【文献】
Org.Process Res. Dev.,2011年,Vol.15,p.367-375
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドデシル硫酸ナトリウムおよび、(a)ソルビタン脂肪酸エステル、(b)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、(c)ポリオキシエチレンヒマシ油、(d)ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油および(e)ビタミンE TPGS;ならびにそれらの混合物から選択される1以上の非イオン性界面活性剤から選択される1以上の界面活性剤を含んでいてもよい、請求項4に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、
(1)スボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩と;
(2)スボレキサントのバイオアベイラビリティを向上させ、水溶性であるかまたは水中で容易に分散する、濃縮促進ポリマーと;
(3)場合によっては1以上の界面活性剤と
を含む医薬組成物を対象とする。
【0010】
濃縮促進ポリマーは、(a)スボレキサントを溶解させるか、または(b)スボレキサントがポリマー中で結晶または結晶性ドメインを形成しないようにスボレキサントと相互作用させることによって、水中で不溶性であるかまたはほぼ完全に不溶性であるスボレキサントとの非晶質分散系を形成するポリマーである。濃縮促進ポリマーは、水溶性であるかまたは水中で容易に分散するので、そのポリマーが水中または水性環境(例えば消化(GI)管中の液体または人工GI液)に置かれる場合、スボレキサントの溶解度および/またはバイオアベイラビリティがこのポリマー非存在下での溶解度またはバイオアベイラビリティよりも向上するようになる。
【0011】
本発明との使用に適切なポリマーのあるクラスは、中性非セルロース性ポリマーを含む。代表的なポリマーとしては、ヒドロキシ、アルキル、アシルオキシおよび環状アミドである置換基を有する、ビニルポリマーおよびコポリマーが挙げられる。これらとしては、未加水分解(酢酸ビニル)形態のそれらの繰り返し単位の少なくとも一部を有するポリビニルアルコール(例えばポリビニルアルコール−ポリ酢酸ビニルコポリマー);ポリビニルピロリジノン;ポリエチレンポリビニルアルコールコポリマー;およびポリビニルピロリジノン−ポリ酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。非セルロース性非イオン性ポリマーのクラスは、ポリビニルピロリジノンおよびポリビニルピロリジノンコポリマー、例えば、KollidonポリマーおよびコポリマーまたはPlasdoneポリマーおよびコポリマーとして入手可能な、ポリビニルピロリジノン−ポリ酢酸ビニルコポリマーなどを含む。代表的なコポリマーはコポビドンである。これらのコポリマーは、Kollidon VA64またはPlasdone S630商標下で販売されることが多い。代表的なコポリマーは、ポリビニルカプロラクタム−ポリ酢酸ビニル−ポリエチレングリコールグラフトコポリマーである。このコポリマーは、ソルプラス商標下で販売されることが多い。
【0012】
本発明との使用に適切なポリマーの別のクラスは、イオン性非セルロース性ポリマーを含む。代表的なポリマーとしては、カルボン酸官能性ビニルポリマー、例えばカルボン酸官能性ポリメタクリレートおよびカルボン酸官能性ポリアクリレートが挙げられる。このコポリマーは、Malden,MassachusettsのRohm Tech Inc.によりオイドラギットS商標下で販売されることが多く;アミン−官能性ポリアクリレートおよびポリメタクリレート;タンパク質;およびカルボン酸官能性デンプン、例えばデンプングリコール酸などである。
【0013】
濃縮促進ポリマーは、比較的親水性および比較的疎水性の単量体のコポリマーである、両親媒性である非セルロース性ポリマーでもあり得る。例としては、既に述べたアクリレートおよびメタクリレートコポリマー(オイドラギットS)が挙げられる。両親媒性ポリマーの別の例は、エチレンオキシド(またはグリコール)およびプロピレンオキシド(またはグリコール)のブロックコポリマーであり、ここでポリ(プロピレングリコール)オリゴマー単位は比較的疎水性であり、ポリ(エチレングリコール)単位は比較的親水性である。これらのポリマーは、ポロキサマー商標下で販売されることが多い。
【0014】
ポリマーのあるクラスは、各置換基に対して少なくとも0.1の置換度を有し、少なくとも1個のエステルおよび/またはエーテル連結置換基を有する、イオン性で中性のセルロース性ポリマーを含む。本明細書中で使用される命名法において、エーテル連結置換基は、エーテル結合によりセルロース骨格に連結される部分として、「セルロース」の前に置かれ;例えば「エチル安息香酸セルロース」は、セルロース骨格上にエトキシ安息香酸置換基を有する。同様に、エステル結合置換基は、カルボン酸エステルとして「セルロース」の後に置かれ;例えば、「セルロースフタレート」は、各フタル酸部分の1個のカルボン酸がポリマーにエステル結合され、フタル酸基の他のカルボン酸基は遊離カルボン酸基のままである。
【0015】
「セルロースアセテートフタレート」(CAP)などのポリマー名は、酢酸およびフタル酸基がエステル結合を介してセルロース性ポリマーのヒドロキシル基のかなりの割合に連結されているセルロース性ポリマーのファミリーの何れかを指すことにも留意すべきである。一般に、各置換基の置換度は、ポリマーの他の基準に合致する限り、0.1から2.9の範囲であり得る。「置換度」は、置換されているセルロース鎖上の糖繰り返し単位あたりの3個のヒドロキシルの平均数を指す。例えば、セルロース鎖上のヒドロキシル全てがフタル酸置換されている場合、フタル酸置換度は3である。
【0016】
各ポリマーファミリータイプ内には、実質的にポリマーの性能を変化させない比較的少量添加されるさらなる置換基を有するセルロース性ポリマーも含まれる。
【0017】
両親媒性セルロース誘導体は、少なくとも1個の比較的疎水性の置換基を有する糖繰り返し単位の各々の上に存在する3個のヒドロキシル置換基の何れかまたは全てにおいてセルロースを置換することによって調製され得る。疎水性置換基は基本的に、十分に高い置換のレベルまたは置換度で置換される場合、セルロース性ポリマーを基本的に水不溶性にし得る何らかの置換基であり得る。ポリマーの親水性領域は、未置換ヒドロキシルがそれ自体、比較的親水性であるので比較的未置換である部分であるか、または親水性置換基で置換される領域であるかの何れかであり得る。疎水性置換基の例としては、エーテル結合アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルなど;またはエステル結合アルキル基、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸など;およびエーテルおよび/またはエステル結合アリール基、例えばフェニル、ベンゾエートまたはフェニレートが挙げられる。親水性基としては、エーテルまたはエステル結合された非イオン性基、例えばヒドロキシアルキル置換基ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルおよびアルキルエーテル基、例えばエトキシエトキシまたはメトキシエトキシが挙げられる。親水性置換基としては、エーテルまたはエステル結合されたイオン性基、例えばカルボン酸、チオカルボン酸、置換フェノキシ基、アミン、リン酸またはスルホン酸基などが挙げられる。
【0018】
セルロース性ポリマーのあるクラスは、中性ポリマーを含み、つまり、水性溶液中でポリマーは実質的に非イオン性である。このようなポリマーは、非イオン性置換基を含有し、これはエーテル結合またはエステル結合され得るかの何れかである。代表的なエーテル結合非イオン性置換基としては、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルなど;ヒドロキシアルキル基、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなど;およびアリール基、例えばフェニルなどが挙げられる。代表的なエステル結合非イオン性基としては、アルキル基、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸など;およびアリール基、例えばフェニレートなどが挙げられる。しかし、アリール基が含まれる場合、ポリマーが、1から8の何れかの生理学的に適切なpHで少なくとも幾分かの水溶解性を有するように、ポリマーは十分な量の親水性置換基を含む必要があり得る。
【0019】
ポリマーとして使用され得る代表的な非イオン性ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテートおよびヒドロキシエチルエチルセルロースが挙げられる。
【0020】
中性セルロース性ポリマーの実施形態は、両親媒性のものである。代表的なポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースアセテートが挙げられ、ここで、未置換ヒドロキシルまたはヒドロキシプロピル置換基と比較してメチルまたは酢酸置換基数が比較的大きいセルロース性繰り返し単位は、ポリマー上の他の繰り返し単位と比較して疎水性である領域を構成する。
【0021】
