特許第6263121号(P6263121)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263121ポルフィリン−リン脂質の結合した微小気泡及びそれらの造影剤としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263121
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ポルフィリン−リン脂質の結合した微小気泡及びそれらの造影剤としての使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/22 20060101AFI20180104BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   A61K49/22
   A61K49/00
【請求項の数】44
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-534894(P2014-534894)
(86)(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公表番号】特表2014-532062(P2014-532062A)
(43)【公表日】2014年12月4日
(86)【国際出願番号】CA2012000937
(87)【国際公開番号】WO2013053042
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年8月4日
(31)【優先権主張番号】61/546,663
(32)【優先日】2011年10月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507148294
【氏名又は名称】ユニバーシティー ヘルス ネットワーク
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100103506
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 弘晋
(74)【代理人】
【識別番号】100105072
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 英宣
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,ガン
(72)【発明者】
【氏名】ラベル,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ハイン,エリザベス
【審査官】 春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/044671(WO,A1)
【文献】 特表2009−540904(JP,A)
【文献】 Deshpande N, et al.,Molecular ultrasound imaging: current status and future directions,Clinical Radiology,2010年,Vol.65, No.7,p.567-581
【文献】 Kim C, et al.,Multifunctional microbubbles and nanobubbles for photoacoustic and ultrasound imaging,Journal of Biomedical Optics,2010年,Vol.15, No.1,010510,doi: 10.1117/1.3302808
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/00−49/22
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
PubMed
CiNii
医中誌WEB
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル化されたガスを備えた単分子層を含む微小気泡であって、前記単分子層はポルフィリン-リン脂質結合体を含み、前記ポルフィリン-リン脂質結合体が、1種のリン脂質の脂質側鎖に共有結合された1種のポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体を含む微小気泡。
【請求項2】
100モル%までのポルフィリン-リン脂質結合体を含む請求項1記載の微小気泡。
【請求項3】
40モル%までのポルフィリン-リン脂質結合体を含む請求項1記載の微小気泡。
【請求項4】
30モル%までのポルフィリン-リン脂質結合体を含む請求項1記載の微小気泡。
【請求項5】
20モル%までのポルフィリン-リン脂質結合体を含む請求項1記載の微小気泡。
【請求項6】
5乃至20モル%のポルフィリン-リン脂質結合体を含む請求項1記載の微小気泡。
【請求項7】
5乃至15モル%のポルフィリン-リン脂質結合体を含む請求項1記載の微小気泡。
【請求項8】
10乃至15モル%のポルフィリン-リン脂質結合体を含む請求項1記載の微小気泡。
【請求項9】
約15モル%のポルフィリン-リン脂質結合体を含む請求項1記載の微小気泡。
【請求項10】
ポルフィリン-リン脂質結合体におけるポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体が、ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、ピロフェオホルビド、バクテリオクロロフィル、クロロフィルa、ベンゾポルフィリン誘導体、テトラヒドロキシフェニルクロリン、プルプリン、ベンゾクロリン、ナフトクロリン、ベルジン、ロジン、ケトクロリン、アザクロリン、バクテリオクロリン、トリポルフィリン、ベンゾバクテリオクロリン、広義のポルフィリンおよびポルフィリン異性体から成る群より選択される請求項1乃至9のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項11】
広義のポルフィリンが、テキサフィリン、サプフィリンまたはヘキサフィリンであり、ポルフィリン異性体が、ポルフィセン、転化されたポルフィリン、フタロシアニンまたはナフタロシアニンである請求項10記載の微小気泡。
【請求項12】
ポルフィリン-リン脂質結合体におけるリン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンまたはホスファチジルイノシトールを含む請求項1乃至11のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項13】
