(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主機と、主発電機と、電動発電機と、船内母線と、プロペラとを有し、前記プロペラは前記主機と前記電動発電機に動力伝達可能に接続され、前記船内母線は前記主発電機と前記電動発電機に電気的に接続されている船舶の推進システムであって、
前記主機の回転数を主機回転数指令値に近づけるように、前記主機の燃料供給量指令値を演算する回転数制御器と、
前記燃料供給量指令値にしたがって燃料を前記主機に供給する燃料供給器と、
前記燃料供給量指令値の増加時には発電電力が減少または電動電力が増加し、前記燃料供給量指令値の減少時には発電電力が増加または電動電力が減少するよう、前記電動発電機の電力補正指令値を演算する電力補正器と、
前記電力補正指令値にしたがって前記電動発電機を制御する電動発電機制御器と、
を備える、船舶の推進システム。
前記船舶の推力需要及び前記船舶の電力需要と前記主機の推力供給能力及び前記主発電機の電力供給能力とをそれぞれ比較し、電力と推力の過不足を調整するように、前記電動発電機が電動または発電する電力配分指令値を演算する電力管理器を更に備え、
前記電動発電機制御器は、前記電力補正指令値と前記電力配分指令値とを加算して電力指令値を算出し、前記電力指令値にしたがって前記電動発電機を制御する、請求項1に記載の船舶の推進システム。
前記船内母線または前記船内母線と前記電動発電機との間の電路に電力貯蔵装置が接続され、前記電力補正指令値が発電を表す場合は充電し、電動を表す場合は放電するように制御する電力貯蔵装置制御器を更に有することを特徴とする、請求項1に記載の船舶の推進システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1には、荒天時には過速度防止のために回転数制御を使用することが必要であることも示されている。従って、主機の燃費削減には回転数制御と燃料供給量の平準化との両立が望まれている。
【0007】
一方、特許文献1の技術においては以下の問題がある。すなわち、歪み量を用いる場合には、歪み量は主機の出力トルク、プロペラ負荷トルク、電動発電機のトルクの影響を受ける。例えば電動発電機がパワマネジメント制御によって変動した場合にも歪み量は変動するため、無用な電動発電機の電力制御が行われることになる。また、回転数を用いる場合には、回転数は主機の回転数制御の影響を受ける。主機の回転数制御の応答性が優れている場合、回転数の変化は検出されにくくなり、結果として電動発電機の電力を調整することも困難となる。
【0008】
つまり、歪み量を利用する場合は主機の出力変動を正確に反映した制御が困難であり、回転数を利用する場合は回転数制御によって電動発電機の電力制御が阻害される問題があった。
【0009】
そこで、本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ハイブリッド式の船舶推進システムにおいて回転数制御と燃料供給量の平準化との両立を図り、低燃費を実現することを第1の目的とする。
【0010】
また、回転数制御と電力制御の両立を図ることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のある態様に係る船舶の推進システムは、主機(推進用主機)と、主発電機と、電動発電機と、船内母線と、プロペラとを有し、前記プロペラは前記主機と前記電動発電機に動力伝達可能に接続され、前記船内母線は前記主発電機と前記電動発電機に電気的に接続されている船舶の推進システムであって、前記主機の回転数を主機回転数指令値に近づけるように、前記主機の燃料供給量指令値を演算する回転数制御器と、前記燃料供給量指令値にしたがって燃料を前記主機に供給する燃料供給器と、前記燃料供給量指令値の増加時には発電電力が減少または電動電力が増加し、前記燃料供給量指令値の減少時には発電電力が増加または電動電力が減少するよう、前記電動発電機の電力補正指令値を演算する電力補正器と、前記電力補正指令値にしたがって前記電動発電機を制御する電動発電機制御器と、を備える。
【0012】
