(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の前記MOSFETチップの前記ドレイン電極と前記第1の外部電極とに電気的に接続し、前記ソース電極と前記第2の外部電極とに電気的に接続した半導体素子を整流装置としてハイサイドに、
請求項1に記載の前記MOSFETチップの前記ソース電極と前記第1の外部電極とに電気的に接続し、前記ドレイン電極と前記第2の外部電極とに電気的に接続した半導体素子を整流装置としてローサイドに、
それぞれ有する整流回路を備える
ことを特徴とするオルタネータ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下においては「実施形態」と称する)を、図面を参照して説明する。
【0012】
≪第1実施形態:半導体装置、整流素子S1≫
本発明の第1実施形態の半導体装置について説明する。第1実施形態の半導体装置は、MOSFETを用いて整流素子を構成したものであるので、適宜、整流素子S1とも表記する。
【0013】
<整流素子S1の構成(構造)>
整流素子(半導体装置)S1の構成(構造)を
図1〜
図4を参照して説明する。なお、
整流素子S1の構成(構造)には、「正座」と「逆座」と称される2つの構成(構造)がある。この「正座」と「逆座」の相違は、電気的な極性の相違と、それにともなう構成(構造)の相違によって区別される。
図1〜
図3で示す整流素子S1の構成(構造)は、「正座」と称す構成である。なお、「逆座」の整流素子(半導体装置)S2の構成(構造)については、
図15〜
図17を参照して後記する。
図1は、整流素子S1を、リード端子107t(外部端子、第2の外部電極の一部)を上に、ベース電極101(第1の外部電極)を下にしたときに、上から見た上面図である。なお、
図1では理解を容易にするため、整流素子S1を覆うパッケージの一部と樹脂108(
図2参照)は省略して示している。
また、
図2は、
図1のI−Iにおける断面図であり、
図1の紙面視において左側から見た図である。
また、
図3は、
図1のII−IIにおける断面図であり、
図1の紙面視において左側から見た図である。
また、
図4は、
図1〜
図3で示した整流素子S1を構成する要素部品の電気的な接続関係を示す図である。
【0014】
図1において、整流素子S1は、上面視で円形の外周部101sを有するベース電極101と、ベース電極101の上部に設けられる台座102と、を有している。
また、
図1、
図2に示すように、台座102の上に、MOSFETからなるMOSFETチップ103と、絶縁基板106と、を有して、実装されている。
なお、ベース電極101と台座102とは同一の材質で一体化している。ベース電極101において、MOSFETチップ103と、絶縁基板106を搭載する役目をする部分を台座102と称している。台座102の周囲とベース電極101の間に溝101m(
図2参照)がある。
また、MOSFETチップ103の上にリード電極107(第2の外部電極)と、このリード電極107の一部であり端子であるリード端子107tと、を有している。リード電極107とリード端子107tは、実質的に同電位である。
整流素子S1としてのパッケージの中心軸Oは、ベース電極101の中心に位置している。またリード端子107tの軸の中心は、中心軸Oと一致している。
【0015】
MOSFETチップ103は、MOSFETとしてのゲート電極103gとソース電極103sとドレイン電極103dとを有している。
ソース電極103sとドレイン電極103dは、上面視において、重なっており、ソース電極103sが上、ドレイン電極103dが下に位置している関係で、ソース電極103sが見えているがドレイン電極103dは見えていない。そのため、ソース電極103sの引出し線は実線で、ドレイン電極103dの引出し線は破線で表記している(
図1、
図2参照)。
なお、
図1、
図3に示したMOSFETチップ103は、ソース・ドレインが縦型構造で形成されている。縦型構造であれば、MOSFETは、プレーナ型でもトレンチ型でもよい。
また、MOSFETはn型チャネルであるn型MOSFET(ソース・ドレインが共にn型半導体)とp型チャネルのp型MOSFET(ソース・ドレインが共にp型半導体)とがあるが、キャリアの移動度が大きいn型MOSFET(キャリアは電子)を
図1、
図3では想定している。
【0016】
また、
図1、
図3に示すように、絶縁基板106は、絶縁基板106の裏面に設けられた電極114を介し、ベース電極101の台座102に半田109を用いて固定される。
なお、電極114および台座102の上に設けられた半田109は、絶縁基板106を台座102に固定するためのものであって、電気的な接続を意味するものではない。
絶縁基板106の上に電極112aが設けられ、この電極112a上に制御回路チップ104が実装されている。
制御回路チップ104は、第1の電極104a、第2の電極104b、第3の電極104c、第4の電極104dを有している。
また、絶縁基板106の上に電極112b、112cが設けられ、この電極112b、112cの上に、コンデンサ105が実装されている。コンデンサ105の高電圧側端子110は電極112bの上に位置し、低電圧側端子111は電極112cの上に位置している。
【0017】
なお、台座102、MOSFETチップ103、制御回路チップ104、コンデンサ105、絶縁基板106は、樹脂(第1の樹脂)108で覆れている(
図2、
図3参照)。樹脂(第1の樹脂)108とJCR(第2の樹脂)113(
図2)の詳細については、後記する。
また、MOSFETチップ103、制御回路チップ104、コンデンサ105は、後記する
図5の整流素子S1としての回路を構成する部品である。
また、複数のワイヤ115によって、前記の各素子(MOSFETチップ103、制御回路チップ104、コンデンサ105等)は電気的に接続されている。この接続に関する詳細については後記する。
【0018】
図1に示すように、MOSFETチップ103は、上面視で方形(四角形)の形状を有しており、四角形のコンデンサ105と四角形の制御回路チップ104とを搭載した四角形の絶縁基板106とは、互いの長辺同士を平行に沿って隣接して、配置されている。
この配置により、MOSFETチップ103、コンデンサ105、および制御回路チップ104は、互いに近接して配置できるとともに、互いの間のスペースが狭小で済むため、MOSFETチップ103、コンデンサ105、および制御回路チップ104の実装効率が大に配置できる。
【0019】
加えて、制御回路チップ104の第1〜第4の電極104a〜104dと、MOSFETチップ103とコンデンサ105とが電気的に接続される距離が最短になるように配置されている。
この形状と配置により、制御回路チップ104とMOSFETチップ103とコンデンサ105との電気的接続を担うワイヤ115の長さが最も短くでき、電気的接続の信頼性が高い。また、配線のインダクタンスが小さくなり、ノイズ耐性を高めることができる。加えて、ワイヤ115が少量で済み、組み立て性が良く、コストが抑えられる。
【0020】
<MOSFETチップ103の接続>
次に、MOSFETチップ103の接続について、
図1、
図2、
図4を参照して説明する。
図1、
図2において、MOSFETチップ103の下面に設けられたドレイン電極103dは、半田109を用いてベース電極101の台座102に固定されている。この構造により、MOSFETチップ103は、電気的、熱的にベース電極101に接続される。
【0021】
なお、「熱的にベース電極101に接続」とは、すなわちMOSFETチップ103のドレイン電極103dの延在面が、半田109を介在して、ベース電極101の台座102の上面(延在面)に連結して固定されている構造のため、MOSFETチップ103とベース電極101との伝熱面積が広く伝熱距離が短く、MOSFETチップ103の熱が良好にベース電極101に伝導され放出されることを意味する。
【0022】
MOSFETチップ103の上面に設けられるソース電極103sは、半田109を用いてリード電極107に固定されている。これにより、MOSFETチップ103は、電気的、熱的にリード電極107に接続される。
熱的にとは、MOSFETチップ103のソース電極103sの延在面が、半田109を介在して、リード電極107の下面(延在面)に連結して固定されるので、MOSFETチップ103とソース電極103sとの伝熱面積が広く伝熱距離が短く、MOSFETチップ103の熱が良好にソース電極103sに伝導され、リード電極107(リード端子107t)を介して放出されることを意味する。
【0023】
図1、
図2、
図4に示すように、MOSFETチップ103の上面のゲート電極103gは、ワイヤ115を用いてワイヤボンディングで制御回路チップ104の上面に設けられた第1の電極104aに電気的に接続されている。
【0024】
このように、MOSFETチップ103のゲート電極103gを、MOSFETチップ103の制御回路チップ104に近い角部に配置することで、前記したように、MOSFETチップ103のゲート電極103gと制御回路チップ104の第1の電極104aとの距離を最短にし、ワイヤ115の長さを最短にする。
この配置により、ワイヤ115によるワイヤボンディングを確実にし、接続の信頼性を高いものとしている。また、配線のインダクタンスを小さくして、ノイズ耐性を高めている。
【0025】
<コンデンサ105の接続>
次に、コンデンサ105の接続を説明する。
図1、
図3に示すように、コンデンサ105の高電圧側端子110は、半田109により絶縁基板106の上面に設けられた電極112bに電気的に接続されている。
コンデンサ105の低電圧側端子111は、半田109を用いて絶縁基板106の上面に設けられた電極112cに電気的に接続される。
コンデンサ105の高電圧側端子110に接続されている絶縁基板106上の電極112bは、制御回路チップ104の上面に設けられた第2の電極104bにワイヤ115を用いてワイヤボンディングで接続される。
コンデンサ105の低電圧側端子111に接続されている絶縁基板106上の電極112cは、MOSFETチップ103のソース電極103sにワイヤ115を用いてワイヤボンディングで接続される。
なお、前記のようにコンデンサ105の低電圧側端子111は、半田109とワイヤ115を用いて、電極112cとMOSFETチップ103のソース電極103sに接続されているので、リード電極107(リード端子107t)にも電気的に接続されている(
図4参照)。
【0026】
