(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書で開示する実施形態は、転相乳化(PIE)によってポリエステルラテックスを調製するためのプロセスに関する。標準的なPIEプロセスによって特定のポリエステル樹脂分散物/ラテックスを調製する場合、このプロセスは、時に再現性がなく、得られたラテックスは、安定性がないことが多いことが観察された。特に、このようなポリエステルは、いわゆるカーボネート経路によって作られるもの、例えば、その全体が本明細書に参考として組み込まれる米国特許第8,257,899号に記載されるポリエステルを含む。さらに、十分に安定なラテックスが得られた場合であっても、その下流にある凝集/融着によるトナー粒子の生成は、母液の暗褐色化によって着色することが多かった。このことは、廃棄水を処理した後であっても、強い変色がいまだ存在するため、廃棄物管理費が高額になることから、製造時の大きな懸念となっている。
【0007】
本明細書に開示するように、ポリエステル中に残存する特定のカチオンの存在に起因して、上の課題が起こり得ることが想定された。理論によって束縛されないが、特に、エステル化触媒中に一般的にみられる特定の一価および二価のカチオンは、上述の問題の根本原因であると思われた。したがって、いくつかの実施形態では、ポリエステルから、ラテックスを不安定化するカチオンを除去し、ポリエステルラテックスを作成するPIEプロセスを促進することを含む、ポリエステルラテックスを調製するためのプロセスを提供する。本明細書で使用する場合、「ラテックスを不安定化するカチオン」は、一般的に、ラテックスの生成および/または安定性を悪化させ、および/またはラテックスを作成するときに、凝集/融着(A/C)プロセス中に母液の褐色化/暗色化を妨害するか、および/または生じる1つ以上のカチオンを指す。例えば、ラテックスを不安定化するカチオンは、ラテックス中の変則的な粒径および/または粒径分布を生じることがあり、および/またはA/Cプロセス中の母液の褐色化を引き起こすことがある。ラテックスを不安定化するカチオンは、ラテックスを作成する能力をまったく完全に悪化させる場合がある。
【0008】
いくつかの実施形態では、ラテックスを不安定化するカチオンを除去することは、当該技術分野で既知の任意の手段によって達成されてもよい。ラテックスを不安定化するカチオンの除去は、無害なカチオン種とのカチオン交換、特定の洗浄、種々のクロマトグラフィー技術(多機能クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除と、特定の金属結合リガンドとを合わせる)によって、また、特定のキレート化剤または捕捉剤、またはこれらの技術の任意の組み合わせを用いることによって達成されてもよい。ポリエステル源および実際に妨害するラテックスを不安定化するカチオンに関する知識を用い、存在する特定のカチオン要素に合うように精製手順を変えてもよい。ほんの一例として、ポリエステルへのカーボネート経路は、特に、残留するカリウムイオンおよび/またはスズイオンで汚染したポリエステルが生じることがある。スズは、フッ化物による洗浄によって、および/またはKF−シリカを固定相として使用するクロマトグラフィー技術によって、有機基材から不純物として効率よく除去された。
【0009】
PIEプロセスに対し、ラテックスを不安定化するカチオンが及ぼす影響を明確にする一連のことにおいて、ポリエステルを有機溶媒に溶解すると、不溶性材料(または小さな砂)が生成することが観察された。このことは、ポリエステルがカーボネート経路によって調製されたとき、特にあてはまった。このようなポリエステルラテックスは、十分に安定な場合、上述のように、A/Cプロセス中に暗褐色の母液を生成した。したがって、ポリエステル溶液中に不溶解性物質が存在することは、樹脂乳化プロセス中の妨害と相関関係にあると思われ、所望な値よりも大きな粒径が得られるか、または、非常に粘性のゲル状ラテックスが生成する。非常に少量の不溶性材料が転相プロセス中に存在した場合であっても、一般的に、安定なエマルションを目標粒径で調製するのは困難であった。この観察は、一般的に、PIEプロセスを妨害することなく、少量の不溶性物質が存在することが多いため、ポリエステルラテックスの生成にはあてはまらない。
【0010】
理論によって束縛されないが、カーボネート経路によって作られるポリエステルの有機溶媒から残留する不溶性材料は、特に、ラテックスを不安定化するカチオンの供給源であってもよいことが想定された。この認識から、不溶性材料を機械的に除去すると、ラテックスを不安定化するカチオンの妨害に対し効果的な処理溶液を与えることが示された。以下の実施例に示されるように、カーボネート経路ポリエステルの有機溶媒から、濾過またはデカンテーションによって不溶性材料を除去すると、標準的なPIEプロセスによって安定で再生産可能なラテックス分散物が生じる。さらに、実施例に示されるように、不溶性材料の組成物が、かなりの量の無機K
+およびSn
2+を含むことが確認された。不溶性材料の除去は、A/Cプロセスでの母液の褐色も有益に減らした。本明細書で開示する実施形態のこれらの利点および他の利点は、当業者には明らかであろう。
【0011】
