(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263189
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】有機モノリスゲル用の断熱性組成物、その使用およびそれを調製する方法
(51)【国際特許分類】
C08L 61/12 20060101AFI20180104BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
C08L61/12
C08L101/14
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-537385(P2015-537385)
(86)(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公表番号】特表2015-533384(P2015-533384A)
(43)【公表日】2015年11月24日
(86)【国際出願番号】IB2013059208
(87)【国際公開番号】WO2014060906
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年10月5日
(31)【優先権主張番号】1259895
(32)【優先日】2012年10月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591136931
【氏名又は名称】ハッチンソン
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スウォボダ バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】デュフール ブリュノ
(72)【発明者】
【氏名】ソンタグ フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニアク クリストフ
【審査官】
柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−016249(JP,A)
【文献】
特開2001−114852(JP,A)
【文献】
特開2002−283488(JP,A)
【文献】
特開2004−059904(JP,A)
【文献】
特開2007−039263(JP,A)
【文献】
Mariano M. Bruno,A novel way to maintain resorcinol-formaldehyde porosity during drying:Stabilization of the sol-gel nanostructure using a cationic polyelectrolyte,Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects,米国,2010年,362,28-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解によって多孔質炭素モノリスを形成することができる有機ポリマー性モノリスゲルを形成するゲル化炭素系組成物であって、1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンRおよび1種または複数種のホルムアルデヒドFから少なくとも部分的に誘導される樹脂をベースとし、40mW.m-1.K-1以下の熱伝導率を有し、少なくとも1種の水溶性カチオン性高分子電解質Pを0.2%から2%の間の質量分率で含むことを特徴とする、ゲル化炭素系組成物。
【請求項2】
水性溶媒W中、溶媒に溶解された前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pおよび触媒の存在下で、前記1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンRと1種または複数種のホルムアルデヒドFとを重合させる反応の生成物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の炭素系組成物。
【請求項3】
前記炭素系組成物が、前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pを、2%から10%の間である、前記1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンRおよび1種または複数種のホルムアルデヒドFに対する質量比P/(R+F)で含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の炭素系組成物。
【請求項4】
前記炭素系組成物が、前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pを、0.3%から2%の間である、前記1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンR、1種または複数種のホルムアルデヒドFおよび水性溶媒Wに対する質量比P/(R+F+W)で含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素系組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の水溶性カチオン性高分子電解質Pが、第四級アンモニウム塩、ポリ(ビニルピリジニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(アリルアミンヒドロクロリド)、ポリ(トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリド)、ポリ(アクリルアミド−co−ジメチルアンモニウムクロリド)およびそれらの混合物からなる群から選択される有機ポリマーであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭素系組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の水溶性カチオン性高分子電解質が、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムハライド)から選択される、第四級アンモニウムから誘導される単位を含む塩であり、好ましくはポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)またはポリ(ジアリルジメチルアンモニウムブロミド)であることを特徴とする、請求項5に記載の炭素系組成物。
