(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263145
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】せん断耐力向上構造およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20180104BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
E04B1/24 R
E04B1/58 511F
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-64255(P2015-64255)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-183500(P2016-183500A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231855
【氏名又は名称】日本鋳造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤村 一巳
(72)【発明者】
【氏名】林 靖男
(72)【発明者】
【氏名】小林 由昌
(72)【発明者】
【氏名】大島 正隆
(72)【発明者】
【氏名】井 英浩
(72)【発明者】
【氏名】末石 伸行
(72)【発明者】
【氏名】高木 伸之
(72)【発明者】
【氏名】中川 佳
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−221334(JP,A)
【文献】
実開昭58−104209(JP,U)
【文献】
特開平07−300903(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0075099(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートと、該基礎コンクリートに固定された基礎板用アンカーボルトおよび補強板用アンカーボルトと、前記基礎板用アンカーボルトに取り付けられた基礎板と、前記補強板用アンカーボルトに取り付けられた補強板と、を有し、
前記基礎板の側端面と前記補強板の側端面とが密着していることを特徴とするせん断耐力向上構造。
【請求項2】
基礎コンクリートと、該基礎コンクリートに固定された基礎板用アンカーボルトおよび補強板用アンカーボルトと、前記基礎板用アンカーボルトに取り付けられた基礎板と、前記補強板用アンカーボルトに取り付けられた補強板と、を有し、
前記基礎板の側端面と前記補強板の側端面との間にスペーサーが配置され、
前記基礎板の側端面と前記補強板の側端面とが前記スペーサーを介して密着していることを特徴とするせん断耐力向上構造。
【請求項3】
前記基礎板に鉄骨柱が接続され、該鉄骨柱の前記基礎板側の端部に、ブレースの一方の端部が接続されていることを特徴とする請求項1または2記載のせん断耐力向上構造。
【請求項4】
基礎板用アンカーボルトおよび地中梁用鉄筋を配置する工程と、
前記基礎板用アンカーボルトおよび前記地中梁用鉄筋を包囲するコンクリート型枠を組み立てる工程と、
前記コンクリート型枠内に補強板用アンカーボルトを配置する工程と、
前記コンクリート型枠内に基礎コンクリートを打設する工程と、
前記基礎板用アンカーボルトに基礎板を取り付ける工程と、
前記補強板用アンカーボルトに補強板を、該補強板の側端面と前記基礎板の側端面とが密着するように取り付ける工程と、
前記基礎板の下面と前記基礎コンクリートの上面との間、および前記補強板の下面と前記基礎コンクリートの上面との間に、グラウトを充填する工程と、
を有することを特徴とするせん断耐力向上構造の施工方法。
【請求項5】
基礎板用アンカーボルトおよび地中梁用鉄筋を配置する工程と、
前記基礎板用アンカーボルトおよび前記地中梁用鉄筋を包囲するコンクリート型枠を組み立てる工程と、
前記コンクリート型枠内に補強板用アンカーボルトを配置する工程と、
前記コンクリート型枠内に基礎コンクリートを打設する工程と、
前記基礎板用アンカーボルトに基礎板を取り付ける工程と、
前記補強板用アンカーボルトに補強板を取り付ける工程と、
前記基礎板の側端面と前記補強板の側端面との間にスペーサーを、該スペーサーを介して前記基礎板の側端面と前記補強板の側端面とが密着するように設置する工程と、
前記基礎板の下面と前記基礎コンクリートの上面との間、および前記補強板の下面と前記基礎コンクリートの上面との間に、グラウトを充填する工程と、
を有することを特徴とするせん断耐力向上構造の施工方法。
