(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2乃至13のいずれか1項に記載の半導体装置を整流装置としてハイサイドに、請求項14乃至17のいずれか1項に記載の半導体装置を整流装置としてロウサイドに、それぞれ用いた整流回路を備えるオルタネータ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための各図において同一機能を有するものは同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0018】
<<第1実施形態>>
図1〜
図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S1の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る同期整流MOSFETを用いる整流素子のパッケージの一部を省略して示す上面図である。なお、
図1では理解を容易にするため、整流素子S1のパッケージ上部に配置されるリード電極107(
図2参照)と樹脂108は省略して示す。
図2は、
図1のA−A断面図であり、
図3は、
図1のB−B断面図である。
【0019】
<整流素子S1の構成>
まず、第1実施形態に係る同期整流MOSFETを用いる整流素子S1の構成要素を説明する。
図1に示すように、整流素子S1は、上面視で円形の外周部101sを有するベース電極101、ベース電極101の上部に設けられる台座102、台座102の上に実装されるMOSFETチップ103と制御回路チップ104とコンデンサ105、および、MOSFETチップ103の上に載せられるリード電極107(
図2参照)を有している。
【0020】
コンデンサ105の下方には、
図3に示すように、電極(112、113)を有する絶縁基板106がベース電極101の台座102上に敷かれ、台座102と電子部品(103、104、105)は樹脂108で覆われている。
図1に示すように、MOSFETチップ103は、上面視で方形の形状を有しており、四角形のコンデンサ105と制御回路チップ104とは、MOSFETチップ103の長辺に沿って隣接して、配置されている。これにより、MOSFETチップ103、コンデンサ105、および制御回路チップ104は、互いに近接して配置できるとともに互いの間のスペースは狭小で済むため、MOSFETチップ103、コンデンサ105、および制御回路チップ104の実装効率が大に配置できる。
【0021】
加えて、制御回路チップ104の第1〜第4の電極104a〜104dと、MOSFETチップ103とコンデンサ105とが電気的に接続される距離が最短になるように配置されている。
これにより、制御回路チップ104とMOSFETチップ103とコンデンサ105との電気的接続を担うワイヤ115の長さが最も短くでき、電気的接続の信頼性が高い。また、ワイヤ115が少量で済み、組み立て性が良く、コストが抑えられる。
【0022】
<MOSFETチップ103の接続>
次に、MOSFETチップ103の接続を説明する。
図2に示すように、MOSFETチップ103の下面に設けられたドレイン電極103dは半田109を用いてベース電極101の台座102に固定されている。これにより、MOSFETチップ103は、電気的、熱的にベース電極101に接続される。
【0023】
“熱的に”とは、すなわちMOSFETチップ103のドレイン電極103dの延在面が、半田109を介在して、ベース電極101の台座102の上面(延在面)に連結して固定されるので、MOSFETチップ103とベース電極101との伝熱面積が広く、MOSFETチップ103の熱が良好にベース電極101に伝導され放出されることを意味する。
【0024】
MOSFETチップ103の上面に設けられるソース電極103sは半田109を用いてリード電極107に固定されている。これにより、MOSFETチップ103は、電気的、熱的にリード電極107に接続される。
“熱的に”とは、MOSFETチップ103のソース電極103sの延在面が、半田109を介在して、リード電極107の下面(延在面)に連結して固定されるので、MOSFETチップ103とソース電極103sとの伝熱面積が広く、MOSFETチップ103の熱が良好にソース電極103sに伝導され放出されることを意味する。
【0025】
図1に示すように、MOSFETチップ103の上面のゲート電極103gは、ワイヤ115を用いてワイヤボンディングで制御回路チップ104の上面に設けられた第1の電極104aに電気的に接続されている。
【0026】
このように、MOSFETチップ103のゲート電極103gを、MOSFETチップ103の制御回路チップ104に近い角部に配置することで、前記したように、MOSFETチップ103のゲート電極103gと制御回路チップ104の第1の電極104aとの距離を最短にし、ワイヤ115の長さを最短にする。これにより、ワイヤ115によるワイヤボンディングを確実にし、接続の信頼性を高いものとしている。
【0027】
<コンデンサ105の接続>
次に、コンデンサ105の接続を説明する。
図3に示すように、コンデンサ105は、絶縁基板106を介してベース電極101の台座102に半田109を用いて固定される。電気的には、コンデンサ105の高電圧側端子110は半田109により絶縁基板106の上面に設けられた第1の電極112に接続され、絶縁基板106の第1の電極112は制御回路チップ104の上面に設けられた第2の電極104bにワイヤ115を用いてワイヤボンディングで接続される。
【0028】
図1に示すように、コンデンサ105の高電圧側端子110が制御回路チップ104の第2の電極104bに、ワイヤ115を介して、最短距離で接続されるように、コンデンサ105の高電圧側端子110と制御回路チップ104の第2の電極104bとが配置されている。これにより、制御回路チップ104、コンデンサ105の実装効率高めるとともに、ワイヤボンディングの信頼性を向上させている。
【0029】
同じく電気的に、コンデンサ105の低電圧側端子111は、半田109を用いて絶縁基板106の上面に設けられた第2の電極113に接続され、絶縁基板106の第2の電極113はベース電極101の台座102に、ワイヤ115を用いてワイヤボンディングで接続される。
【0030】
<制御回路チップ104の接続>
次に、制御回路チップ104の接続を説明する。
前記したように、制御回路チップ104の上面に設けられた第1の電極104aはMOSFETチップ103の上面に設けられたゲート電極103gに、ワイヤ115を用いてワイヤボンディングで電気的に接続される。また、制御回路チップ104のチップの上面に設けられた第2の電極104bはコンデンサ105の高電圧側端子110と接続された絶縁基板106の上面の第1の電極112にワイヤ115を用いてワイヤボンディングで電気的に接続される。
【0031】
更に、
図1に示すように、制御回路チップ104の上面に設けられる第3の電極104cは、MOSFETチップ103の上面を成すソース電極103sにワイヤ115を用いてワイヤボンディングで電気的に接続されている。
また、制御回路チップ104のチップの上面に設けられる第4の電極104dは、ベース電極101の台座102に、ワイヤ115を用いてワイヤボンディングで電気的に接続される。
【0032】
以上のワイヤ115による接続により、MOSFETチップ103と制御回路チップ104との電気的接続、および、制御回路チップ104とコンデンサ105との電気的接続が行える。また、制御回路チップ104およびコンデンサ105とベース電極101との電気的接続が行える。
