特許第6263181号(P6263181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263181安定化させた非晶質炭酸カルシウムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263181
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】安定化させた非晶質炭酸カルシウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/18 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   C01F11/18 A
   C01F11/18 J
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-526007(P2015-526007)
(86)(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公表番号】特表2015-528430(P2015-528430A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】IL2013050670
(87)【国際公開番号】WO2014024191
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】61/736,015
(32)【優先日】2012年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/680,322
(32)【優先日】2012年8月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514151502
【氏名又は名称】アモーフィカル リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】メイロン,オレン
(72)【発明者】
【氏名】アシュケナジ,ビンヤミン
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−508840(JP,A)
【文献】 特表2011−501676(JP,A)
【文献】 特開2007−191453(JP,A)
【文献】 特開昭56−124368(JP,A)
【文献】 特開昭59−064527(JP,A)
【文献】 特開2011−116601(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2005−0110119(KR,A)
【文献】 中国特許出願公開第101580260(CN,A)
【文献】 カナダ国特許出願公開第02806131(CA,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F1/00−17/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質炭酸カルシウム(ACC)を調製する方法であって、
(i)ACC懸濁液を形成するように可溶性カルシウム塩と第1の安定化剤を含む水溶液を可溶性炭酸塩を含む水溶液と混ぜ合わせる工程と
(ii)第2の安定化剤と有機溶媒がその形成の2分以内に前記ACC懸濁液と接触し、それによってACCの安定化された懸濁液を得る限り、任意の順で同時に又は順次、水混和性有機溶媒及び第2の安定化剤を含む水溶液を添加する工程を含み、
第1の安定化剤と第2の安定化剤は同一であり又は異なっており;
安定化剤の総量が安定化されたACC懸濁液の12重量%までを構成し、水混和性有機溶媒が安定化されたACC懸濁液の少なくとも5重量%を構成する方法。
【請求項2】
(i)可溶性カルシウム塩と第1の安定化剤を含む水溶液を調製する工程と、
(ii)可溶性炭酸塩を含む水溶液を調製する工程と、
(iii)第2の安定化剤を含む水溶液を調製する工程と、
(iv)水混和性有機溶媒を含む溶液を調製する工程と、
(v)ACC懸濁液を形成させるように、工程(ii)で調製した溶液を工程(i)で調製した溶液と混ぜ合わせ、その後、これらの溶液がその形成の2分以内に前記ACC懸濁液と接触し、それによってACCの安定化された懸濁液を得る限り、任意の順で同時に又は順次、工程(iii)及び(iv)で調製した溶液を添加する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)可溶性カルシウム塩と第1の安定化剤を含む水溶液を調製する工程と、
(ii)可溶性炭酸塩を含む水溶液を調製する工程と、
(iii)水混和性有機溶媒中で第2の安定化剤の溶液を調製する工程と、
(iv)ACC懸濁液を形成させるように、工程(i)及び(ii)で調製した溶液を混ぜ合わせ、その後、安定化されたACCの懸濁液を形成させるようにその形成の2分以内にACC懸濁液に工程(iii)で調製した溶液を添加する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(i)可溶性カルシウム塩と第1の安定化剤を含む水溶液を調製する工程と、
(ii)可溶性炭酸塩を含む水溶液を調製し、工程(i)の前記カルシウム塩と混ぜ合わせ、それによってACCの懸濁液を得る工程と、
(iii)第2の安定化剤の水溶液を調製し、それによって安定化溶液を得る工程と、
(iv)前記安定化溶液を前記ACCの懸濁液と混ぜ合わせる工程と、
(v)水混和性有機溶媒を添加する工程を含み、
安定化溶液及び有機溶媒は、安定化されたACCの懸濁液を形成させるようにその形成の2分以内にACC懸濁液に添加される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カルシウム塩が塩化カルシウムであるか、または
前記カルシウム塩と前記炭酸塩が0.5〜2.0のモル比で存在するか、または
可溶性カルシウム塩溶液の濃度が4mM〜2Mであり、可溶性炭酸塩溶液の濃度が4mM〜2Mであるか、または
前記第1と第2の安定化剤が異なるか、または
前記第1の安定化剤及び前記第2の安定化剤が同一であるか、または
第2の安定化剤と水混和性有機溶媒を添加する工程が−10℃〜60℃の間若しくは−3℃〜常温の間若しくは0℃〜15℃の間の温度で実施されるか、または
第1の安定化剤が2以上の安定化化合物の組み合わせを含むか、または
第2の安定化剤が2以上の安定化化合物の組み合わせを含むか、または
前記可溶性炭酸塩がアルカリ炭酸塩又は炭酸アンモニウムであり、若しくは前記アルカリ炭酸塩が、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムであるか、または
前記水混和性有機溶媒が低級アルコール類及びケトン類から成る群から選択され、若しくは水混和性有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ジエチルケトン及びシクロヘキサノンから成る群から選択され、若しくは水混和性有機溶媒がエタノールである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1と第2の安定化剤がそれぞれ独立して有機酸、リン酸化有機酸、ヒドロキシカルボン酸のリン酸エステル、ヒドロキシカルボン酸の硫酸エステル、リン酸化アミノ酸及びその誘導体、及びアルカリ水酸化物と組み合わせたヒドロキシを持つ有機化合物から成る群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1と第2の安定化剤の少なくとも一方がアスコルビン酸、酢酸及び少なくとも2つのカルボキシル基及び250g/モル以下の分子量を有する有機酸から選択される有機酸であり、若しくは第1と第2の安定化剤の少なくとも一方がクエン酸、酒石酸及びリンゴ酸から選択されるか、または
