特許第6263180号(P6263180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263180特にDNA含有の試料のための試料採取装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263180
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】特にDNA含有の試料のための試料採取装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/12 20060101AFI20180104BHJP
   C12M 1/30 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   G01N1/12 B
   C12M1/30
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-525767(P2015-525767)
(86)(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公表番号】特表2015-530565(P2015-530565A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2013002264
(87)【国際公開番号】WO2014023399
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2016年7月13日
(31)【優先権主張番号】102012015706.1
(32)【優先日】2012年8月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502302721
【氏名又は名称】プリオニクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】ラルディ,エリージョ
(72)【発明者】
【氏名】シュタム,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ホステラー,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ブラーザー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】リューエック,アンドレアス
【審査官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−535346(JP,A)
【文献】 特開平07−270410(JP,A)
【文献】 特開2003−014733(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0156962(US,A1)
【文献】 米国特許第03712296(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0077046(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/44
G01N 33/48−33/98
C12M 1/30
A61M 35/00
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の保持装置(12)の自由端に設けられた試料収集領域(11)を備え、該試料収集領域(11)は、試料採取装置から分断可能に構成され、NA含有の試料のための試料採取装置(10)において、
前記保持装置(12)は、長手方向視で、遠位端から少なくとも1つの長さ領域にわたって近位の方向へ延びる内側の切欠き(15)を備える近位の区域(13)と、前記切欠き(15)と遠位で直線上に並ぶように向くスリーブ(14)と、を有しており、
前記近位の区域(13)と前記遠位のスリーブ(14)とは、前記内側の切欠き(15)および前記スリーブ(14)に対してわずかなクリアランスをもって挿入されたピン(16)を介して相互に結合されており、
前記試料収集領域(11)は、長尺状のアタッチメント(17)に配置され、
前記アタッチメントの自由端は、同じくわずかなクリアランスをもって前記スリーブ(14)の遠位端に挿入されており、
前記ピン(16)、前記スリーブ(14)、および前記内側の切欠き(15)の寸法は、前記試料収集領域(11)が前記スリーブ(14)の遠位端よりも遠位側に配置され前記試料を採取できるときに前記近位の区域と前記スリーブとの安定した結合が成立するように相互に調整されており、
記内側の切欠き(15)、前記スリーブ(14)、前記ピン(16)、および前記アタッチメント(17)の長さは、前記アタッチメント(17)が近位の方向へスライドしたときに、前記ピン(16)が前記スリーブ(14)に対して相対的に前記切欠きの中へ完全に差込可能であるように相互に調整されていることを特徴とする試料採取装置。
【請求項2】
前記内側の切欠き(15)、前記スリーブ(14)、前記ピン(16)、および前記アタッチメント(7)の寸法は、前記ピン(16)および/または前記アタッチメント(7)が前記スリーブ(14)および/または前記内側の切欠き(15)へ、プレス嵌めで収容されるように相互に調整されていることを特徴とする、請求項1に記載の試料採取装置。
