特許第6263086号(P6263086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263086地中弁栓類の継足しバルブキーおよびその抜け止め具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263086
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】地中弁栓類の継足しバルブキーおよびその抜け止め具
(51)【国際特許分類】
   E03B 7/09 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   E03B7/09
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-112923(P2014-112923)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227554(P2015-227554A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 義明
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−050497(JP,A)
【文献】 特開平11−304041(JP,A)
【文献】 特開平11−267979(JP,A)
【文献】 米国特許第06178854(US,B1)
【文献】 実公昭39−024499(JP,Y1)
【文献】 特開昭61−270081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/48
B25B 23/10
E03B 7/09
F16K 31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中弁栓類の軸頭部のバルブキャップに取り付ける継足しバルブキーの抜け止め具であって、前記バルブキャップに嵌まる継足しバルブキーの嵌合凹部内に装着され、当該嵌合凹部内において前記バルブキャップに接触する摩擦抵抗部を有し、前記摩擦抵抗部は弾性材からなる、抜け止め具。
【請求項2】
前記摩擦抵抗部は、前記嵌合凹部の上下方向の内周面に沿うように配置される一または複数の弾性片からなる、請求項に記載の抜け止め具。
【請求項3】
前記弾性片は、前記嵌合凹部の中心側に向けて膨出するように湾曲して、前記嵌合凹部内に配置される、請求項に記載の抜け止め具。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載の抜け止め具が、前記嵌合凹部内に装着された、継足しバルブキー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された水道管や農業用水管等の埋設導管に設けられている、水道用仕切弁、ソフトシール仕切弁、制水弁、バタフライ弁、ボール弁等の地中弁栓類の軸頭部のバルブキャップに取り付ける継足しバルブキーに関し、特に、継足しバルブキーがバルブキャップから抜けるのを抑制する抜け止め具に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された水道管や農業用水管等には、流量調節等を目的とした仕切弁、バタフライ弁等の地中弁栓類が設けられている。これらの地中弁栓類は、地中に埋設された筒状の保護ボックスの底部に設置されており、その地中弁栓類を地表面から手動で開閉するには、保護ボックス上端の蓋を開けたうえで、トルクレンチやT字型のハンドル等の開閉操作具を用いて地中弁栓類の軸頭部のバルブキャップを回転させる。
【0003】
一方、特に地中の深い位置に設置された地中弁栓類の場合、開閉操作具で直接バルブキャップを回転させることは困難であるため、このような場合には、地中弁栓類の軸頭部のバルブキャップに、あらかじめ、あるいは後付けで継足しバルブキーを取り付けることが行われている(例えば特許文献1)。具体的には、継足しバルブキーの下端に設けた嵌合凹部をバルブキャップに嵌めることで、継足しバルブキーをバルブキャップに取り付ける。そして、継足しバルブキーの頭部に開閉操作具の先端を嵌めて回転させることで、地中弁栓類の軸頭部のバルブキャップを回転させる。
【0004】
しかし、単に嵌合凹部をバルブキャップに嵌めるだけでは、例えばバルブキャップを回転後、開閉操作具を上方に持ち上げて継足しバルブキーから取り外すときなどに、継足しバルブキーがバルブキャップから外れて(抜けて)しまうことがある。また、バルブキャップは公的規格により寸法形状が定められているところ、低コスト化のために継足しバルブキーを一体鋳物で形成しようとすると、その寸法精度を考慮して確実に嵌めることができるようにするためには、バルブキャップと嵌合凹部にクリアランスを設けておく必要がある。このクリアランスの存在は、継足しバルブキーの抜けを助長するとともに、バルブキャップの回転操作の確実性を損ねることにもなる。
