(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被験細菌における、請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸の塩基配列又は該配列に相補的な塩基配列からなる核酸の存在を検出する、UK−2の生産性を判定するための方法。
前記PCR法が、配列番号:45に記載の塩基配列からなるプライマー及び配列番号:46に記載の塩基配列からなるプライマーを用い核酸を増幅する方法である、請求項6に記載の方法。
請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法により、請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸の塩基配列又は該配列に相補的な塩基配列からなる核酸の存在が検出された、UK−2の生合成が誘導され、親株と比較してUK−2の生産性が向上された形質転換体。
ストレプトバーティシリウム、ストレプトマイセス、大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌及びコリネバクテリウム・グルタミクムのうちのいずれかである、請求項8〜11に記載の形質転換体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、UK−2の生合成に必要な遺伝子を単離し、該遺伝子を導入することによって、UK−2の生産性が向上した形質転換体を提供することを目的とする。さらに、該形質転換体を用いることによって、UK−2を安価で大量に製造することも目的とする。また、前記遺伝子の存在を検出することにより、UK−2の生産性を判定するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
UK−2は特徴的なヒドロキシピコリン酸骨格を有している。一方、バージニアマイシン(Virginiamycin)という化合物もヒドロキシピコリン酸骨格を有しており、さらに、VisA(L−lysine 2−aminotransferase)、VisB(3−hydroxypicolinic acid AMP ligase)がこの生合成に関与することが明らかになっている(非特許文献2)。
【0011】
そこで、本発明者らは前記課題を解決すべく、UK−2を生産するストレプトバーティシリウム属3−7株のゲノムDNAライブラリーを調製し、当該株のゲノムDNAの塩基配列を網羅的に決定した。そして、VisA及びVisBのアミノ酸配列と、前記ゲノムDNAがコードする推定タンパク質のアミノ酸配列との相同性解析を実施し、これら2つのアミノ酸配列と高い相同性を示す産物をコードする遺伝子が連続して位置するゲノム部位を見出した。さらに、その部位の近傍には非リボソーム型ペプチド合成酵素(Non−ribosomal peptide synthetase(NRPS))と相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子及びポリケチド合成酵素(Polyketide synthase(PKS))と相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子が配置されていることも見出した。
【0012】
これら酵素はUK−2骨格の形成するために必要と考えられ、また放線菌の二次代謝遺伝子はクラスターを形成していることから、このゲノム領域がUK−2生合成遺伝子クラスターであると推定した。
【0013】
そして、このようにして得られた、UK−2生合成に必要な酵素等をコードしていると推定される遺伝子の塩基配列情報に基づき、プローブを作製し、該プローブを用いたコロニーハイブリダイゼーションによって、前記ゲノムDNAライブラリーから、UK−2生合成遺伝子クラスターと推定されるDNA(前記ゲノム領域からなるDNA)を単離することに成功した。また、このDNAを利用して、前記ゲノム領域に存在する遺伝子を破壊したストレプトバーティシリウム属3−7株を作製し、当該株においてはUK−2が生産されないことを見出し、前記ゲノム領域がUK−2生合成遺伝子クラスターであることを実証した。さらに、ストレプトバーティシリウム属3−7株に、単離したUK−2生合成遺伝子クラスターが挿入されているベクターを導入して形質転換することにより、当該形質転換体のUK−2の生産性を、親株のそれと比較して、約10〜60倍に向上させることができることも見出した。さらに、これら形質転換体のUK−2生合成遺伝子クラスターのコピー数は2コピーであることを確認した。
【0014】
すなわち、本発明は、UK−2生合成遺伝子、UK−2生合成遺伝子が挿入されたベクター、該ベクターが導入された形質転換体、並びに該形質転換体を利用したUK−2等の製造方法に関し、より詳しくは、以下を提供するものである。
<1> UK−2の生合成を誘導し、UK−2の生産性を向上させるための核酸であって、下記(a)〜(q)からなる群から選択される少なくとも一の単離された核酸
(a) 配列番号:3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:2に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(b) 配列番号:5に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:5に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:5に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:4に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(c) 配列番号:7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:7に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:7に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:6に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(d) 配列番号:9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:9に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:9に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:8に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(e) 配列番号:11に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:11に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:11に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:10に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(f) 配列番号:13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:13に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:13に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:12に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(g) 配列番号:15に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:15に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:15に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:14に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(h) 配列番号:17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:17に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:17に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:16に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(i) 配列番号:19に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:19に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:19に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:18に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(j) 配列番号:21に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:21に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:21に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:20に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(k) 配列番号:23に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:23に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:23に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:22に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(l) 