セルロース性ポリマーの実施形態は、生理学的に適切なpHで少なくとも部分的にイオン性であり、少なくとも1個のイオン性置換基を含み、これがエーテル結合またはエステル結合の何れかであり得るポリマーを含む。代表的なエーテル結合イオン性置換基としては、カルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、安息香酸、サリチル酸、アルコキシ安息香酸、例えばエトキシ安息香酸またはプロポキシ安息香酸、アルコキシフタル酸の様々な異性体、例えばエトキシフタル酸およびエトキシイソフタル酸、アルコキシニコチン酸の様々な異性体、例えばエトキシニコチン酸、およびピコリン酸の様々な異性体、例えばエトキシピコリン酸;チオカルボン酸、例えば5チオ酢酸;置換フェノキシ基、例えばヒドロキシフェノキシなど;アミン、例えばアミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ、トリメチルアミノエトキシ;リン酸基、例えばエトキシリン酸基;およびスルホン酸基、例えばエトキシスルホン酸基が挙げられる。代表的なエステル結合イオン性置換基としては、カルボン酸、例えばコハク酸基、クエン酸基、フタル酸基、テレフタル酸基、イソフタル酸基、トリメリット酸基およびピリジンジカルボン酸の様々な異性体など;チオカルボン酸基、例えばチオコハク酸基;置換フェノキシ基、例えばアミノサリチル酸;アミン、例えば天然または合成アミノ酸、例えばアラニンまたはフェニルアラニン;リン酸基、例えばアセチルリン酸基;およびスルホン酸基、例えばアセチルスルホン酸基が挙げられる。必要な水溶性も有するための芳香族置換ポリマーに対しては、少なくとも、何らかのイオン性基がイオン化されるpH値でポリマーを水溶性にするために、ヒドロキシプロピルまたはカルボン酸官能基などの十分な親水性基がポリマーに連結されることも所望される。いくつかの場合において、芳香族基は、それ自体、フタル酸またはトリメリット酸置換基など、イオン性であり得る。
【0022】
生理学的に適切なpHで少なくとも部分的にイオン化される代表的なセルロース性ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、エチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネートフタレート、セルロースプロピオネートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、メチルセルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートサクシネート、セルロースプロピオネートトリメリテート、セルロースブチレートトリメリテート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、セルロースアセテートピリジンジカルボキシレート、サリチル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルサリチル酸セルロースアセテート、エチル安息香酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルエチル安息香酸セルロースアセテート、エチルセルロースフタレートアセテート、エチルニコチン酸セルロースアセテートおよびエチルピコリン酸セルロースアセテートが挙げられる。
【0023】
親水性領域と疎水性領域とを有する両親媒性の定義に合致する代表的なセルロース性ポリマーとしては、1以上の酢酸置換基を有するセルロースの繰り返し単位が、酢酸置換基を持たないか、または1以上のイオン化フタル酸またはトリメリット酸置換基を有するものに対して疎水性である、セルロースアセテートフタレートおよびセルロースアセテートトリメリテートなどのポリマーが挙げられる。
【0024】
セルロース性イオン性ポリマーのうち一部は、カルボン酸官能性芳香族置換基およびアルキレート置換基の双方を保持するものであり、したがって両親媒性である。代表的なポリマーとしては、セルロースアセテートフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、エチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートサクシネート、セルロースプロピオネートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、メチルセルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートサクシネート、セルロースプロピオネートトリメリテート、セルロースブチレートトリメリテート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、セルロースアセテートピリジンジカルボキシレート、サリチル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルサリチル酸セルロースアセテート、エチル安息香酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルエチル安息香酸セルロースアセテート、エチルセルロースフタレートアセテート、エチルニコチン酸セルロースアセテートおよびエチルピコリン酸セルロースアセテートが挙げられる。
【0025】
セルロース性イオン性ポリマーのうち別の一部は、非芳香族カルボン酸置換基を保持するものである。代表的なポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースサクシネートおよびヒドロキシエチルセルロースアセテートサクシネートが挙げられる。
【0026】
上記で列挙されるように、スボレキサントの非晶質分散系を生成させるために多岐にわたるポリマーを使用し得る。本発明の実施形態において、濃縮促進ポリマーは、その非イオン化状態で水溶性であり、またそのイオン化状態でも水溶性であるセルロース性ポリマーを含む。このようなポリマーの特定の一部は、いわゆる「腸溶性」ポリマーであり、例えば、一定のグレードのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレートおよびセルロースアセテートトリメリテートが挙げられる。このようなポリマーから生成される分散液は一般に、結晶性薬物対照用のものと比べて、溶解試験における最大薬物濃度の大幅な向上を示す。さらに、このようなポリマーおよび近縁のセルロース性ポリマーの非腸溶性グレードも有用である。
【0027】
本発明の実施形態において、濃縮促進ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、メチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートテレフタレートおよびセルロースアセテートイソフタレートを含む。
【0028】
本発明の実施形態において、濃縮促進ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、メチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、ポリビニルピロリジノン、ビニルピロリジノン/酢酸ビニルコポリマーおよびアクリレートおよびメタクリレートコポリマーからなる群から選択される。
【0029】
本発明の実施形態において、濃縮促進ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)またはビニルピロリジノン/酢酸ビニルコポリマーである。
【0030】
本発明の実施形態において、濃縮促進ポリマーは、pH非感受性ポリマーである。「pH非感受性ポリマー」という用語は、胃のpH(pH1から4)と腸のpH(pH5から8)との間の溶解度の差があまりないポリマーを意味する。代表的なpH非感受性ポリマーとしては、ビニルピロリジノン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルピロリジノン/酢酸ビニルコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリジノン、メタクリレートコポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンコポリマー(ポロキサマー)およびポリエチレングリコールが挙げられる。本発明の実施形態において、濃縮促進ポリマーは、ビニルピロリジノン/酢酸ビニルコポリマーまたはポリビニルピロリジノン/酢酸ビニルコポリマーである。
【0031】
本発明の実施形態において、濃縮促進ポリマーは、ビニルピロリジノン/酢酸ビニルコポリマーである。本発明の実施形態において、濃縮促進ポリマーは、ポリビニルピロリジノン/酢酸ビニルコポリマーである。
【0032】
本発明の組成物での使用に適切である具体的なポリマーを混ぜ合わせる場合、このようなポリマーのブレンド物も適切であり得る。したがって、「ポリマー」という用語は、単一種のポリマーに加えて、ポリマーのブレンド物を含むものとする。
【0033】