【0005】
従来、継足しバルブキーの抜け止め対策としては、特許文献1に従来技術として紹介されているように、嵌合凹部の外側に設けたボルトを締め付けてバルブキャップに固定するという方法が知られている。しかし、既設のバルブキャップに対しては、狭い筒状の保護ボックス内でボルトの締め付け作業ができないため、この方法は、後付けで継足しバルブキーを取り付ける場合には適用できない。
【0006】
これに対して特許文献1では、抜止金具を有する継足しバルブキー(測深継足棒)が提案されている。これは、継足棒本体の嵌合部に抜止金具を設け、その抜止金具の係合部を制御弁に係合させることで、測深継足棒の抜け止めを図ろうとするものである。しかし、特許文献1では、抜止金具を制御弁に係合させるようにしていることから、制御弁の種類や形状に合わせて、形状や寸法の異なる複数種の抜止金具を準備する必要があり、汎用性に欠ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−50497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、既設のバルブキャップに対して後付けで継足しバルブキーを取り付ける場合にも適用可能で、しかも汎用性の高い、継足しバルブキーの抜け止め技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、地中弁栓類の軸頭部のバルブキャップに取り付ける継足しバルブキーの抜け止め具であって、前記バルブキャップに嵌まる継足しバルブキーの嵌合凹部内に装着され、当該嵌合凹部内において前記バルブキャップに接触する摩擦抵抗部を有し、前記摩擦抵抗部は弾性材からなる、抜け止め具が提供される。
【0010】
このように本発明の抜け止め具は、継足しバルブキーの嵌合凹部内にあらかじめ装着可能であるので、継足しバルブキーの嵌合凹部をバルブキャップに嵌めるだけで、抜け止め効果を発揮する。したがって、既設のバルブキャップに対して後付けで継足しバルブキーを取り付ける場合にも、問題なく適用可能である。
【0011】
また、上述のとおり、バルブキャップは公的規格により寸法形状が定められており、これに合わせて嵌合凹部の寸法形状も規格化されている。抜け止め具は、このように規格化された嵌合凹部に装着されるので、バルブキャップの鍔部の有無を問わず、その規格に対応する全てのバルブキャップに適用可能であり、汎用性が高い。
【0012】
さらに、上述のようにバルブキャップと嵌合凹部にクリアランスが設けられていても、本発明の抜け止め具がクリアランスを埋めて、バルブキャップに接触した状態で嵌まる。したがって、バルブキャップの回転操作においてガタ付きの発生を抑制でき、バルブキャップの回転操作を確実に行うことができる。また、回転操作中の抜けも抑制できる。
【0013】
本発明の抜け止め具は、継足しバルブキーの嵌合凹部がバルブキャップに嵌まったときに、嵌合凹部内において摩擦抵抗部がバルブキャップに接触し摩擦抵抗力を及ぼすことで、抜け止め効果を発揮する。この摩擦抵抗部は弾性材で構成する。これにより、摩擦抵抗部が弾性変形可能となり摩擦抵抗力も変化しうるので、嵌合凹部をバルブキャップに嵌めたり外したりする動作をスムーズに行うことができる。また、上述のクリアランスが変動したとしても柔軟に対応できる。
【0014】
摩擦抵抗部のより具体的な構成として、摩擦抵抗部は、嵌合凹部の上下方向の内周面に沿うように配置される一または複数の弾性片とすることができる。摩擦抵抗部(弾性片)が嵌合凹部の上下方向の内周面に沿うように位置することで、より安定的に抜け止め効果を発揮できる。この安定的な抜け止め効果は、弾性片を複数配置することで、より一層向上する。
【0015】
弾性片は、嵌合凹部の中心側に向けて膨出するように湾曲して、嵌合凹部内に配置されることが好ましい。これにより、嵌合凹部をバルブキャップに嵌めたり外したりする動作をよりスムーズに行うことができる。また、バルブキャップと嵌合凹部とのクリアランスが大きい場合でも、弾性片の膨出部分がバルブキャップと確実に接触して摩擦抵抗力を及ぼすので、抜け止め効果が確実に得られる。
【0016】
以上の抜け止め具を嵌合凹部内に装着することで、本発明の継足しバルブキーが構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、既設のバルブキャップに対して後付けで継足しバルブキーを取り付ける場合にも適用可能で、しかも汎用性の高い、継足しバルブキーの抜け止め技術が提供される。これにより、あらゆる態様のバルブキャップに対して、継足しバルブキーの抜け止め効果を簡単に得ることができるとともに、バルブキャップの回転操作の確実性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の抜け止め具の一実施例を示し、(a)斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
