(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
結晶性ポリエステルと非晶質樹脂を含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記結晶性ポリエステルが、1,6-ヘキサンジオールである脂肪族ジオールAと1,12-ドデカンジオールである脂肪族ジオールBを30/70〜70/30のモル比(A/B)で含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる、酸価が8mgKOH/g以下の結晶性ポリエステルであり、前記非晶質樹脂が、(イ)ポリエステル樹脂部分の原料モノマー、(ロ)ビニル系樹脂部分の原料モノマー、及び(ハ)ポリエステル樹脂部分の原料モノマー及びビニル系樹脂部分の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを重合させることにより得られる、ポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分とを有する複合樹脂である、トナー用結着樹脂組成物。
結晶性ポリエステルのアルコール成分に含有される脂肪族ジオールAと脂肪族ジオールBのモル比(A/B)が40/60〜60/40である、請求項1又は2記載のトナー用結着樹脂組成物。
結晶性ポリエステルのカルボン酸成分が、炭素数8以上24以下の脂肪族モノカルボン酸化合物を5モル%以上30モル%以下含有する、請求項1〜3いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、結晶性ポリエステルと非晶質樹脂を含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記結晶性ポリエステルが、炭素数2〜8の脂肪族ジオールAと炭素数9〜12の脂肪族ジオールBを30/70〜70/30のモル比(A/B)で含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる、酸価が8mgKOH/g以下の結晶性ポリエステルである。
【0016】
本発明の結着樹脂組成物を含有したトナーが、非接触での低温定着性、高温高湿下での現像安定性、及び転写性に優れる理由は定かではないが、次のように考えられる。
【0017】
本発明の結着樹脂組成物に用いられる結晶性ポリエステルは、長鎖のジオールと短鎖のジオールが併用されているため、短鎖部分が折れ曲がり部分となり、長鎖部分が結晶化部分となって、高温高湿下では結晶を保ち、融点以上ではシャープに融解する、いわゆるシャープメルト性に優れるものと考えられる。
このように、酸価が低く、結晶性の高い結晶ドメインを非晶質樹脂中に有するトナーは、疎水性が高く、吸湿性が低いため、特に高温高湿環境下での帯電のリーク部位がなく、帯電性が安定するために、高温高湿下での現像安定性と転写性が向上すると考えられる。
さらに、本発明に用いられる結晶性ポリエステルは、シャープメルト性に優れるため、定着時に圧力の寄与が無い、非接触定着時にも低温で流動性が高く、低温定着性に優れると考えられる。
【0018】
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.9〜1.2であり、非晶質樹脂は1.4を超えるか、0.6未満の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度は、軟化点との差が20℃以内であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超える場合はガラス転移に起因するピークとする。
【0019】
結晶性ポリエステルのアルコール成分は、炭素数2〜8の脂肪族ジオールAと炭素数9〜12の脂肪族ジオールBを含有する。
【0020】
脂肪族ジオールAの炭素数は、2以上であり、好ましくは4以上である。また、8以下であり、好ましくは6以下である。
【0021】
脂肪族ジオールAとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ1種であっても、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、高温高湿下での現像安定性及び転写性の観点から、α,ω−脂肪族ジオールが好ましく、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールがより好ましく、1,6-ヘキサンジオールがさらに好ましい。
【0022】
脂肪族ジオールBの炭素数は、9以上であり、好ましくは10以上である。また、12以下である。
【0023】
脂肪族ジオールBとしては、α,ω−脂肪族ジオールが好ましく、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられ1種であっても、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、高温高湿下での現像安定性の観点から、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールが好ましく、1,12-ドデカンジオールがより好ましい。
【0024】
脂肪族ジオールA及びBの少なくとも一方、好ましくは両方が、トナーの低温定着性を向上させる観点から、水酸基を炭素鎖の末端に有していることが好ましく、α,ω−直鎖アルカンジオールであることが好ましい。
【0025】
脂肪族ジオールAと脂肪族ジオールBのモル比(A/B)は、30/70〜70/30であり、好ましくは40/60〜60/40である。
【0026】
脂肪族ジオールAと脂肪族ジオールBの総量は、結晶性ポリエステルのアルコール成分中、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい。
【0027】
脂肪族ジオールA及びB以外のアルコール成分としては、炭素数13以上の脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0028】
結晶性ポリエステルのカルボン酸成分は、高温高湿下での現像安定性、転写性及び低温定着性の観点から、脂肪族ジカルボン酸化合物を含有していることが好ましく、低温定着性の観点から、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有していることがより好ましい。
【0029】
炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、スベリン酸(炭素数:8)、アゼライン酸(炭素数:9)、セバシン酸(炭素数:10)、1,10−デカンジカルボン酸(炭素数:12)、1,12−ドデカンジカルボン酸(炭素数:14)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、それらの炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。本発明において、脂肪族カルボン酸化合物の炭素数にアルキルエステル部の炭素数は含まれない。
【0030】
脂肪族ジカルボン酸化合物における鎖状炭化水素基は直鎖であっても分岐鎖であってもよいが直鎖であることが好ましく、脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、10以上が好ましい。また、低温定着性の観点から、12以下が好ましい。