上記構成により、燃料供給量指令値の増加時又は減少時に電動発電機によって主機の負荷が減少又は増加するので、回転数が主機回転数指令値により近づき、燃料供給量の変化が小さくなって、燃費が改善する。燃料供給量指令値を用いるため、パワマネジメント制御の影響を受けることもなく、且つ主機の回転数制御の応答性が良くても問題なく適用できる。
【0013】
前記船舶の推力需要及び前記船舶の電力需要と前記主機の推力供給能力及び前記主発電機の電力供給能力とをそれぞれ比較し、電力と推力の過不足を調整するように、前記電動発電機が電動または発電する電力配分指令値を演算する電力管理器を更に備え、
前記電動発電機制御器は、前記電力補正指令値と前記電力配分指令値とを加算して電力指令値を算出し、前記電力指令値にしたがって前記電動発電機を制御してもよい。
【0014】
上記構成により、船舶のパワマネジメント制御との両立を図ることができる。
【0015】
前記燃料供給量指令値を入力値とする第1ハイパスフィルタを有し、前記電力補正器は、前記第1ハイパスフィルタの出力値が正の場合には発電電力が減少または電動電力が増加し、負の場合には発電電力が増加または電動電力が減少するよう、前記電動発電機の電力補正指令値を演算してもよい。
【0016】
上記構成により、燃料供給量指令値の変動成分のみを抽出し、電動発電機の制御を好適に実現することができる。また、燃料供給量指令値の変動成分のみを抽出できるような演算手法であれば、その他のフィルタでもよい。
【0017】
前記燃料供給量指令値を入力値とする第1ハイパスフィルタと、前記主機回転数指令値を入力値とする第2ハイパスフィルタを有し、前記電力補正器は、前記第1ハイパスフィルタの出力値が正の場合には発電電力が減少または電動電力が増加し、負の場合には発電電力が増加または電動電力が減少するよう、前記電動発電機の第1電力補正指令値を演算し、前記第2ハイパスフィルタの出力値が正の場合には発電電力が減少または電動電力が増加し、負の場合には発電電力が増加または電動電力が減少するよう、前記電動発電機の第2電力補正指令値を演算し、前記第1電力補正指令値と前記第2電力補正指令値の加算値を電力補正指令値としてもよい。
【0018】
上記構成により、主機回転数指令値の増加時または減少時に電動発電機によって主機の負荷を減少又は増加させるので、回転数が主機回転数指令値により近づき、燃料供給量の変化が小さくなって、燃費がさらに向上する。また、主機回転数指令値の変動成分のみを抽出できるような演算手法であれば、その他のフィルタでもよい。
【0019】
前記燃料供給量指令値を入力値とするローパスフィルタを有し、前記燃料供給器は、前記ローパスフィルタの出力値にしたがって燃料を主機に供給してもよい。
【0020】
上記構成により、ローパスフィルタによって、主機の燃料供給量の変化をさらに小さくすることができるので、燃料供給量をより一定に近づけることができる。また、燃料供給量指令値の低周波成分のみを抽出できるような演算手法であれば、その他のフィルタでもよい。
【0021】
前記船内母線または前記船内母線と前記電動発電機との間の電路に電力貯蔵装置が接続され、前記電力補正指令値が発電を表す場合は充電し、電動を表す場合は放電するように制御する電力貯蔵装置制御器を更に有してもよい。
【0022】
上記構成により、電動発電機の電力補正指令値に沿って電力貯蔵装置の充放電を行うので、系統の周波数・電圧変動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ハイブリッド式の船舶推進システムにおいて回転数制御と燃料供給量の平準化との両立を図り、低燃費を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0026】
(第1実施形態)
[構成]
図1は、本発明の実施形態に係る船舶推進システム100のハードウェア構成を示すブロック図である。
図1に示すように、船舶推進システム100は、主機1と、主発電機2と、電動発電機3と、船内母線4と、プロペラ5を備える。太線は機械的接続を示し、細線は電気配線を示している。
【0027】