【請求項7】
− 400m2/gから1200m2/gの間の比表面積、および/または
− 0.1cm3/gから3cm3/gの間の細孔容積、および/または
− 3nmから30nmの間の平均孔径、および/または
− 0.04から0.4の間の密度
を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の炭素系組成物。
【請求項8】
建築物の断熱のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭素系組成物を調製する方法であって、
a) 前記樹脂をベースとする溶液を得るために、水性溶媒W中、溶媒に溶解された前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pおよび触媒の存在下で、前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pを前記炭素系組成物中の質量分率で0.2%から2%の間で使用し、前記1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンRと1種または複数種のホルムアルデヒドFとを重合させるステップ、
b) 前記樹脂のゲルを得るために、a)で得られた溶液をゲル化させるステップ、ならびに
c) 前記有機ポリマー性モノリスゲルを得るために、b)で得られたゲルを乾燥させるステップ
を含むことを特徴とする調製方法。
【請求項10】
ステップa)が、
− 2%から10%の間である、前記1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンRおよび1種または複数種のホルムアルデヒドFに対する質量比P/(R+F)、ならびに/または
− 0.3%から2%の間である、前記1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンR、1種または複数種のホルムアルデヒドFおよび水性溶媒Wに対する質量比P/(R+F+W)
である前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pを使用することによって行われることを特徴とする、請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
− ステップa)が、周囲温度で、前記水性溶媒に、前記1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンRおよび前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pを溶解させ、次いで得られた溶液に前記1種または複数種のホルムアルデヒドFおよび前記酸性または塩基性触媒を添加することによって行われ、次いで
− ステップb)が、オーブン中で前記溶液を硬化させることによって行われる
ことを特徴とする、請求項9または10に記載の調製方法。
【請求項12】
− 400m2/gから1200m2/gの間の比表面積、および/または
− 0.1cm3/gから3cm3/gの間の細孔容積、および/または
− 3nmから30nmの間の平均孔径、および/または
− 0.04から0.4の間の密度
を有する前記有機ポリマー性モノリスゲルを得るために、ステップc)が、溶媒交換することなく、および超臨界液体を用いて乾燥させることなく、湿度の高い空気での、たとえばオーブン中での乾燥によって行われることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解によって多孔質炭素モノリスを形成することができる有機ポリマー性モノリスゲルを形成するゲル化炭素系組成物、かかる組成物の使用、かかる炭素系組成物を調製する方法に関する。本発明は、特に、超低密度、高比表面積および高細孔容積を有する、エアロゲルなどのかかる有機ゲルまたはかかる炭素モノリスを得て、それらを超断熱材料(すなわち、典型的にはおよそ40mW.m
-1.K
-1以下の熱伝導率を有する)として使用することに適用される。
【背景技術】
【0002】
エアロゲルは、ゲル化およびそれに次ぐゲルの乾燥後に得られる多孔質材料であり、溶媒として作用する液体が気体または気体混合物に置き換えられたものである。超低密度であれば(または高細孔容積であれば)、これらの材料は断熱材としての使用に極めて有望である。これは、そのナノ多孔性により、細孔に含有される空気の対流の作用を制限することが可能となるからである。
【0003】
しかし、超低密度のエアロゲルの調製は、その限られた機械的性質のために複雑であり、それにより現在のところ従来のオーブン乾燥を行うことができないが、それは特に、こうしたオーブン乾燥の間に溶媒が蒸発することに起因し、それにより材料内に内部応力が生じ、そのナノ構造が破壊され、その中に大きな亀裂(macrofissure)が入るからである。こうした理由から、これらの低密度エアロゲルを製造するために、従来から超臨界CO
2を用いた乾燥が使用されている。この方法は、ナノ構造の安定性という点で良い結果をもたらすが、エアロゲルの製造コストを不利にするという欠点がある。
【0004】
シリカエアロゲルは、超断熱材(これらのエアロゲルは、約0.015から0.020W.m
-1.K
-1の熱伝導率を有することができる)として適用するために最も広く研究されてきたものであるが、こうした研究結果の例外ではない。よって、従来のオーブン乾燥を用いると、これらのシリカゲルは相当に高密度化し、そのナノ構造を失う。さらに、これらのゲルに亀裂が発生すると微粒子が生じ、シリカナノ粒子の粉末による放出に起因する毒性の問題をもたらす。よって、研究努力は、シリカエアロゲルの表面の化学的性質の改質後のそのスプリングバック効果および非反応性基でのシラノール基の置換に重点を置いて為され、蒸発乾燥後に高密度化を可逆的にすることを可能としてきた。
【0005】
