(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263178
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】分配水素抽出システム
(51)【国際特許分類】
C01B 3/00 20060101AFI20180104BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20180104BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20180104BHJP
【FI】
C01B3/00 Z
C01B3/56 Z
H01M8/06 R
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-524335(P2015-524335)
(86)(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公表番号】特表2015-524786(P2015-524786A)
(43)【公表日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】US2013051286
(87)【国際公開番号】WO2014018389
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年6月20日
(31)【優先権主張番号】61/675,041
(32)【優先日】2012年7月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505163578
【氏名又は名称】ヌヴェラ・フュエル・セルズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】ポリカ,ダリル
(72)【発明者】
【氏名】ブランシェ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】リー,チージャン
【審査官】
小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−212575(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0137245(US,A1)
【文献】
米国特許第03406496(US,A)
【文献】
特開2003−095612(JP,A)
【文献】
特開2004−079262(JP,A)
【文献】
特開2002−020102(JP,A)
【文献】
特表2004−534186(JP,A)
【文献】
特表2010−500272(JP,A)
【文献】
特開2006−169357(JP,A)
【文献】
特表2001−502105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00−3/58
H01M 8/0606
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含む気体混合物を圧縮する圧縮器;
圧縮された気体混合物を受容する脱硫ユニット;
脱硫ユニットからイオウが減少した気体混合物を受容する水素抽出装置;及び
抽出された水素ガスを受容する水素貯蔵装置;
を含む水素抽出システム。
【請求項2】
脱硫ユニットによって、圧縮された気体混合物中に含まれるイオウの少なくとも一部を除去してイオウが減少した気体混合物を生成させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
水素抽出装置によって、イオウが減少した気体混合物中に含まれる水素の少なくとも一部を除去して抽出された水素ガスを生成させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
水素抽出システムが、天然ガス及び水素ガスを含む気体混合物を供給するネットワークに流体接続されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
脱硫ユニットが、イオウが減少した気体混合物から水素の少なくとも一部を除去した後の水素抽出装置からのイオウが減少した気体混合物の供給流を更に受容し、イオウが減少した気体混合物の供給流を圧縮された気体混合物から除去されるイオウと混合し、混合した気体混合物をネットワークに戻す、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
水素抽出装置が圧力スイング吸着装置を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
圧縮器から排出される圧縮された気体混合物を受容する選択膜装置を更に含み、選択膜装置が、圧縮された気体混合物の水素濃度を増加させる水素選択膜を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
選択膜装置によって水素富化流体を脱硫ユニットに供給する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
水素抽出装置が電気化学スタックを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