本発明の医薬組成物は、イオン性または非イオン性界面活性剤であり得る1以上の界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、湿潤性を促進し、それによって溶解薬物の最大濃度を向上させることによって、溶解速度を向上させ得る。界面活性剤はまた、分散物を処理し易くし得る。界面活性剤はまた、錯体化、包接錯体形成、ミセル形成および固形薬物の表面に対する吸着などの機構による溶解薬物との相互作用による薬物の結晶化または沈殿を阻害することにより、非晶質分散系を安定化し得る。適切な界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性および非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらとしては、例えば、脂肪酸およびアルキルスルホネート;陽イオン性界面活性剤、例えばベンザルコニウムクロリド(Hyamine 1622、Lonza,Inc.,Fairlawn,New Jerseyより入手可能);陰イオン性界面活性剤、例えばジオクチルナトリウムスルホサクシネート(ドクサートナトリウム、Mallinckrodt Spec.Chem.,St.Louis,Missouriより入手可能)およびラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム);ソルビタン脂肪酸エステル(SPANシリーズ界面活性剤);ビタミンE TPGS;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tweenシリーズ界面活性剤、ICI Americas Inc.,Wilmington,Delawareより入手可能);ポリオキシエチレンヒマシ油および水素化ヒマシ油、例えばクレモフォアRH−40およびクレモフォアEL;Liposorb P−20、Lipochem Inc.,Patterson New Jerseyより入手可能;Capmul POE−0、Abitec Corp.,Janesville,Wisconsinより入手可能)および天然界面活性剤、例えばタウロコール酸ナトリウム、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、レシチンおよび他のリン脂質およびモノ−およびジグリセリドなどが挙げられる。
【0034】
本発明の医薬組成物は、他の賦形剤、例えば1以上の崩壊剤、希釈剤または滑沢剤などを含んでいてもよい。代表的な崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンおよびデンプンが挙げられ得る。代表的な流動促進剤としては、二酸化ケイ素およびタルクが挙げられ得る。代表的な滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびフマル酸ステアリルナトリウムが挙げられ得る。代表的な希釈剤としては、微結晶セルロース、ラクトースおよびマンニトールが挙げられ得る。
【0035】
本発明の実施形態は、濃縮促進ポリマーと、4から40%のスボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩とを含む医薬組成物を対象とする。本発明の実施形態は、濃縮促進ポリマーおよび6から20%のスボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩を含む医薬組成物を対象とする。本発明の実施形態は、濃縮促進ポリマーと、8から15%のスボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩とを含む医薬組成物を対象とする。本発明の実施形態において、スボレキサントおよび任意の界面活性剤とのコポビドンの処方物は、4%から40%のスボレキサントおよび0から10%の界面活性剤を含んでもよく、処方物の残余はコポビドンである。本発明の実施形態において、スボレキサントおよび任意の界面活性剤とのKollidon VA64の処方物は、4%から40%のスボレキサントおよび0から10%の界面活性剤を含んでもよく、処方物の残余はKollidon VA64である。本発明の実施形態において、スボレキサントおよび任意の界面活性剤とのPlasdone S630の処方物は、4%から40%のスボレキサントおよび0から10%の界面活性剤を含んでもよく、処方物の残余はPlasdone S630である。本発明の実施形態において、スボレキサントおよび任意の界面活性剤とのソルプラスの処方物は、4%から40%のスボレキサントおよび0から10%の界面活性剤を含んでもよく、処方物の残余はソルプラスである。本発明の実施形態において、スボレキサントおよび任意の界面活性剤とのHPMCASの処方物は、4%から40%のスボレキサントおよび0から10%の界面活性剤を含んでもよく、処方物の残余はHPMCASである。
【0036】
本発明の医薬組成物は、薬物が一般に非晶質であるかまたはポリマーもしくは界面活性剤などの組成物の構成成分中で溶解されるように、ポリマー中で化合物(薬物)を分散液(非晶質分散系とも呼ばれる)にするために適切なプロセスによって調製される。分散液は安定であり、薬物は結晶または他の不溶性粒子を形成しない。このような方法には、溶解方法、例えば、真空下での共溶媒の、噴霧乾燥、噴霧コーティング、凍結乾燥および蒸発またはポリマーおよび薬物の溶液を加熱することによるものなどが含まれる。このような方法にはまた、固形薬物を溶融状態のポリマーと混ぜ合わせる方法、例えばホットメルト押出成型および分散液を生成させるために固形の非溶融ポリマーおよび薬物を加熱および加圧下で作り上げる方法も含まれる。
【0037】
本発明の別の態様は、濃縮促進ポリマー中で分子状に分散されるかまたは溶解されたスボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩を含む組成物を調製するためのプロセスを対象とする。いくつかの実施形態において、次の特性を提供する濃縮促進ポリマーから本発明の組成物中で使用されるポリマーを選択することが好ましい:(i)スボレキサントがそのポリマー中で可溶性である;(ii)スボレキサントが、融点がスボレキサントの融点を下回る共晶として挙動する溶液または分散液を生成させる;(iii)スボレキサントが選択ポリマーと混合され、加熱される場合、それが明らかに、ポリマーの溶融を促進し、ポリマーへのスボレキサントの溶解を促進するための融剤として作用する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物を調製するためのプロセスは、(i)スボレキサントおよび選択ポリマーの混合物を生成させ;(ii)場合によっては溶融分散液の撹拌を行いながら、約60℃を上回り、約200℃を下回る温度にその混合物を加熱することによって溶融分散液を生成させ;(iii)固形物を生成させるために工程(ii)で提供される分散液を冷却し;(iv)場合によっては、冷却工程(iii)の前またはそれと同時の何れかで分散液から成形塊を生成させることを含む。
【0038】
濃縮促進ポリマーとのスボレキサントの医薬組成物を作製するためのプロセスは、(a)ホットメルト押出成型および(b)噴霧乾燥を含む。本発明の実施形態において、これらのプロセスでの使用のためのポリマーは、ポリビニルピロリジノン、ポリビニルピロリジノン−ポリ酢酸ビニルコポリマー(例えばコポビドン)、HPC、HPMCAS、HPMC、HPMCP、CAPおよびCATである。本発明の実施形態において、ホットメルト押出成型での使用のためのポリマーは、ポリビニルピロリジノンおよびポリビニルピロリジノン−ポリ酢酸ビニルコポリマー(コポビドン、例えばKollidon VA64またはPlasdone S630など)である。本発明の実施形態において、ホットメルト押出成型での使用のためのポリマーは、コポビドンである。本発明の実施形態において、ホットメルト押出成型での使用のためのポリマーは、Kollidon VA64である。本発明の実施形態において、ホットメルト押出成型での使用のためのポリマーは、Plasdone S630である。本発明の実施形態において、ホットメルト押出成型での使用のためのポリマーは、ソルプラスである。本発明の実施形態において、噴霧乾燥のためのポリマーとしては、HPC、HPMCAS、HPMC、HPMCP、CAPおよびCATが挙げられる。本発明の実施形態において、噴霧乾燥のためのポリマーは、HPMCASである。
【0039】
これらのプロセスは両方とも、当分野で周知である。噴霧乾燥において、ポリマー、活性化合物および他の任意の成分、例えば界面活性剤などを溶媒中で溶解し、次いでノズルを通じて微細な霧としてチャンバーに噴霧し、そこで溶媒が急速に蒸発して、ポリマー、薬物および任意の他の成分を含む微細粒子が生成される。溶媒は、本組成物の構成成分全てが可溶性であり、噴霧乾燥器中で容易に蒸発させられる何らかの溶媒である。溶媒はまた、医薬組成物の調製での使用にも適切であるべきである。代表的な溶媒は、アセトン、メタノールおよびエタノールである。メタノールおよびアセトンが好ましい。ホットメルト押出成型において、本ポリマー、薬物および任意の界面活性剤を湿式造粒プロセスまたは他の混合プロセスで一緒に混合し、次いで、より良好な混合物を得るために、ポリマー、薬物および界面活性剤の混合物を押出機、好ましくはツインスクリュー押出機のチャンバーに供給し、次に完全に溶融させ、非晶質分散系を生成させるために混合する。本発明の実施形態において、非晶質分散系の化学的または物理学的発泡を使用し得る。発泡に供された非晶質分散系は、粉砕性能を向上させ、表面積拡大を通じてより迅速な溶解をもたらし得る。
【0040】
本発明によると、スボレキサントおよびポリマーの混合物を加熱し得、撹拌してもよい何らかの好都合な装置中で融解液を調製し得る。好都合な何らかの手段により好都合な何らかの容器中で融解液を単に冷却することによって、固形化を行い得る。固形物が得られたら、薬剤、例えば錠剤またはカプセルへの組み込みに好都合な形態にするために、その固形物をさらに機械的に処理し得る。
