特許第6263147号(P6263147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263147
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】浮上ロボットを用いた構造物検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20180104BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20180104BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20180104BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20180104BHJP
   G01N 29/04 20060101ALI20180104BHJP
   G01N 27/90 20060101ALI20180104BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20180104BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   G01M99/00 Z
   B64C27/08
   B64C39/02
   B64D47/08
   G01N29/04
   G01N27/90
   G01N29/265
   G01N21/84 Z
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-93034(P2015-93034)
(22)【出願日】2015年4月30日
(65)【公開番号】特開2016-211878(P2016-211878A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年12月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2014年10月30日 一般社団法人日本建築機械施工協会施工技術総合研究所 模擬トンネル(静岡県富士市大渕3154)にて実証実験を行った。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2014年11月5日 SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」第1回シンポジウムにて、「近接目視・打音検査等を用いた飛行ロボットによる点検システムの研究開発」のタイトルで公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2015年2月16日 国土技術政策総合研究所内橋梁にて、実証実験を行った。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2015年2月24日 国土技術政策総合研究所内橋梁にて、実証実験を行った。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2015年3月5日 国土技術政策総合研究所内橋梁にて、実証実験を行った。
(73)【特許権者】
【識別番号】591053856
【氏名又は名称】新日本非破壊検査株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】和田 秀樹
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−134064(JP,U)
【文献】 特開2012−006587(JP,A)
【文献】 特開平04−258742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00 − 13/04
G01M 99/00
B64C 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)中央の軽量フレームと、該軽量フレームの周囲に高さを揃えて3つ以上設けられ、回転駆動源によって駆動されて、垂直方向に揚力を発生させる垂直プロペラと、前記軽量フレームの中央の上位置に設けられた上フレームと、該上フレームに設けられた車輪機構とを有する浮上ロボットと、(2)該浮上ロボットに搭載された近接撮影手段、打音検査手段、超音波検査手段、及び塗膜検査手段のいずれか1又は2以上の検査手段とを有する浮上ロボットを用いた構造物検査装置であって、
前記車輪機構は、高さを揃えて配置され左右がそれぞれ前後に対となる4つのガイド車輪と、該4つのガイド車輪のうち前後のガイド車輪を左右独立に駆動できる第1、第2のガイド車輪駆動手段を有することを特徴とする浮上ロボットを用いた構造物検査装置。
【請求項2】
(1)中央の軽量フレームと、該軽量フレームの周囲に高さを揃えて3つ以上設けられ、回転駆動源によって駆動されて、垂直方向に揚力を発生させる垂直プロペラと、前記軽量フレームの中央の上位置に設けられた上フレームと、該上フレームに設けられた車輪機構とを有する浮上ロボットと、(2)該浮上ロボットに搭載された近接撮影手段、打音検査手段、超音波検査手段、及び塗膜検査手段のいずれか1又は2以上の検査手段とを有する浮上ロボットを用いた構造物検査装置であって、