上述した構成により、正座の整流素子S1を実現できる。
【0033】
<整流素子S1の回路構成>
続いて、整流素子S1の回路構成を説明する。
図4に、第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子の回路図を示す。
図4に示す回路では、L端子がベース電極101であり、H端子がリード電極107である。そして、
図1〜
図3を用いて説明したMOSFETチップ103、制御回路チップ104、コンデンサ105が、前記したように、電気的に接続され配線される。
【0034】
MOSFETチップ103は、MOSFETと並列にダイオード103iを内蔵する。制御回路チップ104は、L端子の電圧とH端子の電圧とを比較するコンパレータ116、ゲート電極103gに電圧を付与するゲートドライバ117、逆流防止用のダイオード118を有して構成される。
【0035】
コンパレータ116の一方の第1の入力端子116i1はH端子(リード電極107)に、コンパレータ116の他方の第2の入力端子116i2はL端子(ベース電極101)に接続され、コンパレータ116の出力端子116oはゲートドライバ117の入力端子117iに、ゲートドライバ117の出力端子117oはMOSFETチップ103のゲート電極103gに接続される。
【0036】
また、コンデンサ105の高電圧側端子110はコンパレータ116の電源端子116vとゲートドライバ117の電源端子117vに接続され、コンデンサ105の低電圧側端子111はL端子に接続される。更に、コンデンサ105とH端子との間にコンデンサ105の電荷の逆流防止用のダイオード118が接続される。
【0037】
<整流素子S1の回路の動作>
図4に示す整流素子S1の回路は次のように動作する。
H端子(リード電極107)の電圧がL端子(ベース電極101)の電圧より低くなると、コンパレータ116は高電圧(もしくは低電圧)の信号をゲートドライバ117に出力する。高電圧(もしくは低電圧)の信号が入力されたゲートドライバ117は、MOSFETチップ103のゲート電極103gの電圧を上げてMOSFETチップ103をオン状態にする。
【0038】
逆に、H端子(リード電極107)の電圧がL端子(ベース電極101)の電圧より高くなると、コンパレータ116は低電圧(もしくは高電圧)の信号をゲートドライバ117に出力する。低電圧(もしくは高電圧)の信号が入力されたゲートドライバ117は、MOSFETチップ103のゲート電極103gの電圧を下げてMOSFETチップ103をオフ状態にする。
【0039】
すなわち、コンパレータ116がH端子(リード電極107)とL端子(ベース電極101)の電圧の大小関係を比較し、ゲートドライバ117によりMOSFETチップ103をオン/オフする。コンデンサ105は、蓄えられる電荷によりコンパレータ116とゲートドライバ117とにそれぞれ電源端子116v、117vを介して電源電圧を供給する。
【0040】
なお、
図4に示す回路は、本発明の整流素子S1を実現する制御回路の一例であり、これに限らない。コンパレータ116の代わりに、入力信号の差を検出して増幅する差動増幅器を用いてもよいし、MOSFETチップ103に流れる電流の向きで、オン/オフを制御してもよい。
また、
図4に示すコンデンサ105に代えて、外部から電源を供給することとしてもよい。
【0041】
<整流素子S1の特徴とその効果>
次に、
図1〜
図4を用いて説明した第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S1の特徴とその効果を説明する。
図5に、オルタネータの放熱板に固定した圧入型の第1実施形態の同期整流MOSFETの整流素子の側面図を示す。
【0042】
MOSFETチップ103を用いる整流素子S1は、
図5に示すように、ベース電極101をオルタネータOt(
図22参照)の放熱板119の取り付け孔119hに圧入、もしくは、半田付けにより、放熱板119に固定される。
圧入で固定する場合、
図5に示すように、ベース電極101の外周部101sに、上面視で凹凸状の(径方向に凹凸が設けられる)ローレット101rが形成される。
【0043】
一方、半田付けで固定する場合、ベース電極101の外周部101sには、ローレット101rを形成する必要がない。そして、オルタネータの放熱板119に形成する取り付け孔119h内に半田シートを敷く。そして、整流素子S1のベース電極101を放熱板119の取り付け孔119h内に嵌入し、整流素子S1のベース電極101を取り付け孔119h内の半田シートに圧接し、半田炉で半田シートを溶融して、整流素子S1のベース電極101を、半田を介して、放熱板119の取り付け孔119h内に固定する。
【0044】
固定作業の際、整流素子S1は、円形の外周部101sを有するベース電極101にMOSFETチップ103が実装されることにより、整流素子S1のベース電極101の円形の外周部101sの中心(中心軸O)をオルタネータの放熱板119の孔119hの中心に合わせることで、整流素子S1パッケージの回転軸(
図1のベース電極101の円形の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置を合わせることなく、MOSFETチップ103を用いる整流素子S1を、オルタネータOtの放熱板119の取り付け孔119h内に容易に固定することができる。
【0045】
つまり、整流素子S1のベース電極101は、放熱板119に設けたベース電極101の外周部101sの直径よりも小さい円形の取り付け孔119hに圧入され固定される。このような圧入型の整流素子S1の場合、円形の外周部101sを有するベース電極101によって、ベース電極101の外周部101sの中心(中心軸O)を孔119hの中心に合わせることで、回転軸(中心軸O)周り方向の位置合わせが不要である。すなわち、ベース電極101の外周部101sと放熱板119に設けた取り付け孔119hとの厳密な位置合わせが不要であり、整流素子S1の放熱板119への固定が簡単になる。
【0046】
オルタネータOtの放熱板119には、多数個のMOSFETチップ103の整流素子S1を取り付ける必要があるため、MOSFETチップ103の整流素子S1をオルタネータOtに容易に固定できることにより、オルタネータOtの製造工程を簡素化し、低コスト化を図れる。
【0047】
ベース電極101の台座102は、
図1に示す実施例では円形とした。台座102の形状は、円形ではなく、
図6に示すような方形にしてもよい。なお、
図6は、第1実施形態に係るMOSFETを用いた整流素子の別の実施形態の上面図である。
【0048】
台座102を上面視で円形とした場合、台座面の端部を均一化でき、熱疲労試験で測定される耐熱疲労性、温度サイクル試験で測定される耐温度特性の信頼性を向上することができる。
【0049】
一方、台座102を上面視で方形とした場合、矩形のMOSFETチップ103、コンデンサ105、および制御回路チップ104の形状に沿う形となり、面積効率よく台座上に電子部品(103、104、105)を搭載することができる。そのため、台座102が上面視で円形の場合よりも、より大きい形状のMOSFETチップ103やコンデンサ105を搭載することが可能となる。
【0050】
また、上面視で方形の台座102の四辺に曲率を設けることで形状の変化がなだらかになり、熱疲労試験で測定される耐熱疲労性、温度サイクル試験で測定される耐温度特性の信頼性の悪化を抑制することが可能である。
【0051】
MOSFETチップ103は、上面視で正方形よりも長方形が望ましく、長方形の長辺に隣接する位置に、コンデンサ105と制御回路チップ104を配置する。こうすることで、面積効率よく電子部品(103、104、105)を台座102に搭載することができ、より大きい寸法のMOSFETチップ103やコンデンサ105を使うことが可能になる。