主機1は推進器としてのプロペラ5を駆動する主動力源である。本実施の形態では、主機1は例えば重油やLNGを燃料としてプロペラを駆動するディーゼルエンジンである。主機1はその他の動力源(例えばガスタービン、ガスエンジン、蒸気タービン)でもよい。このディーゼルエンジンの回転軸が減速装置8を介してプロペラ5に動力伝達可能に接続され、プロペラ5を駆動する。
【0028】
主発電機2は、例えばディーゼルエンジンまたはその他の動力源(例えばガスタービン、ガスエンジン、蒸気タービン)と発電機を回転軸で接続した装置であり、動力源の回転軸の回転により発電機を駆動して発電するように構成されている。主発電機2により発電された電力は、船内母線4から船内電力系統に給電される。主発電機2は船内母線4を介して電力変換装置6に接続されている。本実施の形態では、電力変換装置6は、船内母線4に接続された電力変換装置6aと、電動発電機3に接続された電力変換装置6bからなる。電力変換装置6a及び6bは、直流中間部を介して接続され、発電状態と電動状態の双方向で動作する。電力変換装置6は、発電状態では、電動発電機3から電力が供給されて船内電力系統にこの電力を供給し、電動状態では主発電機2により発電された電力が船内電力系統から供給されてこの電力を電動発電機3に供給するように構成されている。
【0029】
電動発電機3は、制御装置10からの信号に基づいて発電機又は電動機として動作する。電動発電機3は発電機として動作する場合には、主機1から減速装置8を介して伝達される動力により発電した電力を船内母線4に供給する。電動発電機3は電動機として動作する場合には、主発電機2により発電された電力により発生した動力でプロペラ5を駆動する。本実施の形態では、電動発電機3は、回転軸が減速装置8を介してプロペラ5に機械的に接続され、電力変換装置6を介して船内母線4に電気的に接続されている。
【0030】
プロペラ5は、主機1及び電動発電機3の一方又は双方により駆動される。本実施の形態では、プロペラ5は、減速装置8を介して主機1と電動発電機3に動力伝達可能に接続されている。
【0031】
船内母線4は、主発電機2又は電動発電機3からの電力を船内電力系統に伝送する。本実施の形態では、船内母線4は、主発電機2と電力変換装置6と電力貯蔵装置9とに電気的に接続されている。ここでは船内母線4に伝送された電力は電力貯蔵装置9に供給されて充電電力として蓄えられる。この電力貯蔵装置9は、通常、充放電可能な二次電池またはキャパシタから構成され、充放電は直流であるため、船内母線4の交流電力と二次電池またはキャパシタの直流電力とを相互に変換する電力変換器7を具備している。
【0032】
制御装置10は、船舶推進システム100全体の制御を行う。また、制御装置10は、本発明を特徴付ける回転数制御と燃料供給量の平準化との両立制御を行う。なお、船舶推進システム100全体の制御を他の制御装置で行ってもよい。
【0033】
図2は、船舶推進システム100の制御系のブロック図である。
図2に示すように、船舶推進システム100は、回転数制御器22と、燃料供給器23と、電力補正器24と、電動発電機制御器25と、を備える。
【0034】
本実施の形態では、制御装置10が、加減算器21と、回転数制御器22と、電力補正器24と、電動発電機制御器25を備えるように構成される。この制御装置10は、例えば、FPGA(field programmable gate array)、PLC(programmable logic controller)、マイクロコントローラ等の演算装置で構成され、回転数制御器22、電力補正器24、及び電動発電機制御器25は、上記演算装置においてそれに内蔵されているプログラムが実行されることにより実現される機能ブロックである。なお、以下では、加算器、減算器及び加減算器を区別せずに、加減算器と記載する。
【0035】
加減算器21は、主機回転数指令値から主機回転数を減算し、減算した値(偏差)を回転数制御器22に出力する。ここで主機回転数指令値は、例えば運転者のレバー操作を通じて入力されてもよいし、制御装置10内部のメモリに予め記憶されてもよい。主機回転数は、主機1の主軸に設けられたセンサ(図示しない)により主軸の回転数を検出した値である。
【0036】