前記上フレームは、前記軽量フレームに傾動可能に設けられていると共に、前記上フレームの傾動に伴い発生する全体の重心移動を補正するカウンタウェイトが設けられていることを特徴とする浮上ロボットを用いた構造物検査装置。
【請求項3】
請求項2記載の浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記上フレームの傾動は、駆動源を備えた傾動手段によって行われることを特徴とする浮上ロボットを用いた構造物検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1記載の浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記垂直プロペラは、前記軽量フレームに均等配置された4本のアームを介して4個設けられていることを特徴とする浮上ロボットを用いた構造物検査装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1記載の浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記垂直プロペラは、前記軽量フレームに均等配置された6本のアームを介して6個設けられていることを特徴とする浮上ロボットを用いた構造物検査装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記各垂直プロペラは、平面視して直交する上下2段のプロペラ材を有していることを特徴とする浮上ロボットを用いた構造物検査装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1記載の浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記軽量フレームの下部には、水平方向に推力を発生させ、駆動軸が水平となったカバー付きの水平プロペラが左右対称に設けられていることを特徴とする浮上ロボットを用いた構造物検査装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1記載の浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記垂直プロペラの周囲には、前記軽量フレームと一体となるガードフレームが設けられていることを特徴とする浮上ロボットを用いた構造物検査装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1記載の浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記浮上ロボットの動力源は電力であって、地上からロープに沿って又はロープ無しで設けられたケーブルによって供給されていることを特徴とする浮上ロボットを用いた構造物検査装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1記載の浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記軽量フレームの下部には3本以上の脚が設けられていることを特徴とする浮上ロボットを用いた構造物検査装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1記載の浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記浮上ロボットに設けられている前記各検査手段の測定データの伝送は、電波を用いて又は有線で地上のコントローラに送っていることを特徴とする浮上ロボットを用いた構造物検査装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1記載の浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記軽量フレームと前記上フレームとはサスペンション機構を介して連結されていることを特徴とする浮上ロボットを用いた構造物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮上ロボット(通称「ドローン(drone)」)を用いて橋梁、トンネル、その他の高層建築物等の構造物を検査する構造物検査装に関する。
【背景技術】
【0002】
浮上ロボットについては、例えば特許文献1やインターネットのフリー百科事典「ウィキペディア」等で知られているように、垂直方向に揚力を発生する複数の垂直プロペラを有し、ヘリコプターのように、その場停止ができる。従って、航空写真等の地形写真を写すのに広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−6587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、自動操縦下でホバリング飛行を行うことができる無人機の水平速度を評価する方法であって、直接構造物の検査を行う方法ではない。更に、浮上ロボットを構造物に隣接させて、構造物の検査を行うことは一般的には行われていない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、検査対象物(即ち、構造物、例えば、トンネルや橋梁、高層建築物)に密接し、しかも浮上ロボットの姿勢を保ちながら搭載した検査手段によって構造物の検査を行う浮上ロボットを用いた構造物検査装を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、(1)中央の軽量フレームと、該軽量フレームの周囲に高さを揃えて3つ以上設けられ、回転駆動源によって駆動されて、垂直方向に揚力を発生させる垂直プロペラと、前記軽量フレームの中央の上位置に設けられた上フレームと、該上フレームに設けられた車輪機構とを有する浮上ロボットと、(2)該浮上ロボットに搭載された近接撮影手段、打音検査手段、超音波検査手段、及び塗膜検査手段のいずれか1又は2以上の検査手段とを有する浮上ロボットを用いた構造物検査装置であって、