リン脂質が、12〜22個の炭素のアシル側鎖を含む請求項12記載の微小気泡。
【請求項14】
ポルフィリン-リン脂質結合体におけるポルフィリンがピロフェオホルビド-a 酸である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項15】
ポルフィリン-リン脂質結合体におけるポルフィリンがバクテリオクロロフィル誘導体である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項16】
ポルフィリン-リン脂質結合体におけるリン脂質が、1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンまたは1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである請求項1乃至9のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項17】
ポルフィリン-リン脂質結合体がピロ(Pyro)-脂質である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項18】
ポルフィリン-リン脂質結合体がオキシ-バクテリオクロロフィル-脂質である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項19】
ポルフィリンが、0〜20個の炭素の炭素鎖リンカーによってリン脂質上のグリセロール基に結合される請求項1乃至13のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項20】
ペグ(PEGylated)乳化剤をさらに含む請求項1乃至19のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項21】
ペグ(PEGylated)乳化剤が約1000〜約5000の分子量を有する請求項19記載の微小気泡。
【請求項22】
ペグ(PEGylated)乳化剤は、N−ポリ(エチレン グリコール メチル エーテル) 5000 カルバモイル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン(MPEG5000−DPPE)、 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N―[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000(DMPE−PEG2000)、 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000(DSPE−PEG2000)、ポリオキシエチレン 40ステアレート(PEG40S)及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項19記載の微小気泡。
【請求項23】
PEGまたはPEG脂質が約10モル%の量で存在する請求項20乃至22のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項24】
微小気泡が実質的に球形であり、約0.8μm〜18μmの直径である請求項1乃至23のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項25】
微小気泡が実質的に球形であり、約1μm〜9μmの直径である請求項1乃至23のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項26】
微小気泡が実質的に球形であり、約2μm〜4μmの直径である請求項1乃至23のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項27】
ポルフィリン-リン脂質結合体は、その中にキレート化された金属、任意的に金属の放射性同位体、を含む請求項1乃至26のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項28】
金属がZn、Cu、Mn、Fe及びPdから成る群より選択される請求項27記載の微小気泡。
【請求項29】
ガスが生物学的に不活発なガスである請求項1乃至28のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項30】
ガスがフッ素化ガスである請求項1乃至28のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項31】
ガスが、大気、0、N、H、C0、N0、貴ガス、炭化水素ガス、ペルフルオロカーボン、ヘキサフルオロ硫黄、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項1乃至28のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項32】
単分子層の残部は、他のリン脂質で実質的に構成される請求項1乃至31のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項33】
リン脂質は、陰イオンリン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項32記載の微小気泡。
【請求項34】
リン脂質は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸(DPPA)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DPPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)、1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DBPC)、1,2−ジアラチドイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DAPC)、1,2−ジリグノセロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DLgPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[リン光体(phosphor)-rac-(1−グリセロール)](DPPG)及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項32記載の微小気泡。
【請求項35】