【0031】
カルボン酸成分には、脂肪族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸化合物が含まれていてもよいが、脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。また、トナーの高温高湿下での帯電安定性の観点から、100モル%以下が好ましく、97モル%以下がより好ましく、95モル%以下がさらに好ましく、92モル%以下がさらに好ましい。
また、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。また、トナーの高温高湿下での帯電安定性の観点から、100モル%以下が好ましく、97モル%以下がより好ましく、95モル%以下がさらに好ましく、92モル%以下がさらに好ましい。
【0032】
カルボン酸成分は、転写性と高温高湿下での現像安定性の観点から、炭素数8〜24の脂肪族モノカルボン酸化合物を含有していることが好ましい。
【0033】
炭素数8〜24の脂肪族モノカルボン酸化合物としては、ステアリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸らが上げられ、これらのなかでは、ステアリン酸が好ましい。
【0034】
炭素数8〜24の脂肪族モノカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性、高温高湿下での帯電安定性の観点から、カルボン酸成分中、5〜30モル%が好ましく、8〜20モル%がより好ましい。
【0035】
他のカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸化合物、炭素数2〜7の脂肪族ジカルボン酸化合物、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸化合物等が挙げられる。
【0036】
結晶性ポリエステルのカルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、転写性の観点から、0.80以上が好ましく、0.90以上がより好ましい。また、高温高湿下での現像安定性の観点から、1.03以下が好ましく、1.00以下がより好ましく、0.95以下がさらに好ましい。
【0037】
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応は、エステル化触媒の存在下で行うことが好ましい。
【0038】
エステル化触媒としては、錫化合物、チタン化合物等が挙げられるが、速やかに目的の反応率に到達させる観点及び着色を抑制する観点から、錫化合物が好ましい。
【0039】
錫化合物としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等が挙げられるが、高温高湿下での現像安定性の観点から、Sn−C結合を有していない錫(II)化合物が好ましい。
【0040】
Sn−C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn−C結合を有しておらず、Sn−O結合を有する錫(II)化合物、Sn−X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく、Sn−O結合を有する錫(II)化合物がより好ましい。
【0041】
Sn−O結合を有する錫(II)化合物としては、シュウ酸錫(II)、酢酸錫(II)、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリル酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)等の炭素数2〜28のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II);オクチロキシ錫(II)、ラウロキシ錫(II)、ステアロキシ錫(II)、オレイロキシ錫(II)等の炭素数2〜28のアルコキシ基を有するアルコキシ錫(II);酸化錫(II);硫酸錫(II)等が、Sn−X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物としては、塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II)等が挙げられ、これらの中では、帯電立ち上がり効果及び触媒能の点から、(R
1COO)
2Sn(ここでR
1は炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表される脂肪酸錫(II)、(R
2O)
2Sn(ここでR
2は炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるアルコキシ錫(II)及びSnOで表される酸化錫(II)が好ましく、(R
1COO)
2Snで表される脂肪酸錫(II)及び酸化錫(II)がより好ましく、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)及び酸化錫(II)がさらに好ましく、2-エチルヘキサン酸錫(II)及び酸化錫(II)がさらにより好ましい。
【0042】
チタン化合物としては、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、総炭素数2〜28のアルケニルオキシ基又は総炭素数1〜28のアシルオキシ基を有する化合物がより好ましく、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネートがさらに好ましい。
【0043】
エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.2質量部以上がさらに好ましい。また、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、2.0質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましく、1.0質量部以下がさらに好ましい。
【0044】
エステル化触媒とともに、助触媒として、互いに隣接する3個の炭素原子に結合した水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有する化合物を用いることが、反応性を向上させる観点から好ましい。
【0045】
互いに隣接する3個の炭素原子に結合した水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有する化合物としては、ピロガロール化合物が挙げられる。ピロガロール化合物としては、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体等が挙げられ、反応性の観点から、ピロガロール、没食子酸、及び没食子酸の炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルエステルが好ましく、没食子酸がより好ましい。
【0046】