【請求項3】
前記ピンおよび/または前記アタッチメントは、前記スリーブおよび/または前記内側の切欠きの中で嵌合式結合により、止結合により固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の試料採取装置。
【請求項4】
前記内側の切欠きの中での前記ピンの相対的なスライドを制限するロック部材(19)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の試料採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項に記載されている装置に関する。
【背景技術】
【0002】
当分野に属する装置は特に法医学の分野で用いられ、あるいは、その他の医療上の用途でも用いられている。このような装置は試料物質を採取ないし保全する役目を果たし、その後に、試料物質が研究室での後続のステップで分析される。
【0003】
試料採取のために適したこのような種類の装置は、専門用語ではスワブ、綿棒、あるいはフォレンジック小棒とも呼ばれる。このような装置は、通常、小棒状の長尺状の保持領域を有していて、該保持領域により、保持領域の遠位端に配置された試料収集領域を試料採取のときに動かすことができる。試料収集領域はたとえば綿球で構成されていてよい。あるいは、たとえば毛房状にした不織布等のこれ以外の材料も考えられる。重要なのは、研究室で処理されるまで試料を恒常的に受容しておき、その後に分析の過程で処理のときに適当な緩衝剤等によって再び放出をすることができる材料で、試料収集領域が構成されていることだけである。
【0004】
たとえば法医学的な試料物質の処理の1つの主要な側面は、すでに上で述べたとおり、研究室での分析にある。そこでは、たとえば遺伝子分析、免疫学分析、またはその他の分析を行うことができる。
【0005】
通常の場合、研究室で検査をするために試料収集領域が容器の中に移され、その中では、含まれている試料の抽出だけが行われるか、または、それ以外の前処理もすでに追加的に実施される。これは、たとえばいわゆるスピンバスケットであってよく、あるいは、その目的のために意図されるそれ以外のあらゆる研究室用容器、たとえばエッペンドルフチューブなどであってよい。
【0006】
研究室での後続する前処理の枠内においては、長尺状の保持装置が邪魔になる。したがって普通は処理の前に、保持装置からの試料収集領域の分断が行われる。その際には、分断の枠内で試料収集領域の汚染が生じないように慎重に注意を払わなければならない。さらには研究室ロジスティクスの枠内で、および通常は比較的大量の処理されるべき試料があるという観点からも、大幅な自動化が望まれる。
【0007】
この関連において、保持装置と取外し可能に結合された試料収集領域を有する試料採取装置が知られている。さらに、特許文献1から公知のこれに相当する装置では、研究室での前処理のために使用される容器が、容器への試料収集ゾーンの挿入を許容するが、容器から保持装置を引き抜くときに試料収集領域を固定する装置を内部に有していることが意図されている。保持装置がさらに動かされると、保持装置と試料収集領域との間の結合が外れ、邪魔になる保持装置を別個に取り出すことができる。
【0008】
しかしながら公知の装置は、保持装置から試料収集ゾーンを自動式に分断するために、試料採取装置を相応に製作しなければならないという欠点があるだけではない。むしろ、前処理のために設けられる研究室用容器にも、試料収集ゾーンを固定する上に述べた装置を設けなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP1409636
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の課題は、試料収集ゾーンと保持装置との自動式の分断を可能にし、そのために特別な研究室用容器を必要とすることがない試料採取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1または請求項3の構成要件を有する試料採取装置によって解決される。
【0012】
本発明によると、試料採取装置の第1の態様は、長手方向で見て近位の区域と遠位のスリーブとに下位区分される長尺状の保持装置を有している。近位の区域は、その遠位端から近位の方向へ延びる内側の切欠きを有しているか、ないしは、連続するスリーブとして構成されているのも好ましい。
【0013】
遠位のスリーブは、この切欠きと一直線上に並ぶようにアライメントされている。近位の区域とスリーブとは、内側の切欠きとスリーブとの両方へわずかなクリアランスをもって挿入可能なピンを介して相互に結合されている。ピンの寸法、ならびに内側の切欠きとスリーブとの寸法は、装置が正常に使用されるときに、両方の区域の確実な結合が保証されるように相互に調整されている。その一方で、試料採取動作のときに通常ではない定義された高い力が印加されるときは、ピンにより結合されている前述の各部分の中へのピンのスライドが可能でなければならない。
【0014】