前記車輪機構は、高さを揃えて配置され左右がそれぞれ前後に対となる4つのガイド車輪と、該4つのガイド車輪のうち前後のガイド車輪を左右独立に駆動できる第1、第2のガイド車輪駆動手段を有する。
【0007】
第2の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、(1)中央の軽量フレームと、該軽量フレームの周囲に高さを揃えて3つ以上設けられ、回転駆動源によって駆動されて、垂直方向に揚力を発生させる垂直プロペラと、前記軽量フレームの中央の上位置に設けられた上フレームと、該上フレームに設けられた車輪機構とを有する浮上ロボットと、(2)該浮上ロボットに搭載された近接撮影手段、打音検査手段、超音波検査手段、及び塗膜検査手段のいずれか1又は2以上の検査手段とを有する浮上ロボットを用いた構造物検査装置であって、
前記上フレームは、前記軽量フレームに傾動可能に設けられていると共に、前記上フレームの傾動に伴い発生する全体の重心移動を補正するカウンタウェイトが設けられている。
【0008】
第3の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、第2の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記上フレームの傾動は、駆動源を備えた傾動手段によって行われる。
【0009】
第4の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、第1〜第3の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記垂直プロペラは、前記軽量フレームに均等配置された4本のアームを介して4個設けられている。
【0010】
第5の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、第1〜第3の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記垂直プロペラは、前記軽量フレームに均等配置された6本のアームを介して6個設けられている。
【0011】
第6の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、第4、第5の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記各垂直プロペラは、平面視して直交する上下2段のプロペラ材を有している。
【0012】
第7の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、第1〜第6の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記軽量フレームの下部には、水平方向に推力を発生させ、駆動軸が水平となったカバー付きの水平プロペラが左右対称に設けられている。
【0013】
第8の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、第1〜第7の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記垂直プロペラの周囲には、前記軽量フレームと一体となるガードフレームが設けられている。
【0014】
第9の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、第1〜第8の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記浮上ロボットの動力源は電力であって、地上からロープに沿って又はロープ無しで設けられたケーブルによって供給されている。なお、ケーブル等を使用せず、浮上ロボットに搭載する充電式の電池を電源としてもよい。
【0015】
第10の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、第1〜第9の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記軽量フレームの下部には3本以上の脚が設けられている。
【0016】
第11の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、第1〜第10の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記浮上ロボットに設けられている前記各検査手段の測定データの伝送は、電波を用いて又は有線(例えば、ケーブル)で地上のコントローラに送っている。
【0017】
第12の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、第1〜第11の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、前記軽量フレームと前記上フレームとはサスペンション機構を介して連結されている。
