【実施例】
【0038】
<実施例1>
(1−1)二チタン酸カリウムの合成方法
水100重量部に対して酸化チタンを26.2重量部混合・攪拌した。その後、23.8重量部の炭酸カリウムを加えてさらに攪拌した。混合した溶液を200℃で噴霧乾燥(スプレードライ)し、800℃で3時間焼成し、二チタン酸カリウムを合成した。
【0039】
(1−2)複合物の合成方法
(1−1)で得られた二チタン酸カリウムを、二チタン酸カリウムの重量に対して7倍の水で1時間水洗することにより、脱カリウム処理を行い、脱水・乾燥後、850℃で2時間焼成することにより、二チタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物を合成した。
【0040】
(1−3)造粒品の造粒方法
(1−2)で得られた複合物1.0kgを高速混合造粒機(ダルトン株式会社、RMO−4H)により、高速撹拌させた。その後、5重量%のポリビニルアルコール溶液370gをスプレーしながら撹拌することにより造粒させた。得られた造粒体を電気マッフル炉にて大気雰囲気下、850℃で2時間焼成して造粒品(複合チタネートイオン交換体)を得た。上記した粉砕物の粒径は例えば20〜30μm程度であり、上記した造粒品の粒径は例えば300〜600μm程度である。なお、後述する実施例2〜15及び比較例1〜2においても、粉砕物の粒径は例えば20〜30μm程度であり、造粒品の粒径は例えば300〜600μm程度である。
【0041】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、25.8質量%であり、複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が1.39の造粒品であった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により42%であった。
【0042】
<実施例2>
(2−1)二チタン酸カリウムの合成方法
(1−1)と同じ工程で二チタン酸カリウムを合成した。
【0043】
(2−2)複合物の合成方法
(2−1)で得られた二チタン酸カリウムを、二チタン酸カリウムの重量に対して3倍の水で水洗すること以外(1−2)と同じ工程でチタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物を合成した。
【0044】
(2−3)造粒品の造粒方法
(2−2)で得られた複合物を用いて、(1−3)と同じ工程で造粒品(複合チタネートイオン交換体)を得た。
【0045】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、28.9質量%であり、複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が5.15の造粒品であった。また、得られた多孔質イオン交換体の空隙率は水銀圧入法により46%であった。
【0046】
<実施例3>
(3−1)二チタン酸カリウムの合成方法
(1−1)と同じ工程で二チタン酸カリウムを合成した。
【0047】
(3−2)複合物の合成方法
(3−1)で得られた二チタン酸カリウムを、二チタン酸カリウムの重量に対して4倍の水で水洗すること以外(1−2)と同じ工程でチタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物を合成した。
【0048】
(3−3)造粒品の造粒方法
(3−2)で得られた複合物を用いて、(1−3)と同じ工程で造粒品(複合チタネートイオン交換体)を得た。
【0049】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、28.0質量%であり、複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が3.22の造粒品であった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により45%であった。
【0050】
<実施例4>
(4−1)二チタン酸カリウムの合成方法
(1−1)と同じ工程で二チタン酸カリウムを合成した。
【0051】
(4−2)複合物の合成方法
(4−1)で得られた二チタン酸カリウムを、二チタン酸カリウムの重量に対して6倍の水で水洗すること以外(1−2)と同じ工程でチタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物を合成した。
【0052】
(4−3)造粒品の造粒方法
(4−2)で得られた複合物を用いて、(1−3)と同じ工程で造粒品(複合チタネートイオン交換体)を得た。
【0053】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、26.8質量%であり、複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が1.98の造粒品であった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により43%であった。
【0054】
<実施例5>
(5−1)二チタン酸カリウムの合成方法
(1−1)と同じ工程で二チタン酸カリウムを合成した。
【0055】
(5−2)複合物の合成方法
(5−1)で得られた二チタン酸カリウムを、二チタン酸カリウムの重量に対して13倍の水で水洗すること以外(1−2)と同じ工程でチタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物を合成した。
【0056】
(5−3)造粒品の造粒方法
(5−2)で得られた複合物を用いて、(1−3)と同じ工程で造粒品(複合チタネートイオン交換体)を得た。