助触媒とエステル化触媒の質量比(助触媒/エステル化触媒)は、反応性の観点から、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上がさらに好ましい。そして、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。
【0047】
エステル化触媒と助触媒は、一緒に添加しても別々に添加してよいが、エステル化触媒と助触媒は、高温高湿下での現像安定性及び転写性の観点から、反応率が70%以上の時点で反応系に添加することが好ましく、反応率が70〜95%の時点で添加することがより好ましい。ここで、反応率とは、理論生成水に対する実際の水の生成量から得られる。
【0048】
また、重縮合以外の副反応を防止する観点から、ラジカル重合禁止剤を用いてもよい。ラジカル重合禁止剤としては、4-tert-ブチルカテコールが好ましい。
【0049】
重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行うことが好ましく、反応性やモノマーの熱分解性の観点から、反応温度は、160〜250℃が好ましく、180〜240℃がより好ましい。
【0050】
結晶性ポリエステルの軟化点は、転写性の観点から、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、75℃以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
【0051】
結晶性ポリエステルの融点は、転写性の観点から、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
【0052】
結晶性ポリエステルの酸価は、高温高湿下での現像安定性及び低温定着性の観点から、8mgKOH/g以下であり、5mgKOH/g以下がより好ましく、3mgKOH/g以下がさらに好ましく、2.5mgKOH/g以下がさらに好ましい。また、転写性の観点から、0.1mgKOH/g以上が好ましく、0.5mgKOH/g以上がより好ましく、1.0mgKOH/g以上がさらに好ましく、1.5mgKOH/g以上がさらに好ましい。
【0053】
非晶質樹脂としては、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、2種以上の樹脂成分からなる複合樹脂等が挙げられるが、本発明では、高温高湿下での現像安定性及び低温定着性の観点から、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、及びポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分とを有する複合樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、及びポリエステル樹脂成分とビニル系樹脂成分とを有する複合樹脂がより好ましく、ポリエステル樹脂成分とビニル系樹脂成分とを有する複合樹脂がさらに好ましい。
【0054】
ポリエステル樹脂の原料モノマーとしては、アルコール成分とカルボン酸成分が用いられる。
【0055】
ポリエステル樹脂部分のアルコール成分は、トナーの帯電性の観点から、芳香族ジオールを含有することが好ましい。
【0058】
(式中、R
3Oはアルキレンオキサイドであり、R
3は炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は1〜16、好ましくは1.5〜5.0である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0059】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、トナーの耐久性及び低温定着性の観点から、R
3OがプロピレンオキサイドであるビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とR
3OがエチレンオキサイドであるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上からなることが好ましく、少なくともビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を含有することがより好ましく、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物からなることがさらに好ましい。
【0060】
アルコール成分に含有されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のモル比(エチレンオキサイド付加物/プロピレンオキサイド付加物)は、低温定着性の観点から、0/100〜70/30が好ましく、3/97〜65/35がより好ましく、5/95〜60/40がさらに好ましく、10/90〜50/50がさらに好ましく、20/80〜40/60がさらに好ましい。
【0061】
芳香族ジオールの含有量は、アルコール成分中、40〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましい。
【0062】
芳香族ジオール以外のアルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水素添加ビスフェノールA等のジオール;ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0063】
一方、カルボン酸成分において、2価のカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。これらの中では、トナーの帯電性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物が好ましく、トナーの帯電性及び低温定着性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物と脂肪族ジカルボン酸化合物を併用することが好ましい。
【0064】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸及びイソフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
【0065】
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、アジピン酸が好ましい。
【0066】
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの帯電性の観点から、アルコール成分100モルに対して、30モル以上が好ましく、40モル以上がより好ましい。また、低温定着性の観点から、アルコール成分100モルに対して、95モル以下が好ましく、90モル以下がより好ましい。
【0067】
芳香族ジカルボン酸化合物と脂肪族ジカルボン酸化合物を併用する場合の両者のモル比(芳香族ジカルボン酸化合物/脂肪族ジカルボン酸化合物)は、50/50〜90/10が好ましく、60/40〜85/15がより好ましい。
【0068】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、例えば1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0069】