ある実施形態では、ラテックスを不安定化するカチオンを含むポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解して溶液を作成することと;ラテックスを不安定化するカチオンの実質的にすべてを除去することと;この溶液を中和することと;中和した溶液に、エマルションを生成するのに十分な量の水を加えることと;エマルションから有機溶媒の一部を除去し、ポリエステル樹脂のラテックスを作成することとを含む、プロセスを提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、PIE処理のためのポリエステル樹脂は、アモルファス性であってもよく、カーボネート経路によって調製されるものを含む。他の実施形態では、ポリエステル樹脂は、結晶性であってもよい。本開示のラテックスエマルションを作成するときに、任意の樹脂を利用してもよい。いくつかの実施形態では、樹脂は、アモルファス性、結晶性、および/またはこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、樹脂は、酸価が約1mg KOH/g ポリマー〜約200mg KOH/g ポリマー、いくつかの実施形態では、約5mg KOH/g ポリマー〜約50mg KOH/g ポリマーの酸性基を含む結晶性ポリエステル樹脂であってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、樹脂は、任意要素の触媒存在下、ジオールと二酸との反応によって作られるポリエステル樹脂であってもよい。結晶性ポリエステルを作成する場合、適切な有機ジオールとしては、約2〜約36個の炭素原子を含む脂肪族ジオール、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなど(これらの構造異性体を含む)が挙げられる。脂肪族ジオールは、例えば、樹脂の約40〜約60モル%、いくつかの実施形態では、約42〜約55モル%、いくつかの実施形態では、約45〜約53モル%の量になるように選択されてもよく、第2のジオールは、樹脂の約0〜約10モル%、いくつかの実施形態では、約1〜約4モル%の量になるように選択されてもよい。
【0014】
結晶性樹脂を調製するために選択される有機二酸とジエステル(ビニル二酸またはビニルジエステルを含む)の例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、cis,1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸およびメサコン酸、これらのジエステルまたは酸無水物が挙げられる。有機二酸は、例えば、いくつかの実施形態では、樹脂の約40〜約60モル%、いくつかの実施形態では、約42〜約52モル%、いくつかの実施形態では、約45〜約50モル%の量になるように選択されてもよく、第2の二酸は、樹脂の約0〜約10モル%の量になるように選択されてもよい。
【0015】
結晶性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン、これらの混合物などが挙げられる。具体的な結晶性樹脂は、ポリエステル系、例えば、ポリ(エチレン−アジペート)、ポリ(プロピレン−アジペート)、ポリ(ブチレン−アジペート)、ポリ(ペンチレン−アジペート)、ポリ(ヘキシレン−アジペート)、ポリ(オクチレン−アジペート)、ポリ(エチレン−サクシネート)、ポリ(プロピレン−サクシネート)、ポリ(ブチレン−サクシネート)、ポリ(ペンチレン−サクシネート)、ポリ(ヘキシレン−サクシネート)、ポリ(オクチレン−サクシネート)、ポリ(エチレン−セバケート)、ポリ(プロピレン−セバケート)、ポリ(ブチレン−セバケート)、ポリ(ペンチレン−セバケート)、ポリ(ヘキシレン−セバケート)、ポリ(オクチレン−セバケート)、ポリ(デシレン−セバケート)、ポリ(デシレン−デカノエート)、ポリ(エチレン−デカノエート)、ポリ(エチレンドデカノエート)、ポリ(ノニレン−セバケート)、ポリ(ノニレン−デカノエート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−セバケート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−デカノエート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−ドデカノエート)、コポリ(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール−デカノエート)−コポリ(ノニレン−デカノエート)、ポリ(オクチレン−アジペート)であってもよい。ポリアミドの例としては、ポリ(エチレン−アジパミド)、ポリ(プロピレン−アジパミド)、ポリ(ブチレン−アジパミド)、ポリ(ペンチレン−アジパミド)、ポリ(ヘキシレン−アジパミド)、ポリ(オクチレン−アジパミド)、ポリ(エチレン−スクシンイミド)およびポリ(プロピレン−セバカミド)が挙げられる。ポリイミドの例としては、ポリ(エチレン−アジピミド)、ポリ(プロピレン−アジピミド)、ポリ(ブチレン−アジピミド)、ポリ(ペンチレン−アジピミド)、ポリ(ヘキシレン−アジピミド)、ポリ(オクチレン−アジピミド)、ポリ(エチレン−スクシンイミド)、ポリ(プロピレン−スクシンイミド)およびポリ(ブチレン−スクシンイミド)が挙げられる。
【0016】
結晶性樹脂は、例えば、トナー要素の約1〜約85重量%、いくつかの実施形態では、トナー要素の約5〜約50重量%の量で存在していてもよい。結晶性樹脂は、種々の融点を有していてもよく、例えば、約30℃〜約120℃、いくつかの実施形態では、約50℃〜約90℃であってもよい。結晶性樹脂は、数平均分子量(M
n)が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した場合、例えば、約1,000〜約50,000、いくつかの実施形態では、約2,000〜約25,000であってもよく、重量平均分子量(M
w)が、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって決定した場合、例えば、約2,000〜約100,000、いくつかの実施形態では、約3,000〜約80,000であってもよい。結晶性樹脂の分子量分布(M
w/M
n)は、例えば、約2〜約6、いくつかの実施形態では、約3〜約4であってもよい。
【0017】
