(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0014】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
(実施の形態1)
《中継システム(前提)の概略構成および概略動作》
図1は、本発明の実施の形態1による中継システムにおいて、その前提となる構成例を示す概略図である。
図1に示す中継システムは、リングネットワーク10を構成する複数(ここでは5個)のスイッチ装置(中継装置)SWa〜SWeを備える。スイッチ装置SWa〜SWeのそれぞれは、2個のリングポート(第1および第2ポート)Pr[1],Pr[2]と、m個(mは1以上の整数)のユーザポートPu[1]〜Pu[m]と、を持つ。この例では、リングネットワーク10を構成するスイッチ装置の数は、5個とするが、これに限らず2個以上であればよい。
【0017】
リングネットワーク10は、例えば、ITU−T G.8032に規定されたリングプロトコルに基づき制御される。言い換えれば、スイッチ装置SWa〜SWeのそれぞれは、当該リングプロトコルに基づく各種制御機能を備える。スイッチ装置SWa〜SWeのそれぞれは、OSI参照モデルのレイヤ2(L2)の中継処理を行うL2スイッチや、加えて、レイヤ3(L3)の中継処理を行うL3スイッチ等である。ただし、リングネットワーク10上の中継処理は、L2に基づいて行われるため、ここでは、スイッチ装置SWa〜SWeのそれぞれは、L2スイッチである場合を例とする。
【0018】
2個のリングポートPr[1],Pr[2]は、それぞれリングネットワーク10に接続される。言い換えれば、スイッチ装置SWa〜SWeのそれぞれは、リングポートPr[1],Pr[2]を介してリング状に接続され、これによってリングネットワーク10が形成される。
図1の例では、スイッチ装置SWa,SWb,SWc,SWd,SWeのリングポート(第1ポート)Pr[1]は、それぞれ、通信回線を介して、隣接するスイッチ装置SWb,SWc,SWd,SWe,SWaのリングポート(第2ポート)Pr[2]に接続される。
【0019】
ユーザポートPu[1]〜Pu[m]は、所定のユーザ網に接続される。
図1の例では、スイッチ装置SWa〜SWeのユーザポートPu[1]〜Pu[m]は、それぞれ、ユーザ網11a〜11eに接続される。ユーザ網11a〜11eのそれぞれの中には、スイッチ装置や各種情報処理装置(サーバ装置や端末装置等)などが適宜配置される。
【0020】
ここで、ITU−T G.8032に基づき、スイッチ装置SWaは、オーナーノードに設定され、スイッチ装置SWbは、ネイバーノードに設定される。オーナーノードとネイバーノードとの間のリンクは、RPL(Ring Protection Link)と呼ばれる。リングネットワーク10上に障害が無い場合、スイッチ装置SWaは、RPLの一端に位置するリングポートPr[1]をブロック状態BKに制御し、スイッチ装置SWbは、RPLの他端に位置するリングポートPr[2]をブロック状態BKに制御する。ブロック状態BKに制御されたポートは、フレームの通過を禁止する。
【0021】
リングネットワーク10上に障害が無い場合、このRPLによって、リングネットワーク10上での通信経路のループが防止される。すなわち、
図1に示すように、スイッチ装置SWaとスイッチ装置SWbとの間で、スイッチ装置SWe,SWd,SWcを介する通信経路12が形成される。ユーザ網11a〜11e間のフレーム転送は、この通信経路12上で行われる。
【0022】
《中継システム(前提)の問題点》
図15は、
図1の中継システムにおいて、本実施の形態の比較例となる障害監視方法の一例を示す概略図である。
図15に示すように、スイッチ装置SWa〜SWeは、それぞれ、リングポート(第1ポート)Pr[1]に対応して監視ポイントMEPa1’〜MEPe1’を備え、リングポート(第2ポート)Pr[2]に対応して監視ポイントMEPa2’〜MEPe2’を備える。
【0023】
ここで、ITU−T G.8032では、スイッチ装置間のリンクの障害有無を監視するため、イーサネットOAMのCC(Continuity Check)機能を用いることが規定されている。イーサネットOAMは、装置間の疎通性を監視するための規格として、「ITU−T Y.1731」や「IEEE802.1ag」等で標準化されている。CC機能では、
図15に示すように、MEP(Maintenance End Point)と呼ばれる監視ポイントによって監視区間が設定される。各監視区間の両端のMEPは、疎通性監視フレームであるCCM(Continuity Check Message)フレームを互いに定期的に送受信することで、各監視区間の疎通性を監視する。
【0024】
図15の例では、スイッチ装置SWaの監視ポイントMEPa1’は、他装置(SWb)の監視ポイントMEPb2’との間でCCM監視区間15abを設定し、これにより、自装置の第1ポートPr[1]と、それに接続される他装置(SWb)の第2ポートPr[2]と、の間の疎通性を監視する。その反対に、スイッチ装置SWbの監視ポイントMEPb2’も、他装置(SWa)の監視ポイントMEPa1’との間でCCM監視区間15abを設定し、これにより、自装置の第2ポートPr[2]と、それに接続される他装置(SWa)の第1ポートPr[1]と、の間の疎通性を監視する。
【0025】
これと同様にして、リングネットワーク10上に、順次、CCM監視区間が設定される。すなわち、スイッチ装置SWbの第1ポートPr[1](MEPb1’)とスイッチ装置SWcの第2ポートPr[2](MEPc2’)との間でCCM監視区間15bcが設定される。スイッチ装置SWcの第1ポートPr[1](MEPc1’)とスイッチ装置SWdの第2ポートPr[2](MEPd2’)との間でCCM監視区間15cdが設定される。スイッチ装置SWdの第1ポートPr[1](MEPd1’)とスイッチ装置SWeの第2ポートPr[2](MEPe2’)との間でCCM監視区間15deが設定される。そして、スイッチ装置SWeの第1ポートPr[1](MEPe1’)とスイッチ装置SWaの第2ポートPr[2](MEPa2’)との間でCCM監視区間15aeが設定される。
【0026】