第1と第2の安定化剤の少なくとも一方が、ヒドロキシカルボン酸のリン酸エステル、ヒドロキシカルボン酸の硫酸エステル、リン酸化アミノ酸誘導体、又はアミノ酸硫酸エステルであり、若しくは第1と第2の安定化剤の少なくとも一方が、ホスホエノールピルビン酸、ホスホクレアチン、ホスホセリン、ホスホスレオニン、スルホセリン、及びスルホスレオニンから選択されるか、または
第1と第2の安定化剤の少なくとも一方が、アルカリ水酸化物と組み合わせたヒドロキシを持つ有機化合物であり、ヒドロキシを持つ有機化合物が、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類又は多糖類;及び非リン酸化でヒドロキシルを持つ化合物若しくは非リン酸化アミノ酸から選択され、若しくは第1と第2の安定化剤の少なくとも一方が、グルコース、マンノース、フルクトース、スクロース、グリセロール、セリン及びスレオニンから成る群から選択され、アルカリ水酸化物が水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選択されるか、または
第1と第2の安定化剤の少なくとも一方が、アルカリ金属水酸化物と組み合わせたポリオール、リン酸化アミノ酸、アミノ酸硫酸エステル、ジカルボン酸、トリカルボン酸、アルカリ金属水酸化物と組み合わせた非リン酸化でヒドロキシルを持つ化合物及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、安定化されたACCの前記懸濁液における安定化剤の総量が1〜1000mMであるか、または
第1と第2の安定化剤の少なくとも一方がリン酸化アミノ酸であり、安定化されたACCの前記懸濁液におけるその総濃度が2〜200mMであるか、または
第1と第2の安定化剤の少なくとも一方がクエン酸であり、安定化されたACCの前記懸濁液におけるその総濃度が1〜200mMであるか、または
第1と第2の安定化剤の少なくとも一方がアルカリ金属水酸化物と組み合わせたポリオール又はアルカリ金属水酸化物と組み合わせた非リン酸化でヒドロキシルを持つアミノ酸であり、安定化されたACCの前記懸濁液におけるポリオール又はアミノ酸の総濃度が10mM〜1000mMであり、安定化されたACCの前記懸濁液における水酸化物の総濃度が1mM〜2000mMの間である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
安定化されたACCの前記懸濁液から前記ACCを分離し、乾燥させ、それによって安定なACCの粉末を得る工程をさらに含み、
分離する工程が、濾過又は遠心を含み、乾燥させる工程が加熱又は凍結乾燥を含むか、または
安定なACCの前記粉末が15重量%未満の水分若しくは8重量%未満の水分、及び30〜35重量%の間のカルシウムを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(i)1Mまでの濃度での塩化カルシウムと1モルの塩化カルシウム当たり1〜80ミリモルの安定化剤の水溶液を調製する工程と、
(ii)工程(i)の塩化カルシウムと同じモル濃度での炭酸ナトリウムの水溶液を調製し、それを工程(i)の前記カルシウム溶液と混ぜ合わせ、それによってACCの懸濁液を得る工程と、
(iii)工程(i)の塩化カルシウムの1モル当たり350gのエタノール及び工程と(i)と同じであるが、量が2倍である安定化剤を含む安定化溶液を調製する工程と、
(iv)安定化溶液をその形成の2分以内にACCの前記懸濁液と混ぜ合わせ、それによってACCの安定化された懸濁液を得る工程を含み、
工程(i)及び工程(iii)における前記第1と第2の安定化剤がそれぞれ、カルシウム1モル当たり6ミリモルと12ミリモルの量でのホスホセリンであり、前記方法がさらに、ACCの前記懸濁液を濾過し、40℃〜50℃の間の温度で真空乾燥させることを含むか、または
前記第1と第2の安定化剤が、工程(i)におけるカルシウム1モル当たり70ミリモルのスクロースと100ミリモルのNaOH及び工程(iii)におけるカルシウム1モル当たり140ミリモルのスクロースと200ミリモルのNaOHの量での水酸化ナトリウムを伴ったスクロースであり、前記方法がさらに遠心又は凍結乾燥によってACCを単離することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
水性混合物にて塩化カルシウムとアルカリ炭酸塩とリン酸化有機酸とアルコールを混ぜ合わせ、それによって2.5〜5重量%の間のACC、0.001〜0.2重量%の間のリン酸化有機酸、及び8〜32重量%の間のエタノールを含有する安定化させたACCの懸濁液を得ることを含むか、または
水性混合物にて塩化カルシウムとアルカリ炭酸塩とジカルボン酸又はトリカルボン酸とアルコールを混ぜ合わせ、それによって2.5〜5重量%の間のACC、0.001〜0.2重量%の間のジカルボン酸又はトリカルボン酸、及び8〜32重量%の間のエタノールを含有する安定化させたACCの懸濁液を得ることを含むか、または
水性混合物にて塩化カルシウムとアルカリ炭酸塩とジカルボン酸又はトリカルボン酸、リン酸化有機酸とアルコールを混ぜ合わせ、それによって2.5〜5重量%の間のACC、0.001〜0.2重量%の間のジカルボン酸又はトリカルボン酸及びリン酸化有機酸、及び8〜32重量%の間のエタノールを含有する安定化させたACCの懸濁液を得ることを含むか、または
水性混合物にて塩化カルシウムとアルカリ炭酸塩と水酸化ナトリウムを伴ったスクロースとアルコールを混ぜ合わせ、それによって2.5〜5重量%の間のACC、1〜4重量%の間のスクロース、0.5重量%の水酸化物及び10〜15重量%の間のエタノールを含有する安定化させたACCの懸濁液を得ることを含むか、または
水性混合物にて塩化カルシウムとアルカリ炭酸塩と水酸化ナトリウムを伴った非リン酸化でヒドロキシルを持つアミノ酸とアルコールを混ぜ合わせ、それによって2.5〜5重量%の間のACC、1〜4重量%の間の非リン酸化でヒドロキシルを持つアミノ酸、0.5重量%の水酸化物及び10〜15重量%の間のエタノールを含有する安定化させたACCの懸濁液を得ることを含むか、または
水性混合物にて塩化カルシウムと炭酸塩ナトリウムと非リン酸化でヒドロキシルを持つアミノ酸と糖類と水酸化ナトリウムとアルコールを混ぜ合わせ、それによって2.5〜5重量%の間のACC、1〜4重量%の間の非リン酸化でヒドロキシルを持つアミノ酸と糖類の合計、0.5重量%の水酸化物及び10〜15重量%の間のエタノールを含有する安定化させたACCの懸濁液を得ることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
懸濁液からACCを分離し、乾燥させ、それによって75〜88重量%の間のCaCOと10重量%未満の水分を含む安定なACCの粉末を得る工程をさらに含む請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化溶液及び有機溶媒の段階的な添加に基づいて非晶質炭酸カルシウム(ACC)を調製する新規の方法に関する。本発明の工程によって製造されたACCは溶液/懸濁液にて及び乾燥粉末としての双方で高い安定性を特徴とし、たとえば、紙、染料、プラスチック、インク、接着剤、大理石修復、医療機器及び医薬業界にて使用され得る。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウム(CaCO)は炭酸のカルシウム塩であり、多くの産業で広く使用されている。それは、毎日のカルシウム摂取を高めるために服用されるカルシウム補完剤として最もよく知られている。炭酸カルシウムは6つの既知の多形体を有し、そのうちの3つは非晶質結晶、すなわち、カルサイト、アラゴナイト及びバテライトであり、2つは結晶性水和物、すなわち、モノハイドロカルサイト及びイカ石であり、1つは水和した非晶質、すなわち、非晶質炭酸カルシウム(ACC)である。ACCは、オストワルドの段階律に従って過飽和溶液から析出する一過性の多形体である。何らかの手段で安定化されなければ、ACCは数秒以内に5つのさらに安定な多形体の1つに迅速に且つ完全に結晶化する。非晶質炭酸カルシウムは、明確な主要XRDピークと有意に区別可能なラマンのピークも有する他の多形体の典型的な1〜10μmの結晶とは対照的に、ラマンの分光法で主要XRDピークを有さないが、20〜30θの間で強度の低い広いピークを有し、1082cm−1前後に強度の低い広いピークを有する独特な40〜120nmの小球体を特徴とする。
