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特許6263042基油拡散防止性能を有する熱伝導性グリース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263042
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】基油拡散防止性能を有する熱伝導性グリース
(51)【国際特許分類】
   C10M 161/00 20060101AFI20180104BHJP
   C10M 131/10 20060101ALN20180104BHJP
   C10M 147/04 20060101ALN20180104BHJP
   C10M 129/16 20060101ALN20180104BHJP
   C10M 129/26 20060101ALN20180104BHJP
   C10M 125/00 20060101ALN20180104BHJP
   C10M 129/40 20060101ALN20180104BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20180104BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20180104BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20180104BHJP
【FI】
   C10M161/00
   !C10M131/10
   !C10M147/04
   !C10M129/16
   !C10M129/26
   !C10M125/00
   !C10M129/40
   C10N30:00 Z
   C10N40:00 Z
   C10N50:10
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-28345(P2014-28345)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-194006(P2014-194006A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年11月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-39181(P2013-39181)
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398053147
【氏名又は名称】コスモ石油ルブリカンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095599
【弁理士】
【氏名又は名称】折口 信五
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 忠
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−239597(JP,A)
【文献】 特開2002−201483(JP,A)
【文献】 特開平10−140173(JP,A)
【文献】 特開平06−299182(JP,A)
【文献】 特開平08−081690(JP,A)
【文献】 特開平05−001293(JP,A)
【文献】 特開2006−096973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00〜177/00
C10N 10/00〜 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無機粉末充填剤を70〜98質量%、
(B)基油を2〜30質量%、
(C)ポリグリセリンモノアルキルエーテル化合物、カルボン酸構造を有する化合物、ポリカルボン酸系化合物および、金属セッケンの少なくとも1種類からなる分散剤を0.001〜3質量%、
(D)一般式(1)で表わされる構造を有するパーフルオロアルキル基含有化合物と一般式(2)で表わされる構造を有するパーフルオロアルキル基含有化合物から選ばれる1種以上のパーフルオロアルキル基含有基油拡散防止剤を0.001〜3質量%、
(E)酸化防止剤を0.001〜3質量%の割合で含有することを特徴とする熱伝導性グリース。
−(C2pO)−R (1)
(上記一般式(1)の式中、pはアルキレン基の炭素数を表し、1〜10の整数であり、nはオキシアルキレン基の繰り返し単位の数を表し、2〜200の整数であり、RおよびRはパーフルオロアルキル基又は連結基を含むパーフルオロアルキル基を表し、前記連結基が、アルキレン鎖(−C2P−)、オキシアルキレン基(−C2PO−)、ポリオキシアルキレン鎖(−C2PO−)n(これらのアルキレン鎖、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン鎖の式中、は1〜10の整数であり、nはオキシアルキレン基の繰り返し単位の数を表し、2〜200の整数である。)、−C2n−1(OH)−、−C2n−1(COOH)−、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、ポリチオエーテル結合(−S−)(この式中、aは2〜20の整数である。)、−SON(R)−(この式中、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。)、−COO−、−SO−から選ばれる1種又は2種以上の組合わせであり、RとRは同一であってもよいし、異なってもよい。)
【化11】
(上記一般式(2)の式中のR、RおよびRは、アルキル基、連結基を含むアルキル基、パーフルオロアルキル基又は連結基を含むパーフルオロアルキル基を表し、R、RおよびRの少なくとも1つはパーフルオロアルキル基を含むものであり、Rは直接結合(単結合)又は連結基を表し、前記連結基が、アルキレン鎖(−C2P−)、オキシアルキレン基(−C2PO−)、ポリオキシアルキレン鎖(−C2PO−)n(これらのアルキレン鎖、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン鎖の式中、は1〜10の整数であり、nはオキシアルキレン基の繰り返し単位の数を表し、2〜200の整数である。)、−C2n−1(OH)−、−C2n−1(COOH)−、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、ポリチオエーテル結合(−S−)(この式中、aは2〜20の整数である。)、−SON(R)−(この式中、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。)、−COO−、−SO−から選ばれる1種又は2種以上の組合わせであり、mは繰り返し単位の数を表し、mが複数の場合、複数のRは同一であってもよいし、異なってもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるRが連結基を含むパーフルオロアルキル基である場合のその連結基が、アルキレン鎖(−C2P−)、オキシアルキレン基(−C2PO−)、ポリオキシアルキレン鎖(−C2PO−)n(これらのアルキレン鎖、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン鎖の式中、は1〜10の整数であり、nはオキシアルキレン基の繰り返し単位の数を表し、2〜200の整数である。)、−C2n−1(OH)−、−C2n−1(COOH)−、チオエーテル結合(−S−)、ポリチオエーテル結合(−S−)(この式中、aは2〜20の整数である。)、−SON(R)−(この式中、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。)、−COO−、−SO−から選ばれる1種又は2種以上の組合わせであり、また、前記一般式(2)において、繰り返し単位の数を表すmが複数であり、Rがアルキレン基である場合に、該繰り返し単位がRがアルキル基又は連結基を含むアルキル基である繰り返し単位とRがパーフルオロアルキル基または連結基を含むパーフルオロアルキル基である繰り返し単位の組合わせである請求項1に記載の熱伝導性グリース。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるパーフルオロアルキル基と前記一般式(2)におけるパーフルオロアルキル基の炭素数が3〜6であることが必須であり、その上で、前記一般式(1)におけるRが連結基を含むパーフルオロアルキル基である場合のその連結基が、アルキレン鎖(−C2P−)、(アルキレン鎖の式中、pは1〜10の整数である。)、−C2n−1(OH)−、−C2n−1(COOH)−、チオエーテル結合(−S−)、ポリチオエーテル結合(−S−)(この式中、aは2〜20の整数である。)、−COO−、−SO−から選ばれる1種又は2種以上の組合わせである請求項2に記載の熱伝導性グリース。