なお、電極112cとMOSFETチップ103のソース電極103sとをワイヤボンディングに代わり、絶縁基板106の上面に設けられた第3の電極112cを、制御回路チップ104の上面に設けられる第3の電極104cとワイヤを用いてワイヤボンディングで電気的に接続してもよいし、絶縁基板106の上に設けられた電極112aとワイヤを用いてワイヤボンディングもしくは絶縁基板上での電極で電気的に接続してもよい。いずれの接続方法によっても、コンデンサ105の低電圧側端子111をリード電極107に電気的に接続することができる。
【0027】
<制御回路チップ104の接続>
次に、制御回路チップ104の接続を説明する。
図1、
図3、
図4に示すように、制御回路チップ104のチップの上面に設けられた第1の電極104aは、MOSFETチップ103の上面に設けられたゲート電極103gに、ワイヤ115を用いてワイヤボンディングで電気的に接続される。
また、制御回路チップ104のチップの上面に設けられた第2の電極104bは、コンデンサ105の高電圧側端子110と接続された絶縁基板106の上面の第1の電極112bにワイヤ115を用いてワイヤボンディングで電気的に接続される。
【0028】
また、制御回路チップ104の上面に設けられた第3の電極104cは、MOSFETチップ103の上面を成すソース電極103sにワイヤ115を用いてワイヤボンディングで電気的に接続される。
また、制御回路チップ104の上面に設けられた第4の電極104dは、ベース電極101の台座102に、ワイヤ115を用いてワイヤボンディングで電気的に接続される。
また、制御回路チップ104の裏面と半田109で接続された絶縁基板106の上に設けられた電極112aは、MOSFETチップ103の上面を成すソース電極103sにワイヤ115を用いてワイヤボンディングで電気的に接続される。
【0029】
なお、このソース電極103sへのワイヤボンディングは、制御回路チップ104内で、制御回路チップ104の上面に設けられる第3の電極104cと制御回路チップ104の裏面とを電気的に接続していれば、不要である。ワイヤを使わないことで、電気的な接続の信頼性を高めることができる。
また、以上の制御回路チップ104における接続は、制御回路チップ104として、SOI(Silicon On Insulator)ウエハに素子を形成したIC、もしくは、P型シリコンウエハにPN接合で素子間を分離して素子を形成したICを用いた場合の接続である。
N型シリコンウエハにPN接合で素子間を分離して素子を形成したICを用いる場合、制御回路チップ104の裏面は、ベース電極と同電位となるように接続する。すなわち、制御回路チップ104を搭載した絶縁基板106の上の電極112aとベース電極101の台座102とをワイヤを用いてワイヤボンディングで電気的に接続する、もしくは、制御回路チップ104をベース電極101の台座102の上に載せ、制御回路チップ104の裏面を半田でベース電極101の台座102に電気的に接続する。
【0030】
<コンデンサ、制御回路チップ、MOSFETチップの配置と接続>
以上のコンデンサ105と制御回路チップ104との電気的な接続において、
図1、
図4に示すように、コンデンサ105の高電圧側端子110が制御回路チップ104の第2の電極104bに、ワイヤ115を介して、最短距離で接続されるように、コンデンサ105の高電圧側端子110と制御回路チップ104の第2の電極104bとが配置されている。
この配置と接続により、制御回路チップ104、コンデンサ105の実装効率高めるとともに、ワイヤボンディングの信頼性を向上させている。また、配線のインダクタンスを小さくして、ノイズ耐性を高めている。
【0031】
また、以上のワイヤ115による接続により、MOSFETチップ103と制御回路チップ104との電気的接続、および、制御回路チップ104とコンデンサ105との電気的接続が行える。また、制御回路チップ104およびコンデンサ105とベース電極101との電気的接続が行える。
前記した構成により、正座の整流素子S1を実現できる。
【0032】
<整流素子S1の回路構成>
続いて、整流素子S1の回路構成を説明する。
図5は、本発明の第1実施形態に係る整流素子(半導体装置)S1の回路構成を示す回路図である。
図5に示す回路図において、H端子とL端子との間に、
図1〜
図4を参照して説明したMOSFETチップ103、制御回路チップ104、コンデンサ105が、前記したように、電気的に接続され配線される。
【0033】
MOSFETチップ103は、n型チャネル(n型)のMOSFET(同期整流MOSFET)103mnと逆並列にダイオード103iを寄生ダイオードとして内蔵する。
制御回路チップ104は、L端子の電圧とH端子の電圧とを比較するコンパレータ116と、MOSFET103mnのゲート電極103gに電圧を付与するゲートドライバ117と、逆流防止用のダイオード118と、を有して構成される。
【0034】
コンパレータ116の一方の第1の入力端子(反転入力端子)116i1は、H端子に、コンパレータ116の他方の第2の入力端子(非反転入力端子)116i2は、L端子に接続される。
コンパレータ116の出力端子116oは、ゲートドライバ117の入力端子117iに接続される。
ゲートドライバ117の出力端子117oは、MOSFETチップ103(MOSFET103mn)のゲート電極103gに接続される。
【0035】
また、コンデンサ105の高電圧側端子110は、コンパレータ116の電源端子116vとゲートドライバ117の電源端子117vに接続される。また、コンデンサ105の低電圧側端子111は、L端子に接続される。
逆流防止用のダイオード118のアノードは、H端子に接続される。ダイオード118のカソードは、前記したようにゲートドライバ117の電源端子117vとコンパレータ116の電源端子116vとコンデンサ105の高電圧側端子110に接続される。
【0036】
<整流素子S1の回路の動作>
図5に示す整流素子S1の回路の動作を次に説明する。
H端子の電圧がL端子の電圧より低くなると、コンパレータ116は高電圧の信号をゲートドライバ117に出力する。
高電圧の信号が入力されたゲートドライバ117は、MOSFETチップ103(MOSFET103mn)のゲート電極103gの電圧を上げてMOSFETチップ103をオン状態にする。
【0037】
逆に、H端子の電圧がL端子の電圧より高くなると、コンパレータ116は低電圧の信号をゲートドライバ117に出力する。
低電圧の信号が入力されたゲートドライバ117は、MOSFETチップ103(MOSFET103mn)のゲート電極103gの電圧を下げてMOSFETチップ103をオフ状態にする。
【0038】
すなわち、コンパレータ116がH端子とL端子の電圧の大小関係を比較し、ゲートドライバ117によりMOSFETチップ103をオン/オフする。
コンデンサ105は、蓄えられる電荷によりコンパレータ116とゲートドライバ117とにそれぞれ電源端子116v、117vを介して電源電圧を供給する。
【0039】
なお、
図5に示す回路は、本発明の整流素子S1を実現する制御回路の一例であり、これに限らない。コンパレータ116の代わりに、入力信号の差を検出して増幅する差動増幅器を用いてもよいし、MOSFETチップ103に流れる電流の向きで、オン/オフを制御してもよい。
また、
図5に示すコンデンサ105に代えて、外部から電源を供給することとしてもよい。
【0040】
<整流素子S1のその他の構成、構造>
次に、整流素子S1の構成、構造について、補足、または、より詳しく説明する。
【0041】
[MOSFETチップの形状と配置]
図1において、MOSFETチップ103は、上面視で方形(四角形)であって、正方形よりも長方形が望ましく、長方形の長辺に隣接する位置に、コンデンサ105と制御回路チップ104を配置する。
このような形状と配置にすることで、面積効率よく部品(103、104、105)を台座102に搭載することができ、より大きい寸法のMOSFETチップ103やコンデンサ105を使うことが可能になる。
【0042】
図1に示すように、MOSFETチップ103のゲート電極103gの位置は、MOSFETチップ103の上面の制御回路チップ104の第1の電極104aに最も近い角部もしくは辺に配置する。
このようにすることで、MOSFETチップ103と制御回路チップ104の第1の電極104aを電気的に接続するワイヤ115の長さを短くでき、配線の熱疲労試験での熱疲労もしくは温度サイクル試験での温度劣化に対する信頼性を向上することができる。
【0043】
また、MOSFETチップ103は、上面視でベース電極101および台座102の中心軸O(回転軸)上に位置するようにする。
【0044】
[リード端子のパッケージの中心軸上の配置]
前記したように、MOSFETチップ103は、上面視でベース電極101および台座102の中心軸O(回転軸)上に位置するようにし、MOSFETチップ103の上面に接続するリード電極107(
図2参照)の端子位置もベース電極101および台座102の中心軸O上に配置する。
このように、配置して構成することで、従来のダイオードを用いた整流素子を使うオルタネータにそのまま本発明のMOSFETを用いた整流素子S1を使用して、リード端子107t(リード電極107)を接続できる。
【0045】
加えて、リード電極107の端子を上面視で整流素子S1のパッケージの中心軸O上に配置することで、該パッケージにおけるリード電極107の対称性が図れ、リード電極107に印加される曲げ力に対する耐性(剛性)を向上させることができる。
さらに、リード電極107の端子であるリード端子107tを、上面視で整流素子S1のパッケージの中心軸O上に配置することで、MOSFETチップ103の上面視で回転軸(中心軸O)周りの位置合わせが不要である。つまり、整流素子S1のパッケージの芯だしを行うことで、整流素子S1の位置決めを行うことができる。
【0046】
[MOSFETの半田接続と放熱]
MOSFETチップ103のソース電極103sもしくはドレイン電極103dの電気的な接続は、ワイヤではなく、前記したように、両電極(103s、103d)面に半田109を用いて、それぞれリード電極107(の延在面)、およびベース電極101(の延在面、台座102)を接続する。このようにすることで、整流時にMOSFETチップ103で発生した熱を、半田109を介して、広い伝熱面積もってベース電極101(台座102)とリード電極107との両方に逃がすことが可能であり、MOSFETチップ103の温度上昇を抑えることができる。
【0047】