微小気泡は、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール及びこれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つの添加物を含む溶液中に形成される、請求項1乃至34のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項36】
前記ポリエチレングリコールは、分子量が1000〜6000である請求項35記載の微小気泡。
【請求項37】
標的分子をさらに含む請求項1乃至36のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項38】
前記ポルフィリン-リン脂質結合体において、前記1種のポルフィリン、前記ポルフィリン誘導体または前記ポルフィリン類似体は、前記1種のリン脂質の前記脂質側鎖に、sn−1またはsn−2の位置で共有結合されている請求項1乃至37のいずれか1項に記載の微小気泡。
【請求項39】
微小気泡を製造する方法であって、
ガス、ポルフィリン-リン脂質結合体、及び他のリン脂質を混合することを含み、
前記ポルフィリン-リン脂質結合体が、1種のリン脂質の脂質側鎖に共有結合された1種のポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体を含む方法。
【請求項40】
ガスと混合するに先立って、前記ポルフィリン-リン脂質結合体が、前記他のリン脂質と混合されて脂質薄膜を形成し、続いて緩衝液中で水和される請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記ポルフィリン-リン脂質結合体において、前記1種のポルフィリン、前記ポルフィリン誘導体または前記ポルフィリン類似体は、前記1種のリン脂質の前記脂質側鎖に、sn−1またはsn−2の位置で共有結合されている請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
画像化の遂行で使用されるための請求項1乃至38のいずれか1項記載の微小気泡。
【請求項43】
超音波画像化で使用されるための請求項42記載の微小気泡。
【請求項44】
光音響画像化で使用されるための請求項42記載の微小気泡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
この発明は、微小気泡の分野に関し、より明確には、リン脂質側鎖に結合したポルフィリンから形成された微小気泡に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
微小気泡は、超音波イメージングのための音響コントラストを与える気体充填微小球である。現在、微小気泡は、超音波心臓検査を用いて、診療所において心臓診断のために慣例的に使用され[1]、また、癌の診断及び治療の手掛かりのために使用されている[2],[3]。超音波は、最も手頃で利用しやすい画像診断療法のうちの1つであり、それゆえに、新たに可能となるどのような超音波造影技術も、既存の臨床のインフラストラクチャーに迅速で広範囲の影響を与える可能性を有している。微小気泡研究の拡大する分野は、診断の適用を越えて拡張する。前臨床研究は、種々の疾患および血液脳関門の交差[7],[8]を治療するための超音波トリガ薬物及び遺伝子導入[5],[6]ならびに病態生理学[4]を評価するための分子イメージングに、標的(target)微小気泡を使用している。
【0003】
臨床的に使用される微小気泡は、典型的には、自己組織化リン脂質シェルに組み込まれ、フッ素化ガスから形成されている。そのため、フルオロフォア(fluorophores)は、標的領域への微小気泡の結合を確認するために[9]、または超音波での破裂の際に微小気泡の破壊の証拠のために[10]、微小気泡シェルに容易に組み込むことができる。しかしながら、微小気泡シェルの安定性に対するこれらの分子の存在の影響は、広く研究されておらず、また、シェルの残りの部分に対するフルオロフォアの総割合は最小だった。以前に、私々は、完全にポルフィリンを結合したリン脂質からリン脂質二重層状の構造を形成するための新しいパラダイムを導入した[11]。高いポルフィリン特徴により、これらの構造は、蛍光、光音響、MR及びPETに適した強健な固有の多モードの画像化特性とともに、ユニークな物理的性質を実証した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(発明の要約)
一の側面では、カプセル化されたガスを備える単分子層を含む微小気泡が提供され、前記単分子層はポルフィリン-リン脂質結合体を含み、前記ポルフィリン-リン脂質結合体が、1種のリン脂質の脂質側鎖に、好ましくはsn−1またはsn−2の位置で、共有結合された1種のポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体を含む。
【0005】
さらなる側面では、微小気泡を製造する方法であって、
ガス、ポルフィリン-リン脂質結合体、及び他のリン脂質を混合することを含み、
前記ポルフィリン-リン脂質結合体が、1種のリン脂質の脂質側鎖に、好ましくはsn−1またはsn−2の位置で、共有結合された1種のポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体を含む方法が提供される。
【0006】
さらなる側面では、本明細書に記載される微小気泡を提供すること;かかる微小気泡を対象に投与すること;及び、超音波を用いて標的領域を画像化すること、を含む、対象の標的領域上での超音波画像化を遂行する方法が提供される。
【0007】
さらなる側面では、本明細書に記載される微小気泡を提供すること;かかる微小気泡を対象に投与すること;及び、標的領域で光音響の信号を測定または検知すること、を含む、対象の標的領域を画像化する方法が提供される。望ましくは、本方法は、さらに、標的領域で光音響の信号の増加を測定または検知するに先立って、標的領域で微小気泡を破裂させることを含む。
【0008】
さらなる側面では、画像化を遂行するために、本明細書に記載される微小気泡の使用法が提供される。
【0009】
さらなる側面では、画像化の遂行で用いるために、本明細書に記載される微小気泡が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の実施形態は、以下の説明及び添付図面を参照することで最も理解しやすいであろう。図面において:
図1図1は、ポルフィリン・シェル(「porshe」)微小気泡を容易に形成することが可能であることを示す。A)ガス(底部)をカプセル化して形成されたポルフィリン−脂質(上部)及びporshe微小気泡の概要図。B)15molの%ポルフィリン−脂質(pyropheophorbide−lipid)で生じた微小気泡の画像。C)標準微小気泡手順を用いてporshe微小気泡を生成するための簡単なワンポット合成。
図2図2は、DSPC、PEG40S及び0.01MのPBSの緩衝剤を使用して、ポルフィリン−脂質の混入が、微小気泡構成の産出を改善することを示す。微小気泡の数は、製剤に含まれたポルフィリン−脂質の量の関数として数えられた。微小気泡は3つの一般に用いられているフッ素化されたガスから形成された:ペルフルオロプロパン(perfluoropropane(PFP))、ペルフルオロブタン(perfluorobutane(PFB))及びヘキサフルオロ硫黄(Sulfer hexafluoride(SF6))。5〜15%のポルフィリン−脂質の包含は、リン脂質、界面活性剤及び緩衝剤のこの特定の混合のための最適な微小気泡製剤に帰着する。
図3図3は、porshe微小気泡が血清中の改善された安定性を有することを示す。微小気泡は、ポルフィリン−脂質が15モル%で、またはその脂質なしで形成され、37℃のウシ血清中で培養された。吸光度は、光散乱に基づいた、残りの微小気泡の数を表す。ポルフィリン微小気泡は、ポルフィリン-脂質なしで形成された微小気泡の2倍の半減期を有し、血清中でより安定していた。
図4図4は、ポルフィリン−脂質微小気泡が、ポルフィリン−脂質なしで形成された微小気泡と比較して、2〜3ミクロン前後の優れたサイズ分布を持っていることを示す。微小気泡はコールター・カウンタを使用して測定された。ポルフィリン−脂質で形成された微小気泡が2〜4ミクロンのサイズで大規模かつ明確な集団を有していることが注目される。伝統的な脂質微小気泡は、しばしば、多分散のサイズ分布を示す。
図5図5は、porshe微小気泡のための周波数の関数としての音響減衰を示す。グレー:1.5〜8.5MHz変換器。黒:7〜27.5MHz変換器。Porshe微小気泡は、9〜10MHz間で共振周波数を示す。
図6図6は、porshe及び商用脂質微小気泡についての微小気泡パラメータ及びシェル特性(文献値)の表を示す。ポルフィリン−脂質の含有は微小気泡シェル剛性の増加をもたらす。
図7図7は、マウス頚静脈の増強された標準及び造影超音波イメージングのためのporshe微小気泡の使用を示す。尾静脈注射によってマウスにPorshe微小気泡が注入され、Bモード及びコントラストモード画像の両方が獲得された。18MHzの変換器周波数が画像化に使用された。
図8図8は、マウス中の皮下乳癌(MDA−MB−231)腫瘍異種移植片を画像化する、造影超音波イメージングのためのporshe微小気泡の使用を示す。尾静脈注射によってマウスにPorshe微小気泡が注入され、Bモード及びコントラストモード画像の両方が獲得された。5〜12MHzの変換器周波数が使用された。1cmの尺度図を示す。
図9図9は、porshe微小気泡の溶液からの、5nsパルスレーザー及び10MHzの単一元素変換器から取得された、porshe微小気泡の光音響スペクトル(3つの測定の平均値+/−SD)を示す。
図10図10は、円筒状の井戸の中で画像化されたporshe微小気泡の光音響と超音波の特性を示す。微小気泡(MBs)のPA(上側)及びUS(下側)画像は、ポルフィリン−脂質なしのもの,porshe MBs,及びポルフィリン−脂質なしでプラスチックファントム(phantom)内の直径9mmの井戸で等モルのピロフェオホルビド(pyropheophorbide−a(pyro))で培養されたMBsである。PA画像は、700nmの5nsパルスレーザー及び10MHzの単一元素変換器を使用して得られた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本明細書で記載する「porshe」微小気泡は、ガス(好ましくはフッ化されたガス)をカプセル化するポルフィリン・リン脂質シェルで構成された微小気泡の新しいクラスである。
【0012】
一の側面では、カプセル化されたガスを備える単分子層を含む微小気泡であって、前記単分子層はポルフィリン-リン脂質結合体を含み、前記ポルフィリン-リン脂質結合体が、1種のリン脂質の脂質側鎖に、好ましくはsn−1またはsn−2の位置で、共有結合された1種のポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体を含む微小気泡が提供される。
【0013】
アプリケーションの微小気泡を形成するのに使用されるポルフィリン-リン脂質結合体の例は、本出願人による国際公開WO11/044671号に記載される。
【0014】
一の形態では、カプセル化されたガスを備えた単分子層を含む微小気泡であって、前記単分子層はポルフィリン-リン脂質結合体を含み、前記ポルフィリン-リン脂質結合体が、1種のリン脂質の脂質側鎖に、好ましくはsn−1またはsn−2の位置で、共有結合された1種のポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体を含む微小気泡が提供される。
【0015】
異なる実施形態では、ポルフィリン-リン脂質結合体は、5,10,15,20,30,40,50,60,70,80,及び90モル%を含む、100モル%までの異なるモル%で存在することができる。
【0016】
幾つかの実施形態では、ポルフィリン-リン脂質結合体におけるポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体が、ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、ピロフェオホルビド、バクテリオクロロフィル、クロロフィルa、ベンゾポルフィリン誘導体、テトラヒドロキシフェニルクロリン、プルプリン、ベンゾクロリン、ナフトクロリン、ベルジン、ロジン、ケトクロリン、アザクロリン、バクテリオクロリン、トリポルフィリン、ベンゾバクテリオクロリン、広義のポルフィリンおよびポルフィリン異性体から成る群より選択される。好ましくは、広義のポルフィリンは、テキサフィリン、サプフィリンまたはヘキサフィリンであり、ポルフィリン異性体は、ポルフィセン、転化されたポルフィリン、フタロシアニンまたはナフタロシアニンである。
【0017】
幾つかの実施形態では、ポルフィリン-リン脂質結合体におけるリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンまたはホスファチジルイノシトールを含む。好ましくは、リン脂質は、12〜22個の炭素のアシル側鎖を含む。
【0018】