結晶性ポリエステルまたはアモルファスポリエステルのいずれかを作成する際に利用可能な重縮合触媒としては、チタン酸テトラアルキル、ジアルキルスズオキシド(例えば、ジブチルスズオキシド)、テトラアルキルスズ(例えば、ジブチルスズジラウレート)、ジアルキルスズオキシド水酸化物(例えば、酸化ブチルスズ水酸化物)、アルミニウムアルコキシド、アルキル亜鉛、ジアルキル亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一スズ、またはこれらの組み合わせが挙げられる。このような触媒は、ポリエステル樹脂を作成するために用いられる出発物質の二酸またはジエステルを基準として、例えば、約0.01モル%〜約5モル%の量で利用されてもよい。上述の任意の触媒は、得られるポリエステルに除去できないほどに存在していてもよく、ラテックスを不安定化するカチオンの供給源であってもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、上述のように、不飽和アモルファスポリエステル樹脂をラテックス樹脂として利用してもよい。例示的な不飽和アモルファスポリエステル樹脂としては、限定されないが、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(1,2−プロピレンフマレート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(1,2−プロピレンマレエート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(1,2−プロピレン イタコネート)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
アモルファス樹脂は、例えば、トナー要素の約5〜約95重量%、いくつかの実施形態では、トナー要素の約30〜約80重量%の量で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、ラテックス中で利用されるアモルファス樹脂またはアモルファス樹脂の組み合わせは、ガラス転移温度が約30℃〜約80℃、いくつかの実施形態では、約35℃〜約70℃であってもよい。さらなる実施形態では、ラテックスに利用する合わせた樹脂は、約130℃での溶融粘度が約10〜約1,000,000Pa*S、いくつかの実施形態では、約50〜約100,000Pa*Sであってもよい。
【0020】
1種類、2種類またはさらに多種類の樹脂を使用してもよい。2種類以上の樹脂が用いられる実施形態では、樹脂は、任意の適切な比率(例えば、重量比)であってもよく、例えば、約1%(第1の樹脂)/99%(第2の樹脂)〜約99%(第1の樹脂)/1%(第2の樹脂)、いくつかの実施形態では、約10%(第1の樹脂)/90%(第2の樹脂)〜約90%(第1の樹脂)/10%(第2の樹脂)であってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、樹脂は、酸基を有していてもよく、酸基は、いくつかの実施形態では、樹脂の末端に存在していてもよい。存在してもよい酸基としては、カルボン酸基などが挙げられる。樹脂を作成するために利用される材料と反応条件を調節することによって、カルボン酸基の数を制御してもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、アモルファス樹脂は、酸価が約2mg KOH/g 樹脂〜約200mg KOH/g 樹脂、いくつかの実施形態では、約5mg KOH/g 樹脂〜約50mg KOH/g 樹脂のポリエステル樹脂であってもよい。酸を含有する樹脂をテトラヒドロフラン溶液に溶解してもよい。酸価は、指示薬としてフェノールフタレインを含むKOH/メタノール溶液を用いた滴定によって検出されてもよい。次いで、酸価を、滴定の終点として特定される、樹脂の上のすべての酸基を中和するのに必要なKOH/メタノールの当量に基づいて計算してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示するプロセスは、ポリエステル樹脂を溶解するために、有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロパノール、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。ある実施形態では、本明細書に開示するプロセスは、イソプロパノール、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される有機溶媒を使用してもよい。具体的な実施形態では、有機溶媒の対を使用してもよく、この溶媒の少なくとも1つは、水に適切なほど混和性であってもよい。任意の適切な有機溶媒を使用し、ポリエステル樹脂を溶解してもよく、例えば、樹脂の約0.1重量%〜約100重量%、または約2重量%〜約50重量%、または約5重量%〜約35重量%の量のアルコール、エステル、エーテル、ケトン、アミン、およびこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、溶媒と樹脂の比率は、約0.1:10〜約20:10、または約1.0:10〜約5:10であってもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、適切な有機溶媒(時に、転相剤と呼ばれることがある)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、イソプロパノールであってもよい。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、水に不混和性であってもよく、沸点が約30℃〜約150℃であってもよい。
【0025】