【請求項4】
記一般式(2)において、繰り返し単位の数を表すmが複数であり、Rがアルキレン基である場合に、前記連結基が、アルキレン鎖(−C2P−)、オキシアルキレン基(−C2PO−)、(これらのアルキレン鎖、オキシアルキレン基の式中、は1〜10の整数である。)、−C2n−1(OH)−、−C2n−1(COOH)−エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、ポリチオエーテル結合(−S−)(この式中、aは2〜20の整数である。)、−SON(R)−(この式中、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。)、−COO−、−SO−から選ばれる1種又は2種以上の組合わせである請求項2又は3に記載の熱伝導性グリース。
【請求項5】
前記(C)成分の分散剤の金属セッケンが、ヒドロキシ基を含有しない炭素数12〜28の直鎖の脂肪酸の単一金属せっけん又はコンプレックス型金属せっけんである請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性グリース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性グリース用基油拡散防止剤ならびにその基油拡散防止性能を有し、かつ高ちょう度、低蒸発、及び高耐熱性の熱伝導性グリースを提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に使用されている半導体部品の中には、コンピューターのCPU、ペルチェ素子、LED、インバーター等の電源制御用パワー半導体など使用中に発熱をともなう部品がある。
これらの半導体部品を熱から保護し、正常に機能させるために、発生した熱をヒートスプレッダーやヒートシンク等の放熱部品へ伝導させ放熱する方法がある。熱伝導性グリースは、これら半導体部品と放熱部品を密着させるように両者の間に塗布され、半導体部品の熱を放熱部品に効率よく伝導させるために用いられる。
近年、これら半導体部品を用いる電子機器の性能向上や小型・高密度実装化が急速に進んでおり、このような放熱対策に用いられる熱伝導性グリースには高い熱伝導性が求められるとともに、熱伝導性グリース中の基油成分が近接した電子機器、光学機器に暴露するのを防止するため、グリース基油の拡散防止性能が求められる。
【0003】
熱伝導性グリースは、液状炭化水素やシリコーン油やフッ素油等の基油に、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなどの金属酸化物や、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの無機窒化物や、アルミニウムや銅などの金属粉末等、熱伝導率の高い充填剤が多量に分散されたグリース状組成物である。
回転部や摺動部に使用されているグリース中の基油の拡散を防止する方法としては、パーフルオロアルキル基含有ポリオキシアルキレン系化合物やパーフルオロアルキル基含有アルコール化合物を含有することが提案されている (特許文献1、2、3参照) 。しかしながら、熱伝導性グリースに使用された例はなく、高熱伝導性充填剤が高充填される熱伝導性グリース用途においては、基油拡散を防止する成分を添加することで高熱伝導性充填剤の分散性に影響し、ちょう度を高く保てなくなり、塗布性に優れない問題がある。また、高湿下でのちょう度低下がおこりやすく、耐湿性に優れない問題がある。
【0004】
熱伝導性グリースは、コンピューターのCPU等の冷却装置や、ハイブリッド自動車や電気自動車等に搭載される高出力のインバーターに使用されるパワー半導体等の冷却装置における熱接触界面に使用されている。近年、これらのエレクトロニクス機器における半導体素子は、小型化・高性能化に伴い、発熱密度及び発熱量が増大しており、熱伝導性グリースは以前にも増して高温に曝される環境にある。また、機器の小型化、密封化により、他の電子部品や光学部品が発熱部に近接され、組み込まれる環境にある。
【0005】
このような高温かつ密封された環境で長期に渡り熱伝導性グリースを使用する場合には、熱伝導性グリースの種類によっては大きくちょう度が低下する場合がある。このように、放熱材料として実装使用時にちょう度が大きく低下したり、硬化したりした場合には、クラックやボイドの発生等が起こり、放熱性能が低下する可能性がある。また、熱伝導性グリースの種類によっては、グリース中の基油成分が拡散して周辺機器へ悪影響を与える可能性がある。
したがって、半導体ユニットの発熱温度や周囲の環境温度が高温に至る使用状況で長期間に渡り使用されるケースでは、熱伝導性グリースの性能としては、より高熱伝導率を有するとともに高温高湿下でのちょう度変化率が少なく、耐熱性および耐湿性に優れ、かつ熱伝導性グリース中の基油の拡散が少ないことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3758766号公報
【特許文献2】特許第4961864号公報
【特許文献3】特開2008−297519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ちょう度が高く塗布性が良好で、さらに高温高湿下におけるちょう度変化率の少ない、基油拡散防止性能を有する熱伝導性グリースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者は、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、無機粉末充填剤の分散性を向上するための特定のパーフルオロアルキル基含有化合物を特定量配合することで、無機粉末充填剤を高充填しても高ちょう度が得られ、なおかつ、耐熱性、耐湿性を高めながら、熱伝導性グリース中の基油拡散防止性能を格段に向上させることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)無機粉末充填剤を70〜98質量%、
(B)基油を2〜30質量%、
(C)ポリグリセリンモノアルキルエーテル化合物、カルボン酸構造を有する化合物、ポリカルボン酸系化合物および、金属セッケンの少なくとも2種類からなる分散剤を0.001〜3質量%、
(D)一般式(1)で表わされる構造を有するパーフルオロアルキル基含有化合物と一般式(2)で表わされる構造を有するパーフルオロアルキル基含有化合物から選ばれる1種以上のパーフルオロアルキル基含有基油拡散防止剤を0.001〜3質量%、
(E)酸化防止剤を0.001〜3質量%の割合で含有することを特徴とする熱伝導性グリースを提供するものである。
【0010】
−(C2pO)−R (1)