MOSFETチップ103は、ゲート酸化膜を有するため、ダイオードと比べ高温での信頼性の確保がより難しい。さらに、MOSFETチップ103は、高温ほどキャリアの移動度が小さくなる特性をもつためにオン電圧が大きくなり、ダイオードとは逆に損失が大きくなる。
よって、MOSFETチップ103では、特に放熱が重要であり、MOSFETチップ103の上下両面(ソース電極103s、ドレイン電極103d)からの良好な放熱が、省電力化に有効である。
なお、この省電力化につながる理由は、良好な放熱によりMOSFETチップ103の温度が低下すれば、MOSFETチップ103に寄生する抵抗成分が減少し、この抵抗成分に起因するジュール熱(i
2R)の発生が減少するためである。
【0048】
[コンデンサの配置]
図1、
図3において、コンデンサ105は、ベース電極101の台座102の上に搭載した絶縁基板106の上に実装して、ベース電極101に固定する。そして、長方形のコンデンサ105の長辺と長方形のMOSFETチップ103の長辺が平行になるようにコンデンサ105を配置する。
【0049】
コンデンサ105を配置する向きは、コンデンサ105の高電圧側端子110が制御回路チップ104に近くに配置し、コンデンサ105の低電圧側端子111が制御回路チップ104に遠くなるように配置する。
このように配置することで、部品実装の面積効率を高くすることができる。また、配線の長さを短くすることができ、配線の熱疲労試験での熱疲労もしくは温度サイクル試験での温度劣化に対する信頼性が向上する。
【0050】
[絶縁基板の絶縁材料]
図1、
図3に示した絶縁基板106の絶縁材料としては、絶縁樹脂、アルミナ、窒化アルミニウム等を用いる。
これらの絶縁材料の熱伝導率は、ベース電極101の材料であるCuの熱伝導率400Wm
−1K
−1よりも小さく、絶縁樹脂で0.3〜3Wm
−1K
−1、アルミナは20〜30Wm
−1K
−1、窒化アルミニウム200Wm
−1K
−1程度である。
【0051】
ベース電極101よりも低い熱伝導率の絶縁基板106をベース電極101とコンデンサ105との間に入れることで、整流時にMOSFETチップ103で発生する熱がコンデンサ105に伝わるのを抑制でき、コンデンサ105が高温になることによる信頼性の低下を抑制することができる。
【0052】
また、ベース電極101よりも低い熱伝導率の絶縁基板106をベース電極101と制御回路チップ104との間に入れることで、整流時にMOSFETチップ103で発生する熱が制御回路チップ104に伝わるのを抑制できる。
この発熱の抑制によって、制御回路チップ104が高温になることによるラッチアップ等に起因した誤動作を抑制でき、また、制御回路チップ104内のゲート酸化膜の信頼性の低下を抑制することができる。
【0053】
[樹脂108について]
図2、
図3および
図6に示した樹脂(第1の樹脂)108は、台座102と台座102上の部品(103、104、105)および電極(103g、103s、104a〜104d等)を覆うように、トランスファモールドもしくはポッディングにより形成する。
樹脂108が、台座102、部品(103、104、105)、電極(103g、103s、104a〜104d等)の昇温による膨張を抑制し、台座102もしくは台座102上の部品(103、104、105)の熱膨張率の差によって生じる熱疲労試験での熱疲労もしくは温度サイクル試験での温度劣化による不良を抑制することができる。
【0054】
さらに、樹脂108がベース電極101から剥離する不良を防止するために、
図2に示すように、ベース電極101の台座102の脇に溝101mを形成し、溝101mは下部から台座102の面に近付くに従って上面視で大きくなる形状にすることが望ましい。
この形状により、樹脂108がベース電極101の溝101m内に浸入してベース電極101に固定され、樹脂108がベース電極101から剥離することを抑制できる。
【0055】
[JCRについて]
次に、
図2に示したJCR(Junction Coating Resin)について説明する。
前記した樹脂108は、MOSFETチップ103、および制御回路チップ104との密着性がよくないことが一般的である。
換言すれば剥離し易いので、樹脂108よりも半導体チップ(103、104)との密着性が高いJCRと称されるコーティング材(第2の樹脂)を、樹脂108を形成する前に、MOSFETチップ103と制御回路チップ104の側壁に塗布し、JCR(第2の樹脂)113の薄膜を形成する。
JCR113をコンデンサ105、絶縁基板106、リード電極107に塗布することで、これら(105、106、107)と樹脂108との密着性を上げることができる。
【0056】
このJCRの薄膜を形成、塗布することにより、MOSFETチップ103および制御回路チップ104と樹脂108との密着性が高まり、熱疲労試験もしくは温度サイクル試験の最中に生じる半田クラック、チップクラック等の不良の発生を抑止し、整流素子S1の信頼性を高めることができる。
なお、溝101mまたは/およびJCRは、実施形態の整流素子S1、後記する整流素子S1B、S1C、S2に適用してもよい。
【0057】
[MOSFETチップの接続方法]
図1〜
図3の実施例では、MOSFETチップ103のドレイン電極103dとベース電極101およびMOSFETチップ103のソース電極103sとリード電極107とは半田109で接続されているが、圧接方式で接続してもよい。圧接方式では、MOSFETチップ103を間に置いた状態でベース電極101とリード電極107間に数kN/cm2程度の力を加え、半田を使わずに、MOSFETチップ103のドレイン電極103dとベース電極101およびMOSFETチップ103のソース電極103sとベース電極101とが、電気的、熱的に接続される。
【0058】
前記したように、熱的にとは、MOSFETチップ103のドレイン電極103dの延在面とベース電極101の延在面、および、MOSFETチップ103のソース電極103sの延在面とベース電極101の延在面とが、それぞれ圧接して接触して広い伝熱面積をもって接続されるので、MOSFETチップ103で発生する熱が良好に、ベース電極101とリード電極107とに逃げることができることを意味する。
【0059】
<整流素子S1の組み立て法>
次に、本発明の第1実施形態に係る半導体装置(整流素子S1)を組み立てる方法について説明する。
まず、絶縁基板106の電極112a、112b、112cの上に、半田ペースト(109)を塗布し、その上に制御回路チップ104とコンデンサ105を置き、半田炉でベークして、制御回路チップ104とコンデンサ105を絶縁基板106の上に、半田109により固定する。
組み立てには、まず次に、整流素子S1を構成する部品を定められた位置に固定するためのカーボン冶具(不図示)を用いる。カーボン冶具の台座102の固定位置にベース電極101を入れ、その上にカーボン冶具の蓋をする。
【0060】
蓋には他の部品を入れる穴が開いており、MOSFETを入れる穴には、半田シート(109)、MOSFETチップ103、半田シート(109)、リード電極107の順に重ねて入れる。また、絶縁基板106と制御回路チップ104を入れる穴に、半田シート(109)、制御回路チップ104とコンデンサ105を固定した絶縁基板106の順に重ねて入れる。
【0061】
続いて、半田炉(不図示)で部品を入れたカーボン冶具をベークし、MOSFETチップ103,リード電極107、制御回路チップ104、絶縁基板106、コンデンサ105をベース電極101の台座102の上に、半田109により固定する。
なお、制御回路チップ104とコンデンサ105を絶縁基板106の上に固定する工程と、MOSFETチップ103,リード電極107、絶縁基板106をベース電極101の台座102の上に固定する工程は、1回の半田炉のベークで同時に行ってもよい。
【0062】
続いて、カーボン冶具から取り出した整流素子S1を構成する組み立て品を、ワイヤボンディング装置(不図示)を用いて、制御回路チップ104とMOSFETチップ103,制御回路チップ104と台座102、制御回路チップ104と絶縁基板106、絶縁基板106と台座102の上の電極間を、ワイヤ115を用いて接続する。
【0063】
その後、MOSFETチップ103、制御回路チップ104の側壁にJCR113を塗布し、ベース上に台座102と台座上の部品(103、104、105)をトランスファモールド方式もしくはポッディング方式で樹脂108により覆う。
【0064】
その後、キュア炉(不図示)で樹脂108の硬化を行い、整流素子S1の組み立てが完成する。
なお、MOSFETチップ103とリード電極107、絶縁基板106とコンデンサ105との間の半田付けの工程を、1回目の半田付けの工程では行わず、ワイヤボンディング工程を行った後に行ってもよい。
【0065】
<整流素子S1の放熱板への固定方法>
次に、
図1〜
図5を用いて説明した整流素子S1の特徴とその効果を説明する。
図6は、オルタネータ(
図19参照)の放熱板119に固定した圧入型の整流素子S1の側面図である。
【0066】
図6において、MOSFETチップ103を用いる整流素子S1は、ベース電極101をオルタネータ(Ot:
図19)の放熱板119の取り付け孔119hに圧入により、放熱板119に固定される。
圧入で固定する場合においては、
図6に示すように、ベース電極101の外周部101sに、上面視で凹凸状の(径方向に凹凸が設けられる)形状を有するローレット101rが形成される。
【0067】
固定作業の際、整流素子S1は、円形の外周部101sを有するベース電極101にMOSFETチップ103が実装されることにより、整流素子S1のベース電極101の円形の外周部101sの中心(中心軸O)をオルタネータの放熱板119の孔119hの中心に合わせることで、整流素子S1パッケージの回転軸(
図1のベース電極101の円形の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置を合わせることなく、MOSFETチップ103を用いる整流素子S1を、オルタネータOtの放熱板119の取り付け孔119h内に容易に固定できる。
つまり、整流素子S1のベース電極101は、放熱板119に設けたベース電極101の外周部101sの直径よりも小さい円形の取り付け孔119hに圧入され固定される。
【0068】
このような圧入型の整流素子S1の場合、円形の外周部101sを有するベース電極101によって、ベース電極101の外周部101sの中心(中心軸O)を孔119hの中心に合わせることで、回転軸(中心軸O)周り方向の位置合わせが不要である。
