(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本発明の一実施形態として電子内視鏡システムを例に取り説明する。本実施形態に係る電子内視鏡システムは、波長域の異なる光で撮像した複数の画像に基づいて被写体の生体情報(例えば酸素飽和度)を定量的に分析して画像化することが可能であり、また、特定の生体構造(例えば血管)を強調する分光画像を生成することが可能なシステムである。
【0016】
[ヘモグロビンの分光特性及び酸素飽和度の計算原理]
本実施形態に係る電子内視鏡システムの構成を詳細に説明する前に、ヘモグロビンの分光特性と、本実施形態における酸素飽和度の計算原理について説明する。
【0017】
図1に、550nm付近のヘモグロビンの吸収スペクトルを示す。ヘモグロビンは、550nm付近にポルフィリンに由来するQ帯と呼ばれる強い吸収帯を有している。ヘモグロビンの吸収スペクトルは、酸素飽和度(全ヘモグロビンのうち酸素化ヘモグロビンが占める割合)に応じて変化する。
図1における実線の波形は、酸素飽和度が100%の場合の(すなわち、酸素化ヘモグロビンHbOの)吸収スペクトルを示し、長破線の波形は、酸素飽和度が0%の場合の(すなわち、還元ヘモグロビンHbの)吸収スペクトルを示す。また、短破線は、その中間の酸素飽和度(10、20、30、・・・90%)におけるヘモグロビン(酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの混合物)の吸収スペクトルを示す。
【0018】
図1に示されるように、Q帯において、酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは互いに異なるピーク波長を有している。具体的には、酸素化ヘモグロビンは、波長542nm付近に吸収ピークP1を有しており、波長578nm付近に吸収ピークP3を有している。一方、還元ヘモグロビンは、558nm付近に吸収ピークP2を有している。
図1は、各成分(酸素化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン)の濃度の和が一定となる2成分系の吸収スペクトルであるため、各成分の濃度(すなわち酸素飽和度)によらず吸収が一定となる等吸収点E1、E2、E3、E4が現れる。以下の説明では、等吸収点E1とE2とで挟まれた波長領域を「波長域R1」と記し、等吸収点E2とE3とで挟まれた波長領域を「波長域R2」と記し、等吸収点E3とE4とで挟まれた波長領域を「波長域R3」と記す。また、等吸収点E1とE4とで挟まれた波長領域(すなわち波長域R1、R2及びR3を合わせたもの)を「波長域R0」と記す。
【0019】
図1に示されるように、隣接する等吸収点間では、酸素飽和度に対して吸収が単調に増加又は減少する。また、隣接する等吸収点間では、ヘモグロビンの吸収は、酸素飽和度に対してほぼ線形的に変化する。
【0020】
具体的には、波長域R1、R3におけるヘモグロビンの吸収A
R1、A
R3は酸素化ヘモグロビンの濃度(酸素飽和度)に対して線形的に単調増加し、波長域R2におけるヘモグロビンの吸収A
R2は還元ヘモグロビンの濃度(1−酸素飽和度)に対して線形的に単調増加する。従って、次式(1)により定義される指標Xは、酸素化ヘモグロビンの濃度(酸素飽和度)に対して線形的に単調増加する。
(式1)
X=(A
R1+A
R3)-A
R2
【0021】
従って、予め実験的に酸素飽和度と指標Xとの定量的な関係を取得すれば、指標Xの値から酸素飽和度を計算することができる。
【0022】
[電子内視鏡システムの構成]
図2は、本実施形態に係る電子内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、電子内視鏡システム1は、電子スコープ100、プロセッサ200及びモニタ300を備えている。
【0023】
プロセッサ200は、システムコントローラ202及びタイミングコントローラ204を備えている。システムコントローラ202は、メモリ212に記憶された各種プログラムを実行し、電子内視鏡システム1全体を統括的に制御する。また、システムコントローラ202は、操作パネル214に接続されている。システムコントローラ202は、操作パネル214より入力される術者からの指示に応じて、電子内視鏡システム1の各動作及び各動作のためのパラメータを変更する。タイミングコントローラ204は、各部の動作のタイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各回路に出力する。