(一般式(1)の式中、pはアルキレン基の炭素数を表し、1〜10の整数であり、nはオキシアルキレン基の繰り返し単位の数を表し、2〜200の整数であり、RおよびRはパーフルオロアルキル基又は連結基を含むパーフルオロアルキル基を表し、前記連結基が、アルキレン鎖(−C2P−)、オキシアルキレン基(−C2PO−)、ポリオキシアルキレン鎖(−C2PO−)n(これらのアルキレン鎖、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン鎖の式中、は1〜10の整数であり、nはオキシアルキレン基の繰り返し単位の数を表し、2〜200の整数である。)、−C2n−1(OH)−、−C2n−1(COOH)−、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、ポリチオエーテル結合(−S−)(この式中、aは2〜20の整数である。)、−SON(R)−(この式中、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。)、−COO−、−SO−から選ばれる1種又は2種以上の組合わせであり、RとRは同一であってもよいし、異なってもよい。)
【0011】
【化1】
(一般式(2)の式中のR、RおよびRは、アルキル基、連結基を含むアルキル基、パーフルオロアルキル基又は連結基を含むパーフルオロアルキル基を表し、R、RおよびRの少なくとも1つはパーフルオロアルキル基を含むものであり、Rは直接結合(単結合)又は連結基を表し、前記連結基が、アルキレン鎖(−C2P−)、オキシアルキレン基(−C2PO−)、ポリオキシアルキレン鎖(−C2PO−)n(これらのアルキレン鎖、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン鎖の式中、は1〜10の整数であり、nはオキシアルキレン基の繰り返し単位の数を表し、2〜200の整数である。)、−C2n−1(OH)−、−C2n−1(COOH)−、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、ポリチオエーテル結合(−S−)(この式中、aは2〜20の整数である。)、−SON(R)−(この式中、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。)、−COO−、−SO−から選ばれる1種又は2種以上の組合わせであり、mは繰り返し単位の数を表し、mが複数の場合、複数のRは同一であってもよいし、異なってもよい。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱伝導性グリース用基油拡散防止剤は、熱伝導性グリースに無機粉末充填剤を高充填しても高ちょう度が得られ、なおかつ、耐熱性、耐湿性を高めながら、熱伝導性グリース中の基油拡散防止性能を格段に向上させることができる。
また、本発明の熱伝導性グリースは、基油に無機粉末充填剤を特定量配合し、該無機粉末充填剤の分散性を向上するための特定の分散剤を特定量配合し、また、酸化防止剤を特定量配合し、さらに一般式(1)又は一般式(2)で表わされる構造を有する化合物を特定量配合することにより、格段に優れた耐熱性、耐湿性および基油拡散防止性を実現することができる。本発明の熱伝導性グリースを使用することで、高熱を発する電子部品の放熱性を向上でき、特にブリード油やアウトガスによる悪影響が懸念される電子部品の放熱材料として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に用いられる無機粉末充填剤(A)は、基油より高い熱伝導率を有するものであれば特に限定されないが、金属酸化物、無機窒化物、金属、ケイ素化合物、カーボン材料などの粉末が好適に用いられる。本発明の無機粉末充填剤の種類は1種類であってもよいし、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0015】
上記の無機粉末充填剤(A)は、電気絶縁性を求める場合には、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、シリカ、ダイヤモンドなどの、半導体やセラミックなどの非導電性物質の粉末が好適に使用でき、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素の粉末がより好ましく、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの粉末が特に好ましい。これらの無機粉末充填剤をそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。また、電気絶縁性を求めず、より高い熱伝導性を求める場合には、アルミニウム、金、銀、銅などの金属粉末や、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどの炭素材料粉末が好適に使用でき、金属粉末がより好ましく、アルミニウムの粉末が特に好ましい。また、金属粉末や炭素材料粉末を上記の非導電性物質の粉末と組み合わせて用いることもできる。
【0016】
また、上記無機粉末充填剤は、細粒のみを用いる場合は平均粒径0.15μm以上、3μm未満の無機粉末を用いることが好ましい。平均粒径を0.15μm以上とすることで、無機粉末充填剤の表面を親油化する分散剤の量と液体成分の量との割合のバランスがよく、高充填したときにより高いちょう度を得ることができる。一方、平均粒径を3μm未満とすることで、最密充填をしやすくなり、より高い熱伝導率とすることができ、また離油もしづらくなる。また、平均粒径の異なる2種以上の細粒を組み合わせることで、最密充填をしやすくなり、離油しづらくなる。この場合にも、熱伝導率と実装時の観点から、それぞれの細粒の平均粒径は0.15μm以上、3μm未満であることが好ましい。平均粒径の異なる細粒を組み合わせて用いる場合、平均粒径の小さい細粒の平均粒径は、平均粒径の大きい細粒の平均粒径に対して60〜10%の平均粒径であることが好ましく、55〜20%の平均粒径であることがより好ましい。また、平均粒径の小さい細粒と平均粒径の大きい細粒の混合割合は、質量比で5:95〜85:15の範囲が好ましい。
【0017】
更に、無機粉末充填剤は、細粒と粗粒を組み合わせる場合には、上記の細粒と、平均粒径3〜50μmの粗粒の無機粉末を組み合わせることができる。この場合には、粗粒の平均粒径を3μm以上とすることでより高い熱伝導率を得やすくでき、粗粒の平均粒径を50μm以下とすることで塗膜を薄くし、実装時の放熱性能を一層高めることができる。
無機粉末充填剤を細粒と粗粒の組み合わせとする場合、粗粒としては、平均粒径の異なる2種類以上の粉末の組み合わせとすることもできる。この場合にも、熱伝導率と実装時の放熱性能の観点から、それぞれの粗粒の平均粒径は3〜50μmであることが好ましい。
なお、本発明において、無機粉末充填剤の平均粒径はレーザー回折散乱法(JIS R 1629に準拠)により測定した粒度分布の体積平均径として算出できる。
【0018】
また、細粒と粗粒の無機粉末充填剤を組み合わせる場合の質量比は、20:80〜85:15の範囲で混合するのが好ましい。粗粒を2種類以上組み合わせる場合には粗粒同士の質量比は特に限定されないが、この場合にも細粒の質量比を無機粉末充填剤のうち20%〜85%の範囲にするのが好ましい。細粒と粗粒の配合比を上記範囲とすることで、無機粉末充填剤の表面を親油化する分散剤の量と液体成分の量とのバランスから、高いちょう度を得ることができる。また、粗粒と細粒のバランスが最密充填に適しており、離油もしづらくなる。
【0019】
無機粉末充填剤の含有率は70〜98質量%であるが、含有率が高いほど熱伝導性に優れ、好ましくは75〜97質量%である。70質量%未満では熱伝導性が低くなったり、離油しやすくなることがある。一方、98質量%を越えるとちょう度が低くなり十分な塗布性を保てなくなるか、熱伝導性グリースが調製できなくなる。