すなわち、ベース電極101の外周部101sと放熱板119に設けた取り付け孔119hとの厳密な位置合わせが不要であり、整流素子S1の放熱板119への固定が簡単になる。
【0069】
オルタネータOtの放熱板119には、多数個のMOSFETチップ103の整流素子S1を取り付ける必要があるため、MOSFETチップ103の整流素子S1をオルタネータOtに容易に固定できることにより、オルタネータOtの製造工程を簡素化し、低コスト化を図れる。
【0070】
<第1実施形態の効果>
以上のMOSFETを用いた半導体装置である整流素子S1によって、電圧損失、電力損失が少ない整流素子が提供できる。
また、外部電極が2端子であり、かつベース電極(第1の外部端子)101が円形の外周部を有し、リード端子(第2の外部端子の一部)107が、前記ベース電極101の円形の中心軸上に位置しているので、従来において一般的に用いられていたダイオード素子との互換性があるという効果がある。
また、そのため、従来の部品、装置をそのまま用いることができて、製造コストを低く抑えることができるという効果がある。
【0071】
≪第1実施形態の変形例:半導体装置、整流素子S1B≫
次に、第1実施形態の変形例(整流素子S1B)として、整流素子S1の台座102の形状を変えた例を示す。
図7は、第1実施形態に係る半導体装置(整流素子)の変形例である整流素子S1Bの構成を示す上面図である。
図7において、台座102の形状は、角の部分を除いて方形である。ベース電極101の台座102は、
図1に示した整流素子S1では、円形としたが、円形ではなく、
図7に示すような方形(略方形)にしてもよい。
【0072】
図1で示した整流素子S1のように、台座102を上面視で円形とした場合、台座面の端部を均一化でき、熱疲労試験で測定される耐熱疲労性、温度サイクル試験で測定される耐温度特性の信頼性を向上することができる。
【0073】
一方、
図7で示した変形例の整流素子S1Bのように台座102を上面視で方形(略方形)とした場合、矩形のMOSFETチップ103、コンデンサ105、および制御回路チップ104の形状に沿う形となり、面積効率よく台座上に部品(103、104、105)を搭載することができる。
そのため、台座102が上面視で円形の場合よりも、より大きい形状のMOSFETチップ103やコンデンサ105を搭載することが可能となる。
【0074】
また、台座102が方形である場合においても、
図7の変形例の整流素子S1Bのように、上面視で方形の台座102の角の形状に曲率を設けることで、形状の変化がなだらかになり、熱疲労試験で測定される耐熱疲労性、温度サイクル試験で測定される耐温度特性の信頼性の悪化を抑制することが可能である。
【0075】
≪第1実施形態の変形例:半導体装置、整流素子S1C≫
次に、第1実施形態の変形例(整流素子S1C)として、整流素子(S1)にさらにツェナーダイオード121を備えた例を
図8、
図9を参照して説明する。
図8は、第1実施形態に係る半導体装置(整流素子)の変形例である整流素子S1Cの構成を示す上面図である。
また、
図9は、
図8のIV−IVにおける断面図であり、
図8の紙面視において左側から見た図である。
図8、
図9において、整流素子S1Cは、さらにツェナーダイオード121を台座102上にMOSFETチップ103と隣接する位置に配置する。このツェナーダイオード121によって、整流素子S1Cに加わるサージ電圧を吸収する機能を持たせる。
【0076】
そして、
図9に示すように、MOSFETチップ103と同様、ツェナーダイオード(ツェナーダイオードのチップ)121の下面のカソード電極(第1の主端子)121cを台座102を介してベース電極(第1の外部電極)101に、ツェナーダイオード121の上面のアノード電極(第2の主端子)121aをリード電極(第2の外部電極)107に、半田109を用いて電気的に接続する。
【0077】
これにより、ツェナーダイオード121の下面のカソード電極121cの延在面と上面のアノード電極121aの延在面とが、それぞれ半田109を介して、広い伝熱面積をもって、ベース電極101の台座102の延在面とリード電極107の下面(延在面)とに接続(連結)されている。この構成により、ツェナーダイオード121の熱が良好にベース電極101とリード電極107とに逃がすことができる。
【0078】
ツェナーダイオード121の上面視での面積は、サージ吸収時にチップ温度が上昇して、ツェナーダイオード121の上下に位置する半田109に不良が生じることがない範囲で大きくする。
ツェナーダイオード121の上下を、半田109で、それぞれリード電極107、ベース電極101に接続することで、サージ吸収時にツェナーダイオード121で発生した熱を、リード電極107およびベース電極101に逃がすことができる。そのため、ツェナーダイオード(ツェナーダイオードのチップ)121の温度上昇を抑えることができ、ツェナーダイオード121の信頼性が高まる。
【0079】
図8に示すように、ツェナーダイオード(ツェナーダイオードのチップ)121をMOSFETチップ103と別チップとした場合、高価なMOSFETチップ103の面積を小さくできるので、両チップ(121、103)を同一のチップに搭載した場合と比べ、安価にサージ吸収機能を持たせることができる。
【0080】
≪第1実施形態の変形例:半導体装置、整流素子S1D≫
第1実施形態の整流素子S1において、MOSFETチップ103は、チップ上面のソース電極103sとチップ下面のドレイン電極103dに加えチップ上面にゲート電極103gも持つ。このため、円形の外周部101sを有するパッケージにMOSFETチップ103を実装する場合、ゲート電極103gの配線を形成する工程における回転軸(
図1の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせが課題となる。
次に、第1実施形態の変形例(整流素子S1D)として、整流素子(S1)に位置決めに用いるノッチ122を設けた例を、
図10を参照して説明する。
図10は、第1実施形態に係る半導体装置(整流素子)の変形例である整流素子S1Dの構成を示す上面図である。
図10に示すように、ゲート電極103gの配線を形成する工程において、回転軸(
図10の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせをする方法として、ベース電極101の外周部101sの円形形状の一部に、
図10の上面図に示すような半円形の形状の窪みであるノッチ122を設ける。ノッチ122の数は1個でも複数個でもよい。
【0081】
オルタネータOt(
図19参照)に圧入して固定する整流素子S1(SID)の場合には、前記したように、
図5に示すベース電極101の外周部101sの側壁にローレット101rと称される山と溝が上下方向に走る凹凸を設けている。なお、この凹凸は、径方向(外周外方)に向いた方向に形成される。
回転軸(
図10の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせ用のノッチ122は、ローレット101r(
図5参照)の溝より大きくする。なお、
図10では、ローレット101rの表記を省略して示している。
【0082】
組み立てに用いるカーボン冶具(不図示)に形成するベース電極101を固定する穴の形状は、ノッチ122を有するベース電極101の形状に合わせ、ある回転軸周り方向の位置でのみベース電極101が穴に入るようにする。
【0083】
更に、ワイヤボンディングの装置では、ノッチ122の方向に合わせて、ベース電極101を固定できるようにする。
この構成によって、MOSFETの整流素子S1Dにおいても、整流素子S1D内の部品(103,104,105等)の配置が明らかにできるので、半田付けに際して回転軸周りの位置合わせが不用で、ベース電極101の外周部101sが円形のパッケージに容易に組み立てることが可能となる。
【0084】
なお、整流素子の変形例である整流素子S1Dは、整流素子S1とは、前記したノッチ122が異なる以外は同一であるので、その他の重複する説明は省略する。
【0085】
≪第1実施形態の変形例:半導体装置、整流素子S1E≫
次に、第1実施形態の変形例(整流素子S1E)として、整流素子(S1)に位置決めに用いるオリフラ123を設けた例を、
図11を参照して説明する。
図11は、第1実施形態に係る半導体装置(整流素子)の変形例である整流素子S1Eの構成を示す上面図である。
図11に示すように、ゲート電極103gの配線を形成する工程において、回転軸(
図11の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせをする方法として、ベース電極101の外周部101sの円形形状の一部に、
図11の上面図に示すような円周部を直線の形状にしたオリエンテーションフラット(Orientation Flat、以下、適宜「オリフラ」と称す)123を設ける。
図11におけるオリフラ123は、
図10におけるノッチ122と概ね同様の役目と効果があり、重複する説明は省略する。
【0086】
≪第1実施形態の変形例:半導体装置、整流素子S1F≫
次に、第1実施形態の変形例(整流素子S1F)として整流素子(S1)に位置合わせに用いる凹部124を設けた例を
図12を参照して説明する。
図12は、第1実施形態に係る半導体装置(整流素子)の変形例である整流素子S1Fの構成を示す
図1のI−I断面相当図である。
図12において、回転軸(
図12の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせをする別の方法として、ベース電極101の底部に
図15に示すような凹部124を設けている。
【0087】
凹部124は、ベース電極101を下から見て(
図12の下側からベース電極101を見て、「下面視」とも適宜、表記する)外周部101sの円の中心軸Oに対称でなければ、凹部124の下面視での平面上の形状は円でも正方形でも長方形でもよいし、凹部124の深さ方向の形状は柱状でも球状でもよいし、凹部124の位置は中心軸Oにかかってもよいし、中心から離れていてもよい。また、凹部124の数は1個でも複数個でもよい。なお、凹部124の下面視での平面上の形状は、回転軸周り方向の位置合わせが容易であることから、円形が好ましい。
【0088】
組み立てに用いるカーボン冶具にベース電極101を固定する固定用孔に、凹部124の形状に合わせた位置合わせの突起を設け、既定の回転軸(
図125の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置でしかベース電極101が固定用孔に入らないようにする。