幾つかの実施形態では、ポルフィリン-リン脂質結合体におけるポルフィリンは、ピロフェオホルビド-a 酸である。
【0019】
幾つかの実施形態では、ポルフィリン-リン脂質結合体におけるポルフィリンは、バクテリオクロロフィル誘導体である。
【0020】
幾つかの実施形態では、ポルフィリン-リン脂質結合体におけるリン脂質は、1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンまたは1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである。
【0021】
幾つかの実施形態では、ポルフィリン-リン脂質結合体は、ピロ(Pyro)-脂質である。
【0022】
幾つかの実施形態では、ポルフィリン-リン脂質結合体は、オキシ-バクテリオクロロフィル-脂質である。
【0023】
幾つかの実施形態では、ポルフィリンは、0〜20個の炭素の炭素鎖リンカーによってリン脂質上のグリセロール基に結合される。
【0024】
幾つかの実施形態では、微小気泡は、ペグ(PEGylated)乳化剤をさらに含み、好ましくは、約1000〜約5000の分子量を有する。好ましい実施形態では、ペグ(PEGylated)乳化剤は、N−ポリ(エチレン グリコール メチル エーテル) 5000 カルバモイル)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン(MPEG5000−DPPE)、 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N―[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000(DMPE−PEG2000)、 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000(DSPE−PEG2000)、ポリオキシエチレン 40ステアレート(PEG40S)及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。特定の実施形態では、PEGかPEG脂質が約10モル%の量で存在する。
【0025】
幾つかの実施形態では、微小気泡は、実質的に球形であり、約0.8μm〜18μmの直径であり、好ましくは約1μm〜9μmの直径であり、さらに好ましくは約2μm〜4μmの直径である。
【0026】
幾つかの実施形態では、ポルフィリン-リン脂質結合体は、その中にキレート化された金属、任意的に金属の放射性同位体、を含む。金属は、好ましくは、Zn、Cu、Mn、Fe及びPdから成る群より選択される。
【0027】
幾つかの実施形態では、カプセル化されたガスが生物学的に不活発なガスである。
【0028】
微小気泡で使用するのに適切なガスは、次のものを含む:大気、0、N、H、C0、N0、貴ガス、炭化水素ガス、ペルフルオロカーボン、他のフッ素化ガス及びこれらの組み合わせ。フッ素化ガスは、それらが、生体外及び生体内での微小気泡のより大きな安定性に帰着する水に可溶でないという理由で好ましい。使用され得る不溶性ガスの他の例は、ヘキサフルオロ硫黄、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン及びこれらの組み合わせを含む。
【0029】
微小気泡製剤に使用される好ましいリン脂質は、12〜24の炭素及び頭部(headgroups)での異なる炭素鎖長を包含し、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸及びホスファチジルグリセロールを含む。さらなる実施形態では、リン脂質は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸(DPPA)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DPPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)、1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DBPC)、1,2−ジアラチドイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DAPC)、1,2−ジリグノセロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DLgPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[リン光体(phosphor)-rac-(1−グリセロール)](DPPG)及びこれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0030】
微小気泡は、様々な種類と濃度のpH緩衝剤を用いた溶液及び塩類で形成することが可能である。増大化される貯蔵及び取り扱い安定性のために、緩衝液中に添加物を含めることができる。幾つかの実施形態では、微小気泡は、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール(好ましくは1000〜6000の分子量で)及びこれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つの添加物を含む溶液中に形成される。
【0031】
幾つかの実施形態では、微小気泡は、さらに標的分子を含む。
【0032】
さらなる側面では、微小気泡を製造する方法であって、ガス、ポルフィリン-リン脂質結合体、及び他のリン脂質を混合することを含み、前記ポルフィリン-リン脂質結合体が、1種のリン脂質の脂質側鎖に、好ましくはsn−1またはsn−2の位置で、共有結合された1種のポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体を含む方法が提供される。
【0033】
好ましくは、ガスと混合するに先立って、ポルフィリン-リン脂質結合体は、前記他のリン脂質と混合されて脂質薄膜を形成し、続いて緩衝液中で水和される。
【0034】
さらなる側面では、対象の標的領域上での超音波画像化を遂行する方法であって、本明細書に記載される微小気泡を提供すること;前記微小気泡を対象に投与すること;及び、超音波を用いて標的領域を画像化すること、を含む方法が提供される。
【0035】
さらなる側面では、対象の標的領域を画像化する方法であって、本明細書に記載される微小気泡を提供すること;前記微小気泡を対象に投与すること;及び、前記標的領域で光音響の信号を測定及び/又は検知すること、を含む方法が提供される。好ましくは、かかる方法はさらに、光音響の信号を測定及び/又は検知することに先立って、標的領域で微小気泡を破裂させることを含む。