配列番号:25に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:25に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:25に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:24に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(m) 配列番号:27に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:27に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:27に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:26に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(n) 配列番号:29に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:29に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:29に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:28に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(o) 配列番号:31に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:31に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:31に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:30に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(p) 配列番号:33に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:33に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:33に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:32に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸
(q) 配列番号:35に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:35に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、配列番号:35に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号:34に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸。
<2> (a)〜(q)に記載の核酸を全て含む、<1>に記載の核酸。
<3> 配列番号:1に記載の塩基配列からなる、<2>に記載の核酸。
<4> <1>〜<3>のいずれか一に記載の核酸が挿入された、UK−2の生合成を誘導し、UK−2の生産性を向上させるためのベクター。
<5> 被験細菌における、<1>〜<3>のいずれか一に記載の核酸の塩基配列又は該配列に相補的な塩基配列からなる核酸の存在を検出する、UK−2の生産性を判定するための方法。
<6> 前記核酸の存在を検出する方法がPCR法である、<5>に記載の方法。
<7> 前記PCR法が、配列番号:45に記載の塩基配列からなるプライマー及び配列番号:46に記載の塩基配列からなるプライマーを用い核酸を増幅する方法である、<6>に記載の方法。
<8> <5>〜<7>のいずれか一に記載の方法により、<1>〜<3>のいずれか一に記載の核酸の塩基配列又は該配列に相補的な塩基配列からなる核酸の存在が検出された、UK−2の生合成が誘導され、UK−2の生産性が向上された細菌。
<9> <4>に記載のベクターの導入により、UK−2の生合成が誘導され、UK−2の生産性が向上された細菌。
<10> <1>〜<3>のいずれか一に記載の核酸がゲノム中に挿入されている、UK−2の生合成が誘導され、UK−2の生産性が向上された細菌。
<11> <1>〜<3>のいずれか一に記載の核酸の塩基配列からなる核酸が1細胞あたり1又は2コピー以上存在している細菌。
<12> ストレプトバーティシリウム、ストレプトマイセス、大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌及びコリネバクテリウム・グルタミクムのうちのいずれかである、<8>〜<11>のいずれか一に記載の細菌。
<13> <8>〜<12>のいずれか一に記載の細菌を培養し、該細菌の培養物からUK−2を採取することを含む、UK−2を製造するための方法。
<14> <8>〜<12>のいずれか一に記載の細菌を培養し、該細菌の培養物からUK−2を採取する工程と、採取したUK−2から下記式(1)で表わされるUK−2の誘導体を合成する工程とを含む、UK−2の誘導体を製造するための方法
【0015】
【化1】
【0016】
[式(1)中、
Rは、2−メチルプロパノイル基、トランス−2−メチル−2−ブテノイル基、3−メチルブタノイル基又は2−メチルブタノイル基を表し、
R1は、Cl−6アルキル基、ベンジル基、C1−10アルキルカルボニル基(該C1−10アルキルカルボニル基はカルボキシル基、ベンジルオキシカルボニル基、C1−4アルキルオキシカルボニル基若しくはベンジルオキシカルボニルアミノ基により置換されていてもよい)、ベンゾイル基、C1−4アルキルオキシカルボニル基、(C1−4)アルキルオキシカルボニル(C1−4)アルキル基、ニトロ基により置換されていてもよいベンジルオキシカルボニル(C1−4)アルキル基、C1−6アルキルスルホニル基、ジ(C1−6)アルキルホスホリル基、ジフェニルホスホリル基又は下記式(2)で表わされる置換基を表す。
【0017】
【化2】
【0018】
(式(2)中、
Qは、H、CH
3、CH
2CH
3、CF
3、Ph、CH=CH
2及びシクロプロピルからなる群より選択され、
Mは、H、CH
3、CH
2CH
3、CF
3、Ph、CH=CH
2及びシクロプロピルからなる群より選択され、
Tは、O、OC(O)、OC(O)O、S、SC(O)、SC(O)O及び下記式(3)で表わされる置換基からなる群より選択され、
【0019】
【化3】
【0020】
Gは、H、C1−6アルキル基、C1−6アルキルオキシC1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−6シクロアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基からなる群より選択される。G及びMはオキソ基を有していてもよいイソベンゾフラン環を形成していてもよく、M及びQは3〜8員炭素環系を形成していてもよい。)]。
<15> <8>〜<12>のいずれか一に記載の細菌を培養し、該細菌の培養物からUK−2Aを採取する工程と、採取したUK−2Aから下記式(4)、(5)、(6)又は(7)で表わされるUK−2Aの誘導体を合成する工程とを含む、UK−2Aの誘導体を製造するための方法。
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
なお、本明細書において「アシル」の語は、カルボン酸RCOOH(Rは炭化水素基)からOHを除いた残基RCO−を示す。本明細書中で「アリール」の語はフェニル又はナフチルを示す。本明細書「ヘテロアリール」の語は、1つ以上のヘテロ原子を含む5又は6員芳香環のいずれかを示し、ここでそのようなヘテロ原子はO、N及びSからなる群から選択されたものであり、並びに芳香環の残りの原子は炭素原子である。好適な例としては、これらに限定するものではないが、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、フラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、キノリン、キノキソリン及びチアジアゾールが挙げられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、UK−2生合成遺伝子を細菌等の宿主細胞に導入することによって、UK−2の生産性が向上した形質転換体を提供することが可能となる。さらに、該形質転換体を用いることにより、UK−2を安価で大量に製造することも可能となる。また、前記遺伝子の存在を検出することにより、UK−2の生産性を判定するための方法を提供することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<UK−2生合成遺伝子>
本発明は、UK−2生合成遺伝子を提供する。後述の実施例において示す通り、本発明者らによって、ストレプトバーティシリウム属3−7株のゲノムDNAから、新規なUK−2生合成遺伝子として、表2に示す17の遺伝子が単離された。
【0028】
従って、本発明のUK−2生合成遺伝子の1つの態様は、「UK−2の生合成を誘導し、UK−2の生産性を向上させるための核酸であって、配列番号:3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33又は35に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする、単離された核酸」であり、典型的には「UK−2の生合成を誘導し、UK−2の生産性を向上させるための核酸であって、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32又は34に記載の塩基配列からなる、単離された核酸」である。
【0029】
本発明において「UK−2の生産性の向上」とは、細菌等が生来有していたUK−2の生産性が向上することのみならず、生来UK−2の生産能を有していなかった細菌等がUK−2の生産能を有するようになることも意味する。
【0030】