【0089】
更に、ワイヤボンディングの装置のセット用の穴においても、ベース電極101の固定部に凹部124の形状に合わせた固定用突起を設け、既定の回転軸周り方向の位置でしかベース電極101が、セット用の穴に入らないようにする。こうすることで、MOSFETを用いる整流素子S1においても、外周部101sが円形のパッケージに容易に組み立てることが可能となる。
【0090】
回転軸(
図125の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせをする更に別の方法として、回転軸周り方向の位置合わせをする機構をワイヤボンディング装置に持たせる。
例えば、回転軸周り方向の位置合わせをする機構は、コンデンサ105等の部品の配置を確認するCCD等の視認装置、回転位置を制御するモータと、その減速機構と、減速機構で回動され位置合わせを行う回転部材と、回転位置センサと、これらを制御してワイヤボンディングの位置合わせの制御を行う制御装置とを有している。
【0091】
そして、台座102上に半田109で固定したMOSFETチップ103、制御回路チップ104、コンデンサ105等の部品の配置を視認装置で見て、回転軸周り方向の位置合わせを上記機構で行った後に、必要なワイヤボンディングを行う。この場合、カーボン冶具での位置合わせを不要とするために、1回の半田付け工程でワイヤボンディング以外の電気的な接続を行うようにする。
【0092】
≪第1実施形態の変形例:半導体装置、整流素子S1G≫
次に、第1実施形態の変形例(整流素子S1G)として、位置合わせをする別の方法を説明する。
図13は、第1実施形態に係る半導体装置(整流素子)の変形例である整流素子S1Gの構成を示す
図1のII−II断面相当図である。
回転軸(
図13の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせをする更に別の方法として、
図13に示すように、ワイヤボンディングで形成するワイヤの代わりに、接続が可能な形状に形成される銅板もしくは銅線125を半田ボールもしくは半田バンプ126で固定して接続する。
【0093】
例えば、
図1において、ワイヤ115で接続していた配線は、
図13に図示していないものも含め、全て接続が可能な形状に形成される銅板もしくは銅線125にて半田ボールもしくは半田バンプ126で接続する。
そして、銅板もしくは銅線125の半田付けの工程は、MOSFETチップ103、リード電極107、制御回路チップ104、絶縁基板106、コンデンサ105を接続する半田付けの工程と同時に行う。
【0094】
すなわち、1回の半田付けの工程で全ての部品の電気的な接続を行う。1回の工程で全ての電気的な接続を行うことで、回転軸(
図16の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせをする必要を無くすことができる。
ただし、絶縁基板106の上の配線、すなわち、制御回路チップ104と絶縁基板106の上の電極間の配線は、別途、ワイヤ115で接続して配線してもよい。
その理由は、絶縁基板106の形状は四角形(方形)であり、絶縁基板106についての回転軸方向の位置合わせは不要であるためである。台座102上でのMOSFETチップ103と絶縁基板106との位置関係は、カーボン冶具(不図示)によって決定され、回転軸方向の位置合わせは問題とならない。
なお、接続を行う導体として、銅板もしくは銅線125を例示したが、銅以外の導体を用いてもよい。
【0095】
≪第1実施形態の変形例:半導体装置、整流素子S1H≫
次に、第1実施形態の変形例(整流素子S1H)として、位置合わせを不要とする方法を説明する。
図14は、第1実施形態に係る半導体装置(整流素子)の変形例である整流素子S1Hの構成を示す
図1のII−II断面相当図である。
図13では、銅板もしくは銅線125を半田で接続する例を示したが、
図14に示すように、バネ機構を有する銅ピンのバネ付ピン146A、146Bを用い、バネ付ピン146A、146Bのバネの弾性力で電気的に接続してもよい。
【0096】
具体的の構成としては、バネ付ピン146Aとバネ付ピン146Bとが、銅バー147aで固定されている。
バネ付ピン146Aは、下部に端子146a1、中央にバネ146b1、上部に固定部146c1を有している。また、バネ付ピン146Bは、下部に端子146a2、中央にバネ146b2、上部に固定部146c2を有している。
【0097】
そして、バネ146b1、146b2の弾性力でそれぞれ端子146a1、146a2を制御回路チップ104の第2の電極104d(
図1参照)に、絶縁基板106の電極114とベース電極101の台座102とに、押して、半田バンプ(126、
図13)なしで、絶縁基板106の電極(不図示)とベース電極101の台座102とが電気的に接続される。
【0098】
なお、銅バー147aは、ネジ等(不図示)を用いて絶縁基板106等に仮固定され、その後、
図14に示すように樹脂108により封止され固定される。
前記した如く、配線にワイヤ115に代えて、上述のバネ付ピン146A、146Bを用いることで、配線の接続不良に対する信頼性を向上させることができる。
図1においてワイヤ115で接続していた配線は、
図17に図示していないものも含め、
図14に図示した銅バー147aで固定したバネ付ピン146A、146Bで接続する。
そして、銅バー147aで固定したバネ付ピン146A、146Bを電極に接続する工程は、MOSFETチップ103、リード電極107、制御回路チップ104、絶縁基板106、コンデンサ105を接続する半田付けの工程と同時に行う。
すなわち、1回の半田付けの工程で全ての部品の電気的な接続を行う。1回の工程で全ての電気的な接続を行うことで、回転軸(
図16の外周部101sの中心軸O)周り方向の位置合わせをする必要を無くすことができる。
【0099】
≪第2実施形態:半導体装置、整流素子S2≫
図15〜
図17を参照して、本発明の第2実施形態に係る半導体装置(整流素子S2)の構成について説明する。
整流素子には正座の構成と逆座の構成があると前記したが、第1実施形態の整流素子(半導体装置)S1が正座の整流素子に対し、第2実施形態の整流素子(半導体装置)S2は、逆座の整流素子である。
【0100】
図15は、整流素子S2を後記する電極ブロック127によりベース電極101に接続されたソース電極103s側から、リード端子107t(リード電極107)側を見た図である。
また、
図16は、
図15のV−Vおける断面図であり、
図15の紙面視において左側から見た図である。
また、
図17は、
図15のVI−VIにおける断面図であり、
図15の紙面視において左側から見た図である。
図15は、前記したように、整流素子S2をソース電極103s側からリード端子107t(リード電極107)側を見た図である。すなわち、
図16におけるソース電極103s側からリード端子107t(リード電極107)側を見ているので、ベース電極101は見えていない。また、リード端子107tは、リード電極107に隠れている。
そのため、
図15において、ベース電極101は、図示されていない。
【0101】
ただし、台座107dは、MOSFETチップ103、制御回路チップ104、コンデンサ105、絶縁基板106を搭載していることを分かりやすくするために、便宜上、表記している。
なお、台座107dは、リード電極107の前記部品(103、104、105、106)を搭載する面を表記しているものであって、リード電極107の一部分である。
また、
図15において、前記したリード電極107との配置関係から、リード端子107tは、直接には見えないため破線(円形)で表記している。
また、ソース電極103s側から見ているので、ソース電極103sは実線で表記され、ドレイン電極103dはソース電極103sの陰に隠れるので、ドレイン電極103dの引き出し線を破線で表記している。
【0102】
図15〜
図17に示すように、第2実施形態に係るMOSFETの整流素子S2は、四角形の外周部107sを有するリード電極107(
図15参照)と、このリード電極107に設けられる部品を載せる台座107dと、この台座107d上に載せられたMOSFETチップ103と、台座107d上に載せられた絶縁基板106とを備えている。
さらに、整流素子S2は、絶縁基板106上に設けられた電極112aの上に実装されると制御回路チップ104と、絶縁基板106の上に設けられた電極112b、112cの上に実装されるとコンデンサ105とを備えている。
さらに、整流素子S2は、MOSFETチップ103の上に載せられた電極ブロック127(
図16参照)と、ベース電極101と、このベース電極101に設けられる台座102と、リード電極107に設けられる台座107dと、部品(103、104、105)と絶縁基板106を覆う樹脂108とを備えている。
【0103】
逆座の整流素子S2のMOSFETチップ103、制御回路チップ104、コンデンサ105、絶縁基板106は、第1実施形態で示す正座の整流素子S1(
図1〜
図3参照)と同じものを用いる。
このように、正座の整流素子S1と逆座の整流素子S2で同一の部品を用いることで、部品の量産化により部品コストを低減することができる。
【0104】
図15において、
図16のベース電極101の台座102からリード電極107の方を見た(「下面視」とも適宜、表記する)リード電極107の台座107dの形状は、四角形としたが、円形にしてもよい。
リード電極107の台座107dを下面視で四角形にすることにより、同じく四角形のMOSFETチップ103、制御回路チップ104、およびコンデンサ105の形状に沿った形状になるので、台座107dの面積を小さくすることができる。
一方、リード電極107の台座107dを、下面視で円形にした場合には、応力の集中を回避して、台座107d端部の応力をより小さくすることができる。
【0105】
第2実施形態の
図15〜
図17に示す各部品の接続、配置は、部品(103〜106)をベース電極101とリード電極107とを入れ換えて接続し、MOSFETチップ103とベース電極101との間に電極ブロック127を入れている点を除き、
図1に示す第1実施形態に係るMOSFETの整流素子S1と同じである。
電極ブロック127は、ベース電極101とリード電極107の台座107dとの間隔を設けるための部材である。
すなわち、
図17に示すように、逆座の整流素子S2においては、リード電極107(台座107d)とベース電極101(台座102)との間にコンデンサ105を配置している。そのため、比較的、高さのあるコンデンサ105を配置する空間を確保する必要があり、リード電極107(台座107d)とベース電極101(台座102)を充分な間隔を有するように離す。