【0020】
基油(B)としては、種々の基油が使用でき、例えば、鉱油、合成炭化水素油などの炭化水素系基油、エステル系基油、エーテル系基油、リン酸エステル、シリコーン油及びフッ素油などが挙げられ、炭化水素系基油、エステル系基油、エーテル基油が好ましい。離油を防止する点においては、表面張力の低いシリコーン油及びフッ素油は、あまり好ましくない。基油は1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
鉱油としては、例えば、鉱油系潤滑油留分を溶剤抽出、溶剤脱ロウ、水素化精製、水素化分解、ワックス異性化などの精製手法を適宜組み合わせて精製したもので、150ニュートラル油、500ニュートラル油、ブライトストック、高粘度指数基油などが挙げられる。鉱油は、高度に水素化精製された高粘度指数基油が好ましい。
【0021】
合成炭化水素油としては、例えば、エチレンやプロピレン、ブテン、及びこれらの誘導体などを原料として製造されたアルファオレフィンを、単独または2種以上混合して重合したものが挙げられる。アルファオレフィンとしては、炭素数6〜14のものが好ましく挙げられる。
その具体例としては、1−デセンや1−ドデセンのオリゴマーであるポリアルファオレフィン(PAO)や、1−ブテンやイソブチレンのオリゴマーであるポリブテン、エチレンやプロピレンとアルファオレフィンのコオリゴマー等が挙げられる。また、アルキルベンゼンやアルキルナフタレン等を用いることもできる。
【0022】
エステル系基油としては、ジエステルやポリオールエステルが挙げられる。
ジエステルとしては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の二塩基酸のエステルが挙げられる。二塩基酸としては、炭素数4〜36の脂肪族二塩基酸が好ましい。エステル部を構成するアルコール残基は、炭素数4〜26の一価アルコール残基が好ましい。
ポリオールエステルとしては、β位の炭素上に水素原子が存在していないネオペンチルポリオールのエステルで、具体的にはネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のカルボン酸エステルが挙げられる。エステル部を構成するカルボン酸残基は、炭素数4〜26のモノカルボン酸残基が好ましい。
【0023】
また、上記以外にも、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール、2,4−ジエチル−ペンタンジオール等の脂肪族二価アルコールと、直鎖または分岐鎖の飽和脂肪酸とのエステルも用いることができる。直鎖または分岐鎖の飽和脂肪酸としては、炭素数4〜30の一価の直鎖または分岐鎖の飽和脂肪酸が好ましい。
エーテル系基油としては、ポリグリコールや(ポリ)フェニルエーテルなどが挙げられる。ポリグリコールとしては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、及びこれらの誘導体などが挙げられる。(ポリ)フェニルエーテルとしては、モノアルキル化ジフェニルエーテル、ジアルキル化ジフェニルエーテルなどのアルキル化ジフェニルエーテルや、モノアルキル化テトラフェニルエーテル、ジアルキル化テトラフェニルエーテルなどのアルキル化テトラフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、モノアルキル化ペンタフェニルエーテル、ジアルキル化ペンタフェニルエーテルなどのアルキル化ペンタフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0024】
リン酸エステルとしては、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等が挙げられる。
【0025】
熱伝導性グリースは発熱部に塗布されるため、長時間高温にさらされる。このため、基油としては熱酸化安定性に優れることが望ましい。上記基油の中では、合成系基油が好ましく、合成炭化水素油、エステル系基油、エーテル系基油が好ましい。これらの基油のうち、特に熱酸化安定性に優れるものとして、合成炭化水素油では、ポリアルファオレフィン、エステル系基油では、ポリオールエステル、エーテル系基油では(ポリ)フェニルエーテルが好ましい基油として用いられる。
ポリアルファオレフィン、(ポリ)フェニルエーテル、ポリオールエステルを単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよいが、組み合わせて使用することが好ましい。
組み合わせて使用する場合には、特にポリアルファオレフィンあるいは(ポリ)フェニルエーテルからなる基油群と、ポリオールエステルとを併用すると比較的粘度指数が高く、グリースを調製したときにちょう度が高く、塗布性に優れるグリースが調製できるため好ましい。
この場合、ポリアルファオレフィンあるいは(ポリ)フェニルエーテルからなる基油群と、ポリオールエステルの含有比率は、質量比で好ましくは95:5〜30:70であり、より好ましくは90:10〜50:50であり、さらに好ましくは85:15〜65:35である。
【0026】
基油の動粘度は、40℃で10mm/s〜1200mm/sであることが好ましい。40℃における動粘度を10mm/s以上とすることで、高温下での基油の蒸発や離油などが抑制される傾向にあるため好ましい。また、40℃における動粘度を1200mm/s以下とすることで高いちょう度を得やすくなるため好ましい。
【0027】
基油の含有量としては2〜30質量%であり、3〜28質量%が好ましく、3〜25質量%が特に好ましい。含有量が30質量%を超える場合には、ちょう度が高くなりすぎ、高温環境に置かれた場合に熱伝導性グリースが流れ出てしまう場合がある。さらに離油を生じたり、熱伝導性が低下する場合がある。
【0028】
本発明に用いられる分散剤(C)は、無機粉末充填剤の表面に吸着し、基油との親和性を向上させる表面改質剤としての働きを持ち、分散剤(C)を表面改質剤として用いることで無機粉末充填剤の表面に吸着し、基油との親和性を向上させる働きと、立体障害により充填剤同士の凝集を防ぐ分散剤としての働きを同時に付与でき、熱伝導性グリースのちょう度を向上させることができる。
【0029】
本発明に用いられる分散剤(C)は、ポリグリセリンモノアルキルエーテル化合物、カルボン酸構造を有する化合物、ポリカルボン酸系化合物、あるいは、金属せっけんである。
これらは単独で使用してもよいが、組み合わせて使用してもよい。特に、ポリグリセリンモノアルキルエーテル化合物、カルボン酸構造を有する化合物、ポリカルボン酸系化合物、及び金属せっけんを併用することが好ましい。
【0030】
本発明に使用するポリグリセリンモノアルキルエーテル化合物は、単独で用いても複数を組み合わせて用いてもよい。
ポリグリセリンモノアルキルエーテル化合物の構造式例を一般式(3)に示す。
O-(CHCH(OH)CHO)-H (3)
一般式(3)において、Rは炭素数8以上の炭化水素基を表わし、例えば、炭素数8以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられ、炭素数8以上のアルキル基、アルケニル基が好ましい。Rの炭素数は、8〜30が好ましく、10〜26がより好ましく、12〜22が特に好ましい。また、一般式(3)において、nはグリセリンの重合度を表わす係数であって、1以上の数であり、好ましくは1〜5の数である。なお、nが1以上の場合は、nは平均値である。nが5を越えると基油への溶解性が悪くなる。
【0031】
また、本発明に使用するカルボン酸構造を有する化合物は、カルボン酸の構造を有する分散剤であれば特に制限なく使用でき、単独で用いても複数を組み合わせて用いてもよい。