電気化学スタックが、抽出された水素ガスを少なくとも部分的に精製及び圧縮するように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
抽出された水素ガスを受容し、電気を生成させる燃料電池を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
気体混合物を圧縮し;
圧縮された気体混合物中に含まれるイオウの少なくとも一部を除去して、イオウに富む流れ及びイオウが減少した混合物を形成し;
水素抽出装置において脱硫ユニットからのイオウが減少した混合物を受容し;
イオウが減少した混合物中に含まれる水素の少なくとも一部を除去して、水素貧化混合物及び水素ガスを形成し;そして
水素ガスを水素貯蔵装置に供給する;
ことを含む、天然ガス及び水素を含む気体混合物から水素を抽出する方法。
【請求項13】
ネットワークから気体混合物を受容し;
水素貧化混合物をイオウに富む流れと混合して再硫化混合物を形成し;そして
再硫化混合物をネットワークに供給する;
ことを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ネットワークが既存の天然ガスネットワークを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
膜を通して水素を選択的に通過させて水素ガス濃度を増加させることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
貯蔵された水素ガスを燃料電池に供給して電気を生成させることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
(a)水素ガスの質量流量を求め;
(b)天然ガスの質量流量を求め;
(c)水素ガスの質量流量に、水素ガスに関する因子を乗じ;
(d)天然ガスの質量流量に、天然ガスに関する因子を乗じ;そして
(e)工程(c)及び工程(d)の値を合計する;
ことを含む、気体混合物のためのエネルギー価格を決定することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
水素ガス及び天然ガスを含む気体混合物の流量から水素ガスの質量流量を減じることによって天然ガスの質量流量を求める、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
水素ガスに関する因子が水素ガスに関する市場価値因子を含み、天然ガスに関する因子が天然ガスに関する市場価値因子を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
水素ガスに関する因子が、ネットワークへの水素ガスの戻りによってネットワークに加えられる値を計上する因子を含み、天然ガスに関する因子が、ネットワークからの水素ガスの抽出によってネットワークから減じられる値を計上する因子を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年7月24日出願の米国仮特許出願61/675,041(その全部を参照として本明細書中に包含する)に対する優先権を主張する。
【0002】
[0001]本発明は、概して分配水素抽出のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
[0002]幾つかのエネルギー源は現在ネットワークによって分配されており、一方、他のエネルギー源はバルクで供給され、現地で貯蔵される。例えば、電気及び幾つかのガスのネットワークは、居住世帯及び商業運転にエネルギーを供給するために電力線及びパイプラインを用いている。これに対して、石油及び幾つかの他のガスはトラックによって現地の貯蔵施設に輸送される。しかしながら、規制の変更、環境的考慮、及び経済的ファクターが、エネルギー源の将来の分配に影響を与えるであろう。
【0004】
[0003]水素ガスは、通常はタンカーを用いて分配され、現地の大型タンク又は特定の分配センター内で貯蔵される。他の水素分配システムにおいては既存のガスネットワークを用いることができ、ここでは水素を既存のネットワークによって分配するために輸送ガスに加える。ネットワークに接続される抽出システムによって、必要に応じて輸送ガスから水素を抽出して、輸送及び貯蔵コストを減少させることができる。
【0005】
[0004]水素分配の1つの提案されている方法は、天然ガス(NG)又は合成NG(SNG)ネットワークを用いる。NGの通常の消費者に大きな影響を与えることなく、50%以下の水素をNGネットワークに加えることができる。幾つかの提案には、既存のNGネットワークに約10%〜約20%の水素を加えることが含まれる。水素を再生可能に又は化石燃料から製造して既存のNGネットワークに加えることができ、そこで数多くの消費者に分配することができる。複数の水素抽出システムを既存のネットワークに接続して、必要に応じて水素を抽出するように構成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0005]現在の水素生成システムは、幾つかの理由のために上記のネットワークに関して用いるのには好適ではない。殆どの現在の水素生成システムは工業規模の運転用に構成されており、小規模の使用には好適ではない。これらは、大型で、高価で、運転するのが複雑で、或いは大規模なメンテナンスが必要である可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0006]本発明は、既存の水素生成システムの1以上の欠点を克服することに関する。更に、本明細書に記載する抽出システムによって生成される水素は、その場で貯蔵するか、専用の水素分配システムに供給するか、或いはその場で使用することができる。例えば、抽出された水素を燃料電池に供給して、電気を生成させるために用いることができる。
