(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塩素化塩化ビニル系樹脂からの190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間は60秒以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の成形用樹脂組成物。
塩素化塩化ビニル系樹脂からの190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間は100秒以上であることを特徴とする請求項1又は3記載の成形用樹脂組成物。
成形用樹脂組成物における熱安定剤の含有量は、塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量を100重量部としたとき、0.4〜10重量部の範囲であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の成形用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
成形用樹脂組成物は、塩素化塩化ビニル系樹脂(以降、「CPVC」と称す)と、熱安定剤と、多価アルコール及び/又は多価アルコールの部分エステルとを含有する。
【0008】
上記CPVC中の塩素含有量は、65重量%以上72重量%未満である。上記塩素含有量が65重量%以上であると、CPVCに対して、実用上有効な耐熱性を付与することができる。上記塩素含有量が72重量%未満であると、実用上妥当な塩素化反応の生産性を確保すると共に、CPVCを含む成形用樹脂組成物の成形性を充分なものとすることができる。
【0009】
CPVCは、塩化ビニル系樹脂(PVC)が塩素化されてなる樹脂であり、塩素含有量が概ね65重量%以上72重量%未満の高度に塩素化された樹脂である。CPVC中の塩素含有量は、JIS K 7229に記載の方法により測定することができる。
【0010】
上記CPVCは、構成単位(a)−CCl
2−と、構成単位(b)−CHCl−と、構成単位(c)−CH
2−とを有する。
上記構成単位(a)の割合は、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、17.5モル%以下である。上記構成単位(a)の割合は、好ましくは2.0モル%以上16.0モル%以下である。
上記構成単位(b)の割合は、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、46.0モル%以上である。上記構成単位(b)の割合は、好ましくは53.5モル%以上、より好ましくは58.0モル%以上70.0モル%以下である。
上記構成単位(c)の割合は、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、37.0モル%以下である。上記構成単位(c)の割合は、好ましくは35.8モル%以下、より好ましくは1.0モル%以上30.5モル%以下である。
このようなCPVCは、熱安定性が高く、且つ、良好な成形加工性を有する。
【0011】
CPVCの分子構造中に含まれる構成単位(a)、(b)及び(c)のモル比は、PVCが塩素化される際の塩素が導入される部位を反映したものである。塩素化前のPVCは、理想的には、ほぼ、構成単位(a)が0モル%、構成単位(b)が50.0モル%、構成単位(c)が50.0モル%の状態にあるが、塩素化に伴って構成単位(c)が減少し、構成単位(b)及び構成単位(a)が増加する。この際、立体障害が大きく不安定な構成単位(a)が増えすぎたり、CPVCの同一粒子内で塩素化されている部位とされていない部位が偏ったりすると、塩素化状態の不均一性が大きくなる。この不均一性が大きくなると、CPVCの熱安定性が大きく損なわれる。しかしながら、構成単位(a)の割合が17.5モル%以下であり、構成単位(b)の割合が46.0モル%以上であり、構成単位(c)の割合が37.0モル%以下であるCPVCは均一性が高く、良好な熱安定性を有する。
【0012】
CPVCの分子構造中に含まれる構成単位(a)、(b)及び(c)のモル比は、NMRを用いた分子構造解析により測定することができる。NMR分析は、R.A.Komoroski,R.G.Parker,J.P.Shocker,Macromolecules,1985,18,1257−1265に記載の方法に準拠して行うことができる。
【0013】
PVCとしては、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等を用いることができる。これら重合体は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、フェニルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニルビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上が使用される。
【0015】
上記塩化ビニルをグラフト共重合する重合体としては、塩化ビニルをグラフト重合させるものであれば特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されても良い。
【0016】
PVCの平均重合度は、特に限定されず、通常用いられる400〜3,000のものが好ましく、より好ましくは600〜1,500である。平均重合度は、JIS K 6720−2:1999に記載の方法より測定することができる。
【0017】
PVCの重合方法は、特に限定されず、従来公知の水懸濁重合、塊状重合、溶液重合、乳化重合等を用いることができる。
【0018】
CPVCの分子構造中における塩素化されていないPVC部分は−CH
2 −CHCl−で表すことができ、ここではこれをVC単位と称する。本発明で用いるCPVCは、分子構造中に含まれる4連子以上のVC単位の含有量が30.0モル%以下であることが好ましい。ここで、4連子以上のVC単位とは、VC単位が4個以上連続して結合している部分を意味する。
【0019】