【0018】
【発明の効果】
【0019】
第1の発明及びこれに従属する発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、車輪機構が、高さを揃えて配置され左右がそれぞれ前後に対となる4つのガイド車輪と、4つのガイド車輪のうち前後のガイド車輪を左右独立に駆動できる第1、第2のガイド車輪駆動手段を有するので、浮上ロボットを構造物の天井に当接させた状態を保つことができ、更に、その場位置から移動又は旋回することを容易になし得る。
【0020】
第2の発明及びこれに従属する発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、上フレームが、軽量フレームに傾動可能に設けられていると共に、上フレームの傾動に伴い発生する全体の重心移動を補正するカウンタウェイトが設けられているので、構造物の水平な天井面だけでなく、傾いた壁面に浮上ロボットをバランスを保った状態で当接させることができる。
【0021】
特に、第3の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、上フレームの傾動が、駆動源を備えた傾動手段によって行われるので、地上から例えば、リモートコントローラで、若しくは姿勢センサ等によって上フレームを傾動させることができ、浮上ロボットを水平に保つことができる。
【0022】
第8の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、垂直プロペラの周囲に、軽量フレームと一体となるガードフレームが設けられているので、接触事故が減少し、浮上ロボット自体の損傷を減らすことができる。
【0023】
第9の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、浮上ロボットの駆動源が電力であって、地上からロープに沿って又はロープ無しで設けられたケーブルによって供給されているので、浮上ロボットの長時間浮上が可能となる。
また、ロープを用いず単にケーブルによってのみ地上から浮上ロボットに電力を送ることもできるが、ケーブルの引っ張り強度以下の荷重しか保持できない。これらの電源として電池も使用できる。
【0024】
第12の発明に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置は、軽量フレームと上フレームとがサスペンション機構を介して連結されているので、上フレームの振動や揺れが小さくなって、上フレームに取付けた検査手段の精度が高まる。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置の主要構成を示す斜視図である。
図2】同構造物検査装置の平面図である。
図3】同構造物検査装置の側面図である。
図4】同構造物検査装置の斜視図である。
図5】(A)、(B)、(C)はそれぞれ同構造物検査装置に使用する検査手段の概略説明図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置の主要構成を示す側面図である。
図7】本発明の第3の実施の形態に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置の主要構成を示す斜視図である。
図8】同構造物検査装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1図5に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置10は、中央に設けられて本体となる軽量フレーム11と、軽量フレーム11の中央の上位置に4つの支柱12〜15に支えられて設けられた上フレール16と、上フレーム16に設けられている4つのガイド車輪17〜20とを有する浮上ロボット21を有している。以下これらについて詳しく説明する。
【0028】
軽量フレーム11はアルミ、アルミ合金又はマグネシウム合金、カーボン繊維、硬質プラスチック等の軽量部材からなって、6方にアーム22〜27を有する上部材28、この直下に隙間を有して配置される下部材29、及びこれらを連結する支持部材30を有し、更に上部材28の上部に平面視して矩形配置される4本の脚部32とこれらによって支持される台部33とを有する。そして、下部材29の下部周囲には、この浮上ロボット21を安定に平面上に着座させる6本(3本以上の一例)の脚34が設けられている。
【0029】
上部材28の周囲に形成された6本のアーム22〜27の先部には、垂直プロペラ36〜41が高さを揃えて設けられている。この垂直プロペラ36〜41は、それぞれ図示しないモータ(回転駆動源の一例)によって回転駆動され、軸受によって回転自在に支持される垂直軸を有し、垂直軸の上端部にプロペラ材42が設けられている。6個(3個以上の一例)の垂直プロペラ36〜41はそれぞれ前記モータによって所定方向に回転駆動され、浮上ロボット21に均等な揚力を垂直方向に発生させている。
【0030】