【0052】
MOSFETチップ103は、上面視でベース電極101および台座102の中心軸O(回転軸)上に位置するようにし、MOSFETチップ103の上面に接続するリード電極107(
図2参照)の端子位置もベース電極101および台座102の中心軸O上に配置する。こうすることで、従来のダイオードを用いた整流素子を使うオルタネータにそのまま本発明の同期整流MOSFETを用いた整流素子S1を使用して、リード電極107を接続できる。
【0053】
加えて、リード電極107の端子を上面視で整流素子S1のパッケージの中心軸O上に配置することで、該パッケージにおけるリード電極107の対称性が図れ、リード電極107に印加される曲げ力に対する耐性(剛性)を向上させることができる。
さらに、リード電極107の端子を上面視で整流素子S1のパッケージの中心軸O上に配置することで、MOSFETチップ
103の上面視で回転軸(中心軸O)周りの位置合わせが不要である。つまり、整流素子S1のパッケージの芯だしを行うことで、整流素子S1の位置決めを行うことができる。
【0054】
MOSFETチップ103のソース電極103sもしくはドレイン電極103dの電気的な接続は、ワイヤではなく、前記したように、両電極103s、103d面に半田109を用いて、それぞれリード電極107(の延在面)、ベース電極101(の延在面)を接続する。こうすることで、整流時にMOSFETチップ103で発生した熱を、半田109を介して、広い伝熱面積をもってベース電極101とリード電極107との両方に逃がすことが可能であり、MOSFETチップ103の温度上昇を抑えることができる。
【0055】
MOSFETチップ103は、ゲート酸化膜を有するため、ダイオードと比べ高温での信頼性の確保がより難しい。更に、MOSFETチップ103は、高温ほどキャリアの移動度が小さくなる特性をもつためにオン電圧が大きくなり、ダイオードとは逆に損失が大きくなる。よって、MOSFETチップ103では、特に放熱が重要であり、MOSFETチップ103の上下両面(ソース電極103s、ドレイン電極103d)からの良好な放熱が、省電力化に有効である。
【0056】
図1に示すように、MOSFETチップ103のゲート電極103gの位置は、MOSFETチップ103の上面の制御回路チップ104の第1の電極104aに最も近い角部もしくは辺に配置する。こうすることで、MOSFETチップ103と制御回路チップ104の第1の電極104aを電気的に接続するワイヤ115の長さを短くでき、配線の熱疲労試験での熱疲労もしくは温度サイクル試験での温度劣化に対する信頼性を向上することができる。
【0057】
コンデンサ105は、ベース電極101の台座102の上に搭載した絶縁基板106の上に実装して、ベース電極101に固定する。そして、長方形のコンデンサ105の長辺と長方形のMOSFETチップ103の長辺が平行になるようにコンデンサ105を配置する。
【0058】
コンデンサ105を配置する向きは、コンデンサ105の高電圧側端子110が制御回路チップ104に近くに配置し、コンデンサ105の低電圧側端子111が制御回路チップ104に遠くなるように配置する。こうすることで、電子部品実装の面積効率を高くすることができる。また、配線の長さを短くすることで配線の熱疲労試験での熱疲労もしくは温度サイクル試験での温度劣化に対する信頼性を向上することができる。
【0059】
絶縁基板106の絶縁材料としては、絶縁樹脂、アルミナ、窒化アルミニウム等を用いる。これらの絶縁材料の熱伝導率は、ベース電極101の材料であるCuの熱伝導率400Wm
−1K
−1よりも小さく、絶縁樹脂で0.3〜3Wm
−1K
−1、アルミナは20〜30Wm
−1K
−1、窒化アルミニウム200Wm
−1K
−1程度である。
【0060】
ベース電極101よりも低い熱伝導率の絶縁基板106をベース電極101とコンデンサ105との間に入れることで、整流時にMOSFETチップ103で発生する熱がコンデンサ105に伝わるのを抑制でき、コンデンサ105が高温になることによる信頼性の低下を抑制することができる。
【0061】
図1〜
図3に示す実施例では、コンデンサ105の高電圧側端子110と低電圧側端子111の両方の下に一つの熱伝導率が低い絶縁基板106を置いている。こうすることで、コンデンサ105への熱伝導性を低めてMOSFETチップ103の発熱のコンデンサ105への熱伝達を十分に抑制できるとともに、高電圧側端子110と低電圧側端子111の高さ合わせが容易になる。
【0062】
<変形形態1の整流素子S11>
図7は、第1実施形態に係るMOSFETを用いた整流素子の別の実施形態(変形形態1)の上面図である。なお、
図7では、MOSFETチップ103の上に載せられるリード電極107、樹脂108等を省略して示している。
【0063】
これに対し、
図7の上面図、
図7のC−C断面図の
図8に示すように、コンデンサ105の高電圧側端子110の下にだけ絶縁基板106を配置し、コンデンサ105の低電圧側端子111の下には、金属板120等を配置し、ベース電極101とコンデンサ105の低電圧側端子111とを電気的に接続してもよい。こうすることで、ベース電極101とコンデンサ105の低電圧側端子111との接続に必要な面積を小さくできる。
【0064】
図9、
図10は、第1実施形態に係るMOSFETを用いた整流素子のさらに別の実施形態の
図8のW部拡大相当図である。
なお、金属板120を用いることなく、
図9に示すように、半田109でコンデンサ105の低電圧側端子111を支持する構成としてもよいし、或いは、
図10に示すように、金属板120に代えてベース電極101の台座102に凸部102tを設け、該凸部102tでコンデンサ105の低電圧側端子111を、半田109を介して支持する構成としてもよい。
図9、
図10の構成により、部品点数が削減され、低コスト化が可能である。
【0065】
樹脂108は、台座102及び台座102上の電子部品(103、104、105)および電極(103g、103s、104a〜104d等)を覆うように、トランスファモールドもしくはポッディングにより形成する。樹脂108が、台座102、電子部品(103、104、105)、電極(103g、103s、104a〜104d等)の昇温による膨張を抑制し、台座102もしくは台座102上の電子部品(103、104、105)の熱膨張率の差によって生じる熱疲労試験での熱疲労もしくは温度サイクル試験での温度劣化による不良を抑制することができる。
【0066】
更に、樹脂108がベース電極101から剥離する不良を防止するために、
図8に示すように、ベース電極101の台座102の脇に溝101mを形成し、溝101mは下部から台座102の面に近付くに従って上面視で大きくなる形状にするとよい。これにより、樹脂108がベース電極101の溝101m内に浸入してベース電極101に固定され、樹脂108がベース電極101から剥離することを抑制できる。
【0067】
樹脂108は、MOSFETチップ103、制御回路チップ104との密着性がよくない、換言すれば剥離し易いので、樹脂108よりも半導体チップ(103、104)との密着性が高いJCR(Junction Coating Resin)と称されるコーティング材(第2の樹脂)を、樹脂108を形成する前に、MOSFETチップ103と制御回路チップ104の側壁に塗布し、JCRの薄膜を形成する。
JCRをコンデンサ105、絶縁基板106、リード電極107に塗布することで、これら(105、106、107)と樹脂108との密着性も上げることができる。