本発明において「単離」とは、本来存在する状態とは異なる状態で存在するように人為的に処理することを意味する。本発明のUK−2生合成遺伝子は、例えば、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32又は34に記載の塩基配列情報に基づき適当なプライマーを合成し、それを用いてストレプトバーティシリウム属3−7株のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行うことにより、単離することができる。また、後述の実施例に示すように、前記PCRによって得られた増幅産物をプローブとして用いたコロニーハイブリダイゼーションを行うことにより、ストレプトバーティシリウム属3−7株のゲノムDNAライブラリー又はcDNAライブラリーから、本発明のUK−2生合成遺伝子を単離することもできる。さらに、前記塩基配列情報に基づき、化学的に全合成することにより、本発明のUK−2生合成遺伝子を調製することもできる。
【0031】
本発明において「UK−2」とは下記式(8);
【0033】
(式中、Rは直鎖若しくは分岐の飽和脂肪族アシル基又は直鎖若しくは分岐の不飽和脂肪族アシル基を示す)で表わされる化合物のことであり、好ましくは、Rがイソブチリル基(2−メチルプロパノイル基)である化合物(UK−2A)、Rがチグロイル基(trans−2−メチル−2−ブテノイル基)である化合物(UK−2B)、Rがイソバレリル基(3−メチルブタノイル基)である化合物(UK−2C)及びRが2−メチルブタノイル基である化合物(UK−2D)である。
【0034】
また、本発明において「UK−2生合成遺伝子」とは、UK−2の生合成を誘導できる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子である。「UK−2の生合成を誘導できる活性」は、例えば、後述の実施例9に記載の方法にて評価することができる。すなわち、被検タンパク質をコードする核酸が挿入されているベクターを導入する等して、被検タンパク質を宿主細胞(例えば、ストレプトバーティシリウム属3−7株)において強制的に発現させ、当該宿主細胞におけるUK−2の生産量を測定する。この生産量が、被検タンパク質を発現させていない宿主細胞のそれと比べて多い場合に、当該被検タンパク質はUK−2の生合成を誘導できる活性を有していると評価することができる。
【0035】
現在の技術水準においては、当業者であれば、前記UK−2生合成遺伝子の塩基配列情報が得られた場合、その塩基配列を改変し、そのコードするアミノ酸配列とは異なるが、UK−2の生合成に関与するタンパク質をコードする核酸を取得することが可能である。また、自然界においても、塩基配列の変異によりコードするタンパク質のアミノ酸配列が変異することは起こり得ることである。従って、本発明のUK−2生合成遺伝子の他の態様は、「単離された核酸であって、配列番号:3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33又は35に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸」である。ここで「複数」とは、改変後のUK−2の生合成に関与するタンパク質が、UK−2の生合成を誘導する活性を有する範囲におけるアミノ酸の改変数であり、通常1〜50個、好ましくは1〜40個、より好ましくは1〜数個(例えば、1〜20個、1〜10個、1〜8個、1〜4個)である。
【0036】
このような改変体をコードする核酸は、当業者であれば、前記UK−2生合成遺伝子の塩基配列情報に基づき、公知の部位特異的変異誘発(site−directed mutagenesis)法を利用して調製することが可能である。
【0037】
さらに、現在の技術水準においては、当業者であれば、前記UK−2生合成遺伝子の塩基情報が得られた場合、ハイブリダイゼーション技術やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術により、ストレプトバーティシリウム属3−7株以外の株や、他の菌から、UK−2の生合成を誘導する活性を有するタンパク質をコードする核酸(相同遺伝子)を取得することが可能である。従って、本発明のUK−2生合成遺伝子の他の態様は、「単離された核酸であって、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32又は34に記載の塩基配列からなる核酸と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸」である。
【0038】
このような相同遺伝子を単離するためには、通常、厳密な条件下でハイブリダイゼーション反応を行なう。「厳密な条件」とは、ハイブリダイゼーション後のメンブレンの洗浄操作を、高温下低塩濃度溶液中で行うことを意味し、例えば、2×SSC濃度(1×SSC:15mMクエン酸3ナトリウム、150mM塩化ナトリウム)、0.5% SDS溶液中で60℃、20分間の洗浄条件が挙げられる。また、ハイブリダイゼーションは、例えば、公知であるECLダイレクトDNA/RNAラベリング・検出システム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)に添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
【0039】
また、このような方法にて取得された相同遺伝子がコードするタンパク質は、通常、配列番号:3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33又は35に記載のアミノ酸配列と高い相同性を有する。従って、本発明のUK−2生合成遺伝子の他の態様は、「単離された核酸であって、配列番号:3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33又は35に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸」である。
【0040】
配列の相同性は、例えば、NCBIのBLASTP(アミノ酸レベル)のプログラムを利用して決定することができる。
【0041】
本発明のUK−2生合成遺伝子は、後述の実施例において示す通り、UK−2の生産性が向上した形質転換体の作製に利用できる他、UK−2生合成遺伝子クラスターをスクリーニングするためにも有効に利用することができる。
【0042】
このような形質転換体の作製やUK−2生合成遺伝子クラスターのスクリーニングにおいては、前述のUK−2生合成遺伝子を単独で用いるよりも、複数組み合わせて用いることが好ましい。組み合わせるUK−2生合成遺伝子の数としては、その組み合わせにより、UK−2の生合成を誘導しうる限り、特に制限はない。例えば、2以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上、より好ましくは15以上である。形質転換体におけるUK−2の生産性を顕著に向上させることができることから、17のUK−2生合成遺伝子の組み合わせが最も好ましい。
【0043】
組み合わせるUK−2生合成遺伝子は、一つの核酸として存在してもよく、別々の核酸として存在してもよい。
【0044】
本発明は、17のUK−2生合成遺伝子を含む一つの核酸(UK−2生合成遺伝子クラスター)として、「配列番号:1に記載の塩基配列からなる核酸」を提供する。配列番号:1に記載の塩基配列からなる核酸における、上記遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の位置は、後述の表1に示す通りである。
【0045】
「配列番号:1に記載の塩基配列からなる核酸」は、後述の実施例に示すように、前記UK−2生合成遺伝子の塩基配列情報等に基づき、適当なプライマーを合成し、別途作製したストレプトバーティシリウム属3−7株のコスミドゲノムDNAライブラリーを鋳型とする該プライマーを用いたPCRを行い、得られた増幅産物をプローブとして用いたコロニーハイブリダイゼーションを行うことによって単離することができる。
【0046】
<ベクター>
本発明によれば、上記本発明のUK−2生合成遺伝子が挿入されたベクターが提供される。本発明のベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外の独立体として存在し、その複製が染色体の複製に依存しない、例えば、プラスミドを基本に構築することができる。また、本発明のベクターは、細菌等の宿主細胞に導入されたとき、その宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであってもよい。本発明のベクター構築の手順及び方法は、遺伝子工学の分野で慣用されているものを用いることができる。
【0047】
本発明のベクターは、当業者であれば、導入する宿主細胞の種類に合わせて、公知のベクターから適宜選択することができる。公知のベクターとしては、例えば、コスミドベクター(SuperCos1コスミドベクター等)、ファージベクター、pUC系プラスミド(pCR2.1−TOPOプラスミドベクター等)、pBluescript系プラスミド、pBR322プラスミドが挙げられる。
【0048】
本発明の「ベクター」は、宿主細胞において、本発明のUK−2生合成遺伝子がコードするタンパク質を発現させるために、当該遺伝子の他に、その発現を制御するDNA配列や形質転換された宿主細胞を選択するためのマーカー遺伝子等を含んでいることが好ましい。
【0049】
「発現を制御するDNA配列」としては、例えば、プロモーター、エンハンサー及びターミネーターが挙げられる。また、細菌において、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加により、下流に配置された遺伝子の発現を誘導することのできるラクトースオペロンも挙げられる。本発明のベクターは、例えば、本発明のUK−2生合成遺伝子の上流にプロモーターを、下流にターミネーターをそれぞれ作動可能に連結することによって構築することができる。
【0050】
「マーカー遺伝子」は、形質転換された宿主細胞(形質転換体)の選択手法に応じて適宜選択できるが、例えば、薬剤耐性をコードする遺伝子や栄養要求性を相補する遺伝子を利用することができる。マーカー遺伝子としては、使用する宿主細胞が細菌の場合は、例えば、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子が挙げられる。特に、放線菌の場合は、アプラマイシン耐性遺伝子、チオストレプトン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子、バイオマイシン耐性遺伝子などが挙げられ、酵母の場合は、トリプトファン生合成遺伝子(