CPVC中に存在するVC単位は脱HClの起点となり、且つ、このVC単位が連続していると、ジッパー反応と言われる連続した脱HCl反応が起こりやすくなってしまう。即ち、この4連子以上のVC単位の含有量が大きくなるほど、脱HClが起こり易く、CPVC中の熱安定性が低くなる。そのため、4連子以上のVC単位の含有量は、30.0モル%以下であることが好ましく、28.0モル%以下であることがより好ましく、18.0モル%以下であることが更に好ましく、16.0モル%以下であることが特に好ましい。
【0020】
分子構造中に含まれる4連子以上のVC単位の含有率は、上記のNMRを用いた分子構造解析により測定することができる。
【0021】
本発明で用いるCPVCは、その塩素含有量が65重量%以上69重量%未満である場合、216nmの波長におけるUV吸光度が0.8以下であることが好ましい。また、CPVCの塩素含有量が69重量%以上72重量%未満である場合、216nmの波長におけるUV吸光度が8.0以下であることが好ましい。紫外吸収スペクトルにおいて、216nmの波長は、CPVC中の異種構造である、−CH=CH−C(=O)−及び−CH=CH−CH=CH−が吸収を示す波長である。
【0022】
CPVCのUV吸光度の値から、塩素化反応時の分子鎖中の異種構造を定量化し、熱安定性の指標とすることができる。CPVCの分子構造において、二重結合した炭素の隣の炭素に付いた塩素原子は不安定である。そのため、該塩素原子を起点として、脱HClが生じる。即ち、波長216nmにおけるUV吸光度の値が大きいほど脱HClが起こり易く、熱安定性が低いことになる。塩素含有量が65重量%以上69重量%未満の場合、UV吸光度の値が0.8を超えると、分子鎖中の異種構造の影響が大きくなり、その結果、熱安定性が低下する。塩素含有量が69重量%以上72重量%未満の場合、UV吸光度の値が8.0を超えると、分子鎖中の異種構造の影響が大きくなり、熱安定性が低下する。
【0023】
本発明で用いるCPVCは、塩素含有量が65重量%以上69重量%未満である場合、CPVCからの190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間は60秒以上であることが好ましく、塩素含有量が69重量%以上72重量%未満である場合、該時間は100秒以上であることが好ましい。
【0024】
CPVCは高温で熱分解を起こし、その際にHClガスを発生する。一般に、CPVCはその塩素化度が高くなるにつれて、上述したVC単位が減少するため、脱HCl量が減少する傾向にある。しかし、塩素化度が高くなるにつれて、不均一な塩素化状態や異種構造が増加し、熱安定性が低下する。それ故、脱HCl量を測定することにより、不均一な塩素化状態や異種構造の増加を分析することができる。例えば、190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間を熱安定性の指標とすることができ、その時間が短いほど、熱安定性が低いと言える。
【0025】
塩素含有量が65重量%以上69重量%未満である場合、該時間が60秒未満であると、熱安定性が大きく損なわれる。よって、該時間は60秒以上であることが好ましく、70秒以上であることが更に好ましく、80秒以上であることが特に好ましい。また、塩素含有量69重量%以上72重量%未満である場合、該時間が100秒未満であると、熱安定性が大きく低下してしまうため、100秒以上であることが好ましく、120秒以上であることがより好ましく、140秒以上であることが特に好ましい。
【0026】
190℃における脱HCl量が7000ppmに到達する時間は、以下のように測定することができる。まず、塩素化塩化ビニル樹脂1gを試験管に入れ、オイルバスを使用して190℃で加熱し、発生したHClガスを回収する。回収したHClガスを100mlのイオン交換水に溶解させてpHを測定する。pHの値に基づいて、HClの濃度(ppm)(即ち、塩素化塩化ビニル樹脂100万gあたり何gのHClが発生したか)を算出する。HClの濃度が7000ppmに到達する時間を計測する。
【0027】
本発明の成形用樹脂組成物は、多価アルコール及び/又は多価アルコールの部分エステルを含有する。
多価アルコールとしては、例えば、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン等を用いることができる。
【0028】
多価アルコールの部分エステルとは、多価アルコール中の水酸基の少なくとも1個以上がエステル化されておらず水酸基のままで残っているエステルをいう。多価アルコールの部分エステルを用いることにより、CPVC中での分散性を改良することができる。多価アルコールの部分エステルは、上記多価アルコールの少なくとも一種とモノ又はポリカルボン酸の少なくとも一種とを反応して得られる。
多価アルコールの部分エステルであることは、例えば、JIS K 0070(1992)に準拠して、当該分子の水酸基価を測定することにより確認することができる。
【0029】
多価アルコールの部分エステルを形成するモノ又はポリカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ネオデカン酸、2−エチルヘキシル酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、クミン酸、n−プロピル安息香酸、アミノ安息香酸、N,N−ジメチル安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p−t−オクチルサリチル酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ビメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オキシフタル酸、クロルフタル酸、アミノフタル酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸などのジカルボン酸等を用いることができる。
【0030】
上記の多価アルコールとモノ又はポリカルボン酸から得られる多価アルコールの部分エステルのなかでも、ペンタエリスリトールアジピン酸エステル、ジペンタエリスリトールアジピン酸エステル、ジペンタエリスリトールが好ましく用いられる。