【0068】
これにより、MOSFETチップ103および制御回路チップ104と樹脂108との密着性が高まり、熱疲労試験もしくは温度サイクル試験の最中に生じる半田クラック、チップクラック等の不良の発生を抑止し、整流素子S1の信頼性を高めることができる。
なお、溝101mまたは/およびJCRは、実施形態の整流素子S1、後記の整流素子S12、S2に適用してもよい。
【0069】
<変形形態2の整流素子S12>
次に、変形形態2の整流素子S12について説明する。
図11と
図12に、別の実施形態(変形形態2)のツェナーダイオードのチップを搭載した整流素子の上面図と
図11のD−D断面図を示す。
整流素子S12にサージ吸収の機能を持たせるために、整流素子S12にツェナーダイオードを搭載してもよい。
【0070】
変形形態2の整流素子S12では、台座102上にMOSFETチップ103と隣接する位置にツェナーダイオードのチップ121を配置する。そして、
図12に示すように、MOSFETチップ103と同様、ツェナーダイオードのチップ121の下面のカソード電極121cをベース電極101に、ツェナーダイオードのチップ121の上面のアノード電極121aをリード電極107に、半田109を用いて電気的に接続する。
【0071】
これにより、ツェナーダイオードのチップ121の下面のカソード電極121cの延在面と上面のアノード電極121aの延在面とが、それぞれ半田109を介して、広い伝熱面積をもって、ベース電極101の台座102の延在面とリード電極107の下面(延在面)とに接続(連結)され、ツェナーダイオードのチップ121の熱を良好にベース電極101とリード電極107とに逃がすことができる。
【0072】
ツェナーダイオードのチップ121の上面視での面積は、サージ吸収時にチップ温度が上昇してチップ121上下の半田109に不良が生じることがない範囲で大きくする。ツェナーダイオードのチップ121の上下を、半田109で、それぞれリード電極107、ベース電極101に接続することで、サージ吸収時にツェナーダイオードのチップ121で発生した熱を、リード電極107およびベース電極101に逃がすことができる。これにより、ツェナーダイオードのチップ121の温度上昇を抑えることができ、ツェナーダイオードのチップ121の信頼性が高まる。
【0073】
ツェナーダイオードのチップ121は、MOSFETチップ103の中に搭載してもよい。ツェナーダイオードのチップ121をMOSFETチップ103の内部に搭載することで、別チップとした場合と比べ、サージ吸収時に発生した熱をMOSFETチップ103内に逃すことができ、チップ121の温度上昇を抑えることができる。
【0074】
そのため、上面視でより小さいツェナーダイオードのチップ121の面積で同等のサージ吸収の機能を持たせることができる。すなわち、MOSFET103とツェナーダイオード121の上面視での合計チップ面積を小さくすることができ、両チップ121、103の実装の面積効率をよくすることができる。
【0075】
一方、
図11に示すように、ツェナーダイオードのチップ121をMOSFETチップ103と別チップとした場合、高価なMOSFETチップ103の面積を小さくできるので、両チップ121、103を同一のチップに搭載した場合と比べ、安価にサージ吸収機能を持たせることができる。
【0076】
図1〜
図3の実施例では、MOSFETチップ103のドレイン電極103dとベース電極101およびMOSFETチップ103のソース電極103sとリード電極107とは半田109で接続されているが、圧接方式で接続してもよい。圧接方式では、MOSFETチップ103を間に置いた状態でベース電極101とリード電極107間に数kN/cm
2程度の力を加え、半田を使わずに、MOSFETチップ103のドレイン電極103dとベース電極101およびMOSFETチップ103のソース電極103sと
リード電極107とが、電気的、熱的に接続される。
【0077】
前記したように、“熱的に”とは、MOSFETチップ103のドレイン電極103dの延在面とベース電極101の延在面、および、MOSFETチップ103のソース電極103sの延在面と
リード電極107の延在面とが、それぞれ圧接して接触して広い伝熱面積をもって接続されるので、MOSFETチップ103で発生する熱が良好に、ベース電極101とリード電極107とに逃げることができることを意味する。
【0078】
以上、本発明の第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S1(S11、S12)の特徴とその効果を説明したが、説明した特徴のすべても有していなくても構わない。一部の特徴を有していれば、その効果を得ることができる。
【0079】
<整流素子S1の組み立て法>
次に、本発明の第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S1を組み立てる方法を説明する。
組み立てには、まず、整流素子S1を構成する部品を定められた位置に固定するためのカーボン冶具を用いる。カーボン冶具の台座102の固定位置にベース電極101を入れ、その上にカーボン冶具の蓋をする。
【0080】
蓋には他の部品を入れる穴が開いており、MOSFETを入れる穴には、半田シート(109)、MOSFETチップ103、半田シート(109)、リード電極107の順に重ねて入れる。また、制御回路チップ104を入れる穴に、半田シート(109)、制御回路チップ104の順に重ねて入れ、また、コンデンサ105を入れる穴に、半田シート(109)、絶縁基板106、半田シート(109)、コンデンサ105の順に重ねて入れる。
【0081】
続いて、半田炉で部品を入れたカーボン冶具をベークし、MOSFETチップ103、リード電極107、制御回路チップ104、絶縁基板106、コンデンサ105をベース電極101の台座102の上に、半田109により固定する。
【0082】
続いて、カーボン冶具から取り出した整流素子S1を構成する組み立て品を、ワイヤボンディング装置を用いて、制御回路チップ104とMOSFETチップ103、制御回路チップ104と台座102、制御回路チップ104と絶縁基板106、絶縁基板106と台座102の上の電極間を、ワイヤ115を用いて接続する。
【0083】
その後、MOSFETチップ103、制御回路チップ104の側壁にJCRを塗り、ベース上に台座102と台座上の部品(103、104、105)をトランスファモールド方式もしくはポッディング方式で樹脂108により覆う。
【0084】
その後、キュア炉で樹脂108の硬化を行い、整流素子S1の組み立てが完成する。
なお、MOSFETチップ103とリード電極107、絶縁基板106とコンデンサ105との間の半田付けの工程を、1回目の半田付けの工程では行わず、ワイヤボンディング工程を行った後に行ってもよい。
【0085】
チップの上面と下面の2つの電極のみを持つダイオードとは異なり、
図1に示すように、MOSFETチップ103はチップ上面のソース電極103sとチップ下面のドレイン電極103dに加えチップ上面にゲート電極103gも持つ。このため、円形の外周部101sを有するパッケージにMOSFETチップ103を実装する場合、ゲート電極103gの配線を形成する工程における回転軸(
図1の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせが課題となる。
【0086】
図13、
図14は、第1実施形態に係るMOSFETを用いた整流素子の別の実施形態の上面図である。
ゲート電極103gの配線を形成する工程において、回転軸(
図13、