【0024】
ランプ208は、ランプ電源イグナイタ206による始動後、照射光Lを射出する。ランプ208は、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプやLED(Light Emitting Diode)である。照射光Lは、主に可視光領域から不可視である赤外光領域に広がるスペクトルを持つ光(又は少なくとも可視光領域を含む白色光)である。
【0025】
ランプ208より射出された照射光Lは、回転フィルタ部260に入射される。
図3は、回転フィルタ部260を集光レンズ210側から見た正面図である。
図4は、
図3中矢印A方向から回転フィルタ部260付近を視たときのプロセッサ200の内部構成を示す図である。
図2〜
図4に示されるように、回転フィルタ部260は、回転式ターレット261、DCモータ262、ドライバ263、フォトインタラプタ264及びスライドアクチュエータ部265を備えている。
【0026】
図3に示されるように、回転式ターレット261の外周側、内周側のそれぞれの周領域に、異なる種類・数の光学フィルタが配置されている。具体的には、回転式ターレット261の外周側の周領域には、第一の酸素飽和度観察用フィルタFs1、通常観察用フィルタFn、第二の酸素飽和度観察用フィルタFs2が円周方向に順に並べて配置されており、回転式ターレット261の内周側の周領域には、通常観察用フィルタFn、狭帯域観察用フィルタFs3が円周方向に順に並べて配置されている。各光学フィルタは、扇形状を有しており、外周側では120°の角度ピッチで配置されており、内周側では180°の角度ピッチで配置されている。また、各光学フィルタは、何れも誘電体多層膜フィルタであるが、他の方式の光学フィルタ(例えば、誘電体多層膜を反射膜として用いたエタロンフィルタ等)であってもよい。
【0027】
第一の酸素飽和度観察用フィルタFs1は、550nm帯の光を選択的に透過させる光バンドパスフィルタである。
図1に示されるように、第一の酸素飽和度観察用フィルタFs1は、等吸収点E1からE4までの波長域(すなわち、波長域R0)の光を低損失で透過させ、それ以外の波長領域の光を遮蔽する分光特性を持つ。第二の酸素飽和度観察用フィルタFs2は、等吸収点E2からE3までの波長域(すなわち、波長域R2)の光を低損失で透過させ、それ以外の波長領域の光を遮蔽する分光特性を持つ。
【0028】
通常観察用フィルタFnは、紫外線カットフィルタである。通常観察用フィルタFnは、単なる開口(光学フィルタの無いもの)や絞り機能を兼ねたスリット(光学フィルタの無いもの)に置き換えてもよい。
【0029】
図6に、狭帯域観察用フィルタFs3の分光特性を2つ例示する。
図6(a)、
図6(b)の各図中、縦軸は、正規化された透過率を示し、横軸は波長(単位:nm)を示す。
図6(a)、
図6(b)の各図に示されるように、狭帯域観察用フィルタFs3は、ヘモグロビンに対する吸収特性の高い波長域(420nm付近や550nm付近の波長域)にピークを持つ半値幅の狭い透過特性を持つ。420nm付近の波長域の光は表層付近の血管構造を観察するのに適しており、550nm付近の波長域の光は深層の血管構造を観察するのに適している。
【0030】
図5は、スライドアクチュエータ部265の概略構成を示す図である。
図5に示されるように、スライドアクチュエータ部265は周知の構成を有したものであり、回転式ターレット261を照射光Lの光路(
図5では紙面に対して垂直な方向)と直交する方向(以下、「光路直交方向」と記す。)にスライドさせることができる。
【0031】
スライドアクチュエータ部265は、光路直交方向に延びるガイドレール265aを有している。ガイドレール265aには、支持フレーム265bがガイドレール265aの軸線方向(光路直交方向)にスライド可能に保持されている。支持フレーム265bにはDCモータ262が保持されている。DCモータ262は、モータ軸262aが回転式ターレット261の中心を貫通する軸受穴に圧入されている。