3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量は、耐ホットオフセット性及び転写性の観点から、カルボン酸成分中、3〜30モル%が好ましい。
【0070】
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、適宜含有されていてもよい。
【0071】
アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合反応時の温度は、反応性の観点から、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。また、熱分解性の観点から、250℃以下が好ましい。また、重縮合反応時の温度は、180〜250℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。
【0072】
重縮合反応は、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下で行ってもよい。エステル化触媒としては、スズ触媒、チタン触媒等が挙げられる。スズ触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等が挙げられるが、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、2-エチルヘキサン酸錫(II)等のSn−C結合を有していない錫(II)化合物が好ましい。チタン触媒としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
【0073】
ビニル系樹脂は構成単位としてスチレンを含むことが好ましい。スチレンの含有量は、ビニル系樹脂の原料モノマー中、トナーの低温定着性、高湿下での保存性及び耐ホットオフセット性の観点から、50〜100質量%が好ましく、75〜95質量%がより好ましい。
【0074】
スチレン以外の原料モノマーとしては、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。これらの中では、トナーの低温定着性、高湿下での保存性及び耐ホットオフセット性の観点から、(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステルが好ましい。(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステルの含有量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマー中、トナーの低温定着性、高湿下での保存性及び耐ホットオフセット性の観点から、0〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
【0075】
付加重合反応時の温度は、反応性、分子量調整の観点から、140℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。また、反応性、分子量調整の観点から、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
【0076】
また、付加重合反応は、必要に応じて、重合開始剤等の存在下で行ってもよい。重合開始剤としては、ジブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマー100質量部に対して、4〜12質量部が好ましく、6〜10質量部がより好ましい。
【0077】
複合樹脂は、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーとビニル系樹脂部分の原料モノマーを用い、重縮合反応と付加重合反応を行って得られる樹脂が好ましい。
【0078】
ポリエステル樹脂部分の原料モノマーには、前記のポリエステル樹脂の原料モノマーを、ビニル系樹脂部分の原料モノマーには、前記のビニル系樹脂の原料モノマーを、それぞれ用いることができる。重縮合反応と付加重合反応の条件も前記と同様である。
【0079】
複合樹脂は、例えば、(1)カルボキシ基や水酸基を有するビニル系樹脂の存在下で、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーを重縮合させる方法(カルボキシ基や水酸基は後述する両反応性モノマーや連鎖移動剤など由来のものを用いることができる)、(2)ポリエステル樹脂の存在下で、ビニル系樹脂の原料モノマーを付加重合させる方法等で得ることができる。
【0080】
複合樹脂は、両反応性モノマー由来の構造部位を含んでいることが好ましく、従って、複合樹脂の製造には、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーとビニル系樹脂部分の原料モノマーに加えて、両反応性モノマーが用いられていることが好ましい。
【0081】
両反応性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が好ましく、なかでも、(メタ)アクリル酸がより好ましく、アクリル酸がさらに好ましい。
【0082】
両反応性モノマーの含有量は、ポリエステル樹脂部分のアルコール成分100モルに対して、高湿下の保存性及び耐久性の観点から、1.2モル以上が好ましく、1.5モル以上がより好ましく、2.0モル以上がさらに好ましく、2.5モル以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、12.0モル以下が好ましく、11.0モル以下がより好ましく、10.0モル以下がさらに好ましく、8.0モル以下がさらに好ましい。両反応性モノマーの含有量は、ポリエステル樹脂のアルコール成分100モルに対して、1.2〜12.0モルが好ましく、1.5〜11.0モルがより好ましく、2.0〜10.0モルがさらに好ましく、2.5〜8.0モルがさらに好ましい。
【0083】
両反応性モノマーは、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーとビニル系樹脂部分の原料モノマーのいずれとも反応し得る。従って、ポリエステル樹脂部分の原料モノマー及びビニル系樹脂部分の原料モノマーを重合させて複合樹脂を得る際に、重縮合反応及び/又は付加重合反応は、両反応性モノマーの存在下で行うことが好ましい。これにより、複合樹脂は、両反応性モノマー由来の構成単位を介してポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分とが結合した樹脂(ハイブリッド樹脂)となり、ポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分とがより微細に、かつ均一に分散したものとなる。
【0084】
即ち、複合樹脂は、(イ)ポリエステル樹脂部分の原料モノマー、(ロ)ビニル系樹脂部分の原料モノマー、及び(ハ)ポリエステル樹脂部分の原料モノマー及びビニル系樹脂部分の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを重合させることにより得られる樹脂であることが好ましい。
【0085】