軽量フレーム11の中央、即ち台部33の上部には、内部にそれぞれ図示しないサスペンション機構を有する支柱12〜15が立設され、支柱12〜15によって上フレーム16の四隅が支持されている。この上フレーム16は平面視して略矩形となって、高さを揃えて配置され、左右がそれぞれ前後に対となる4つのガイド車輪17〜20を有する車輪機構44を備えている。なお、サスペンション機構を有することによって、軽量フレーム11において発生する振動や揺れが上フレーム16に伝わり難くなり、以下に説明する検査手段の設定位置がより正確になり、更に測定精度が高まる。
【0031】
車輪機構44は、それぞれ同一の回転駆動源(モータ)によって同時回転する前後のガイド車輪19、20と、前後のガイド車輪18、17を有している。ガイド車輪18〜20の内側には軸受で支持された車軸がそれぞれ設けられ、それぞれの車軸にはプーリが設けられ、回転駆動源の出力軸に設けられたプーリとベルトによって連結されている。この実施の形態は2つの回転駆動源(即ち、第1、第2のガイド車輪駆動手段の一部を構成する)があって、前後にあるガイド車輪18、17は同時回転し、更に前後にあるガイド車輪19、20は同時に回転する。また、左右にあるガイド車輪18、17とガイド車輪19、20とは独立に回転させる。これにより、この浮上ロボット21を前進、後退又は旋回できるようにしている。なお、ガイド車輪17〜20は浮上ロボット21に十分な揚力を持たせて、構造物の天井面にガイド車輪17〜20が当接する状態で、有効に作動する。
【0032】
この実施の形態では、上フレーム16の下部位置にアーム材45の基部が固定され、アーム材45の先部には、近接撮影手段の一例であるビデオカメラ46が傾動手段47を介して設けられている。この場合、ビデオカメラ46は、検査対象となる構造物の天井面にガイド車輪17〜20が当接した上フレーム16に設けられているので、より静置状態を保つことになる。なお、軽量フレーム11によって発生する振動等もサスペンション機構によって軽減される。
【0033】
図1において、48はGPSアンテナを示し、この浮上ロボット21の位置を三次元的に測定する。49は制御ボックスを示し、軽量フレーム11の中央に配置され、内部には各回転動力源となるモータを駆動する電池、地上と連絡をとってこの浮上ロボット21を用いた構造物検査装置10を制御する制御部とを有する。
この実施の形態に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置10においては、各モータ等の電源として電池を用いたが、図1に示すように、地上まで延設されたロープ67付きのケーブル(電力線と信号線)50を用いることも可能であり、これによってより浮上ロボット21の軽量化を図ることができ、長時間作業が可能となる。なお、ケーブルの強度が十分にある場合は、ロープは省略できる。
【0034】
また、図4に2点鎖線で示すように、浮上ロボット21の周囲には軽量部材(例えば、アルミニウム、その合金、マグネシウム、カーボン繊維、硬質プラスチック)からなり、軽量フレーム11と一体となるガードフレーム52を設けるのが好ましい。このガードフレーム52は、浮上ロボットを用いた構造物検査装置10の上部を除く部分を覆っているが、垂直プロペラ36〜41の周囲のみを覆っていてもよい。
【0035】
前記実施の形態においては、検査手段として、ビデオカメラ46を使用しているので、画質、立体感が、遠方から見るより鮮明となり、床板裏側コンクリート面、橋梁等においては下からは見えない、部分、部材、コンクリートのひび割れ、段差、割れ目、又は桁の接続部等を画像検知できる。
【0036】
前記実施の形態においては、検査手段としてビデオカメラ46を用いたが、スチルカメラでもよい。また、図5(A)に示すように超音波によって鉄板(構造物の一例)53を検査することもできる。この場合、圧電素子を用いた超音波センサ(超音波検査手段の一例)を用いると、水等の接触媒質を必要とするが、電磁力を使用する電磁超音波センサ(EMAT:Electromagnetic Acoustic transducer)54、55を用いると、水等の検査媒質を必要としないで、鉄板53の減肉状態56、鉄板(部材)53の割れ57等、金属の劣化状態を検知できる。また、一つの電磁超音波センサを用いてすべての検査を行うこともできる。
【0037】
超音波検査手段の一例として電磁超音波センサを用いる場合は、浮上ロボット21に、垂直方向、水平方向、及び旋回が可能な3軸以上のロボットアームを取付け、その先部に電磁超音波センサ5 4 、55等を取り付けるのがよい。
なお、水やグリセリン等の媒質が使用できる場所において、超音波検査手段として、通常の振動素子を用いた超音波センサを一部に用いてもよい。
【0038】
また、図5(B)に示すように、検査手段に打音検査手段(機構)58を用いてもよい。この打音検査手段58はハンマー59(60〜62も同じ)を湾曲したカーボンシャフト(通常のシャフトでもよい)63で支持し、カーボンシャフト63を回転させて、ハンマー59を対象物(構造物)に当てて、その打撃音をマイクロホン65で記憶し、対象物の状況を音によって判断するものである。ここで、ハンマー59〜62の重量は異なる。なお、66は取付け部材を示し、カーボンシャフト63を回転する機構は図示されていない。特に、打音検査手段58はトンネル等のコンクリート構造物の検査に優れている。
【0039】
図5(C)には検査手段の一例として、塗膜検査手段68を示す。塗膜検査手段68としては、渦流センサを使用するのが一般的で、極めて薄い塗膜であってもその厚さを正確に測定できる。