TRP1)、ウラシル生合成遺伝子(
URA3)、ロイシン生合成遺伝子(
LEU2)などが挙げられ、カビの場合は、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子、オーレオバシジン耐性遺伝子などが挙げられ、植物の場合には、カナマイシン耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子などが挙げられる。
【0051】
<形質転換体等>
本発明によれば、前記本発明のベクターが導入された形質転換体(例えば、前記本発明のベクターの導入により、UK−2の生合成が誘導され、UK−2の生産性が向上された細菌)が提供される。
【0052】
また、本発明によれば、本発明のUK−2生合成遺伝子がゲノム中に挿入されている、UK−2の生合成が誘導され、UK−2の生産性が向上された形質転換体が提供される。
【0053】
前記本発明のベクターが導入されることによって形質転換される宿主細胞又は前記本発明のUK−2生合成遺伝子がゲノム中に挿入される宿主細胞は、特に制限はなく、例えば、放線菌、大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌、コリネバクテリウム・グルタミクム、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞が挙げられるが、UK−2の生産性の観点から、好ましくは放線菌であり、より好ましくはストレプトバーティシリウム属に属する細菌及びストレプトマイゼス属に属する細菌であり、さらに好ましくはストレプトバーティシリウム属に属する細菌であり、特に好ましくは、ストレプトバーティシリウム属3−7株である。
【0054】
本発明のベクターの宿主細胞への導入方法としては、特に制限はなく、接合伝達、ファージによる形質導入、カルシウムイオン法、リチウムイオン法、エレクトロポレーション法、PEG法、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法といった公知の形質転換の方法の中から、当業者であれば、適宜供試する宿主細胞の種類に応じて選択し、用いることができる。また、前記「マーカー遺伝子」を含むベクターを宿主細胞に導入した場合には、前記薬剤耐性遺伝子に対応する抗生物質を添加した培地又は前記栄養要求性を相補する遺伝子に対応する栄養物が欠失している培地にて培養することにより、本発明の形質転換体を効率良く調製することができる。
【0055】
また、本発明によれば、発酵条件の改良や突然変異誘導等によりUK−2の生合成が誘導され、UK−2の生産性が向上された細菌が提供される。さらに、後述の実施例に示す通り、本発明のUK−2生合成遺伝子を少なくとも2コピー有することによって、UK−2の生合成が誘導され、UK−2の生産性が顕著に向上されることが明らかになった。従って、本発明によれば、本発明のUK−2生合成遺伝子が1細胞あたり1又は2コピー以上存在している細菌も提供される。かかる細菌としては、UK−2の生産性の観点から、好ましくは放線菌であり、より好ましくはストレプトバーティシリウム属に属する細菌及びストレプトマイゼス属に属する細菌であり、さらに好ましくはストレプトバーティシリウム属に属する細菌である。また、UK−2の生産性の観点から、本発明のUK−2生合成遺伝子の1細胞あたりのコピー数としては好ましくは2以上である。なお、本発明のUK−2生合成遺伝子の1細胞あたりのコピー数は、例えば後述の実施例において示すようなPCR法により同定することができる。
【0056】
<UK−2の生産性を判定するための方法>
本発明者らによって、UK−2の生合成に必要な遺伝子が単離され、同定されたことにより、当該遺伝子の存在を検出することによってUK−2の生産性を判定することができるようになった。従って、本発明によれば、被験細菌における、本発明のUK−2生合成遺伝子の塩基配列又は該配列に相補的な塩基配列からなる核酸の存在を検出する、UK−2の生産性を判定するための方法も提供される。
【0057】
本発明の方法における「被験細菌」としては特に制限はなく、例えば、放線菌(ストレプトバーティシリウム属に属する細菌、ストレプトマイゼス属に属する細菌等)、大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌、コリネバクテリウム・グルタミクムが挙げられる。
【0058】
本発明のUK−2の生産性を判定するための方法において検出される、本発明のUK−2生合成遺伝子の塩基配列は、すなわち本発明の核酸の塩基配列は、前述の(a)〜(q)からなる群から選択される少なくとも一の核酸の塩基配列である。
【0059】
前記核酸等の検出は、該核酸等を含むゲノムDNAや該ゲノムDNAからの転写産物を対象として直接的に行うことができるが、該転写産物からの翻訳産物(本発明のUK−2生合成遺伝子がコードするタンパク質)を対象として間接的に行うこともできる。また、前記核酸等の検出には、公知の手法を用いることができる。前記ゲノムDNAを対象とする場合においては、例えば、in situハイブリダイゼーション(ISH)法、ゲノムPCR法、ダイレクトシークエンシング法、サザンブロッティング法、ゲノムマイクロアレイを用いた解析法を用いることができる。前記転写産物を対象とする場合においては、例えば、PCR法、ダイレクトシークエンシング法、ノーザンブロッティング法、ドットブロット法、cDNAマイクロアレイを用いた解析法を用いることができる。前記翻訳産物を対象とする場合においては、例えば、本発明のUK−2生合成遺伝子がコードするタンパク質に対する抗体を用いた免疫学的手法(ウェスタンブロット法、ELISA法、フローサイトメトリー、免疫組織化学的染色法、イメージングサイトメトリー、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降法、抗体アレイを用いた解析法等)が挙げられる。これらの方法のうち、好ましくはPCR法であり、より好ましくは、配列番号:45に記載の塩基配列からなるプライマー及び配列番号:46に記載の塩基配列からなるプライマーを用いて核酸を増幅するPCR法である。
【0060】
また、本発明の方法において、UK−2の生産性をより精度高く判定できるという観点から、前記核酸(本発明のUK−2生合成遺伝子)1個の存在を検出するよりも、複数個の前記核酸の存在を検出することが好ましい。検出する核酸の数としては、例えば、2以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上、より好ましくは15以上であり、前記17の核酸全てを検出することが特に好ましく、前記17の核酸全てを含む一つの核酸(配列番号:1に記載の塩基配列からなる核酸)を検出することが最も好ましい。さらに、前述の公知の手法によって核酸の存在を検出するにあたり、その検出の対象となるのは通常、該核酸の全長のみならず、その一部であることがある。従って、本発明の方法においても、前記核酸等の検出は、前記核酸等の一部を検出するものであってもよい。本発明の方法に検出される前記核酸の一部の鎖長としては、当業者であれば検出手法に合わせて適宜選択することができる。
【0061】
そして、かかる方法により、被験細菌において前記核酸の存在を検出することができれば、該被験細菌はUK−2の生産性を有していると判定される。また、かかる方法は、前記核酸の存在を検出することができた該試験細菌を、UK−2の生産に適した状況にて培養することにより、その生産性を確認する工程を含んでいてもよい。
【0062】
また、本発明によれば、本発明のUK−2の生産性を判定するための方法により、本発明の核酸の塩基配列又は該配列に相補的な塩基配列からなる核酸の存在が検出された、UK−2の生合成が誘導され、UK−2の生産性が向上された細菌も提供される。かかる細菌としては、UK−2の生産性の観点から、好ましくは放線菌であり、より好ましくはストレプトバーティシリウム属に属する細菌及びストレプトマイゼス属に属する細菌であり、さらに好ましくはストレプトバーティシリウム属に属する細菌である。
【0063】
なお、本明細書において、上述の本発明のUK−2生合成遺伝子を有する細菌等、すなわち、本発明のUK−2の生産性を判定するための方法により、前記核酸の存在が検出された、UK−2の生合成が誘導され、UK−2の生産性が向上された細菌、本発明のベクターの導入により、UK−2の生合成が誘導され、UK−2の生産性が向上された形質転換体、本発明のUK−2生合成遺伝子がゲノム中に挿入されている、UK−2の生合成が誘導され、UK−2の生産性が向上された形質転換体、本発明のUK−2生合成遺伝子が1細胞あたり1又は2コピー以上存在している細菌、発酵条件の改良や突然変異誘導等によりUK−2の生合成が誘導され、UK−2の生産性が向上された細菌については、以下「本発明の細菌等」と総称する。
【0064】
<UK−2の製造方法>
本発明によれば、本発明の細菌等を培養し、該細菌等の培養物からUK−2を採取することを含む、UK−2を製造するための方法が提供される。
【0065】
前記細菌等の培養は常法に従って、培地、培養条件等を適宜選択することにより行うことができる。培地としては、慣用の成分、例えば炭素源としては、グルコース、シュークロース、セルロース、水飴、デキストリン、澱粉、グリセロール、糖蜜、動・植物油等が使用できる。また、窒素源としては、大豆粉、小麦胚芽、ファーマメディア、コーン・スティープ・リカー、綿実粕、ブイヨン、ペプトン、ポリペプトン、マルトエキス、イーストエキス、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素等が使用できる。その他必要に応じ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、塩素、リン酸、硫酸及びその他のイオンを生成することのできる無機塩類、例えば塩化カリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素2カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸1カリウム、硫酸亜鉛、硫酸マンガン、硫酸銅を添加することも有効である。また、必要に応じてチアミン(チアミン塩酸塩等)等の各種ビタミン、グルタミン酸(グルタミン酸ナトリウム等)、アスパラギン(DL−アスパラギン等)等のアミノ酸、ヌクレオチド等の微量栄養素、抗生物質等の選抜薬剤を添加することもできる。さらに、菌の発育を助け、UK−2の生産を促進するような有機物及び無機物を適当に添加することができる。また、培地のpHは、特に制限はなく、培養する細菌等の種類に応じて調整すればよく、例えばpH6〜pH8程度が挙げられる。