ある実施形態では、本明細書に開示するプロセスは、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、有機アミン、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択される中和剤を使用してもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、ポリエステル樹脂を弱塩基または中和剤と混合してもよい。いくつかの実施形態では、中和剤を使用し、樹脂の酸基を中和してもよく、そのため、本明細書の中和剤は、「塩基性中和剤」とも呼ばれることがある。本開示にしたがって、任意の適切な塩基性中和試薬を使用してもよい。いくつかの実施形態では、適切な塩基性中和剤としては、無機塩基性剤および有機塩基性剤の両方を含んでいてもよい。適切な塩基性剤としては、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、これらの組み合わせなどを挙げることができる。樹脂の約0.001重量%〜50重量%、または約0.01重量%〜約25重量%、または約0.1重量%〜5重量%の量で塩基性中和剤を利用してもよい。いくつかの実施形態では、中和剤を水溶液の形態で加えてもよい。他の実施形態では、中和剤を固体の形態で加えてもよい。
【0027】
酸基を有する樹脂と組み合わせて上の塩基性中和剤を利用すると、約25%〜約500%の中和比、いくつかの実施形態では、約50%〜約300%の中和比を達成してもよい。いくつかの実施形態では、中和比は、塩基性中和剤を用いて与えられる塩基性基と、樹脂中に存在する酸基とのモル比に100%を掛け算して計算されてもよい。
【0028】
上述のように、酸基を有する樹脂に塩基性中和剤を加えてもよい。塩基性中和剤を加え、酸基を含む樹脂を含むエマルションのpHを、約5〜約12、または約6〜約11まで上げてもよい。酸基の中和によって、いくつかの実施形態では、エマルションの形成が促進される場合がある。
【0029】
いくつかの実施形態では、本開示のプロセスは、場合により、ポリエステル樹脂の溶解前または溶解中に界面活性剤を加えることを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ポリエステル樹脂を高温で溶解させる前に、界面活性剤を加えてもよい。利用される場合、樹脂エマルションは、1種類、2種類またはそれより多い界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、イオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤から選択されてもよい。アニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤は、用語「イオン系界面活性剤」に包含される。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、固体として加えられてもよく、または、約5重量%〜約100重量%(純粋な界面活性剤)の濃度で、いくつかの実施形態では、約10重量%〜約95重量%の濃度で溶液として加えられてもよい。いくつかの実施形態では、樹脂の約0.01重量%〜約20重量%、いくつかの実施形態では、樹脂の約0.1重量%〜約16重量%、他の実施形態では、樹脂の約1重量%〜約14重量%の量で存在するように界面活性剤を利用してもよい。
【0030】
上述のように、本発明のプロセスは、1種類より多いポリエステル樹脂を使用してもよい。このようないくつかの実施形態では、処理する前に樹脂をすべて予備混合してもよい。ある実施形態では、混合物樹脂の1つが結晶性樹脂であってもよく、このプロセスで、結晶性樹脂の結晶化温度より高い温度であってもよい高温を使用してもよい。さらなる実施形態では、樹脂は、アモルファス樹脂と結晶性樹脂との混合物であってもよく、溶解に使用する温度は、混合物のガラス転移温度より高い温度であってもよい。他の実施形態では、一連のポリエステル樹脂それぞれを別個にラテックスへと処理してもよく、次いで、個々の調製したラテックスを合わせてもよい。
【0031】
ある実施形態では、中和したポリエステル樹脂を乳化することは、転相が起こり、転相したラテックスエマルションを生成するまで、中和した樹脂の溶液に水を滴下することを含んでいてもよい。ラテックスを蒸留し、ラテックスから有機溶媒、水、または有機溶媒と水の混合物を除去した後に乳化させてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示のプロセスで使用可能な中和剤としては、上述の薬剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、このプロセスで使用される任意要素の界面活性剤は、適切な樹脂の中和が起こり、粗粒子含有量が少なく、高品質のラテックスを確実に生じさせるような任意の界面活性剤であってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、任意の混合の前、混合中、または混合の後に、樹脂組成物の1つ以上の成分に界面活性剤を加えてもよい。いくつかの実施形態では、中和剤を加える前、加えている間、または加えた後に、界面活性剤を加えてもよい。いくつかの実施形態では、中和剤を加える前に界面活性剤を加えてもよい。いくつかの実施形態では、溶解する前に、予備混合した混合物に界面活性剤を加えてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、連続的な転相したエマルションが作られてもよい。転相は、樹脂組成物の溶融成分を含む液滴を含む分散相と、界面活性剤および/または水組成物を含む連続相とを含む転相したエマルションが作られるように、アルカリ水溶液または塩基性薬剤、任意要素の界面活性剤、および/または水組成物を加え続けることによって達成されてもよい。