【0032】
スライドアクチュエータ部265は、術者による操作パネル214の操作に従って駆動するステッピングモータ265cを有している。ステッピングモータ265のモータ軸には、両端が支持ブラケット265dにより回転可能に支持されたリードスクリュ265eが連結している。リードスクリュ265eには、リードナット265fがリードスクリュ265eの回転に伴ってリードスクリュ265eの軸線方向(ガイドレール265aの軸線方向と平行な方向であって、光路直交方向)に進退可能に保持されている。リードナット265fと支持フレーム265bは、アーム265gを介して連結されている。
【0033】
ステッピングモータ265cが術者の操作に従って駆動すると、リードスクリュ265eが回転し、リードナット265fがリードスクリュ265eの回転に応じて光路直交方向(リードスクリュ265eの軸線方向)に進退する。アーム265gを介してリードナット265fと連結された支持フレーム265bは、リードナット265fと共に光路直交方向(ガイドレール265aの軸線方向)にスライドする。これにより、支持フレーム265bに保持されたDCモータ262及びDCモータ262のモータ軸262aに軸支された回転式ターレット261が光路直交方向に移動する。
【0034】
スライドアクチュエータ部265が回転式ターレット261を光路直交方向に移動させると、ランプ208(照射光Lの光路)に対する回転式ターレット261の位置がシフトする。回転式ターレット261の外周側の周領域が照射光Lの光路に配置されている場合は、回転式ターレット261が光路直交方向にシフトすることにより、回転式ターレット261の内周側の周領域が照射光Lの光路に配置され、回転式ターレット261の内周側の周領域が照射光Lの光路に配置されている場合は、回転式ターレット261が光路直交方向にシフトすることにより、回転式ターレット261の外周側の周領域が照射光Lの光路に配置される。
【0035】
ドライバ263は、システムコントローラ202による制御下でDCモータ262を駆動する。DCモータ262は、ドライバ263より駆動電流が供給されると、回転式ターレット261をモータ軸262a中心に一定速度で回転させる。
【0036】
回転式ターレット261の外周側の周領域が照射光Lの光路に配置されている場合を考える。以下、回転式ターレット261の外周側の周領域が照射光Lの光路に配置されている状態を「酸素飽和度分布画像撮像状態」と記す。酸素飽和度分布画像撮像状態では、ドライバ263は、回転式ターレット261の外周側の周領域に配置される光学フィルタが3つであることから、回転式ターレット261を3フレーム期間で一回転する速度で回転させる。これにより、第一の酸素飽和度観察用フィルタFs1、通常観察用フィルタFn、第二の酸素飽和度観察用フィルタFs2の各光学フィルタが撮像周期(フレーム周期)と同期したタイミングで照射光Lの光路に順次挿入される。そのため、ランプ208より入射された照射光Lから、スペクトルの異なる照射光がフレーム周期と同期したタイミングで順次取り出される。
【0037】
ここで、説明の便宜上、第一の酸素飽和度観察用フィルタFs1透過後の照射光Lを「第一の酸素飽和度観察光Ls1」と記し、第二の酸素飽和度観察用フィルタFs2透過後の照射光Lを「第二の酸素飽和度観察光Ls2」と記し、狭帯域観察用フィルタFs3透過度の照射光Lを「狭帯域観察光Ls3」と記し、通常観察用フィルタFn透過後の照射光Lを「通常光Ln」と記す。
【0038】
回転式ターレット261は、回転動作中、循環的に、第一の酸素飽和度観察用フィルタFs1より第一の酸素飽和度観察光Ls1を取り出し、通常観察用フィルタFnより通常光Lnを取り出し、第二の酸素飽和度観察用フィルタFs2より第二の酸素飽和度観察光Ls2を取り出す。回転式ターレット261の回転位置や回転の位相は、回転式ターレット261の外周付近に形成された開口(不図示)をフォトインタラプタ264によって検出することにより制御される。なお、以降の説明において「フレーム」は「フィールド」に置き替えてもよい。本実施形態において、フレーム周期、フィールド周期はそれぞれ、1/30秒、1/60秒である。
【0039】