【0066】
培養条件は、培養する細菌等の種類や用いる培地の種類等に応じて、当業者であれば適宜選択、設定することができる。例えば、培養方法としては、好気的条件での振とう培養法、通気撹拌培養法又は深部好気培養法等の公知の培養法の中から選択することができるが、通気撹拌培養法が好ましい。培養に適当な温度は、15℃〜40℃であるが、多くの場合26℃〜37℃付近に設定される。また、培養時間は、UK−2の蓄積が最高に達する2日〜25日間が好ましい。
【0067】
本発明において「培養物」とは、本発明の細菌等を培養することによって得られる、増殖した細菌等、該細菌等の分泌産物及び該細菌等の代謝産物等を含有する培地のことであり、それらの希釈物、濃縮物を含む。
【0068】
UK−2は、前記培養物において、細菌等及び培地の両方に蓄積される。従って、前記培養物の培地からUK−2を採取する方法としては、例えば、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン等の水とは任意に混合せず、しかもUK−2を有効に抽出できる有機溶媒を用いて抽出する方法が挙げられる。また、前記培養物の細菌等からは、例えば、濾過又は遠心分離等の手段にて回収した細菌等を、アセトン等の有機溶媒を用いて抽出することにより、UK−2を採取することができる。さらに、前記培養物の細菌等をガラスビーズ等を用いて破砕した後に、前記培地からの抽出と同様に抽出することにより、UK−2を採取することができる。
【0069】
また、前記培養物からのUK−2の採取においては、このようにして調整された有機溶媒等の抽出画分に、溶媒転溶、順相及び逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトマトグラフィー、結晶化等の公知の精製を組み合わせて施すことにより、UK−2を単離、精製することができる。
【0070】
<UK−2誘導体の製造方法>
前述の通り、本発明によれば、UK−2を安価で大量に製造することができるため、本発明の製造方法によって得られたUK−2を材料として、UK−2の誘導体を安価で大量に製造することもできる。
【0071】
従って、本発明は、本発明の細菌等を培養し、該細菌等の培養物からUK−2(UK−2A、UK−2B、UK−2C又はUK−2D)を採取する工程と、採取したUK−2から下記式(1)で表わされるUK−2の誘導体を合成する工程とを含む、UK−2の誘導体を製造するための方法をも提供することができる。
【0073】
[式(1)中、
Rは、2−メチルプロパノイル基、トランス−2−メチル−2−ブテノイル基、3−メチルブタノイル基又は2−メチルブタノイル基を表し、
R
1は、C
l−6アルキル基、ベンジル基、C
1−10アルキルカルボニル基(該C
1−10アルキルカルボニル基はカルボキシル基、ベンジルオキシカルボニル基、C
1−4アルキルオキシカルボニル基若しくはベンジルオキシカルボニルアミノ基により置換されていてもよい)、ベンゾイル基、C
1−4アルキルオキシカルボニル基、(C
1−4)アルキルオキシカルボニル(C
1−4)アルキル基、ニトロ基により置換されていてもよいベンジルオキシカルボニル(C
1−4)アルキル基、C
1−6アルキルスルホニル基、ジ(C
1−6)アルキルホスホリル基、ジフェニルホスホリル基又は下記式(2)で表わされる置換基を表す。
【0075】
(式(2)中、
Qは、H、CH
3、CH
2CH
3、CF
3、Ph、CH=CH
2及びシクロプロピルからなる群より選択され、
Mは、H、CH
3、CH
2CH
3、CF
3、Ph、CH=CH
2及びシクロプロピルからなる群より選択され、
Tは、O、OC(O)、OC(O)O、S、SC(O)、SC(O)O及び下記式(3)で表わされる置換基からなる群より選択され、
【0077】
Gは、H、C
1−6アルキル基、C
1−6アルキルオキシC
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、C
2−6アルキニル基、C
3−6シクロアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基からなる群より選択される。G及びMはオキソ基を有していてもよいイソベンゾフラン環を形成していてもよく、M及びQは3〜8員炭素環系を形成していてもよい。)]。
【0078】
また、前記式(2)で表わされる置換基において、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、下記置換基群から選択される少なくとも一の置換基により置換されていてもよい:
C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、C
2−6アルキニル基、C
3−6シクロアルキル基、C
5−6シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、C
1−6アルコキシ基、C
2−6アルケノキシ基、C
3−6シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アシルオキシ基、C
1−6アルキルアシルオキシ基、C
3−6シクロアルキルアシルオキシ基、アリールアシルオキシ基、ヘテロアリールアシルオキシ基、C
1−6アルキルオキシアシル基、C
3−6シクロアルキルオキシアシル基、アリールオキシアシル基、ヘテロアリールオキシアシル基、C
1−6アルキルアシル基、C
3−6シクロアルキルアシル基、アリールアシル基、ヘテロアリールアシル基、C
1−6アルキルアシルアミノ基、C
3−6シクロアルキルアシルアミノ基、アリールアシルアミノ基、ヘテロアリールアシルアミノ基、C
1−6アルキルアミノアシル基、C
3−6シクロアルキルアミノアシル基、アリールアミノアシル基、ヘテロアリールアミノアシル基、C
1−6アルキルチオ基、C
3−6シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、C
1−6アルキルスルホニル基、C
3−6シクロアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、C
1−6アルキルスルフィニル基、C
3−6シクロアルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルフィニル基並びにR
Y及びR
Xが独立にH、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、C
3−6シクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である−C(NOR
X)R
Y(ここで、前記アルキル又はシクロアルキル含有置換基は、1つ以上のハロゲンで置換されていてもよい)。
【0079】
なお、前記置換基は、さらに下記置換基群から選択される少なくとも一の置換基により置換されていてもよい:
C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、C
2−6アルキニル基、C
3−6シクロアルキル基、C
5−6シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、C
1−6アルコキシ基、C
2−6アルケノキシ基、C
3−6シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アシルオキシ基、C
1−6アルキルアシルオキシ基、C
3−6シクロアルキルアシルオキシ基、アリールアシルオキシ基、ヘテロアリールアシルオキシ基、C
1−6アルキルオキシアシル基、C
3−6シクロアルキルオキシアシル基、アリールオキシアシル基、ヘテロアリールオキシアシル基、C
1−6アルキルアシル基、C
3−6シクロアルキルアシル基、アリールアシル基、ヘテロアリールアシル基、C
1−6アルキルアシルアミノ基、C
3−6シクロアルキルアシルアミノ基、アリールアシルアミノ基、ヘテロアリールアシルアミノ基、C
1−6アルキルアミノアシル基、C
3−6シクロアルキルアミノアシル基、アリールアミノアシル基、ヘテロアリールアミノアシル基、C
1−6アルキルチオ基、C
3−6シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、C
1−6アルキルスルホニル基、C
3−6シクロアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、C
1−6アルキルスルフィニル基、C
3−6シクロアルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルフィニル基並びにR
Y及びR
Xが独立にH、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、C
3−6シクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である−C(NOR
X)R
Y(ここで、前記アルキル又はシクロアルキル含有置換基は、1つ以上のハロゲンで置換されていてもよい)。
【0080】
また、本発明は、本発明の細菌等を培養し、該細菌等の培養物からUK−2Aを採取する工程と、採取したUK−2Aから下記式(4)、(5)、(6)又は(7)で表わされるUK−2Aの誘導体を合成する工程とを含む、UK−2Aの誘導体を製造するための方法をも提供することができる。
【0085】