【0057】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、24.0質量%であり、複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が0.74の造粒品であった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により43%であった。
【0058】
<実施例6>
(6−1)二チタン酸カリウムの合成方法
(1−1)と同じ工程で二チタン酸カリウムを合成した。
【0059】
(6−2)複合物の合成方法
(6−1)で得られた二チタン酸カリウムを、二チタン酸カリウムの重量に対して19倍の水で水洗すること以外(1−2)と同じ工程でチタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物を合成した。
【0060】
(6−3)造粒品の造粒方法
(6−2)で得られた複合物を用いて、(1−3)と同じ工程で造粒品(複合チタネートイオン交換体)を得た。
【0061】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、22.0質量%であり、複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が0.35の造粒品であった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により42%であった。
【0062】
<実施例7>
(7−1)二チタン酸カリウムの合成方法
(1−1)と同じ工程で二チタン酸カリウムを合成した。
【0063】
(7−2)複合物の合成方法
(7−1)で得られた二チタン酸カリウムを、二チタン酸カリウムの重量に対して25倍の水で水洗すること以外(1−2)と同じ工程でチタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物を合成した。
【0064】
(7−3)造粒品の造粒方法
(7−2)で得られた複合物を用いて、(1−3)と同じ工程で造粒品(複合チタネートイオン交換体)を得た。
【0065】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、20.0質量%であり、複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が0.10の造粒品であった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により46%であった。
【0066】
<実施例8>
(8−1)複合組成の調整方法
実施例1で得られた造粒品を、造粒品の重量に対して9倍の水で1時間水洗することにより脱カリウム処理を行い、脱水し、その後200℃で1時間乾燥させた。
【0067】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、17.3質量%であり、水洗前の複合チタネートイオン交換体中の二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)に対するに四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)のモル比T
5/T
6が1.39より、(K
0.65H
0.35)
2Ti
2.84O
6.68で表される複合物の造粒品であることがわかった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により38%であった。
【0068】
<実施例9>
(9−1)複合組成の調整方法
実施例1で得られた造粒品を、造粒品の重量に対して7倍の水で1時間水洗することにより脱カリウム処理を行い、脱水し、その後200℃で1時間乾燥させた。
【0069】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、19.0質量%であり、水洗前の複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が1.39より、(K
0.73H
0.27)
2Ti
2.84O
6.68で表される複合物の造粒品であることがわかった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により40%であった。
【0070】
<実施例10>
(10−1)複合組成の調整方法
実施例1で得られた造粒品を、造粒品の重量に対して5倍の水で1時間水洗することにより脱カリウム処理を行い、脱水し、その後200℃で1時間乾燥させた。
【0071】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、20.9質量%であり、水洗前の複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が1.39より、(K
0.82H
0.18)
2Ti
2.84O
6.68で表される複合物の造粒品であることがわかった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により41%であった。
【0072】
<実施例11>
(11−1)複合組成の調整方法
実施例1(1−2)で得られた二チタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物を、複合物の重量に対して2倍の水で1時間水洗することにより脱カリウム処理を行い、脱水し、その後200℃で1時間乾燥させた。
【0073】
(11−2)造粒品の造粒方法
(11−1)で得られた複合物を用いて、バインダーをエポキシ樹脂に、焼成条件を200℃で1時間に変えた事以外(1−3)と同じ工程で造粒した。