回転数制御器22は、加減算器21の出力に基づいて、主機1の燃料供給量指令値を演算し、演算した燃料供給量指令値を燃料供給器23及び電力補正器24に出力する。本実施の形態では、回転数制御器22は、主機1の回転数を主機回転数指令値に近づけるように、主機1の燃料供給量指令値を演算するように構成されている。
【0037】
燃料供給器23は、回転数制御器22から入力された燃料供給量指令値にしたがって燃料を主機1に供給する。本実施の形態では、燃料供給器23は、例えば重油やLNG燃料をディーゼルエンジン(主機1)に供給するように構成されている。
【0038】
電力補正器24は、回転数制御器22から入力された燃料供給量指令値に基づいて電動発電機3の電力補正指令値を演算し、電動発電機制御器25に出力する。本実施の形態では、電力補正器24は、燃料供給量指令値の増加時には発電電力が減少または電動電力が増加し、燃料供給量指令値の減少時には発電電力が増加または電動電力が減少するよう、電動発電機3の電力補正指令値を演算するように構成されている。
【0039】
電動発電機制御器25は、電力補正器24から入力された電力補正指令値にしたがって電動発電機3を制御する。本実施の形態では、電動発電機制御器25は、電力補正器24から入力された電力補正指令値にしたがって電力指令値を演算するように構成されている。
【0040】
[動作]
次に、以上のように構成された船舶推進システム100の動作を説明する。
【0041】
まず、一般的な動作を説明する。
図1において、船舶推進システム100は、制御装置10が主機1、主発電機2、電動発電機3、電力変換装置6等を制御する。主機1は、主機1の回転数を主機回転数指令値に近づけるように回転数制御される。
【0042】
次に、回転数制御と燃料供給量の平準化との両立制御を説明する。
図2において、制御装置10には、主機回転数指令値が入力される。加減算器21は、主機回転数指令値に対する主機回転数の偏差を回転数制御器22に出力する。回転数制御器22は、この主機回転数の偏差に応じて燃料供給量指令値を生成し、これを燃料供給器23と電力補正器24とに出力する。燃料供給器23は、燃料供給量指令値にしたがって燃料を主機1に供給する。これにより、主機1の回転数が主機回転数指令値に近づくようにフィードバック制御される。一方、電力補正器24は、燃料供給量指令値に応じた電力補正指令値を生成してこれを電動発電機制御器25に出力する。この際、電力補正器24は、燃料供給量指令値の増加時には電動発電機3の発電電力が減少または電動電力が増加し、燃料供給量指令値の減少時には電動発電機3の発電電力が増加または電動電力が減少するように電力補正指令値を生成する。電動発電機制御器25は、電力補正指令値にしたがって電動発電機3の発電又は電動を制御する。
【0043】
これにより、主機1の回転数制御と並行して、燃料供給量指令値の増加時には、発電時は、電動発電機3は発電電力を減少するように制御される。一方、電動時は、電動発電機3は電動電力を増加するように制御される。結果として、主機1の負荷が減少する。
【0044】
また、主機1の回転数制御と並行して、燃料供給量指令値の減少時には、発電時は、電動発電機3は発電電力を増加するように制御される。一方、電動時は、電動発電機3は電動電力を減少するように制御される。結果として、主機1の負荷が増加する。
【0045】
従って、本実施の形態によれば、燃料供給量指令値の増加時又は減少時に電動発電機3によって主機1の負荷が減少又は増加するので、回転数が主機回転数指令値により近づき、燃料供給量の変化が小さくなって、燃費が改善する。また、電動発電機3の制御に燃料供給量指令値を用いるため、パワマネジメント制御の影響を受けることもなく、且つ主機1の回転数制御の応答性が良くても問題なく適用できる。これにより、回転数制御と燃料供給量の平準化との両立が図られ、船舶推進システム100において低燃費を実現することができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、
図3を用いて説明する。本実施の形態の船舶推進システム101のハードウェア構成は、
図1の構成と同様である。以下では、第1実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0047】