図14の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせをする方法として、ベース電極101の外周部101sの円形形状の一部に、
図13の上面図に示すようなノッチ122もしくは
図14の上面図に示すようなオリエンテーションフラット(Orientation Flat)123(以下、オリフラ123と称す)を設ける。
【0087】
オルタネータOt(
図22参照)に圧入して固定する整流素子S1の場合には、
図5に示すベース電極101の外周部101sの側壁にローレット101rと称される山と溝が上下方向に走る凹凸(径方向(外周外方)に向いた方向に凹凸が形成される)を設けるが、回転軸(
図13、
図14の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせ用のノッチ122もしくはオリフラ123は、ローレット101r(
図5参照)の溝より大きくする。なお、
図13、
図14では、ローレット101rを省略して示している。
【0088】
組み立てに用いるカーボン冶具に形成するベース電極101を固定する穴の形状は、ノッチ122もしくはオリフラ123を有するベース電極101の形状に合わせ、ある回転軸周り方向の位置でのみベース電極101が穴に入るようにする。
【0089】
更に、ワイヤボンディングの装置では、ノッチ122もしくはオリフラ123の方向に合わせて、ベース電極101を固定できるようにする。こうすることで、MOSFETの整流素子S1においても、整流素子S1内の電子部品(103,104,105等)の配置が明らかにできるので、半田付けに際して回転軸周りの位置合わせが不用で、ベース電極101の外周部101sを円形のパッケージに容易に組み立てることが可能となる。
【0090】
図15は、第1実施形態に係るMOSFETを用いた整流素子の別の実施形態の
図1のA−A断面相当図である。
さらに、回転軸(
図15の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせをする別の方法として、ベース電極101の底部に
図15に示すような凹部124を設ける。
【0091】
凹部124は、ベース電極101を下から見て(
図15の下側からベース電極101を見て)外周部101sの円の中心Oに対称でなければ、凹部124の下面視での平面上の形状は円でも正方形でも長方形でもよいし、凹部124の深さ方向の形状は柱状でも球状でもよいし、凹部124の位置は中心Oにかかってもよいし、中心から離れていてもよい。また、凹部124の数は1個でも複数個でもよい。なお、凹部124の下面視での平面上の形状は、回転軸周り方向の位置合わせが容易であることから、円形が好ましい。
【0092】
組み立てに用いるカーボン冶具にベース電極101を固定する固定用孔に、凹部124の形状に合わせた位置合わせの突起を設け、既定の回転軸(
図15の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置でしかベース電極101が固定用孔に入らないようにする。
【0093】
更に、ワイヤボンディングの装置のセット用の穴においても、ベース電極101の固定部に凹部124の形状に合わせた固定用突起を設け、既定の回転軸周り方向の位置でしかベース電極101が、セット用の穴に入らないようにする。こうすることで、MOSFETを用いる整流素子S1においても、外周部101sが円形のパッケージに容易に組み立てることが可能となる。
【0094】
回転軸(
図15の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせをする更に別の方法として、回転軸周り方向の位置合わせをする機構をワイヤボンディング装置に持たせる。
例えば、回転軸周り方向の位置合わせをする機構は、コンデンサ105等の部品の配置を確認するCCD等の視認装置、回転位置を制御するモータと、その減速機構と、減速機構で回動され位置合わせを行う回転部材と、回転位置センサと、これらを制御してワイヤボンディングの位置合わせの制御を行う制御装置とを有している。
【0095】
そして、台座102上に半田109で固定したMOSFETチップ103、制御回路チップ104、コンデンサ105等の部品の配置を視認装置で見て、回転軸周り方向の位置合わせを上記機構で行った後に、必要なワイヤボンディングを行う。この場合、カーボン冶具での位置合わせを不要とするために、1回の半田付け工程でワイヤボンディング以外の電気的な接続を行うようにする。
【0096】
図16は、第1実施形態に係るMOSFETを用いた整流素子の別の実施形態の
図1のB−B断面相当図である。
回転軸(
図16の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせをする更に別の方法として、
図16に示すように、ワイヤボンディングで形成するワイヤの代わりに、接続が可能な形状に形成される銅板もしくは銅線125を半田ボールもしくは半田バンプ126で固定して接続する。
【0097】
例えば、
図1において、ワイヤ115で接続していた配線は、
図16に図示していないものも含め、全て接続が可能な形状に形成される銅板もしくは銅線125にて半田ボールもしくは半田バンプ126で接続することとする。そして、銅板もしくは銅線125の半田付けの工程は、MOSFET103,リード電極107、制御回路チップ104、絶縁基板106、コンデンサ105を接続する半田付けの工程と同時に行う。
【0098】
すなわち、1回の半田付けの工程で全ての部品の電気的な接続を行う。1回の工程で全ての電気的な接続を行うことで、回転軸(
図16の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせをする必要を無くすことができる。
なお、接続を行う導体として、銅板もしくは銅線125を例示したが、銅以外の導体を用いてもよい。
【0099】
図17は、第1実施形態に係るMOSFETを用いた整流素子の別の実施形態の
図1のB−B断面相当図である。
図16では、銅板もしくは銅線125を半田で接続する例を示したが、
図17に示すように、バネ機構を有する銅ピンのバネ付ピン146A、146B、148A、148Bを用い、バネ付ピン146A、146B、148A、148Bのバネの弾性力で電気的に接続してもよい。
【0100】
具体的の構成としては、バネ付きピン146Aとバネ付きピン146Bとが、銅バー147aで固定されている。
バネ付きピン146Aは、下部に端子146a1、中央にバネ146b1、上部に固定部146c1を有している。また、バネ付きピン146Bは、下部に端子146a2、中央にバネ146b2、上部に固定部146c2を有している。
【0101】
そして、バネ146b1、146b2の弾性力でそれぞれ端子146a1、146a2を絶縁基板106の電極113とベース電極101の台座102とに押して、半田なしで、絶縁基板106の電極113とベース電極101の台座102とが電気的に接続される。
バネ付きピン148Aとバネ付きピン148Bとが、銅バー147bで固定されている。
【0102】
バネ付きピン148Aは、下部に端子148a1、中央にバネ148b1、上部に固定部148c1を有している。また、バネ付きピン148Bは、下部に端子148a2、中央にバネ148b2、上部に固定部148c2を有している。
【0103】
そして、バネ148b1、148b2の弾性力でそれぞれ端子148a1、148a2を絶縁基板106の電極112と制御回路チップ104の第2の電極104bとに押して、半田なしで絶縁基板106の電極112と制御回路チップ104の第2の電極104b(
図1参照)とが電気的に接続される。
【0104】