各CCM監視区間(例えば15ab)において、一端の監視ポイント(MEPa1’)は、他端の監視ポイント(MEPb2’)からのCCMフレームを所定の期間内に受信しない場合、他端の監視ポイント(MEPb2’)に対する疎通性をLOC(Loss Of Continuity)状態と認識する。当該所定の期間は、例えば、CCMフレームの送信間隔(代表的には3.3ms)の3.5倍の期間である。この場合、一端の監視ポイント(MEPa1’)は、他端の監視ポイント(MEPb2’)に向けてCCMフレームを送信する際に、当該CCMフレームに含まれるRDI(Remote Defect Indication)ビットにフラグを立てた状態で送信する。
【0027】
他端の監視ポイント(MEPb2’)は、一端の監視ポイント(MEPa1’)からRDIビットにフラグが立てられたCCMフレームを受信することで、一端の監視ポイント(MEPa1’)に対する疎通性をRDI状態と認識する。すなわち、所定の監視ポイントに対してLOC状態とは、当該所定の監視ポイントからの受信経路が疎通性無しであることを意味し、所定の監視ポイントに対してRDI状態とは、当該所定の監視ポイントに向けた送信経路が疎通性無しであることを意味する。なお、本明細書では、RDIビットにフラグが立てられたCCMフレームをRDIフレームと呼び、RDIビットにフラグが立てられていないCCMフレームをCCフレームと呼び、RDIフレームとCCフレームを総称してCCMフレームと呼ぶ。
【0028】
スイッチ装置SWa〜SWeのそれぞれは、自装置の監視ポイント(MEP)におけるLOC状態またはRDI状態の認識有無に基づいて、自装置のリングポートPr[1],Pr[2]に接続されるリンクの障害有無を判定する。例えば、スイッチ装置SWeは、監視ポイントMEPe2’がLOC状態を認識している場合、リングポートPr[2]に接続されるリンクを障害有りと判定し、スイッチ装置SWdは、監視ポイントMEPd1’がRDI状態を認識している場合、リングポートPr[1]に接続されるリンクを障害有りと判定する。ただし、リンクの障害有無の判定基準にRDI状態が含まれない場合もあり、この場合には、スイッチ装置SWeのみがリンクを障害有りと判定する。
【0029】
図16は、
図1および
図15の中継システムにおける問題点の一例を示す概略図である。
図16の例では、スイッチ装置SWdにおいて、リングポートPr[1],Pr[2]間の装置内部の中継経路に障害が生じている。ただし、このような障害は、
図2に示したスイッチ装置SWdの監視ポイントMEPd1’,MEPd2’に影響を及ぼさない場合がある。この場合、当該監視ポイントMEPd1’,MEPd2’は、CCフレームの送信を継続する。
【0030】
そうすると、残りの各スイッチ装置SWa,SWb,SWc,SWeは、当該スイッチ装置SWdの障害を認識できず、ITU−T G.8032に基づく経路切り替えを行わない。その結果、各ユーザ網11a,11b,11c,11e間のフレーム転送は、
図1の場合と同様の通信経路12上で行われる。そうすると、例えば、ユーザ網11eからユーザ網11cに向けたフレームは、スイッチ装置SWdで遮断され、損失することになる。
【0031】
《中継システム(本実施の形態)の概略》
図2は、
図1の中継システムにおいて、本実施の形態1による障害監視方法の一例を示す概略図である。
図3は、
図2の中継システムにおいて、その一部の構成例および動作例を示す概略図である。
図2の中継システムにおいて、複数のスイッチ装置(中継装置)SWa〜SWeのそれぞれは、
図15と同様の監視ポイント(第2監視ポイント)MEPa2〜MEPe2と、
図15とは異なる監視ポイント(第1監視ポイント)MEPa1〜MEPe1と、を備える。監視ポイント(第2監視ポイント)MEPa2〜MEPe2は、DownMEP等と呼ばれ、監視ポイント(第1監視ポイント)MEPa1〜MEPe1はUpMEP等と呼ばれる。
【0032】
図3には、
図2におけるスイッチ装置SWc,SWd,SWeの部分が抽出して示されている。スイッチ装置SWc,SWd,SWeのそれぞれは、リングポート(第1ポート)Pr[1]とリングポート(第2ポート)Pr[2]との間でフレームを中継する中継経路20を備える。スイッチ装置SWcの第1監視ポイントMEPc1および第2監視ポイントMEPc2は、自装置の中継経路20のリングポート(第2ポート)Pr[2]側に設けられる。同様に、スイッチ装置SWdの各監視ポイントMEPd1,MEPd2は、自装置の中継経路20の第2ポートPr[2]側に設けられ、スイッチ装置SWeの各監視ポイントMEPe1,MEPe2は、自装置の中継経路20の第2ポートPr[2]側に設けられる。
【0033】
ここで、例えば、スイッチ装置SWdの第1監視ポイントMEPd1は、自装置の中継経路20を介した他装置(SWe)の第2監視ポイントMEPe2との間の疎通性を、CCMフレームを用いて監視する。スイッチ装置SWdの第2監視ポイントMEPd2は、他装置(SWc)の中継経路20を介した当該他装置の第1監視ポイントMEPc1との間の疎通性を、CCMフレームを用いて監視する。
【0034】
同様に、スイッチ装置SWcの第1監視ポイントMEPc1は、自装置の中継経路20を介した他装置(SWd)の第2監視ポイントMEPd2との間の疎通性を、CCMフレームを用いて監視する。スイッチ装置SWcの第2監視ポイントMEPc2は、
図2を参照して、他装置(SWb)の中継経路20を介した当該他装置の第1監視ポイントMEPb1との間の疎通性を、CCMフレームを用いて監視する。その他のスイッチ装置SWa,SWb,SWeに関しても同様である。
【0035】
その結果、
図2および
図3に示されるように、
図15の場合とは異なるCCM監視区間が設定される。すなわち、スイッチ装置SWaの第2ポートPr[2](第1監視ポイントMEPa1)とスイッチ装置SWbの第2ポートPr[2](第2監視ポイントMEPb2)との間でCCM監視区間21abが設定される。スイッチ装置SWbの第2ポートPr[2](MEPb1)とスイッチ装置SWcの第2ポートPr[2](MEPc2)との間でCCM監視区間21bcが設定される。
【0036】
同様に、スイッチ装置SWcの第2ポートPr[2](第1監視ポイントMEPc1)とスイッチ装置SWdの第2ポートPr[2](第2監視ポイントMEPd2)との間でCCM監視区間21cdが設定される。スイッチ装置SWdの第2ポートPr[2](MEPd1)とスイッチ装置SWeの第2ポートPr[2](MEPe2)との間でCCM監視区間21deが設定される。そして、スイッチ装置SWeの第2ポートPr[2](MEPe1)とスイッチ装置SWaの第2ポートPr[2](MEPa2)との間でCCM監視区間21aeが設定される。