【0003】
合成ACCは100年以上にわたって知られ、今日では、一過性の不安定な非晶質相を安定化する種々の分子を用いてACCを合成する多数の方法がある。3つの広く用いられる方法はすべて、塩化カルシウムのような可溶性供給源に由来する、又はスクロースのような水素結合分子を用いて水酸化カルシウムのような不溶性カルシウム塩を溶解することに由来するカルシウムイオンの過飽和溶液を使用する。次いでこのカルシウムイオンの過飽和溶液を、二酸化炭素ガス、炭酸ナトリウムのような炭酸のアルカリ金属塩に由来する、炭酸アンモニウムのような炭酸の有機塩に由来する、又は炭酸ジメチルのような炭酸ジアルキルの水酸化イオンによる加水分解に由来する炭酸の供給源と反応させる(たとえば、米国特許第4,237,147号を参照)。
【0004】
ACCは水溶液では2分を超えると不安定なので、商業的製造は実現困難である。2分以内に100又はさらに1000リットルを混合し、濾過又は遠心のような液相分離法を用いて分離することを含む大規模製造は今日では適用可能ではない。溶液における安定な時間が数時間に延長され、濾過又は遠心のような標準の液相分離法が可能になるならば、その時は商業的製造が実践的になり得る。
【0005】
エタノール性媒体にて24時間を超えてACCを安定化する方法を記載したHyunら[Materials Chemistry and Physics, 93 (2005) 376-382]を除いて、上記以前の報告のいずれも溶液にてACCが安定のままである時間を言及していない。しかしながら、Hyunらは、Hyunによって記載されたように安定性に決定的である毒性アンモニアの存在下でのみ安定なACCを製造することができる。また、出版物で使用された炭酸カルシウム濃度が相対的に低く、そのため産業上の使用は実現困難である。
【0006】
他の公開された手順を再現しようと試みた場合、本発明の出願者らは、溶液にて数分間のみ安定であり、その後結晶化するACCを製造した。場合によっては、ACCは製造されるものの、溶液からそれを単離するのは不可能だった。たとえば、米国特許第4,237,147号の実施例2で記載された手順を用いてACCを製造すると、濾過するのが不可能であり、ACCを単離することができないスラリーのみを産出した。また、この特許で提案されたようにスプレー乾燥を用いてこのスラリーから粉末を得た場合、それは約2/15のACCを含有するにすぎず、残りの13/15部はスクロースであろう。
【0007】
一般に、塩化カルシウム又は他の可溶性カルシウム塩を用いて米国特許第4,237,147号で記載された手順を複製する試みは、ACC又は沈殿した炭酸カルシウムの形態を産出しなかった。
【0008】
ACCが水の存在下で結晶化することは周知であるが、出願者らが最もよく知る限り、たった10重量%までの安定化剤のみを用いて、長い時間水溶液中で安定のままであるACCの製造を記載する以前の出版物はない。また、これらの方法すべてにおける炭酸化工程は、常に固液分離工程が続く、合成の最後の工程である。
【0009】
商業的規模でのACCの製造に適合させることができる、水性相での懸濁液として又は乾燥粉末としてのいずれかで高い安定性を持つACCを製造する新規の方法に対する満たされない、当該技術におけるニーズがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、非晶質形態の典型的な特定のXRDスペクトル及びラマンのスペクトルを示す非晶質炭酸カルシウムを製造するための製造方法に関する。本発明の新規の方法は、安定化剤としての水素結合分子と有機溶媒を利用し、水性相に懸濁した場合及び乾燥粉末としての固体状態で高い安定性を有するACCを生じる。本発明の方法は一般に、可溶性カルシウム塩と第1の安定化剤を含む溶液を可溶性炭酸塩(たとえば、可溶性のアルカリ炭酸塩)を含む溶液と混ぜ合わせてACCの懸濁液を形成することと、安定なACCが単離され得る安定化ACC懸濁液を形成させるように水混和性有機溶媒と第2の安定化剤を添加することを含む。一部の実施形態では、第1の安定化剤と安定な安定化剤は同一であってもよく又は異なっていてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、一実施形態では、本発明は、ACC懸濁液を形成させるように可溶性カルシウム塩と第1の安定化剤を含む溶液を可溶性炭酸塩を含む溶液と混ぜ合わせる工程と;第2の安定化剤と有機溶媒がその形成の約2分以内にACC懸濁液と接触し、それによってACCの安定化された懸濁液を得る限り、任意の順で同時に又は順次、水混和性有機溶媒と第2の安定化剤を含む溶液とを添加する工程を含み、安定化剤の総量が安定化されたACC懸濁液の約12重量%までを構成し、水混和性有機溶媒が安定化されたACC懸濁液の少なくとも約5重量%を構成する、非晶質炭酸カルシウム(ACC)を調製する方法を提供する。第1の安定化剤と第2の安定化剤は同一であってもよく又は異なっていてもよく、各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、(i)可溶性カルシウム塩と第1の安定化剤を含む水溶液を調製する工程と、(ii)可溶性炭酸塩を含む水溶液を調製する工程と、(iii)第2の安定化剤を含む水溶液を調製する工程と、(iv)水混和性有機溶媒を含む溶液を調製する工程と、(v)ACC懸濁液を形成させるように、工程(ii)で調製した溶液を工程(i)で調製した溶液と混ぜ合わせ、その後、これらの溶液がその形成の約2分以内にACC懸濁液と接触し、それによってACCの安定化された懸濁液を得る限り、任意の順で同時に又は順次、工程(iii)及び(iv)で調製した溶液を添加する工程を含み、安定化剤の総量が安定化されたACC懸濁液の約12重量%までを構成し、水混和性有機溶媒が安定化されたACC懸濁液の少なくとも約5重量%を構成する、ACCを調製する方法を提供する。第1の安定化剤と第2の安定化剤は同一であってもよく又は異なっていてもよく、各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、(i)可溶性カルシウム塩と第1の安定化剤を含む水溶液を調製する工程と、(ii)可溶性炭酸塩を含む水溶液を調製する工程と、(iii)水混和性有機溶媒における第2の安定化剤の溶液を調製する工程と、(iv)ACC懸濁液を得るように、工程(i)及び(ii)で調製した溶液を混ぜ合わせ、その後、安定化されたACC懸濁液を形成させるようにその形成の約2分以内に工程(iii)で調製した溶液を添加する工程を含み、安定化剤の総量が安定化されたACC懸濁液の約12重量%までを構成し、水混和性有機溶媒が安定化されたACC懸濁液の少なくとも約5重量%を構成する、ACCを調製する方法を提供する。第1の安定化剤と第2の安定化剤は同一であってもよく又は異なっていてもよく、各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0014】
現在好まれる実施形態では、本発明は、(i)可溶性カルシウム塩と第1の安定化剤を含む水溶液を調製する工程と、(ii)可溶性炭酸塩を含む水溶液を調製し、工程(i)のカルシウム塩とそれを混ぜ合わせ、それによってACCの懸濁液を得る工程と、(iii)第2の安定化剤を含む水溶液を調製する工程と、(iv)ACCの懸濁液と安定化溶液を混ぜ合わせる工程と、(v)水混和性有機溶媒を添加する工程を含み、安定化されたACC懸濁液を形成させるように安定化溶液と有機溶媒がその形成の約2分以内にACCの懸濁液に添加され、安定化剤の総量が安定化されたACC懸濁液の約12重量%までを構成し、水混和性有機溶媒が安定化されたACC懸濁液の少なくとも約5重量%を構成する、安定化されたACCを調製する方法を提供する。第1の安定化剤と第2の安定化剤は同一であってもよく又は異なっていてもよく、各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0015】