【0036】
さらなる側面では、画像化を遂行するために本明細書に記載される微小気泡の使用が提供される。
【0037】
さらなる側面では、画像化の遂行で用いるために、本明細書に記載される微小気泡が提供される。
【0038】
ある実施形態では、画像化は、胸画像化、腫瘍画像化、頚動脈の新血管新生画像化あるいは内視鏡的画像化である。
【0039】
以下の実施例は、本発明の種々の側面の例示であり、本明細書に示されるような発明の広い側面を制限するものではない。
【0040】
〔実施例〕
〔方法〕
【0041】
(ポルフィリン−脂質微小気泡の構成)
脂質薄膜は、12mm×35mmの透明ガラスのねじ込み瓶(フィッシャーサイエンティフィック社製)内で、クロロホルムに溶かされた1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC,アバンティ ポーラ リピッド社製)とポルフィリン−脂質(ピロフェオホルビド-脂質)とを混合することで作製された。薄膜は、窒素ガスの流れの下で乾燥させられ、さらに真空下で30分間乾かされた。脂質薄膜は、0.01Mのリン酸緩衝食塩水(150mMのNaCl、10mMのリン酸塩、pH7.4)及び脱イオン化された水に溶かされたポリオキシエチレン-40ステアレート(PEG40S,シグマアルドリッチ社製)を用いて、水和するまで、アルゴンガスの下で−20℃で格納された。脂質濃度の合計は、容量0.5mlにおいて0.5mg/mlまたは1mg/mlのいずれかであった。各々のバイル(vile)の頭隙は、ガスで満たされた。各バイル(vile)は、65℃に加熱された水槽中に置かれて、包含された脂質の遷移温度以上に溶液温度が上げられた。当該加熱されたバイル(vile)は、脂質薄膜を溶液に分散させるために超音波(ブランソニック (Bransonic)2510モデル)で10秒間処理され、ガスがもう一度頭隙に加えられた。微小気泡は、バイアルミックス(ブリストル-マイヤーズ スクイブ社製、Vial-Mix:登録商標)内で45秒間震動させることにより形成された。
【0042】
〔微小気泡の濃度及びサイズ分布の特性評価〕
ポルフィリン−脂質及び均一な微小気泡は、示されたモル%のポルフィリン−脂質、10モル%のPEG40S及び残部のDSPCを用いて製剤された。ガラス瓶の頭隙は、ヘキサフルオロ硫黄(SF6,シグマアルドリッチ社製)、ペルフルオロブタン(PFB,Fluoromed L.P社製)またはペルフルオロプロパン(PFP,Fluoromed L.P社製)ガスで満たされた。振動による微小気泡の活性化の後、微小気泡は6時間以内に使用された。各々の微小気泡製剤のサイズ分布及び濃度(泡の数/ml)は、コールター・カウンターシステム(マルチサイザーIII;ベックマン・コールター社製)を使用して測定された。様々な量の微小気泡が10mlのイソトン-II 電解質溶液(ベックマン・コールター社製)に加えられて、微小気泡100,000〜300,000個の微小気泡のカウント数を得た;稀釈は、微小気泡濃度の計算で説明された。個数及びサイズ分布は、0.8μm〜18μmの直径の微小気泡が検知される30μmの口径を使用して測定された。各々の微小気泡の製剤に対して、3つのサンプルが測定された。
【0043】
〔血清中の生体外の微小気泡安定性〕
微小気泡の安定性は、37℃で、ウシ胎仔血清(FBS)中の15モル%のポルフィリン−脂質で及びその脂質なしで形成された微小気泡の間で比較された。微小気泡は、96の井戸プレート中の4.7×108微小気泡/mlの濃度でFBSを用いて培養された。37℃での培養を開始した後の4時間に至るまで、プレートリーダースペクトラマックスプラス384(モレキュラーデバイス社製)を用いて、580nmで0分、1分、5分、10分、15分で、その後15分間隔で吸光度を記録した。プレートは、各々の測定に先立って5秒間混合された。吸光度は、微小気泡の濃度を代表する。3つのサンプルの安定性は、各々の製剤に対して測定された。
【0044】
〔微小気泡の音響特性〕
音響特性は、PFPガスを用い、総脂質濃度0.5mg/mlにおいて、15モル%のポルフィリン−脂質,10モル%のPEG40S,75モル%のDSPCからなるporshe微小気泡の容量1mlで遂行された。1分間のデカンテーションの後、各ガラス瓶の底から抽出された全容量は、標準規格注射針18を使用して、0.5mlであった。抽出の後に、かかる薬剤が新たな1.5mlのガラス瓶内に置かれ、上部がPFPガスで覆われ、パラフィルム(フィッシャーサイエンティフィック社製)で緩く密閉された。続いて、ガラス瓶は、コールター・カウンタ及び希薄測定に先立って、手作業で10秒間、緩やかに混合された。全ての測定は、室温で行なわれた。デ・ヨング(de Jong)ら(de Jong他,超音波学 1992,30,95−103)によって最初に記載された方法を使用して、周波数に依存する減衰測定を行って、音響応答を評価した。これについては、ゲルツ(Goertz)他(ゲルツ他,Ultrasound Med Biol 2007年,33,1376−1388)で報告された構成に類似する狭周波数帯パルス反射法が使用された。1.5−27MHzの周波数帯域を対象とするために、2台の変換器(モデル#595396,5MHz,焦点76mm,直径12.7mmの、オリンパスNDTカナダ社製; モデル#ISO2002HR,20MHz,焦点38mm,直径6.35mm、ヴァルペイ・フィッシャー社製)が使用された。かかる変換器は、水槽内に位置し、それらのビームは、薄められた薬剤を含有する試料室を通過し、マイラー(mylar)ウィンドーを通過して、アルミニウム反射器に合焦させられた(図2で開示)。0.5MHzのインターバルで一定間隔で配置された中心周波数を備えたパルスを生成するために、任意の波形ジェネレータ(モデルAWG5002C,テクトロニクス社製)が使用された。続いて、入力波形が53dB増幅され(モデルA−150,ENI社製)、次に、2台の変換器のうちの1台に送られた。受信時に、エコーが35dB増幅され(モデルAU1583,Miteq社製)、オフライン分析のために、帯域通過フィルタリングされた後にディジタル化された(400MHzのサンプリング周波数(アジレント・テクノロジー社製))。全ての波形に対する焦点でのピーク負圧は、直径0.075mmニードルチップハイドロホン(モデル1544,Precision Acoustics社製)を使用して、25キロパスカル(kPa)であることが正確に測定された。実験は、生理食塩水(0.9%のNaCl)中に薬剤が希釈されて(1:7500)行われ、希釈の1分後に音響測定が開始された。実験は、合計3つのサンプルについて、サンプル当たり1回行なわれた。薬瓶(バイアル)から薬剤を抽出した後に直ちにサイズ測定を行い、減衰実験は、同じバイアル抽出からのサンプルを使用してコールターカウンター測定値に従って実施した。微小気泡シェル特性は、デ・ヨング(de Jong)ら(N.デ・ヨング、L・ホフ(Hoff)、T.スコットランド(Skotland)、N.ボム(Bom)、超音波学 1992,30,95−103)に最初に記載された一般的なアプローチを用いて評価された。ここで使用されたアプローチの具体的詳細は、他所で議論される(D.E.ゲルツ(Goertz)、N.デ・ヨング(de Jong)、A.F.ヴァン デア ステーン(Steen)、Ultrasound Med Biol 2007年,33,1376−1388.)。