【0031】
本発明の成形用樹脂組成物において、多価アルコールと多価アルコールの部分エステルとの合計含有量は、塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量を100重量部としたとき、好ましい下限が0.05重量部、より好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が3重量部、より好ましい上限が2重量部である。この範囲で多価アルコール及び/又は多価アルコールの部分エステルを含むことにより、安定性を向上させることができる。
多価アルコールと多価アルコールの部分エステルとの合計含有量は、熱安定剤の含有量を100重量部としたとき、好ましい下限が1重量部、より好ましい下限が2重量部、更に好ましい下限が3.5重量部、好ましい上限が150重量部、より好ましい上限が120重量部、更に好ましい上限が20重量部である。
【0032】
本発明の成形用樹脂組成物は、熱安定剤を含有する。
熱安定剤として、一般式Ca
1−xMg
x(OH)
2により表される化合物(式中、xは不等式0<x<1により表される関係を満たす)及び一般式Ca
1−yMg
yOにより表される化合物(式中、yは不等式0<y<1により表される関係を満たす)の少なくとも一つが用いられる。上記xは、好ましくは0.1以上、0.5以下である。上記yは、好ましくは0.1以上、0.5以下である。
【0033】
本発明の成形用樹脂組成物において、熱安定剤の含有量は、塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量を100重量部としたとき、好ましい下限が0.4重量部、より好ましい下限が0.7重量部、好ましい上限が10重量部、より好ましい上限が6重量部である。この範囲で熱安定剤を含むことにより、熱安定性をより向上させることができるとともに、成形体の良好な外観を維持することができる。
【0034】
熱安定剤は、典型的には0.1〜3μmの平均2次粒子径を有する粒子形状である。
【0035】
本発明の成形用樹脂組成物は、更に、安定化助剤を含むことが好ましい。安定化助剤を含むことにより、熱安定性をより向上させることができる。
これらの安定化助剤の添加量は、CPVC100重量部に対して、好ましい下限が0重量部、より好ましい下限が0.01重量部、更に好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が8重量部、より好ましい上限は5重量部、更に好ましい上限が3重量部である。
例として、有機酸塩、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン等のエポキシ化合物、有機リン化合物、亜リン酸エステル、リン酸エステル、酸化防止剤、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物、アジピン酸ナトリウム、ハイドロタルサイト、及びゼオライトが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記有機酸塩としては、有機酸のナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩が挙げられる。有機酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ネオデカン酸、2−エチルヘキシル酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、クミン酸、n−プロピル安息香酸、アミノ安息香酸、N,N−ジメチル安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p−t−オクチルサリチル酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸などの一価カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ビメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オキシフタル酸、クロルフタル酸、アミノフタル酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸などの二価カルボン酸、及びこれらのモノエステル又はモノアマイド化合物、ヘミメリット酸、トリメリット酸、メロファン酸、ピロメリット酸、メリット酸などの三価又は四価カルボン酸のジ又はトリエステル化合物が含まれる。この時、エステルの原料となるアルコール成分の水酸基は全てエステル化されているものである。
【0037】
また、安定化助剤としては、初期着色性を改善するために、上記有機酸塩が高級脂肪酸塩であることが好ましい。
上記高級脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ネオデカン酸、2−エチルヘキシル酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、クミン酸、n−プロピル安息香酸、アミノ安息香酸、N,N−ジメチル安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p−t−オクチルサリチル酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ビメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オキシフタル酸、クロルフタル酸、アミノフタル酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸が挙げられる。特に、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、モンタン酸が好ましい。
上記高級脂肪酸塩の金属成分としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム等が挙げられる。なかでも、亜鉛、マグネシウムが好ましい。