図3は、本発明の第2実施の形態に係る船舶推進システム101の制御系のブロック図である。
図3に示すように、制御装置10Aは、第1実施形態と比較すると、電力管理器26を更に備えるとともに、制御装置10Aが主機1、主発電機2、電動発電機3、電力変換装置6等を制御するに際して、次の4つの動作モードで動作する点が相違する。
【0048】
電気推進モードでは、主機1が停止し、主発電機2及び電動発電機3が運転する。制御装置10Aは、例えば、クラッチ(図示しない)により主機1と減速装置8の機械的な接続を切り離す。そして、電動発電機3を電動機として用いてプロペラ5を駆動し、主発電機2から船内母線4に電力を供給するように制御する。
【0049】
推進加勢モードでは、主機1、主発電機2及び電動発電機3が運転する。制御装置10Aは、電動発電機3を電動機として用いて主機1と電動発電機3によりプロペラ5を駆動し、主発電機2から船内母線4に電力を供給するように制御する。
【0050】
並列モードでは、主機1、主発電機2及び電動発電機3が運転する。制御装置10Aは、電動発電機3を発電機として用い、主機1によりプロペラ5を駆動し、主発電機2と電動発電機3により船内母線4に電力を供給するように制御する。
【0051】
軸発モードでは、主発電機2が停止し、主機1及び電動発電機3が運転する。制御装置10Aは、電動発電機3を発電機として用い、主機1によりプロペラ5を駆動し、電動発電機3により船内母線4に電力を供給するように制御する。
【0052】
電力管理器26は、船舶の推力需要及び船舶の電力需要と主機1の推力供給能力及び主発電機2の電力供給能力とをそれぞれ比較し、電力と推力の過不足を調整するように、電動発電機3が電動または発電する電力配分指令値を演算するように構成されている。
【0053】
電動発電機制御器25は、電力補正指令値と電力配分指令値とを加算して電力指令値を算出し、電力指令値にしたがって電動発電機3を制御する。電動発電機制御器25は、加減算器27を備える。加減算器27は、電力補正器24から入力された電力指令値と電力管理器26から入力された電力配分値とを加算して電力指令値を演算するように構成されている。
【0054】
次に、回転数制御と燃料供給量の平準化と船舶のパワマネジメント制御との両立制御を説明する。
【0055】
図3において電力管理器26には、船舶の配電盤、主機1の制御装置、主発電機2の制御装置(いずれも図示せず)から現在の船舶の推力需要、電力需要、主機1の推力供給能力、及び主発電機2の電力供給能力を含む情報が入力される。電力管理器26は、船舶の推力需要及び船舶の電力需要と主機1の推力供給能力及び主発電機2の電力供給能力とをそれぞれ比較し、電力と推力の過不足を調整するように、電動発電機3が電動または発電する電力配分指令値を演算する。
【0056】
電動発電機制御器25には、電力補正器24から燃料供給量指令値に応じた電力補正指令値と、電力管理器26から電動発電機3が電動または発電する電力配分指令値が入力される。加減算器27は、電力指令値と電力配分値とを加算して電力指令値を演算する。これにより、電動発電機制御器25は、推力が不足する場合には電気推進モード又は推進加勢モードにより、電動発電機3を駆動するように制御することができる。一方、電動発電機制御器25は、電力が不足する場合には並列モード又は軸発モードにより、電動発電機3を発電するように制御することができる。
【0057】
従って、本実施の形態によれば、回転数制御と燃料供給量の平準化と船舶のパワマネジメント制御との両立を図ることができる。
【0058】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、
図4を用いて説明する。本実施の形態の船舶推進システム102のハードウェア構成は、
図1の構成と同様である。ここでは上述した実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0059】
図4は、本発明の第3実施の形態に係る船舶推進システム102の制御系のブロック図である。