【0074】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、23.4質量%であり、水洗前の複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が1.39より、(K
0.95H
0.05)
2Ti
2.84O
6.68で表される複合物の造粒品であることがわかった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により49%であった。
【0075】
<実施例12>
(12−1)造粒品の造粒方法
実施例1(1−2)で得られた二チタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物を用いて、バインダーを使用せず、水560gをスプレーした以外(1−3)と同じ工程で造粒品(複合チタネートイオン交換体)を得た。
【0076】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、25.8質量%であり、複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が1.39の造粒品であった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により70%であった。
【0077】
<実施例13>
(13−1)造粒品の造粒方法
実施例1(1−2)で得られた二チタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物を用いて、3重量%のポリビニルアルコール溶液420gをスプレーしたこと以外(1−3)と同じ工程で造粒品(複合チタネートイオン交換体)を得た。
【0078】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、25.8質量%であり、複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が1.39の造粒品であった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により58%であった。
【0079】
<実施例14>
(14−1)造粒品の造粒方法
実施例1(1−2)で得られた二チタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物を用いて、3重量%のポリビニルアルコール溶液300gにアルミナゾル50gを加えた溶液をスプレーしたこと以外(1−3)と同じ工程で造粒品(複合チタネートイオン交換体)を得た。
【0080】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、25.8質量%であり、複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が1.39の造粒品であった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により31%であった。
【0081】
<実施例15>
(15−1)造粒品の造粒方法
実施例1(1−2)で得られた二チタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物を用いて、7重量%のポリビニルアルコール溶液320gをスプレーしたこと以外(1−3)と同じ工程で造粒品(複合チタネートイオン交換体)を得た。
【0082】
得られた複合チタネートイオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、25.8質量%であり、複合チタネートイオン交換体中の四チタン酸カリウム(K
2Ti
4O
9)に対する二チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)のモル比T
5/T
6が1.39の造粒品であった。また、得られた複合チタネートイオン交換体の空隙率は水銀圧入法により25%であった。
【0083】
<比較例1>
(16−1)二チタン酸カリウムの合成方法
(1−1)と同じ工程で二チタン酸カリウムを合成した。
【0084】
(16−2)造粒品の造粒方法
(16−1)で得られた二チタン酸カリウム1.0kgを高速混合造粒機(ダルトン株式会社、RMO−4H)により、高速撹拌させた。その後、5重量%のポリビニルアルコール溶液370gをスプレーしながら撹拌することにより造粒させた。得られた造粒体を電気マッフル炉にて大気雰囲気下、850℃で2時間焼成して造粒品(多孔質イオン交換体)を得た。
【0085】
得られた多孔質イオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、30.9質量%であり、空隙率は水銀圧入法により45%であった。
【0086】
<比較例2>
(17−1)二チタン酸カリウムの合成方法
(1−1)と同じ工程で二チタン酸カリウムを合成した。
【0087】
(17−2)四チタン酸カリウムの合成方法
(17−1)で得られた二チタン酸カリウムを、二チタン酸カリウムの重量に対して27倍の水で1時間水洗することにより、脱カリウム処理を行い、脱水・乾燥後、850℃で2時間焼成することにより、四チタン酸カリウムを合成した。
【0088】
(17−3)造粒品の造粒方法
(17−2)で得られた四チタン酸カリウム1.0kgを高速混合造粒機ダルトン株式会社、RMO−4H)により、高速撹拌させた。その後、5重量%のポリビニルアルコール溶液370gをスプレーしながら撹拌することにより造粒させた。得られた造粒体を電気マッフル炉にて大気雰囲気下、850℃で2時間焼成して造粒品(多孔質イオン交換体)を得た。
【0089】