一部の実施形態では、本発明に係る方法はさらに、安定化されたACCの懸濁液からACCを分離する工程を含み得る。方法はさらに分離したACCを乾燥させ、それによって安定なACCの粉末を得る工程を含み得る。分離することは濾過又は遠心を含んでもよく、乾燥させる工程は真空における加熱又は凍結乾燥を含んでもよく、各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。従って、一部の実施形態では、本発明の方法は、約15重量%未満の水分、好ましくは8%未満、たとえば、約1〜約7重量%の水分を含み、カルシウムは普通約30〜約33重量%の間である安定なACCの粉末を提供する。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0016】
上述の実施形態のそれぞれについて、用語「第1の安定化剤」及び「第2の安定化剤」のそれぞれは単一の安定化化合物又は1を超える安定化化合物の組み合わせを包含することが理解される。従って、一部の実施形態では、カルシウム水溶液は1つの安定化化合物又は2以上の安定化化合物の組み合わせ(まとめて「第1の安定化剤」と呼ぶ)を含有することができる。他の実施形態では、第2の安定化剤を含む溶液は、他の実施形態では、第2の安定化剤を含む溶液は1つの安定化化合物又は2以上の安定化化合物の組み合わせ(まとめて「第2の安定化剤」と呼ぶ)を含有することができる。使用される安定化剤の数にかかわらず、安定化剤の総量が安定化されたACC懸濁液の約12重量%までを構成する。現在好まれる実施形態では、カルシウム塩は塩化カルシウム又は硝酸カルシウムである。他の好まれる実施形態では、可溶性の炭酸塩はアルカリ炭酸塩(たとえば、炭酸リチウム、ナトリウム又はカリウム)、又は炭酸アンモニウムである。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。一部の実施形態では、カルシウム塩及び炭酸塩は約0.5〜約2.0のモル比で存在する。
【0017】
別の実施形態では、水混和性有機溶媒は好ましくは、低級アルコール及びケトン(たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ジエチルケトン及びシクロヘキサノン)から選択される。現在好まれる水混和性有機溶媒はエタノールである。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0018】
別の実施形態では、可溶性カルシウム塩溶液は、約4mM〜約2Mの可溶性カルシウム塩を含み、炭酸塩溶液は約4mM〜約2Mの炭酸塩を含む。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0019】
本発明の方法で使用される第1と第2の安定化剤は同一であってもよく又は同一でなくてもよい。一部の実施形態では、第1と第2の安定化剤はそれぞれ独立して有機酸、リン酸化有機酸、ヒドロキシカルボン酸のリン酸エステル、ヒドロキシカルボン酸の硫酸エステル、リン酸化アミノ酸及びその誘導体、アミノ酸硫酸エステル及びアルカリ水酸化物のような塩基と組み合わせたヒドロキシを持つ有機化合物から成る群から選択される。水酸化物と組み合わせたヒドロキシを持つ有機化合物は好ましくはカルボキシル等のような他の機能も持つが、ヒドロキシルはエステル化されない。有機酸は、たとえば、アスコルビン酸又は酢酸を含んでもよく、好ましくは、それらは、たとえば、クエン酸、酒石酸及びリンゴ酸等のような少なくとも2つのカルボキシル基及び250g/モルを超えない分子量を有するカルボン酸を含む。エステルは、たとえば、ホスホエノールピルビン酸を含み得る。別の実施形態では、ヒドロキシルカルボン酸のリン酸エステル又は硫酸エステルはアミノ酸を含み、その例には、ホスホセリン、ホスホスレオニン、スルホセリン及びスルホスレオニンが挙げられる。別の実施形態では、安定化分子は、たとえば、ホスホクレアチンのようなアミノ酸のリン酸エステル誘導体である。水酸化物と組み合わせられるヒドロキシルを持つ化合物は、たとえば、スクロースのような単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類及び多糖類又はグリセロールのような他のポリオールを含み得る。ヒドロキシルを持つ化合物はさらにクエン酸、酒石酸及びリンゴ酸等のようなヒドロキシ酸、又はセリン若しくはスレオニンのようなヒドロキシルを持つアミノ酸を含み得る。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0020】
一部の実施形態では、第1と第2の安定化剤の少なくとも一方はアルカリ金属水酸化物と組み合わせたポリオールであり、又は安定化剤はリン酸化されたアミノ酸であり、その際、安定化されたACCの懸濁液におけるポリオール又はリン酸化されたアミノ酸の総量は約1〜約1000mM、たとえば、約10〜約100mMである。ポリオールは好ましくは糖類を含む。好まれる実施形態では、安定化剤はリン酸化されたアミノ酸であり、その際、安定化されたACCの懸濁液における総濃度は約2〜約200mM、たとえば、約20mMまでである。別の好まれる実施形態では、安定化剤はジカルボン酸又はトリカルボン酸(たとえば、クエン酸)であり、その際、安定化されたACCの懸濁液における総濃度は約2〜約200mM、たとえば、約20mMまでである。別の好まれる実施形態では、安定化剤はアルカリ金属水酸化物と組み合わせたヒドロキシル基を持つ非リン酸化アミノ酸(たとえば、セリン又はスレオニン)であり、その際、安定化されたACCの懸濁液におけるアミノ酸の総濃度は約2〜約200mM、たとえば、約20mMまでであり、安定化されたACCの懸濁液における水酸化物の総濃度は約1mM〜約2000mMの間、たとえば、約0.1Mである。別の好まれる実施形態では、安定化剤はアルカリ金属水酸化物と組み合わせたポリオールであり、その際、安定化されたACCの懸濁液におけるポリオールの総濃度は約10〜約1000mM、たとえば、約100mMまでであり、安定化されたACCの懸濁液における水酸化物の総濃度は約1mM〜約2000mMの間、たとえば、約0.1Mである。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0021】
本発明の一実施形態では、第1と第2の安定化剤は異なる安定化剤である。しかしながら、本発明の好まれる実施形態では、第1の安定化剤と第2の安定化剤は同一であり、使用される安定化剤の量は、約1:1〜約1:10(第1の安定化剤対第2の安定化剤)の比であり、好ましくは約1:2の第1の安定化剤対第2の安定化剤の比である。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0022】
第2の安定化剤溶液と有機溶媒にACCの懸濁液を混ぜ合わせる工程は好ましくは、約−10℃〜約60℃の間、好ましくは約−3℃〜常温(室温)の間、さらに好ましくは約0℃〜約15℃の間の温度で実施する。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0023】