【請求項6】
前記コンクリート型枠内に補強板用アンカーボルトを配置する工程は、前記補強板用アンカーボルトに予めテンプレートを設置しておき、前記テンプレートを前記地中梁用鉄筋または前記基礎板用アンカーボルトの一方または両方に固定するものであり、
前記コンクリート型枠内に基礎コンクリートを打設する工程の後、前記打設したコンクリートが固化したところで、前記テンプレートを撤去する工程を有することを特徴とする請求項4または5記載のせん断耐力向上構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はせん断耐力向上構造およびその施工方法、特に、基礎コンクリートに固定され、鉄骨柱が接続されたベースプレートを有するせん断耐力向上構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨柱を基礎コンクリートに固定する露出型柱脚工法において、基礎コンクリートに固定されたアンカーボルトと、アンカーボルトが貫通するアンカーボルト貫通孔が形成されたベースプレート(以下「基礎板」と称す)と、が用いられ、基礎板に鉄骨柱が接続されている。このとき、アンカーボルト貫通孔を貫通するアンカーボルトにナットを螺合し、該ナットを締め付けることによって、基礎板をアンカーボルトに固定している。そして、基礎板の下面と基礎コンクリートの上面との間隙にグラウト材を注入して、両者の固定を堅固にしている。
このとき、アンカーボルト貫通孔の内面とアンカーボルトの外面との固着が弱くなるという問題を解消するため、発明者等は鉄骨柱脚部の固定構造を開示している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−12402号公報(第3−4頁、
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明は、基礎コンクリートに固定されたアンカーボルトと、該アンカーボルトが貫通するアンカーボルト貫通孔が形成された基礎板(ベースプレートに同じ)と、該基礎板に下端が固定された鉄骨柱と、前記アンカーボルト貫通孔を貫通した状態の前記アンカーボルトに螺合して、前記基礎板を挾持する上ナットおよび下ナットと、前記アンカーボルト貫通孔の内周と、前記アンカーボルトの外周の一部と、前記上ナットおよび下ナットと、によって形成された空間に注入されたグラウト材とを有するものである。
すなわち、アンカーボルト貫通孔の内周と、アンカーボルトの外周の一部と、上ナットおよび下ナットと、によって形成された空間(略円筒状の閉塞空間)に注入されたグラウト材は固化し、その上端および下端が拘束され、前記空間に閉じ込められたままであるから、基礎板に水平方向の荷重が作用した際、アンカーボルトの荷重受け側の面が軸方向に変位しても、アンカーボルトとグラウト材との間に隙間が生じることがなく、グラウト材の変形や崩壊が防止され、アンカーボルト貫通孔の内面とアンカーボルトの外面との固着が維持されるという顕著な作用効果を奏する。
【0005】
しかしながら、例えば、基礎板に鉄骨柱が接続され、該鉄骨柱の基礎板に近い端部にブレース(筋交い)の一方の端部が設置された場合、ブレースに生じる軸力の水平成分がせん断力とし鉄骨柱脚部に作用する。
そして、鉄骨柱脚部に作用するせん断力に対する抵抗は、主にアンカーボルトのせん断耐力であるため(正確には、基礎コンクリートと基礎板との間の摩擦力も抵抗になっている)、過大なせん断力が作用して、前記せん断力が前記せん断耐力よりも大きい場合には、鉄骨柱脚部はせん断力に耐えられなくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題を解決するものであって、アンカーボルトのせん断耐力よりも大きなせん断力が作用しても、耐えることができるせん断耐力向上構造およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るせん断耐力向上構造は、基礎コンクリートと、該基礎コンクリートに固定された基礎板用アンカーボルトおよび補強板用アンカーボルトと、前記基礎板用アンカーボルトに取り付けられた基礎板と、前記補強板用アンカーボルトに取り付けられた補強板と、を有し、
前記基礎板の側端面と前記補強板の側端面とが密着していることを特徴とする。
(2)また、基礎コンクリートと、該基礎コンクリートに固定された基礎板用アンカーボルトおよび補強板用アンカーボルトと、前記基礎板用アンカーボルトに取り付けられた基礎板と、前記補強板用アンカーボルトに取り付けられた補強板と、を有し、