試料収集領域そのものは、長尺状のアタッチメントの一方の端部に配置されていて、該アタッチメントの他方の端部はスリーブの遠位端に挿入されている。
【0015】
それにより、本発明の試料採取装置は2つに分かれた保持装置を有していて、その両方の区域がピンを介して相互に結合されている。試料収集領域はスリーブの遠位端で、そこでスリーブに挿入されるアタッチメントを介して、保持装置に取り付けられている。
【0016】
内側の切欠き、スリーブ、ピン、ならびに試料収集領域を保持するアタッチメントのそれぞれの寸法は、1つの実施形態では、試料採取装置が正常に作動しているときに、たとえば全部の部品または少なくともいくつかの部品が互いにプレス嵌めで固定されるように相互に調整されている。さらに別の実施形態は、嵌合式係合による固定を対象としている。この実施形態では、ピンおよび/またはアタッチメントが、スリーブおよび/または内側の切欠きの中でたとえば係止結合によって固定されることが意図される。ピンおよび/またはアタッチメントはそのために外方を向く係止ラグを有していて、該係止ラグは、たとえばばね力のもとで内側の切欠きに係合し、ないしはスリーブないし内側の切欠きにある破断部に係合する。係止ラグは、アタッチメントが近位へスライドしたときに係止係合が外れて、アタッチメントとピンのさらなる近位へのスライドが可能になるように構成されている。
【0017】
当然のことながら、1つの試料採取装置で、プレス固定と嵌合式固定を組み合わせることも考えられる。
【0018】
本発明の要部をなすのは、たとえば遠位端が固定されたときに長手方向で下方に向かって試料採取装置の近位端に作用する、定義された値を超過する力が印加されたときに、前述した各コンポーネントのスライドが可能になることである。そのようなケースのとき、近位の区域はこれに接する遠位のスリーブとともに、アタッチメントおよびピンに対して相対的にスライドする。このときピンはアタッチメントから近位の方向へ、近位の区域の切欠きの中へと押し込まれ、この切欠きへ完全に押し込まれたときに、近位の区域とスリーブとの間の結合を解消させる。すると試料収集領域がスリーブとともに、試料採取装置の近位の区域から分断される。
【0019】
当然ながら、上側の区域の内側の切欠きは、ピンの全面的な押し込みが可能である程度の長さに構成されなくてはならない。
【0020】
本発明の装置により、試料収集ゾーンの特別に簡単な自動式の分断が可能である。装置を近位端のところで固定し、試料収集領域を形成する遠位端とともに、これが容器の底面に当接するまで容器へ挿入するだけで足りる。そして近位端をさらに容器の底面に向かう方向へ動かすと、保持装置の周囲の部分に対するアタッチメントとピンの上に説明した相対変位が生じ、その帰結として、試料収集ゾーンが保持装置の上側の区域から分断される。
【0021】
当然ながら、各区域の寸法設定は任意に選択することができる。ただし、希望される実質的に試料収集領域のみの分断という観点から、大半の用途では、近位の区域のほうがこれに後続する遠位のスリーブよりも明らかに長く構成される。
【0022】
たとえば強すぎる押圧力によって、試料採取のときの試料収集領域の意図しない分断を防ぐために、好ましい実施形態では、上側の区域に挿入可能な、内側の切欠きをロックする仕切りを設けることができる。この仕切りは研究室で取り外すことができ、その後に、上に説明した試料収集ゾーンの分断を行うことができる。
【0023】
上側の区域も連続するスリーブとして構成されている保持装置が使用される場合には、両方の区域を結合するために設けられるピンを、近位の区域の近位端にまで達する程度の長さに構成し、そこに、たとえば近位の方向へのピンのスライドを妨げるキャップ等を設けることも考えられる。キャップを取り外した後で初めて、同じく上述した収集ゾーンの分断を行うことができる。
【0024】
本発明による試料採取装置のさらに別の態様では、保持装置が棒状の内側の装置を有していて、該装置の遠位端に試料収集領域が取外し可能に配置されていることが意図されていてよい。さらに保持装置は、棒状の内側の装置を少なくとも部分的に長手方向と円周方向とで取り囲む外側の装置を有している。内側および外側の装置は互いに相対的に位置調節可能であり、両方の装置の定義された相対運動によって試料収集領域が保持装置から分断されることが意図される。
【0025】
1つの実施形態では、内側の装置は、予定破断個所を介して相互に結合された2つの区域を備える小棒である。外側の装置は、この小棒を長手方向で部分的に取り囲む小管である。さらに、小棒と小管は予定破断個所に対して遠位に回り止めの係合をしていることが意図される。そして小管の近位端が回されると、小管と小棒との間の遠位での回り止めに基づき、予定破断個所が破断されて、その遠位に延びる、試料収集領域を担持している小棒の部分が外される。
【0026】
さらに別の実施形態では、やはり内側の小棒と小棒を部分的に取り囲む小管とが設けられている。小棒は2つの区域で構成されていて、すなわち、試料収集領域を担持する遠位の区域と、これに接するように配置された、上方に向かって突出する近位の区域とで構成されている。作動時には、小棒の遠位の区域と近位の区域との間の分離個所が外側の小管で取り囲まれる。遠位の区域が落下するのを防止するために、これと小管との間には嵌合式係合部を設けることができる。