現在好まれる実施形態では、本発明は、(i)約1Mまでの濃度での塩化カルシウムと1モルの塩化カルシウム当たり約1〜150ミリモルの間、たとえば、約4〜約80ミリモルの間の量での安定化剤の水溶液を調製する工程と、(ii)工程(i)の塩化カルシウムと同じモル濃度での炭酸ナトリウムの水溶液を調製し、それを工程(i)のカルシウム溶液と混ぜ合わせ、それによってACCの懸濁液を得る工程と、(iii)工程(i)の塩化カルシウムの1モル当たり約350gのエタノールを含む安定化溶液を調製し、安定化剤は工程(i)と同じであるが、量が2倍である工程と、(iv)安定化溶液を炭酸カルシウムの懸濁液と混ぜ合わせ、それによってACCの安定化された懸濁液を得る工程を含む非晶質炭酸カルシウム(ACC)を調製する方法を提供する。一実施形態では、工程(i)及び工程(iii)における安定化剤は、1モルのカルシウム当たりそれぞれ約3〜約9ミリモル及び約8〜16ミリモル、たとえば、1モルのカルシウム当たり約4ミリモル及び約8ミリモルの量でのホスホセリンである。一部の実施形態では、方法はさらにACCの安定化させた懸濁液を濾過する工程、及び任意でさらに約40℃〜約50℃の温度で真空乾燥する工程を含む。別の実施形態では、安定化剤は、1モルのカルシウム当たり約20〜100ミリモルのスクロースと約50〜200ミリモルのNaOH、たとえば、工程(i)のカルシウム1モル当たり約25〜70ミリモルのスクロースと約100ミリモルのNaOH、たとえば、25ミリモルのスクロースと約100ミリモルのNaOH、及びカルシウム1モル当たり約40〜200ミリモルのスクロースと約100〜400ミリモルのNaOH、たとえば、工程(iii)のカルシウム1モル当たり約50〜200ミリモルのスクロースと約200ミリモルのNaOH、たとえば、約140ミリモルのスクロースと約200ミリモルのNaOHの量での水酸化ナトリウムと組み合わせたスクロースである。一部の実施形態では、方法はさらに沈殿物を遠心し、凍結乾燥する工程を含む。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0024】
現在好まれる一実施形態では、本発明に係る方法は、水性混合物にて塩化カルシウム、アルカリ炭酸塩、リン酸化有機酸及びアルコールを混ぜ合わせ、それによって約2.5〜5重量%の間のACC、約0.001〜約0.3重量%の間、たとえば、約0.05〜約0.2重量%の間のリン酸化有機酸、及び約8〜約32重量%の間、たとえば、約10〜約15重量%の間のエタノールを含有する安定化させたACCの懸濁液を得ることを含む。
【0025】
本発明に係る別の好まれる方法は、水性混合物にて塩化カルシウム、アルカリ炭酸塩、水酸化ナトリウムを伴った糖類及びアルコールを混ぜ合わせ、それによって、約2.5〜約5重量%の間のACC、約1〜約4重量%の間の糖類、約0.5重量%の水酸化物、及び約10〜約15重量%の間のエタノールを含有する安定化させたACCの懸濁液を得ることを含む。
【0026】
本発明に係る別の好まれる方法は、水性混合物にて塩化カルシウム、アルカリ炭酸塩、ジカルボン酸、トリカルボン酸(たとえば、クエン酸)及びアルコールを混ぜ合わせ、それによって、約2.5〜約5重量%の間のACC、約0.001〜約0.2重量%の間のジカルボン酸又はトリカルボン酸、及び約8〜約32重量%の間のエタノールを含有する安定化させたACCの懸濁液を得ることを含む。本発明に係る別の好まれる方法は、水性混合物にて塩化カルシウム、アルカリ炭酸塩、ジカルボン酸又はトリカルボン酸、リン酸化有機酸及びアルコールを混ぜ合わせ、それによって、約2.5〜約5重量%の間のACC、約0.001〜約0.2重量%の間のジカルボン酸又はトリカルボン酸及びリン酸化有機酸の合計、及び約8〜約32重量%の間のエタノールを含有する安定化させたACCの懸濁液を得ることを含む。
【0027】
本発明に係る別の好まれる方法は、水性混合物にて塩化カルシウム、アルカリ炭酸塩、水酸化ナトリウムを伴った非リン酸化でヒドロキシル持つアミノ酸(たとえば、セリン)及びアルコールを混ぜ合わせ、それによって、約2.5〜約5重量%の間のACC、約1〜約4重量%の間の非リン酸化でヒドロキシル持つアミノ酸、約0.5重量%の水酸化物及び約10〜約15重量%の間のエタノールを含有する安定化させたACCの懸濁液を得ることを含む。
【0028】
本発明に係る別の好まれる方法は、水性混合物にて塩化カルシウム、アルカリ炭酸塩、非リン酸化でヒドロキシル持つアミノ酸(たとえば、セリン)、水酸化ナトリウムを伴った糖類及びアルコールを混ぜ合わせ、それによって、約2.5〜約5重量%の間のACC、約1〜約4重量%の間の非リン酸化でヒドロキシル持つアミノ酸及び糖類の合計、約0.5重量%の水酸化物及び約10〜約15重量%の間のエタノールを含有する安定化させたACCの懸濁液を得ることを含む。
【0029】
別の実施形態では、本発明の方法はさらに懸濁液からACCを単離し、乾燥させ、それによって約75〜約88重量%の間でのCaCOと10重量%未満の水分を含む安定なACCの粉末を得ることを含む。
【0030】
さらなる実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるような工程から生じる安定なACCの懸濁液及び安定なACCの粉末を提供する。従って、一実施形態では、本発明は、本明細書の工程によって製造される安定化させたACCの懸濁液を提供する。一実施形態では、安定化させたACCの懸濁液は約2.5〜約5重量%の間のACC、約0.05〜約0.2重量%の間のリン酸化有機酸、及び約10〜約15重量%の間のエタノールを含有する。別の実施形態では、安定化させたACCの懸濁液は約2.5〜約5重量%の間のACC、約1〜約4重量%の間の糖類、約0.5重量%の水酸化物及び約10〜約15重量%の間のエタノールを含有する。別の実施形態では、安定化させたACCの懸濁液は約2.5〜約5重量%の間のACC、約0.05〜約0.2重量%の間の有機酸(たとえば、ジカルボン酸又はクエン酸のようなトリカルボン酸)、及び約10〜約15重量%の間のエタノールを含有する。別の実施形態では、安定化させたACCの懸濁液は約2.5〜約5重量%の間のACC、約0.05〜約0.2重量%の間の有機酸(たとえば、非リン酸化でヒドロキシルを持つアミノ酸)、約0.5重量%の水酸化物及び約10〜約15重量%の間のエタノールを含有する。安定化剤の組み合わせを含む懸濁液も熟考される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0031】
他の実施形態では、本発明は本発明の工程によって製造される安定なACCの粉末を提供する。一実施形態では、粉末は、約75〜約88重量%の間のCaCO、約10重量%未満の水分、及び有機酸(たとえば、リン酸化有機酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸、ヒドロキシル基を持つアミノ酸、又は本明細書で記載される他の有機酸)を含む。他の実施形態では、安定なACCの粉末は、約75〜約88重量%の間のCaCO、約10重量%未満の水分、及び約1〜約5重量%の間の糖類を含む。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0032】
他の態様では、本発明はさらに、染料、紙製品、プラスチック、インク、接着剤、大理石修復製品、医療機器、医薬品、食品補完剤、及び/又は食品添加物における上記の懸濁液及び粉末の使用を指向し、各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0033】
好まれる一部の実施形態では、安定化されたACCは、塩化カルシウムのような可溶性カルシウム塩に由来し、ホスホセリンのような第1の安定化分子も含有するカルシウムイオンの過飽和溶液を炭酸ナトリウムのような可溶性炭酸塩に由来する炭酸塩の過飽和溶液と混合することによって製造された。さらなる安定化を行わなければ、沈殿したACCは約2分未満のうちに溶液中でカルサイトとバテライトの混合物に迅速に結晶化する。しかしながら、本発明の工程では、工程1で沈殿したACC懸濁液を約10秒間混合した後、第2の安定化分子を含有する安定化溶液を加える。工程2において沈殿したACC懸濁液と安定化溶液を約10秒間混合した後、エタノールのような有機溶媒を加える。有機溶媒を加えた後、ACCは安定化され、第1と第2の安定化剤の濃度及び有機溶媒の比率に応じて数日、懸濁液で維持することができる。反応温度を下げることは溶液における安定性時間を改善することができることがさらに見いだされた。第2の安定化剤及びアルコールの添加の順を反転してもよく、又はそれらは第2の安定化剤及びアルコールを含む1つの溶液で一緒に添加されてもよい。