【0008】
[0007]本発明の他の形態は、水素ガスの使用量を監視して価格設定することに関する。例えば、水素ガスはNGよりも大きな価値を有していると思われるので、水素ガスの消費量をNGの消費量とは別に監視することによって、消費されるガスの実際のコストがより正確に計上される。これはブレンドされた燃料の収益化にも影響を与える可能性がある。本明細書は、使用時に水素及びNGの消費量の両方を監視するシステム及び方法を記載する。
【0009】
[0008]本発明の一形態は水素抽出システムに関する。抽出システムには、水素を含む気体混合物を圧縮する圧縮器、及び圧縮された気体混合物を受容する脱硫ユニットを含ませることができる。システムにはまた、イオウが減少した気体混合物を受容する水素抽出装置、及び抽出された水素ガスを受容する水素貯蔵装置を含ませることもできる。
【0010】
[0009]本発明の他の形態は、天然ガス及び水素を含む気体混合物から水素を抽出する方法に関する。この方法には、気体混合物を圧縮し、圧縮された気体混合物中に含まれるイオウの少なくとも一部を除去して、イオウに富む流れ及びイオウが減少した混合物を形成することを含ませることができる。この方法にはまた、イオウが減少した混合物中に含まれる水素の少なくとも一部を除去して、水素貧化混合物及び水素ガスを形成し、水素ガスを水素貯蔵装置又は他の使用に供給することを含ませることもできる。
【0011】
[0010]本発明の他の形態は、エネルギー価格を決定する方法に関する。この方法には、(a)水素ガスの質量流量を求め、そして(b)天然ガスの質量流量を求める;ことを含ませることができる。この方法にはまた、(c)水素ガスの質量流量に、水素ガスに関する因子を乗じ;(d)天然ガスの質量流量に、天然ガスに関する因子を乗じ;そして(e)工程(c)及び工程(d)の値を合計する;ことを含ませることもできる。
【0012】
[0011]本発明の更なる目的及び有利性は、部分的には下記の記載において示され、部分的には記載から明らかになり、或いは本発明の実施によって知得することができる。本発明の目的及び有利性は、特に特許請求の範囲において示される構成要素及び組み合わせによって認識及び実現されるであろう。
【0013】
[0012]上記の一般的な記載及び下記の詳細な記載は両方とも例示及び説明のみのものであり、特許請求されているシステム、装置、及び方法を限定するものではないことを理解すべきである。
【0014】
[0013]明細書中に含まれてその一部を構成する添付の図面は、本発明の幾つかの態様を示し、明細書と一緒に本発明の原理を説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】[0014]
図1は、代表的な態様による水素分配システムの概要図である。
【
図2】[0015]
図2は、代表的な態様による水素抽出システムの概要図である。
【
図3】[0016]
図3は、他の代表的な態様による他の水素抽出システムの概要図である。
【
図4】[0017]
図4は、他の代表的な態様による
図3の水素抽出システムの概要図である。
【
図5A】[0018]
図5Aは、代表的な態様による監視システムの概要図である。
【
図5B】[0019]
図5Bは、他の代表的な態様による
図5Aの監視システムの概要図である。
【
図5C】[0020]
図5Cは、他の代表的な態様による
図5Aの監視システムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0021]ここで本発明の代表的な態様について詳細に説明し、これらの例を添付の図面において示す。可能な限り、同じか又は類似の構成要素を指すためには、図面全体を通して同じ参照番号を用いる。
【0017】
[0022]
図1は、代表的な開示される態様による水素分配システム10の概要図である。水素分配システム10には、流体を種々の場所に分配するネットワーク20を含ませることができる。ネットワーク20は、種々の液体又は気体の混合物、或いは単一のタイプの液体又は気体を輸送するように設計することができる。例えば、ネットワーク20に既存の気体分配システムを含ませることができる。
【0018】
[0023]種々のパイプライン、導管、流路、並びに他の流体輸送装置及びシステムによって、ネットワーク20の少なくとも一部を形成することができる。ネットワーク20にはまた、流体を取り扱うように設計されている種々の装置(図示せず)を含ませることもできる。これらの装置には、貯蔵施設、ポンプ場、バルブ、フィルター、計量装置、制御システム、監視システム、或いは流体又は気体の輸送に関して用いられる他の装置を含ませることができる。
【0019】
[0024]幾つかの態様においては、ネットワーク20には、天然ガス(NG)を住宅又は商業施設に供給する天然ガス分配システムを含ませることができる。NGは幾つかの気体種の混合物を含んでいてよい。ネットワーク20には、NGなどの種々の流体を受容するように構成されるパイプライン30を含ませることができる。更に、水素源40をパイプライン30に流体接続して、ネットワーク20に水素を供給することができる。