【0037】
ここで、
図3の例では、スイッチ装置SWdの中継経路20に障害が生じている。この場合、スイッチ装置SWdの第1監視ポイントMEPd1およびスイッチ装置SWeの第2監視ポイントMEPe2の少なくも一方(例えばMEPd1)は、他方(MEPe2)からのCCMフレームを所定の期間内に受信せず、他方の監視ポイントに対する疎通性をLOC状態として認識する。この場合、他方の監視ポイント(MEPe2)は、前述した一方の監視ポイント(MEPd1)からのRDIフレームに基づき、一方の監視ポイントに対する疎通性をRDI状態として認識する。なお、中継経路20の障害状況によっては、両方の監視ポイント(MEPd1,MEPe2)が共にLOC状態を認識することもある。
【0038】
スイッチ装置SWd(その中の図示しないリング制御部)は、第1監視ポイントMEPd1での監視結果が疎通性無し(すなわちLOC状態またはRDI状態)の場合、リンクの障害(SF)を検出する。この場合、スイッチ装置SWd(リング制御部)は、第1ポートPr[1]を、フレームの通過を禁止するブロック状態BKに制御し、第2ポートPr[2]からR−APS(SF)フレームを送信する。ここで、R−APS(SF)フレームは、障害通知フレームとして機能する。SFは、信号故障(Signal Fail)を表す。R−APSフレームは、イーサネットOAMに基づく制御フレームの一種であり、フレーム内のOpCode領域の情報等によって認識される。
【0039】
同様に、スイッチ装置SWe(その中の図示しないリング制御部)は、第2監視ポイントMEPe2での監視結果が疎通性無し(すなわちLOC状態またはRDI状態)の場合、リンクの障害(SF)を検出する。この場合、スイッチ装置SWe(リング制御部)は、第2ポートPr[2]をブロック状態BKに制御し、第1ポートPr[1]からR−APS(SF)フレームを送信する。
【0040】
なお、図示は省略するが、実際には、スイッチ装置SWdは、ブロック状態BKに制御した第1ポートPr[1]からもR−APS(SF)フレームを送信する。ただし、当該R−APS(SF)フレームは、スイッチ装置SWeのブロック状態BKの第2ポートPr[2]でブロックされる。同様に、スイッチ装置SWeは、ブロック状態BKに制御した第2ポートPr[2]からもR−APS(SF)フレームを送信する。ただし、当該R−APS(SF)フレームは、スイッチ装置SWdのブロック状態BKの第1ポートPr[1]でブロックされる。
【0041】
《中継システム(本実施の形態)の障害有り時の動作》
図4は、
図2および
図3の中継システムにおいて、
図3に示した装置内部の障害が生じた場合の概略的な動作シーケンスの一例を示す図である。
図4では、まず、オーナーノードであるスイッチ装置SWaのリングポートPr[1]、およびネイバーノードであるスイッチ装置SWbのリングポートPr[2]は、共に、ブロック状態BKに制御されている。この状態で、
図3に示したように、スイッチ装置SWdは、UpMEPである第1監視ポイントMEPd1から疎通性無しの監視結果を得る(ステップS101)。
【0042】
ステップS101により、スイッチ装置SWdは、第1監視ポイントMEPd1での監視結果に基づく装置内部の障害を、擬似的に、リングポートPr[1]に接続されるリンクの障害(SF)として検出する。これに応じて、スイッチ装置SWdは、当該リングポートPr[1]をブロック状態BKに制御し、アドレステーブル(FDB(Forwarding DataBase))をフラッシュ(消去)する(ステップS102)。同様に、スイッチ装置SWeも、スイッチ装置SWdの内部障害を、擬似的に、リングポートPr[2]に接続されるリンクの障害(SF)として検出する。これに応じて、スイッチ装置SWeは、当該リングポートPr[2]をブロック状態BKに制御し、アドレステーブル(FDB)をフラッシュ(消去)する(ステップS102)。
【0043】
次いで、障害(SF)を検出したスイッチ装置SWdは、ブロック状態BKに制御したリングポートの情報を含むR−APS(SF)フレームをリングネットワーク10上に送信する(ステップS103)。ブロック状態BKに制御したリングポートの情報は、スイッチ装置SWdの識別子{SWd}と、リングポートPr[1]の識別子{Pr[1]}とを含む。このように、本明細書では、例えば{AA}は、「AA」の識別子を表すものとする。同様に、スイッチ装置SWeも、ブロック状態BKに制御したリングポートの情報({SWe}/{Pr[2]})を含むR−APS(SF)フレームをリングネットワーク10上に送信する(ステップS103)。
【0044】
スイッチ装置SWd,SWeによって送信されたR−APS(SF)フレームは、ブロック状態BKのリングポートに到達するまで、各スイッチ装置によって中継される。ここで、スイッチ装置SWcは、R−APS(SF)フレームを受信した場合、アドレステーブル(FDB)をフラッシュ(消去)する(ステップS104)。また、オーナーノードであるスイッチ装置SWaは、R−APS(SF)フレームを受信した場合、リングポートPr[1]のブロック状態BKを解除し(すなわち開放状態に変更し)、アドレステーブル(FDB)をフラッシュ(消去)する(ステップS105)。
【0045】
同様に、ネイバーノードであるスイッチ装置SWbも、R−APS(SF)フレームを受信した場合、リングポートPr[2]のブロック状態BKを解除し(すなわち開放状態に変更し)、アドレステーブル(FDB)をフラッシュ(消去)する(ステップS105)。その後は、スイッチ装置SWd,SWeによってR−APS(SF)フレームが定期的に送信され、定常状態に達する(ステップS106)。
【0046】
図5は、
図4の動作によってリングネットワークの経路切り替えが行われた後の、フレーム転送経路を示す図である。
図4の動作が実行され、定常状態(ステップS106)に達した際には、
図5に示すように、スイッチ装置SWeとスイッチ装置SWdとの間で、スイッチ装置SWa,SWb,SWcを介する通信経路25が形成される。ユーザ網11a〜11e間のフレーム転送は、この通信経路25上で行われる。その結果、例えば、ユーザ網11eからユーザ網11cに向けたフレームは、
図16の場合と異なり、通信経路25を介して、損失することなくユーザ網11cに到達する。
【0047】
《中継システム(本実施の形態)の障害回復時の動作》