以上の検査手段の測定値は、対象物の場所、測定時間と共に、データとして記憶する必要がある。従って、GPSアンテナ48から受信されるGPS信号、ガイド車輪17〜20のいずれか1又は2〜4に設けたロータリエンコーダの出力値、レーザセンサ等からこの浮上ロボットを用いた構造物検査装置10の位置(X、Y、Z)、及びガイド車輪17〜20の向き等を検知する。
【0040】
なお、浮上ロボット21が走行する場合は、障害物に衝突すると壊れるので、水平方向の障害物を検知するセンサを有しているのがより好ましい。制御ボックス49内には、制御部が設けられているが、制御部は主としてマイコンからなって、各センサからデータを入力し、所定のプログラムによって指示信号を出力している。
【0041】
従って、この浮上ロボットを用いた構造物検査装置10を使用する場合、まずは位置データを制御部に与え、検査する対象物の領域、いかなる検査手段を用いるかを入力する。垂直プロペラ36〜41を同一回転数で回転させると全体が浮上するが、荷重中心位置が、垂直プロペラ36〜41の中心位置からずれている場合は、浮上ロボット21が傾くので、適当なバランサを付けるのが好ましい。なお、6本のアーム22〜27は円周方向に均等配置されているので、対向するアーム22、25、アーム23、26、アーム24、27にそれぞれ水平センサを設け、浮上ロボット21を水平に保つように、各垂直プロペラ36〜41のモータの回転数を制御することもできる。
【0042】
浮上ロボット21の上フレーム16には左右に、それぞれ対として同時回転するガイド車輪17、18とガイド車輪20、19が設けられているので、これらを駆動するモータを制御して、浮上ロボット21の前進、後退、旋回、右左折を行うことができる。この場合、垂直プロペラ36〜41の揚力によって、ガイド車輪17〜20を検査対象となる構造物の底面(又は天井面、測定面)に押しつけておく必要がある。なお、全部のガイド車輪17〜20を独立駆動することも可能であるが、ガイド車輪17〜20は、浮上ロボット21を測定面に押しつけ、かつ方向を変えるためのものであるので、右の車輪19、20と左の車輪17、18が独立に駆動されればよい。
【0043】
電池は全く使用しないで、ケーブル50によって電力を地上から供給することもできる。この場合は、検査時間は自由に変更できる。ケーブル50が十分に張力を有する場合は、軽量な合成樹脂繊維製のロープ67をケーブル50に沿わせることもでき、ロープ67を引っ張ると浮上ロボット21は測定面から離れる。ロープ67を操作して浮上ロボット21の位置制御を行うことができる。浮上ロボット21に設けられている各検査手段の測定データの伝送は、電波を用いて地上のコントローラに送ることもできるが、ケーブルを使用(有線で)することもできる。
【0044】
図6に本発明の第2の実施の形態に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置70を示すが、第1の実施の形態に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置10と同一の構成要素については同一の符号を付して詳しい説明を省略する(以下の実施の形態においても同じ)。
この実施の形態においては、軽量フレーム11aを構成する上部材28aの周囲から外方向に4本のアーム71〜74が設けられ、円周方向に均等配置された各アーム71〜74の先部には垂直プロペラ75〜78が設けられいる。垂直プロペラ75〜78の個々の構造は、垂直プロペラ36〜41と同一となって、内部に電動式のモータを備え、同時回転する。なお、符号29aは、上部材28aの直下に隙間を有して配置される下部材を示す。
【0045】
軽量フレーム11aの直上に脚部32を介して台部33が設けられ、台部33の上に内部にサスペンション機構を有する支柱12〜15を介して上フレーム16が設けられている。この上フレーム16には、ガイド車輪17〜20が設けられている。
左右のガイド車輪17、18及び20、19は前後が同時回転し、左右は独立回転する。上フレーム16の後部にはアーム材45を介してビデオカメラ46が傾動手段47を介して傾動調整可能に設けられている。
【0046】
この浮上ロボット21aへの検査手段の取付け、及び測定方法については、浮上ロボットを用いた構造物検査装置10と同一であり、浮上ロボットを用いた構造物検査装置70の動作は、浮上ロボットを用いた構造物検査装置10と略同一であるので、省略する。
【0047】
続いて、図7図8を参照して本発明の第3の実施の形態に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置80について説明する。
図7図8に示すように、この浮上ロボットを用いた構造物検査装置80の浮上ロボット80aは、中央の軽量フレーム81と、軽量フレーム81の周囲に高さを揃えて4つ(3つ以上)設けられたアーム82〜85と、円周方向に均等配置されたアーム82〜85の先部にそれぞれ設けられ、回転駆動源の一例であるモータによって駆動されて、垂直方向に揚力を発生させる垂直プロペラ86〜89とを有し、更に、軽量フレーム81の上部に支持柱90を介して設けられた上フレーム91と、上フレーム91に設けられた上向きの車輪機構92とを有している。以下、これらについて詳しく説明する。
【0048】
軽量フレーム81は、上部材93と下部材93a及びこれを連結する支持部材94とを有し、支持部材94にアーム82〜85の基部が取付けられている。