【0035】
撹拌は、必須ではないが、ラテックスの形成を促進するために利用してもよい。任意の適切な撹拌デバイスを利用してもよい。いくつかの実施形態では、撹拌は、毎分約10回転(rpm)〜約5,000rpm、いくつかの実施形態では、約20rpm〜約2,000rpm、他の実施形態では、約50rpm〜約1,000rpmの速度であってもよい。撹拌は、一定速度である必要はなく、変動してもよい。例えば、混合物の均一さが増すにつれて、撹拌速度を上げてもよい。いくつかの実施形態では、転相したエマルションを作るのにホモジナイザ(すなわち、高剪断力デバイス)を利用してもよいが、他の実施形態では、本開示のプロセスを、ホモジナイザを用いずに行ってもよい。ホモジナイザを利用する場合、ホモジナイザを約3,000rpm〜約10,000rpmの速度で操作してもよい。
【0036】
転相点は、エマルションの成分、加熱温度、撹拌速度などによって変わる場合があるが、塩基性中和剤、任意要素の界面活性剤、および/または水を、得られる樹脂が、エマルションの約5重量%〜約70重量%、またはエマルションの約20重量%〜約65重量%、またはエマルションの約30重量%〜約60重量%の量で存在するように加えると、転相が起こる場合がある。
【0037】
転相させた後、転相したエマルションを希釈するために、さらなる界面活性剤、水、および/またはアルカリ水溶液を場合により加えてもよいが、必須ではない。転相させた後、転相したエマルションを室温まで、熱を使用する場合、例えば、約20℃〜約25℃まで冷却してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、蒸留は、平均直径が、例えば、約50nm〜約500nm、いくつかの実施形態では、約120nm〜約250nmの樹脂エマルション粒子をラテックスとして与えるように行われてもよい。いくつかの実施形態では、次の転相乳化プロセスで使用するために、蒸留物を場合により再利用してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、例えば、本開示のプロセスから得た蒸留物は、イソプロパノール(IPA)および水を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、IPA−水混合物の分離は、塩効果を用いた蒸留と呼ばれるプロセスによって高まる場合がある。このプロセスでは、塩(例えば、塩化ナトリウム)を加え、有機相から水相へと水と抽出し、これによって、有機相中の水の平衡溶解度を下げてもよい。いくつかの実施形態では、減圧蒸留によって溶媒を除去してもよい。
【0040】
水系媒体に乳化したポリエステル樹脂粒子は、粒径がマイクロメートル未満であってもよく、例えば、約1μm以下、いくつかの実施形態では、約500nm以下、例えば、約10nm〜約500nm、または約50nm〜約400nm、または約100nm〜約300nm、または約200nmであってもよい。水と樹脂との比率、中和比率、溶媒濃度、溶媒組成を変えることによって、粒径を調節することができる。本開示のラテックスの粒径分布は、約30nm〜約500nm、または約125nm〜約400nmであってもよい。
【0041】
本開示のラテックスの粗粒子の含有量は、約0.01重量%〜約5重量%、いくつかの実施形態では、約0.1重量%〜約3重量%であってもよい。本開示のラテックスの固形分含有量は、約10重量%〜約50重量%、いくつかの実施形態では、約20重量%〜約40重量%であってもよい。
【0042】
次いで、本開示のエマルションを利用し、トナー粒子を作成するのに適した粒子を製造してもよいが、但し、ラテックスを不安定化するカチオンは、実質的に除去されている。いくつかの実施形態では、ラテックスを不安定化するカチオンは、一価カチオン、二価のカチオン、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、一価カチオンは、リチウム、カリウム、ナトリウム、またはこれらの組み合わせ、すなわち、Li
+1、K
+1、またはNa
+1単独、または任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、二価のカチオンは、スズイオン、鉄イオン、銅イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび亜鉛イオンから選択される。いくつかの実施形態では、ラテックスを不安定化するカチオンは、カリウムイオンとスズイオンの混合物を含む。いくつかの実施形態では、ラテックスを不安定化するカチオンは、少なくとも1つのポリエステル樹脂の不溶性部分に存在していてもよい。他の実施形態では、ラテックスを不安定化するカチオンは、可溶性形態で存在していてもよい。このようないくつかの実施形態では、ラテックスを不安定化するカチオンを除去することは、カチオン交換クロマトグラフィー、イオンを捕捉および/またはキレート化することが可能な試薬(例えば、EDTA)を用いた洗浄、またはカチオンを除去するための当該技術分野で既知の任意の他の技術によって達成されてもよい。ある実施形態では、ラテックスを不安定化するカチオンの除去は、固定化されたキレート化剤、例えば、固定化されたクラウンエーテルを用いたクロマトグラフィーによって達成されてもよい。ある実施形態では、さらなる精製は、サイズ排除クロマトグラフィーによって、クロマトグラフィーで達成されてもよい。ある実施形態では、ラテックスを不安定化するカチオンを酸化、フロック形成、またはこれらの組み合わせによって除去してもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、溶解中に、不溶性部分が生成したら、溶解工程の後に待ち時間を組み込むことが有益であろう。例えば、カーボネート経路のポリエステルを溶解するとき、完全な固体作成が下流のPIE処理で有用になるように、特に、ラテックスを不安定化するカチオンを含む不溶性材料の完全な生成は、明らかな溶解および熟成期間のときに完成しなくてもよいことが観察された。いくつかの実施形態では、待ち(または熟成)時間は、約2時間〜約72時間の範囲であってもよい。ある実施形態では、ラテックスを不安定化するカチオンの実質的にすべてを除去することは、待ち時間の後、濾過、デカンテーション、遠心分離、またはこれらの組み合わせによって、不溶性材料を実質的に除去することを含む。