図4に示すように、制御装置10Bは、第1実施形態と比較すると、電力補正器24が、第1ハイパスフィルタ28と、増幅器29を有する点が相違する。
【0060】
電力補正器24は、第1ハイパスフィルタ28の出力値が正の場合には発電電力が減少または電動電力が増加し、負の場合には発電電力が増加または電動電力が減少するよう、電動発電機3の電力補正指令値を演算する。ここでは増幅器29が第1ハイパスフィルタ28の出力値のゲインを調整する。また、第1ハイパスフィルタ28の出力値の単位は燃料供給量[g/sec]であるので、増幅器29は出力値の単位を電力に変換する。
【0061】
図4において第1ハイパスフィルタ28には、燃料供給量指令値が入力される。第1ハイパスフィルタ28は、燃料供給量指令値の変動成分のみを抽出し、増幅器29に出力する。増幅器29は第1ハイパスフィルタ28の出力値のゲインを調整する。このとき電力補正器24は、第1ハイパスフィルタ28の出力値が正の場合には発電電力が減少または電動電力が増加し、第1ハイパスフィルタ28の出力値が負の場合には発電電力が増加または電動電力が減少するよう、電動発電機3の電力補正指令値を演算する。
【0062】
従って、本実施の形態によれば、電力補正器24において燃料供給量指令値の変動成分のみを抽出するので、第1実施の形態と比べて電動発電機3の制御をより好適に実現することができる。また、燃料供給量指令値の変動成分のみを抽出できるような演算手法であれば、その他のフィルタでもよい。
【0063】
本実施の形態は、第1ハイパスフィルタ28を電力補正器24の内部に備える構成としたが、制御装置10Bの一部として電力補正器24の外部に備える構成でもよい。
【0064】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について、
図5を用いて説明する。本実施形態の船舶推進システム103のハードウェア構成は、
図1の構成と同様である。ここでは上述した実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0065】
図5は、本発明の第4実施の形態に係る船舶推進システム103の制御系のブロック図である。
図5に示すように、制御装置10Cは、第3実施形態と比較すると、電力補正器24が、主機回転数指令値を入力値とする第2ハイパスフィルタ30と増幅器31を更に有し、増幅器29の出力値と増幅器31の出力値との加算値が正の場合には発電電力が減少または電動電力が増加し、負の場合には発電電力が増加または電動電力が減少するよう、電動発電機3の電力補正指令値を演算する点が相違する。
【0066】
具体的には、電力補正器24は、第2ハイパスフィルタ30と、増幅器31と、加減算器32を更に有する。増幅器31は、第2ハイパスフィルタ30の出力値のゲインを調整して、これを加減算器32に出力する。第2ハイパスフィルタ30の出力値の単位は主機回転数[rpm]であるので、増幅器31は出力値の単位を電力に変換する。また、増幅器29により、第1ハイパスフィルタ28の出力値の単位は燃料供給量[g/sec]から電力に変換されている。加減算器32は、増幅器29と、増幅器31の出力値を加算して電力補正指令値を生成し、これを電動発電機制御器25に出力するように構成されている。
【0067】
このような構成により、電動発電機制御器25は、回転数制御において主機回転数指令値の増加時には、電動発電機3の発電電力を減少するか、電動電力を増加するように制御する。結果として、主機1の負荷が減少する。
【0068】
また、電動発電機制御器25は、回転数制御において主機回転数指令値の減少時には、電動発電機3の発電電力を増加するか、電動電力を減少するように制御する。結果として、主機1の負荷が増加する。
【0069】
従って、本実施の形態によれば、主機回転数指令値の増加時または減少時に電動発電機3によって主機1の負荷を減少又は増加させるので、回転数が主機回転数指令値により近づき、燃料供給量の変化が小さくなって、第1実施の形態と比べて燃費をさらに向上することができる。
【0070】