図6は、
図2および
図3の中継システムにおいて、
図3に示した装置内部の障害が回復した場合の概略的な動作シーケンスの一例を示す図である。
図6では、
図4および
図5に示したように、まず、スイッチ装置SWdのリングポートPr[1]、およびスイッチ装置SWeのリングポートPr[2]は、共に、ブロック状態BKに制御されている。この状態で、スイッチ装置SWdは、UpMEPである第1監視ポイントMEPd1から疎通性有りの監視結果を得る(ステップS201)。
【0048】
ステップS201により、スイッチ装置SWdは、第1監視ポイントMEPd1での監視結果に基づく装置内部の障害回復を、擬似的に、リングポートPr[1]に接続されるリンクの障害回復として検出する(ステップS202)。同様に、スイッチ装置SWeも、第2監視ポイントMEPe2での監視結果に基づくスイッチ装置SWdの装置内部の障害回復を、擬似的に、リングポートPr[2]に接続されるリンクの障害回復として検出する(ステップS202)。
【0049】
スイッチ装置SWdは、障害回復を検出した場合、両リングポートPr[1],Pr[2]から、ブロック状態BKに制御しているリングポートの情報({SWd}/{Pr[1]})を含むR−APS(NR)フレームを送信する(ステップS203)。ここで、R−APS(NR)フレームは、障害回復通知フレームとして機能する。NRは、要求無し(No Request)を表す。同様に、スイッチ装置SWeは、障害回復を検出した場合、両リングポートPr[1],Pr[2]から、ブロック状態BKに制御しているリングポートの情報({SWe}/{Pr[2]})を含むR−APS(NR)フレームを送信する(ステップS203)。
【0050】
スイッチ装置SWd,SWeによって送信されたR−APS(NR)フレームは、ブロック状態BKのリングポートに到達するまで、各スイッチ装置によって中継される。ここで、オーナーノードであるスイッチ装置SWaは、R−APS(NR)フレームを受信した場合、WTR(Wait to Restore)タイマを起動する。スイッチ装置SWaは、WTRタイマの期間内で新たな要求を受信しない場合、リングポートPr[1]をブロック状態BKに制御し、アドレステーブル(FDB)をフラッシュ(消去)する(ステップS204)。
【0051】
その後、スイッチ装置SWaは、ブロック状態BKに制御しているリングポートの情報({SWa}/{Pr[1]})を含むR−APS(NR,RB)フレームをリングネットワーク10上に送信する(ステップS205)。ここで、R−APS(NR,RB)フレームは、障害切戻しフレームとして機能する。RBは、RPLの閉塞(RPL Blocked)を表す。スイッチ装置SWaによって送信されたR−APS(NR,RB)フレームは、ブロック状態BKのリングポートに到達するまで、各スイッチ装置によって中継される。
【0052】
ここで、ネイバーノードであるスイッチ装置SWbは、R−APS(NR,RB)フレームを受信した場合、リングポートPr[2]をブロック状態BKに制御し、アドレステーブル(FDB)をフラッシュ(消去)する(ステップS206)。また、スイッチ装置SWcは、R−APS(NR,RB)フレームを受信した場合、アドレステーブル(FDB)をフラッシュ(消去)する(ステップS207)。
【0053】
さらに、スイッチ装置SWdは、R−APS(NR,RB)フレームを受信した場合、リングポートPr[1]のブロック状態BKを解除し、アドレステーブル(FDB)をフラッシュ(消去)する(ステップS208)。同様に、スイッチ装置SWeは、R−APS(NR,RB)フレームを受信した場合、リングポートPr[2]のブロック状態BKを解除し、アドレステーブル(FDB)をフラッシュ(消去)する(ステップS208)。
【0054】
その後は、スイッチ装置SWaによってR−APS(NR,RB)フレームが定期的に送信され、定常状態に達する(ステップS209)。その結果、
図1に示したような状態に戻る。なお、R−APSフレームは、新たに送信される場合、例えば、3.3ms毎に3回送信され、その後は、5s毎に送信される。
【0055】
以上のように、
図2および
図3等の中継システムおよび中継装置(スイッチ装置)を用いることで、中継装置の内部障害に応じて、リングネットワーク内の通信経路を適切に切り替えることが可能になる。その結果、フレームの損失を防止すること等が可能になる。このような効果は、特に、ITU−T G.8032に規定されたリングプロトコルを用いる場合に有益となる。なお、
図3および
図4では、スイッチ装置SWdに内部障害が生じた場合を例としたが、
図2のその他のスイッチ装置SWa,SWb,SWc,SWeに内部障害が生じた場合も同様に、対応する第1および第2監視ポイントによって当該内部障害が検出され、リングネットワーク内の通信経路が切り替えられる。
【0056】
《中継装置(本実施の形態)の構成》
図7は、
図2および
図3の中継システムにおいて、そのスイッチ装置(中継装置)の構成例を示す概略図である。
図7に示すスイッチ装置(中継装置)SWは、ここでは、1個の筐体内に複数のカードを搭載したシャーシ型のスイッチ装置となっている。当該スイッチ装置SWは、例えば、
図3のスイッチ装置SWdに該当するが、これに限らず、
図2のその他のスイッチ装置SWa,SWb,SWc,SWeであってもよい。
【0057】
図7のスイッチ装置(中継装置)SWは、複数(ここではn枚)のラインカードLC[1]〜LC[n]と、管理カードMCと、ファブリック経路部26と、を備える。ラインカードLC[1]〜LC[n]のそれぞれは、装置外部との間でフレームの通信(送信および受信)を行う。ファブリック経路部26は、複数のラインカードLC[1]〜LC[n]間でフレームを中継する。また、ファブリック経路部26は、ここでは、複数のラインカードLC[1]〜LC[n]と、管理カードMCと、の間でもフレームを中継する。
【0058】
管理カードMCは、例えばn枚のラインカードLC[1]〜LC[n]等を管理する。管理カードMCは、ここでは、1枚のみ示されているが、実際には、可用性の向上のため複数枚設けられる。ラインカードLC[1]〜LC[n]のそれぞれは、単数または複数の外部ポートPと、ファブリック用端子FPと、管理カード用端子MPと、を備える。外部ポートPのそれぞれは、