【0038】
上記高級脂肪酸塩の添加量は、CPVC100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、より好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が5.0重量部、より好ましい上限が3.0重量部である。
【0039】
本発明の成形用樹脂組成物は、β−ジケトンを含まないことが好ましい。β−ジケトンは、熱安定性を向上させるために従来の熱安定剤に配合されている成分である。しかしながら、β−ジケトンを含む熱安定剤を用いた場合、樹脂組成物を押出成形や射出成形により成形して成形体を製造する際に、成形体の外観が損なわれやすい。例えば、成形体の表面に、樹脂の流れ方向に平行な太さ0.1〜1mm程度の黄色〜赤褐色のすじが発生する。このように外観が損なわれた成形体は不良品となる。特に長時間使用したダイスを用いた場合に、このような不良品が発生しやすい。しかしながら、本願発明によれば、β−ジケトンを含む熱安定剤を用いることなく、優れた熱安定性を有する成形用樹脂組成物を提供することができる。
【0040】
以上述べたような本願発明の構成によれば、優れた熱安定性を有する成形用樹脂組成物を提供することができる。
【0041】
次に、上記の成形用樹脂組成物及び成形体の製造方法を説明する。
【0042】
成形用樹脂組成物の製造方法は、反応容器中において、塩化ビニル系樹脂を水性媒体に懸濁して懸濁液を調製し、前記反応容器内に塩素を導入し、前記懸濁液を加熱することによって前記塩化ビニル系樹脂を塩素化して、塩素化塩化ビニル系樹脂を調製する工程と、前記塩素化塩化ビニル系樹脂に、熱安定剤として、一般式Ca
1−xMg
x(OH)
2により表される化合物(式中、xは不等式0<x<1により表される関係を満たす)及び一般式Ca
1−yMg
yOにより表される化合物(式中、yは不等式0<y<1により表される関係を満たす)の少なくとも一つと、多価アルコール及び/又は多価アルコールの部分エステルとを添加して混合する工程とを含む。
【0043】
上記塩素化反応に用いる反応容器は、例えば、グラスライニングが施されたステンレス製反応容器、チタン製反応容器などの一般に使用されている容器を使用することができる。
【0044】
塩化ビニル系樹脂を水性媒体に懸濁して懸濁液を調製する方法は、特に限定されず、重合後のPVCを脱モノマー処理したケーキ状のPVCを用いてもよいし、乾燥させたものを再度、水性媒体で懸濁化してもよく、あるいは、重合系中より、塩素化反応に好ましくない物質を除去した懸濁液を使用してもよいが、重合後のPVCを脱モノマー処理したケーキ状の樹脂を用いることが好ましい。
【0045】
水性媒体には、例えば、イオン交換処理された純水を用いることができる。水性媒体の量は、特に限定されないが、一般にPVCの100重量部に対して2〜10重量部が好ましい。
【0046】
反応容器内に導入する塩素は、液体塩素及び気体塩素のいずれであってもよい。短時間に多量の塩素を仕込めるため、液体塩素を用いることが効率的である。圧力を調整するためや塩素を補給するために、反応途中に塩素を追加してもよい。このとき、液体塩素の他に気体塩素を適宜吹き込むこともできる。ボンベ塩素の5〜10重量%をパージした後の塩素を用いるのが好ましい。
【0047】
上記反応容器内のゲージ圧力は、特に限定されないが、塩素圧力が高いほど塩素がPVC粒子の内部に浸透し易いため、0.3〜2MPaの範囲が好ましい。
【0048】
塩素を導入後、懸濁液を加熱することによって塩化ビニル系樹脂を塩素化する。これにより、塩素化塩化ビニル系樹脂が得られる。加熱することにより、PVCの結合や、塩素が励起されることによる塩素化が促進される。この塩素化は、紫外線照射を行わずに行う。紫外線照射による塩素化反応の場合、PVCが塩素化されるのに必要な光エネルギーの大きさは、PVCと光源との距離に大きく影響を受ける。そのため、PVC粒子の表面と内部とでは、受けるエネルギー量が相違し、塩素化が均一に生じない。その結果、均一性の低いCPVCが得られる。一方、紫外線照射を行わず、熱により塩素化する方法では、より均一な塩素化反応が可能となり、均一性の高いCPVCを得ることができる。
【0049】
加熱温度は、70〜140℃の範囲であることが好ましい。温度が低すぎると、塩素化速度が低下する。温度が高すぎると、塩素化反応と並行して脱HCl反応が起こり、得られたCPVCが着色する。加熱温度は、100〜135℃の範囲であることがより好ましい。加熱方法は、特に限定されず、例えば、外部ジャケット方式で反応容器壁から加熱することができる。
【0050】
上記の塩素化反応において、懸濁液に更に過酸化水素を添加することが好ましい。過酸化水素を添加することにより、塩素化の速度を向上させることができる。過酸化水素は、反応時間1時間毎に、PVC100重量部に対して0.0005〜0.05重量部を添加することが好ましい。添加量が少なすぎると、塩素化の速度を向上させる効果が得られないことがある。添加量が多くすぎると、CPVCの熱安定性が低下することがある。
【0051】
過酸化水素を添加する場合、塩素化速度が向上するため、加熱温度を比較的低くすることができる。例えば、65〜110℃の範囲であってよい。
【0052】
上記塩素化の際に、最終塩素含有量から5重量%手前に達した時点以降の塩素化を、塩素消費速度が0.010〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲で行い、更に、最終塩素含有量から3重量%手前に達した時点以降の塩素化を、塩素消費速度が0.005〜0.010kg/PVC−Kg・5minの範囲で行う。ここで、塩素消費速度とは、原料PVC1kgあたりの5分間の塩素消費量を指す。
【0053】
上記方法で塩素化を行うことにより、最終塩素含有量が65重量%以上72重量%未満であり、構成単位(a)−CCl
2−と、構成単位(b)−CHCl−と、構成単位(c)−CH
2−との合計モル数に対して、構成単位(a)の割合が17.5モル%以下であり、構成単位(b)の割合が46.0モル%以上であり、構成単位(c)の割合が37.0モル%以下であり、且つ、塩素化状態の不均一性が少なく、熱安定性の優れたCPVCを得ることができる。