【0044】
ある実施形態では、カリウムイオン、スズイオン、またはカリウムイオンとスズイオンを両方とも含む少なくとも1つのポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解し、少なくとも1つのポリエステル樹脂の溶液を得ることと、少なくとも1つのポリエステル樹脂の不溶性部分の実質的にすべてを除去することとを含み、不溶性部分が、カリウムイオン、スズイオン、またはカリウムイオンとスズイオンの両方のかなりの部分を含み、少なくとも1つのポリエステル樹脂の不溶性部分が、溶解工程の後の約2時間〜約96時間の待ち時間の後に生成する、プロセスが提供される。このようないくつかの実施形態では、かなりの部分は、カリウムイオン、スズイオン、またはカリウムイオンとスズイオンの両方の約8%〜35%を含む。他のこのような実施形態では、かなりの部分は、カリウムイオン、スズイオン、またはカリウムイオンとスズイオンの両方の約10%〜50%含む。本明細書に開示するポリエステル樹脂をラテックスに変換したら、これらを利用し、当業者の技術の範囲内にある任意のプロセスによってトナーを作成してもよい。ラテックスを、着色剤(場合により分散物である)および他の添加剤と接触させ、適切なプロセスによって、いくつかの実施形態では、乳化凝集および融着プロセスによって、超低融点トナーを作成してもよい。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
この実施例は、有機溶媒にカーボネート経路のポリエステルを溶解するときに生成する不溶性材料の特性決定を示す。
【0046】
以下の実施例では、米国特許第8,257,899号に開示される手順と似た手順で、カーボネート経路によって種々のポリエステル樹脂を調製した。有機溶媒(メチルエチルケトン(MEK)およびイソプロパノール(IPA))にポリエステルを溶解したときに作られる不溶性材料の量および材料中の元素スズの定量を表1に示す。溶媒に溶解しないポリエステル樹脂から誘導される不溶性材料の重量%は、約0.5〜約1重量%まで変動し、大スケールの乳化はかなりの量になり得る。
【表1】
【0047】
誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)による分析を種々の不溶性材料のサンプルで得て、表2に示すような高レベルのカリウムおよびスズを示した。
【表2】
【0048】
表3に示す、種々のカーボネート経路のポリエステル樹脂サンプルの元素分析も、ポリエステル合成中の触媒保持量と良好な相関関係にある。
【表3】
【0049】
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF)による不溶性材料の分析も、主なポリエステル樹脂組成物に関連して短鎖オリゴマー種を含む、例えば、テレフタル酸保護されたプロポキシル化BPAおよびある種のフマル酸と、酸末端とが存在し、過剰なレベルのカリウムおよびスズを配位することを示した。
【0050】
ポリエステルサンプルから4種類の不溶性材料サンプルを抽出し、塩基によってそのモノマー要素に加水分解し、LC/UVによって分析し、モノマーおよびオリゴマーの含有量を概算した。サンプルは、表4に示すように、高濃度のフマル酸塩またはテレフタル酸塩を含んでいた。
【表4】
【0051】
(実施例2)
この実施例は、実施例1から選択した樹脂のためのPIEプロセスに不溶性材料が存在することの影響を示す。
【0052】
Snレベルが異なり、酸価が異なる実施例1からの3種類の樹脂を選択し、転相乳化(PIE)プロセスによってラテックスを調製した。小スケールのPIE実験(少量のラテックス)を行い、まず、それぞれの樹脂について適切な中和比(NR)を得た。3種類の樹脂は、乳化し、望ましい粒径を有するラテックスを製造することができなかった。製造されるラテックスは、粒径の仕様からはずれていたか、または非常に粘性の高いゲル状材料が生成した。結果を表5に示す。
【表5】
【0053】
表5は、種々の中和比および分散状態を用いても、望ましい特性を有する安定なラテックスを達成することができなかったことを示す。不溶性材料を除去したら(濾過またはデカンテーション)、表6に示す結果で示されるように、望ましい粒径を有する安定なラテックスを製造することができた。
【表6】
【0054】
表6に示す実施例で、良好な粒径制御を示し、再現可能なプロセスを達成した。このことは、特に、ラテックスを不安定化するカチオンとしてスズおよびカリウムの負の影響を示す不溶性材料が樹脂乳化プロセスを妨害しないという仮説を確認した。
【0055】
ある程度の不溶性材料を含むカーボネート経路のポリエステル樹脂分散物を使用してトナー粒子を調製すると、得られたA/Cプロセスの母液は、潜在的なラテックスを不安定化するカチオンをコントロールとして含まない経路によって作られるコントロールポリエステルと比較して、強い暗褐色を有していた。
【0056】
自己の不溶性材料に対し、凝集/融着プロセスを行う実験も行った。この実験の目的は、水溶性要素(酸、塩基、EDTA)が、強い褐色を生成することに何らかの影響を有するのか否か、A/Cプロセス中のどの段階で色が発生するのかを決定することであった。この実験は、不溶性材料が、EDTA(Versene)/NaOH溶液存在下、高温(約55℃より高い)で非常に可溶性になり、トナー粒子要素が存在しない状態であっても、褐色の母液の色を生じることを示した。A/Cプロセスから作られた上澄みは、淡褐色であった。