図1のリングポートPr[1],Pr[2]やユーザポートPu[1]〜Pu[m]のいずれかに該当し、例えば、イーサネット回線等の通信回線27に接続される。管理カード用端子MPは、管理用の通信回線28を介して管理カードMCに接続される。
【0059】
ファブリック用端子FPは、ファブリック経路部26に接続され、ファブリック経路部26を介して他のラインカード(および管理カード)のファブリック用端子FPに接続される。ここで、ファブリック経路部26は、例えば、スイッチング機能を備えたファブリックカードで構成される場合や、各カードを着脱するためのスロットが実装された配線基板(バックプレーン)で構成される場合がある。
【0060】
ファブリックカードで構成される場合、ファブリック用端子FPは、ファブリックカードに接続され、ファブリックカードによるスイッチングを介して他のラインカードのファブリック用端子FPに接続される。バックプレーンで構成される場合、ファブリック用端子FPは、複数の端子で構成され、この複数の端子が、それぞれ、バックプレーン上に設けられたフルメッシュ型の通信回線を介して、他のラインカード(および管理カード)の対応する端子に接続される。
【0061】
図8は、
図7の中継装置において、その各ラインカードの構成例を示すブロック図である。
図8では、説明の便宜上、一つのラインカードLC上に、外部ポートPとして、k個のユーザポートPu[1]〜Pu[k]と、1個のリングポートPr[1]とが搭載される場合を例とする。ただし、実際には、リングポートPr[1],Pr[2]およびユーザポートPu[1]〜Pu[m]のそれぞれを各ラインカードLC[1]〜LC[n]のいずれに搭載するかは、自由に定められる。
【0062】
図8において、外部インタフェース部30は、ユーザポートPu[1]〜Pu[k]およびリングポートPr[1]のいずれかでフレームを受信した際に、受信したラインカードおよび外部ポートを示すポート識別子(受信ポート識別子と呼ぶ)を付加し、それをフレーム処理部31またはプロセッサ部CPUに送信する。また、外部インタフェース部30は、フレーム処理部31またはプロセッサ部CPUからのフレームを、後述する宛先ポート識別子に基づきユーザポートPu[1]〜Pu[k]およびリングポートPr[1]のいずれかに送信する。
【0063】
内部インタフェース部32は、フレーム処理部31またはプロセッサ部CPUと、ファブリック用端子FPと、の間のフレームの通信を制御する。アドレステーブルFDBは、ポート識別子と、当該ポート識別子で示される、ラインカードおよび外部ポートの先に存在する端末等のMAC(Media Access Control)アドレスと、当該MACアドレスに対応するVLAN(Virtual LAN)識別子(VID)と、の対応関係を保持する。フレーム処理部31は、FDB処理部34と、VIDフィルタ35と、OAM処理部36と、を備える。
【0064】
FDB処理部34は、ユーザポートPu[1]〜Pu[k]およびリングポートPr[1]のいずれかでフレーム(例えばユーザフレーム)を受信した際に、アドレステーブルFDBの学習と、アドレステーブルFDBに基づく当該フレームの宛先検索を行う。具体的には、FDB処理部34は、ユーザフレームを外部インタフェース部30を介して受信した際に、当該ユーザフレームに含まれる送信元MACアドレスを、受信ポート識別子およびVLAN識別子に対応付けてアドレステーブルFDBに学習する。
【0065】
また、FDB処理部34は、外部インタフェース部30を介して受信したユーザフレームに含まれる宛先MACアドレスと、それに対応するVLAN識別子と、を検索キーとして、アドレステーブルFDBを検索する。FDB処理部34は、この検索結果によって得られるポート識別子(宛先ポート識別子と呼ぶ)を、前述した受信ポート識別子と共にユーザフレームに付加する。宛先ポート識別子は、宛先のラインカードの識別子と、宛先の外部ポートの識別子と、で構成される。
【0066】
VIDフィルタ35は、フレームに対して、VLAN識別子に応じた中継可否等を定める。例えば、
図1等に示したブロック状態BKは、このVIDフィルタ35によって実現される。OAM処理部36は、
図2および
図3に示した第1および第2監視ポイント(例えばMEPd1,MEPd2)を備え、イーサネットOAMに基づく疎通性の監視および疎通性有無の判定を行う。また、OAM処理部36は、R−APS処理部37を備える。R−APS処理部37は、ITU−T G.8032に基づくR−APSフレームの処理(具体的には送信および受信ならびに中継)を行う。
【0067】
プロセッサ部CPUは、記憶部33に保存されるソフトウェア(ファームウェア)に基づいて、複雑な処理が必要とされる各種通信プロトコル処理をフレーム処理部31と連携して行ったり、あるいは自ラインカードの管理等を行う。プロセッサ部CPUは、ファームウェアを実行することによって構成されるERP制御部(リング制御部)38を備える。ERP制御部(リング制御部)38は、ITU−T G.8032に規定されたリングプロトコルに基づきリングネットワークを制御する。また、プロセッサ部CPUは、管理カード用端子MPを介して管理カードMCと通信を行う。
【0068】
《中継装置(本実施の形態)のユーザフレーム中継動作》
図9は、
図7および
図8の中継装置において、ユーザフレームを中継する際の概略的な動作例を示す説明図である。ここでは、ラインカードLC[1]はリングポート(第1ポート)Pr[1]を備え、ラインカードLC[2]はリングポート(第2ポート)Pr[2]を備えるものとする。そして、ラインカードLC[1]のリングポートPr[1]で受信したユーザフレームをラインカードLC[2]のリングポートPr[2]に中継する場合を想定する。
【0069】
まず、ラインカードLC[1]の外部インタフェース部30は、リングポートPr[1]で受信したユーザフレームUFに対して、受信ポート識別子{LC[1]}/{Pr[1]}を付加してフレーム処理部31に送信する。フレーム処理部31内のFDB処理部34は、ユーザフレームUFに含まれる送信元MACアドレスと、タグVLANやポートVLAN等によって定められるVLAN識別子と、受信ポート識別子{LC[1]}/{Pr[1]}と、の対応関係をアドレステーブルFDBに学習する。
【0070】
また、FDB処理部34は、ユーザフレームUFに含まれる宛先MACアドレスと、VLAN識別子と、を検索キーとしてアドレステーブルFDBを検索し、宛先ポート識別子を取得する。ここでは、過去の通信に伴うアドレステーブルFDBの学習に伴い、検索結果として、宛先ポート識別子{LC[2]}/{Pr[2]}が得られるものとする。FDB処理部34は、ユーザフレームUFに受信ポート識別子および宛先ポート識別子を付加し、それを内部インタフェース部32を介してファブリック用端子FPに送信する。