得られた多孔質イオン交換体のカリウム濃度は、蛍光X線による組成分析の結果、18.9質量%であり、空隙率は水銀圧入法により43%であった。
【0090】
<分析装置>
上記の実施例および比較例で使用した分析装置は、下記の通りである。
蛍光X線分析装置:株式会社リガク、RIX1000
レーザ回折式粒度分布測定装置:株式会社島津製作所、SALD−2100
空隙率測定装置:カンタクロームインスツルメンツ、POREMASTER60
【0091】
<イオン交換性能の評価>
実施例1〜15及び比較例1〜2で得られた各多孔質イオン交換体を0.03g計量し、各ポリ容器(50mL遠沈管)に投入した。そして、安定同位体の塩化ストロンチウムをストロンチウム濃度が10mg/L、安定同位体の塩化セシウムをセシウム濃度が1mg/L、塩化ナトリウムを濃度が0.3質量%となるようにイオン交換水に溶解させた水溶液を用意し、当該水溶液を各々のポリ容器に30mL加えた。24時間振盪させた後、遠心分離機で固液分離し、上澄液をICP(株式会社島津製作所、ICPE−9000)に導入してイオン交換後のストロンチウム濃度を定量した。イオン交換前(ポリ容器投入前)のストロンチウム濃度に対するイオン交換後(24時間振盪後)のストロンチウム濃度の割合をイオン交換率とした。
【0092】
<強度の評価>
実施例1〜15及び比較例1〜2で得られた各多孔質イオン交換体を0.3g計量し、各ポリ容器(50mL遠沈管)に投入した。そして、前記イオン交換性能の評価に用いたものと同じ水溶液30mLを各々のポリ容器に加え軽く振り混ぜた後、上澄液の濁度をJIS K0101(工業用水試験方法)に従い分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ、U−2800)を用いて計測した。造粒品の強度が低いほど、造粒品が崩壊し濁度が高くなる。すなわち、造粒品の強度と濁度との間には負の相関がある。
【0093】
<評価結果>
図3は、実施例1、比較例1、及び比較例2の評価結果を示すテーブルである。実施例1、比較例1、及び比較例2を比較すれば明らかなように、二チタン酸カリウムと四チタン酸カリウムの複合物からなる多孔質粒子である複合チタネートイオン交換体(実施例1)は、二チタン酸カリウムからなる多孔質イオン交換体(比較例1)に比べて強度が高く、四チタン酸カリウムからなる多孔質イオン交換体(比較例2)に比べてイオン交換率が高い。すなわち、本発明の複合チタネートイオン交換体は強度、イオン交換性能ともに優れている。この理由としては、イオン交換性能の高い二チタン酸カリウムに強度の高い四チタン酸カリウムを複合させることで、イオン交換性能が著しく低下することなく粒子の崩壊を抑制する構造が形成されているからであると考えられる。
【0094】
図4は、実施例1〜7の評価結果を示すテーブルである。実施例1〜7のストロンチウム吸着結果より、TiO
6八面体の連鎖により形成されたチタン酸アルカリ金属化合物に対するTiO
5三角両錐体の連鎖により形成されたチタン酸アルカリ金属化合物のモル比が高いほど、Srイオン交換率が高いことが分かる。併せて、実施例1〜7の濁度の評価結果を考慮すれば、TiO
6八面体の連鎖により形成されたチタン酸アルカリ金属化合物に対するTiO
5三角両錐体の連鎖により形成されたチタン酸アルカリ金属化合物のモル比を0.3以上3.3以下にすることが好ましく、0.7以上2.0以下にすることがより好ましい。二チタン酸カリウムに対する四チタン酸カリウムのモル比が低過ぎると強度が落ち、二チタン酸カリウムに対する四チタン酸カリウムのモル比が高過ぎるとイオン交換性能が落ちるからである。
【0095】
図5は、実施例1及び実施例8〜11の評価結果を示すテーブルである。実施例1及び実施例8〜11の評価結果を考慮すれば、多孔質イオン交換体の組成式が(K
1−xH
x)
2Ti
nO
2n+1で表され、xの上限は0.3であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましい。多孔質イオン交換体においてK
+イオンの一部がH
+と交換されることでイオン交換性能が向上する反面、K
+イオンとH
+との交換率が高くなり過ぎると、熱処理において結晶構造が変化しイオン交換性能が低下するからである。
【0096】
図6は、実施例1及び実施例12〜15の評価結果を示すテーブルである。実施例1及び実施例12〜15の評価結果を考慮すれば、多孔質イオン交換体の空隙率が30%以上65%以下であることが望ましい。空隙率が大き過ぎると強度が落ち、空隙率が小さ過ぎるとイオン交換性能が落ちるからである。
【0097】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって示されるものであって、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0098】
例えば、上記実施形態では、TiO
5三角両錐体の連鎖により形成されたチタン酸アルカリ金属化合物として二チタン酸カリウムを採用したが、他のチタン酸アルカリ金属化合物を用いてもよい。同様に、上記実施形態では、TiO
6八面体の連鎖により形成されたチタン酸アルカリ金属化合物として四チタン酸カリウムを採用したが、他のチタン酸アルカリ金属化合物を用いてもよい。
【0099】
また、イオン交換性能や強度が著しく低下しない限り、本発明に係る複合チタネートイオン交換体は、TiO
5三角両錐体の連鎖により形成されたチタン酸アルカリ金属化合物及びTiO
6八面体の連鎖により形成されたチタン酸アルカリ金属化合物以外の物質が含まれていても構わない。
【0100】
また、本発明に係る複合チタネートイオン交換体が交換するイオンは特に限定されないが、上記した実施例におけるイオン交換性能評価を考慮すると、例えばストロンチウムイオンの交換材として好適に使用することができる。