特許第6263132号(P6263132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263132質量分析における最大質量ピークの決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263132
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】質量分析における最大質量ピークの決定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
   G01N27/62 D
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-559220(P2014-559220)
(86)(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公表番号】特表2015-508898(P2015-508898A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2013054055
(87)【国際公開番号】WO2013127933
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】102012203137.5
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500469855
【氏名又は名称】インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・ロルフ
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−184275(JP,A)
【文献】 特表2007−524072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60−70、92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析の援用により分子の質量を決定する方法であって、
前記質量分析の第1設定値(M1)を予め定義し、
関連付けられた振幅信号(A1)を取得し、
前記第1設定値とは異なる第2設定値(M2)を予め定義し、
関連付けられた第2の振幅信号(A2)を測定し、
前記第1設定値(M1)及び前記第2設定値(M2)とは異なる第3設定値(M3)を予め定義し、
関連付けられた第3の振幅信号(A3)を測定し、
xの値としての前記所定の設定値と、yの値としての各設定値xに対して測定された振幅値とを含む2次関数y=f(x)を取得し、
前記2次関数の最大値を決定し、分子の質量について調査される設定値が前記2次関数の最大値をとるときのxの値から決定される
というステップを含む、方法。
【請求項2】
前記2次関数がy=ax+bx+c型の放物線であり、そのxの値が前記所定の設定値であり、そのyの値が前記測定された振幅値であり、a,b,cは数学上の定数であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも3個の異なる設定値及び多くとも10個の設定値について振幅値が測定されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記3個の振幅値(A1,A2,A3)の測定後及び前記放物線の決定前に、前記第2振幅値(A2)が前記第1振幅値(A1)及び前記第3振幅値(A3)よりも大きいかどうかを調べ、必要な場合、前記第2振幅値(A2)が測定値である前記第1振幅値(A1)及び前記第3振幅値(A3)よりも大きくなるまで、測定が十分な回数繰り返されることを特徴とする、求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
繰り返される測定の前記第1設定値(M1)は、前記各前回の測定の前記第3設定値(M3)であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1振幅値(A1)及び前記第3振幅値(A3)の測定は、前記第2設定値(M2)までの距離が各前回の測定よりも小さい設定値(M1,M3)で繰り返されることを特徴とする、求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記測定が繰り返されるとき、最初の測定で検出された最大値が前記第2設定値(M2)として使用されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
振幅値のそれぞれの測定前に、前記各設定値を予め定義した後、前記振幅値が安定するまで最初に待機することを特徴とする、求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析の支援により測定される分子の質量ピークの最大値の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析は、気体の解析に使用され、特に漏れ検出装置の実用性の確認に使用されている。このようなケースでは、検査されるべき物質は、気相中でイオン化されて分析装置に供給される。扇形磁場型質量分析計では、アノード電圧により質量体の位置の設定値が決定される。カソードとアノードの間には、カソードから放出された電子を加速する電場が生成されている。そしてその電子は存在する気体分子をイオン化する。帯電した電子は、アノード電位により加速され、分離システムを通過後、キャプターに到達する。分離システムでは、磁場がイオンを偏向させるように配置されている。著しく重いイオンは、磁場により極めてわずかに偏向される一方、著しく軽いイオンは、極めて大幅に偏向される。正しい質量範囲のイオンのみが分離システムを通過する。アノード電位により、分離システムを通過する質量を決定する。ある質量の範囲では、著しく小さいか又は著しく大きいアノード電位では信号振幅が最大値よりも小さくなるという効果に対して正確なアノード電位に依存した信号振幅が生成される。例えば4重極型質量分析である他の質量分析では、状態が比較可能であるため、同様の方法が適用可能である。