【0020】
[0025]水素源40には、水蒸気改質器(図示せず)、又は水素を生成させるように構成されている他の装置を含ませることができる。水蒸気改質器には、電気、水、及びパイプライン30からのNGを供給することができる。電気は、従来のエネルギー源、或いは風力エネルギー又は太陽エネルギーのような代替のエネルギー源によって供給することができる。水蒸気改質器には、中央ノードにおいて水素を大流量又は高圧パイプライン中に注入する大型改質器(例えば>2000kg/日)を含ませることができる。幾つかの工業用改質器は、一日あたり約600トン以下の水素を生成させることができる。他の態様においては、水蒸気改質器には、使用者の住居に配置される小型改質器(例えば<5kg/日)を含ませることができる。大型と小型の間の任意の規模の他の水蒸気改質器を用いることもできる。
【0021】
[0026]水素の他の供給源には、電気、再生可能な電気(風力、太陽、地熱)、再生できない電気(石炭、石油、ガス、原子力)を用いる水の電気分解、生物学的生成、直達日射触媒反応による水の分解、又は廃水処理によって水素を生成させるために用いるシステム又は方法を含ませることができる。
【0022】
[0027]複数の水素源40をネットワーク20全体に配置して、必要な場合にはパイプライン30に水素を供給するように構成することができる。幾つかの態様においては、パイプライン30内の気体混合物60は、80%より多いNG及び20%未満の水素であってよい。気体混合物60はまた、5%未満の水素、及び10%未満の水素を含んでいてもよい。気体混合物60は、幾つかの場合においては75%以下の水素を含んでいてよい。また、約100%の水素を有する気体混合物60を分配するための専用のシステムをネットワーク20に含ませることができることも意図される。更に、1以上の水素抽出システム70をネットワーク20に接続することができる。
【0023】
[0028]
図2は、代表的な開示される態様による水素抽出システム(HES)70の概要図である。HES70は、気体混合物60から水素を抽出するように構成することができる。幾つかの態様においては、HES70には、水素ガスを分離、精製、及び/又は圧縮するコスト効率の良いシステムを含ませることができる。比較的少数の構成要素を与えれば、HES70は小さい容積及び/又は小さい設置面積を占めるように構成することができる。このように、HES70は住居用又は小規模の商業用途において用いることができる。
【0024】
[0029]例えば、HES70は、1台の燃料電池電気自動車(FCEV)に対して約0.5kg/日、又は2台のFCEVに対して約1kg/日の水素を供給するように構成することができる。水素ガスは次に、FCEV内に搭載して貯蔵するために必要な可能性がある約350〜約700baraの間の圧力に圧縮することができる。HES70は、2台より多いFCEVの車隊のために必要な速度で水素を供給するような寸法にすることができる。他の例においては、HES70は、約4kg/日(例えば住居用)、約25kg/日(例えば共同住宅用)、約50kg/日(例えば工業用建物用)、又は約250kg/日(例えば大型の製造又は分配センター)、或いは約1,500〜約2,500kg/日(例えばサービスステーションにおける燃料電池自動車の燃料補給)のような据え置き型電気生成のための燃料電池に燃料供給するように構成することができる。
【0025】
[0030]HES70は、供給導管80を介してパイプライン30に流体接続することができる。
図5A〜5Cに関して下記に説明するように、供給導管80には、パイプライン30からHES70への気体混合物60の流れを監視する計量装置(400、しかしながら
図2においては示していない)を含ませることができる。供給導管80は、流体を圧縮するように構成されている圧縮器90に流体接続することができる。圧縮器90には、ポンプ、ブロワー、又は天然ガスに関して運転するのに好適な他の圧縮装置を含ませることができる。幾つかの態様においては、圧縮器90は流体をポンプ移送するのみであってよく、流体を圧縮する必要がない可能性がある。特に、圧縮器90はHES70の少なくとも一部を通して流体混合物をポンプ移送するように構成することができる。HES70が低い圧力損失を有する場合には、圧縮器90はブロワーとして運転することができる。
【0026】
[0031]圧縮器90からの排出物は、脱硫ユニット100に供給される流体から少なくとも多少のイオウを除去するように構成されている脱硫ユニット100中に送ることができる。種々のタイプの脱硫ユニット100をHES70と共に運転することができる。例えば、脱硫ユニット100には、再生式の熱スイング吸着(TSA)タイプのものを含ませることができる。TSAは、脱硫ユニット100から排出される流れから除去されるイオウを、パイプライン30に戻される流れの中に加えて戻すことができるように構成することができる。かかる構成によって、例えば脱硫触媒の交換のようなメンテナンスの必要性を少なくするか又は無くすことができる。
【0027】