【0045】
〔マウス頚静脈の生体内微小気泡超音波画像化〕
大学健康ネットワークガイドラインに従って、動物実験が行なわれた。ポルフィリン−脂質微小気泡は、雌のBALB/cJマウスの頸静脈中で画像化された。化学脱毛剤(ネア;カーターホーナー(Carter-Horner))を用いて、マウスの首から体毛が取り除かれた。マウスは、心拍及び呼吸モニタリング用のECG電極にすべての脚を貼り付けてプラットフォーム上であお向けで寝かされた。マウスは、その血管を拡張するために約5分間プラットフォーム上で加温された。尾静脈から微小気泡(〜1.5×109泡/ml)の30μlボーラスを注入するために、27G針が使用された。頸静脈は、コントラストモードにおける18MHzの変換器が装備されたVisualSonics社のVevo2100スキャナを使用して画像化された。画像は、ポルフィリン−脂質微小気泡の注射の前及び注射の4秒後に得られた。画像のコントラストは、直線的に自動調節された。
【0046】
〔皮下のマウス腫瘍の生体内微小気泡超音波画像化〕
左脇腹の皮下にMDA−MB−231腫瘍を持つ雌の無胸腺(athymic)ヌード・マウスが、尾静脈から、1.5x109までのporshe微小気泡/mlの50μlボーラスが、26ゲージ留置カテーテルを使用して注射され、続いて150μlの生理食塩水洗浄がなされた。マウスは、注射時に12〜14週齢であった。尾部は、カテーテル法に先立って尾静脈を拡大するために、加熱された生理食塩水の小袋を用いて暖められた。腫瘍は、同時対比(contrast)モード及びBモード画像中に、フィリップスiU22 xMATRIX超音波システム(フィリップスメディカルシステムズ社製)及び、5−12MHzの動作周波数及び0.07の機械的なインデックスでのL12−5プローブを使用して、画像化された。
【0047】
〔ファントム(phantom)内の微小気泡の光音響及び超音波画像化〕
光音響特性評価は、5nsの幅及び10Hzの繰り返し率のレーザパルスを供給するのに使用されるQ-スイッチNd:YAGレーザによって送り出された波長調整可能な光学パラメータ式発振器(OPO)レーザ(Surelite OPO PLUS;Continuum;波長同調性:650〜1060nm)を使用して、完結した。コリメートレーザパルスが手製のアキシコンレンズを通過して移動した時に、リング形の光ビームが形成された。これは、光学のコンデンサを通って合焦され、水タンク中の超音波震源域を同軸で整列させた。生成された光音響的な波は、125μm及び140μmの軸及び横軸解像度で、単一要素の10MHzの変換器(V315;パナメトリクス−NDT)によってそれぞれ検知された。試料容器は、超音波ゲルと結合された薄い透明な膜で覆われ、光学的及び音響的に透過的な窓を有する水槽の下に配置した。水性試料は、直径9mm、深さ3mmの井戸を満たした。検出されたPA信号は、低雑音増幅器(5072PR,パナメトリクス−NDT)によって一次増幅され、デジタルオシロスコープ(TDS5054,テクトロニクス社製)によって記録された。超音波イメージングのために、我々は、光音響イメージング用のものと同一の変換器及びラスタ走査システムを利用した。超音波モードでは、低雑音増幅器は、超音波パルス送信機と受信機の両方として機能した。光音響及び超音波生成は、次の3つのサンプルから測定して画像化した:標準微小気泡(ポルフィリン - 脂質0%)、porshe微小気泡(ポルフィリン- 脂質15%)、及び15%のポルフィリン-脂質微小気泡に存在するようなピロ酸と同一のモル濃度で共培養された標準微小気泡。
【0048】
結果
ここでは、ガス、好ましくはフッ素化ガスをカプセル化するポルフィリン-リン脂質シェル(shell)で構成された微小気泡の新しいクラスについて説明する。これらのポルフィリン・シェル微小気泡すなわち「ポルシェ(porshe)微小気泡」は、標準的な加振方法(図1)を用いて容易に合成することが可能であり、種々のユニークな物理的性質を有していた。
【0049】
ポルフィリン-リン脂質が特定の濃度(5〜20モル%のポルフィリン-リン脂質が最も多くの泡を生成した)で標準的な微小気泡製剤に代用された場合に、生じる微小気泡は、より高い産出で形成されることが見出された(図2)。任意の理論によって拘束されることなく、我々は、ポルフィリンの成分がシェルを安定させて更なるガス分解を防ぎ、より大きな産出に帰着するものと仮定する;但し、高い産出を維持するために、幾らかの標準的なリン脂質が必要とされた。ペルフルオロプロパン(perfluoropropane)ガスをカプセル化する15mol%のポルフィリン−脂質製剤は、これらのMBが、組み込まれたポルフィリン−脂質を相対的に大量に備えた高い産出で生成されたので、さらなる研究用に選択された。
【0050】
porshe MBの性質は、単にDSPCとPEG40Sを使用してポルフィリン−脂質のないPBSで形成されたMBと比較された。MBの安定性に関するポルフィリン−脂質の影響を評価するために、ポルフィリン−脂質なしで形成されたMB及びporshe MBが、ウシ胎仔血清中で37℃で培養された。光散乱による光学的な吸光度は、MBの濃度の基準として使用され、4時間の期間にわたってモニタされた。Porshe MBは、ポルフィリン-脂質なしのMBよりもはるかに高い安定性を示し、血清内でほぼ2倍の長さで残り(図3)、さらにそのポルフィリン−脂質がMBのシェルに組み込まれただけでなく、より安定したMBをもたらしたことが実証された。 現在臨床的に使用される微小気泡は、通常、生体内での血清中わずか数分の間だけ存続する。porshe微小気泡のより長い存続(ほぼ2倍)は、血清中の標準的な微小気泡を凌駕し、さらに、ポルフィリン−脂質が微小気泡シェルを安定させることを示唆する。循環時間の任意の延長は、非常に望ましいものである。