【発明の概要】
【0003】
それぞれの場合において、各質量体についての最大限の可能な信号振幅を得ることができるように調整が必要である。質量分析を質量最大に調整するために、約20−100の測定点で質量調査を行うことは従来から行われている。従って、ある方法では、関連付けられた設定値へと向かう信号振幅の増大は、狭い間隔で測定されている。測定後、測定した最大振幅値が検出され、そしてこの値の周辺の範囲では、更新測定がより狭い間隔の約20−100の測定点で実行される。このように、振幅の増大の最大値は、測定の分析が十分な精度を有するまで複数の連続的な測定で検出される。また、十分な精度の調査も可能であるが、多くの時間を要する。最後の測定の最大振幅値の設定値は、分子の質量を同定するための設定値として使用される。取得すべき膨大な数の測定点及び次々に実行されるべき複数の測定のため、従来の最大質量の決定方法は時間を要する。
【0004】
本発明の目的は、質量分析について質量の調整の決定を高速化する方法を提供することである。
【0005】
本発明の方法は、請求項1に記載の特徴によって定義されている。
【0006】
従って、各信号値は、少なくとも3個の異なる設定値と各アノード電圧に対して取得される。最初又は最後の振幅値が最大である場合、測定信号振幅が最初と最後の測定信号振幅の間で最大となるまで、他の設定値に対する測定は繰り返される。それぞれの各測定点を取得する前に、振幅信号が安定化するまで待機することが好ましい。測定振幅値及び関連付けられた設定値は、測定点として記憶される。続いて、測定点を含む2次関数が計算される。2次関数の最大値が検出され、これは所望の分子の質量の設定値の最大値を決定するために使用される。
【0007】
本発明によれば、測定は少なくとも3個の異なる設定値で実行され、多くとも10個の設定値で実行される。測定の間、3個の設定値のみが取得されるのが好ましい。従って、従来の方法と比べ、測定点の数が明らかに減少し、測定を著しく高速に実行可能である。さらに、測定点を含む2次関数の最大値を決定することによって、連続的な測定の必要性がなくなる。これにより、同様に分子の質量を高速に決定できる。本発明は、その全てにおける推移を測定することなく、単にいくつかの測定値から測定信号の実際の推移結果となるグラフを描くという概念に基づいている。
【0008】
上記の2次関数は、通常、y=ax+bx+c型の放物線である。ここで、xの値は質量軸、即ち所定の設定値であり、yの値はそれぞれの設定値の測定される振幅値である。定数a,bは、連立方程式が測定点に対して設定された後に決定できる。次に、関数の最大のxの値は、2次関数の1階導関数を形成することで決定される。xの最大値は、調査される分子の質量の設定値である。
【0009】
取得された振幅値の最初又は最後の値が最大値である場合、これは調査されるべき最大値がこれらの2個の測定値の間に存在しないことを示している。振幅関数が正確に放物線ではないとき、最初の設定値が各前回測定した最後の設定値に一致するように、新たな範囲の設定値に対して測定を繰り返すことが好ましい。このように、測定の各最初及び各最後の設定値の間で最大振幅測定値に達するまで、測定は繰り返される。設定値が正しく選択されている場合、通常最初の測定で既に中間値が隣接値よりも大きくなる。この最後の測定の測定値に対して、最大値がその後上記の方法に従って決定される。
【0010】
本発明の方法の精度は向上させることができる。第1設定値と第2設定値との間で最大振幅値が生じるとすぐに、この振幅値の周辺でより近接した設定値に対してさらなる振幅値が取得される。従って、即ち換言すれば、最大振幅値の設定値に対して繰り返される測定の設定値の距離は、各前回の測定における場合よりも小さい。
【0011】
本発明の実施形態を、以下で図を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の測定値を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、3個の異なる設定値M1,M2,M3に対して、結果の振幅値A1,A2,A3が測定される。測定値A1,A2,A3は、関連付けられた設定値M1,M2,M3と共に座標の組(M1,A1)(M2,A2)(M3,A3)の形式で蓄積される。図では、座標の組は、座標系の点としてプロットされている。この座標系では、x軸は設定値即ち質量軸Mであり、y軸は振幅軸Aである。
【0014】
図が示しているのは、中間設定値M2の振幅値A2が、最初の設定値M1の振幅値A1と最後の設定値M2の振幅値A3よりも大きいことである。これが意味しているのは、調査される推移の最大値は、第1設定値M1と第3設定値M3との間に位置していることである。そうでない場合、測定は繰り返される必要があり、次の測定の最初の設定値は、各前回の測定の設定値M3とし、範囲漏れがないようにする。
【0015】
3個の測定点(M1,A1)(M2,A2)(M3,A3)の取得後、これらの測定点を含む放物線が調査される。ここでは放物線として、数学上の定数a,b,cを伴う2次関数y=ax+bx+cが立式される。xの値は設定値であり、扇形磁場型質量分析においてはアノード電圧に対応し、yの値は関連付けられた振幅値である。その後、測定点を使用して連立方程式が立式され、定数a,bについて解かれる。bについては、結果は以下の式(1)のようである。
【0016】
【数1】
【0017】
定数aについては、以下の式(2)のようである。
【0018】
【数2】
【0019】
次に、最大位置の決定について、2次関数yの1階導関数y’=2ax+bが立式され、定数a,bの代入後、この導関数はxについて解かれる。それからこのxの値は、関数の導関数が最大であるところでの設定値Mmaxとなる。最大の設定値はMmax=−b/2aである。この設定値に基づいて、調査される分子の振幅は最大となる。
【符号の説明】
【0020】
A 振幅値(振幅軸)
M 設定値(質量軸)
図1