この原理により、超断熱性ナノ構造エアロゲルの形態の低密度シリカ粉末の工業生産が可能となったが、安定なモノリス材料の合成は可能となっておらず、それは、比表面積の高い有機エアロゲルが、それ自体でも超断熱材としての使用が有望であるのとは対照的である。
【0006】
公知のように、これらの有機エアロゲルは、典型的にはレゾルシノール−ホルムアルデヒド(RF)樹脂から調製され、それは、費用がかからず、水中で使用されるゲルを与えることができ、調製条件に応じて(たとえば、試薬RおよびFならびに触媒の比率に従って)様々な多孔度値および密度値を有することができるという利点を有する。さらに、これらの有機エアロゲルは比表面積の高い炭素の形態に熱分解することができ、それは、赤外線を吸収するという利点、よって高温での熱伝導率が低いという利点を有する。その一方で、前駆体の重縮合によって得られるこれらの化学ゲルは不可逆性であり、したがって再利用することができない。さらに、転化率が高いとこれらのゲルは疎水性となって沈降し、それによりこれらの材料内に機械的応力が引き起こされ、その脆弱性が増大する。
【0007】
よって、シリカエアロゲルに関しては、超低密度の有機モノリスエアロゲルを得るために、ナノ構造の破壊または収縮、およびこれらのエアロゲルの比表面積の損失が起こらないように十分に穏やかな乾燥技法を使用することが必要である。こうした乾燥は、従来から、アルコールでの溶媒交換、それに次ぐ超臨界CO
2を利用する乾燥を通して行われている。
【0008】
レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂をベースとする、かかる有機モノリスエアロゲルを製造する方法を記載するものには、たとえば文献米国特許第4997804(A)号明細書を挙げることができ、その文献では、かかる溶媒交換およびそれに次ぐ超臨界液体による乾燥を使用する。
【0009】
前に示したように、かかる乾燥技法の主要な欠点は、実行が複雑であり、極めて費用が高いことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4997804(A)号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】M.A.Aegerterら、「Aerogel Handbook」Advances in Sol−Gel Derived Materials and Technologies、第22章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一つの目的は、熱分解によって超断熱性多孔質炭素モノリス(すなわち、40mW.m
-1.K
-1以下の熱伝導率を有する)を形成することができる有機ポリマー性モノリスゲルを形成するゲル化炭素系組成物を提供することであり、それにより、上述の欠点のすべてを克服することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願人は、驚いたことに、水相中でポリヒドロキシベンゼンおよびホルムアルデヒド型の樹脂の前駆体に水溶性カチオン性高分子電解質からなる特定の群の添加剤を添加すると、高比表面積、超低密度および高細孔容積を同時に有するモノリスゲルまたはその加熱変性物を得ることが可能となり、それと同時に溶媒交換および超臨界液体による乾燥を不要にすることができることを発見し、これにより上述の目的が達成される。
【0014】
この趣旨で、1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンRおよび1種または複数種のホルムアルデヒドFから少なくとも部分的に誘導される樹脂をベースとする本発明による炭素系組成物は、それが少なくとも1種の水溶性カチオン性高分子電解質Pを含むようなものである。
【0015】
このカチオン性高分子電解質を組込んだ本発明の組成物は、超臨界CO
2を用いる乾燥よりもはるかに実行し易く、ゲルの製造コストを不利にすることが少ない、オーブン乾燥を使用することによって有利に得ることができることに留意されたい。実際に、本出願人は、添加剤により、オーブン乾燥の後に得られるゲルの高多孔性を保持すること、および高比表面積および高細孔容積と合わせて超低密度をそれに与えることが可能となることを発見した。
【0016】
用語「ゲル」は、公知のように、自然にまたは触媒作用下で、コロイド溶液のフロキュレーションおよび凝結によって形成する、コロイド材料と液体との混合物を意味することを意図している。
【0017】
用語「水溶性ポリマー」は、水と混合したときにディスパージョンを形成する能力がある水分散性ポリマーとは異なり、添加剤(特に界面活性剤)を添加することなく水に溶解させることができるポリマーを意味することを意図している。
【0018】
本発明の別の特徴によれば、前記炭素系組成物は、水性溶媒W中、溶媒に溶解された前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pおよび酸性または塩基性触媒の存在下で、前記1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンRと1種または複数種のホルムアルデヒドFとを重合させる反応の生成物を含む。
【0019】
有利には、前記重合反応の生成物は、
− 前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pを、0.2%から2%の間、好ましくは0.3%から1%の間である、極めて低い質量分率で、ならびに/または
− 前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pを、2%から10%、好ましくは3%から7%の間である、前記1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンRおよび1種または複数種のホルムアルデヒドFに対する質量比P/(R+F)で、ならびに/または
− 前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pを、0.3%から2%の間、好ましくは0.4%から1.5%の間である、前記1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンR、1種または複数種のホルムアルデヒドFおよび水性溶媒Wに対する質量比P/(R+F+W)で、
含むことができる。