前記基礎板の側端面と前記補強板の側端面との間にスペーサーが配置され、前記基礎板の側端面と前記補強板の側端面とが前記スペーサーを介して密着していることを特徴とする。
(3)さらに、前記基礎板に鉄骨柱が接続され、該鉄骨柱の前記基礎板側の端部に、ブレースの一方の端部が接続されていることを特徴とする。
【0008】
(4)本発明に係るせん断耐力向上構造の施工方法は、基礎板用アンカーボルトおよび地中梁用鉄筋を配置する工程と、
前記基礎板用アンカーボルトおよび前記地中梁用鉄筋を包囲するコンクリート型枠を組み立てる工程と、
前記コンクリート型枠内に補強板用アンカーボルトを配置する工程と、
前記コンクリート型枠内に基礎コンクリートを打設する工程と、
前記基礎板用アンカーボルトに基礎板を取り付ける工程と、
前記補強板用アンカーボルトに補強板を、該補強板の側端面と前記基礎板の側端面とが密着するように取り付ける工程と、
前記基礎板の下面と前記基礎コンクリートの上面との間、および前記補強板の下面と前記基礎コンクリートの上面との間に、グラウトを充填する工程と、
を有することを特徴とする。
(5)また、基礎板用アンカーボルトおよび地中梁用鉄筋を配置する工程と、
前記基礎板用アンカーボルトおよび前記地中梁用鉄筋を包囲するコンクリート型枠を組み立てる工程と、
前記コンクリート型枠内に補強板用アンカーボルトを配置する工程と、
前記コンクリート型枠内に基礎コンクリートを打設する工程と、
前記基礎板用アンカーボルトに基礎板を取り付ける工程と、
前記補強板用アンカーボルトに補強板を取り付ける工程と、
前記基礎板の側端面と前記補強板の側端面との間にスペーサーを、該スペーサーを介して前記基礎板の側端面と前記補強板の側端面とが密着するように設置する工程と、
前記基礎板の下面と前記基礎コンクリートの上面との間、および前記補強板の下面と前記基礎コンクリートの上面との間に、グラウトを充填する工程と、
を有することを特徴とする。
(6)さらに、前記コンクリート型枠内に補強板用アンカーボルトを配置する工程は、前記補強板用アンカーボルトに予めテンプレートを設置しておき、前記テンプレートを前記地中梁用鉄筋または前記基礎板用アンカーボルトの一方または両方に固定するものであり、
前記コンクリート型枠内に基礎コンクリートを打設する工程の後、前記打設したコンクリートが固化したところで、前記テンプレートを撤去する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
(i)本発明に係るせん断耐力向上構造は、基礎コンクリートに固定された基礎板用アンカーボルトに取り付けられた基礎板(ベースプレートに同じ)の側端面と、基礎コンクリートに固定された補強板用アンカーボルトに取り付けられた補強板の側端面とが密着しているから、基礎板に作用するせん断力(水平方向の力)は、基礎板用アンカーボルトに伝達されると共に、補強板に伝達され、補強板を経由して補強板用アンカーボルトにも伝達される。
したがって、 せん断耐力向上構造は、作用するせん断力に対する抵抗が、基礎板用アンカーボルトのせん断耐力と補強板用アンカーボルトのせん断耐力との合計になるため、基礎板用アンカーボルトのせん断耐力よりも大きなせん断力が作用しても、耐えることができる。
(ii)また、基礎板の側端面と補強板の側端面とがスペーサーを介して密着しているから、前記(i)に記載の効果を得ることができる。このとき、スペーサーの大きさやスペーサー設置のタイミングは、適宜選定することができるから、設計および施工が容易になる。
(iii)さらに、基礎板に接続された鉄骨柱の基礎板側の端部に、ブレースの一方の端部が接続され、ブレースに生じる軸力の水平成分がせん断力としてせん断耐力向上構造に作用するものの、作用するせん断力に対する抵抗が、基礎板用アンカーボルトのせん断耐力と補強板用アンカーボルトのせん断耐力との合計になるため、基礎板用アンカーボルトのせん断耐力よりも大きなせん断力が作用しても、耐えることができる。
【0010】
(iv)本発明に係るせん断耐力向上構造の施工方法は、基礎板用アンカーボルト、地中梁用鉄筋および補強板用アンカーボルトが配置されているコンクリート型枠内に基礎コンクリートを打設する工程と、打設したコンクリートが固化した後、基礎板用アンカーボルトに基礎板を取り付ける工程と、補強板用アンカーボルトに補強板を取り付ける工程とを有するから、特別な施工工程を必要とすることなく、基礎板の側端面と補強板の側端面とを密着させることができ、前記(i)の効果を得ることができる。
(v)また、基礎板の側端面と補強板用の側端面との間にスペーサーを設置する工程を有するから、基礎板用アンカーボルトおよび補強板用アンカーボルトの配置の自由度が増し、設計が容易になると共に、基礎板の側端面と補強板の側端面とを力学的に(力の伝達可能に)密着させる作業が容易になる。