【0051】
単分散微小気泡は、多分散微小気泡の集団と比較して、優れた超音波信号を生成することが認められる[12]。我々のポルフィリン・シェル微小気泡は、優れた単分散性を有することが示された(図4)。高い単分散性は、非常に望ましい、未だ得ることが困難な微小気泡の特性である。単分散性のこの水準は、ポルフィリン-脂質がシェルに組み込まれたときにのみ観察された。この単分散のサイズ集団が、それ以上の精製工程のない、単純な製造方法によって達成されたことは注目に値する。
【0052】
porshe MBの狭い容積測定のサイズ分布は、周波数の増加とUSの減衰の急騰を生み出し、これは、9〜10MHzでピークを示し、27.5MHzまで徐々に漸減した(図5)。 幾つかの商用脂質ベースのMBより高い共振周波数(f res)を有し、porshe MBは、胸画像化、頚動脈の新血管新生、表面的な腫瘍及び内視鏡検査法の画像化を含む、5〜15MHzの周波数帯域を利用するアプリケーションの画像化には好都合であり得る。
【0053】
porshe微小気泡の機械的性質は、デ・ヨング(de Jong)らにより導入された音響理論モデル[13]、及び、音響減衰(図5)及びサイズ分布(図4)からの入力データを用いて測定された。シェル強度の評価は、以前に幾つかの商用脂質MBについて報告されており、また、porshe MBは、これらの薬剤より3〜5倍堅いことが見出され(図6)、減少したガス透過率及びより大きな耐崩壊性の結果として、堅いシェルになることを示唆している。
【0054】
さらに、ポルフィリン・シェル微小気泡は、本質的に、多モードの画像化に適している。多数のポルフィリンは、ポルフィリン・シェル(典型的な15mol%の微小気泡構成に対して100万以上のポルフィリン)へ統合される。これは、ハイブリッドPETまたはMRイメージング法、あるいは新たな超音波ガイド光イメージング技法に適したものである。
【0055】
Porshe MBは、脂質MBに関連した非線形の特性を維持して超音波造影を提供した。Porshe微小気泡は、健康なマウス中の頚静脈を識別し(図7)、静脈注射の後に人間の乳癌(MDA−MB−231)異種移植片を運ぶマウス中の皮下の腫瘍を画像化することが可能であった(図8)。
【0056】
porshe MBは、ポルフィリン−脂質の存在によって、700nmでピークに達する光音響信号を生成することが可能になる(図9)。ポルフィリン−脂質なしで形成されたMB、porshe MB、及び等モルの遊離ポルフィリン(ピロフェオホルビド:pyropheophorbide)で共に培養されたポルフィリン−脂質のないMBは、700nm、5nsパルスレーザー及び10MHzの単一元素US変換器を使用して、井戸の試料において光音響的に画像化された(図10a上側)。porshe MBは、ポルフィリン−脂質なしで創設されたMBよりも10倍大きいPA信号、及び遊離ポルフィリンと混合されたポルフィリン−脂質のないMBよりも6倍大きなPA信号を生成した(図10b)。これは、MBがPA信号を生成するためにポルフィリンが存在しなければならないだけでなく、ポルフィリンが脂質と結合してMBのシェル内に存在しなければならないことを実証するものである。MBの集団の全てが、強いUS信号(図10a下側、図10b)を生成し、porshe MBは、2重のモダリティ(dual-modality)のUS/PA造影剤として機能する能力を有することが確認された。
【0057】
ポルフィリン−脂質微小気泡の破裂は、高出力超音波または超音波処理を使用して遂行されることができる。微小気泡を破裂させる際、小さなポルフィリン−脂質アセンブリー(ナノメートル規模)が形成されるであろうし、それは、ポルフィリン−脂質の最密充填密度を維持するかもしれないし、維持しないかもしれない。ポルフィリン−脂質微小気泡の破裂は、医用画像に関するアプリケーション、及び軟繊維へのより小さなポルフィリン−脂質アセンブリーの外部的に引き起こされる送達による薬物送達に役立つことができる。
【0058】
これらの独自的であるが補完的な有利な特性は、ポルシェマイクロバブルが両方の既存の超音波イメージングのための改良された造影剤に理想的に適合するだけでなく、マルチモーダルイメージングの手法(例えば光音響イメージング)を新興する。
【0059】
発明の好ましい実施態様を本明細書において説明したが、本発明の意図または添付された請求の範囲から離れることなく、それらに対する変更を行うことができることを当業者は理解するであろう。以下の参考文献リストを含む、本明細書に言及された全ての参照文献は、引用することによってその全体が組み込まれる。
【0060】
参考文献
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[11] J.F.ラヴェル(Lovell)他,(「多モードのバイオフォトニック造影剤として用いるためのポルフィリン二分子層により生成されたポリフィゾムナノ小胞("Porphysome nanovesicles generated by porphyrin bilayers for use as multimodal biophotonic contrast agents")」,Nat Mater,2011年4月,第10巻,第4号,第324−332頁

[12] J.E.ストリータ(Streeter),R.ゲスナー(Gessner),I.マイル(Miles)及びP.A.デートン(Dayton),「造影剤の粒度分布を調整することによる超音波分子イメージングにおける感度の向上化:インビボ研究("Improving sensitivity in ultrasound molecular imaging by tailoring contrast agent size distribution: in vivo studies")」分子像(Molecular Imaging)、2010年4月,第9巻、第2号,第87−95頁

[13] N.デ ジョン(de Jong);L.ホフ(Hoff);T.スコットランド(Skotland);N.ボム(Bom),「カプセル化されたガスが充填されたマイクロスフェアの吸収と散布:理論的考察および幾つかの測定("Absorption and scatter of encapsulated gas filled microspheres: theoretical considerations and some measurements")」,超音波学(Ultrasonics),第2号,1992年3月,第30巻,第95−103頁

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