図2図1の抜け止め具を装着した本発明の一実施例による継足しバルブキーの縦断面図である。
図3図2の継足しバルブキーを地中弁栓類の軸頭部のバルブキャップに取り付けた状態を示す縦断面図である。
図4図3において継足しバルブキーの嵌合凹部部分を拡大した縦断面図である。
図5】クリアランスが大きい場合における継足しバルブキーの嵌合凹部部分を拡大した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の抜け止め具の一実施例を示し、(a)斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【0021】
同図に示す抜け止め具10は、正方形状の天板11と、天板11の各辺から末広がり状に湾曲して下方に伸びる弾性片(摩擦抵抗部)12と、各弾性片12の先端を上方に折り曲げて形成された係止部13とを有する。この抜け止め具10は、1枚のアルミニウム薄板を打ち抜きおよび曲げ加工することにより一体的に形成されている。抜け止め具10の材質はアルミニウムには限定されないが、特に弾性片12については軟質金属等の弾性材で形成することが好ましい。
【0022】
図2は、図1の抜け止め具10を装着した本発明の一実施例による継足しバルブキー20の縦断面図である。図3は、図2の継足しバルブキー20を地中弁栓類の軸頭部のバルブキャップに取り付けた状態を示す縦断面図である。図4は、図3において継足しバルブキーの嵌合凹部21部分を拡大した縦断面図である。
【0023】
図2に示す継足しバルブキー20は、その長手方向の一端(下端)に地中弁栓類30の軸頭部のバルブキャップ31(図3参照)に嵌まる嵌合凹部21を備え、長手方向の他端(上端)に頭部22を備え、さらに頭部22の上端面に反射材23を備える。嵌合凹部21と頭部12とは中間部14を介して連結されている。これらの頭部12および中間部14は、例えば球状黒鉛鋳鉄(FCD600)の一体鋳物として製作される。また、嵌合凹部21は、バルブキャップ31の形状に合わせて四角錐台状の外郭形状を有する。なお、頭部22の形状は通常の四角柱状やボールポイント形状とすることができる。
【0024】
ここで、図3中の符号40は地中弁栓類30を保護するために地中に埋設された筒状の保護ボックスである。保護ボックス40は鉛直に設置され、底部に底板を備えている。
【0025】
図2を参照すると、嵌合凹部21内に抜け止め具10が装着されている。具体的には、抜け止め具10の天板11を上にして嵌合凹部21内に挿入し、係止部13を継足しバルブキー20の下端面に係止させる。このように係止部13を継足しバルブキー20の下端面に係止させることで、抜け止め具10が装着された嵌合凹部21をバルブキャップ31に嵌めたり外したりするときに、不用意に抜け止め具10が嵌合凹部21から外れないようにすることができる。逆に、作業者が積極的に抜け止め具10を嵌合凹部21から外そうとするときには、係止部13をつまむことで容易に抜け止め具10を外すことができる。
【0026】
図2に表れているように、抜け止め具10を嵌合凹部21内に装着した状態において各弾性片12は、嵌合凹部21の上下方向の各内周面にそれぞれ沿うように配置されるとともに、その上下方向中央部分が嵌合凹部21の中心側に向けて膨出するように湾曲して配置される。
【0027】
そして、抜け止め具10が装着された嵌合凹部21をバルブキャップ31に嵌めると、図4に示すように、各弾性片12がバルブキャップ31を囲むように弾性的に接触し、摩擦抵抗力を及ぼす。これにより、継足しバルブキー20の抜けが抑制される。
【0028】
本発明の抜け止め具10は継足しバルブキーの嵌合凹部21内にあらかじめ装着可能であるので、この嵌合凹部21をバルブキャップ31に嵌めるだけで、抜け止め効果が発揮される。したがって、本発明の抜け止め具10による抜け止め技術は、既設のバルブキャップ31に対して後付けで継足しバルブキー20を取り付ける場合にも、問題なく適用可能である。
【0029】
また、実施例では、各弾性片12が、嵌合凹部21の上下方向の各内周面にそれぞれ沿うように配置されているから、より安定的に抜け止め効果を発揮できる。
【0030】
さらに、各弾性片12は、嵌合凹部の中心側に向けて膨出するように湾曲して、嵌合凹部内に配置されているから、嵌合凹部21をバルブキャップ31に嵌めたり外したりする動作をよりスムーズに行うことができる。また、図5に示すように、バルブキャップ31と嵌合凹部21とのクリアランスが大きい場合でも、弾性片12の膨出部分がバルブキャップ31を確実に接触して摩擦抵抗力を及ぼすので、抜け止め効果が確実に得られる。
【符号の説明】
【0031】
10 抜け止め具
11 天板
12 弾性片(摩擦抵抗部)
13 係止部
20 継足しバルブキー
21 嵌合凹部
22 頭部
23 反射材
24 中間部
30 地中弁栓類
31 バルブキャップ
40 保護ボックス
図1
図2
図3
図4
図5