本実施の形態は、第2ハイパスフィルタ30を電力補正器24の内部に備える構成としたが、制御装置10Cの一部として電力補正器24の外部に備える構成でもよい。また、主機回転数指令値の変動成分のみを抽出できるような演算手法であれば、その他のフィルタでもよい。
【0071】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について、
図6を用いて説明する。本実施形態の船舶推進システム104のハードウェア構成は、
図1の構成と同様である。ここでは上述した実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0072】
図6は、本発明の第5実施の形態に係る船舶推進システム104の制御系のブロック図である。
図6に示すように、制御装置10Dは、第1実施形態と比較すると、燃料供給器23が、燃料供給量指令値を入力値とするローパスフィルタ33を有し、ローパスフィルタ33の出力値にしたがって燃料を主機1に供給する点が相違する。
【0073】
従って、本実施の形態によれば、ローパスフィルタ33によって、主機1の燃料供給量の変化を、第1実施の形態と比べて、さらに小さくすることができるので、燃料供給量をより一定に近づけることができる。
【0074】
本実施の形態は、ローパスフィルタ33を燃料供給器23の内部に備える構成としたが、制御装置10Dの一部として燃料供給器23の外部に備える構成でもよい。また、燃料供給量指令値の低周波成分のみを抽出できるような演算手法であれば、その他のフィルタでもよい。
【0075】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について、
図7を用いて説明する。本実施形態の船舶推進システム105のハードウェア構成は、
図1の構成と同様である。ここでは上述した実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0076】
図7は、本発明の第6実施の形態に係る船舶推進システム105の制御装置10Eのブロック図である。
図7に示すように、まず、制御装置10Eは、第1実施形態と比較すると、電力補正指令値が発電を表す場合は充電し、電動を表す場合は放電するように電力貯蔵装置9を制御する電力貯蔵装置制御器35を更に有する点が相違する。
【0077】
このような構成により、電力補正指令値が発電を表す場合は、電力貯蔵装置9は充電するように制御される。一方、電力補正指令値が電動を表す場合は、電力貯蔵装置9は放電するように制御される。
【0078】
従って、本実施の形態によれば、電動発電機3の電力補正指令値に沿って電力貯蔵装置9の充放電を行うので、第1実施の形態と比べて、系統の周波数・電圧変動を抑制することができる。
【0079】
(実施形態の効果)
次に、上記各実施の形態の効果について
図8のグラフを用いて説明する。ここでは比較例として従来の回転数制御技術を備えた船舶推進システムを想定する。
【0080】
図8Aは、船舶推進システムのプロペラ負荷の時間変化を模式的に示している。
図8Bは、燃料供給量指令値の時間変化を模式的に示している。ここでPは比較例を示している(破線)。(1)(3)は第1及び第3実施形態を示している(実線)。(5)は第5実施形態を示している(一点鎖線)。
図8Cは、電力補正指令値の時間変化を模式的に示している。(1)(3)は第1及び第3実施形態を示している。(2a)(2b)は第2実施形態を示している。
図8Dは、電力貯蔵装置の状態の時間変化を模式的に示している。(6)は第6実施形態を示している。
【0081】
図8Aに示すように、波浪の周期によってプロペラ負荷が変動する。この場合、少し遅れて主機1の回転数制御が作用する。
図8Bに示すように、比較例(P)では、燃料供給量が大きく変動してしまうため、燃費が上昇する。
【0082】
一方、第1実施形態では、
図8Cに示すように、電力補正器24(
図2)が、燃料供給量指令値の増加時には発電電力が減少または電動電力が増加し、燃料供給量指令値の減少時には発電電力が増加または電動電力が減少するよう、電動発電機3の電力補正指令値を演算する。更に第3実施の形態では燃料供給量指令値の変動分だけを検出できるよう、ハイパスフィルタ28(