【0034】
手順はバッチで実施することができ、その際、溶液は単一の添加で又は連続工程として互いに添加され、溶液は連続流技術装置を用いて、たとえば、連続流で混合される。
【0035】
本発明のさらなる実施形態及び適用可能性の完全な範囲は以後に提供される詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、本発明の精神と範囲の範囲内での種々の変更及び改変が詳細な説明から当業者に明らかになるので、単に説明の目的でのみ提供されることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】マイクロラマンを用いて採取された炭酸カルシウムの幾つかの試料のラマンのスペクトルを示す図である。スペクトルは以下の試料:(A)本発明の工程によって製造されたACC;(B)結晶化後のACC;(C)バテライト及び(D)カルサイトのものである。縦線はCO振動のバテライトの主ピークのラマンシフトを表す。
図2】本発明の工程によって製造されたACCのXRDスペクトルを示す図である。ACCのXRDスペクトルは約20〜30の2θからの広くて強度の低いピークを特徴とする。
図3】バテライトのXRDスペクトルを示す図である。バテライトのXRDスペクトルは24、27及び約33θにおける3つの主ピークを特徴とする。
図4】カルサイトのXRDスペクトルを示す図である。カルサイトのXRDスペクトルは約29θでの最も優勢なものを伴った複数のピークを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、安定化剤としての水素結合分子と水混和性有機溶媒とを段階的な工程で使用することによって高度に安定なACCを製造するための合成手順を提供する。本発明の段階的な手順は、安定なACCを製造するための以前記載された方法と比べて安全性、収率及び安定性という点ではるかに優れることが見いだされた。高度に安定なACCを製造するために、ここで記載される実施形態に従って別々の工程におけるこの手順を実施することは有益であることが見いだされた。
【0038】
本発明の工程に従って調製されるACCの驚くべき安定性は完全には理解されていない。特定のメカニズム又は理論によって束縛されることを望まないで、ACCが作られた後の安定化分子の添加はACCの安定化を高める一部の外部コーティングを可能にし、有機溶媒の添加は、水の活性を減らすと共に溶液における安定化分子の溶解性を下げ、それらが確実にACC分子の表面又は内部に残るのでACCの安定化を促進することが熟考される。Losteら[Journal of Crystal Growth, 254 (2003) 206-218]は、Mgが非晶質格子の中に入り込むことによってACCの安定性を高め、Mgの半径がCaよりも小さいからACC構造の内部に存在する水分子に強く結合するので結晶化を阻害することを示唆した。水結合分子が同様のメカニズムを介して作用することは可能である。カルシウムイオンと水分子の双方に結合することによって、それらは非晶質格子から出る水の拡散を阻害するので、結晶化を阻害する。
【0039】
特定の有機酸又はリン酸化されたアミノ酸を使用すると、水酸化ナトリウム又は別の塩基によって溶液のpHを高める必要性がないことも分かった。しかしながら、スクロース又は他の糖を非リン酸化でヒドロキシルを持つアミノ酸と同様に使用すると、安定化効果を得るためには、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のようなアルカリ水酸化物を用いて溶液のpHを上げなければならなかった。Kagoら[Thermochimica Acta, 318 (1998) 239-244]は、高いpHがACCの安定化を促進することを以前示唆したが、Kagoは、彼の実験では、水酸化カルシウムが溶液から析出する前にpHを13.5に上げるのを可能にする水酸化ナトリウムを使用したにすぎない。スクロースを水酸化ナトリウムと一緒に導入した場合、水酸化カルシウムを析出させないでpHを>14にさらに高めるのを可能にした。特定のメカニズム又は理論によって束縛されることを望まないで、非常に高いpHとのスクロースのこの組み合わせは改善された安定化効果を有すると思われる。
【0040】
米国特許第4,237,147号は、水酸化カルシウムとスクロースを用いてACCを製造する方法を記載している;しかしながら、スクロースは水酸化カルシウムの溶解性を高めるために使用されており、本発明に記載される量に比べて非常に大量のスクロースを必要とする。米国特許第4,237,147号によって記載された大量のスクロースは2つの理由でACCの製造を実現困難にする:1.スクロース含量が高すぎてACCがほんの部分的にしか析出せず、単離するのをほぼ不可能にする。2.スクロース含量が高すぎて濾過するのが不可能である粘性のゲルを形成する。本発明では、スクロースは溶解剤としてではなく安定化剤として控えめに使用されるので、必要とされるのははるかに低い濃度であり、それは上述の2つの問題を容易に解決する。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「可溶性のカルシウム塩」は、水に可溶性であるカルシウム塩、すなわち、水に完全に溶解して透明な溶液を得ることが可能であるカルシウム塩を意味する。一般的に言えば、化合物は、本明細書では約20℃〜30℃と定義される約0℃〜ほぼ常温の温度にて少なくとも約1g/100mLの水、たとえば、少なくとも約5g/100mL又は少なくとも約10g/100mLの程度に溶解するのであれば、水に「可溶性」であると見なされる。現在好まれる実施形態では、可溶性のカルシウム塩は塩化カルシウムである。他の実施形態では、可溶性のカルシウム塩は臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム等であり得る。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「可溶性炭酸塩」は、水に可溶性である炭酸塩(CO2−)、すなわち、水に完全に溶解して透明な溶液を得ることが可能である炭酸塩を意味する。現在好まれる実施形態では、可溶性炭酸塩は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウムのようなアルカリ炭酸塩である。別の好まれる実施形態では、可溶性炭酸塩は炭酸アンモニウムである。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0043】
本明細書で使用されるとき、用語「安定化されたACC懸濁液」又は「安定なACC」は、実質的に結晶形態に変換することなく、数時間〜数日の時間、懸濁液にて又は乾燥粉末として維持することができるACCを意味する。用語「実質的な変換」は一般に、約5%以上の非晶質から結晶形態への変換を意味する。従って、本発明の方法は、室温(約20〜30℃)までの温度又はさらに高い温度で懸濁液にて又は固形粉末として放置された場合、一般に少なくとも95%以上非晶質形態(好ましくは少なくとも約97%以上、又は一層さらに好ましくは少なくとも約99%)のままであるACCを製造する。
【0044】
本明細書で熟考されるとき、本発明には、ACCの安定化された懸濁液を形成するための本明細書で記載されるような安定化剤及び水混和性有機溶媒の使用が関与する。本明細書で使用される安定化剤は本明細書ではそれぞれ「第1の安定化剤」、「第2の安定化剤」と呼ばれる。必要に応じて追加の安定化剤も使用され得る。好ましくは、本発明の方法には、互いに同一であってもよく又は異なっていてもよい第1と第2の安定化剤の使用が関与し、各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。また、用語「第1の安定化剤」は単一の安定化化合物又は1を超える安定化化合物の組み合わせを包含することにする。加えて、用語「第2の安定化剤」は、単一の安定化化合物又は1を超える安定化化合物の組み合わせを包含することにする。従って、一部の実施形態では、カルシウム水溶液は1つの安定化剤又は安定化剤の組み合わせを含有することができる(まとめて「第1の安定化剤」と呼ぶ)。他の実施形態では、第2の安定化剤を含有する溶液は1つの安定化剤又は安定化剤の組み合わせを含有することができる(まとめて「第2の安定化剤」と呼ぶ)。本発明によれば、本発明の工程で使用される安定化剤の総量は安定化されたACC懸濁液の約12重量%までを構成する。