回転式ターレット261の内周側の周領域が照射光Lの光路に配置されている場合を考える。以下、回転式ターレット261の内周側の周領域が照射光Lの光路に配置されている状態を「狭帯域観察画像撮像状態」と記す。狭帯域観察画像撮像状態では、ドライバ263は、回転式ターレット261の内周側の周領域に配置される光学フィルタが2つであることから、回転式ターレット261を2フレーム期間で一回転する速度で回転させる。これにより、通常観察用フィルタFnと狭帯域観察用フィルタFs3とが撮像周期(フレーム周期)と同期したタイミングで照射光Lの光路に交互に挿入される。そのため、ランプ208より入射された照射光Lから、通常光Lnと狭帯域観察光Ls3とがフレーム周期と同期したタイミングで交互に取り出される。
【0040】
回転フィルタ部260より取り出された照射光(第一の酸素飽和度観察光Ls1、第二の酸素飽和度観察光Ls2、狭帯域観察光Ls3、通常光Ln)は、集光レンズ210によって集光されながら羽根絞り(不図示)を介して適正な光量に制限されて、LCB(Light Carrying Bundle)102の入射端面に集光されてLCB102内に入射される。
【0041】
LCB102内に入射された照射光(第一の酸素飽和度観察光Ls1、第二の酸素飽和度観察光Ls2、狭帯域観察光Ls3、通常光Ln)は、LCB102内を伝播して電子スコープ100の先端に配置されたLCB102の射出端面より射出され、配光レンズ104を介して被写体に照射される。具体的には、酸素飽和度分布画像撮像状態では、被写体は、第一の酸素飽和度観察光Ls1、通常光Ln、第二の酸素飽和度観察光Ls2により順次照射される。また、狭帯域観察画像撮像状態では、被写体は、通常光Lnと狭帯域観察光Ls3とにより交互に照射される。照射光により照射された被写体からの戻り光は、対物レンズ106を介して固体撮像素子108の受光面上で光学像を結ぶ。
【0042】
固体撮像素子108は、ベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。固体撮像素子108は、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の画像信号を生成して出力する。なお、固体撮像素子108は、CCDイメージセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやその他の種類の撮像装置に置き換えられてもよい。固体撮像素子108はまた、補色系フィルタを搭載したものであってもよい。
【0043】
回転フィルタ部260による各照射光の切り換えのタイミングは、固体撮像素子108における撮像期間(フレーム期間)の切り換えのタイミングと同期している。従って、酸素飽和度分布画像撮像状態では、固体撮像素子108は、1フレーム期間中、第一の酸素飽和度観察光Ls1を受光して第一の酸素飽和度観察用画像信号Ss1を生成して出力し、続く1フレーム期間中、通常光Lnを受光して通常観察用画像信号Snを生成して出力し、続く1フレーム期間中、第二の酸素飽和度観察光Ls2を受光して第二の酸素飽和度観察用画像信号Ss2を生成して出力する。すなわち、固体撮像素子108により、第一の酸素飽和度観察用画像信号Ss1、通常観察用画像信号Sn、第二の酸素飽和度観察用画像信号Ss2が順次生成されて出力される。また、狭帯域観察画像撮像状態では、固体撮像素子108は、1フレーム期間中、通常光Lnを受光して通常観察用画像信号Snを生成して出力し、続く1フレーム期間中、狭帯域観察光Ls3を受光して狭帯域観察用画像信号Ss3を生成して出力する。すなわち、固体撮像素子108により、通常観察用画像信号Snと狭帯域観察用画像信号Ss3とが1フレーム周期で交互に生成されて出力される。
【0044】
電子スコープ100の接続部内には、ドライバ信号処理回路110が備えられている。酸素飽和度分布画像撮像状態では、固体撮像素子108からドライバ信号処理回路110に画像信号Ss1、Sn、Ss2がフレーム周期で順次入力され、狭帯域観察画像撮像状態では、固体撮像素子108からドライバ信号処理回路110に画像信号SnとSs3とがフレーム周期で交互に入力される。ドライバ信号処理回路110は、固体撮像素子108より入力される画像信号に対して所定の処理を施して、プロセッサ200の前段信号処理回路220に出力する。