[0032]幾つかの態様においては、HES70は圧縮器90を含まなくてよい。例えば、気体混合物60は、十分な圧力でパイプライン30から直接、脱硫ユニット100に供給することができる。特に、気体混合物60は約100〜約1,000psigで供給することができる。かかる圧力又はこれより高い圧力においては、気体混合物60は、脱硫ユニット100中に送る前に更なる加圧が必要ない可能性がある。
【0028】
[0033]脱硫ユニット100によって流体からイオウを少なくとも部分的に除去した後、脱硫ユニット100によって排出されるイオウが減少した気体混合物の供給流を水素抽出ユニット110に送って水素を抽出することができる。水素抽出ユニット110によって排出される抽出された水素ガスは、1以上の貯蔵容器130内に貯蔵することができる。
【0029】
[0034]幾つかの態様においては、水素抽出ユニット110には、水素を分離、精製、及び/又は圧縮するように構成されている電気化学スタック(EHC)120又は同様の装置を含ませることができる。EHC120は、幾つかの他の形態の抽出ユニット110よりも簡単でコスト効率の良いシステムを与えるように構成することができる。例えば、EHC120は、可動部品を有しないようにすることができ、或いは他の形態の抽出ユニット110よりも少ない構成要素を有するようにすることができる。更に、EHC120は、圧力スイング吸着器システムよりも低いノイズ又は小さい設置面積を有するようにすることができる。
【0030】
[0035]幾つかの態様においては、EHC120によって排出される熱は、脱硫ユニット100又は水素抽出システム70の他の構成要素に供給することができる。この熱は、上記のTSAベースの脱硫ユニット100に関する熱再生プロセスを駆動するために用いることができる。
【0031】
[0036]水素抽出ユニット110によって排出される水素が減少した流体混合物は、脱硫ユニット100に供給して戻すことができる。脱硫ユニット100内において、水素が減少した流体混合物を、脱硫ユニット100によって抽出されたイオウと再混合することができる。得られる流体はパイプライン30中に供給して戻すか、又は所望の場合には現地で用いることができる。
【0032】
[0037]
図3は、他の代表的な開示される態様による他の水素抽出システム(HES)170の概要図である。上記の態様と同様に、HES170には圧縮器190及び脱硫ユニット200を含ませることができる。例えば、水素富化天然ガスを圧縮器190によって圧縮して、選択膜装置180に供給することができる。選択膜装置180は水素に関して選択的であってよく、流体の水素濃度を50体積%より高い値に増加させるために用いることができる。
【0033】
[0038]選択膜装置180は、供給側と透過側との間の水素分圧の差に基づいて水素を分離するために用いることができる。選択膜装置180には膜185を含ませることができ、膜185には、中空繊維束、螺旋巻回、又は平坦シートなどの種々の形態の緻密なポリマー膜を含ませることができる。かかる膜は、Air Products、BOC、又はAir Liquideのような専門の供給業者から商業的に入手できる。選択膜装置180にはまた、無機水素選択膜を含ませることもできる。
【0034】
[0039]選択膜装置180から排出される流体は、上記の脱硫ユニット200に供給することができる。他の態様においては、HES170は脱硫ユニット200を有しない。選択膜装置180からの排出流は、圧力スイング吸着(PSA)装置210に直接供給することができる。
【0035】
[0040]PSA210は、選択膜装置180からの透過流を更に精製して、水素純度を90%より高く、95%より高く、又は99%より高い値に増加させるために用いることができる。PSA210は、複数の吸収床、及び床を接続する配管ネットワークを用いることができる。吸着剤(図示せず)は、ビーズ形態又は構造化形態であってよい。回転弁、回転床、高速サイクルPSA、又は当該技術において公知の他の装置を用いることもできる。
【0036】
[0041]
図4は、他の代表的な開示される態様による他の水素抽出システム(HES)270の概要図である。上記の態様と同様に、HES270には、圧縮器290及び脱硫ユニット300を含ませることができる。水素富化流体を、圧縮器290によって圧縮して脱硫ユニット300に供給することができる。
【0037】
[0042]脱硫ユニット300には、気体混合物を選択膜装置280中に供給する前に気体混合物流からイオウ種を少なくとも部分的に除去するように構成されている多床脱硫装置を含ませることができる。脱硫ユニット300内の一部の床は吸着モードで運転することができ、他の床は再生モードで運転することができる。脱着されたイオウ種は、上記と同様に選択膜装置280及び/又は圧力スイング吸収(PSA)装置310から排出される戻りガスの一部を用いてパイプライン30に戻すことができる。
図4に示されるように、選択膜装置280から排出される流体は、PSA310に供給することができる。他の態様においては、HES70、170、270の種々の構成要素を、流体を他の構成要素から受容するか又は流体を他の構成要素に供給するように異なって構成することができる。
【0038】
[0043]