【0054】
上記のように調製された塩素化塩化ビニル系樹脂に、熱安定剤を添加して成形することにより、成形体が得られる。成形方法は、従来公知の任意の製造方法が採用されてよく、例えば、押出成形法、射出成形法等が挙げられる。
【0055】
熱安定剤には、さらなる成分を混合してもよい。
【0056】
製造工程において、必要に応じて、安定化助剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、熱可塑性エラストマー、顔料などの添加剤をCPVCと混合してもよい。安定化助剤を混合することにより、成形体の熱安定性を更に向上させることができる。
【0057】
熱安定剤及びその他の添加剤をCPVCと混合する方法としては、特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
【0058】
上記酸化防止剤としては、特に限定されず、フェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などを用いることができる。これらは、単独で使用しても良く、或いは二種以上を併用しても良い。
【0059】
上記ハイドロタルサイト化合物は、従来公知の任意のハイドロタルサイト化合物を用いることができる。ハイドロタルサイト化合物は、天然物でも合成物でも良い。マグネシウムとアルミニウムからなる複塩化合物が好適に用いられる。
【0060】
上記ゼオライト化合物は、ゼオライト結晶構造を有するアルカリ又はアルカリ土類金属のアルミノケイ酸塩であり、例として、A型、X型、Y型及びP型ゼオライト、モルデナイト、アナルサイト、ソーダライト族アルミノケイ酸塩、クリノプチロライト、エリオナイト、チャバサイト等が挙げられる。
【0061】
上記ハイドロタルサイト化合物及び/又はゼオライト化合物は単独で添加されても良いし、併用されてもよい。その添加量は、少なくなると熱安定性効果が発揮されなくなり、逆に多くなると着色するようになるので、CPVC100重量部に対し、好ましい下限が0重量部、より好ましい下限が0.05重量部、更に好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が2.0重量部、より好ましい上限が1.2重量部、更に好ましい上限が0.8重量部である。
【0062】
滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
加工助剤としては、特に限定されず、例えば重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などが挙げられる。上記アクリル系加工助剤としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
衝撃改質剤としては特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴムなどが挙げられる。
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系、N−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
【0066】
光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
【0067】
紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0068】
充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0069】
顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系などの無機顔料などが挙げられる。
【0070】
成形体には成形時の加工性を向上させる目的で、可塑剤が添加されていてもよいが、成形体の熱安定性を低下させることがあるため、多量に使用することはあまり好ましくない。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。
【0071】
更に、成形体には施工性を向上させる目的で、熱可塑性エラストマーが添加されていてもよい。上記熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO) 、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体や塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0072】
以上述べたような方法によれば、優れた熱安定性を有する成形用樹脂組成物及び該樹脂組成物から成形された成形体を製造することができる。
【実施例】
【0073】
次に、本発明の態様を以下の実施例を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]
(塩素化塩化ビニル樹脂の作製)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200kgと平均重合度1000の塩化ビニル樹脂56kgを投入した。混合物を撹拌し、反応容器に更に水を添加して、混合物を水中に分散させた。次いで、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に、90℃に昇温した。
【0075】
次に、反応容器内に塩素を、塩素分圧が0.4MPaになるように供給し、0.2重量%過酸化水素を1時間当たり1重量部(320ppm/時間)の割合で添加しながら、塩素化反応を行った。塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が61重量%になるまで反応を継続した。塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が61重量%(5重量%手前)に達した時に、0.2重量%過酸化水素の添加量を1時間当たり0.1重量部(200ppm/時間)に減少し、平均塩素消費速度が0.012kg/PVC−kg・5minになるように調整して塩素化を進めた。更に、塩素含有量が63重量%(3重量%手前)に達した時に、0.2重量%過酸化水素の添加量を1時間当たり150ppm/時間に減少し、平均塩素消費速度が0.008kg/PVC−kg・5minになるように調整して塩素化を進めた。このようにして、塩素含有量が65.6重量%の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