【0057】
理論によって束縛されないが、EDTAは、アルミニウムよりもスズに対して高いキレート化親和性を有すると考えられた。水不溶性材料は、EDTA存在下、高温で可溶性になり、融着プロセス中に着色した上澄みを生成する。色は、融着中、粒子の成長を凍結させる工程の直後、温度を上げ、一連のサンプル全体で長期間にわたって継続するとき、初期段階で発生した。
【0058】
異なるカチオンとのEDTAキレート化の安定性定数は、EDTAが、アルミニウムよりスズに対して高い親和性を有することを示す。EAプロセス中に存在するカチオンとのEDTAの安定性定数(K
MY)は、Na=45.7、Al=1.3×10
16およびSn=2.0×10
18であった。したがって、EDTAは、AlよりもSnとの複合体に対し、約2桁大きな親和性を有し、この複合体化は、温度感受性である。A/Cプロセス全体で採取されるEAサンプルは、EDTAおよびNaOHを加え、粒子を凍結させる工程の後に、融着開始時に温度を上げたとき、その温度は、約58℃に達する必要があり、褐色の母液が生成した。褐色の母液の根本原因を理解した結果として、乳化プロセス中に不溶性材料を除去すると、以下の2つの利点がある。(1)褐色の母液の色が低くなる、(2)もっと堅牢性の高い樹脂乳化プロセスを与える。不溶性材料は、転相乳化の前にデカンテーションまたは濾過のいずれかによって除去することができる。不溶性材料を除去することによって、EDTAと複合体を形成する材料中のスズの利用可能性を下げ、水溶性ラテックスを不安定化するカチオン要素を生成する。
【0059】
比較例のラテックス例:ラテックスを不安定化するカチオンを含まないことが知られているコントロールポリエステル樹脂分散物(コントロール)の調製。容器中で、100グラムのアモルファスポリエステル樹脂を、100グラムのメチルエチルケトン(MEK)と6グラムのイソプロピルアルコール(IPA)との混合溶媒溶液に加えた。この混合物を60℃の水浴中で攪拌し、樹脂を溶解させた。その後、1.75グラムのあらかじめ調製しておいた10%水酸化アンモニウム溶液をこの樹脂溶液に加え、振り混ぜることによって混合しつつ、溶液を室温まで冷却した。187.2グラムの脱イオン水をゆっくりと加えることによって、中和した樹脂溶液の乳化を行った。得られた転相ラテックスは、Nanotrac粒径分析機を用いて測定した場合、平均粒径が118.1nmであった。
【0060】
ラテックス実施例セット1:不溶性材料を除去した、カーボネート経路のポリエステル樹脂分散物のエマルション。容器中で、50グラムのカーボネート経路のアモルファスポリエステル樹脂を、50グラムのメチルエチルケトン(MEK)と5グラムのイソプロピルアルコール(IPA)からなる混合溶媒溶液に加えた。この混合物を60℃の水浴中で攪拌し、樹脂を溶解させた。それぞれ50gのカーボネート経路のポリエステル樹脂を使用する他のカーボネート経路のポリエステル樹脂の2種類の異なるバッチで同じ樹脂溶液調製プロセスを行った。この溶液を12時間放置し、不溶性材料を沈殿させ、次いで、それぞれの樹脂を含む可溶性樹脂溶液をきれいな500mLプラスチック瓶に移し、次いで、それぞれの樹脂について表6に列挙した中和比を用いて決定された量の10%水酸化アンモニウムを加えた。それぞれの溶液を完全に混合し、手で振り混ぜながら脱イオン水(DIW)をゆっくりと加えることによって乳化した。粒径を測定し、表6に示すように、109.9〜177nmの望ましい粒径範囲内であることがわかった。樹脂を2回乳化させ、それぞれの樹脂について、再現性を示すために2つの異なるラテックスバッチを製造した。
【0061】
ラテックス実施例セット2:不溶性材料を含むカーボネート経路のポリエステル樹脂溶液のためのエマルションの調製。容器中で、50グラムのカーボネート経路のアモルファスポリエステル樹脂を、50グラムのMEKと5グラムのIPAからなる混合溶媒溶液に加えた。この混合物を60℃の水浴中で攪拌し、樹脂を溶解させた。2つのさらなるカーボネート経路のポリエステル樹脂バッチについても、同じ樹脂溶液調製プロセスを行った。不溶性材料の分離は行わなかった。樹脂溶液に、10%水酸化アンモニウム溶液を加え、この量は、それぞれの樹脂について表5に列挙した中和比を用いて決定された。それぞれの溶液を十分に混合し、手で溶液を振り混ぜながら脱イオン水をゆっくりと加えることによって乳化した。粒径を測定し、非常に変動しており、望ましい粒径仕様範囲からはずれていることがわかった。この値は、表5に示すように、樹脂の3種類の異なるバッチについて、89nm〜238nmの範囲であった。6種類のラテックスのうち、5つが非常に粘性のゲル状材料を生じ、表5に示すように安定なラテックスではなかった。このことは、乳化プロセス前に不溶性材料を除去しない結果の証拠を与えている。
【0062】
(実施例3−トナー粒子の調製)
比較例のトナー粒子例:トナーA/Cプロセス。2リットルのガラス反応器にオーバーヘッドミキサーを取り付け、これに98.88gの低分子量アモルファス非カーボネート経路ポリエステル樹脂エマルション(35.91重量%)、102.84gの高分子量アモルファス非カーボネート経路ポリエステル樹脂エマルション(35.22重量%)、27.47gの結晶性非カーボネート経路ポリエステル樹脂エマルション(35.36重量%)、42.78gのIGIワックス分散物(30.19重量%)および50.53gのシアン顔料PB15:3(16.61重量%)を加えた。別個に、ホモジナイゼーションしつつ、2.51gのAl
2(SO
4)