両反応性モノマーを用いて得られるハイブリッド樹脂は、具体的には、以下の方法により製造することが好ましい。両反応性モノマーは、付加重合反応及び重縮合反応を制御することで、本発明の効果を発現させる観点から、ビニル系樹脂部分の原料モノマーとともに付加重合反応に用いることが好ましい。
【0086】
(i) ポリエステル樹脂部分の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)の後に、ビニル系樹脂部分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法
この方法では、重縮合反応に適した反応温度条件下で工程(A)を行い、反応温度を低下させ、付加重合反応に適した温度条件下で工程(B)を行う。ビニル系樹脂部分の原料モノマー及び両反応性モノマーは、付加重合反応に適した温度で反応系内に添加にすることが好ましい。両反応性モノマーは付加重合反応をすると共にポリエステル樹脂部分とも反応する。
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上等のポリエステル樹脂部分の原料モノマー等を重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応や両反応性モノマーとの反応をさらに進めることができる。
【0087】
(ii) ビニル系樹脂部分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(B)を行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、工程(A)の重縮合反応を行う。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
ポリエステル樹脂部分の原料モノマーは、付加重合反応時に反応系内に存在してもよく、重縮合反応に適した温度条件下で反応系内に添加してもよい。前者の場合は、重縮合反応に適した温度でエステル化触媒を添加することで重縮合反応の進行を調節できる。
【0088】
(iii) ポリエステル樹脂部分の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)とビニル系樹脂部分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを並行して行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、架橋剤となる3価以上のポリエステル樹脂部分の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応をさらに行うことが好ましい。その際、重縮合反応に適した温度条件下では、ラジカル重合禁止剤を添加して重縮合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
【0089】
上記(i)の方法においては、重縮合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した重縮合系樹脂を用いてもよい。上記(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して行う際には、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーを含有した混合物中に、ビニル系樹脂部分の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
【0090】
上記(i)〜(iii)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
【0091】
本発明では、分子量の調整を容易にし、樹脂の物性の調整を制御しやすくして、本発明の効果を発現させる観点から、(ii)の方法が好ましい。
【0092】
本発明において、ポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分の質量比(ポリエステル樹脂部分/ビニル系樹脂部分)は、高温高湿下での長期保存性の観点から、60/40〜95/5が好ましく、70/30〜95/5がより好ましく、80/20〜90/10がさらに好ましい。なお、この質量比において、両反応性モノマーの質量はポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分のいずれにも含めない。
【0093】
非晶質樹脂の軟化点は、転写性の観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、低温定着性の観点から、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。
【0094】
非晶質樹脂のガラス転移温度は、トナーの保存性の観点から、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましい。また、低温定着性の観点から、60℃以下が好ましい。
【0095】
非晶質樹脂の酸価は、トナーの帯電性の観点から、3mgKOH/g以上が好ましく、5mgKOH/g以上がより好ましい。高温高湿下の現像安定性の観点から、40mgKOH/g以下が好ましく、30mgKOH/g以下がより好ましい。
【0096】
本発明において、非晶質樹脂は、低温定着性、現像安定性及び転写性の観点から、軟化点が好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上異なる2種類以上のポリエステルを含有していることが好ましい。2種類以上の樹脂のうち、最も低い軟化点を持つ低軟化樹脂の軟化点は、トナーの保存性の観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、92℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性の観点から、110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、98℃以下がさらに好ましく、97℃以下がさらに好ましい。最も高い軟化点を持つ高軟化点樹脂の軟化点は、保存性及び耐ホットオフセット性の観点から、111℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、125℃以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましく、135℃以下がさらに好ましい。2種類以上の樹脂を含有する場合は、トナーの生産性を向上させる観点から、2種類が好ましい。
【0097】
低軟化点樹脂のガラス転移温度は、トナーの保存性の観点から、45℃以上が好ましく、48℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性の観点から、60℃以下が好ましく、55℃以下がより好ましく、50℃以下がさらに好ましい。
【0098】
低軟化点樹脂の酸価は、トナーの帯電性の観点から、3mgKOH/g以上が好ましく、5mgKOH/g以上がより好ましい。また、高温高湿下の現像安定性の観点から、20mgKOH/g以下が好ましく、16mgKOH/g以下がより好ましい。
【0099】