【0045】
ドライバ信号処理回路110はまた、メモリ112にアクセスして電子スコープ100の固有情報を読み出す。メモリ112に記録される電子スコープ100の固有情報には、例えば、固体撮像素子108の画素数や感度、動作可能なフレームレート、型番等が含まれる。ドライバ信号処理回路110は、メモリ112より読み出された固有情報をシステムコントローラ202に出力する。
【0046】
システムコントローラ202は、電子スコープ100の固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ202は、生成された制御信号を用いて、プロセッサ200に接続されている電子スコープに適した処理がなされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。
【0047】
タイミングコントローラ204は、システムコントローラ202によるタイミング制御に従って、ドライバ信号処理回路110にクロックパルスを供給する。ドライバ信号処理回路110は、タイミングコントローラ204から供給されるクロックパルスに従って、固体撮像素子108をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。
【0048】
酸素飽和度分布画像撮像状態では、ドライバ信号処理回路110から前段信号処理回路220に画像信号Ss1、Sn、Ss2がフレーム周期で順次入力され、狭帯域観察画像撮像状態では、ドライバ信号処理回路110から前段信号処理回路220に画像信号SnとSs3とがフレーム周期で交互に入力される。前段信号処理回路220は、ドライバ信号処理回路110より1フレーム周期で入力される画像信号に対して所定の信号処理を施してフレームメモリ230に出力する。
【0049】
フレームメモリ230は、3つのフレームメモリ(第一のフレームメモリ230mA、第二のフレームメモリ230mB、第三のフレームメモリ230mC)を有している。各フレームメモリには、前段信号処理回路220より入力される画像信号が書き込まれる(上書きされる)。具体的には、酸素飽和度分布画像撮像状態では、第一のフレームメモリ230mA、第二のフレームメモリ230mB、第三のフレームメモリ230mCのそれぞれに、第一の酸素飽和度観察用画像信号Ss1、第二の酸素飽和度観察用画像信号Ss2、通常観察用画像信号Snが書き込まれる。また、狭帯域観察画像撮像状態では、第一のフレームメモリ230mA、第三のフレームメモリ230mCのそれぞれに、狭帯域観察用画像信号Ss3、通常観察用画像信号Snが書き込まれる。フレームメモリ230は、各フレームメモリの画像信号をタイミングコントローラ204からのクロックパルスに同期させて後段信号処理回路240に順次出力する。
【0050】
酸素飽和度分布画像撮像状態では、後段信号処理回路240は、上記式(1)を用いて、フレームメモリ230より入力される第一の酸素飽和度観察用画像信号Ss1及び第二の酸素飽和度観察用画像信号Ss2から指標Xを計算する。
【0051】
後段信号処理回路240が備える不揮発性メモリ(不図示)には、予め実験的に取得されたヘモグロビンの酸素飽和度と指標Xの値との定量的関係を示す数値表が記憶されている。後段信号処理回路240は、この数値表を参照して、上記式(1)を用いて算出された指標Xの値に対応する酸素飽和度SatO
2(x,y)を取得する。後段信号処理回路240は、取得された酸素飽和度SatO
2(x,y)に所定の定数を乗じた値を各画素(x,y)の画素値とする画像データ(酸素飽和度分布画像データ)を生成する。
【0052】
また、後段信号処理回路240は、フレームメモリ230より入力される通常観察用画像信号Snを用いて通常観察用画像データを生成する。
【0053】
後段信号処理回路240は、酸素飽和度分布画像データ及び通常観察用画像データを所定のビデオフォーマット信号に変換する。変換されたビデオフォーマット信号は、モニタ300に出力される。これにより、酸素飽和度分布画像や通常観察画像がモニタ300の表示画面に表示される。
【0054】