【0041】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、融解液を調製し、それを固形化し、固形物を都合のよいサイズの粒子にする他の方法を利用し得る。例えば、都合よく、押出機を使用して本発明の組成物を調製し得る。本発明の組成物を調製するために押出機を用いる場合、都合よく、材料が押出機にプリフラックス(pre−flux)の状態で、すなわち乾燥混合物として、または、スボレキサントをポリマー中で溶解させるための混合物への十分な加熱後に達成される、流動状態で、すなわち融解、可塑性または半固形状態の何れかで導入され得、場合によっては流動化供給量を調製する場合、流動化材料の均一性を促進するために加熱中に混ぜ合わせを用い得る。
【0042】
材料が流動状態で押出機に導入される場合、押出機中の滞在時間は、組成物の均一性を確実にするために丁度十分であるように選択され、温度は、好ましくは、押出機中で、都合よく成形された押出成型物になるように押し出され得るように材料がその可塑性を維持することを確実にするために丁度十分であるレベルに維持される。プリフラックス(pre−flux)の状態で材料が押出機に導入される場合、押出機部品、例えば、装置中に存在するバレルおよび何らかの混合チャンバーは、混合物の流動性を促進するのに十分な温度に維持される。組成物の処理での使用のために選択される温度はまた、押出機装置内で、例えばバレルの混合部で行われる混ぜ合わせが、混合物中での加熱を誘導するせん断応力を付与することによって混合物の局所的な流動にも関与することも考慮される。さらに、当然のことながら、装置温度および滞在時間は、上述のような、組成物形成中に分解されるスボレキサントの量が最小化されるように、押出機に入れられた混合物が加熱および/またはせん断応力の条件下にある時間量を最小限にするために選択される。一般に、押し出される材料に対して加熱が行われる押出成型プロセスは、「ホットメルト/押出成型プロセス」と呼ばれる。押出機装置を用いて本発明の組成物が調製される場合、このようにして提供される押出成型物は、何らかの好都合な形状、例えば、ヌードル状、円筒状、棒状などであり得る。必要に応じて、特定の形態の組成物を提供するために、例えば粉砕することによって押出成型物をさらに処理し得る。
【0043】
代替的な実施形態において、本発明は、化合物スボレキサントの非晶質形態を対象とする。代替的な実施形態において、本発明は、化合物スボレキサントの単離非晶質形態を対象とする。本発明の実施形態において、スボレキサントの他の形態学的な形と比べてスボレキサントの少なくとも大部分が非晶質状態で存在するようになる何らかの公知のプロセスに従い、スボレキサントおよび濃縮促進ポリマーの医薬組成物を調製する。これらのプロセスには、機械的なプロセス、例えば粉砕および押出成型;溶融プロセス、例えば高温融合、ホットメルト押出成型、溶媒改質(modified)融合および溶融凝固(melt congealing)プロセスなど;および非溶媒沈殿プロセス、噴霧コーティングおよび噴霧乾燥を含む溶媒プロセスが含まれる。本発明の分散液はこれらのプロセスの何れかにより生成され得るものの、本発明の実施形態において、医薬組成物中のスボレキサントは実質的に非晶質であり、実質的に均一にポリマー全体に分布する。
【0044】
代替的な実施形態において、本発明は、スボレキサントの他の形態学的な形に対して少なくとも約40wt.%の非晶質形態を含有する形態であるスボレキサントを対象とする。代替的な実施形態において、本発明は、スボレキサントの他の形態学的な形に対して少なくとも約50wt.%の非晶質形態を含有する形態であるスボレキサントを対象とする。代替的な実施形態において、本発明は、スボレキサントの他の形態学的な形に対して少なくとも約60wt.%の非晶質形態を含有する形態であるスボレキサントを対象とする。代替的な実施形態において、本発明は、スボレキサントの他の形態学的な形に対して少なくとも約70wt.%の非晶質形態を含有する形態であるスボレキサントを対象とする。代替的な実施形態において、本発明は、スボレキサントの他の形態学的な形に対して少なくとも約80wt.%の非晶質形態を含有する形態であるスボレキサントを対象とする。代替的な実施形態において、本発明は、スボレキサントの他の形態学的な形に対して少なくとも約90wt.%の非晶質形態を含有する形態であるスボレキサントを対象とする。代替的な実施形態において、本発明は、スボレキサントの他の形態学的な形に対して少なくとも約95wt.%の非晶質形態を含有する形態であるスボレキサントを対象とする。代替的な実施形態において、本発明は、スボレキサントの他の形態学的な形に対して少なくとも約98wt.%の非晶質形態を含有する形態であるスボレキサントを対象とする。代替的な実施形態において、本発明は、スボレキサントの他の形態学的な形に対して少なくとも約99wt.%の非晶質形態を含有する形態であるスボレキサントを対象とする。結晶性および非晶質スボレキサントの相対量は、示差走査熱量測定(DSC)、X線粉末回折(XRPD)およびラマン分光法を含むいくつかの分析方法によって決定され得る。
【0045】
スボレキサントの試料をアセトン中で溶解し、次いでアセトンを除去することによって、化合物スボレキサントの非晶質形態を調製した。特に、スボレキサントの試料をアセトン中で溶解し、溶液を60℃に加熱し、次いでロータリーエバポレーター上でアセトンを除去することによって、化合物スボレキサントの非晶質形態を調製した。得られた固形物を真空オーブン中で40℃にて一晩乾燥させて、残存溶媒を全て除去した。得られた物質のサーモグラムおよびディフラクトグラムから、これが非晶質であったことが示された。
【0046】
本発明の実施形態は、スボレキサントの試料をアセトン中で溶解し、次いでアセトンを除去することを含む、化合物スボレキサントの非晶質形態の調製のためのプロセスを対象とする。
【0047】
化合物スボレキサントの非晶質形態は、本化合物の結晶形態よりも溶解度が高くおよび/または溶解速度が速くなり、それにより本化合物のバイオアベイラビリティを向上させ得、治療作用のより速やかな開始を促進し得、対象間の治療効果のばらつきを減少させ得、何らかの食物の影響を減少させ得るなど、スボレキサントの他の形態学的な形と比べて有益性を有し得る。
【0048】
分子構造、結晶性および多形性の特徴を調べるために、X線粉末回折実験が広く使用される。PW3040/60コンソール付きのPhilips Analytical X’Pert PRO X線回折システムにおいてX線粉末回折パターンを生成させた。PW3373/00セラミックCu LEF X線チューブK−アルファ線を照射源として使用した。
【0049】
TA Instruments DSC 2910または同等の機器を用いてDSCデータを得た。2から6mgの間の重量の試料をパン(pan)に測りとり、パンの端を押し合わせた。このパンを熱量計セルの試料の位置に置いた。空のパンを参照位置に置いた。熱量計セルを閉じ、窒素気流をセルに通した。10℃/分の加熱速度でおよそ200℃の温度まで試料を加熱するために加熱プログラムを設定した。実験が完了したら、システムソフトウェア中のDSC分析プログラムを用いてデータを分析した。吸熱が観察される温度範囲の上下のベースラインの温度点の間で、観察された吸熱を積分した。報告されるデータは、開始温度、ピーク温度およびエンタルピーである。
【0050】
ラマン分光法は、関心のある試料の組成および形態的特徴を調べるために広く使用される。FRA106/Sラマンアタッチメントと組み合わせたBruker IFS 66v/Sシステムを用いて、FT−ラマン(フーリエ変換ラマン)スペクトルを50から4000cm−1の範囲にわたり回収した。4cm−1の解像度および300から500mWのレーザー出力で5から10分に対するシグナルの平均値を求めた。大きな試料採取体積を提供するために測定中に回転させられるスピン式ステージを用いて試料をレーザーに向けた。
【0051】
図1は、スボレキサントのホットメルト押出成型処方物のX線粉末回折パターンを示す。X線粉末回折パターンから、スボレキサントの非晶質形態が存在することが示される。鋭い反射がないことは、結晶性がないことを示す。
【0052】
図2は、スボレキサントのホットメルト押出成型処方物の変調示差走査熱量測定(mDSC)サーモグラムを示す。ホットメルト押出成型処方物におけるサーモグラムにより分かるように、化合物スボレキサントが、単一のガラス転移温度を特徴とする非晶質形態として存在する。この試料から、およそ99℃の単一のガラス転移温度が示された。
【0053】
図3は、スボレキサントのホットメルト押出成型物のラマン分光を示す。スペクトログラムにより分かるように、非晶質形態のスボレキサントのホットメルト押出成型物は、1614cm−1のラマン分光ピークを特徴とする。非晶質形態のスボレキサントのホットメルト押出成型物は、あるいは、1590cm−1のラマン分光ピークを特徴とする。非晶質形態のスボレキサントのホットメルト押出成型物は、あるいは、1571cm−1のラマン分光ピークを特徴とする。
【0054】
図4は、スボレキサントのホットメルト押出成型物を含む錠剤処方物のラマン分光を示す。スペクトログラムにより分かるように、非晶質形態のスボレキサントのホットメルト押出成型物を含む錠剤処方物は、1614cm−1のラマン分光ピークを特徴とする。非晶質形態のスボレキサントのホットメルト押出成型物を含む錠剤処方物は、あるいは、1590cm−1のラマン分光ピークを特徴とする。非晶質形態のスボレキサントのホットメルト押出成型物を含む錠剤処方物は、あるいは、1571cm−1のラマン分光ピークを特徴とする。非晶質形態のスボレキサントのホットメルト押出成型物を含む錠剤処方物は、あるいは、1614cm−1、1590cm−1および1571cm−1のラマン分光ピークを特徴とする。
【0055】
図5は、スボレキサントのホットメルト押出成型物を含む錠剤処方物のラマン分光と重ね合わせ、スボレキサントのホットメルト押出成型物を含むこのような錠剤処方中の個々の賦形剤のラマン分光とさらに重ね合わせた、スボレキサントのホットメルト押出成型物のラマン分光を示す。