なお、銅バー147a、147bは、それぞれ不図示のねじ等を用いて絶縁基板106等に仮固定され、その後、
図17に示すように樹脂108により封止され固定される。
上述した如く、配線にワイヤ115に代えて、上述のバネ付きピン146A、146B、148A、148B等を用いることで、配線の接続不良に対する信頼性を向上させることができる。
【0105】
<<第2実施形態>>
図18〜
図20を参照して、本発明の第2実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S2の構成について説明する。
図18は、第2実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子のパッケージの一部を省略して示す下面図である。(以降の第2実施形態の説明では、第1実施形態とは逆に、リード電極107を下に、ベース電極101を上にして上面、下面と呼ぶ。)なお、
図18では、分かり易いように、ベース電極101、MOSFETチップ103とベース電極101とを接続する後記の電極ブロック127(
図19参照)、樹脂108は省略して示している。
【0106】
図19は、
図18のE−E断面図、
図20は、
図18のF−F断面図である。
図21は、第1・第2実施形態に係る自律型の同期整流MOSFETの整流素子S1、S2を用いたオルタネータOtの整流回路の回路図である。
【0107】
図1〜
図3を参照して説明した第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S1は、正座と呼ばれるオルタネータOtの整流回路の上アーム(
図21参照)に用いられる整流素子であり、
図2に示すように、MOSFETチップ103のドレイン電極103dはベース電極101に接続され、MOSFETチップ103のソース電極103sはリード電極107に接続されている。
【0108】
これに対し、
図18〜
図20を参照して説明する本発明の第2実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S2は、逆座と呼ばれるオルタネータOtの整流回路の下アーム(
図21参照)に用いられる整流素子であり、
図19に示すように、MOSFETチップ103のドレイン電極103dはリード電極107に接続され、MOSFETチップ103のソース電極103sは電極ブロック127を介してベース電極101に接続されている。
これにより、逆座の整流素子S2を実現できる。
【0109】
整流素子S2の構成要素は、
図1に示す第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S1と基本的に同じである。
図18〜
図20に示すように、第2実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S2は、四角形の外周部107sを有するリード電極107(
図18参照)、リード電極107に設けられる電子部品を載せる台座107d、台座107d上に載せられたMOSFETチップ103と制御回路チップ104とコンデンサ105、コンデンサ105の下に敷かれた電極112、113を有する絶縁基板106、MOSFETチップ103の上に載せられた電極ブロック127(
図19参照)とベース電極101、ベース電極101に設けられる台座102と電子部品(103、104、105)を覆う樹脂108とを有する。
【0110】
逆座の整流素子S2のMOSFETチップ103、制御回路チップ104、コンデンサ105、絶縁基板106は、第1実施形態で示す正座の整流素子S1(
図1〜
図3参照)と同じものを用いる。このように、正座の整流素子S1と逆座の整流素子S2で同一の部品を用いることで、部品の量産化により部品コストを低減することができる。
【0111】
ベース電極101の台座102の上面から見た
図18に示すリード電極107の台座107dの形状は、下面視で四角形としたが、円形にしてもよい。四角形にすることにより、同じく四角形のMOSFETチップ103、制御回路チップ104、およびコンデンサ105の形状に沿った形状になるので、台座107dの面積を小さくすることができる。一方、リード電極107の台座107dを、下面視で円形にすることで、応力の集中を回避して台座107d端部の応力をより小さくすることができる。
【0112】
第2実施形態の
図18〜
図20に示す各部品の接続、配置は、チップ(103〜106)をベース電極101とリード電極107とを入れ換えて接続し、MOSFETチップ103とベース電極101との間に電極ブロック127を入れている点を除き、
図1に示す第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S1と同じである。
【0113】
図19に示すように、MOSFETチップ103の下面のドレイン電極103dは、半田109を用いて、リード電極107の台座107dに電気的に接続されている。これにより、MOSFETチップ103の下面のドレイン電極103dの延在面とリード電極107の延在面とは、半田109を介して、大きな伝熱面積で接続(連結)される。一方、MOSFETチップ103の上面のソース電極103sは、半田109を用いて、電極ブロック127を介してベース電極101の台座102に電気的に接続されている。
【0114】
これにより、MOSFETチップ103の上面のソース電極103sの延在面とベース電極101の台座102の延在面とは、電極ブロック127を介して大きな伝熱面積で接続(連結)される。
【0115】
電極ブロック127は、ベース電極101とリード電極107の台座107dとの間隔を設けるための部材であり、ベース電極101に一体に電極ブロック127を形成してもよい。或いは、電極ブロック127を用いることなく、MOSFETチップ103のソース電極103sを、半田109を用いて、ベース電極101と直接接続してもよい。
そして、
図18に示すように、MOSFETチップ103の上面のゲート電極103gは、ワイヤ115で制御回路チップ104の上面の第1の電極104aに電気的に接続される。
【0116】
図20に示すように、コンデンサ105は絶縁基板106に半田109により固定され、絶縁基板106はリード電極107の台座107dに半田109により固定される。電気的には、コンデンサ105の高電圧側端子110は、半田109で絶縁基板106の上面の電極113に接続され、絶縁基板106の上面の電極113は制御回路チップ104の上面に設けられた第2の電極104b(
図18参照)にワイヤ115で接続される。
【0117】
また、同じく電気的に、コンデンサ105の低電圧側端子111は半田109で絶縁基板106の上面の電極112に接続され、絶縁基板106の上面の電極112はリード電極107の台座107dにワイヤ115により接続される。
【0118】
前記したように、
図18に示す如く、逆座の整流素子S2は、制御回路チップ104の上面の電極の1つである第1の電極104aはMOSFETチップ103のゲート電極103gにワイヤ115により電気的に接続され、制御回路チップ104のチップ上面の別の電極である第2の電極104bはコンデンサ105の高電圧側端子110と接続された絶縁基板106の上面の電極113にワイヤ115により電気的に接続される。
【0119】
更に、制御回路チップ104の上面の別の電極の第3の電極104cはMOSFETチップ103のソース電極103sに電気的に接続され、制御回路チップ104のチップ上面の別の第4の電極104dはリード電極107の台座107dに、ワイヤ115により電気的に接続されている。
【0120】