また、狭帯域観察画像撮像状態では、後段信号処理回路240は、フレームメモリ230より入力される狭帯域観察用画像信号Ss3を用いて狭帯域観察用画像データを生成すると共に、フレームメモリ230より入力される通常観察用画像信号Snを用いて通常観察用画像データを生成する。
【0055】
術者は、操作パネル214を操作することにより、観察画像の表示形態を設定することができる。観察画像の表示形態としては、例えば、同一サイズの酸素飽和度分布画像と通常観察画像(又は狭帯域観察画像と通常観察画像)とを並べて一画面に表示させる形態、一方の画像を親画面表示し、他方の画像を子画面表示する形態、術者の操作に従って選択された一方の画像を全画面表示させる形態、通常観察画像に酸素飽和度分布画像(又は狭帯域観察画像)をオーバレイ表示させる形態がある。また、表示画面には、操作パネル214によって入力された内視鏡観察に関する情報(例えば、術者名、患者名、観察日時、観察に使用した照射光の種別等)をスーパーインポーズ表示させることができる。
【0056】
図7は、酸素飽和度分布画像撮像状態時における各処理のタイミング及び期間を示す図である。
図7(a)は、照射光(第一の酸素飽和度観察光Ls1、通常光Ln、第二の酸素飽和度観察光Ls2)により被写体(体腔内)が照射される期間を示す。
図7(a)に示されるように、第一の酸素飽和度観察光Ls1、通常光Ln、第二の酸素飽和度観察光Ls2の各照射光は、3フレーム毎に被写体に照射される。
図7(b)は、第一のフレームメモリ230mAへの第一の酸素飽和度観察用画像信号Ss1の書き込みタイミング及び保持期間を示す。
図7(c)は、第二のフレームメモリ230mBへの第二の酸素飽和度観察用画像信号Ss2の書き込みタイミング及び保持期間を示す。
図7(d)は、第三のフレームメモリ230mCへの通常観察用画像信号Snの書き込みタイミング及び保持期間を示す。
図7(e)、
図7(f)、
図7(g)はそれぞれ、第一の酸素飽和度観察用画像信号Ss1、第二の酸素飽和度観察用画像信号Ss2、通常観察用画像信号Snがフレームメモリ230から読み出される期間を示す。
【0057】
なお、
図7の例では、フレームメモリ230への画像信号の書き込み開始タイミング(
図7(b)〜
図7(d))が照射光の照射開始タイミング(
図7(a))に対して1フレーム期間遅延して示され、画像信号の読み出し開始タイミング(
図7(e)〜
図7(g))がフレームメモリへの画像信号の書き込み開始タイミングと同じタイミングで示されている。但し、これらのタイミングは、区切り良く便宜的に示されたものである。照射、書き込み、読み出しの各処理は、実際には、
図7(a)〜
図7(g)に示されるタイミングで開始されるのではなく、極僅かな遅延を持って順次開始される。また、
図7の例では、照射、保持、読み出しの各処理は、実行期間長が一律にフレーム単位長となっているが、これらの実行期間長も区切り良く便宜的に示されたものである。照射、保持、読み出しの各処理の実行期間長は、実際には異なる長さとなっている。
【0058】
また、
図7(a)において、照射光による照射期間は、説明の便宜上「照射光の符号(序数)」の表記で示される。例えば、
図7(a)中、「Ls1(1)」は、第一の酸素飽和度観察光Ls1による初回の照射期間を示し、「Ls1(2)」は、第一の酸素飽和度観察光Ls1による2回目の照射期間を示す。
【0059】
また、
図7(b)〜
図7(d)の各図において、フレームメモリ230への画像信号の書き込みタイミング及び保持期間は、説明の便宜上「画像信号の符号(序数)」の表記で示される。例えば、
図7(b)中、「Ss1(1)」は、第一の酸素飽和度観察光Ls1(初回)により照射された被写体の第一の酸素飽和度観察用画像信号Ss1を第一のフレームメモリ230mAへ書き込むタイミング及び書き込まれた該画像信号の保持期間を示し、「Ss1(2)」は、第一の酸素飽和度観察光Ls1(2回目)により照射された被写体の第一の酸素飽和度観察用画像信号Ss1を第一のフレームメモリ230mAへ書き込むタイミング及び書き込まれた該画像信号の保持期間を示す。
【0060】
また、
図7(e)〜
図7(g)の各図において、画像信号の読み出し期間は、説明の便宜上「画像信号の符号(序数)」の表記で示される。例えば、