【0076】
(熱安定剤の作製)
熱安定剤として用いるため、式Ca
0.9Mg
0.1(OH)
2の化合物を調製した。
1モル/リットルのCa(OH)
2スラリー1リットルを容積2リットルのビーカーにいれ、30℃で撹拌しながら、これに0.2モル/リットルのMgCl
2水溶液500ミリリットルを加えた。反応生成物を濾過、水洗後、得られたケーキを1リットルの水に分散させた。これを約80℃まで加熱し、撹拌しながら、1gのステアリン酸ナトリウムを100ミリリットルの温水(約80℃)に溶解した溶液を加え、表面処理を行った。この物を濾過、水洗後、乾燥した。乾燥物について、ICP発光分析法を用いて化学組成分析を実施した。化学組成分析の結果、得られた化合物はCa
0.9Mg
0.1(OH)
2であることが確認された。
【0077】
(塩素化塩化ビニル系樹脂成形体の作製)
得られた塩素化塩化ビニル樹脂と、熱安定剤と、多価アルコールの部分エステルとを用いて塩素化塩化ビニル樹脂組成物を得た。塩素化塩化ビニル樹脂100重量部に対して、熱安定剤を3.0重量部、多価アルコールを0.3重量部の割合で用いた。多価アルコールの部分エステルとして、ジペンタエリスリトールアジピン酸エステルを用いた。更に、安定化助剤としてアジピン酸ナトリウム(REAGENS社製、「B−NT/7222」)0.3重量部、衝撃改質剤としてMBS(カネカ社製、「カネエース M−511」)5重量部、ポリエチレン系滑剤(三井化学社製、「Hiwax220MP」)2重量部、脂肪酸エステル系滑剤(エメリーオレオケミカルズジャパン社製、「LOXIOL G−32」)0.3重量部を用いた。以上の成分をスーパーミキサーで均一に混合して、塩素化塩化ビニル樹脂組成物を得た。
なお、JIS K 0070(1992)に準拠して測定した結果、上記ジペンタエリスリトールアジピン酸エステルの水酸基価は900であり、水酸基の一部がエステル化されていないことを確認した。
【0078】
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物を、直径50mmの2軸異方向コニカル押出機(長田製作所社製「SLM−50」)に供給し、樹脂温度205℃で外形20mm、厚さ3mmのパイプ状成形体を作製した。
【0079】
[実施例2]
熱安定剤の量を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0080】
[実施例3]
熱安定剤として、式Ca
0.9Mg
0.1(OH)
2の化合物の代わりに式Ca
0.9Mg
0.1Oの化合物を用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0081】
[
参考例4]
ジペンタエリスリトールアジピン酸エステルの量を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0082】
[実施例5]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更し、安定化助剤としてアジピン酸ナトリウム0.3重量部の代わりにハイドロタルサイト0.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0083】
[実施例6]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更し、熱安定剤として、式Ca
0.9Mg
0.1(OH)
2の化合物の代わりに式Ca
0.5Mg
0.5(OH)
2の化合物を用い、安定化助剤としてアジピン酸ナトリウム0.3重量部の代わりにハイドロタルサイト0.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0084】
[実施例7]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更し、熱安定剤として、式Ca
0.9Mg
0.1(OH)
2の化合物3.0重量部の代わりに式Ca
0.9Mg
0.1Oの化合物7.0重量部を用い、ジペンタエリスリトールアジピン酸エステルの代わりにジペンタエリスリトールを用い、安定化助剤としてアジピン酸ナトリウム0.3重量部の代わりにハイドロタルサイト0.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0085】
[実施例8]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更し、ジペンタエリスリトールアジピン酸エステルの代わりにジペンタエリスリトールを用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0086】
[実施例9]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更し、熱安定剤として、式Ca
0.9Mg
0.1(OH)
2の化合物3.0重量部の代わりに式Ca
0.5Mg
0.5(OH)
2の化合物7.0重量部を用い、ジペンタエリスリトールアジピン酸エステルの代わりにジペンタエリスリトールを用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0087】
[実施例10]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更し、熱安定剤として、式Ca
0.9Mg
0.1(OH)
2の化合物の代わりに式Ca
0.9Mg
0.1Oの化合物を用い、ジペンタエリスリトールアジピン酸エステルの代わりにジペンタエリスリトールを用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0088】