【0071】
なお、この際に、フレーム処理部31は、仮に、VIDフィルタ35において、当該ユーザフレームUFのVLAN識別子が中継不可に設定されている場合、当該ユーザフレームUFをファブリック用端子FPに送信せずに破棄する。また、FDB処理部34は、仮に、宛先ポート識別子として、自ラインカードが備えるユーザポートの識別子が得られた場合、ユーザフレームUFを当該ユーザポートに中継する。具体的な中継方法は、例えば、フレーム処理部31で折り返す方法のほか、内部インタフェース部32やファブリック経路部26で折り返す方法であってもよい。
【0072】
図9の動作に戻り、ファブリック経路部26は、ラインカードLC[1]のファブリック用端子FPからのユーザフレームUFをラインカードLC[2]のファブリック用端子FPに中継する。例えば、ファブリック経路部26がファブリックカードで構成される場合、ファブリックカードは、宛先ポート識別子{LC[2]}/{Pr[2]}に基づき、ユーザフレームUFをラインカードLC[2]に中継する。一方、ファブリック経路部26がバックプレーンで構成される場合、ラインカードLC[1]の内部インタフェース部32は、宛先ポート識別子{LC[2]}/{Pr[2]}に基づき、ファブリック用端子FPを構成する各端子の中からラインカードLC[2]に対応する端子にユーザフレームUFを送信する。
【0073】
ラインカードLC[2]は、ファブリック用端子FPで受信したユーザフレームUFを、内部インタフェース部32を介してフレーム処理部31に送信する。当該フレーム処理部31内のFDB処理部34は、ユーザフレームUFに含まれる送信元MACアドレスと、ユーザフレームUFに含まれる(又は付加される)VLAN識別子と、ユーザフレームUFに付加される受信ポート識別子と、の対応関係を、アドレステーブルFDBに学習する。ラインカードLC[2]の外部インタフェース部30は、フレーム処理部31からユーザフレームUFを受信し、当該ユーザフレームUFを、それに付加される宛先ポート識別子に基づいてリングポートPr[2]に送信する。
【0074】
なお、ここでは、各ラインカードは、ユーザフレームに基づいてアドレステーブルFDBの学習を行う動作例を示したが、別途、学習用フレームを用いて学習を行うように構成することも可能である。この場合、ラインカードLC[1]のフレーム処理部31は、ユーザフレームUFの送信元MACアドレス、VLAN識別子および受信ポート識別子を含んだ学習用フレームを生成し、他のラインカードLC[2](およびLC[3]〜LC[n])に送信する。他のラインカードLC[2](およびLC[3]〜LC[n])のフレーム処理部31は、当該学習用フレームに含まれる送信元MACアドレスと、VLAN識別子と、受信ポート識別子と、の対応関係をアドレステーブルFDBに学習する。
【0075】
《中継装置(本実施の形態)のリングプロトコル動作》
図10は、
図7および
図8の中継装置において、OAM処理部およびERP制御部周りの概略的な動作例を示す説明図である。
図10では、
図9の場合と同様に、ラインカードLC[1]はリングポート(第1ポート)Pr[1]を備え、ラインカードLC[2]はリングポート(第2ポート)Pr[2]を備えるものとする。ラインカードLC[2]のOAM処理部36は、第1監視ポイントMEP1および第2監視ポイントMEP2と、R−APS処理部(第2R−APS処理部)37と、を備える。一方、ラインカードLC[1]のOAM処理部36は、R−APS処理部(第1R−APS処理部)37を備える。
【0076】
ラインカードLC[2]において、第1監視ポイントMEP1は、定期的にCCMフレームを生成し、当該CCMフレームを、ファブリック経路部26を介して、ラインカードLC[1]の第1ポートPr[1]から送信する。特に限定はされないが、例えば、ラインカードLC[2]のアドレステーブルFDBには、第1ポートPr[1]の識別子({LC[1]}/{Pr[1]})と、第1ポートに接続される他装置の監視ポイントのMACアドレスと、の対応関係が学習されている。第1監視ポイントMEP1は、このアドレステーブルFDBの検索結果に基づいて、CCMフレームを第1ポートPr[1]に向けて送信する。
【0077】
また、第1監視ポイントMEP1は、第1ポートPr[1]で受信された、他装置の監視ポイントからのCCMフレームをファブリック経路部26を介して受信する。特に限定はされないが、例えば、ラインカードLC[1]のアドレステーブルFDBには、ラインカードLC[2]の識別子({LC[2]})と、第1監視ポイントMEP1のMACアドレスと、の対応関係が学習されている。ラインカードLC[1]のOAM処理部36は、第1ポートPr[1]でフレームを受信した際に、そのフレーム内の各種識別子等によってCCMフレームであることを判別し、アドレステーブルFDBの検索結果に基づいて当該CCMフレームを中継する。その結果、当該CCMフレームは、第1監視ポイントMEP1で受信される。
【0078】
このように、第1監視ポイントMEP1によるCCMフレームの通信経路は、
図9に示したユーザフレームUFの通信経路と重複し、
図3に示したスイッチ装置SWdにおける第1ポートPr[1]と第2ポートPr[2]との間のフレームの中継経路20と重複する。ここで、
図10では、例えばファブリック経路部26に障害が生じた場合の動作例が示されている。
【0079】
この場合、ラインカードLC[2]において、第1監視ポイントMEP1は、疎通性無しの監視結果をERP制御部(リング制御部)38に通知する。これに応じて、ERP制御部38は、リンクの障害(SF)を検出する。ERP制御部38は、R−APS(SF)フレームに格納する所定の制御情報を生成し、R−APS処理部37に対して、R−APS(SF)フレームの送信を指示する。これに応じて、R−APS処理部37は、第2監視ポイントMEP2を介して第2ポートPr[2]からR−APS(SF)フレームを送信する。
【0080】