カルボン酸の構造を有する分散剤としては、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、芳香族カルボン酸、オキソカルボン酸、ポリカルボン酸系化合物から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸を用いることができる。特に不飽和カルボン酸やポリカルボン酸系化合物は、少量で効果的に無機充填剤の分散を促すことができ好ましい。不飽和カルボン酸の炭素数としては、炭素数8〜30の不飽和カルボン酸が好ましく、炭素数12〜26の不飽和カルボン酸が特に好ましく、炭素数16〜24の不飽和カルボン酸が最も好ましい。炭素数をこの範囲にすることで、高いちょう度と良好な熱安定性を得ることができる。
【0032】
不飽和カルボン酸は、不飽和基が炭素−炭素二重結合であるものが好ましい。炭素−炭素二重結合の数は、1〜2個がより好ましく、1個が特に好ましい。炭素―炭素二重結合を2個より多く持つものは耐熱性を低下させる可能性がある。
不飽和カルボン酸のカルボン酸基の価数については一価もしくは二価の不飽和カルボン酸が好ましく、一価の不飽和カルボン酸がより好ましい。炭化水素基については、炭素数8以上30未満の直鎖または分岐鎖の炭化水素基を持つ高級飽和脂肪酸、不飽和カルボン酸が好ましい。高級飽和脂肪酸の例としては、ラウリン酸、テトラデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、ペンタデシル酸、ヘキサデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、マルガリン酸、オクタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、ツベルクロステアリン酸、イコサン酸、アラキジン酸、ドコサン酸
ベヘン酸、テトラドコサン酸、リグノセリン酸、ヘキサドコサン酸、セロチン酸、オクタドコサン酸、モンタン酸、メリシン酸が挙げられる。
【0033】
不飽和カルボン酸の具体例としては、例えば、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ゾーマリン酸、ペテロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、パセニン酸、コドイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸およびその塩などが挙げられる。
また、本発明に使用するポリカルボン酸系化合物は、単独で用いても複数を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明に使用するポリカルボン酸系化合物としては、無水マレイン酸― オレフィン共重合物、その加水分解物またはその塩、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合物またはその塩、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル−マレイン酸共重合物またはその塩、ポリオキシアルキレンモノアルキルモノアルケニルエーテル−無水マレイン酸共重合物、その加水分解物またはその塩等が挙げられる。
【0034】
この中でも、好ましくは、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルと、無水マレイン酸、マレイン酸、又はマレイン酸塩などのマレイン酸系化合物、および共重合可能な他の単量体に基づく構成を有する共重合体である。グラフト鎖にポリオキシアルキレンを持つ場合、ポリオキシアルキレン基は直鎖又は分岐鎖を有する任意の炭素数のオキシアルキレン基を2以上連結した基であり、好ましくは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を2以上連結した基である。
【0035】
オキシアルキレン基の具体例としてはオキシエチレン基(−OCHCH−)、オキシプロピレン基(−OCH(CH)CH−、−OCHCHCH−)、オキシブチレン基(−OC(CHCH−、−OCH(CH)CHCH−、−OCHCH(CH)CH−、−OCHCHCHCH−)などが挙げられる。ポリオキシアルキレン基中のオキシアルキレン基は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上のオキシアルキレン基からなる場合、オキシエチレン基とオキシプロピレン基が混在しているものが好ましい。2種以上のオキシアルキレン基の連結構造は、ブロック構造であってもよし、ランダム構造であってもよい。ポリオキシアルキレン基の平均付加モル数は2〜150が好ましい。また、共重合体の平均分子量としては500〜10万のものが好ましい。
その具体例としては、ポリオキシアルキレン基と酸無水物基を有する一般式(4)で表される高分子系表面改質剤が挙げられる。
【0036】
【化2】
【0037】
(一般式(4)中、AOはオキシアルキレン基であり、R、R11は、直接結合又は炭素数1〜36の直鎖または分岐鎖を有する2価の炭化水素基であり、連結基を含んでもよく、側鎖にヒドロキシル基、カルボキシル基およびフェニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい。R、R10、R12は、水素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、直鎖若しくは分岐鎖を有するアルキル基、又は連結基を持つ直鎖若しくは分岐鎖を有するアルキル基である。nは1〜150であり、mは重量平均分子量が500〜10万の範囲になる数である。)
【0038】
一般式(4)中のAOはオキシアルキレン基であるが、オキシアルキレン基は直鎖であってもよいし、分岐鎖を有するものであってもよい。オキシアルキレン基の炭素数は、特に制限ないが、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が最も好ましい。
オキシアルキレン基の具体例としては、オキシエチレン基(−OCHCH−)、オキシプロピレン基(−OCH(CH)CH−、−OCHCHCH−)、オキシブチレン基(−OC(CHCH−、−OCH(CH)CHCH−、−OCHCH(CH)CH−、−OCHCHCHCH−)などが挙げられる。
【0039】
オキシアルキレン基が複数連結する場合、オキシアルキレン基は1種であってもよいし、2種以上であってもよいが、1種又は2種が好ましい。オキシアルキレン基が2種類の場合、オキシアルキレン基の組合せとしては、種々の組合せが挙げられるが、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の組合せが好ましい。オキシアルキレン基の連結構造は、ブロック構造であってもよいし、ランダム構造であってもよい。
【0040】
一般式(4)中のR、R11は、直接結合又は炭素数1〜36の直鎖または分岐鎖を有する2価の炭化水素基であり、連結基を含んでもよく、側鎖にヒドロキシル基、カルボキシル基およびフェニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい。R、R11は、それぞれ同一であってもよいし、異なってもよい。
2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基などが挙げられ、アルキレン基、アリーレン基が好ましい。2価の炭化水素基の炭素数は1〜36であるが、1〜24が好ましく、1〜10がより好ましい。2価の炭化水素基の炭素数が36を超えると、分散性には寄与するが、熱安定性が低くなる。
【0041】