第2実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S2の回路構成および回路動作は、
図4を用いて説明した第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S2の回路構成および回路動作と同じである。第1実施形態の正座の整流素子S1と同じ部品、同じ回路を第2実施形態の逆座の整流素子S2に用いることで、設計コスト、開発コストを低減できるとともに、同一のテストを実施してテストコストも低減することができる。また、同じ部品、同じ回路の量産化によるコスト低減も図れる。
【0121】
第2実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S2の特徴と効果に関して、前記した第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S1と同じ特徴を持たせ、同じ効果を得ることができる。
【0122】
第2実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S2を組み立てる方法は、基本的には、第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S1と同じである。異なる点として、ベース電極101の台座102ではなく、
図19、
図20に示すように、リード電極107の台座107dの上に電子部品(103、104、105)を載せて接続する。
【0123】
そして、MOSFETチップ103とベース電極101の間に、電極とスペーサを兼ねる電極ブロック127を設ける。更に、リード電極107の台座107dは下面視で円形にする必要がないので、必ずしも第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S1で行うような組み立て時に回転軸方向の位置合わせをする方法を取り入れなくてもよい。例えば、リード電極107の台座107dを、
図18に示す下面視で方形とした場合にはその辺を用いて電子部品(103、104、105)の位置出しが行える。
【0124】
これに対して、リード電極107の台座107dを下面視で円形とする場合、台座107d上の配置を特定し難いので、第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S1の場合と同様の
図13、14、15に示すような回転軸(中心軸O)周り方向の位置合わせをする方法を適用する必要がある。
なお、第2実施形態の整流素子S2に、第1実施形態で説明した整流素子S1、S11、S12の様々な構成を適宜選択して組み合わせて構成してもよい。
【0125】
<オルタネータOtの整流回路の構成>
図21を参照して、本発明の自律型の同期整流MOSFETの整流素子S1、S2を用いたオルタネータOt(
図22参照)の整流回路の構成について説明する。
図22に、同期整流MOSFETの整流素子を用いたオルタネータの要部断面図を示す。
【0126】
オルタネータOtは、整流子6個で6相整流とする3相全波整流の回路を構成している。
図22に示す回転子のコイル128、固定子のΔ結線された3本のコイル129が発電部を構成し、固定子のコイル129が結線された点から、
図21に示すU相、V相、W相の中点配線が引き出されている。固定子のコイル129の結線は、Δ状のΔ結線の代わりにU相、V相、W相の配線(コイル129)がY字状を成すY結線としても構わない。
【0127】
U相、V相、W相の中点配線のハイサイドに、第1実施形態に係る同期整流MOSFETの正座の整流素子S1が、ロウサイドに第2実施形態に係る同期整流MOSFETの逆座の整流素子S2が接続される。更に、ハイサイドの同期整流MOSFETの整流素子S1には、バッテリ132の高電圧側端子132hが接続され、ロウサイドの同期整流MOSFETの整流素子S2には、バッテリ132の低電圧側端子132lが接続される。
【0128】
同期整流MOSFETの整流素子S1、S2の回路構成は、
図4に示す回路構成であり、MOSFETチップ103と制御回路チップ104とコンデンサ105で構成される。ハイサイドの整流素子S1とロウサイドの整流素子S2は、同じMOSFETチップ103と制御回路チップ104とコンデンサ105を用いる。
【0129】
ロウサイドの整流素子S2は、オルタネータOtの本体に近く外部からの制御回路チップ104への電源供給が容易なので、ロウサイドの整流素子S2のみ、コンデンサ105を用いず、外部からの電源供給とすることも可能である。コンデンサを使用しない分、整流素子S2のコストを低減することができる。
【0130】
同期整流MOSFETの整流素子S1、S2は、端子数を2個とすることで、
図21に示すように、従来のダイオードの整流素子を用いたオルタネータと同じ整流回路の構成とすることができる。
【0131】
<オルタネータOtの整流回路の動作>
図21に示す本発明の同期整流MOSFETの整流素子S1、S2を用いたオルタネータOtの整流回路の動作を説明する。
【0132】
図22に示すオルタネータOtでの発電は、固定子のコイル128の中を回転子のコイル129が回転することで行われる。このとき、U相、V相、W相の各相のコイルには交流電力が発生する。その交流電力によってU相の中点配線の電圧Vuが周期的に上下する。
【0133】
U相の中点配線の電圧Vuが上昇し、ハイサイドの整流素子S1が整流動作する場合を見てみる。U相の中点配線の電圧Vuが上昇し、U相の中点配線の電圧Vu、すなわち、ハイサイドのMOSFETチップ103のソース端子103sの電圧が、バッテリ132の高電圧側端子132hの電圧VBに達すると、
図4に示すMOSFETチップ103のドレイン端子103dに接続されたコンパレータ116の第一の入力端子116i1の電圧より、コンパレータ116の第二の入力端子116i2の電圧の方が大きくなり、コンパレータ116の出力端子116oの電圧が低電圧状態から高電圧状態へと上がる。
【0134】
それにより、ゲートドライバ117が駆動してMOSFETチップ103のゲート端子103gの電圧を上げて、MOSFETチップ103をオン状態にする。これにより、MOSFETチップ103のソース端子103sからドレイン端子103dに電流が流れ、整流が遂行される。
【0135】
図21に示すU相の中点配線の電圧Vuが下降して、U相の中点配線の電圧Vuが、ハイサイドのMOSFETチップ103のドレイン端子103dの電圧のVBに達すると、コンパレータ116の2つの入力端子(116i1、116i2)における電圧の大小が逆転して、コンパレータ116の出力端子116oの電圧が高電圧状態から低電圧状態へ下がる。それにより、ゲートドライバ117がMOSFETチップ103のゲート端子103gの電圧を下げて、MOSFETチップ103をオフ状態、つまりソース端子103sとドレイン端子103dとの電気的接続を切断する。
【0136】
ロウサイドの整流素子S2の整流動作も、上述のハイサイドの整流素子S1の動作と同様であり、U相の中点配線の電圧Vuが更に下降してバッテリの低電圧側端子の電圧に達すると、MOSFETチップ103をオン状態になり、U相の中点配線の電圧Vuが再び上昇してバッテリの低電圧側端子の電圧に達すると、MOSFETチップ103がオフ状態になり、整流を行う。
【0137】
図22および
図23を参照して、同期整流MOSFETの整流素子S1、S2を用いたオルタネータOtを説明する。
図23に、複数の本実施形態(本発明)の同期整流MOSFETの整流素子を固定した整流装置の平面図を示す。
【0138】