【0027】
分離をするために、上方に向かって突出している小棒の近位の領域が、相対的に見て、これを取り囲む小管の中へ押し込まれる。小棒が動いて小管が固定されていることが考えられる。しかしながら、固定された小棒に対して小管を上方に向かってスライドさせることも同様に良好に可能である。いずれのケースでも、遠位の区域と近位の区域との間の分離個所が下方に向かって小管から外に押し出され、それにより、試料収集領域が小棒の遠位の領域とともに保持装置から分断される。
【0028】
当然ながら、小棒の遠位の領域とスリーブとの間の上に述べた嵌合は、小棒を押し入れるときの過度の力コストを要することなく解消できるように選択されていなければならない。
【0029】
この点で、小棒の遠位の区域がどのように小管に収容されるかについては、後掲の図面(4,5ab)で説明するさまざまな選択肢が考えられる。
【0030】
最後に、さらに別の態様は、保持装置がやはり特に内側の小棒を有していて、および、これと平行にアライメントされて小棒を少なくとも部分的に取り囲む外側の装置を有していることを意図している。外側の装置と小棒はそれぞれの遠位端で収容部にプレス嵌めで挿入されていて、該収容部は他方の端部に試料収集領域を担持している。そして、内側および外側の装置を相対運動させることで外側の装置がアタッチメントから引き出されると、やはり固定が解消されて、アタッチメントならびに試料採取領域が自動的に分断される。
【0031】
次に、複数の図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1aは、第1の態様に基づく本発明の装置の1つの実施例を組み立てられた状態で示す図である。図1a’は、同じ装置を分離された状態で示す図である。図1bは、第1の態様に基づく本発明の装置の別の実施例を組み立てられた状態で示す図である。
図2】保持装置の外側の装置に対して内側の装置を回すことによって試料収集領域の分断が行われる、別の態様に基づく試料採取装置である。
図3】保持装置の外側の装置に対して内側の装置を前に押すことによって試料収集領域の分断が行われる、別の態様に基づく試料採取装置である。
図4図3に示す試料採取装置の近位端の別案の構成である。
図5図5aおよび図5bは、図3に示す試料採取装置の遠位端の別案の構成である。
図6】さらに別の態様に基づく試料採取装置のさらに別の構成である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1aは、試料収集領域11と保持装置12とを備える試料採取装置10を示している。保持装置12は上側の区域13を有するとともに、これに対して遠位を向くように配置されたスリーブ14を有している。近位の区域には内側の切欠き15が設けられていて、該切欠きは、スリーブ14の内側の寸法と基本的に同一の寸法を有している。両方の区域13および14の結合(接続)は、内側の切欠き15とスリーブ14の両方へわずかなクリアランスをもって挿入されたピン16によって行われる。試料収集領域11そのものは、通常はピン16と対応する寸法をもつアタッチメント17を介して、スリーブ14の遠位の端部領域へ挿入されている。アタッチメント17、ピン16、ならびに内側の切欠き15およびスリーブ14の各寸法は、正常動作のときにこれらすべてのコンポーネントの安定した相互の結合が成立するように選択されている。不適正な操作がなされたとき、近位の区域13とスリーブ14との間の領域18で試料採取装置10の意図しない分離が生じないことを保証するために、任意選択として、近位の方向へのピン16のスライドを制限する、図示しないロック装置が設けられていることができる。このようにして、領域18を介して切欠き15の中へとピンが意図せずスライドし得ることが防止される。
【0034】
このロック装置は必ずしも必要というわけではない。通常のプラスチック製造プロセスの枠内で、試料採取装置の上述した各コンポーネントを相互に正確に調整された寸法で製作し、正常動作のときすべてのコンポーネントの確実な結合がたとえばピンによって保証されるようにして、そのような意図しない切欠きの中へのスライドが生じるリスクをほぼ排除することに問題はない。前述した各コンポーネントを、それぞれの保持特性に関して良好に設定可能な嵌合式結合を通じて、正常動作のときに相互に固定することも考えられる。
【0035】
次に図1a’は、試料収集装置11が分断された試料採取装置10の状態を示している。分断をするために、たとえば近位の区域13の近位端が矢印方向20に作用する力で付勢され、それに対して装置の遠位端は、すなわち試料収集領域11は定置に、たとえば図示しない研究室用容器の底面の上に載置される。近位の区域13が矢印20の方向へ動くと、アタッチメント17が近位の方向へスリーブ14の中へ入るように動き、ピン16を接触後に近位の区域13の内側の切欠き15の中へと全面的にスライドさせる。上側の区域13とスリーブ14の間の境界領域18をピン16が覆わなくなった瞬間に、この領域で結合が解消されて、中に挿入されているアタッチメント17および試料収集領域11とともにスリーブ14が試料採取装置10の残りの部分から自動的に分離する。
【0036】
