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、反射レーザー光による不良品の発生を抑えることができる装飾用樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次のような装飾用樹脂成形品を提供する。
(1)透明な樹脂基材に凹形意匠部を設け、凹形意匠部の内面に光輝性蒸着層を形成し、光輝性蒸着層が、レーザー光により加飾模様が形成される加飾領域と、加飾模様が形成されない非加飾領域とを含み、凹形意匠部が、加飾領域で反射したレーザー光から非加飾領域を退避させる形状を備えたことを特徴とする装飾用樹脂成形品。
【0007】
(2)光輝性蒸着層の加飾領域が凹形意匠部の底壁に画定され、光輝性蒸着層の非加飾領域が凹形意匠部の側壁に画定され、側壁が底壁に対して100°以上の角度で開き、加飾模様が底壁と側壁との境界線より3mm以上離れた範囲において加飾領域に形成されていることを特徴とする上記1に記載の装飾用樹脂成形品。
【0008】
(3)底壁の内面が105°以上の開き角度で形成されていることを特徴とする上記2に記載の装飾用樹脂成形品。
【0009】
(4)底壁の幅(W)に対して側壁の高さ(H)が1/2W≦H≦Wであることを特徴とする上記2又は3に記載の装飾用樹脂成形品。
【0010】
(5)透明な樹脂基材が、凹形意匠部の周辺にレーザー光の照射基準位置を示す指標部を含むことを特徴とする上記1〜4の何れか一つに記載の装飾用樹脂成形品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の装飾用樹脂成形品によれば、凹形意匠部が非加飾領域を反射レーザー光から退避させる形状を備えているので、反射レーザー光による光輝性蒸着層の損傷を防止し、不良品の発生を抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示す車両用灯具の外観図である。
図2図1の車両用灯具のII−II線拡大断面図である。
図3図1の車両用灯具のアウターレンズを示す正面図である。
図4】アウターレンズの詳細な形状を示す断面図である。
図5】アウターレンズの別の加飾模様を示す正面および背面図である。
図6】レーザー光の照射指標部を示すアウターレンズの背面図である。
図7】従来のアウターレンズを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を車両用灯具のアウターレンズに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す車両用灯具1は、ドアミラー2に装備されるサイドターンシグナルランプであって、ランプボディ3(図2参照)の前面にアウターレンズ4を備えている。アウターレンズ4には、横長の意匠部7がドアミラー2の開口部8から露出するように形成され、意匠部7の内側にインナーレンズ9が配置されている。
【0014】
図2に示すように、アウターレンズ4は透明な樹脂基材10を備え、この樹脂基材10に意匠部7が内面を凹ませた凹形に形成されている。凹形意匠部7の内面には、アルミニウムを含む光輝性蒸着層11がアウターレンズ4の全長にわたって延びるように形成されている。そして、光輝性蒸着層11によってインナーレンズ9、光源(LED)、回路基板、電気配線等の灯室内部品(図示略)が灯具前方から覆い隠されている。
【0015】
光輝性蒸着層11には、複数本の加飾模様12が意匠部7の長手方向に延びるように形成されている。加飾模様12は、光輝性蒸着層11の一部をレーザー光で切除することにより、微細な線状または微小な斑点状に形成されている。そして、灯具消灯時には、図3(a)に示すように、前方から加飾模様12が見えず(見えるように図示した)、凹形意匠部7が全面発光のメッキモールに見え、灯具点灯時には、図3(b)に示すように、加飾模様12を透過した光によって凹形意匠部7の前面に太い発光ライン13が表れるようになっている。
【0016】
図4(a)に詳細に示すように、光輝性蒸着層11は、レーザー光によって加飾模様12が形成される加飾領域15と、加飾模様12が形成されない非加飾領域16とを備えている。加飾領域15は凹形意匠部7の底壁17に画定され、非加飾領域16が凹形意匠部7の左右の側壁18を含む範囲に画定されている。加飾模様12は、底壁17と側壁18との境界線より所定距離δ以上離れた位置、好ましくは、3mm以上離れた位置において加飾領域15に加工されている。
【0017】
図4(b)に示すように、底壁17の内面は、開き角度θ1が105°以上の鈍角V字形に形成されている。底壁17に対する側壁18の開き角度θ2は、100°以上に設定されている。また、底壁17の幅Wに対し、立壁18の高さHは、1/2W≦H≦Wの範囲に設定されている。そして、図4(c)に示すように、レーザー光Lが加工機ヘッド20から加飾模様12の加工部位に向けて照射されたときに、凹形意匠部7の形状によって、非加飾領域16が加飾領域15で反射したレーザー光Lの進路から退避した位置に配置されるようになっている。
【0018】
したがって、この実施形態のアウターレンズ4によれば、加飾模様12のレーザー加工に際して、反射レーザー光が非加飾領域16を照射しないようにし、非加飾領域16における光輝性蒸着層11の損傷を未然に防止し、不良品の発生を抑えることができる。また、凹形意匠部7の側壁18を、鉛直方向沿いに、或いは鉛直方向から外側にかけて僅かに開き角度を持たせることによって、底壁17に対して100°以上の角度(θ2)で開き、加飾模様12を底壁17と側壁18との境界線より3mm以上離れた範囲の加工領域15に形成したので、光輝性蒸着層11に傷を付けることなく、凹形意匠部7を比較的深く形成することができるという利点もある。
【0019】
図5は、アウターレンズ4の別の実施例を示す。このアウターレンズ4では、上述したレーザー加工法によって、マークや認証番号を表す加飾模様23が凹形意匠部7の内面に形成されている。凹形意匠部7内面の光輝性蒸着層11(図5bにハッチングで示す)は、膜厚が100nm程度と薄いため、この蒸着層11をレーザー光で剥離することにより、加飾模様23の凹凸を小さくし、マークや認証番号を灯具前面に目立ちにくく形成できるうえ、灯具点灯時に意匠として活用することもできる。
【0020】
また、図5(b)及び図6に示すアウターレンズ4では、凹形意匠部7の周辺であって、ドアミラー2によって覆い隠される部位(図2参照)となる透明樹脂基材10aの裏面にレーザー光の照射基準位置を示す指標部24が設けられている。指標部24は、アウターレンズ4の射出成形型によって例えば十字形状に形成され、加飾模様23のレーザー加工にあたり、図5(b)に示すようにレーザー光の照射パターン25が指標部24の内側に正しく位置されているか照合することで、レーザーヘッド20(図4c参照)と透明樹脂基材10との相対的な位置ずれ、例えば、図6(a)に示すようなX,Y方向の並進ずれ、または、図6(b)に示すような回転ずれをチェックできるようになっている。
また、この指標部が、透明樹脂基材10における凹形意匠部7の周辺であって、ドアミラー2によって覆い隠される部位10aに形成されているので、光源からの漏光によって指標部が光っても、外部から視認されることがない。
【0021】
なお、本発明は、車両用灯具1のアウターレンズ4に限定されるものではなく、インナーレンズ、リフレクタ、エクステンション等の灯具部品のほか、透明樹脂基材に光輝性蒸着層を備えた各種装飾用樹脂成形品に適用することができる。その他、加飾模様を任意に変更するなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の形状や構成を適宜変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 車両用灯具
4 アウターレンズ
7 凹形意匠部
10 透明樹脂基材
11 光輝性蒸着層
12 加飾模様
15 加飾領域
16 非加飾領域
17 底壁
18 側壁
24 指標部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7