高軟化点樹脂のガラス転移温度は、トナーの保存性の観点から、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性の観点から、65℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
【0100】
高軟化点樹脂の酸価は、トナーの帯電性の観点から、15mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましく、25mgKOH/g以上がさらに好ましい。また、高温高湿下の現像安定性の観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、27mgKOH/g以下がより好ましい。
【0101】
2種類の樹脂を用いる場合は、高軟化点樹脂と低軟化点樹脂との質量比(高軟化点樹脂/低軟化点樹脂)は、低温定着性、現像安定性及び転写性の観点から、好ましくは20/80〜90/10、より好ましくは30/70〜85/15、さらに好ましくは50/50〜80/20、さらに好ましくは60/40〜80/20である。
【0102】
結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の質量比(結晶性ポリエステル/非晶質樹脂)は、高温高湿下の現像安定性、転写性及び低温定着性の観点から、3/97〜35/65が好ましく、5/95〜30/70がより好ましく、5/95〜15/85がさらに好ましい。
【0103】
本発明の結着樹脂組成物を含有する静電荷像現像用トナーは、非接触での低温定着性、高温高湿下での現像安定性、及び転写性に優れる。なお、本発明の結着樹脂組成物は、前記の結晶性ポリエステルと非晶質樹脂を混合する工程により得られたものを用いてもよく、トナーを製造する際に、それぞれの樹脂を直接原料の混合に供してもよい。
【0104】
本発明のトナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の結着樹脂組成物以外の公知の樹脂が併用されていてもよいが、前記の結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の総含有量は、結着樹脂中、90〜100質量%が好ましく、93〜100質量%がより好ましく、95〜100質量%がさらに好ましい。
【0105】
本発明のトナーには、着色剤、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよく、着色剤、離型剤及び荷電制御剤が含有されることが好ましい。
【0106】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、40質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0107】
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0108】
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
【0109】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、7質量部以下がさらに好ましい。
【0110】
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
【0111】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成社製)等が挙げられる。
【0112】
また、負帯電性の荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「E-304」(以上、オリエント化学工業社製)、「TN-105」(保土谷化学工業社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物、例えば「TN105」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。
【0113】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
【0114】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂を含む結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
【0115】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましく、外添剤としては、無機微粒子を用いることが好ましい。無機微粒子の例は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛が挙げられ、シリカが好ましい。
【0116】
シリカは、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
【0117】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの中ではヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0118】
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましい。また、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、90nm以下がさらに好ましい。
【0119】
外添剤の含有量は、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0120】
本発明のトナーの体積中位粒径(D
50)は、3〜15μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D
50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0121】
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
【0122】
本発明のトナーは、定着時に圧力のかからない非接触定着においても、良好な低温定着性を発揮するため、非接触定着方式で画像を形成する画像形成方法にも好適に用いることができる。
【0123】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のトナー用結着樹脂組成物、該結着樹脂組成物を含有した静電荷像現像用トナー、該トナーを用いた画像形成方法、該結着樹脂組成物に用いられる結晶性ポリエステル及びその製造方法を開示する。
【0124】
<1> 結晶性ポリエステルと非晶質樹脂を含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記結晶性ポリエステルが、炭素数2〜8の脂肪族ジオールAと炭素数9〜12の脂肪族ジオールBを30/70〜70/30のモル比(A/B)で含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる、酸価が8mgKOH/g以下の結晶性ポリエステルである、トナー用結着樹脂組成物。
【0125】