【0056】
0.55nMのKiでヒトオレキシン−1(OX1)受容体と拮抗することにおいて、および0.35nMのKiでヒトオレキシン−2(OX2)受容体と拮抗することにおいて活性を有するものとしてスボレキサントが開示される。スボレキサントの標準的な医薬処方物と比較して、本発明は、本化合物の標準的な処方物よりも、スボレキサントの溶解度が高くなり、および/または溶解速度が速くなり、それにより本化合物のバイオアベイラビリティを向上させ得、治療作用のより速やかな開始を促進し得、対象間の治療効果のばらつきを減少させ得、何らかの食物の影響を減少させ得るなど、有益性を有し得る。
【0057】
濃縮促進ポリマーを含む組成物は、ポリマーなしで同等量のスボレキサントを含む対照組成物と比べて、水性環境、例えば水中、消化(GI)管またはインビトロ検査室検査のために調製された人工GI液中でのスボレキサントの濃度を上昇させる。組成物が水性環境に導入されると、濃縮促進ポリマーおよびスボレキサントを含む組成物は、同じ濃度のスボレキサントを有するが濃縮促進ポリマーがない対照組成物と比べて、より高い最大水性スボレキサント濃度をもたらす。ポリマーを含む組成物と同じ濃度にスボレキサントを維持するために対照においてポリマーの代わりに不活性充填剤を使用し得る。本発明の実施形態において、本ポリマーは、水溶液中でのスボレキサントの最大濃度を少なくとも25%上昇させる。本発明の実施形態において、本ポリマーは、水溶液中でのスボレキサントの最大濃度を少なくとも50%上昇させる。本発明の実施形態において、本ポリマーは、水溶液中でのスボレキサントの最大濃度を対照組成物に対して少なくとも2倍に上昇させる。本発明の実施形態において、本ポリマーは、水溶液中でのスボレキサントの最大濃度を対照組成物よりも少なくとも5倍に上昇させる。本発明の実施形態において、本ポリマーは、水溶液中でのスボレキサントの最大濃度を少なくとも10倍上昇させる。このような濃度の大きな向上は、スボレキサントが経口投与を通じて有効血中レベルを達成するために必要であり得る。このような水溶液は、一般に、スボレキサントに関して過飽和溶液である。
【0058】
インビボでの、試験動物への処方物の投与後の血液または血清中で時間の関数としてスボレキサント濃度が測定される薬物動態学的測定において、本発明の組成物は、同等量の化合物を含むが濃縮促進ポリマーがない対照組成物よりも大きい濃度対時間曲線下面積(AUC)および最大濃度Cmaxを示す。本発明の実施形態において、濃度対時間曲線下面積(AUC)は、対照組成物よりも少なくとも25%大きい。本発明の実施形態において、AUCは、同量の薬物を含有するが本ポリマーがない対照組成物よりも少なくとも50%大きい。本発明の実施形態において、AUC下面積は、同量の薬物を含有するが本ポリマーがない対照組成物よりも少なくとも2倍である。本発明の実施形態において、AUC下面積は、同量の薬物を含有するが本ポリマーがない対照組成物よりも少なくとも5倍大きい。本発明の実施形態において、AUC下面積は、同量の薬物を含有するが本ポリマーがない対照組成物よりも少なくとも10倍大きい。本発明の実施形態において、AUC下面積は、同量の薬物を含有するが本ポリマーがない対照組成物よりも少なくとも15倍大きい。本発明の実施形態において、AUC下面積は、同量の薬物を含有するが本ポリマーがない対照組成物よりも少なくとも20倍大きい。
【0059】
本発明の実施形態において、試験動物または患者へ投与された後、濃縮促進ポリマーがない対照組成物と比べてCmaxが少なくとも25%上昇する。本発明の実施形態において、試験動物または患者へ投与された後、本ポリマーがない対照組成物と比べてCmaxが少なくとも50%上昇する。本発明の実施形態において、試験動物または患者へ投与された後、本ポリマーがない対照組成物と比べてCmaxが少なくとも2倍上昇する。本発明の実施形態において、試験動物または患者へ投与された後、本ポリマーがない対照組成物よりもCmaxがまた少なくとも5倍上昇する。本発明の実施形態において、試験動物または患者へ投与された後、本ポリマーがない対照組成物の薬物濃度よりもCmaxがまた少なくとも10倍上昇する。本発明の実施形態において、試験動物または患者へ投与された後、本ポリマーがない対照組成物の薬物濃度よりもCmaxがまた少なくとも20倍上昇する。本発明の実施形態において、試験動物または患者へ投与された後、本ポリマーがない対照組成物の薬物濃度よりもCmaxがまた少なくとも30倍上昇する。本発明の実施形態において、試験動物または患者へ投与された後、本ポリマーがない対照組成物の薬物濃度よりもCmaxがまた少なくとも40倍上昇する。
【0060】
本発明の医薬組成物は、濃縮促進ポリマーを有しない処方物と比較して、インビボでのバイオアベイラビリティの向上を示す。化合物スボレキサントは、これらの処方物の経口投与後、より迅速に吸収される。本処方物が患者に投与される場合、薬物のAUCおよび血液または血清中の薬物の最大濃度が上昇する。
【0061】
インビボでの、食物(高脂肪食など)との同時投与時の試験動物またはヒト患者への処方物の投与後の血液または血清中で時間の関数としてスボレキサント濃度が測定される薬物動態学的測定において、pH非感受性ポリマーである濃縮促進ポリマーを使用する本発明の組成物は、pH非感受性ポリマーではない濃縮促進ポリマーを使用する同等量の化合物を含む組成物の場合よりもピーク濃度までの時間(Tmax)が短くなり得る。したがって、pH非感受性ポリマーである濃縮促進ポリマーの使用は、スボレキサントの処方物が食物(高脂肪食など)とともに投与される場合、そうでない場合はTmaxを遅延させる食物効果を低下させることを促し得る。
【0062】
本発明の医薬組成物の経口投与によって、驚くべきことに食物効果が低下する、すなわち本発明の組成物を含む処方物の経口投与は、本処方物が満腹状態または空腹状態下で投与されるか否かにかかわらず、実質的に同じスボレキサント曝露をもたらし、患者集団間のバイオアベイラビリティのばらつきが少なくなる。さらに、本発明の組成物を含む処方物の経口投与の結果を、満腹状態または空腹状態の何れかでの従来の処方物の形態のスボレキサントの同等量の投与後に得られるものと比較した場合、本発明の組成物によってバイオアベイラビリティが上昇し、対象の集団間のバイオアベイラビリティのばらつきが少なくなり、投与を受ける健常ボランティアにおける曝露レベル(AUC)がより高くなる。さらに、本発明の組成物を含む処方物が投与される患者において同様の結果が達成されると考えられる。
【0063】
「医薬的に許容可能な塩」という用語は、無機または有機塩基および無機または有機酸を含む医薬的に許容可能な無毒性の塩基または酸から調製される塩を指す。無機塩基由来の塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、マンガン(II)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。特定の実施形態としては、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム塩が挙げられる。固形の塩は、複数の結晶構造で存在し得、水和物の形態でもあり得る。医薬的に許容可能な有機無毒性塩基由来の塩としては、一級、二級および三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレン−ジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が挙げられる。本発明で使用される化合物が塩基性である場合、塩は、無機および有機酸を含む、医薬的に許容可能な無毒性の酸から調製され得る。このような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。特定の実施形態としては、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸および酒石酸が挙げられる。本明細書中で使用される場合、スボレキサントに対する言及は、医薬的に許容可能な塩も含むものとすることを理解されたい。
【0064】
本発明の代表例は、実施例および本明細書中で開示される処方物の使用である。スボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩は、有効量の本化合物の投与を含む、オレキシン受容体活性の阻害を必要とする哺乳動物などの患者においてオレキシン受容体活性と拮抗する方法において有用である。本発明は、オレキシン受容体活性のアンタゴニストとしてのスボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩の処方物の使用を対象とする。霊長類、特にヒトに加えて、本発明の方法に従い様々な他の哺乳動物を処置し得る可能性がある。
【0065】
本方法において処置される対象は、一般に哺乳動物、例えばヒト、男性または女性である。「治療的有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師またはその他の臨床家により求められている、組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的反応を引き出す対象化合物の量を意味する。当業者は、有効量の本発明の化合物で、現在障害に罹患している患者を処置することによって、または障害に罹患する患者を予防的に処置することによって、神経および精神障害に影響を及ぼし得ることが認識される。本明細書中で使用される場合、「処置」および「処置すること」という用語は、本明細書中に記載の神経および精神障害の進行の、遅延、阻止、進行阻止、調節または停止があり得る全ての過程を指すが、全障害症状の全消失、ならびに特にこのような疾患または障害に罹患し易い患者における言及される状態の予防的治療を必ずしも指すわけではない。化合物「の投与」およびまたは「を投与すること」という用語は、本発明の化合物または本発明の化合物のプロドラッグを必要とする個体に、本発明の化合物または本発明の化合物のプロドラッグを提供することを意味するものと理解すべきである。