【0045】
態様の1つによれば、本発明の安定化分子は、カルシウムイオンを含有する溶液と「安定化溶液」と呼ばれる第2の安定化溶液の間で分けられる。一実施形態では、安定化溶液は、第2の安定化剤と任意で水混和性有機溶媒を含む水溶液である。別の実施形態では、安定化分子は水混和性有機溶媒に直接溶解することができる。
【0046】
一部の実施形態では、第1と第2の安定化剤はそれぞれ独立して有機酸、リン酸化有機酸、ヒドロキシカルボン酸のリン酸エステル、ヒドロキシカルボン酸の硫酸エステル、リン酸化アミノ酸及びその誘導体、アミノ酸硫酸エステル及びアルカリ水酸化物と組み合わせたヒドロキシを持つ有機化合物から成る群から選択される。態様の1つによれば、安定化分子は、有機酸、リン酸化アミノ酸、たとえば、ホスホエノールピルビン酸若しくはホスホクレアチンのような、しかし、これらに限定されないリン酸を持つ分子、又は、たとえば、スルホセリン若しくはスルホスレオニンのようなアミノ酸硫酸エステルのような、しかし、これらに限定されない硫酸を持つ分子、又は前述の組み合わせから選択されるが、これらに限定されない。別の態様によれば、安定化分子は、たとえば、(i)単糖類、二糖類、三糖類若しくは多糖類、たとえば、スクロース、マンノース、グルコース等のようなヒドロキシルを持つ分子;又は、たとえば、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムのような、しかし、これらに限定されないアルカリ金属水酸化物との組み合わせでのヒドロキシルを持つ非リン酸化アミノ酸を含む。
【0047】
一般に、安定化分子は2つの群に分けられる:1)それ自体で強い安定化効果を有する安定化剤。この群の安定化分子には、有機酸、たとえば、少なくとも2つのカルボキシル基を有し、約250g/モル以下の分子量を有するカルボン酸(たとえば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等)、及びヒドロキシカルボン酸のリン酸エステル又は硫酸エステル(たとえば、ホスホエノールピルビン酸、ホスホセリン、ホスホスレオニン、スルホセリン、又はスルホスレオニン)が挙げられる。2)安定化分子のヒドロキシル基を脱プロトン化し、安定化効果を改善するために水酸化物の添加を必要とする安定化分子。この群の安定化分子には、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類又は多糖類(グルコース、マンノース、フルクトース、スクロース等)、ポリオール及びアミノ酸(たとえば、グリセロール、セリン、スレオニン等)を含む非リン酸化でヒドロキシルを持つ分子が挙げられる。用語「非リン酸化でヒドロキシルを持つアミノ酸」は、天然であっても非天然であってもよい、側鎖に少なくとも1つのヒドロキシル(OH)基を持つアミノ酸を指す。
【0048】
本発明の態様の1つによれば、カルシウム溶液における安定化分子と安定化溶液における安定化分子は同一の分子である。本発明の別の態様によれば、それらは異なる2つの分子である。本発明の好まれる実施形態では、第1の安定化剤と第2の安定化剤は同一であり、処理過程の工程(i)及び工程(iii)で使用される安定化剤の量は、約1:1〜約10:1、たとえば、約1:2、約1:3、約1:5、約2:1、約3:1又は約5:1(第1の安定化剤対第2の安定化剤)の比である。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0049】
本発明の態様の1つによれば、有機溶媒は、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロピルアルコールのようなアルコール類、たとえば、アセトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノンのような、しかし、これらに限定されないケトン類、又は他の水混和性有機溶媒に由来するが、これらに限定されない。水混和性有機溶媒の他の例には、テトラヒドロフラン又はジオキサンのようなエーテル類、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられるが、これらに限定されない。用語「水混和性有機溶媒」は本明細書で使用されるとき、あらゆる比率で水と混合して均質な溶液を形成することが可能である有機溶媒を指す。
【0050】
本発明の方法で使用される安定化剤の総量は、使用される安定化剤の合わせた量、たとえば、本明細書で記載されるような第1と第2の安定化剤の総量を意味する。一般に、安定化剤の総量は、安定化されたACC懸濁液の約12重量%まで、好ましくは安定化されたACC懸濁液の約10重量%まで、さらに好ましくは安定化されたACC懸濁液の約8重量%まで、約5重量%まで、又は約3重量%までを構成する。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0051】
水混和性有機溶媒は安定化されたACC懸濁液の少なくとも約5重量%を構成する。エタノールは現在好まれる有機溶媒である。
【0052】
一部の実施形態では、カルシウムイオン溶液におけるカルシウム濃度は約4mMから約2Mまで変化し得る。実践的な理由で、カルシウム濃度は約0.5M〜1M、たとえば、0.5M〜0.75Mの間、又は0.75M〜1Mの間で維持されるべきである。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0053】
他の実施形態では、炭酸塩溶液における炭酸塩濃度は約4mMから約2Mまで変化し得る。実践的な理由で、炭酸塩濃度は約0.5M〜1M、たとえば、0.5M〜0.75Mの間、又は0.75M〜1Mの間で維持されるべきである。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0054】
さらなる実施形態では、カルシウム:炭酸塩のモル比はそれぞれ、約2:1〜約1:1.5で変化し得る。実践的な理由で、1:1の等モル比で作用するのが好ましいが、当業者によって熟考されるように種々の比が採用され得る。
【0055】
さらなる実施形態では、カルシウムイオン溶液における安定化分子の濃度はカルシウムイオン溶液の約0.0001〜約10重量%の間である。さらに好ましくは、濃度は約0.01%〜約3%の間であるが、各安定化分子は、当業者が容易に決定することができるそれ自体の最適な濃度を有することが見いだされた。
【0056】
さらなる実施形態では、安定化溶液に安定化分子の濃度はカルシウムイオン溶液の約0.0002〜約20重量%の間である。さらに好ましくは、濃度は約0.02%〜約6%の間であるが、各安定化分子は、当業者が容易に決定することができるそれ自体の最適な濃度を有することが見いだされた。
【0057】
本発明の態様の1つによれば、ヒドロキシル、リン酸又は硫酸を持つ分子が安定化分子として水酸化物と組み合わせられる場合、ヒドロキシル、リン酸又は硫酸を持つ分子と水酸化物の間のモル比は約4:1〜約0.5:1の間、たとえば、約3:1、2:1、1:1又は0.75:1であり、各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0058】
さらなる実施形態では、安定化溶液における安定化分子の量とカルシウム溶液における安定化分子の量の間の比は約1:1〜約20:1の間、たとえば、約2:1、5:1、10:1、又は15:1であり、各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。各安定化分子の対については、当業者が容易に決定することができる異なる最適な比があることが見いだされた。