リード電極107(台座107d)とベース電極101(台座102)の間隔が大きくなると、
図16に示すように、リード電極107の台座107dに取り付けられたMOSFETチップ103とベース電極101の台座102とが離れすぎてしまい電気的接続や固定が困難になる。
この離れすぎたMOSFETチップ103とベース電極101の台座102との間隔を補うのが電極ブロック127の役目である。
なお、ベース電極101に一体として、電極ブロック127を形成してもよい。
【0106】
図16に示すように、MOSFETチップ103の下面のドレイン電極103dは、半田109を用いて、リード電極107の台座107dに電気的に接続されている。
この配置と接続により、MOSFETチップ103の下面のドレイン電極103dの延在面とリード電極107の延在面とは、半田109を介して、大きな伝熱面積で接続(連結)される。
また、MOSFETチップ103の上面のソース電極103sは、半田109を用いて、電極ブロック127を介しベース電極101の台座102に電気的、熱的に接続されている。
【0107】
これにより、MOSFETチップ103の上面のソース電極103sの延在面とベース電極101の台座102の延在面とは、電極ブロック127を介して大きな伝熱面積で接続(連結)される。
【0108】
図17に示すように、制御回路チップ104は、絶縁基板106の上に設けられた電極112aに半田109により固定される。
制御回路チップ104とコンデンサ105は、絶縁基板106の上に設けられた電極112b、112cに半田109により固定される。
絶縁基板106は、リード電極107の台座107dに半田109により固定される。
また、電気的には
図15に示すように、MOSFETチップ103の上面(ソース電極側の面)のゲート電極103gは、ワイヤ115で制御回路チップ104の上面(制御回路チップ104、コンデンサ105のある側の面)の第1の電極104aに接続される。
また、同じく電気的には、コンデンサ105の高電圧側端子110は、半田109で絶縁基板106の上面の電極112bに接続される。また、絶縁基板106の上面の電極112bは、制御回路チップ104の上面に設けられた第2の電極104b(
図15参照)にワイヤ115で接続される。
【0109】
また、同じく電気的に、コンデンサ105の低電圧側端子111は、半田109で絶縁基板106の上面の電極112cに接続される。また、絶縁基板106の上面の電極112cはMOSFETチップ103の上面のソース電極103sにワイヤ115により接続される。
【0110】
前記したように、
図15に示す如く、逆座の整流素子S2は、制御回路チップ104の上面の電極の1つである第1の電極104aが、MOSFETチップ103のゲート電極103gにワイヤ115により電気的に接続される。
また、制御回路チップ104のチップ上面の別の電極である第2の電極104bは、コンデンサ105の高電圧側端子110と接続された絶縁基板106の上面の電極112b3にワイヤ115により電気的に接続される。
【0111】
さらに、制御回路チップ104の上面の別の電極の第3の電極104cは、MOSFETチップ103のソース電極103sに電気的に接続され、制御回路チップ104のチップ上面の別の第4の電極104dは、リード電極107の台座107dにワイヤ115により電気的に接続されている。
【0112】
<逆座と正座の補足>
図1〜
図3を参照して説明した第1実施形態に係るMOSFETの整流素子S1は、正座と呼ばれるオルタネータOtの整流回路の上アーム(
図18参照)に用いられる整流素子であり、
図2に示すように、MOSFETチップ103のドレイン電極103dは、ベース電極101に接続され、MOSFETチップ103のソース電極103sは、リード電極107に接続されている。
【0113】
これに対し、
図15〜
図17を参照して説明する本発明の第2実施形態に係るMOSFETの整流素子S2は、逆座と呼ばれるオルタネータOtの整流回路の下アーム(
図18参照)に用いられる整流素子である。
図16に示すように、MOSFETチップ103のドレイン電極103dは、リード電極107に接続され、MOSFETチップ103のソース電極103sはベース電極101に接続されている。
このようにして、逆座の整流素子S2を実現し、用いることができる。
【0114】
<整流素子S2の回路構成および回路動作>
第2実施形態に係るMOSFETの整流素子S2の回路構成および回路動作は、
図5を用いて説明した第1実施形態に係るMOSFETの整流素子S2の回路構成および回路動作と同じである。
第1実施形態の正座の整流素子S1と同じ部品、同じ回路を第2実施形態の逆座の整流素子S2に用いることで、設計コスト、開発コストを低減できるとともに、同一のテストを実施してテストコストも低減することができる。また、同じ部品、同じ回路の量産化によるコスト低減も図れる。
【0115】
第2実施形態に係るMOSFETの整流素子S2の特徴と効果に関して、前記した第1実施形態に係るMOSFETの整流素子S1と同じ特徴を持たせ、同じ効果を得ることができる。
【0116】
<整流素子S2の組み立て方法>
第2実施形態に係るMOSFETの整流素子S2を組み立てる方法は、基本的には、第1実施形態に係るMOSFETの整流素子S1と同じである。
異なる点として、ベース電極101の台座102ではなく、
図16、
図17に示すように、リード電極107の台座107dの上に、MOSFETチップ103と、制御回路チップ104とコンデンサ105を固定した絶縁基板106に部品(103、104、105)を載せて接続する。
【0117】
そして、MOSFETチップ103とベース電極101の間に、電極とスペーサを兼ねる電極ブロック127を設ける。更に、リード電極107の台座107dは下面視で円形にする必要がないので、必ずしも第1実施形態に係るMOSFETの整流素子S1で行うような組み立て時に回転軸方向の位置合わせをする方法を取り入れなくてもよい。例えば、リード電極107の台座107dを、
図15に示す下面視で方形とした場合にはその辺を用いて部品(103、104、105)の位置出しが行える。
【0118】
これに対して、リード電極107の台座107dを下面視で円形とする場合、台座107d上の配置を特定し難いので、第1実施形態に係るMOSFETの整流素子S1の場合と同様の
図10〜
図12に示すような回転軸(中心軸O)周り方向の位置合わせをする方法を適用する。
【0119】
≪第3実施形態:オルタネータ≫
次に、第1実施形態の整流素子S1、第2実施形態の整流素子S2を備えて、構成するオルタネータOtについて、
図18〜
図20を参照して説明する。オルタネータOtは、発電機(回転子128、固定子129)で交流電力(電圧)を発生し、その交流電力(電圧)を整流装置Osで整流し、直流電力(電圧)を生成して出力するものである。
図18は、整流素子6個を用いた3相全波整流(整流装置Os)の回路構成を示す回路図である。
図19は、オルタネータOtの構成、構造の概要を示す図である。
図20は、オルタネータOtに備えられる整流装置Osの概略の平面図である。
【0120】
<オルタネータOtの整流回路の構成>
図18を参照して、本発明の自律型のMOSFETの整流素子S1、S2を用いたオルタネータOt(
図19参照)の整流回路の構成について説明する。
【0121】
図18は、前記したように整流素子6個を用いた3相全波整流(整流装置Os)の回路構成を示す回路図である。
【0122】
図18において、3相全波整流の回路は、正座の整流素子S1が3個と逆座の整流素子S2が3個とによって、構成されている。
回転子128のコイルと固定子129の3本のコイルを備える交流発電機の3相出力であるU相、V相、W相の電圧(電力)を前記の3相全波整流の回路は入力して、直流に変換し、直流電圧(電力)をバッテリ132に出力する。
【0123】
次に、より詳しく説明する。
交流電圧(電力)のU相、V相、W相の中点配線(上アームと下アームの接続点、中間点への配線)のハイサイド(高電圧側:バッテリ132の高電圧側端子132hとの間)に、3個の第1実施形態の正座の整流素子S1が設けられて、それらのL端子(ソース電極103s)がU相、V相、W相の中点配線にそれぞれ接続されている。
これら3個の正座の整流素子S1のH端子(ドレイン電極103d)が共にバッテリ132の高電圧側端子132hに接続されている。
また、U相、V相、W相の中点配線のローサイド(低電圧側:バッテリ132の低電圧側端子132lとの間)に、3個の第1実施形態の逆座の整流素子S2が設けられて、それらのH端子(ドレイン電極103d)がU相、V相、W相の中点配線にそれぞれ接続されている。
これら3個の逆座の整流素子S2のL端子(ソース電極103s)が共にバッテリ132の低電圧側端子132lに接続されている。
なお、U相、V相、W相の配線を「中点配線」とも表記するのは、前記のように、整流装置Osの上アームと下アームの接続点(中間、中点)に配線がされているからである
【0124】
整流素子S1、S2の回路構成は、
図5に示す回路構成であり、MOSFETチップ103と制御回路チップ104とコンデンサ105とで構成される。
ハイサイド(上アーム)の整流素子S1とローサイド(下アーム)の整流素子S2は、同じMOSFETチップ103と制御回路チップ104とコンデンサ105とを用いる。
【0125】
MOSFETの整流素子S1、S2は、端子数を2個とすることで、
図18に示すように、従来のダイオードの整流素子(端子数2個)を用いたオルタネータと同じ整流回路の構成とすることができる。
【0126】
また、
図18において、交流発電機の3本のコイルの固定子129は、Δ結線の場合を図示したが、Y結線であっても構わない。
【0127】
<オルタネータOtの整流回路の動作>
図18に示す本発明のMOSFETの整流素子S1、S2を用いたオルタネータOtの整流回路の動作を説明する。
【0128】
図19に示すオルタネータOtでの発電は、固定子(のコイル)129の中を回転子(のコイル)128が回転することで行われる。このとき、U相、V相、W相の各相のコイルには交流電圧(電力)が発生する。
U相を例にとれば、前記の交流電圧(電力)によって、U相の中点配線の電圧Vuが周期的に上下する。
【0129】
U相の中点配線の電圧Vuが上昇し、ハイサイドの整流素子S1が整流動作する場合について説明する。