前記培養物からのUK−2A、UK−2B、UK−2C又はUK−2Dの採取は、前述の通り、例えば、前記有機溶媒等の抽出画分に、溶媒転溶、順相及び逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトマトグラフィー、結晶化等の公知の精製を組み合わせて施すことにより、UK−2A、UK−2B、UK−2C又はUK−2Dを単離、精製することができる。より具体的には、前記有機溶媒等の抽出画分を減圧濃縮し、これをクロロホルムに転溶してシリカゲルクロマトグラフィーに付し、これをクロロホルム/メタノールのステップワイズにて溶出すれば、UK−2A及びUK−2Dを約3:1の割合で含有し、ここに微量のUK−2B及びUK−2Cが混入した画分を得ることができる。さらにこれをC−18カラムを用いる逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて処理することにより、UK−2A、UK−2B、UK−2C又はUK−2Dを単離することができる(特許文献1 参照)。
【0086】
そして、このようにして採取したUK−2A、UK−2B、UK−2C又はUK−2Dを材料とし、例えば、国際公開第2003/035617号又は国際公開第99/40081号に記載の合成方法により、前記式(1)、(4)、(5)、(6)又は(7)で表わされるUK−2A、UK−2B、UK−2C又はUK−2Dの誘導体を合成することができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
なお、本実施例に記載の微生物の寄託は次の通りである。ストレプトバーティシリウム属3−7株(Streptoverticillium sp.3−7)は、平成23(2011)年11月9日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託された。受託番号は、FERM BP−11437である。なお、2012年4月に特許微生物寄託業務は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(旧称:IPOD)から独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE、〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に承継された。
【0089】
ストレプトバーティシリウム属3−7株は、特公平07−233165号公報に記載のSAM2084株に、紫外線照射による変異処理を人工的に1回施すことにより、本発明者らによって樹立された。SAM2084株は、日本国京都府の土壌から得られた、国際寄託番号FERM BP−6446で識別されるUK−2生産菌株である。
【0090】
(実施例1)
<ゲノムDNAライブラリーの作製>
UK−2の生合成に必要な遺伝子を単離するために、先ず、UK−2を生産することのできるストレプトバーティシリウム属3−7株のゲノムDNAライブラリーを以下に示す方法にて調製した。
【0091】
ストレプトバーティシリウム属3−7株を改変YEME(0.3%ディフコイーストエキストラクト、0.5%ディフコバクトペプトン、0.3%オキシドモルトエキストラクト、3.0%シュークロース、1.0%グルコース、5mmol/L MgCl
2・6H
2O)50mlに植菌し、30℃、18時間、220rpmで振とう培養した。培養終了後、7500rpm、10分間遠心して集菌し得られた菌体からSalting out法[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwich),2000年 参照]を用いてゲノムDNAを調製した。
【0092】
得られたゲノムDNAを制限酵素
MboIで部分消化した後、アルカリフォスファターゼ処理を行い、DNA末端を脱リン酸化した。このDNA断片を、予め制限酵素
XbaIで消化しアルカリフォスファターゼ処理によって脱リン酸化した後、更に制限酵素
BamHIで消化した市販のコスミドベクターSuperCos1(ストラタジーン社製)に連結し、組換えコスミドベクターを作製した。この組換えコスミドベクターについて、エピセンター社製のMAXPLAXラムダパッケージングエキストラクトを用いてインビトロパッケージし、大腸菌XLI−Blue MRAに感染させることによりコスミドゲノムDNAライブラリーを作製した。
【0093】
(実施例2)
<UK−2生合成遺伝子の推定>
実施例1に示した方法で調製したゲノムDNAをもとに、株式会社ジナリスに委託し、Roche GS FLX Titaniumシークエンサー用のMate−pair libraryを構築した後、このシークエンサー用いて配列を決定した。これとは別に、ゲノムDNAをもとに、このシークエンサー用のFragment libraryを構築した後、このシークエンサー用いて配列を決定した。Mate−pair libraryから得られた配列とFragment libraryから得られた配列のコアセンブリーを行うことにより、Contig配列とScaffold配列を得た。
【0094】
UK−2は特徴的な3−ヒドロキシピコリン酸骨格を有している。一方、Virginiamycinもヒドロキシピコリン酸骨格を有しており、この生合成に関与する2遺伝子(visA、visB)が公開されている(非特許文献2 参照)。そこで、この2遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列とUK−2生産菌ゲノムから得られた推定アミノ酸配列との相同性解析を実施し、ヒドロキシピコリン酸骨格形成に関与する遺伝子の存在を調査した。得られた結果を表1及び2に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
前記調査の結果、VisA、VisBと高い相同性を示した遺伝子が連続して位置していた箇所を、ストレプトバーティシリウム属3−7株由来のゲノム上に1箇所見出した(表1 参照)。さらに、これらの近傍にはUK−2骨格を形成するために必要と考えられるNon−ribosomal peptide synthetase(NRPS)及びPolyketide synthase(PKS)に関連した遺伝子が配置されていることも見出した(表2 参照)。放線菌の二次代謝遺伝子はクラスターを形成することから、この付近がUK−2生合成遺伝子クラスターであると推定した。また、UK−2生合成遺伝子クラスターに配置されている各遺伝子(ORF)と、それらがコードするタンパク質の推定される機能とのアライメントは以下の通りである。
【0098】
ORF1は生合成遺伝子クラスターの制御に関与している可能性がある遺伝子である。ORF5、ORF6、ORF7、ORF16は3−ヒドロキシピコリン酸骨格の生合成に関わる遺伝子である。ORF2、ORF3、ORF17はベンジルマロン酸骨格の生合成に関わる遺伝子である。ORF13はピコリン酸骨格とセリン、乳酸の生合成に関わる遺伝子である。ORF11とORF12はピコリン酸とセリン、乳酸の代謝とベンジルマロン酸の生合成に関わる遺伝子である。ORF8はピコリン酸、セリン、乳酸、ベンジルマロン酸の代謝とPolyketide synthase(PKS)のチオエステル結合の切断に関わる遺伝子である。
【0099】
(実施例3)
<ゲノムDNAライブラリーのスクリーニング>
実施例1で作製したゲノムDNAライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして、UK−2生合成遺伝子群の上流に位置するORF5の一部の配列を使用することとし、以下に示すようにPCRによって調製した。
【0100】
実施例1に示したゲノムDNAを鋳型とし、visA’−F:5’−GGGGCAGCCTGCTCGGCGAG−3’(配列番号:36)とvisA’−R:5’−GGTGAGCTCCCCGATCAGGG−3’(配列番号:37)のオリゴDNAをプライマーとしてPCRを行った。PCRは、DNAポリメラーゼとして
LA Taq DNA polymerase(タカラバイオ株式会社製)を使用し、PERKIN ELMER GeneAmp PCR System 9700を用いて行った。反応液は、ゲノムDNAを0.5μl(0.5μg相当量)、酵素に添付の2倍濃度反応用緩衝液を25μl、DMSO溶液を2.5μl、2.5mM dNTP溶液を5μl、100pmol/μlの濃度に調整した上記プライマーを各0.25μlずつ、酵素を0.3μl、滅菌水を16.2μl加えて50μlとした。反応は、95℃、10分間の前処理の後、95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で2分間のインキュベーションを30サイクル、さらに72℃で5分間のインキュベーションを行った。反応終了後、反応液の一部をアガロースゲル電気泳動に供した結果、約1.3kbpのDNA断片が特異的に増幅されている事を確認した。そこで、残りの反応液を核酸精製用混合溶液(フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=25:24:1,V/V)で抽出し、エタノール沈殿を行った。沈殿物を滅菌水に再溶解し、アガロースゲル電気泳動を行い、約1.3kbpのバンドを定法に従って切り出してDNA断片を回収した。
【0101】
前記DNA断片をプローブにし、ECLダイレクトDNA/RNAラベリング・検出システム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を使用してコロニーハイブリダイゼーションを行い、約5000個のコロニーをスクリーニングした。複数個の陽性クローンが得られ、このうちの1クローンよりプラスミドpUK2−B44を単離した。
【0102】
さらに、UK−2生合成遺伝子群の下流に位置するORF13の一部をプローブとして使用することとし、以下に示すようにPCRによって調製した。
【0103】
実施例1に示したゲノムDNAを鋳型とし、caiC−F:5’−GCGCTCGTACGCCTCGCTGAT−3’(配列番号:38)とcaiC−R:5’−CGGGCTCGGTGGTGAGCAGG−3’(配列番号:39)のオリゴDNAをプライマーとしてPCRを行った。PCRは、DNAポリメラーゼとして
LA Taq DNA polymerase(タカラバイオ株式会社製)を使用し、PERKIN ELMER GeneAmp PCR System 9700を用いて行った。反応液は、ゲノムDNAを0.5μl(0.5μg相当量)、酵素に添付の2倍濃度反応用緩衝液を25μl、DMSO溶液を2.5μl、2.5mM dNTP溶液を5μl、100pmol/μlの濃度に調整した上記プライマーを各0.25μlずつ、酵素を0.3μl、滅菌水を16.2μl加えて50μlとした。反応は、95℃、10分間の前処理の後、95℃で30秒間、59℃で30秒間、72℃で2分20秒間のインキュベーションを30サイクル行った。反応終了後、反応液の一部をアガロースゲル電気泳動に供した結果、約2.3kbpのDNA断片が特異的に増幅されている事が確認された。そこで、残りの反応液を前記核酸精製用混合溶液で抽出し、エタノール沈殿を行った。沈殿物を滅菌水に再溶解し、アガロースゲル電気泳動を行い、約2.3kbpのバンドを定法に従って切り出してDNA断片を回収した。