[実施例11]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更し、ジペンタエリスリトールアジピン酸エステルの代わりにジペンタエリスリトールを用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0089】
[
参考例12]
ジペンタエリスリトールアジピン酸エステルの量を2.3重量部に変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0090】
[実施例13]
安定化助剤としてアジピン酸ナトリウム0.3重量部と共に、β−ジケトン0.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0091】
[
参考例14]
熱安定剤の量を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0092】
[実施例15]
熱安定剤の量を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0093】
[実施例16]
ジペンタエリスリトールアジピン酸エステル0.3重量部の代わりに、ジペンタエリスリトールアジピン酸エステル0.2重量部、ジペンタエリスリトール0.1重量部を用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0094】
[実施例17]
ジペンタエリスリトールアジピン酸エステルの代わりに、ペンタエリスリトールアジピン酸エステルを用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
なお、実施例1と同様に測定した結果、上記ペンタエリスリトールアジピン酸エステルの水酸基価は880であり、水酸基の一部がエステル化されていないことを確認した。
【0095】
[実施例18]
安定化助剤として、ステアリン酸マグネシウム0.3重量部を用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0096】
[実施例19]
安定化助剤として、ステアリン酸マグネシウム4.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0097】
[実施例20]
安定化助剤として、更にステアリン酸マグネシウム0.3重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0098】
[実施例21]
安定化助剤として、ステアリン酸亜鉛0.3重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0099】
[実施例22]
安定化助剤として、ステアリン酸亜鉛4.0重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0100】
[比較例1]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0101】
[比較例2]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0102】
[比較例3]
熱安定剤として、式Ca
0.9Mg
0.1(OH)
2の化合物の代わりに式Ca
0.0Mg
1.0(OH)
2の化合物を用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0103】
[比較例4]
熱安定剤として、式Ca
0.9Mg
0.1(OH)
2の化合物の代わりに式Ca
1.0Mg
0.0(OH)
2の化合物を用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0104】
[比較例5]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更し、熱安定剤として、式Ca
0.9Mg
0.1(OH)
2の化合物の代わりに式Ca
0.5Mg
0.5(OH)
2の化合物を用い、ジペンタエリスリトールアジピン酸エステルを用いなかった以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0105】
[比較例6]
塩素化塩化ビニル樹脂の分子構造の割合を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0106】
[比較例7]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0107】
[比較例8]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0108】
[比較例9]
熱安定剤として、式Ca
0.9Mg
0.1(OH)
2の化合物の代わりに2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン(DHAP)を用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0109】
[比較例10]
塩素化塩化ビニル樹脂の分子構造の割合を表1に記載したように変更し、熱安定剤として、式Ca
0.9Mg
0.1(OH)
2の化合物の代わりにDHAPを用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0110】
[比較例11]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更し、熱安定剤として、式Ca
0.9Mg
0.1(OH)
2の化合物の代わりにDHAPを用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0111】
[比較例12]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更し、安定化助剤としてアジピン酸ナトリウム0.3重量部と共に、β−ジケトン0.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0112】