図1bは、アタッチメント117で保持される図示しない試料収集装置と、保持装置112とを備える試料採取装置100を示している。図1aと同様に保持装置112も、上側の区域113と、これに対して遠位に向くように一直線上に配置されたスリーブ114とを有している。
【0037】
近位の区域には、スリーブ114の内側の寸法と実質的に同一の寸法を有する内側の切欠き115が同じく設けられている。両方の区域113および114の結合は、これら両区域へ挿入可能なピン116によって行われる。
【0038】
図1aとは異なり、ピン116は両方の端部に係止ラグ120および121を有していて、これらの係止ラグは、内側の切欠き113とスリーブ114に設けられた破断部122および123とそれぞれ係止係合している。アタッチメント117の近位端も、破断部123と係止係合する係止ラグ124を有している。
【0039】
係止係合を解消するために、係止ラグ120,121および124を内方に向かって押し込むことができ、これらの係止ラグは、押し込まれた状態のときに、スリーブないし内側の切欠きの中でのアタッチメントないしピンのスライドを許容するように寸法決めされている。
【0040】
すべての係止ラグは斜面を備えていて、それにより、アタッチメントに近位で作用する圧力が生じると、自動的に内方に向かって押圧されるようになっていて、その後に、図1a’に示すような試料収集装置の分断が生じる程度まで、アタッチメントとピンをスライドさせることができる。
【0041】
図2〜6は試料採取装置の別の態様を示している。
【0042】
図2に示す試料採取装置30は、棒状の内側の装置32と、これを取り囲む小管の形態の外側の装置33とを備えた保持装置31を有している。棒状の内側の装置は遠位の区域34と近位の区域35とを有していて、その遠位端に試料収集領域36が配置されている。近位の区域34と遠位の区域35は予定破断個所37を介して相互に結合されている。小棒33はその遠位端に、長手方向に延びる2つのスリット38,39を有していて、その中に遠位の区域35の突起40が挿入されている。近位の区域34はその近位端に調節ボタン41を有していて、該調節ボタンによって棒状の内側の装置32を矢印42の方向へ回すことができる。そのように回したときに外側の小管33が固定されていれば、棒状の装置32の近位の区域34が予定破断個所37のところで、スリット38,39の中で回転不能に固定された遠位の区域から分断され、遠位の区域がこれに配置された試料収集領域36とともに下方に向かって保持装置31から抜け落ちる。
【0043】
図3には、棒状の内側の装置53を備える遠位の試料収集領域52のための保持装置51と、これを取り囲む管状の外側の装置54とを同じく有する試料採取装置50が示されている。棒状の装置53は、上方に向かって小管54から突出する近位の区域55と、試料収集領域52を担持する遠位の区域56とを同じく有している。遠位の区域56と近位の区域55の間には結合部がなく、すなわち、これら両部分はスリーブ状の外側の装置54の中に同一平面上で一直線に並ぶように位置している。
【0044】
試料採取中の意図しないスライドに対して、小棒状の装置53はキャップ57により防護されている。さらに遠位の区域56は嵌合式係合部58を介して、小管54の中で抜け落ちなどに対して防護されている。
【0045】
そして試料収集領域52を分断したいときには、キャップ57が取り外されて、遠位の区域56が完全に下方に向かって前方にスライドしてスリーブ54から抜け落ちることができる程度まで、小棒状の装置55がスリーブ54の中へ押し込まれる。当然ながら、スリーブ54が小棒に対して上方に向かって動かされ、それによって同様の効果がもたらされることも考えられる。
【0046】
図4は、小棒状の装置55の近位に突出する端部を取り囲む柔軟なキャップ57’が設けられた実施形態を示している。キャップ57’は柔軟な材料でできていて、ボールペンの場合に類似する操作を可能にする。
【0047】
図5aと図5bは、保持装置61の中で遠位の区域60を収容するための選択肢を示している。このケースでは、小管63で取り囲まれた内側の小棒状の装置62が設けられている。小棒状の装置62にはその遠位端に、長手方向に延びるスリット64が設けられていて、その中に嵌合式係合部65によって遠位の区域60が配置されている。そして図5bに示すように、内側の小棒状の区域62が下方に向かって小管63から外に押し出されると、スリット64を区切っている内側の小棒状の装置の区域66および67が外方に向かって旋回し、遠位の区域60との嵌合式結合を解放する。
【0048】
最後にさらに別の態様は、同じく特に内側の小棒の形態の内側の装置71と、これと平行に向いて小棒を少なくとも部分的に取り囲む外側の装置72とを有する保持装置70を意図している。外側の装置72と小棒71はそれぞれの遠位端でプレス嵌めにより収容部73に挿入されていて、該収容部は他方の端部に試料収集領域74を担持している。そして、内側および外側の装置の相対運動によって外側の装置72が収容部73から引き出されると、保持装置と収容部の間の結合が解消され、収容部がこれに取り付けられた試料収集領域とともに自動的に分断される。
図1a
図1a-1】
図1b
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6