(vi)予めテンプレートが設置されている補強板用アンカーボルトを地中梁用鉄筋または基礎板用アンカーボルトの一方または両方に固定するから、施工が容易になると共に、施工精度が向上し、基礎板の側端面と補強板の側端面との密着(あるいは、スペーサーを介しての密着)が確実になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るせん断耐力向上構造を説明するものであって、一部を透視した正面図。
【
図2】本発明の実施の形態1に係るせん断耐力向上構造を説明するものであって、一部を透視した背面図。
【
図3】本発明の実施の形態1に係るせん断耐力向上構造を説明するものであって、一部を透視した平面図。
【
図4】本発明の実施の形態2に係るせん断耐力向上構造の施工方法を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態1]
図1〜
図3は本発明の実施の形態1に係るせん断耐力向上構造を説明するものであって、
図1は一部を透視した正面図、
図2は一部を透視した背面図。
図3は一部を透視した平面図である。なお、各図は模式的に描いたものであって、本発明は描かれた形態に限定されるものではない。
【0013】
図1〜
図3において、せん断耐力向上構造100は、基礎コンクリート90と、基礎コンクリート90に固定された基礎板用アンカーボルト13a〜13h、左補強板用アンカーボルト23a〜23f、および右補強板用アンカーボルト33a〜33hとを有している。
そして、基礎板用アンカーボルト13a〜13hによって基礎コンクリート90に基礎板(ベースプレートに同じ)10が設置され、左補強板用アンカーボルト23a〜23fに第1補強板(以下「左補強板」と称す)20が取り付けられ、右補強板用アンカーボルト33a〜33hに第2補強板(以下「右補強板」と称す)30が取り付けられている。
【0014】
また、基礎板10の左側の側端面と左補強板20の右側の側端面とに接する左スペーサー62と、基礎板10の右側の側端面と右補強板30の左側の側端面とに接する右スペーサー63とが、それぞれ配置されている。
したがって、基礎板10と左補強板20とは、左スペーサー62を介して互いに力を伝達可能に繋がっている。また、基礎板10と右補強板30とは、右スペーサー63を介して互いに力を伝達可能に繋がっている。
そして、基礎板10には鉄骨柱40が接続され、鉄骨柱40の下端部側面に設置されたガセットプレート45に、ブレース50の下端部が設置されている。
さらに、基礎コンクリート90と基礎板10、左補強板20、右補強板30との間には、基礎板グラウト91、左補強板グラウト92、右補強板グラウト93がそれぞれ充填され、基礎コンクリート90内には、複数の地中梁用鉄筋80が配置されている。
なお、以下の説明の便宜上、同じ構成である部材または部位については、符号の添え字「a、b、・・・」の記載を省略する。
【0015】
近接した一対の基礎板用アンカーボルト13は、下端部に近い位置(基礎コンクリート90内)において連結されている。すなわち、近接した一対の基礎板用アンカーボルト13は、定着用連結板15に形成された貫通孔(図示しない)を貫通し、基礎板用アンカーボルト13に螺合した定着用上ナット14と定着用下ナット16とが定着用連結板15を挟圧している。例えば、基礎板用アンカーボルト13aと基礎板用アンカーボルト13bとは、定着用連結板15aに形成された貫通孔(図示しない)を貫通し、基礎板用アンカーボルト13aに螺合した定着用上ナット14aおよび定着用下ナット16aと、基礎板用アンカーボルト13bに螺合した定着用上ナット14bおよび定着用下ナット16bとが、定着用連結板15aを挟圧している。
【0016】
また、基礎板用アンカーボルト13の上端部に近い範囲は、基礎板10に形成された図示しない貫通孔を貫通し、当該範囲に上ナット11および下ナット12が螺合している。下ナット12は基礎板10を支持し、上ナット11は基礎板10を下方に押し付けている。このとき、下ナット12は基礎板グラウト91内に埋まっている。
例えば、基礎板用アンカーボルト13aの上端部に近い範囲は、基礎板10に形成された図示しない貫通孔を貫通し、基礎板用アンカーボルト13aに螺合した上ナット11aおよび下ナット12bが基礎板10を挟圧している。
【0017】
左補強板用アンカーボルト23は、下端部に近い位置(基礎コンクリート90内)に定着用ナット24が螺合し、上端部に近い範囲は左補強板20に形成された図示しない貫通孔を貫通し、当該範囲に、上ナット21および下ナット22が螺合している。下ナット22は左補強板20を支持し、上ナット21は左補強板20を下方に押し付けている。このとき、下ナット22は左補強板グラウト92内に埋まっている。