【0104】
前記DNA断片をプローブにし、ECLダイレクトDNA/RNAラベリング・検出システム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を使用してコロニーハイブリダイゼーションを行い、約5000個のコロニーをスクリーニングした。複数個の陽性クローンが得られ、このうちの1クローンよりプラスミドpUK2−E4を単離した。
【0105】
(実施例4)
<生合成遺伝子クラスターを含むプラスミドpUK2−3の構築>
上記で得られた推定生合成クラスターの上流域1〜21531を含むプラスミドpUK2−B44と下流域16211〜34641領域を含むpUK2−E4とを利用して生合成クラスター全領域を含むプラスミドを構築することとした。まず、両プラスミドを制限酵素
ClaIと
PspXIで消化し、アガロースゲル電気泳動を行い、それぞれ約28kbp、約19kbpのバンドを定法に従って切り出してDNA断片を回収し、DNA断片をDNA Ligation Kit<Mighty Mix>(タカラバイオ株式会社製)を用いて連結し、pUK2−16を作製した。
【0106】
次に、[グスト(Gust,B.)ら著、「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」、(米国)、2003年、第100巻、p.1541−1546]で説明されているリダイレクト法の技術を用いて、このプラスミドpUK2−16を放線菌の接合伝達可能なベクターとすることとした。まず、プラスミドpUK2−16を
E. coli BW25113/pIJ790株にエレクトロポレーション法により導入し、
E. coli BW25113/pIJ790/pUK2−16株を得た。本株をクロラムフェニコール、カナマイシン及びアンピシリンをそれぞれ25μg/ml、50μg/ml及び50μg/ml濃度で含む100mlのLB液体培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム)に植菌し、30℃で一晩培養し、得られた培養物をクロラムフェニコール、カナマイシン、アンピシリン及びL−アラビノースをそれぞれ25μg/ml、50μg/ml、50μg/ml、10mMの濃度で含んだ65ml容量の試験管に調製した10mlのSOB培地(2%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.05%塩化ナトリウム、0.0186%塩化カリウム)に100μlを植菌し、30℃で4時振とう培養した。培養液の全量を集菌し、氷中で冷却した10%のグリセリン溶液で2回洗浄し、100μlの10%のグリセリン溶液に再懸濁しエレクトロポレーション用セルとした。一方で、プラスミドpMJCOS1(John Innes Centre(Norwich))由来のアプラマイシン耐性遺伝子、
oriT、
attP,
IntφC31を含む5.2kbのSspI断片を精製した。このように調製した50μlのセルとDNA断片(約100ng)を予め氷冷した2mmギャップのキュベットに移し、エレクトロポレーション(Electro Cell Manipulator600:ビーエム機器株式会社製)を実施した。処理後、冷却したLB液体培地を1ml添加し、37℃で1時間静置培養した。これをアンピシリンとアプラマイシンとを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養し、生育した株をアンピシリンとアプラマイシンとを含むLB液体培地で培養し、プラスミドpUK2−3を単離した。つまり、このpUK2−3は、UK2生合成クラスターと推測される領域全長とベクター部分に
oriT、
attP,
IntφC31及びアプラマイシン耐性遺伝子を有した、放線菌に接合伝達可能なプラスミドである。
【0107】
(実施例5)
<生合成遺伝子欠損用ベクターの構築>
ストレプトバーティシリウム属3−7株のゲノムDNAから、ORF12とORF13の一部である約7.5kbpを欠損させた遺伝子破壊株を、以下に示す方法によって作製した。
【0108】
実施例1に示したゲノムDNAを鋳型とし、caiC−F:5’−GCGCTCGTACGCCTCGCTGAT−3’(配列番号:38)と41c29−R:5’−GTCCGTGGCGCCGCCGGATT−3’(配列番号:40)のオリゴDNAをプライマーとしてPCRを行った。PCRは、DNAポリメラーゼとして
LA Taq DNA polymerase(タカラバイオ株式会社製)を使用し、PERKIN ELMER GeneAmp PCR System 9700を用いて行った。反応液は、ゲノムDNAを0.5μl(0.5μg相当量)、酵素に添付の2倍濃度反応用緩衝液を25μl、DMSO溶液を2.5μl、2.5mM dNTP溶液を5μl、100pmol/μlの濃度に調整した上記プライマーを各0.25μlずつ、酵素を0.3μl、滅菌水を16.2μl加えて50μlとした。反応は、95℃、10分間の前処理後、95℃で30秒間、60℃で5秒間、72℃で7分間のインキュベーションを30サイクル行った。反応終了後、反応液の一部をアガロースゲル電気泳動に供した結果、約7.5kbpのDNA断片が特異的に増幅されている事が確認された。このDNA断片を、TOPO TAクローニングキット(インビトロジェン社製)により、添付のプロトコールに従ってpCR2.1−TOPOプラスミドベクターに挿入し、プラスミドTOPO−41c29を得た。
【0109】
続いてプラスミドTOPO−41c29の挿入断片の内部にアプラマイシン耐性遺伝子を挿入したプラスミドTOPO−Δ41c29−Amを以下のようにして作製した。
【0110】
プラスミドpIJ773[グスト(Gust,B.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」,(米国),2003年,第100巻,p.1541−1546]を
HindIIIと
EcoRIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動後、定法に従って切り出してDNA断片を回収し、目的とするアプラマイシン耐性遺伝子を含む約1.3kbのDNA断片を得た。これを鋳型にして、41c30−apraF:5’−GTCACCGTCCCCGCCTACGGCGACGGCGTCGTCCTGGTGATTCCGGGGATCCGTCGACC−3’(配列番号:41)と、41c30−apraR:5’−GGTCGCGGGCGAAGGCGTAGCCGGGCAGGTCGGGCAGGATGTAGGCTGGAGCTGCTTC−3’(配列番号:42)の、2種類の合成プライマーを用いて、PCRを行った。PCRは、DNAポリメラーゼとして
LA Taq DNA polymerase(タカラバイオ株式会社製)を使用し、PERKIN ELMER GeneAmp PCR System 9700を用いて行った。
【0111】
反応液は、ゲノムDNAを0.5μl(0.5μg相当量)、酵素に添付の2倍濃度反応用緩衝液を25μl、DMSO溶液を2.5μl、2.5mM dNTP溶液を5μl、100pmol/μlの濃度に調整した上記プライマーを各0.25μlずつ、酵素を0.3μl、滅菌水を16.2μl加えて50μlとした。反応は、94℃、2分間の前処理の後、94℃で45秒間、50℃で45秒間、72℃で1分30秒間のインキュベーションを10サイクル行った後、94℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で1分30秒間のインキュベーションを15サイクル行い、さらに72℃で5分間の反応を行った。反応終了後、反応液の一部をアガロースゲル電気泳動に供した結果、約1.4kbpのDNA断片が特異的に増幅されている事を確認した。
【0112】
次に、
E.coli BW25113/pIJ790[グスト(Gust,B.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」,(米国),2003年,第100巻,p.1541−1546]にTOPO−Δ41c29を導入し、
E.coli BW25113/pIJ790/TOPO−Δ41c29株を得た。本株をクロラムフェニコール、カナマイシン及びアンピシリンをそれぞれ25μg/ml、25μg/ml及び50μg/mlの濃度で含む100mlのLB液体培地に植菌し、30℃で一晩培養した。65ml容量の試験管に、10mlのSOB培地を仕込み、クロラムフェニコール、カナマイシン、アンピシリン、L−アラビノースを、それぞれ25μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、10mM 濃度で添加した。これに、一晩培養した
E.coli BW25113/pIJ790/TOPO−Δ41c29株の培養液100μlを移植し、30℃で4時間振とう培養した。培養液の全量を、4℃、3000rpm、5分間の遠心で集菌した後、氷中にて冷却した10%のグリセリン溶液10mlに懸濁した。この操作を繰返した後、冷却した10%のグリセリン溶液100μlに再懸濁させた。次に、エッペンドルフチューブに50μlの菌体懸濁液を採取し、上述のpIJ773由来のアプラマイシン耐性遺伝子を含む約1.4kbのDNA断片溶液を5μl加えた。これを、予め氷中にて冷却した2mmギャップのエレクトロポレーションキュベット(ビーエム機器株式会社製:BM6200)に移した。エレクトロポレーションは、Electro Cell Manipulator600(ビーエム機器株式会社製)にて、12.5kV、25μF、128Ωの条件にて行った。処理後の菌体には、予め氷中にて冷却したLB液体培地を1ml添加し、37℃で1時間静置培養した。これを、アンピシリンとアプラマイシンとをそれぞれ50μg/ml濃度で添加したLB寒天培地に塗布し、37℃で終夜培養し、アンピシリン及びアプラマイシンの両者に耐性を示す株を得た。この株を、アンピシリンとアプラマイシンとをそれぞれ50μg/ml濃度で添加したLB液体培地で培養し、プラスミドTOPO−Δ41c29−Amを単離した。
【0113】
(実施例6)
<生合成遺伝子欠損株の造出>