また、これと並行して、ラインカードLC[2]のERP制御部(リング制御部)38は、ラインカードLC[1]のERP制御部(リング制御部)38に対して、第1監視ポイントMEP1で障害(SF)を検出した旨の障害通知を行う。この通知は、例えば、管理用の通信回線28を用いて図示しない管理カードを介して行われる。ラインカードLC[1]において、ERP制御部38は、ラインカードLC[2]のERP制御部38からの障害通知に応じて、第1ポートPr[1]をブロック状態BKに制御する。具体的には、ERP制御部38は、VIDフィルタ35に対して、フレームの通過を禁止する条件(例えば第1ポートPr[1]やVLAN識別子等)を設定する。
【0081】
また、ラインカードLC[1]において、ERP制御部38は、ラインカードLC[2]のERP制御部38からの障害通知に応じて、R−APS(SF)フレームに格納する所定の制御情報を生成し、R−APS処理部37に対して、R−APS(SF)フレームの送信を指示する。これに応じて、R−APS処理部37は、第1ポートPr[1]からR−APS(SF)フレームを送信する。
【0082】
このように、
図10の例では、第1ポートPr[1]に対応するR−APS処理部37は、第1ポートPr[1]を備えるラインカードLC[1]に搭載され、第1ポートPr[1]に対応する第1監視ポイントMEP1は、第2ポートPr[2]を備えるラインカードLC[2]に搭載される。ここで、例えば、第1ポートPr[1]に対応するR−APS処理部37を、第1監視ポイントMEP1と同じラインカードLC[2]に搭載することも考えられる。ただし、この場合、
図10のようなファブリック経路部26等の障害に伴い、当該R−APS処理部37は、ITU−T G.8032に基づくR−APSフレームの送信および受信等を適切に行えない場合がある。そこで、
図10のような構成例を用いることが望ましい。
【0083】
なお、ここでは、第1監視ポイントMEP1での監視結果に伴い障害(SF)が検出された場合のリングプロトコル動作について説明したが、OAM処理部36およびERP制御部38は、リングネットワークの状態に応じたその他の各種リングプロトコル動作も行う。概略的には、R−APS処理部37は、R−APSフレームを受信した場合、ERP制御部38に通知し、ERP制御部38は、R−APSフレームに含まれる各種制御情報を認識すると共に、各種制御情報に応じた動作を行う。また、R−APS処理部37は、ERP制御部38の指示に応じてR−APSフレームを送信する。この際に、ERP制御部38は、R−APSフレームに格納する各種制御情報を生成する。
【0084】
ここで、各種制御情報とは、
図4および
図6に示したように、SF、NR、RB等を代表とするITU−T G.8032に規定される各種情報である。各種制御情報に応じた動作とは、
図4および
図6に示したように、リングポートに対するブロック状態BKの制御(VIDフィルタ35の制御)や、アドレステーブルFDBに対するフラッシュ命令の発行や、R−APSフレームの中継制御等を代表とするITU−T G.8032に規定される各種動作である。
【0085】
以上、本実施の形態1の中継システムおよび中継装置を用いることで、代表的には、中継装置の内部障害に応じた適切な経路切り替えを実現可能になる。この効果は、特に、ITU−T G.8032に規定されたリングプロトコルを用いる場合に有益となる。なお、ここでは、シャーシ型のスイッチ装置(中継装置)を用いる場合を例としたが、ボックス型のスイッチ装置を用いてもよい。ボックス型のスイッチ装置は、例えば、
図8に示した構成の中から内部インタフェース部32等を削除したような全体構成を備える。
【0086】
ただし、ボックス型のスイッチ装置を用いる場合、
図3に示したリングポート間の中継経路20の具体的な障害箇所の候補は、例えば、
図8のフレーム処理部31となる。この場合、結果的に、各監視ポイントの送信動作が停止する状態となり、
図3のスイッチ装置SWc,SWeによって障害検出が行われる可能性が高い。一方、シャーシ型のスイッチ装置を用いる場合、リングポート間の中継経路20の具体的な障害箇所の候補は多く存在するため、その障害に関わらず監視ポイントが正常に動作するような事態が生じる可能性が高い。したがって、このような観点では、シャーシ型のスイッチ装置を用いる場合により有益な効果が得られる。
【0087】
(実施の形態2)
《中継システム(変形例)の構成》
図11は、本発明の実施の形態2による中継システムにおいて、
図2の構成例を用いた
図3とは異なる動作例を示す概略図である。
図11では、
図3の場合と同様に、
図2におけるスイッチ装置SWc,SWd,SWeの部分が抽出して示され、スイッチ装置SWdの中継経路20に障害が生じている。この場合、スイッチ装置SWeは、
図3の場合と同様の動作を行う。すなわち、スイッチ装置SWeは、第2監視ポイントMEPe2を介して障害(SF)を検出し、第2ポートPr[2]をブロック状態BKに制御すると共に、第1ポートPr[1](および第2ポートPr[2])からR−APS(SF)フレームを送信する。
【0088】
一方、スイッチ装置SWd(その中の図示しないリング制御部)は、
図3の場合と同様に、第1監視ポイントMEPd1を介して障害(SF)を検出するが、これに応じて、
図3の場合とは異なる動作を行う。すなわち、当該リング制御部は、第1監視ポイントMEPd1を介して障害(SF)を検出した場合(言い換えれば第1監視ポイントMEPd1での監視結果が疎通性無しの場合)、
図11に示すように、第2監視ポイントMEPd2に、RDIフレームの送信を指示するか、または、CCMフレームの送信停止を指示する。例えば、前述したように、リングネットワークの障害判定基準にRDI状態が含まれない場合、リング制御部は、CCMフレームの送信停止を指示する。
【0089】
第2監視ポイントMEPd2は、リング制御部からの指示に応じて、RDIフレームを送信するか、または、CCMフレームの送信を停止する。その結果、スイッチ装置SWcの第1監視ポイントMEPc1は、RDIフレームを受信してRDI状態を認識するか、または、CCMフレームを所定の期間内に受信せずに、LOC状態を認識する。その結果、スイッチ装置SWc(その中の図示しないリング制御部)は、第1監視ポイントMEPc1を介して障害(SF)を検出し、第1ポートPr[1]をブロック状態BKに制御すると共に、第2ポートPr[2](および第1ポートPr[1])からR−APS(SF)フレームを送信する。
【0090】
《中継システム(変形例)の障害有り時の動作》
図12は、
図2および
図11の中継システムにおいて、
図11に示した装置内部の障害が生じた場合の概略的な動作シーケンスの一例を示す図である。