例えば、左補強板用アンカーボルト23aの下端部に定着用ナット24aが螺合し、上端部が左補強板20に形成された貫通孔を貫通し、左補強板用アンカーボルト23aの上端部に螺合する上ナット21aおよび下ナット22bが左補強板20を挟圧している。
同様に、右補強板用アンカーボルト33は、下端部に近い位置(基礎コンクリート90内)に定着用ナット34が螺合し、上端部に近い範囲は右補強板30に形成された図示しない貫通孔を貫通し、当該範囲に、上ナット31および下ナット32が螺合している。下ナット32は右補強板30を支持し、上ナット31は右補強板30を下方に押し付けている。このとき、下ナット32は右補強板グラウト93内に埋まっている。
例えば、右補強板用アンカーボルト33aの下端部に定着用ナット34aが螺合し、上端部が右補強板30に形成された貫通孔を貫通し、右補強板用アンカーボルト33aの上端部に螺合する上ナット31aおよび下ナット32bが右補強板30を挟圧している。
【0018】
したがって、せん断耐力向上構造100は、ブレース50に引張力が作用した際に、基礎板10に作用するせん断力(水平方向の力)は、基礎板用アンカーボルト13に作用すると共に、右スペーサー63を介して右補強板30に伝達され、右補強板用アンカーボルト33に作用する。一方、ブレース50に圧縮力が作用した際に、基礎板10に作用するせん断力(水平方向の力)は、基礎板用アンカーボルト13に作用すると共に、左スペーサー62を介して左補強板20に伝達され、左補強板用アンカーボルト23に作用する。
よって、せん断耐力向上構造100は、作用するせん断力に対する抵抗が、基礎板用アンカーボルト13のせん断耐力と、左補強板用アンカーボルト23のせん断耐力または右補強板用アンカーボルト33のせん断耐力との合計になるため、基礎板用アンカーボルト13のせん断耐力よりも大きなせん断力が作用しても、耐えることができる。
【0019】
なお、以上は、右スペーサー63および左スペーサー62が設置されているが、本発明はこれに限定するものではなく、基礎板10の左側の側端面と左補強板20の右側の側端面とが直接密着し、基礎板10の右側の側端面と右補強板30の左側の側端面とが直接密着するようにしてもよい。
また、基礎板用アンカーボルト13、左補強板用アンカーボルト23および右補強板用アンカーボルト33の数量や配置形態は限定するものではない。さらに、鉄骨柱40の一方の面(
図1において右側の面)のみにガセットプレート45が設置されているが、本発明はこれに限定するものではなく、対向する他方の面(
図1において左側の面)にもガセットプレート45を設置して、鉄骨柱40に一対のブレース50が接続されるようにしてもよい。
【0020】
[実施の形態2]
図4は本発明の実施の形態2に係るせん断耐力向上構造の施工方法を説明するフローチャートである。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図4において、せん断耐力向上構造の施工方法は以下の工程を有する。
まず、地盤(傾斜面)に形成された凹部に、基礎板用アンカーボルト13および地中梁用鉄筋80を配置し(S1)、基礎板用アンカーボルト13および地中梁用鉄筋80を包囲するコンクリート型枠を組み立てる(S2)。そして、コンクリート型枠内に左補強板用アンカーボルト23および右補強板用アンカーボルト33を配置する(S3)。このとき、定着用連結板15に形成された一対の貫通孔に、近接した一対の基礎板用アンカーボルト13の下端部を差し込み、基礎板用アンカーボルト13に螺合した定着用上ナット14および定着用下ナット16でもって、定着用連結板15を挟圧する。
【0021】
次に、コンクリート型枠内に基礎コンクリート90を打設する(S4)。そして、基礎コンクリート90が固化したところで、基礎板用アンカーボルト13に基礎板10を取り付ける(S5)。このとき、基礎板用アンカーボルト13に螺合した下ナット12の位置を所定の位置にして、基礎板10を下ナット12によって支持し、さらに、基礎板用アンカーボルト13に螺合した上ナット11を締め込んで、基礎板10を挟圧する。なお、基礎コンクリート90の上面に位置決め用のグラウトを設置し、基礎板10を当該グラウトによって支持してもよい。
さらに、左補強板用アンカーボルト23および右補強板用アンカーボルト33に、左補強板20および右補強板30をそれぞれ取り付ける(S6)。このとき、基礎板10と同様に、上ナット21および下ナット22によって左補強板20を挟圧し、上ナット31および下ナット32によって右補強板30を挟圧する。