図5A〜Cは、幾つかの代表的な態様による監視システム390の種々の構成を示す。監視システム390は、水素ガス混合物の流れを監視するように構成することができる。例えばプロセッサー、メモリー、通信システム等のような種々の電子コンポーネント(図示せず)をシステム390において用いることができる。監視システム390にはまた、パイプライン30に流体接続され、パイプライン30から気体混合物の供給流を受容するように構成される計量器400を含ませることもできる。計量器400はまた、水素抽出システム(HES)470に接続することもできる。
【0039】
[0044]
図5A〜Cにおいては計量器400を示しているが、流量を測定するために種々の他の装置又は方法を用いることができる。例えば、計量器400に伝統的な流量計又はトータライザーを含ませることができる。他の態様においては、HES470の1以上の構成要素を用いて、HES470へ投入されるか又はこれから排出される1種類以上の気体の流量を監視することができる。
【0040】
[0045]上記で説明したように、HES470から抽出される水素はその場で貯蔵するか、或いはこれを用いて燃料電池410又は水素分配ネットワーク(図示せず)に水素を供給することができる。HES470から排出される水素貧化天然ガスは、天然ガス(NG)ユニット420に供給することができる。NGユニット420には、例えば熱源のようなNGを用いて運転するように構成される種々の家庭用又は商業用装置を含ませることができる。幾つかの態様においては、HES470から排出される水素又はNGは、パイプライン30に戻すことができる。他の態様においては、EHC120を用いて水素流を求めることができる。
【0041】
[0046]水素はそれを輸送するのに用いるNGよりも価値があると思われる。したがって、ユーザーは、彼らがその一部しか消費しない場合には、気体混合物全体に対して代価を払うよりも、彼らがどのくらい多くの水素又はNGを消費するかに基づいて請求されることを好むであろう。NG又は水素のいずれかのユーザーの消費量に基づいて、エネルギー消費量に関する異なる価格を決定することができる。
【0042】
[0047]
図5Aは、消費者がパイプライン30によって供給される気体混合物からNG及び水素ガスの両方を抽出する場合のシナリオを示す。例えば、NGはNGユニット420に供給することができ、水素ガスは燃料電池410に供給することができる。投入流量及び排出流量のような種々の流量の分析に基づいて貨幣的価値を決定することができる。また、下記に示す計算式を修正して1以上の流れの種々の置換を含ませることができる。
【0043】
[0048]
図5Aに示すシナリオに関して消費者に請求される価格は、2以上の計算値の合計又は等価決定であってよい。例えば、それぞれの計算値は、消費されたエネルギーにそのエネルギー形態に関する市場価値を乗じた値に比例させることができる。以下の等式(式1)を用いてエネルギー価格を決定することができる。
【0044】
エネルギー価格=V
H2×m
H2+V
NG×(cfm−m
H2)
(式中、V
H2は水素ガスに関する市場価値因子を表し、m
H2は水素ガスの質量流量を表し、V
NGはNGに関する市場価値因子を表し、cfmは計量器400から読み取られる全質量流量を表す)
[0049]
図5Bは、消費者がパイプライン30によって供給される気体混合物から水素ガスのみを抽出し、全てのNGをパイプライン30に戻すシナリオを示す。上記で説明したように、消費者に請求される価格は、2以上の計算値の合計であってよい。第1の計算値は、消費されたエネルギーに水素の市場価値を乗じた値に比例させることができる。第2の計算値は、パイプライン30へのNGの戻りによって減じられるエネルギー価値に比例させることができる。以下の等式(式2)を用いてエネルギー価格を決定することができる。
【0045】
エネルギー価格=V
H2×m
H2+F
depletion×(cfm−m
H2)
(式中、F
depletionは、消費者の水素ガスの抽出によってNGネットワークから減じられる価値を計上する因子を表し、他の変数は式1に関して上記に記載した通りである)
[0050]
図5Cは、消費者がパイプライン30によって供給される気体混合物からNGのみを抽出し、全ての水素ガスをパイプライン30に戻すシナリオを示す。消費者へ請求される価格は、2つの計算値の間の差にすることができる。第1の計算値は、消費されたエネルギーにNGに関する市場価値を乗じた値に比例させることができる。第2の計算値は、パイプライン30への水素ガスの戻りによって加えられるエネルギー価値に比例させることができる。以下の等式(式3)を用いてエネルギー価格を決定することができる。
【0046】
エネルギー価格=V
H2×(cfm−m
H2)−F
addition×m
H2
(式中、F
additionは、消費者の水素ガスの戻しによってNGネットワークに加えられる価値を計上する因子を表し、他の変数は式1に関して上記に記載した通りである)
[0051]本発明の他の態様は、本明細書及び本明細書において開示する概念の実施を考察することによって当業者に明らかになるであろう。例えば、NG以外の他のタイプの気体又は流体を、上記の発明に関して用いることができる。更に、上記のシステムの1以上の機能又は構成要素を単一のユニットに組み合わせることができる。更に、上記に記載のものと異なるパラメーターを用いるが、同様の概念又は原理を用いる異なる等式又はアルゴリズムを用いることができる。明細書及び実施例は例示のみのものと考えられ、本発明の真の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示されると意図される。