図12では、まず、オーナーノードであるスイッチ装置SWaのリングポートPr[1]、およびネイバーノードであるスイッチ装置SWbのリングポートPr[2]は、共に、ブロック状態BKに制御されている。この状態で、
図11に示したように、スイッチ装置SWdは、第1監視ポイントMEPd1での監視結果が疎通性無しの場合、第2監視ポイントMEPd2に、RDIフレームの送信を指示するか、または、CCMフレームの送信停止を指示する(ステップS301)。
【0091】
ステップS301により、スイッチ装置SWcは、スイッチ装置SWdの内部障害を、擬似的に、リングポートPr[1]に接続されるリンクの障害(SF)として検出する。これに応じて、スイッチ装置SWcは、当該リングポートPr[1]をブロック状態BKに制御し、アドレステーブルFDBをフラッシュ(消去)する(ステップS302)。同様に、スイッチ装置SWeも、スイッチ装置SWdの内部障害を、擬似的に、リングポートPr[2]に接続されるリンクの障害(SF)として検出する。これに応じて、スイッチ装置SWeは、当該リングポートPr[2]をブロック状態BKに制御し、アドレステーブル(FDB)をフラッシュ(消去)する(ステップS302)。
【0092】
次いで、障害(SF)を検出したスイッチ装置SWcは、ブロック状態BKに制御したリングポートの情報({SWc}/{Pr[1]})を含むR−APS(SF)フレームをリングネットワーク10上に送信する(ステップS303)。同様に、スイッチ装置SWeも、ブロック状態BKに制御したリングポートの情報({SWe}/{Pr[2]})を含むR−APS(SF)フレームをリングネットワーク10上に送信する(ステップS303)。
【0093】
スイッチ装置SWc,SWeによって送信されたR−APS(SF)フレームは、ブロック状態BKのリングポートに到達するまで、各スイッチ装置によって中継される。ここで、オーナーノードであるスイッチ装置SWaは、R−APS(SF)フレームを受信した場合、リングポートPr[1]のブロック状態BKを解除し(すなわち開放状態に変更し)、アドレステーブルFDBをフラッシュ(消去)する(ステップS304)。
【0094】
同様に、ネイバーノードであるスイッチ装置SWbも、R−APS(SF)フレームを受信した場合、リングポートPr[2]のブロック状態BKを解除し(すなわち開放状態に変更し)、アドレステーブルFDBをフラッシュ(消去)する(ステップS304)。その後は、スイッチ装置SWc,SWeによってR−APS(SF)フレームが定期的に送信され、定常状態に達する(ステップS305)。
【0095】
図13は、
図12の動作によってリングネットワークの経路切り替えが行われた後の、フレーム転送経路を示す図である。
図12の動作が実行され、定常状態(ステップS305)に達した際には、
図13に示すように、スイッチ装置SWeとスイッチ装置SWcとの間で、スイッチ装置SWa,SWbを介する通信経路45が形成される。ユーザ網11e,11a,11b,11c間のフレーム転送は、この通信経路45上で行われる。その結果、例えば、ユーザ網11eからユーザ網11cに向けたフレームは、
図16の場合と異なり、通信経路45を介して、損失することなくユーザ網11cに到達する。
【0096】
《中継装置(変形例)の内部障害時の動作》
図14は、
図11の中継システムにおいて、その中継装置が備えるOAM処理部およびERP制御部周りの
図10とは異なる概略的な動作例を示す説明図である。例えば、
図11におけるスイッチ装置(中継装置)SWdは、
図7および
図8に示したようなシャーシ型のスイッチ装置であり、装置の内部障害に応じて、
図14に示すような動作を行う。
【0097】
図14では、
図10の場合と同様に、ラインカードLC[2]において、第1監視ポイントMEP1は、疎通性無しの監視結果をERP制御部(リング制御部)38に通知し、これに応じて、ERP制御部38は、障害(SF)を検出する。この際に、ERP制御部38は、
図10の場合と異なり、第2監視ポイントMEP2に対して、RDIフレームの送信、または、CCMフレームの送信停止を指示する。第2監視ポイントMEP2は、この指示に応じて、第2ポートPr[2]からRDIフレームを送信するか、あるいは、第2ポートPr[2]からのCCMフレームの送信を停止する。
【0098】
以上、本実施の形態2の中継システムおよび中継装置を用いることで、実施の形態1の場合と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。例えば、
図14に示されるように、ラインカードLC[2]の内部インタフェース部32の障害に応じて第1監視ポイントMEP1の監視結果が疎通性無しとなっている場合を想定する。この場合、例えば、ラインカードLC[2]が備えるリングポート(第2ポート)Pr[2]と、他のラインカードが備えるユーザポートPu[1]〜Pu[m]と、の間でのフレームの中継が困難となり得る。そうすると、
図5に示したような通信経路25では、例えば、ユーザ網11cからユーザ網11dに向けたフレームが損失する恐れがある。そこで、本実施の形態2の方式を用いて、
図13に示すような通信経路45を形成することが有益となる場合がある。
【0099】
なお、ここでは、障害(SF)時の動作例を示したが、
図11において、障害回復時には、第2監視ポイントMEPd2がCCMフレーム(CCM監視区間21bcに障害が無い場合にはCCフレーム)の送信を開始すればよい。すなわち、例えば、
図10のラインカードLC[2]において、ERP制御部38は、第1監視ポイントMEP1での監視結果が疎通性無しから疎通性有りに変更された場合、障害回復を検出し、第2監視ポイントMEP2に対してCCMフレーム(CCフレーム)の送信開始を指示する。
【0100】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0101】
例えば、ここでは、リングネットワーク内にネイバーノードが設定される場合を例として説明を行ったが、ネイバーノードが設定されず、オーナーノードのみが設定される場合であっても、同様にして本実施の形態の方式を適用することが可能である。また、ERP制御部38は、必ずしも、プロセッサ部CPUで構成される必要はなく、場合によっては、専用のハードウェアで構成されてもよい。さらに、管理カードMCがERP制御部38を備えるように構成することも可能である。