【0066】
「組成物」という用語は、本明細書中で使用される場合、指定量の指定成分を含む生成物ならびに、指定量の指定成分の組み合わせから直接または間接的に得られる何らかの生成物を包含するものとする。医薬組成物に関するこのような用語は、活性成分および担体をなす不活性成分を含む生成物、ならびに成分の何らかの2以上の組み合わせ、錯体形成または凝集から、またはその成分の1以上の解離から、または成分の1以上の反応または相互作用の他のタイプから、直接的または間接的に得られる何らかの生成物を包含するものとする。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物および医薬的に許容可能な担体を混合することによって作製される何らかの組成物を包含する。「医薬的に許容可能な」とは、担体、希釈剤または賦形剤が処方物の他の成分と適合性でなければならず、その受容者に有害ではないことを意味する。
【0067】
科学文献から、多岐にわたる生物学的機能においてオレキシン受容体が暗示されている。このことから、ヒトまたは他の種における様々な疾患過程におけるこれらの受容体の潜在的役割が示唆されている。本発明によると、スボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩の処方物は、オレキシン受容体が関連する神経および精神障害を処置するか、予防するか、改善するか、調節するかまたはそのリスクを低下させることにおいて有用性があり得る。本発明によると、スボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩の処方物は、本発明の処方物中の治療的有効量のスボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩を患者に投与することを含む、それを必要とする哺乳動物患者における、睡眠の障害および睡眠障害を予防および処置する;不眠症を処置する;睡眠の質を向上させる;睡眠維持を延長させる;REM睡眠を増加させる;ステージ2の睡眠を増加させる;睡眠パターンの断片化を減少させる;不眠症を処置する;認知を向上させる;記憶保持を向上させる;肥満を処置または調節する;うつを処置または調節するための方法を提供し得る。
【0068】
本発明によると、スボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩の処方物はまた、本明細書中で述べられる疾患、障害および状態の、予防、処置、調節、改善またはリスク低下のための方法においても有用であり得る。本発明の組成物中の活性成分の投与量は変動し得るが、活性成分の量は適切な剤形が得られるようなものであることが必要である。最適な医薬有効性を提供するであろう投与量でこのような処置を必要とする患者(動物およびヒト)に活性成分が投与され得る。選択される投与量は、所望の治療効果に、投与経路に、および治療の持続期間に依存する。用量は、疾患の性質および重症度、患者の体重、特別な食餌、それに続いて患者、併用投薬および当業者が認識する他の要因に依存して患者ごとに変動する。一般に、オレキシン受容体の効果的な拮抗作用を得るために、1日に0.0001から10mg/kg体重の間の投与量レベルが患者、例えば、ヒトおよび高齢者に投与される。投与量範囲は一般に、約0.5mgから1.0g/患者/日となり、単回または複数回投与で投与され得る。ある実施形態において、投与量範囲は、約0.5mgから500mg/患者/日であり;別の実施形態において約0.5mgから200mg/患者/日であり;また別の実施形態において、約5mgから50mg/患者/日である。本発明の医薬組成物は、約0.5mgから500mgの活性成分を含むかまたは約1mgから250mgの活性成分を含むなどの、固形投与処方物で提供され得る。本医薬組成物は、約1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mgまたは100mgの活性成分を含む固形投与処方物で提供され得る。具体的な実施形態において、本医薬組成物は、約10mg、15mg、20mg、30mgまたは40mgの活性成分を含む固形投与処方物で提供され得る。経口投与の場合、本組成物は、処置しようとする患者への投与量の症状による調整のために、1.0から1000ミリグラムの活性成分、例えば、1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900および1000ミリグラムの活性成分などを含有する錠剤の形態で提供され得る。1日1回から4回、例えば1日1回または2回などの投薬計画で本化合物が投与され得る。本発明の実施形態において、夜間、例えば就寝前などに1日1回の投薬計画で本化合物が投与され得る。
【0069】
本発明で使用されるスボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩は、薬物を一緒に組み合わせることが何れかの薬物単独よりも安全であるかまたは有効である場合、本発明の化合物または他の薬物が有用性を持ち得る疾患または状態の、処置、予防、調節、改善またはリスク低下において、1以上の他の薬物と併用され得る。このような他の薬物は、それに対して一般に使用される経路および量で、本発明の化合物と同時にまたは連続的に投与され得る。1以上の他の薬物と同時に本発明の化合物が使用される場合、このような他の薬物および本発明の化合物を含有する単位剤形の医薬組成物が企図される。しかし、併用療法はまた、異なる重複スケジュールで本発明の化合物および1以上の他の薬物が投与される治療も含み得る。1以上の他の活性成分と併用される場合、それぞれが単独で使用される場合より低い用量で本発明の化合物および他の活性成分が使用され得ることも企図される。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて1以上の他の活性成分を含有するものを含む。上述の組み合わせは、ある1つの他の活性化合物だけでなく、2以上の他の活性化合物と本発明の化合物の組み合わせを含む。
【0070】
同様に、本発明で使用されるスボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩は、本発明の化合物が有用である疾患または状態の、予防、処置、調節、改善またはリスク低下において使用される他の薬物と併用され得る。このような他の薬物は、それに対して一般に使用される経路および量で、本発明の化合物と同時にまたは連続的に投与され得る。スボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩が1以上の他の薬物と同時に使用される場合、本発明の化合物に加えてこのような他の薬物を含有する医薬組成物が企図される。このような医薬組成物は、本明細書中に記載のおよび当分野で公知の方法に従い、不要な実験なく調製される。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて1以上の他の活性成分も含有するものを含む。
【0071】
スボレキサントまたは医薬的に許容可能なその塩と第二の活性成分との重量比は変動し得、各成分の有効用量に依存する。一般に、それぞれの有効用量が使用される。したがって、例えば、本発明の化合物を別の薬剤と組み合わせる場合、本発明の化合物と他の薬剤との重量比は一般に、約1000:1から約1:1000、例えば約200:1から約1:200の範囲である。本発明の化合物および他の活性成分の組み合わせは一般に上述の範囲内でもあるが、各場合において、各活性成分の有効用量が使用されるべきである。このような組み合わせにおいて、本発明の化合物および他の活性薬剤を個別にまたは併せて投与し得る。さらに、ある要素の投与は、他の薬剤の投与の前、それと同時またはそれと連続し得る。
【0072】
本発明の医薬組成物は、投与単位形態で都合よく与えられ得、薬剤学の技術分野で周知の方法の何れかによって調製され得る。方法には全て、1以上の補助的成分を構成する担体と活性成分を合わせる工程が含まれる。一般に、均一におよび完全に活性成分を液体担体または微粉化固形担体または両方と合わせ、次いで必要に応じて、所望の処方物に生成物を成形することによって、本医薬組成物が調製される。本医薬組成物において、疾患の過程または状態において所望の効果を生じさせるのに十分な量で活性目的化合物が含まれる。本明細書中で使用される場合、「組成物」という用語は、指定量の指定成分を含む生成物ならびに指定量の指定成分の組み合わせから直接または間接的に得られる何らかの生成物を包含するものとする。
【0073】