<2> 結晶性ポリエステルのカルボン酸成分が、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有する、前記<1>記載のトナー用結着樹脂組成物。
<3> 結晶性ポリエステルのカルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)が、0.80以上1.03以下である、前記<1>又は<2>記載のトナー用結着樹脂組成物。
<4> 結晶性ポリエステルのアルコール成分に含有される炭素数2〜8の脂肪族ジオールAと炭素数9〜12の脂肪族ジオールBのモル比(A/B)が40/60〜60/40である、前記<1>〜<3>いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
<5> 結晶性ポリエステルの融点が60〜100℃である、前記<1>〜<4>いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
<6> 炭素数2〜8の脂肪族ジオールAが、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールから選ばれる1種以上である、前記<1>〜<5>いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
<7> 結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の質量比(結晶性ポリエステル/非晶質樹脂)が3/97〜35/65である、前記<1>〜<6>いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
<8> 非晶質樹脂が、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、及びポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分とを有する複合樹脂から選ばれる1種以上である、前記<1>〜<7>いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
<9> 複合樹脂が、ポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分の質量比(ポリエステル樹脂部分/ビニル系樹脂部分)が60/40〜95/5である、前記<8>記載のトナー用結着樹脂組成物。
<10> 結晶性ポリエステルの酸価が、0.1mgKOH/g以上8mgKOH/g以下である、前記<1>〜<9>いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
<11> 炭素数9〜12の脂肪族ジオールBが、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールから選ばれる1種以上である、前記<1>〜<10>いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
<12> 結晶性ポリエステルの軟化点が、60〜100℃である、前記<1>〜<11>いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
<13> 非晶質樹脂の軟化点が、80〜150℃である、前記<1>〜<12>いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
<14> 結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結晶性ポリエステルが、炭素数2〜8の脂肪族ジオールAと炭素数9〜12の脂肪族ジオールBを30/70〜70/30のモル比(A/B)で含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる、酸価が8mgKOH/g以下の結晶性ポリエステルである、静電荷像現像用トナー。
<15> 前記<1>〜<14>いずれか記載の静電荷像現像用トナーを用いて、非接触定着方式で画像を形成する、画像形成方法。
<16> 炭素数2〜8の脂肪族ジオールAと炭素数9〜12の脂肪族ジオールBを30/70〜70/30のモル比(A/B)で含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる、酸価が8mgKOH/g以下のトナー用結晶性ポリエステル。
<17> 前記<16>記載のトナー用結晶性ポリエステルの製造方法であって、Sn−C結合を有していない錫(II)化合物の存在下で、炭素数2〜8の脂肪族ジオールAと炭素数9〜12の脂肪族ジオールBを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合する、トナー用結晶性ポリエステルの製造方法。
<18> 助触媒として没食子酸をさらに用いる、前記<17>記載の結晶性ポリエステルの製造方法。
<19> 反応率が70%以上の時点で没食子酸を反応系に添加する、前記<18>記載の結晶性ポリエステルの製造方法。
【実施例】
【0126】
樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
【0127】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0128】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却しそのまま1分間静止させる。その後、昇温速度50℃/分で測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの頂点の温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
【0129】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0130】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0131】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0132】
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、外添剤の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定した、500個の粒子の粒径の平均値をいう。長径と短径がある場合は長径を指す。
【0133】
〔トナーの体積中位粒径(D
50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)を求める。
【0134】
〔樹脂の製造〕
樹脂製造例1〔樹脂a−1、a−2〕
表1に示すアジピン酸及び無水トリメリット酸以外の原料モノマーと、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸2gを、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で6時間重縮合反応させた。230℃8.0kPaで1時間反応させた後、さらにアジピン酸及び無水トリメリット酸を添加して210℃で反応させ、10kPaにて表に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステル樹脂を得た。