図7(e)中、「Ss1(1)」は、第一の酸素飽和度観察用画像信号Ss1(初回)が第一のフレームメモリ230mAから読み出される期間を示し、「Ss1(2)」は、第一の酸素飽和度観察用画像信号Ss1(2回目)が第一のフレームメモリ230mAから読み出される期間を示す。
【0061】
図8は、狭帯域観察画像撮像状態時における各処理のタイミング及び期間を示す、
図7と同様の図である。
図8(a)は、照射光(通常光Ln、狭帯域観察光Ls3)により被写体(体腔内)が照射される期間を示す。
図8(a)に示されるように、通常光Ln、狭帯域観察光Ls3の各照射光は、2フレーム毎に被写体に照射される。
図8(b)は、第一のフレームメモリ230mAへの狭帯域観察用画像信号Ss3の書き込みタイミング及び保持期間を示す。
図8(d)は、第三のフレームメモリ230mCへの通常観察用画像信号Snの書き込みタイミング及び保持期間を示す。
図8(e)、
図8(g)はそれぞれ、狭帯域観察用画像信号Ss3、通常観察用画像信号Snがフレームメモリ230から読み出される期間を示す。なお、狭帯域観察画像撮像状態時には、
図8(c)及び
図8(f)に示されるように、第二のフレームメモリ230mBへの画像信号の書き込み及び読み出しはない。
【0062】
本実施形態によれば、単一の回転式ターレット261に全ての光学フィルタが配置されているため、ターレットの数が一つに抑えられると共にターレット用の退避機構が不要となる。そのため、光源装置(プロセッサ200)の製造コストが抑えられると共にプロセッサ200の大型化が抑えられる。また、光学フィルタが回転式ターレット261の外周側と内周側の各周領域に分けて配置されているため、照射光Lの光路への各光学フィルタの挿入の周期が酸素飽和度分布画像撮像状態、狭帯域観察画像撮像状態の各状態で長くならず、各種画像のリフレッシュレートの低下が避けられる。
【0063】
また、
図7及び
図8に示されるように、回転式ターレット261の回転周期が酸素飽和度分布画像撮像状態と狭帯域観察画像撮像状態とで切替制御される。これにより、酸素飽和度分布画像撮像状態において、第一の酸素飽和度観察光Ls1、通常光Ln、第二の酸素飽和度観察光Ls2が撮像周期(フレーム周期)と同期したタイミングで被写体に順次照射されつつ、狭帯域観察画像撮像状態においても、通常光Ln、狭帯域観察光Ls3が撮像周期(フレーム周期)と同期したタイミングで被写体に順次照射される。そのため、酸素飽和度分布画像撮像状態において適正な酸素飽和度分布画像や通常観察画像が得られると共に、狭帯域観察画像撮像状態においても適正な通常観察画像や狭帯域観察画像が得られる。
【0064】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば、明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0065】
上記の実施形態では、光源装置をプロセッサ200に内蔵しているが、別の実施形態では、プロセッサ200と光源装置とを分離した構成としてもよい。この場合、プロセッサ200と光源装置との間でタイミング信号を送受信するための有線又は無線の通信手段が設けられる。
【0066】
また、上記の実施形態では、第一の酸素飽和度観察用フィルタFs1、第二の酸素飽和度観察用フィルタFs2、狭帯域観察用フィルタFs3、通常観察用フィルタFnが回転式ターレット261に配置されているが、別の実施形態では、赤外光観察用フィルタや蛍光観察用フィルタなど、他の分光特性を持つ光学フィルタが回転式ターレット261に配置されてもよい。
【0067】
また、上記の実施形態では、回転フィルタ260部がランプ208側に設けられ、照射光Lに対してフィルタリングを行う構成が採用されているが、本発明はこの構成に限らない。例えば、回転フィルタ部260が固体撮像素子108側に設けられ、被写体からの戻り光に対してフィルタリングを行う構成が採用されてもよい。
【0068】
また、上記の実施形態では、回転式ターレット261の外周側の周領域に、第一の酸素飽和度観察用フィルタFs1、通常観察用フィルタFn、第二の酸素飽和度観察用フィルタFs2が配置され、回転式ターレット261の内周側の周領域に、通常観察用フィルタFn、狭帯域観察用フィルタFs3が配置されているが、別の実施形態では、外周側と内周側に配置される光学フィルタが上記と逆であってもよい。