経口使用を対象とした医薬組成物は、本明細書中に記載の方法および医薬組成物の製造に対する技術分野で公知の他の方法に従い調製され得る。このような組成物は、医薬的に洗練され、口当たりが良い調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤からなる群から選択される1以上の薬剤をさらに含有し得る。錠剤は、錠剤の製造に適切である無毒性の医薬的に許容可能な賦形剤と混合して活性成分を含有し得る。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;顆粒化および崩壊剤、例えば、コーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアカシアおよび滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。錠剤は被覆しなくてもよいし、または、消化管において崩壊および吸収を遅延させ、それによってより長い期間にわたり持続作用を提供するために、公知の技術によってそれらを被覆してもよい。経口使用のための組成物はまた、不活性固形希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと活性成分が混合される硬ゼラチンカプセルとして、または水もしくは油媒体、例えばピーナツ油、流動パラフィンまたはオリーブ油と活性成分が混合される軟ゼラチンカプセルとして、与えられ得る。水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適切な賦形剤と混合して活性物質を含有する。水の添加による水性懸濁液の調製に適切な分散性粉末および顆粒剤は、分散または湿潤剤、懸濁化剤および1以上の保存剤と混合して活性成分を提供する。
【0074】
本発明の医薬処方物を調製するためのいくつかの方法を次の実施例において説明する。一部の場合において、前述の例を遂行する順序は、プロセスの効率または処方物の所望の特性を促進するために変動させ得る。次の実施例は、本発明がより完全に理解され得るように提供される。これらの実施例は、単なる説明であって、本発明を何ら限定するものとして解釈してはならない。
【0075】
[実施例]
医薬処方物の調製の実施例を下記で与える。スボレキサントの試験処方物および/または他の処方物をビーグル犬に5mg/kgのスボレキサント用量で投与し、次いで時間の関数として血清または血液中のスボレキサントの量を測定することによって、バイオアベイラビリティをインビボで決定する。同量および同濃度のスボレキサントを含有する他の処方物、例えば従来の賦形剤を用いた固形処方物と比較を行う。本発明の処方物を用いた場合の溶解の改善を調べるために、本発明の処方物または、対照としての従来の賦形剤を用いた処方物を含む他の処方物を用いて、水または人工胃液中での処方物の溶解を観察し、測定して、液体中のスボレキサントの濃度および溶解速度を決定し得る。
【0076】
[実施例1]
噴霧乾燥処方物の調製
処方物1:
噴霧乾燥処方物は、スボレキサント(10から20%w/w);任意の界面活性剤、例えば(1)2から4%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、(2)2.5%ビタミンE TPGS、(3)2%Tween80、(4)2%Span80または(5)2%クレモフォアELまたはこれらの界面活性剤の2以上の混合物などを含み;バランスは、HPMCAS−L、HPMCAS−MまたはHPMCAS−H(信越化学からAQOATとして購入)の何れかである。溶媒系、例えばアセトン、メタノール、および水と有機溶媒の混合液(0.5から18%w/v固形物)などの中で構成成分を溶解させるか、または懸濁し、次いで下記のように噴霧乾燥させた。
【0077】
溶液調製
スボレキサント、任意の界面活性剤およびポリマーを、アセトン、メタノールまたは、水と有機溶媒の混合液と次のように混合し、(構造性の懸濁液であり得る)溶液が得られた。薬物、界面活性剤およびポリマーを溶媒中で溶解させた。ポリマーはゆっくりと溶解し、インペラまたは磁石性撹拌バーおよび撹拌プレートを用いることなどによって激しく撹拌しながら長時間にわたりこれを溶媒に添加した。得られた溶液/懸濁液を噴霧乾燥前に少なくともさらに60分間撹拌した。
【0078】
噴霧乾燥プロセス1:
Niro SD Micro噴霧乾燥器で噴霧乾燥を遂行した。加熱乾燥窒素および処方物溶液を同時に二流体ノズルに供給し、次いでさらなる加熱ガスと一緒に、乾燥チャンバーにスプレーとして放出させ、その結果、急速蒸発が起こり、粒子が形成された。プロセッシングガスにより乾燥粒子をサイクロンに運び込み、次いで回収用のバッグフィルターチャンバーに運び込んだ。3つの処理速度を調節し、監視した:1)溶液供給速度、2)プロセッシング窒素流速および3)霧化窒素流速。外部蠕動ポンプによって溶液供給速度を調節したが、これは実験室スケールでは約5から20mL/分である。霧化窒素速度およびプロセッシング窒素速度は、霧化窒素に対して2から3kg/hrであり、プロセッシング窒素に対して20から30kg/hrであった。乾燥チャンバー排出口での目標プロセッシングガス温度は、溶媒系の沸点を僅かに下回ったが、30から70℃の範囲の温度は適正であることが明らかとなっており、(ノズルの排出口での)注入口チャンバー温度を調整して所望の排出口温度を得た。80から90℃の注入口温度設定点は標準的であった。生成物中の残存溶媒レベルは概して低かった(<1%w/w)。
【0079】
噴霧乾燥プロセス2
処理の構成は、1mmオリフィスの二流体ノズルを備えたNiro PSD−1延長チャンバー噴霧乾燥器において噴霧乾燥を行ったことを除き、プロセス1と同様であった。次の処理条件を調節または監視した:処方物溶液供給速度(2から7.6kg/hr)、プロセッシングガス流速(35から38mmH
2O)、霧化率(霧化ガス流速と供給速度との比)(0.9から2.8)、霧化圧力(0.25から1.5bar)、排出口ガス温度(43から70℃)および注入口ガス温度(61から134℃)。
【0080】
噴霧乾燥後の処理:
より小さい処理スケールで、2つの領域、サイクロンおよびバッグフィルターチャンバーで物質回収を行った。噴霧乾燥プロセス1から得られた標準的な平均粒径の範囲は、1から30μmであり、サイクロン回収領域から試料採取した場合、個々の粒子は<1μmから>100μmの間で測定された。バッグフィルター中の粒子の大部分は1μm以下であったが、この粒子は非常に凝集していた。噴霧乾燥プロセス2の条件下で、サイクロン回収チャンバーのみから粒子を回収し、標準的な平均粒径はより大きいものであり得、標準的には5から70μmの間の範囲である。
【0081】
噴霧乾燥粒子を次のように顆粒にした。粒子を適切なブレンダ−(VまたはBohle)中でアビセルなどの微結晶セルロース(充填剤)、ラクトース(充填剤)、クロスカルメロースナトリウム(崩壊剤)、コロイド状二酸化ケイ素(流動促進剤)およびステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)と混ぜ合わせた。次に、混ぜ合わせた粉末をローラー転圧して顆粒にし、これを顆粒外部の滑沢化に供し、カプセルに充填した。
【0082】
10%(w/w)スボレキサント、40%HPMCAS−LF、42.5%ラクトース一水和物、6%クロスカルメロースナトリウム、0.5%コロイド状二酸化ケイ素および1%ステアリン酸マグネシウムから構成される上述のように調製した処方物をカプセルに移し、各カプセルが50mgのスボレキサントを含有するようにした。1mg/kgの単回投与で3匹の空腹状態のビーグル犬のパネルにおいてこの組成物の薬物動態学的プロファイルを試験した。24時間にわたる血中のスボレキサントの薬物動態学的測定は、次の通りであった:AUC
0−24は52.3±19.1μM
*hrであり;C
maxは6.95±2.23μMであり;T
maxは1.0hrであり、1.0から2.0hrの範囲であった。
【0083】
比較のために、ポリマーがないかまたは噴霧乾燥プロセスを欠くスボレキサントを含有する処方物を次のように作製し、試験した。非ポリマー処方物は、25%スボレキサント、3%クロスカルメロースナトリウム、1%ステアリン酸マグネシウム、35.5%微結晶セルロースおよび35.5%ラクトースを含有し、これをローラーコンパクションによって調製し、圧縮して錠剤にした。単回5mg/kg用量を3匹の空腹状態のビーグル犬のパネルに投与し、次いで少なくとも24時間にわたりイヌの血中スボレキサント量を測定することによって、この組成物の薬物動態学的プロファイルを測定した。薬物動態学的データは次の通りであった:AUC
0−24は3.04±1.40μM
*hrであり、C
maxは0.34±0.10μMであり、T
maxは、2.0hrであり、1.0から2.0hrの範囲であった。薬物動態は、「従来の」処方物については、本ポリマー処方物に対するものほど良好ではない。
【0084】
[実施例2]
ホットメルト押出成型処方物の調製
ホットメルト押出成型によって次の2種類の処方物を作製した。量は重量%で表す。KollidonVA64は、約1.2:1のコモノマー比を有するポリビニルピロリジノンおよびポリ酢酸ビニルのコポリマーである。これはコポビドンとしても知られる。このガラス転移温度(T
g)は約110℃である。
【0085】
(1)スボレキサント、20%;Kollidon VA64、80%。
【0086】
(2)スボレキサント、20%;HPMCAS−LG、80%
処方物1
2つの構成成分を混ぜ合わせ、次いで混合物をツインスクリュー押出機に供給することによって、処方物1を作製した。2Lのビンを備えるBohleビンブレンダ−中でKollidon VA64ポリマーおよびスボレキサントを室温で合わせることによって、混合物を作製した。
【0087】