、R10、R12は、水素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、直鎖若しくは分岐鎖を有するアルキル基、又は連結基を持つ直鎖若しくは分岐鎖を有するアルキル基である。アルキル基の炭素数は、1〜36が好ましく、1〜24がより好ましい。nは1〜150であり、mは重量平均分子量が500〜10万の範囲になる数である。mは重量平均分子量が500未満である数であると分散性に劣り、重量平均分子量が10万を超える数であると粘度が高くなりすぎ、熱伝導性グリースが調製できないか、又は硬くなる場合がある。
なお、一般式(4)において、R〜R12が連結基を含む場合、その連結基としては、後述する一般式(1)及び一般式(2)における連結基と同様なものが挙げられる。
また、一般式(4)の高分子系表面改質剤以外の具体例としては、ポリオキシアルキレン基と酸無水物基を有する一般式(5)で表される高分子系表面改質剤が挙げられる。
【0042】
【化3】
【0043】
(一般式(5)中、X、Yはそれぞれカルボキシル基、ヒドロキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基、もしくは水素原子であり、X、Yのうち少なくとも1つはカルボキシル基またはヒドロキシル基である。R13およびR14はそれぞれ炭素数1〜36の直鎖または分岐鎖を有する2価の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていても良い。nは繰り返し単位(−R13−COO−)の数である。)
【0044】
13およびR14において、2価の炭化水素基は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基などが挙げられ、アルキレン基が好ましい。また2価の炭化水素基の炭素数は1〜36であり、2〜32が好ましく、8〜30がさらに好ましい。また2価の炭化水素基は分岐を持つものが好ましく、分岐点を1ヶ所持つものがより好ましい。2価の炭化水素基全体の炭素数が36より多いと粘度が高くなりすぎ、熱伝導性グリースが調製できないか、硬くなる場合がある。
【0045】
また、一般式(5)におけるnが2〜15の場合、一般式(5)の(−R13−COO−)nの部分は、R13が異なる2価の炭化水素基である2種以上の構成単位(−R13−COO−)から構成される共重合体基であってもよい。この共重合体基は、ランダム構造であってもよいし、ブロック構造であってもよい。さらに、重量平均分子量は400〜10000程度であることが好ましい。
一般式(5)において、nは1〜15であり、2〜10がより好ましい。nが15より多いと粘度が高くなりすぎ、熱伝導性グリースが調製できないか、硬くなる場合がある。
【0046】
一般式(5)において、X、Yはそれぞれカルボキシル基、ヒドロキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基、もしくは水素原子であり、X、Yのうち少なくとも1つはカルボキシル基またはヒドロキシル基である。X、Yの組み合わせは、カルボキシル基とヒドロキシル基の組み合わせが好ましい。またXがカルボキシル基で、Yがヒドロキシル基である組み合わせが最も好ましい。例えば、炭素数2〜37のヒドロキシカルボン酸を重合させることによって得ることができる。このようなヒドロキシカルボン酸としては、上記の一般式(5)に記載した構造のものが得られれば特に制限はなく、例えば、3−ヒドロキシラウリン酸、3−ヒドロキシパルチミン酸、3−ヒドロキシステアリン酸、3−ヒドロキシアラキジン酸、8ーヒドロキシパルチミン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシラウリン酸、12−ヒドロキシパルミトレイン酸、12−ヒドロキシオレイン酸、16−ヒドロキシパルチミン酸等が挙げられる。また、Yがカルボキシル基のものは炭素数2〜36のジカルボン酸を、またXがヒドロキシル基のものは炭素数1〜36の2価のアルコールを、上記ヒドロキシカルボン酸の重合体にそれぞれエステル結合させることで得ることができる。
【0047】
本発明に用いられる金属せっけんは、2価以上の金属イオンと有機酸とからなる金属せっけんである。金属せっけんの具体例としては、例えば、単一金属せっけんとしてはカルシウムせっけん、マグネシウムせっけん、アルミニウムせっけん、亜鉛せっけんなどが挙げられ、マグネシウムせっけん、アルミニウムせっけん、亜鉛せっけんが好ましく、亜鉛せっけんが特に好ましい。また、コンプレックス型金属せっけんとしては、カルシウムコンプレックスせっけん、バリウムコンプレックスせっけん、アルミニウムコンプレックスせっけんなどが挙げられる。
【0048】
これらの金属せっけんのうち、ケン化反応を用いることなく、プレソープの混合法によるグリースへの添加が可能な単一金属せっけんが好ましい。また金属せっけんの有機酸の部分は直鎖またはヒドロキシ基を有する脂肪酸が好ましく、直鎖の飽和脂肪酸がより好ましい。この場合、脂肪酸の炭素数は12〜28が好ましく、より耐熱性を向上させる場合には14〜24が特に好ましい。このような脂肪酸金属せっけんとしてはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛などが挙げられ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムが特に好ましい。
【0049】
本発明に用いられる分散剤(C)の合計量は、0.001〜3質量%含有することが好ましい。より好ましくは0.05〜2質量%であり、さらに好ましくは0.15〜1質量%であり、最も好ましくは0.2〜0.5質量%である。含有量が0.001質量%より少ない場合、無機粉末充填剤の表面を親油化するのに不充分な含有量であるため高いちょう度が得られず、充填率を高くすることが難しい傾向にあり、また高温高湿度の環境に置かれた場合にはちょう度低下が起こったり、凝集して硬化しやすくなる傾向にある。また、含有量が3質量%より多い場合には、分散剤が基油中で増ちょう剤としての働きを持つため、グリースが硬くなるか、無機粉末充填剤の充填率を高めた場合にはグリース化できなくなる傾向にある。
【0050】
本発明に用いられる(D)成分のパーフルオロアルキル基含有化合物を含む熱伝導性グリース基油拡散防止剤は、熱伝導性グリースの基油拡散防止性能を格段に向上させることができる。
本発明に用いられる(D)成分のパーフルオロアルキル基含有化合物は、一般式(1)又は一般式(2)で表わされる構造をもつ化合物が挙げられる。
【0051】
−(C2pO)−R (1)
(一般式(1)中、pはアルキル基の炭素数を表し、1〜10の整数であり、nはオキシアルキレン基の繰り返し単位の数を表し、2〜200の整数であり、RおよびRはパーフルオロアルキル基又は連結基を含むパーフルオロアルキル基を表し、RとRは同一であってもよいし、異なってもよい。)
上記オキシアルキレン基(C2PO)としては、炭素数2〜4のオキシアルキレン基が好ましく、オキシエチレン基(−OCHCH−)、オキシプロピレン基(−OCH(CH)CH−、−OCHCHCH−)、オキシブチレン基(−OC(CHCH−、−OCH(CH)CHCH−、−OCHCH(CH)CH−、−OCHCHCHCH−)などが好ましく、特にオキシエチレン基またはオキシプロピレン基が好ましい。
【0052】
ポリオキシアルキレン基中のオキシアルキレン基は、1種または2種が好ましく、特に1種が好ましい。1種である場合には、オキシエチレン基またはオキシプロピレン基が好ましく、オキシアルキレン基が2種である場合には、オキシエチレン基を含む2種であるのが好ましく、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基の2種の基からなるのが好ましい。また、ポリオキシアルキレン基が2種以上のオキシアルキレン基からなる場合には、それぞれのオキシアルキレン基の連なり方は、ブロックまたはランダムのいずれであってもよい。