E.coli ET12567/pUZ8002株[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwich),2000年]に、定法に従いプラスミドTOPO−Δ41c29を導入し、
E. coli ET12567/pUZ8002/TOPO−Δ41c29を得た。
【0114】
ストレプトバーティシリウムと
E. coli ET12567/pUZ8002/TOPO−Δ41c29のコンジュゲーションは以下のようにして実施した。まず、ストレプトバーティシリウム株を65ml容量の試験管に、10ml調製した液体培地(S#1)[ウエキ(Ueki,M)ら著、「ザ・ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(The Journal of Antibiotics)」,(日本)、1996年、第49巻、p.639−643]に植菌し、30℃にて24時間培養した後、MS寒天培地(2%大豆粉、2%マンニトール、2%寒天)に塗布し、30℃にて2日間培養した。培養後、20%グリセロール3mlで菌糸をかきとり、回収し、宿主の菌糸液を調製した。
【0115】
3000rpm、5分間遠心して集菌後、3mlの20%グリセリン溶液に菌体を懸濁した。一方、
E.coli ET12567/pUZ8002/TOPO−Δ41c29−Amを、アンピシリン及びアプラマイシンをそれぞれ50μg/mlの濃度で添加したLB液体培地で、37℃、18時間培養した後、培養液1mlを100mlのLB液体培地(アンピシリン及びアプラマイシンをそれぞれ50μg/ml含む)に移植し、37℃、4時間培養した。培養液50mlを3000rpm、5分間遠心して集菌し、菌体を20ml のLB液体培地に懸濁した。この操作を2回繰り返した後、菌体を2mlの LB液体培地に懸濁した。
【0116】
ストレプトバーティシリウムの菌体懸濁液100μlと
E.coli ET12567/pUZ8002/cosmid203−7の菌体懸濁液100μlを、1.5ml容のチューブの中で合併し、遠心で集菌した。これを、100μlの20%グリセリン溶液に懸濁した後、20ml容量の10mM MgCl
2を含むMS寒天培地に塗布した。30℃で18時間培養後、アプラマイシン400μgとナリジキ酸1500μgとを含む滅菌水1mlを重層した。30℃、5日間培養した後、寒天培地上で生育したストレプトバーティシリウムのコロニーを釣菌し、アプラマイシン250μg/ml、カナマイシン250μg/mlをぞれぞれ添加した1/2MS寒天培地(寒天:2%、マンニトール:1%、ダイズ粉末:1%、10mM MgCl
2)2日間、30℃で培養後した。いずれのプレートにおいても生育したコロニーをS#1培地に植菌し、30℃、24時間培養し、改変YEME培地(65ml容量の試験管に10ml)に植菌し30℃、1日間振とう培養し、その1mlをさらに新たな改変YEME培地(250ml容量の三角フラスコに50ml)に植菌して継代培養した。この操作を5回繰り返した後、適当な生菌数となるように希釈した培養液を、アプラマイシン250μg/mlを含む1/2MS寒天培地に塗布し、30℃4日培養した。生育したコロニーをアプラマイシン250μg/ml、カナマイシン250μg/mlをそれぞれ添加した1/2MS寒天培地にレプリカし、カナマイシン含有培地では生育せず、アプラマイシン含有培地で生育した、カナマイシン感受性株を2株(D1株、D2株)選抜した。
【0117】
得られた2株のゲノムDNAを調製し、プライマー41c30F4:5’−CGTGACCGAGGTGGCGCG−3’(配列番号:43)と41c30RR2:5’−GTCGTCGGATGCGCCGTGCG−3’(配列番号:44)の組合わせでPCR反応を行い、約0.5kbpの増幅DNA断片が得られず、2株がデザイン通り破壊株であることを確認した。
【0118】
(実施例7)
<生合成遺伝子欠損株の培養、並びに培養液中のUK−2Aの定量>
破壊株D1株、D2株を250ml容の三角フラスコに50ml調製したS#1培地に植菌し、30℃、24時間振とう培養後、培養液1mlを生産培地[ウエキ(Ueki,M)ら著、「ザ・ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(The Journal of Antibiotics)」,(日本)、1996年、第49巻、p.639−643]に植菌し、30℃、4日間振とう培養した。得られた培養液1mlにアセトン4mlを添加しUK−2Aを抽出、濾過し抽出液を得た。このうち5μlをHPLC分析に供した。HPLC分析は、HPLCシステムLC−2010C(島津製作所製)を用いて分析した。分析条件は、カラム:Inertsil ODS−3 4.6X250mm、移動相:アセトニトリル:水:リン酸=60:40:0.1、流速:1.1ml/min、カラム温度:40℃、UV波長:340nmとした。得られたパターンをUK−2A標準品と比較し、UK−2Aに由来するピークを特定し、その面積からUK−2Aの定量を行った。
【0119】
同時に形質転換体の親株であるストレプトバーティシリウム属3−7株についても、同様に培養及び培養液中のUK−2Aの定量を行った。その結果、D1株、D2株のUK−2A生産性は、0μg/mlであった。
【0120】
(実施例8)
<生合成遺伝子クラスターが導入された形質転換体の造出>
構築したpUK2−3のストレプトバーティシリウム属3−7株への導入を、放線菌では一般的に使用される手法[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwich),2000年、p.311−338]に従って、行った。まず、定法に従いプラスミドpUK2−3をエレクトロポレーションにより
E. coli ET12567/pUZ8002株に導入し
E.coli ET12567/pUZ8002/pUK2−3を得た。本株をクロラムフェニコール、カナマイシン及びアプラマイシンをそれぞれ25μg/ml、50μg/ml、50μg/mlの濃度で添加したLB液体培地で、37℃、18時間培養した後、培養液1mlを100mlのLB液体培地(クロラムフェニコール、カナマイシン及びアプラマイシンをそれぞれ25μg/ml、25μg/ml、50μg/ml含む)に移植し、37℃、4時間培養した。培養液50mlを3000rpm、5分間遠心して集菌し、菌体を50mlのLB液体培地に懸濁した。この操作を2回繰り返した後、菌体を100μLのLB液体培地に懸濁した。
【0121】
一方、ストレプトバーティシリウム属3−7株をMS寒天培地に塗布し、30℃にて2日間培養した。培養後、20%グリセロール1mlで菌糸をかきとり、宿主の菌糸液とした。
【0122】
上記の通りに調製した宿主の菌糸液500μlとプラスミドpUK2−3を保持する大腸菌液500μlを混合して集菌した後、終濃度10mmol/LとなるようにMgCl
2を10mM添加した希釈したMS寒天培地に塗布した。30℃、20時間培養後、アプラマイシン6mg及びナリジキシン酸0.5mgを含む滅菌水0.5mlを重層し、更に、30℃、5日間培養し、アプラマイシン耐性株として形質転換体を得た。
【0123】
(実施例9)
<遺伝子導入された形質転換体の培養、並びに培養液中のUK−2Aの定量>
遺伝子導入された形質転換体の培養は、実施例7に記載の方法で行った。その結果、表3に示したとおり、遺伝子導入された形質転換体のUK−2A生産性は、親株の58〜77倍に向上していた。
【0124】
【表3】
【0125】
(実施例10)
<遺伝子導入された形質転換体の培養、並びに培養液中のUK−2A、UK−2B、UK−2CとUK−2Dの合算量の定量>
遺伝子導入された形質転換体の培養は、実施例7に記載の方法で行った。得られた培養液1mlにアセトン4mlを添加しUK−2A、UK−2B、UK−2C、UK−2Dを抽出し、濾過して抽出液を得た。このうち5μlをHPLC分析に供した。HPLC分析は、HPLCソリューションシステム(島津製作所製)を用いて分析した。分析条件は、カラム:Inertsil ODS−3 4.6X150mm、移動相:リン酸二水素ナトリウム二水和物7.8gを水約800mLに溶かし、リン酸を用いてpH4.0に調整し、水を加えて1000mlとすることによって調製したリン酸水溶液350mLに、液体クロマトグラフ用アセトニトリル650mLを加えた溶液、流速:1.0ml/min、カラム温度:40℃、UV波長:230nmとした。得られたパターンをUK−2A、UK−2B、UK−2C及びUK−2Dの標準品と比較し、UK−2A、UK−2B、UK−2C及びUK−2Dに由来する各々のピークを特定し、その面積からUK−2Aの量と、UK−2Bの量と、UK−2C及びUK−2Dの合算量とについて、定量を行った。
【0126】
その結果、表4に示したとおり、遺伝子導入された形質転換体において、UK−2Aと、UK−2Bと、UK−2C及びUK−2Dとの生産性は、それぞれ親株の37〜57倍、10〜11倍、12〜13倍に向上していた。
【0127】
【表4】
【0128】
(実施例11)
<形質転換体におけるUK−2生合成遺伝子クラスターのコピー数の定量>
実施例9でUK−2生産性の向上が確認された形質転換体2株と、宿主細胞であるストレプトバーティシリウム属3−7株とのゲノムDNAを実施例1に示した方法で調製した。これを鋳型にしてStepOnePlus Real−Time PCR System(Applied Biosystems社製)を使用し、添付のプロトコールに従いPCR反応を行い、得られた増幅断片を定量した。得られた結果を表5に示す。
【0129】
なお、このPCR反応において、導入したUK−2生合成遺伝子クラスター内の領域を増幅するため、下記プライマーセットをデザインし、合成して用いた。
UK−2 F2(RT):5’−GCACCTTCATGTCCGGGTTG−3’(配列番号:45)
UK−2 R2(RT):5’−ATCGCCGCGTACACCATGAC−3’(配列番号:46)
また、内在性コントロールとして、UK−2生合成遺伝子クラスター以外の領域を増幅するため、下記プライマーセットをデザインし、合成して用いた。
cont F1(RT):5’−CGAAGGTCCGGTTGATGGTG−3’(配列番号:47)
Cont R1(RT):5’−ATCGCTGCGACACCCTGGAG−3’(配列番号:48)
【0130】
【表5】
【0131】
表5に示す通り、形質転換体のUK−2生合成遺伝子クラスターのコピー数は親株3−7株の2倍になっていることが明らかとなった。