U相の中点配線の電圧Vuが上昇し、U相の中点配線の電圧Vu、すなわち、ハイサイドのMOSFETチップ103のソース端子(ソース電極103s)の電圧が、バッテリ132の高電圧側端子132hの電圧VBに達すると、
図5に示すMOSFETチップ103のドレイン端子(ドレイン電極103d)に接続されたコンパレータ116の第一の入力端子116i1の電圧より、コンパレータ116の第二の入力端子116i2の電圧の方が大きくなる。このため、コンパレータ116の出力端子116oの電圧が低電圧状態から高電圧状態へと上がる。
【0130】
そして、ゲートドライバ117が駆動してMOSFETチップ103のゲート端子(ゲート電極103g)の電圧を上げて、MOSFETチップ103をオン状態にする。
これにより、MOSFETチップ103のソース端子(ソース電極103s)からドレイン端子(ドレイン電極103d)に電流が流れ、整流が遂行される。
【0131】
図18に示すU相の中点配線の電圧Vuが下降して、U相の中点配線の電圧Vuが、ハイサイドのMOSFETチップ103のドレイン端子(ドレイン電極103d)の電圧のVBに達すると、
図5におけるコンパレータ116の2つの入力端子(116i1、116i2)における電圧の大小が逆転して、コンパレータ116の出力端子116oの電圧が高電圧状態から低電圧状態へ下がる。
それによって、ゲートドライバ117がMOSFETチップ103のゲート端子(ゲート電極103g)の電圧を下げて、MOSFETチップ103をオフ状態、つまりソース端子(ソース電極103s)とドレイン端子(ドレイン電極103d)との電気的接続を切断する。
【0132】
ローサイド(下アーム)の整流素子S2の整流動作も、上述のハイサイド(上アーム)の整流素子S1の動作と同様であり、U相の中点配線の電圧Vuが更に下降してバッテリ132の低電圧側端子の電圧に達すると、MOSFETチップ103をオン状態になり、U相の中点配線の電圧Vuが再び上昇してバッテリの低電圧側端子の電圧に達すると、MOSFETチップ103がオフ状態になり、整流を行う。
【0133】
以上、U相の整流素子S1と整流素子S2について説明したが、V相、W相についても同様である。
これらのU相、V相、W相にそれぞれ接続された3個ずつ合計6個の整流素子S1、S2によって、3相全波整流が行われる。
【0134】
<オルタネータOtの構成・構造の概要>
図19および
図20を参照して、MOSFETによる整流素子S1、S2を用いたオルタネータOtを説明する。
図19は、本発明の実施形態に係るオルタネータOtの構成の概要を示す図である。整流素子(S1、S2)をそれぞれ6個、合計12個を用いて3相全波整流の整流回路(整流装置Os)を備えてオルタネータOtを構成している。
【0135】
図19において、オルタネータOtは、フロントフレーム134と、リアフレーム135と、整流素子S1、S2が圧入して固定される整流装置(Os)136と、回転子128と、固定子129と、ブラシ137と、ICレギュレータ138と、保護カバー139とを備えている。
また、スリップリング140と、界磁巻線141とロータコア142と、プーリー143と、シャフト144とを備えている。
また、放熱板119a、119bを有し、前記の整流素子S1、S2を固定した整流装置(Os)136に組み込まれている。なお、接続端子133は整流素子S1、S2を接続している。
【0136】
以上の回転子(コイル)128と固定子(コイル)129を有するオルタネータOtは、ブラシ137、スリップリング140を介し界磁巻線141に励磁電流を受けると各ロータコア142が励磁される。
各ロータコア142が励磁された状態で、プーリー143を介して車両のエンジン(不図示)からの回転駆動力がシャフト144に伝達されて回転子128が回転すると、電磁誘導により、固定子(コイル)129に交流電力(電圧)が発生する。
固定子(コイル)129に発生した交流電力(電圧)は、
図18に示すように、正座の整流素子S1および逆座の整流素子S2で整流され、出力端子145を介して車両に搭載された電気機器の駆動およびバッテリ132用の直流電力(電圧)として出力される。
なお、以上の構成のオルタネータOtは、前記した実施形態の整流素子S1、S2を用いることに特徴がある。その他の構成は、一般的なオルタネータと概ね同じ構成であるので、整流素子S1、S2と整流装置Os以外の詳細な説明は省略する。
【0137】
以上の構成は、放熱板119a、119bも含め、一般的に使用されるダイオードの整流素子を用いたオルタネータと同じ構成であり、MOSFETの整流素子S1、S2を用いることで、オルタネータ自体の構造に変更を加える必要がなくなるので、より一層の低コスト化と汎用性の向上とを実現することができる。
【0138】
図20は、複数の本実施形態(本発明)のMOSFETの整流素子S1、S2を固定した整流装置Osの平面図を示す。
図19における整流装置Osの部分を抜き出して、拡大して示した図である。
図20において、整流素子S1と整流素子S2は、それぞれ符号130と符号131で示している。符号130と同じ形状のものが6個ある。また、符号131と同じ形状のものが6個ある。それぞれの残りの5個については、符号をつけるのを省略している。
また、後記するように整流装置Osには、整流素子S1、S2の発熱を軽減する放熱板119a、119bが備えられている。
符号130で示した整流素子S1は、正極側の放熱板119aに取り付けられており、符号131で示した整流素子S2は、負極側の放熱板119bに取り付けられている。
放熱板119aと放熱板119bは互いに表裏の関係で組み合わされているので整流素子S1と整流素子S2との見え方が異なる。
すなわち、符号130で示した形状と、符号131で示した形状とで、異なって表記しているが、これは整流素子(S1、S2)の上から見た形状と下から見た形状との相違である。
なお、
図18においては、整流素子S1が3個、整流素子S2が3個の場合の整流回路について説明したが、
図20においては、その2倍の個数を用いた整流素子S1が6個、整流素子S2が6個の場合について図示している。
【0139】
図20を、より詳しく説明すれば、整流素子S1、S2(130、131)を固定した整流装置Osは、正座の整流素子S1と、これら複数の正座の整流素子S1が圧入されて固定(
図6参照)される放熱部材の正極側の放熱板119aとを備えている。
また、逆座の整流素子S2と、これら複数の逆座の整流素子S2が圧入されて固定される放熱部材の負極側の放熱板119bとを備えている。
また、正座の整流素子S1と逆座の整流素子S2を電気的に接続し、かつ、正極側の放熱板119aと負極側の放熱板119bとの間に一定の絶縁距離を保つために設けられる接続端子133(
図19)を備えている。
【0140】
正座の整流素子S1のリード電極107と逆座の整流素子S2のリード電極107とが対向して配置され、接続端子133に接続されている。
前記したように、整流素子S1、S2が円形の外周部101sを持つベース電極101を有することにより、複数の整流素子S1、S2をそれぞれ放熱板119a、119bに簡易に圧入して固定できる。
【0141】
また、前記したように、ハイサイド(上アーム)のU相、V相、W相の整流素子は、MOSFETチップ103のドレイン電極103dが共通の端子に電気的に接続されるので、ハイサイドにはドレイン電極103dが放熱性の高いベース電極101に電気的に接続された正座の整流素子S1を用いる。
このため、ハイサイドのU相、V相、W相の整流素子を1つの放熱板119aに固定でき、より大きな放熱板を使うことでより大きな放熱効果を得ることができる。
一方、ローサイド(下アーム)のU相、V相、W相の整流素子は、MOSFETチップ103のソース電極103sが共通の端子に電気的に接続されるので、ローサイドには、ソース電極103sが放熱性の高いベース電極101に電気的に接続された逆座の整流素子S2を用いる。
このように、配置と接続をすることで、ローサイドのU相、V相、W相の整流素子を1つの放熱板119bに固定でき、より大きな放熱板を使うことでより大きな放熱効果を得ることができる。
【0142】
さらに、ハイサイドのU相、V相、W相の整流素子は、MOSFETチップ103のソース端子(ソース電極)103sと、ローサイドのU相、V相、W相の整流素子のMOSFETチップ103のドレイン端子(ドレイン電極)103dとは、各相の固定子129の端子と電気的に接続される。
このように、ハイサイドに正座の整流素子S1を用い、ローサイドに逆座の整流素子S1を用いることで、正座の整流素子S1の細いリード電極107と逆座の整流素子S2の細いリード電極107とが対向して配置され、整流素子のリード電極107と固定子129との電気的な接続が容易になる。
さらに、正極側の放熱板119aと負極側の放熱板119bとの間の間隔をより小さくでき、オルタネータをより小型にすることができる。
整流素子S1、S2が円形の外周部101sを持つベース電極101とベース電極101の上部にリード電極107を有することで、より汎用性の高い放熱板119a、119bを用いることができる。
【0143】
以上、前記の構成によれば、ベース電極101で形成される整流素子S1、S2のパッケージの外形は、上面視で円形をしており、その円形のパッケージをオルタネータOtの電極板の放熱板119a、119bに固定して用いられる。
円形のパッケージを用いることで、ベース電極101の回転軸(中心軸O)周り方向の位置を合わせることなしに、芯出しを行って整流素子S1、S2をオルタネータOtの電極板の放熱板119a、119bに固定することできる。そのため、オルタネータOtの整流装置Osの組み立てが容易になる。
【0144】
これにより、簡便にオルタネータOtに固定することができる電圧損失、電力損失が低いMOSFETを用いた整流素子S1、S2を提供することができる。
特に、これらの整流素子S1、S2は、圧入により簡便に整流装置Os(オルタネータOt)に固定することができて、整流装置Osを組み立てるが容易である。
このように、容易に整流素子S1、S2を整流装置Os(オルタネータOt)に固定できることにより、オルタネータOtの組み立て工程の簡素化が可能であり、低コスト化を図れる。
なお、
図20において、整流素子S1、S2(130、131)と放熱板119a、119bに焦点を絞って説明した。本発明の実施形態のオルタネータOtに用いる整流装置Osは、第1、第2実施形態のS1、S2を用いることに特徴があるので、他の素子や構成については、説明を省略する。
【0145】
≪その他の実施形態≫