ポリオキシアルキレン基中のオキシアルキレン基の繰り返し単位の数であるnは2〜200の整数を表す。nが1の場合は、熱伝導性グリース中における分散性が悪く、nが200を超えると、パーフルオロアルキル基による効果、即ち基油拡散防止効果が不足するために好ましくない。nとして好ましいものは2〜30である。
【0053】
一般式(1)中のRおよびRにおけるパーフルオロアルキル基は、直鎖又は分岐鎖を有するパーフルオロアルキル基(C2q+1)であり、炭素数qは50を超えるとパーフルオロアルキル基部分の結晶性が高くなり、相溶性が悪くなるため1〜50が好ましく、qが8より大きいと基油拡散防止効果は優れるものの生分解されにくくなるため、qの範囲はq=3〜6がより好ましく、その中でも基油拡散防止効果が高いq=6が最も好ましい。
【0054】
一般式(1)中のRおよびRが連結基を有する場合、その連結基としては、特に限定されるものではなく、例えば、アルキレン鎖(−C2P−)、オキシアルキレン基(−C2PO−)、ポリオキシアルキレン鎖(−C2PO−)n、−C2n−1(OH)−、−C2n−1(COOH)−、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、ポリチオエーテル結合(−S−)、−SON(R)−(この式中、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。)、−COO−、−SO−等が挙げられる。アルキレン鎖(−C2P−)、オキシアルキレン基(−C2PO−)、ポリオキシアルキレン鎖(−C2PO−)nにおいて、、nは上記オキシアルキレン基におけるp、nと同様のものである。また、ポリチオエーテル結合(−S−)におけるaは2〜20の整数が好ましく、2〜14がより好ましく、2〜10がさらに好ましい。これらの連結基は、1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせて連結したものであってもよい。
【0055】
【化4】
【0056】
(一般式(2)中のR、RおよびRは、アルキル基、連結基を含むアルキル基、パーフルオロアルキル基又は連結基を含むパーフルオロアルキル基を表し、R、RおよびRの少なくとも1つはパーフルオロアルキル基を含むものであり、Rは直接結合(単結合)又は連結基を表し、mは繰り返し単位の数を表し、mが複数の場合、複数のRは同一であってもよいし、異なってもよい。)
一般式(2)中のR、RおよびRは、アルキル基(C2r+1)、連結基を含むアルキル基、パーフルオロアルキル基(C2q+1)あるいは連結基を含むパーフルオロアルキル基を表し、Rは直接結合(単結合)又は連結基を示す。
【0057】
一般式(2)中のR、RおよびRにおけるアルキル基((C2r+1)の炭素数rは、1〜20が好ましく、1〜16がより好ましく、1〜12がさらに好ましい。
一般式(2)中のR、RおよびRにおけるパーフルオロアルキル基は、直鎖又は分岐鎖を有するパーフルオロアルキル基(C2q+1)であり、炭素数qは50を超えるとパーフルオロアルキル基部分の結晶性が高くなり、相溶性が悪くなるため1〜50が好ましく、qが8より大きいと基油拡散防止効果は優れるものの生分解されにくくなるため、qの範囲はq=3〜6がより好ましく、その中でも基油拡散防止効果が高いq=6が最も好ましい。
【0058】
一般式(2)中のR、RおよびRに連結基が含まれる場合、その連結基としては、特に限定されるものではなく、例えば、アルキレン基(−C2P−)、オキシアルキレン基(−C2PO−)、ポリオキシアルキレン基(−C2PO−)n、−C2n−1(OH)−、−C2n−1(COOH)−、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、ポリチオエーテル結合(−S−)、−SON(R)−(この式中、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。)、−COO−、−SO−等が挙げられる。アルキレン基(−C2P−)、オキシアルキレン基(−C2PO−)、ポリオキシアルキレン基(−C2PO−)nにおいて、、nは上記一般式(1)におけるオキシアルキレン基におけるp、nと同様のものである。また、ポリチオエーテル結合(−S−)におけるaは2〜20の整数が好ましく、2〜14がより好ましく、2〜10がさらに好ましい。これらの連結基は、1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせて連結したものであってもよい。
【0059】
一般式(2)中のRが連結基である場合、その連結基としては、特に限定されるものではなく、例えば、一般式(2)中のR、RおよびRに連結基が含まれる場合の連結基と同様なものが挙げられる。
また、一般式(2)中の繰り返し単位mは、特に限定されるものではないが、mが200を超えると、重合度が増し、粘度上昇等により扱いにくくなるため、mは1〜200の整数が好ましい。
【0060】
本発明に用いられる(D)成分のパーフルオロアルキル基含有化合物を含む熱伝導性グリース基油拡散防止剤は、上記一般式(1)及び一般式(2)で表わされる構造を有するパーフルオロアルキル基含有化合物から選ばれる少なくとも1種を含有するが、本発明の目的を損なわない範囲内で他の熱伝導性グリース基油拡散防止剤を含有させてもよい。一般式(1)及び一般式(2)で表わされる構造を有するパーフルオロアルキル基含有化合物から選ばれる少なくとも1種は、一般式(1)で表わされる構造を有するパーフルオロアルキル基含有化合物の1種又は2種以上であってもよいし、一般式(2)で表わされる構造を有するパーフルオロアルキル基含有化合物の1種又は2種以上であってもよいし、一般式(1)で表わされる構造を有するパーフルオロアルキル基含有化合物と一般式(2)で表わされる構造を有するパーフルオロアルキル基含有化合物をそれぞれ1種又は2種以上併用してもよい。他の熱伝導性グリース基油拡散防止剤を含有させる場合は、その含有量を50質量%未満にすることが好ましく、20質量%未満にすることがより好ましく、10質量%未満にすることがさらに好ましい。最も好ましくは、一般式(1)又は一般式(2)で表わされる構造を有するパーフルオロアルキル基含有化合物のみからなるものである。
【0061】
(D)成分のパーフルオロアルキル基含有化合物は、0.001〜3質量%含有することが好ましい。より好ましくは0.005〜2質量%であり、さらに好ましくは0.01〜1質量%であり、最も好ましくは0.05〜0.5質量%である。(D)成分のパーフルオロアルキル基含有化合物の含有量が0.001質量%より少ない場合、基油拡散防止性能が低下する。一方、(D)成分のパーフルオロアルキル基含有化合物の含有量が3質量%よりも多い場合、基油拡散防止効果の向上は期待できないし、経済的にも不利である。
【0062】
本発明に用いられる酸化防止剤(E)には、公知の酸化防止剤を適宜配合することができる。酸化防止剤としてはヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、イオウ系、リン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、HALS等の化合物が挙げられる。ヒンダードアミン系の酸化防止剤は特に効果が高いため、好ましい。これらは、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
酸化防止剤の総量は、0.001〜3質量%含有することが好ましい。より好ましくは0.005〜2質量%であり、さらに好ましくは0.01〜1質量%であり、最も好ましくは0.05〜0.5質量%である。含有量が0.001質量%より少ない場合、良好な酸化防止効果が得られず、熱耐久性が低下する。一方、含有量が3質量%より多くても効果の向上は期待できない。
【0063】