垂直プロペラ86〜89はそれぞれ平面視して直交する上下2段のプロペラ材95、96を有している。これによって、小型のプロペラ(羽根)で大きな揚力を得ることができる。
【0049】
支持柱90は複数本のロッド97を有し、下端の取付け金具98を介して、モータ(駆動源)を動力とする傾動手段99によって、軽量フレーム81に傾動可能に設けられている。支持柱90の上部には上フレーム91が固定されているので、結局は傾動手段99によって、上フレーム91が傾動する。上フレーム91の上には4つのオムニホイール100〜103が設けられている。このオムニホイール100〜103は平面視して正方形状に配置され、それぞれがモータによって独立駆動となっているので、各モータの回転制御を行うことによって、自由に横方向に移動する。なお、4つのオムニホイール100〜103は同一平面上を転動するようになっている。
また、同一方向を向いているオムニホイール100、102と、101、103はシャフト等で連結して同期駆動することができる。
【0050】
軽量フレーム81の下部には、アーム82、83の中間角度位置、及びアーム84、85の中間角度位置に、水平方向に推力を発生させ、駆動軸が水平となったカバー(保護カバー)104、104a付きの水平プロペラ105、106が左右対称に設けられている。これによって、浮上ロボットを用いた構造物検査装置80を横方向に積極的に移動(前進、後退)させることができる。
【0051】
水平プロペラ105、106はオムニホイール100〜103が有効に使用できない場合に使用できる。なお、左右の水平プロペラ105、106は独立にモータ駆動されているので、浮上ロボット80a自体の直進、後退、旋回を行うことができる。
左右の水平プロペラ105、106のカバー104、104aの底部には長さ調整可能な着座107、108(脚の一例)が設けられ、地面等にこの浮上ロボットを用いた構造物検査装置80を載せることができる。
【0052】
図8に示すように、上フレーム91は、支持柱90を介して軽量フレーム81に傾動可能に設けられている。従って、上フレーム91に取付けられている車輪機構92は構造物への傾動角度を変えることができる。なお、支持柱90の傾動は、モータを駆動源とする傾動手段99によって行う。この場合、上フレーム91の傾動角度が変わると、浮上ロボット80a自体の重心位置が変わって、浮上ロボット80aが傾くので、支持柱90の傾動側と反対方向に重心移動を補正するカウンタウェイト110を備えた重心調整装置111が設けられている。
【0053】
重心調整装置111は作業者が、浮上ロボット80aの傾きを見ながら調整する手動調整であってもよいが、カウンタウェイト110をガイド112に沿ってモータで動かすのが好ましい。この場合、水平角度センサを用いて必要な場合常時自動的に水平を保つようにしてもよい(自動移動)。
また、カウンタウェイトの移動のみをモータで行い、カウンタウェイトの停止位置は作業者が決めるようにしてもよい(半自動)。
【0054】
車輪機構92が傾くと、トンネル等の傾斜面に沿わせて、浮上ロボット80aを移動させ、近接撮影手段、打音検査手段、超音波検査手段、及び塗膜検査手段等の検査手段によってトンネル内の状況を把握できる。
特にオムニホイール100〜103を用いているので、そのまま傾斜角度を変えない横方向(即ち、トンネルの長さ方向)に移動ができる。
【0055】
本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の一部の構成要素を他の実施の形態に用いる場合も本発明は適用される。
例えば、第1、第2の実施の形態に係る浮上ロボットを用いた構造物検査装置において、ガイド車輪の代わりにオムニホイールを使用することが可能であり、第3の実施の形態において、ガイド車輪を使用することもできる。
軽量フレーム及び上フレームの構造は任意である。ロープとケーブルは省略可能で、この場合、電池とリモートコントローラを使用する。
【符号の説明】
【0056】
10:浮上ロボットを用いた構造物検査装置、11、11a:軽量フレーム、12〜15:支柱、16:上フレーム、17〜20:ガイド車輪、21、21a:浮上ロボット、22〜27:アーム、28、28a:上部材、29、29a:下部材、30:支持部材、32:脚部、33:台部、34:脚、36〜41:垂直プロペラ、42:プロペラ材、44:車輪機構、45:アーム材、46:ビデオカメラ、47:傾動手段、48:GPSアンテナ、49:制御ボックス、50:ケーブル、52:ガードフレーム、53:鉄板、54、55:電磁超音波センサ、56:減肉状態、57:割れ、58:打音検査手段、59〜62:ハンマー、63:カーボンシャフト、65:マイクロホン、66:取付け部材、67:ロープ、68:塗膜検査手段、70:浮上ロボットを用いた構造物検査装置、71〜74:アーム、75〜78:垂直プロペラ、80:浮上ロボットを用いた構造物検査装置、80a:浮上ロボット、81:軽量フレーム、82〜85:アーム、86〜89:垂直プロペラ、90:支持柱、91:上フレーム、92:車輪機構、93:上部材、93a:下部材、94:支持部材、95、96:プロペラ材、97:ロッド、98:取付け金具、99:傾動手段、100〜103:オムニホイール、104、104a:カバー、105、106:水平プロペラ、107、108:着座、110:カウンタウェイト、111:重心調整装置、112:ガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8