[比較例13]
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量と分子構造の割合とを表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂及び成形体を作製した。
【0113】
[分析]
各実施例及び比較例に係る塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量、UV吸光度及び脱HCl時間を測定した。また、分子構造解析を行って、−CCl
2−、−CHCl−、及び−CH
2−のモル%及び4連子以上のVC単位のモル%を測定した。各測定方法を以下に詳述する。それらの測定結果を表1に示した。
【0114】
<塩素含有量の測定>
JIS K 7229に準拠して測定を行った。
【0115】
<分子構造解析>
R.A.Komoroski、R.G.Parker、J.P.Shocker、Macromolecules、1985、18、1257−1265に記載のNMR測定方法に準拠して測定を行った。
【0116】
NMR測定条件は以下の通りである。
装置:FT−NMR(JEOL社製、JNM−AL−300)
測定核:13C(プロトン完全デカップリング)
パルス幅:90°
PD:2.4sec
溶媒:o−ジクロロベンゼン:重水素化ベンゼン(C5D5)=3:1
試料濃度:約20%
温度:110℃
基準物質:ベンゼンの中央のシグナルを128ppmとした
積算回数:20000回
【0117】
<UV吸光度の測定(216nm)>
216nmの波長におけるUV吸光度を下記測定条件で測定した。
装置:自記分光光度計(日立製作所社製、U−3500)
溶媒:THF
濃度:試料20mg/THF25ml・・・800ppm(実施例1〜7、12〜19及び比較例1、3、4、6、8〜13)
:試料10mg/THF25ml・・・400ppm(実施例8〜11、及び比較例2、5、7)
【0118】
<脱HCl時間>
得られた塩素化塩化ビニル樹脂1gを試験管に入れ、オイルバスを使用して190℃で加熱、発生したHClガスを回収し100mlのイオン交換水に溶解させpHを測定した。pH値から塩素化塩化ビニル樹脂100万g当たり何gのHClが発生したかを算出し、この値が7000ppmに到達する時間を計測した。
【0119】
[評価]
各実施例及び比較例に係る塩素化塩化ビニル樹脂の静的熱安定性、動的熱安定性、及び機械物性を測定した。また、成形体の外観の状態を観察した。各測定方法を以下に詳述する。それらの結果を表1に示した。なお、表中において、単位が記載されていない数値は重量部である。
【0120】
<静的熱安定性>
各実施例及び比較例に係る塩素化塩化ビニル樹脂組成物を2本の8インチロールに供給し、205℃で3分間混練して、厚さ1.0mmのシートを作製した。得られたシートを200℃のギヤオーブン中で加熱し、着色開始時間(分)及び発泡又は黒化する時間(分)を測定した。黄色く着色する時間を着色開始時間、発泡又は黒化するまでの時間を発泡・黒化時間とした。
【0121】
<動的熱安定性>
各実施例及び比較例に係る塩素化塩化ビニル樹脂組成物をプラストミル(東洋精機社製「ラボプラストミル」)に供給し、回転数50rpm、195℃、充填量63gで混練し、ゲル化時間(秒)を測定した。混練開始から、混練トルクがピークになるまでの時間をゲル化時間とした。また、ゲル化後、更に混練及び加熱を続け、塩素化塩化ビニル樹脂の分解時間(分)を測定した。混練開始から、ゲル化後に安定した混練トルクが再び上昇し始めるまでの時間を分解時間とした。
【0122】
<機械物性(アイゾット衝撃強度、引張強度、引張弾性率、熱変形温度)>
各実施例及び比較例に係る塩素化塩化ビニル樹脂組成物を2本の8インチロールに供給し、205℃で3分間混練して、厚さ1.0mmのシートを作製した。得られたシートを重ね合わせて、205℃のプレスで3分間予熱した後、4分間加圧して、厚さ3mmのプレス板を得た。得られたプレス板から、機械加工により試験片を切り出した。この試験片を用いて、ASTM D638に準拠して引張強度及び引張弾性率を測定した。また、ASTM D648に準拠して負荷荷重186N/cm
2で熱変形温度を測定した。尚、熱変形温度は、得られたプレス板を90℃のギヤオーブンで、24時間アニール処理した後測定した。
【0123】
<成形体の外観観察>
各実施例及び比較例に係るパイプ状成形体を、成形後に常温で5分間空冷した後、表面状態を目視で観察し、気泡の有無、すじの有無、及びヤケ(変色)の有無を測定した。
【0124】
<結果>
実施例1〜
3、5〜11、13、15〜22
、参考例4、12及び14に係る樹脂組成物はいずれも、比較例に係る樹脂組成物より高い熱安定性と機械物性を示した。また、実施例1〜
3、5〜11、16〜22
、参考例4、12及び14に係る成形体はいずれも、発泡、すじ、ヤケなどがほとんど観察されず、比較例に係る成形体より優れた外観を有することが示された。
【0125】
参考例12は、熱変形温度が比較的低かった。このことから、多価アルコールと多価アルコールの部分エステルとの合計含有量が大きくなると、熱変形温度が低くなる傾向があることが示された。
【0126】
実施例13は、安定化助剤としてβ−ジケトンを含むものである。実施例13は、成形体の外観にすじが観察された。このことから、β−ジケトンを含有する成形体は、外観が損なわれる傾向があることが示された。一方、実施例1
〜3、5〜11
及び参考例4の結果から、本発明に従うことにより、β−ジケトンを用いなくても十分な熱安定と機械物性を有することが示された。
【0127】
参考例14は、実施例1と比較してやや熱安定性が低かった。このことから、熱安定剤の含有量を0.4重量部以上にすることにより、熱安定性がより高くなることが示された。
【0128】
実施例15は、実施例1と比較して熱安定性が高いものの、成形体の外観にすじが発生した。熱安定剤の含有量を10重量部以下にすることにより、高い熱安静性と成形体の良好な外観を両立させることが可能であることが示された。
【0129】
【表1-1】
【0130】
【表1-2】