また、本発明の熱伝導性グリースには必要に応じて、公知の添加剤を適宜配合することができる。これらとしては、例えば、2次酸化防止剤としてはサルファイド、ジサルファイド、トリサルファイド、チオビスフェノールなどのイオウ系酸化防止剤や、アルキルフォスファイト、ZnDTPなどのリン系酸化防止剤等、さび止め剤としてはスルホン酸塩、カルボン酸、カルボン酸塩、コハク酸エステル等、腐食防止剤としてはベンゾトリアゾールおよびその誘導体等の化合物、チアジアゾール系化合物が、増粘剤としてはポリブテン、ポリメタクリレート、オレフィンコポリマー、高粘度のポリアルファオレフィン等、増ちょう剤としてはウレア化合物、ナトリウムテレフタラメート、ポリテトラフルオロエチレン、有機化ベントナイト、シリカゲル、石油ワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられる。これらの添加剤の配合量は、通常の配合量であればよい。
【0064】
本発明の高熱伝導性グリースの製造に関しては、均一に成分を混合できればその方法にはよらない。一般的な製造方法としては、乳鉢、プラネタリーミキサー、2軸式押出機などにより混練りを行い、グリース状にした後、さらに三本ロールにて均一に混練りする方法がある。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた各成分について以下に示す。
(1)(A)無機粉末充填剤
(A−1)酸化亜鉛1 平均粒径:0.6μm(レーザー回折散乱法)
(A−2)酸化亜鉛2 平均粒径:10μm(レーザー回折散乱法)
(2)(B)基油
(B−1)ポリ−アルファ−オレフィン(1−デセン−オリゴマー) 40℃動粘度:47mm/s
(B−2)ジアルキルジフェニルエーテル 40℃動粘度:100mm/s
(B−3)ジアルキルテトラフェニルエーテル 40℃動粘度:410mm/s
(B−4)ペンタエリスリトールと炭素数8及び10のモノカルボン酸とのエステル 40℃動粘度:32mm/s
【0066】
(3)添加剤
(C−1)ポリグリセリンモノアルキルエーテル化合物
(ポリ)グリセリルエーテル(モノグリセリンモノオレイルエーテルに少量のポリグリセリンモノオレイルエーテルを含有する。一般式(3)において、n=3である。)
(C−2)ポリカルボン酸系化合物(1)
ポリオキシアルキレン基と酸無水物基を有する高分子系表面改質剤
(一般式(4)において、AOにオキシブチレン基、Rに炭素数1の炭化水素基、R10に炭素数18の炭化水素基、R11にスチレン基を持ち、RとR12がメチル基である重量平均分子量Mw(GPCポリスチレン換算)2万の化合物)
【0067】
(C−3)ポリカルボン酸系化合物(2)
12−ヒドロキシステアリン酸の3〜5分子重合させたオリゴマー
(一般式(5)において、R13、R14は共に炭素数17のアルキレン基、nは2〜4、Xはカルボキシル基、Yはヒドロキシル基である。また、重量平均分子量Mw(GPCポリスチレン換算)は、約2400である。)
(C−4)カルボン酸構造を持つ化合物
エルカ酸(炭素数22の不飽和脂肪酸)
(C−5)金属セッケン
ステアリン酸亜鉛
(4)基油拡散防止剤
(D−1)パーフルオロアルキル基含有化合物(一般式(2))
【0068】
【化5】
なお、上記式中、3種のメタクリル酸エステルの構造単位は、式に示す順番に連結されているが、実際は、3種のメタクリル酸エステルの構造単位がランダムに連結されているものである。
(D−2)パーフルオロアルキル基含有化合物(一般式(1))
【0069】
【化6】

(D−3)パーフルオロアルキル基含有化合物(一般式(1))
【0070】
【化7】
(D−4)パーフルオロアルキル基含有化合物(一般式(2))
【0071】
【化8】
(D−5)パーフルオロアルキル基含有化合物
【0072】
【化9】

(5)酸化防止剤
(E)アミン系酸化防止剤
ジオクチルジフェニルアミン
【0073】
実施例1〜7
熱伝導性グリースの調製は、以下のように行った。
表1に示す成分及び含有量になるように、基油に酸化防止剤、分散剤、一般式(1)又は一般式(2)で表わされる構造をもつ化合物のパーフルオロアルキル基含有化合物を溶解し、無機粉末充填剤および金属セッケンとともにプラネタリーミキサーまた乳鉢に入れた。室温〜100℃程度に加熱しながら混練りを行いよく混合し、グリース状とした。その後、三本ロールによる混練りを1〜3回実施して熱伝導性グリースを調製した。
【0074】
比較例1〜3
比較例1は、一般式(1)又は一般式(2)で表わされる構造をもつ化合物のパーフルオロアルキル基含有化合物を含有させない以外は、実施例1〜4とほぼ同様にして、熱伝導性グリースを調製した。
比較例2は、一般式(1)又は一般式(2)で表わされる構造をもつ化合物のパーフルオロアルキル基含有化合物を含有させない以外は、実施例5とほぼ同様にして、熱伝導性グリースを調製した。
比較例3は、一般式(1)又は一般式(2)で表わされる構造をもつ化合物のパーフルオロアルキル基含有化合物の代わりに(D−5)パーフルオロアルキル基含有化合物を含有させた以外は、実施例1〜4とほぼ同様にして、熱伝導性グリースを調製した。
比較例1〜3の成分及び含有量を表2に示した。
【0075】
得られた熱伝導性グリースを用いて、以下に示す性能を評価した。
ちょう度は、JIS−K2220に準拠して不混和ちょう度を測定した。ちょう度の値が大きいほど熱伝導性グリースが軟らかくなり、逆に小さいほど硬くなる。
熱伝導率は、京都電子工業(株)製迅速熱伝導率計QTM−500により室温にて測定した。
高温放置試験は、熱伝導性グリース0.25mlを鉄板に挟み、厚さ200μmに薄膜化し、150℃で500時間加熱することにより行った。試験前後のちょう度を簡易的に測定した。ここで、高温放置試験におけるちょう度変化率は以下の式により算出した。
【0076】
【数1】

ちょう度変化率の絶対値が小さい程、耐熱性が優れている。
【0077】
(I)ブリード試験
ブリード試験は、図1に示すように、摺りガラス板に熱伝導グリース熱伝導性グリース直径6mm×厚み1.5mmを塗り、80℃×72時間放置した後に拡散した基油の直径を測定した。
【0078】

【表1】
【0079】

【表2】
【0080】
表1から分かるように、実施例1〜6は、270以上の高いちょう度を持ちながら、150℃×500時間の高温放置試験後と恒温恒湿試験後のちょう度変化が少なく、良好な熱安定性と良好な耐湿性を兼ね備えていることがわかる。また、摺りガラスブリード試験においては基油の拡散距離が短く、基油拡散特性が優れている。実施例7は、実施例1〜6と比較すると、ちょう度が低く、熱安定性が多少劣るものの、耐湿性、基油拡散特性については優れた状態を維持している。
一方、一般式(1)又は一般式(2)で表わされる構造をもつ化合物を含まない比較例1〜2は、270以上の高いちょう度を持つものの、150℃×500時間の高温放置試験後のちょう度変化が大きく、耐熱性能に優れない。また、摺りガラスブリード試験においては基油拡散性距離が長く、基油拡散特性が劣っている。また、比較例3については、摺りガラスブリード試験における基油拡散性距離が短く、基油拡散特性にすぐれるものの、高温放置試験後と恒温恒湿試験後のちょう度変化が大きく、熱安定性と耐湿性に優れないことがわかる。
【0081】
すなわち、本発明の耐熱型熱伝導性グリースは、基油拡散防止性能を有しながら熱安定性と耐湿性に優れ、熱対策の必要な電子部品の放熱性を向上でき、特にCPU、パワー半導体、LEDの放熱材料として好適である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の耐熱型熱伝導性グリースは、基油拡散防止性能を有しながら熱安定性と耐湿性に優れ、熱対策の必要な電子部品の放熱性を向上でき、特にCPU、パワー半導体、LEDの放熱材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】摺りガラスブリード試験を示した平面図である。
図1