図23に示す本実施形態の同期整流MOSFETの整流素子S1、S2を固定した整流装置Osは、複数の第1実施形態に係る同期整流MOSFETの正座の整流素子S1と、これら複数の正座の整流素子S1が圧入されて固定(
図5参照)される放熱部材の正極側放熱板119aと、複数の第2実施形態に係る同期整流MOSFETの逆座の整流素子S2と、これら複数の逆座の整流素子S2が圧入されて固定される放熱部材の負極側放熱板119bと、正座の整流素子S1と逆座の整流素子S2を電気的に接続し正極側放熱板119aと負極側放熱板119bとの間に一定の絶縁距離を保つために設けられる接続端子133とを有して構成されている。
【0139】
図22の構成では、正座の整流素子S1のリード電極107と逆座の整流素子S2のリード電極107とが対向して配置され、接続端子133に接続されている。
前記したように、第1実施形態に係る同期整流MOSFETの整流素子S1、S2が円形の外周部101sを持つベース電極101を有することにより、複数の整流素子S1、S2をそれぞれ放熱板119a、119bに簡易に圧入して固定できる。
【0140】
また、ハイサイドのU相、V相、W相の整流素子は、MOSFETチップ103のドレイン端子103dが共通の端子に電気的に接続されるので、ハイサイドにはドレイン端子103dが放熱性の高いベース電極101に電気的に接続された正座の整流素子S1を用いる。こうすることで、ハイサイドのU相、V相、W相の整流素子を1つの放熱板119aに固定でき、より大きな放熱板を使うことでより大きな放熱効果を得ることができる。
一方、ロウサイドのU相、V相、W相の整流素子は、MOSFETチップ103のソース端子103sが共通の端子に電気的に接続されるので、ロウサイドにはソース端子103sが放熱性の高いベース電極101に電気的に接続された逆座の整流素子S2を用いる。こうすることで、ロウサイドのU相、V相、W相の整流素子を1つの放熱板119bに固定でき、より大きな放熱板を使うことでより大きな放熱効果を得ることができる。
更に、ハイサイドのU相、V相、W相の整流素子はMOSFETチップ103のソース端子103sと、ロウサイドのU相、V相、W相の整流素子のMOSFETチップ103のドレイン端子103dとは、各相の固定子129の端子と電気的に接続される。ハイサイドに正座の整流素子S1を用い、ロウサイドに逆座の整流素子S2を用いることで、正座の整流素子S1の細いリード電極107と逆座の整流素子S2の細いリード電極107とが対向して配置され、整流素子のリード電極107と固定子129との電気的な接続が容易になる。加えて、正極側放熱板119aと負極側放熱板119bとの間の間隔をより小さくでき、オルタネータをより小型にすることができる。
整流素子S1、S2が円形の外周部101sを持つベース電極101とベース電極101の上部にリード電極107を有することで、より汎用性の高い放熱板119a、119bを用いることができる。
【0141】
図22に示す本実施形態の同期整流MOSFETの整流素子S1、S2を用いたオルタネータOtは、フロントフレーム134と、リアフレーム135と、複数の第1・第2実施形態で説明した同期整流MOSFETの整流素子S1、S2が圧入して固定される整流装置Osと、回転子128と、固定子129と、ブラシ137と、ICレギュレータ138と、保護カバー139とによって構成されている。
【0142】
これらは、放熱板119a、119bも含め、一般的に使用されるダイオードの整流素子を用いたオルタネータと同じ構成であり、同期整流MOSFETの整流素子S1、S2を用いることで、オルタネータ自体の構造に変更を加える必要がなくなり、以て、より一層の低コスト化と汎用性の向上とを実現することができる。
【0143】
図22に示すオルタネータOtは、ブラシ137、スリップリング140を介し界磁巻線141に励磁電流を受けると各ロータコア142が励磁される。各ロータコア142が励磁された状態で、プーリー143を介して車両のエンジン(図示せず)からの回転駆動力がシャフト144に伝達されて回転子128が回転すると、電磁誘導により、固定子129に交流電力が発生する。固定子129に発生した交流電力は、
図21に示すように、正座の整流素子S1および逆座の整流素子S2で整流され、出力端子145を介して車両に搭載された電気機器の駆動およびバッテリ132用の直流電力として出力される。
【0144】
図24に、本実施形態の同期整流MOSFETの整流素子S1、S2を用いたときの順方向の電圧・電流特性を、従来のダイオードの整流素子を用いたときの特性と比較する。従来のダイオードは、PN接合型のダイオードを用いている。電圧・電流特性は室温でのものである。
【0145】
ダイオードの電圧・電流特性は、0.7〜0.8Vまで電圧を印加すると順方向電流が流れ始める。これは、ダイオードが内蔵ポテンシャルを有するためであり、内蔵ポテンシャルに相当する電圧を印加することで、順方向電流を流すことができる。これに対し、第1・第2実施形態(本発明)の同期整流MOSFETの整流素子S1、S2の電圧・電流特性は、0Vから電流が流れ始める。これは内蔵ポテンシャルがないMOSFETの特性であり、このために低い電圧で大きな電流を流すことができ、整流動作時の損失を大きく低減することができる。
【0146】
以上、上述の実施形態に構成によれば、ベース電極101で形成される整流素子S1、S2のパッケージの外形は、上面視で円形をしており、その円形のパッケージをオルタネータOtの電極板の放熱板119a、119bに固定して用いられる。円形のパッケージを用いることで、ベース電極101の回転軸(中心軸O)周り方向の位置を合わせることなしに、芯出しを行って整流素子S1、S2をオルタネータOtの電極板の放熱板119a、119bに固定することできる。そのため、オルタネータOtの整流装置Osの組み立てが容易になる。
【0147】
これにより、簡便にオルタネータOtに固定することができる損失が低いMOSFETを用いた整流素子S1、S2を提供することができる。特に、簡便に組み立てることが可能であり、圧入により簡便にオルタネータOtに固定することができる。
容易に整流素子S1、S2をオルタネータOtに固定できることにより、オルタネータOtの組み立て工程の簡素化が可能であり、低コスト化を図れる。
【0148】
<<その他の実施形態>>
1.第1・第2実施形態のベース電極101は、上面視で円形の円筒状の外周部101sを例示したが、上面視で円形の曲率をもつ、例えば球状の外周部101sをもつ構成としてもよい。
2.なお、
図15に示す凹部124に代えて、ベース電極101の外周部101sまたは底面部に位置決め用凸部を形成し、ベース電極101の外側のセット側に位置決め用凸部が嵌入される凹部を形成し、ベース電極101の位置決め用凸部をセット側の凹部に嵌入し、整流素子S1(S11、S12)、S2の位置決めを行うように構成してもよい。
【0149】
3.前記第2実施形態では、整流素子S1、S2と整流装置OsをオルタネータOtに用いる場合を例示したが、他の電力変換装置に用いてもよい。他の電力変換装置に用いた場合も、前述した効果と同様の効果を奏する。
4.なお、本発明は前記した実施例(形態)に限定されるものでなく、様々な実施例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分り易く説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、説明した構成の一部を含むものであってもよい。
また、ある実施例の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。例えば、説明した整流素子S1、S11、S12、S2の種々の構成を適宜選択して組み合わせて構成してもよい。