以上、本発明は、前記した実施形態、変形例に限定されるものでない。また、それらの特徴と効果を説明したが、説明した特徴のすべても有していなくても構わない。一部の特徴を有していれば、その効果を得ることができる。
以下に、その他の実施形態や変形例について、さらに説明する。
【0146】
<ベース電極101の形状>
第1・第2実施形態のベース電極101は、上面視が円形である円筒状の外周部101sを例示したが、上面視が円形であって側面視の形状が曲率をもつ形状、例えば球状の外周部101sをもつ構成としてもよい。
【0147】
<整流素子S1の半田による固定方法>
図6は、前記のように整流素子S1を放熱板119に圧入で固定する場合について説明をしたが、固定する方法は圧入に限定されない。半田付けで行う固定する方法もある。
半田付けで固定する場合、ベース電極101の外周部101sには、ローレット101rを形成する必要がない。
その代わり、オルタネータの放熱板119に形成する取り付け孔119h内に半田シートを敷く。そして、整流素子S1のベース電極101を放熱板119の取り付け孔119h内に嵌入し、整流素子S1のベース電極101を取り付け孔119h内の半田シートに圧接し、半田炉で半田シートを溶融して、整流素子S1のベース電極101を、半田を介して、放熱板119の取り付け孔119h内に固定する。
【0148】
<位置決めの形状>
図12に示す凹部124に代えて、ベース電極101の外周部101sまたは底面部に位置決め用の凸部を形成し、ベース電極101の外側のセット側に位置決め用凸部が嵌入される凹部を形成し、ベース電極101の位置決め用凸部をセット側の凹部に嵌入し、整流素子S1、S2の位置決めを行うように構成してもよい。
【0149】
<ツェナーダイオードの形成工程>
第1形態の変形例の整流素子S1Cにおいては、ツェナーダイオード121(
図8)をMOSFETチップ103と別のチップとして組み立てる工程を説明した。しかし、製造工程は、前記の方法に限定されない。
すなわち、ツェナーダイオード(121)は、MOSFETチップ103の製造工程と共通する工程で形成し、MOSFETチップ103の内部に搭載してもよい。
ツェナーダイオード(121)をMOSFETチップ103の内部に搭載することで、別チップとした場合と比べ、サージ吸収時に発生した熱をMOSFETチップ103内に逃すことができ、ツェナーダイオード(121)の温度上昇を抑えることができる。
【0150】
そのため、上面視で、より小さいツェナーダイオード121の面積で同等のサージ吸収の機能を持たせることができる。すなわち、MOSFETチップ103とツェナーダイオード121の上面視での合計チップ面積を小さくすることができ、両チップ(121、103)の実装の面積効率をよくすることができる。
【0151】
<MOSFETチップの極性と回路構成>
前記の実施形態では、MOSFETチップ103には、すべてn型チャネルのMOSFETを用いた場合について説明したが、p型チャネルのMOSFETも用いることができる。
p型チャネルのMOSFETを用いる場合、整流の電流を流す方向がn型チャネルのMOSFETとは逆になり、ドレイン電極からソース電極へと整流の電流を流す。したがって、n型チャネルのMOSFETを用いた場合とは、正座と逆座が逆になる。
すなわち、p型チャネルのMOSFETを用いる場合、
図1〜3に示した正座のパッケージの整流素子は、
図18に示した整流回路におけるローサイドの整流素子に使う。
【0152】
また、
図15〜
図17に示した逆座のパッケージの整流素子は、
図18に示した整流回路におけるハイサイドの整流素子に使う。
整流回路のローサイドに用いる整流素子にのみp型チャネルのMOSFETを用いると、ローサイドにはp型チャネルのMOSFETを用いた
図1〜3に示す正座のパッケージの整流素子を使う。また、ハイサイドにはn型チャネルのMOSFETを用いた
図1〜3に示す正座のパッケージの整流素子を使う。
このようにすることで、ハイサイドとローサイドをともに
図1〜3に示す正座の同じパッケージ構造を使うことができ、パッケージの開発コスト、量産での組立てコストおよび部品コストを低減することができる。ただし、p型チャネルのMOSFETを用いる場合には、p型チャネルのMOSFETを制御する制御回路チップが必要となる。
【0153】
図22は、p型チャネルのMOSFETを用いた場合の整流素子の回路構成を示す回路図である。
図22の回路図において、
図1〜3に示す正座のパッケージではL端子がベース電極101、H端子がリード電極107であり、
図15〜17に示す逆座ではL端子がリード電極107、H端子がベース電極101である。
そして、
図1〜3および
図15〜17に示すn型チャネルのMOSFETチップ103に代わり、p型チャネルのMOSFETチップ103pを、n型チャネルのMOSFET用の制御回路チップ104に代わり、p型チャネルのMOSFET用の制御回路チップ104pを用いる。
【0154】
p型チャネルのMOSFETチップ103pは、チップの下面にドレイン電極103pdを、チップの上面にソース電極103psとゲート電極103pgを備え、p型チャネルのMOSFET103mpと並列にダイオード103piを内蔵する。
制御回路チップ104pは、L端子の電圧とH端子の電圧とを比較するコンパレータ116p、ゲート電極103gに電圧を付与するゲートドライバ117p、逆流防止用のダイオード118pを有して構成される。
なお、
図22のコンパレータ116pは、
図5のコンパレータ116における第1入力端子と第2入力端子の極性の関係が逆になっている。すなわち、
図22のコンパレータ116pの第1入力端子は非反転入力端子であり、第2入力端子は反転入力端子である。
【0155】
図22に示した回路は、n型チャネルのMOSFETチップ103を用いた整流素子と同様に動作する。すなわち、H端子(107)の電圧がL端子(101)の電圧より低くなると、コンパレータ116pは低電圧の信号をゲートドライバ117pに出力する。
低電圧の信号が入力されたゲートドライバ117pは、p型チャネルのMOSFETチップ103pのゲート電極103pgの電圧を下げてp型チャネルのMOSFETチップ103pをオン状態にする。
逆に、H端子の電圧がL端子の電圧より高くなると、コンパレータ116pは高電圧の信号をゲートドライバ117pに出力する。高電圧の信号が入力されたゲートドライバ117pは、p型チャネルのMOSFETチップ103pのゲート電極103pgの電圧を上げてp型チャネルのMOSFETチップ103pをオフ状態にする。
【0156】
図22に示す回路は、n型チャネルのMOSFETチップ103を用いた整流素子と同様に、コンパレータ116の代わりに、入力信号の差を検出して増幅する差動増幅器を用いてもよいし、p型チャネルのMOSFETチップ103pに流れる電流の向きで、オン/オフを制御してもよい。
【0157】
<第2実施形態の変形例>
逆座の構成である第2実施形態の整流素子S2については、
図15〜
図17を用いて逆座の構成、構造を主として説明した。一方、第1実施形態の整流素子S1については、変形例として整流素子S1B〜S1Hをあげて説明した。
この第1実施形態の変形例として説明した、「ツェナーダイオードを備える(S1C)」、「ノッチを設ける(S1D)」、「オリフラを設ける(S1E)」、「凹部を設ける(S1F)」、「銅板もしくは銅線を用いる(S1G)」、「銅ピンのバネ付ピンを用いる(S1H)」等の方法は、第2実施形態の整流素子S2にも変形例として適用できる。
なお、第2実施形態の整流素子S2に変形例として適用した場合の詳細な説明は、第1実施形態の整流素子S1の変形例の説明と事実上、重複するので、省略する。
【0158】
<他の電力変換装置>
第3実施形態では、整流素子S1、S2と整流装置OsをオルタネータOtに用いる場合を例示したが、他の電力変換装置に用いてもよい。
特に、従来において、ダイオードを整流素子として用いていた電力変換装置において、MOSFETチップが整流素子である本発明の実施形態を用いた場合には、オルタネータ以外の整流素子を備えた電力変換装置に対しても、前記した効果が期待できる。
例えば、コンバータとインバータを備えた可変周波数の交流電力変換装置などの他の電力変換装置に用いた場合も、本実施形態の整流素子を用いれば、前述した効果と同様の効果を奏する。
【0159】
(本実施形態の補足)
本実施形態の整流素子(半導体素子)S1、S2は、MOSFETを用いている。前記したように、従来の主な整流素子はダイオードを用いていた。以下に、MOSFETを用いた場合とダイオードを用いた場合の電気的な特性の相違について、補足説明をする。
【0160】
<MOSFET特性とダイオード特性の比較>
図21は、従来の主な整流素子であるダイオードと、本実施形態の整流素子であるMOSFETの、それぞれの順方向の電流・電圧特性を比較して示した図である。なお、電圧・電流特性は室温でのものである。
図21において、横軸は整流素子に印加する順方向電圧[V]であり、縦軸は整流素子に流れる順方向電流[A]である。
特性線9000は、従来の整流素子であるPN接合型のダイオードの順方向の特性である。
特性線1000は、本実施形態の整流素子であるMOSFETの整流素子S1、S2を用いたとき順方向の特性である。
【0161】
ダイオードの電圧・電流特性(特性線9000)は、0.7〜0.8Vまで電圧を印加すると順方向電流が流れ始める。これは、ダイオードが内蔵ポテンシャル(PN接合におけるP半導体とN半導体の仕事関数の差)を有するためであり、内蔵ポテンシャルに相当する電圧を超して印加することで、順方向電流を流すことができる。
また、順方向電流が流れる場合においても、ダイオードの整流素子では、内蔵ポテンシャルに相当する順方向電圧降下が存在し、電圧損失および電力損失が生ずる。
【0162】
これに対し、第1・第2実施形態(本発明)のMOSFETの整流素子S1、S2の電圧・電流特性は、MOSFETのゲート電極の電位がチャネルを形成する電位になっていれば、ソース電極とドレイン電極の電位差が0Vを超したときから電流が流れ始める。
これは、MOSFETのソース電極とドレイン電極との間に、チャネルが形成した場合には、ソース電極とドレイン電極とチャネル(ソース−ドレイン間)は、同型の半導体特性を示すためであり、ダイオード素子のようなPN接合が電流経路に存在しないためである。
そのため、MOSFETの整流素子S1、S2は、特性線1000のような内蔵ポテンシャルがない、あるいは非常に少ない(キャリアの濃度差に起因する内蔵ポテンシャルは若干残る)順方向の特性を示し、低い電圧で大きな電流を流すことができ、整流動作時の電圧損失および電力損失を大きく低減することができる。