【0022】
そして、基礎板10の左側の側端面と左補強板20の右側の側端面との間に左スペーサー62を設置する(S7)。このとき、左スペーサー62は基礎板10と左補強板20とによって挟圧された状態になっている。同様に、基礎板10の右側の側端面と右補強板30の左側の側端面との間に右スペーサー63を設置する(S7)。
なお、以上は、左補強板用アンカーボルト23および右補強板用アンカーボルト33に、左補強板20および右補強板30をそれぞれ設置した後、左スペーサー62および右スペーサー63を設置しているが、本発明はこれに限定するものではなく、左スペーサー62および右スペーサー63を配置した状態で、左補強板用アンカーボルト23および右補強板用アンカーボルト33に、左補強板20および右補強板30をそれぞれ設置してもよい。
さらに、基礎コンクリート90の上面と基礎板10の下面との間に基礎板グラウト91を、基礎コンクリート90の上面と左補強板20の下面との間に左補強板グラウト92を、基礎コンクリート90の上面と右補強板30の下面との間に右補強板グラウト93を、それぞれ充填する(S8)。
したがって、基礎板10の下ナット12は基礎板グラウト91内に、左補強板20の下ナット22は左補強板グラウト92内に、右補強板30の下ナット32は右補強板グラウト93内に、それぞれ埋め込まれる。
【0023】
なお、以上は、左スペーサー62および右スペーサー63を設置しているが、本発明はこれに限定するものではなく、基礎板10の左側の側端面と左補強板20の右側の側端面とが直接密着するようにしてもよいし、基礎板10の右側の側端面と右補強板30の左側の側端面とが直接密着するようにしてもよい。
さらに、コンクリート型枠内に補強板用アンカーボルトを配置する工程(S3)は、左補強板用アンカーボルト23および右補強板用アンカーボルト33のそれぞれに、予めテンプレート(図示しない)を設置しておき、テンプレートを地中梁用鉄筋80または基礎板用アンカーボルト13の一方または両方に固定するようにしてもよい。このとき、基礎コンクリート90を打設する工程(S4)の後、打設した基礎コンクリート90が固化したところで、テンプレートを撤去する。
【0024】
以上のように、せん断耐力向上構造の施工方法は、前記工程S1〜S8を有するから、せん断耐力向上構造100を確実に形成することができる。
また、左スペーサー62および右スペーサー63を設置する工程を有するから、基礎板用アンカーボルト13、左補強板用アンカーボルト23および右補強板用アンカーボルト33の配置の自由度が増し、設計が容易になると共に、基礎板10の側端面と左補強板20の側端面とを力学的に(力の伝達可能に)密着させる作業、および基礎板10の側端面と右補強板30の側端面とを力学的に(力の伝達可能に)密着させる作業が容易になる。
さらに、左テンプレートおよび右テンプレートを用いると、施工が容易になると共に、施工精度が向上し、基礎板10の側端面と左補強板20の側端面との密着(あるいは、左スペーサー62を介しての密着)、および基礎板10の側端面と右補強板30の側端面との密着(あるいは、右スペーサー63を介しての密着)が確実になる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係るせん断耐力向上構造およびその施工方法は、基礎板(ベースプレート)に作用するせん断力の一部を補強板が分担することによって、大きなせん断力に耐える構造を提供するから、各種建築構造物を支持する基礎構造および基礎工法として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
10 :基礎板
11a〜11h:上ナット
12a〜12h:下ナット
13a〜13h:基礎板用アンカーボルト
14a〜14h:定着用上ナット
15a:定着用連結板
15d:定着用連結板
15e:定着用連結板
15h:定着用連結板
16a〜16h:定着用下ナット
20 :左補強板
21a〜21f:上ナット
22a〜22f:下ナット
23a〜23f:左補強板用アンカーボルト
24a〜24f:定着用ナット
30 :右補強板
31a〜31h:上ナット
32a〜32h:下ナット
33a〜33h:右補強板用アンカーボルト
34a〜34h:定着用ナット
40 :鉄骨柱
45 :ガセットプレート
50 :ブレース
62 :左スペーサー
63 :右スペーサー
80 :地中梁用鉄筋
90 :基礎コンクリート
91 :基礎板グラウト
92 :左補強板グラウト
93 :右補強板グラウト
100:せん断耐力向上構造