3(27.85重量%)を凝集剤として加えた。この混合物を40℃まで加熱し、200rpmの回転数で攪拌しつつ、粒子を凝集させた。コア粒子が、約4.49ミクロンの体積平均粒径、顆粒の粒度分布(GSD)の体積が1.21、GSD値が1.26に達するまで、Coulter Counterを用いて粒径を監視し、次いで、54.61gおよび56.79gの上述のポリエステル樹脂エマルションの混合物をシェル材料として加え、平均粒径が5.77ミクロン、GSD体積が1.18、GSD値が1.20のコア−シェル構造の粒子を得た。その後、反応スラリーのpHを、4重量%のNaOH溶液を用いて4.2まで上げ、次いで、5.38gのVerseneを加え、トナー粒子の成長を凍結させた。凍結させた後、pHを7.8より大きい値に維持しつつ、反応混合物を85℃まで加熱した。トナー粒子は、平均粒径が5.95ミクロン、GSD体積が1.20、GSD値が1.22であった。反応温度を85℃で約10分間維持した後、融着のために、pH5.7酢酸/酢酸ナトリウム(AcOH/NaOAc)バッファー溶液を用い、80分かけてpHを7.2まで段階的に下げた。融着の後にトナーをクエンチし、最終粒径6.02ミクロン、GSD体積1.21、GSD値1.27を得た。次いで、トナースラリーを室温まで冷却し、ふるい分け(25mm)によって分離し、濾過し、その後、洗浄し、凍結乾燥させた。最終的な粒子の真円度は0.957である。母液溶液の色は、遊離した顔料がトナー粒子に完全には包含されていないため、わずかにシアン色であった。
【0063】
トナー粒子の実施例1:不溶性材料を含む、カーボネート経路のポリエステルラテックスからのトナー粒子。2リットルのガラス反応器にオーバーヘッドミキサーを取り付け、これに80.86gの低分子量アモルファスカーボネート経路ポリエステル樹脂エマルション(43.9重量%)、102.81gの高分子量非カーボネート経路ポリエステルアモルファス樹脂エマルション(35.22重量%)、27.21gの結晶性非カーボネート経路ポリエステル樹脂エマルション(35.6重量%)、42.78gのIGIワックス分散物(30.19重量%)および48.18gのシアン顔料PB15:3(17.42重量%)を加えた。別個に、ホモジナイゼーションしつつ、2.51gのAl
2(SO
4)
3(27.85重量%)を凝集剤として加えた。この混合物を40℃まで加熱し、200rpmの回転数で攪拌しつつ、粒子を凝集させた。コア粒子が、約4.53ミクロンの体積平均粒径、GSD体積が1.23、GSD値が1.31に達するまで、Coulter Counterを用いて粒径を監視し、次いで、44.64gおよび56.76gの上述のカーボネート経路樹脂エマルションと非カーボネート経路樹脂エマルションの混合物をシェル材料として加え、平均粒径が5.03ミクロン、GSD体積が1.20、GSD値が1.23のコア−シェル構造の粒子を得た。その後、反応スラリーのpHを、4重量%のNaOH溶液を用いて4.6まで上げ、次いで、5.38gのVerseneを加え、トナー粒子の成長を凍結させた。凍結させた後、pHを7.8より大きい値に維持しつつ、反応混合物を85℃まで加熱した。トナー粒子は、平均粒径が6.34ミクロン、GSD体積が1.22、GSD値が1.32であった。反応温度を85℃で約10分間維持した後、融着のために、pH5.7酢酸/酢酸ナトリウム(AcOH/NaOAc)バッファー溶液を用い、80分かけてpHを7.2まで段階的に下げた。融着の後にトナーをクエンチし、最終粒径6.89ミクロン、GSD体積1.25、GSD値1.32を得た。GSDvおよびGSDnは広すぎ、このトナー設計の仕様からはずれていた。次いで、トナースラリーを室温まで冷却し、ふるい分け(25mm)によって分離し、濾過し、その後、洗浄し、凍結乾燥させた。母液溶液の色は、透明であったが、非常に暗い褐色であった。
【0064】
トナー粒子の実施例2:不溶性材料を除去した、カーボネート経路ポリエステルラテックスからのトナー粒子。2リットルのガラス反応器にオーバーヘッドミキサーを取り付け、これに79.91gの低分子量アモルファスカーボネート経路ポリエステル樹脂エマルション(45.32重量%)、102.84gの高分子量アモルファス非カーボネート経路ポリエステル樹脂エマルション(35.22重量%)、27.47gの結晶性非カーボネート経路ポリエステル樹脂エマルション(35.36重量%)、42.78gのIGIワックス分散物(30.19重量%)および50.53gのシアン顔料PB15:3(16.61重量%)を加えた。別個に、ホモジナイゼーションしつつ、2.51gのAl
2(SO
4)
3(27.85重量%)を凝集剤として加えた。この混合物を40℃まで加熱し、200rpmの回転数で攪拌しつつ、粒子を凝集させた。コア粒子が、約4.39ミクロンの体積平均粒径、GSD体積が1.22、GSD値が1.27に達するまで、Coulter Counterを用いて粒径を監視し、次いで、44.14gおよび56.79gの上述のカーボネート経路樹脂エマルションと非カーボネート経路樹脂エマルションの混合物をシェル材料として加え、平均粒径が4.78ミクロン、GSD体積が1.22、GSD値が1.32のコア−シェル構造の粒子が得られた。その後、反応スラリーのpHを、4重量%のNaOH溶液を用いて4.2まで上げ、次いで、5.38gのVerseneを加え、トナー粒子の成長を凍結させた。凍結させた後、pHを7.8より大きい値に維持しつつ、反応混合物を85℃まで加熱した。トナー粒子は、平均粒径が5.83ミクロン、GSD体積が1.20、GSD値が1.25であった。反応温度を85℃で約10分間維持した後、融着のために、pH5.7酢酸/酢酸ナトリウム(AcOH/NaOAc)バッファー溶液を用い、80分かけてpHを7.2まで段階的に下げた。融着の後にトナーをクエンチし、最終粒径6.08ミクロン、GSD体積1.23、GSD値1.32を得た。次いで、トナースラリーを室温まで冷却し、ふるい分け(25mm)によって分離し、濾過し、その後、洗浄し、凍結乾燥させた。最終的な粒子の真円度は0.954である。母液の色は、樹脂乳化プロセス中に不溶性材料を除去した後、かなりの色の低減が示された。