【0059】
さらなる実施形態では、使用される有機溶媒は、水溶液全体の約15:1〜約1:3(水:溶媒)までの重量比である。異なる有機溶媒は異なる比でより上手く機能し、たとえば、エタノールは約7:1の重量比で上手く機能する一方でアセトンは約5:1の比で上手く機能することが見いだされた。水と有機溶媒の最適な比は当業者によって容易に決定することができる。
【0060】
さらなる実施形態では、反応の温度は、約−10℃〜約60℃の温度の範囲で扱われる。反応の温度範囲は好ましくは、約−3℃〜常温(室温(RT))の間、さらに好ましくは約0℃〜約15℃の間で維持される。
【0061】
本発明の態様の1つによれば、粉末ACCにおける水分は、乾燥粉末としての製品の安定性を維持するために15%未満に維持されるべきである。本発明の別の態様によれば、水分は好ましくは10%未満、一層さらに好ましくは8%未満に維持されるべきである。
【0062】
本発明の態様の1つによれば、乾燥した安定な製品は周囲条件下で維持することができる。本発明の別の態様によれば、乾燥した安定な製品は好ましくは20%未満の相対湿度の制御された湿度環境で維持されるべきである。
【0063】
本発明の態様の1つによれば、製造されたACCにおけるカルシウム含量は約30%〜約33%の間である。好ましくはACCにおけるカルシウム含量は約31.5%〜約32.5%の間である。
【0064】
製造されたACCは、たとえば、真空濾過又は加圧濾過、遠心又はデカンテーションのような、しかし、これらに限定されない標準の固液分離法によって濾過することができ、次いで、たとえば、風乾、真空オーブン又はターボオーブン、噴霧乾燥機、瞬間乾燥機、凍結乾燥機、又はパドル乾燥機のような、しかし、これらに限定されない標準の乾燥機器を用いて乾燥させることができる。
【0065】
本発明の特定の実施形態を完全に説明するために以下の実施例を提示する。しかしながら、それらは本発明の広い範囲を限定するとは決して解釈されるべきではない。当業者は本発明の範囲から逸脱することなく本明細書で開示される本質の多数の変更及び改変を容易に考案することができる。
実施例1
【0066】
典型的な手順では、カルシウム溶液は1リットルの水と88.8gの塩化カルシウムと888mgのホスホセリンを含有した。炭酸塩溶液は1リットルの水と84.8gの炭酸ナトリウムを含有した。安定化溶液は200mLの水と1.776gのホスホセリンを含有し、350mLのエタノールを有機溶媒として使用した。カルシウム溶液と炭酸塩溶液を一緒に混ぜ合わせて安定化されていないACCを析出させ、20秒後、ACC懸濁液に安定化剤溶液を加え、その後、エタノールを加えて安定化されたACC懸濁液を創った。得られた安定化されたACC懸濁液は溶液中にて約20℃で少なくとも3時間及び0℃で少なくとも9時間、ACCを安定化させた。次いでブフナー漏斗を用いて、懸濁液でまだ安定である間にACCを濾過し、濾過したケーキを40〜50℃での常用オーブンを用いて乾燥させた。
実施例2
【0067】
カルシウム溶液は1リットルの水と88.8gの塩化カルシウムと700mgのクエン酸を含有した。炭酸塩溶液は1リットルの水と84.8gの炭酸ナトリウムを含有した。安定化溶液は200mLの水と1.4gのクエン酸を含有し、350mLのエタノールを有機溶媒として使用した。カルシウム溶液と炭酸塩溶液を一緒に混ぜ合わせて安定化されていないACCを析出させ、20秒後、ACC懸濁液に安定化剤溶液を加え、その後、エタノールを加えて安定化されたACC懸濁液を創った。得られた安定化されたACC懸濁液は溶液中にて約20℃で少なくとも3時間及び0℃で少なくとも9時間、ACCを安定化させた。次いでブフナー漏斗を用いて、懸濁液でまだ安定である間にACCを濾過し、濾過したケーキを窒素雰囲気下で40〜50℃、400mbにて真空オーブンを用いて乾燥させた。
実施例3
【0068】
カルシウム溶液は1リットルの水と88.8gの塩化カルシウムと888mgのホスホスレオニンを含有した。炭酸塩溶液は1リットルの水と84.8gの炭酸ナトリウムを含有した。1.776gのクエン酸をを350mLのエタノールに溶解した。カルシウム溶液と炭酸塩溶液を一緒に混ぜ合わせて安定化されていないACCを析出させ、20秒後、ACC懸濁液にエタノール/安定化剤溶液を加え、安定化されたACC懸濁液を創った。得られた安定化されたACC懸濁液は溶液中にて約20℃で少なくとも5時間及び0℃で少なくとも9時間、ACCを安定化させた。次いでブフナー漏斗を用いて、懸濁液でまだ安定である間にACCを濾過し、濾過したケーキを40〜50℃での常用オーブンを用いて乾燥させた。
実施例4
【0069】
カルシウム溶液は1リットルの水と88.8gの塩化カルシウムと20gのスクロースと3.35gの水酸化ナトリウムを含有した。炭酸塩溶液は1リットルの水と84.8gの炭酸ナトリウムを含有した。安定化溶液は200mLの水と40gのスクロースと6.67gの水酸化ナトリウムを含有し、350mLのエタノールを有機溶媒として使用した。カルシウム溶液と炭酸塩溶液を一緒に混ぜ合わせて安定化されていないACCを析出させ、20秒後、ACC懸濁液に安定化剤溶液を加え、その後、エタノールを加えて安定化されたACC懸濁液を創った。得られた安定化されたACC懸濁液は約20℃で少なくとも10時間及び0℃で少なくとも24時間安定なACCを含んだ。次いで卓上遠心機を用いて4000rpmで5分間、ACCを遠心し、上清を捨て、濃縮された生成物を−80℃で高真空の凍結乾燥機用いて一晩凍結乾燥した。
実施例5
【0070】
カルシウム溶液は1リットルの水と88.8gの塩化カルシウムと10gのセリンと3.8gの水酸化ナトリウムを含有した。炭酸塩溶液は1リットルの水と84.8gの炭酸ナトリウムを含有した。安定化溶液は200mLの水と20gのセリンと7.62gの水酸化ナトリウムを含有し、350mLのエタノールを有機溶媒として使用した。カルシウム溶液と炭酸塩溶液を一緒に混ぜ合わせて安定化されていないACCを析出させ、20秒後、ACC懸濁液に安定化剤溶液を加え、その後、エタノールを加えて安定化されたACC懸濁液を創った。得られた安定化されたACC懸濁液は約20℃で少なくとも2時間及び0℃で少なくとも8時間安定なACCを含んだ。次いで卓上遠心機を用いて4000rpmで5分間、ACCを遠心し、上清を捨て、濃縮された生成物を−80℃で高真空の凍結乾燥機用いて一晩凍結乾燥した。
実施例6
【0071】
カルシウム溶液は1リットルの水と88.8gの塩化カルシウムと10gのセリンと3.8gの水酸化ナトリウムを含有した。炭酸塩溶液は1リットルの水と84.8gの炭酸ナトリウムを含有した。安定化溶液は200mLの水と20gのスクロースと7.62gの水酸化ナトリウムを含有し、350mLのエタノールを有機溶媒として使用した。カルシウム溶液と炭酸塩溶液を一緒に混ぜ合わせて安定化されていないACCを析出させ、20秒後、ACC懸濁液に安定化剤溶液を加え、その後、エタノールを加えて安定化されたACC懸濁液を創った。得られた安定化されたACC懸濁液は約20℃で少なくとも6時間及び0℃で少なくとも24時間安定なACCを含んだ。次いで卓上遠心機を用いて4000rpmで5分間、ACCを遠心し、上清を捨て、濃縮された生成物を−80℃で高真空の凍結乾燥機用いて一晩凍結乾燥した。
【0072】
図1及び2は、上記実施例1及び2に従って調製された乾燥試料の代表的なACCのラマンスペクトル及びXRDスペクトルを示す。図3及び4は比較のためにバテライト及びカルサイトのXRDスペクトルを示す。
【0073】
本発明を詳細に記載してきたが、当業者は多数の変更及び改変を行うことができることを十分に理解するであろう。従って、本発明は、詳細に記載された実施形態に限定されるように解釈されるべきではなく、本発明の範囲及び概念は後に続く特許請求の範囲を参照してさらに容易に理解されるであろう。




図1
図2
図3
図4