Thermo Prism 16mm L/D 40:1ホットメルトツインスクリュー押出機に押出前ブレンド物を供給した。押出機のバレルには、1から10まで付番された10箇所の温度ゾーンがあり、ゾーン1はバレルの入口端にあり、ゾーン10はダイス型のすぐ前にあった。ゾーン1は加熱せず、温度測定しなかった。ゾーン2から10のそれぞれには温度調節があり、これらのゾーンのそれぞれの温度を測定した。ダイス型の温度は調節しなかったが、測定し得る。供給口を通じて供給物をゾーン2に導入した。ゾーン4および5を横切って混合が起こるようにスクリューを設計した。ベント口を通過するとすぐに混合が終了した。K−Tronツインスクリュー重量計測供給器(gravimetric feeder)から約10g/分で押出前混合物を押出機の供給口に供給した。スクリュー速度は100rpmであった。ゾーン2から10の押出機における温度設定点のプロファイルは、ゾーン2から5、20℃;ゾーン6から10、130℃であった。これらのゾーンにおける実際の温度は、ゾーン2、22から23℃;ゾーン4、80℃;ゾーン6から10、180℃であった。起動中の圧力を避けるためにゾーン10を最初に190℃に設定し、次いで、押成型出が始まったら温度設定点を180℃に低下させた。ダイス型から出る溶融生成物の温度は200℃であった。ダイス型圧力の顕著な増加はなかった。押出成型物は透明であり、均一に見えた。次に、7500rpmで1722−0033スクリーン付きの、ナイフ構造、インパクトフォワード(Impact forward)付きのフィッツミルを用いて固形押出ポリマーを粉砕した。
【0088】
代替的な手順において、2つの構成成分を混ぜ合わせ、次いで混合物をツインスクリュー押出機に供給することによって、処方物を作製した。ビンブレンダ−中でコポビドンポリマーおよびスボレキサントを室温で合わせることによって、混合物を生成させた。押出前ブレンド物を40/1L/Dツインスクリュー押出機に供給した。押出機には、1から12まで付番された12箇所の温度ゾーンがあり、ゾーン1はバレルの入口端にあり、ゾーン10はバレルセクションの末端にあり、ゾーン11は単一オリフィスに対する流動様式を変化させるためのアダプターであり、ゾーン12はダイス型アダプターであった。水を冷却することによってゾーン1を低温に維持した。ゾーン2から12のそれぞれには温度調節があり、これらのゾーンのそれぞれの温度を測定した。サイドスタッファー(side stuffer)を通じて供給物をゾーン2に導入した。メルトシール(melt seal)がゾーン3で形成され、ゾーン4での湿気の排気が可能になるように、スクリューを設計した。ゾーン6および7を横切って混合が起こり、ゾーン8でさらなる湿気の排気が可能になった。ツインスクリュー重量計測供給器(gravimetric feeder)から押出前混合物を押出機の供給口に供給した。スクリュー速度は300rpmであった。ゾーン2から12に対する押出機における温度設定点のプロファイルは、ゾーン2、42℃;ゾーン3、100℃;ゾーン4、130℃ゾーン5から12、180℃であった。ダイス型から出る溶融生成物の温度は185℃であった。ダイス型圧力の顕著な増加はなかった。押出成型物は透明であり、均一に見えた。押出成型物質のガラス転移温度以下で溶融物とし、脆弱なガラスシートを形成させるために、10から12℃に冷却されたカウンター回転ロールを通じて押出成型物質を供給し、粗粉砕機に運び、破壊して小片にした。次に、40から45m/sの粉砕チップ速度で0.84mmスクリーン付きのハンマー構造がある衝撃式粉砕機を用いて押出成型物をさらに粉砕した。
【0089】
処方物2
処方物1に対して使用したものと同じ手順を用いて処方物2を作製した。処方物1の押出成型と同じ全般的条件下で押出成型を行った。唯一の変更点は、ゾーン6から10の温度を140℃に設定し、ゾーン10を最初に150℃に設定し、その後140℃に戻したことであった。ダイス型から出たときの溶融押出成型物の温度は140℃であった。ダイス型圧力は低かった。処方物1に対して使用したものと同じ方法を用いて押出成型物を粉砕した。
【0090】
[実施例3]
ホットメルト押出成型による錠剤処方物の調製
8%のスボレキサントを含有する錠剤を作製するための処方物組成を次の表で示す。本発明によると、本組成物はより広く変動し得る。
【表1】
【0091】
使用され得る構成成分量の代表的な範囲およびそれらの機能は次の通りである:スボレキサント(API)、0.5から40%;5から30%コポビドン(安定化ポリマー)、0.25から40%;微結晶セルロース(充填剤)、5から95%;ラクトース(充填剤)、5から95%;クロスカルメロースナトリウム(崩壊剤)、1から10%;ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)。スボレキサントおよびコポビドンの量の代表的な範囲は、それぞれ1から40%および5から90%である。
【0092】
本発明の実施形態において、これらのポリマーおよび賦形剤の代わりに代替物を使用し得る。例えば、商品名またはブランド名が使用される場合、他のブランドまたは商品名を有する同じ物質も使用し得る:安定化ポリマー−オイドラギット(アクリレート−メタクリレートコポリマー)、PVP、HPC、HPMC、HPMCP、HPMCAS、CAS、CAPおよびCAT;界面活性剤−SDS、クレモフォア(様々なグレード)、ポリソルベート(様々なグレード)、ソルトール(Solutol)、ゲルシール(Gelucires)、スパン(Spans)(様々なグレード)、PEG;充填剤−リン酸二カルシウム、ケイ化微結晶セルロース、デンプン、マンニトール;崩壊剤−クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、デンプン;任意の着色剤−赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、二酸化チタン、FD&C Blue#2;および任意のコーティング−Opadry I、Opadry II、Opadry II HP。
【表2】
【表3】
【0093】
次の手順によりホットメルト押出成型によって上記表中の処方物を作製した。バレルセクションの上部供給口を通じて押出機バレルゾーン1でKtron K20ツインスクリュー粉末供給装置を用いてスボレキサントを供給した(2kg/hr)。バレルセクションの上部ベント口があるツインスクリューLeistritzサイドスタッファー(side stuffer)を通じて、押出機バレルゾーン2でKtron K20ツインスクリュー粉末供給装置を用いて、ポリマー(Kollidon VA64)を供給した(8Kg/hr)。
【0094】
1つの通気口(または2つの通気口)がバレルゾーン7、8および/または9にあった。これらを周囲に通気して、水蒸気を除去した。残りのバレルセクションを閉じた。重量の変化を連続的に監視するために、全ての供給装置をロードセルに置く。バレル温度はゾーン1で室温であり、ゾーン3または4で温度は約130℃であった。ゾーン5から10を約180℃に加熱した。
【0095】
ThermoElectron製の冷却したロールユニット上に材料を押し出すために、4穴ストランドダイスを使用した。冷却したロールユニットは、脆弱な押出成型物シートを生成させるために冷水を使用し、次にこれを「キブラー(kibbler)」(基本的に、ローターに運ばれる脆弱なシートにおいて強打する垂直ペグ付きのローター)により連続的に細切して粒子にした。
【0096】
下流の処理/錠剤化前にフィッツ粉砕ミルを用いて、上記キブラー(kibbler)からの粒子を粉砕した。次に、粉砕した押出成型物を適切なブレンダ−(VまたはTote)中で微結晶セルロース(例えばアビセル)(充填剤)、ラクトース(充填剤)およびクロスカルメロースナトリウム(崩壊剤)と混ぜ合わせた。次いでブレンド物をステアリン酸マグネシウムで滑沢化した。滑沢化したブレンド物を圧縮して錠剤にした。圧縮した錠剤は被覆してもよい。
【0097】
3匹の空腹状態のビーグル犬のパネルに5mg/kgの用量で本処方物の単回投与を行い、少なくとも24時間にわたり血中スボレキサント濃度を測定することによって、スボレキサントのこの組成物の薬物動態学的プロファイルを測定した。スボレキサントの薬物動態学的測定は次の通りであった:AUC0−24(μM−hr)2.82±0.493;Cmax(μM)0.587±0.182;Tmax(hr)1.0(0.5−2.0)。
【0098】
健康なヒト男性に本処方物の単回投与を行うことによってもスボレキサントのこの組成物の薬物動態学的プロファイルを試験した。この試験において、スボレキサントのこの組成物は、スボレキサントの処方物が食物(高脂肪食など)とともに投与される場合の食物の影響の低下を促した。この臨床試験の第一の治療期間において、スボレキサントのこの組成物の単回の経口用量(40mg)を7名の空腹状態(8時間絶食後)の対象に投与し、スボレキサントのこの組成物の単回の経口用量(40mg)を標準的な高脂肪の朝食後に7名の異なる対象に投与した。この臨床研究の第二期に、各治療群の7名の対象を入れ替え、他方の治療を受けさせた。
【0099】
次の表で示されるように、スボレキサントのこの組成物に対するAUC
0−∞およびC
maxは、空腹状態での投与と比較して、高脂肪朝食との投与後において不変のままであった。AUC
0−infに対する、満腹/空腹GMRおよび90%信頼区間は、0.98(0.90、1.07)であった。C
maxに対する、満腹/空腹GMRおよび90%信頼区間は、1.09(0.90、1.33)であった。中央値T
maxは、高脂肪朝食後3.0時間であり、空腹状態で2.0時間であった。高脂肪朝食後に投与した場合、平均の見かけの最終t
1/2は、大部分は空腹状態での投与と比較して変化なく、t
1/2値はそれぞれ11.8および10.9時間であった。
【表4】
【0100】
本発明のある特定の実施形態を参照して本発明を記載し、説明してきたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、手順およびプロトコールの様々な適応、変更、改変、置換、削除または追加がなされ得ることを認識するであろう。