【0135】
【表1】
【0136】
樹脂製造例2〔樹脂HB−1、HB−2〕
表2に示すアジピン酸及び無水トリメリット酸以外の原料を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、160℃まで昇温した。その後、アクリル酸(両反応性モノマー)、ビニル系樹脂の原料モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた後、200℃まで上昇させ、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸2gを入れた後、230℃で6時間重縮合反応させ、さらに230℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。180℃まで冷却した後、アジピン酸、無水トリメリット酸を投入し、180℃から210℃まで10℃/時間で昇温し、210℃にて1時間反応を行い、210℃、10kPaにて表に示す軟化点まで反応を行って、非晶質複合樹脂を得た。
【0137】
【表2】
【0138】
樹脂製造例4〔樹脂C−1〜C−10、C−12〜C−17の製造〕
表3、4に示す原料モノマーを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、140℃で6時間保持、さらに200℃まで6時間かけて昇温後、反応率が80%に達した時点で、2-エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを入れ、200℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させ、結晶性ポリエステルを得た。
【0139】
樹脂製造例5〔樹脂C11〕
表4に示す原料モノマー及びtert-ブチルカテコール2gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、140℃で6時間保持、さらに200℃まで6時間かけて昇温後、反応率が80%に達した時点で、2-エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを入れ、200℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて、結晶性ポリエステルを得た。
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
〔静電荷像現像用トナーの製造〕
実施例1〜15及び比較例1〜8(実施例7〜9
、13は参考例である)
表5に示す樹脂を混合した結着樹脂100質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、C.I.ピグメントブルー15:3)5質量部、負帯電性荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1質量部及び離型剤「NP-105」(三井化学社製、ポリプロピレンワックス、融点:140℃)2質量部を、ヘンシェルミキサーによく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱温度は120℃であり、混合物の供給速度は10kg/hr、平均滞留時間は約18秒であった。得られた混練物を冷却ローラーで圧延冷却した後、ジェットミルで体積中位粒径(D
50)6.5μmの粉体を得た。
【0143】
得られた粉体100質量部に、外添剤「アエロジル R-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、平均粒子径:16nm)1.0質量部及び「SI-Y」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、平均粒子径:40nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、体積中位粒径(D
50)6.5μmのトナーを得た。
【0144】
試験例1〔非接触での低温定着性〕
トナー6質量部と、フェライトキャリア(体積平均粒径:60μm、飽和磁化:68Am
2/kg)94質量部とを混合し、二成分現像剤を得た。
【0145】
得られた二成分現像剤を、複写機「AR-505」(シャープ社製)に実装し、トナー量が0.6mg/cm
2になるように調整した後、定着前の段階で画像を取り出し、未定着画像を得た。次に、非接触定着方式の画像形成装置「Vario stream 9000」(オセ・プリンティングシステムズ社製)用の定着機を改造した外部定着機を使用し、紙上の温度を90℃から150℃へと順次上昇させて定着画像を得た。各温度で定着させた画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、500gの荷重がかかるようにローラーでテープに圧力をかけた後、テープを剥離し、剥離前後の画像濃度を測定した。テープ剥離後/テープ貼付前が最初に90%を越える紙上の温度を最低定着温度とし、以下の評価基準に従って、低温定着性を評価した。最低定着温度が低いほど、低温定着性が良好であることを示す。定着試験に用いた紙はシャープ社製の厚紙「CopyBond SF-70NA」(75g/m
2)である。結果を表5に示す。
【0146】
試験例2〔高温高湿下での現像安定性〕
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(沖データ社製)のIDカートリッジにトナーを実装し、温度40℃、相対湿度80%の条件下で、70r/min(36枚/分相当)で空回し運転を行い、現像ロール表面のスジムラ発生を目視にて観察し、スジムラが発生するまでの時間を測定した。スジムラが発生するまでの時間が長いほど現像安定性に優れる。なお、スジムラとは現像ロール上に付着しているトナー量にばらつきが発生している状態のことをいい、スジムラの発生により、印字の際に画像濃度に濃淡が発生する。結果を表5に示す。
【0147】
(評価基準)
A:スジムラが発生するまでの時間が1週間以上
B:スジムラが発生するまでの時間が3日以上1週間未満
C:スジムラが発生するまでの時間が1日以上3日未満
D:スジムラが発生するまでの時間が1日未満
【0148】
試験例3〔転写性〕
試験例1と同様にして得られた二成分現像剤を非接触現像方式の画像形成装置「Vario stream 9000」(オセ・プリンティングシステムズ社製)に実装し、印字率9%、線速1000mm/secで2時間耐刷した。その後、印字率0.15%で3時間耐刷し、プリンターを緊急停止させ、感光体上のトナー量(To)と紙上のトナー量(Tp)を計量し、Tp/To×100で求められた値を転写効率とし、以下の評価基準に従って、転写性を評価した。転写効率が高いほど、転写性が良好であることを示す。結果を表5に示す。
【0149】
(評価基準)
A:転写効率が80%以上
B:転写効率が60%以上80%未満
C:転写効率が50%以上60%未満
D:転写効率が40%以上5%未満
E:転写効率が40%未満
【0150】
【表5】
【0151】
以上の結果より、実施例のトナーは、比較例のトナーに比べて、いずれも非接触での低温定着性、高温高湿下での現像安定性、及び転写性に優れることがわかる。