図4)を用いている。これにより、回転数が回転数設定値により近づき、
図8Bに示すように、燃料供給量の変化が比較例Pと比べて小さくなくなり、燃費が改善する。
【0083】
第2実施形態では、電力管理器26(
図3)は、船舶の推力需要及び船舶の電力需要と主機1の推力供給能力及び主発電機2の電力供給能力とをそれぞれ比較し、電力と推力の過不足を調整するように、電動発電機3が電動または発電する電力配分指令値を演算する。
図8Cに示すように、電力配分指令値は、例えば推力が不足する場合はaとなり、電力が不足する場合はbのように演算される。電力指令値は電力補正指令値と電力配分指令値を足し合わせたものとなるので、それぞれ(2a)及び(2b)となる。これにより、パワマネジメント制御との両立が図られる。
【0084】
第4実施形態では、電力補正器24(
図5)が、主機回転数指令値の増加時に発電電力が減少または電動電力が増加し、主機回転数指令値の減少時に発電電力が増加または電動電力が減少するよう、電動発電機3の電力補正指令値を演算する。これにより、回転数が回転数設定値により近づき、燃料供給量の変化が小さくなって、燃費が改善する。
【0085】
第5実施形態では、燃料供給器23(
図6)は、燃料供給量指令値にローパスフィルタ33を通した修正燃料供給量指令値にしたがって燃料を主機1に供給する。これにより、
図8Bに示すように、さらに燃料供給量の変化が小さくなって、燃費が改善する。
【0086】
第6実施形態では、電力貯蔵装置9(
図7)は、
図8Dに示すように、電力補正指令値が発電の場合は充電し、駆動の場合は放電するように制御される。これにより、電動発電機3の電力変動が電力貯蔵装置9で吸収されるため、系統の周波数・電圧変動を抑制することができる。
【0087】
(第7実施の形態)
次に、本発明の第7の実施形態について、
図9を用いて説明する。本実施形態の船舶推進システム106のハードウェア構成は、
図1の構成と同様である。ここでは上述した実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0088】
図9は、本発明の第7実施形態に係る船舶推進システム106の制御系のブロック図である。
図9に示すように、制御装置10Fは、第1実施形態と比較すると、電力管理器26と、第1ハイパスフィルタ28と、第2ハイパスフィルタ30と、ローパスフィルタ33と、電力貯蔵装置制御器35を備える点が相違する。つまり、本実施の形態の制御装置10Fは、第1乃至第6実施形態の特徴を全て備えている。これにより、第1乃至第6実施の形態の効果を奏することができる。
【0089】
(第8実施の形態)
次に、本発明の第8の実施形態について、
図10を用いて説明する。
図10は、本発明の第8実施形態に係る船舶推進システム107のハードウェア構成を示すブロック図である。
図10に示すように、本実施の形態では、電力貯蔵装置9が、電力変換装置6における系統側電力変換装置6aと電動発電機側電力変換装置6bとの間の直流中間部に接続されている。電力貯蔵装置9が船内母線4に接続されている構成では、船内母線4から供給される交流を直流に変換する回路が必須である。これに対し、
図10の船舶推進システム107では、電力貯蔵装置9が直流中間部に接続されているので、そのような回路を省略し又は簡素化することができる。
【0090】
(第9実施の形態)
次に、本発明の第9の実施形態について、
図11を用いて説明する。
図11は、本発明の第9実施形態に係る船舶推進システム108のハードウェア構成を示すブロック図である。
図11に示すように、船舶推進システム102は、減速装置8を備えていない。主機1が電動発電機3とプロペラ5の間に設けられている。あるいは、電動発電機3を主機1とプロペラ5の間に設けてもよい。また、これらの機器を接続する軸に適宜クラッチ(図示しない)を設けてもよい。これにより、減速装置8が不要になるので振動が少なくなると共にプロペラ5の回転方向や回転数の制御が容易になるので操作性が向上する。
【0091】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び機能の一方又は双方の詳細を実質的に変更できる。