【0020】
前記少なくとも1種の高分子電解質は、水に完全に溶解可能でイオン強度の低い、任意のカチオン性高分子電解質であってもよい。
【0021】
好ましくは、それは、第四級アンモニウム塩、ポリ(ビニルピリジニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(アリルアミンヒドロクロリド)、ポリ(トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリド)、ポリ(アクリルアミド−co−ジメチルアンモニウムクロリド)およびそれらの混合物からなる群から選択される有機ポリマーである。
【0022】
さらに優先的には、前記少なくとも1種の水溶性のカチオン性高分子電解質Pは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムハライド)から選択される、第四級アンモニウムから誘導される単位を含む塩であり、好ましくは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)またはポリ(ジアリルジメチルアンモニウムブロミド)である。
【0023】
本発明に使用可能な、前記樹脂の前駆体ポリマーのうち、ポリヒドロキシベンゼン型の少なくとも1種のモノマーと少なくとも1種のホルムアルデヒドモノマーとの重縮合から得られたポリマーを挙げることができる。この重合反応は、3種以上の別個のモノマーを含んでいてもよく、追加的なモノマーは、任意選択でポリヒドロキシベンゼン型である。使用可能なポリヒドロキシベンゼンは、優先的にはジヒドロキシベンゼンまたはトリヒドロキシベンゼンであり、有利には、レゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)、またはレゾルシノールと、カテコール、ハイドロキノンおよびフロログルシノールから選択される別の化合物との混合物である。
【0024】
1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンRおよび1種または複数種のホルムアルデヒドFは、たとえば、0.3から0.7の間のR/Fモル比に従って使用されてもよい。
【0025】
本発明の別の特徴によれば、前記炭素系組成物は、有利には、400m
2/gから1200m
2/gの間の比表面積、および/または0.1cm
3/gから3cm
3/gの間の細孔容積、および/または3nmから30nmの間の平均孔径、および/または0.04から0.4の間の密度を有していてもよい。
【0026】
エアロゲルなどの本発明の有機ポリマー性モノリスゲルは、上で定義した通りの炭素系組成物からなる。
【0027】
有利には、このゲルおよびその熱分解を通して得られた炭素モノリスは、10mW.m
-1.K
-1から40mW.m
-1.K
-1の間の熱伝導率、たとえば20から35mW.m
-1.K
-1の間の熱伝導率を有していてもよく、このゲルは、建築物の断熱に使用可能である。
【0028】
上で定義した通りの炭素系組成物を調製するための本発明の方法は、
a)前記樹脂をベースとする溶液を得るために、水性溶媒W中、溶媒に溶解された前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pおよび触媒の存在下で、前記1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンRと1種または複数種のホルムアルデヒドFとを重合させるステップ、
b)前記樹脂のゲルを得るために、a)で得られた溶液をゲル化させるステップ、ならびに
c)前記有機ポリマー性モノリスゲルを得るために、b)で得られたゲルを乾燥させるステップ
を含む。
【0029】
多孔質炭素モノリスを得るために、c)で得られた乾燥ゲルを熱分解に供する。
【0030】
有利には、上で示したように、ステップa)は、前記少なくとも1種の高分子電解質Pを、0.2%から2%の間である組成物中の質量分率、および/または2%から10%の間であるP/(R+F)質量比、および/または0.3%から2%の間であるP/(R+F+W)質量比で使用して行ってもよい。
【0031】
同様に、有利には、
− ステップa)を、周囲温度で、好ましくは水からなる前記水性溶媒に、前記1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンRおよび前記少なくとも1種のカチオン性高分子電解質Pを溶解させ、次いで得られた溶液に前記1種または複数種のホルムアルデヒドFおよび酸性でも塩基性でもよい前記触媒を添加することによって、次いで
− ステップb)を、オーブン中で前記溶液を硬化させることによって
を行うことができる。
【0032】
ステップa)で使用可能な触媒として、たとえば、酸性触媒、たとえば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、過塩素酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸、ジクロロ酢酸もしくはギ酸の水溶液、または他に、塩基性触媒、たとえば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸リチウム、アンモニア水、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムを挙げることができる。
【0033】
ステップa)において、たとえば、0.001から0.07の間である、1種または複数種のポリヒドロキシベンゼンと水のR/W質量比が使用されてもよい。
【0034】
好ましくは、ステップc)は、(合成条件、特にpHに従って)400m
2/gから1200m
2/gの間の比表面積、および/または0.1cm
3/gから3cm
3/gの間の細孔容積、および/または3nmから30nmの間の平均孔径、および/または0.04から0.4の間の密度を有する前記有機ポリマー性モノリスゲルを得るために、溶媒交換することなく、および超臨界液体を用いて乾燥させることなく、湿度の高い空気中での、たとえばオーブン中での乾燥によって行われる。
【0035】
本発明によるこの水相での調製方法は、このように、合成条件に従って変化する制御された多孔質構造を得ることを可能とすることに留意されたい。よって、もっぱらナノ細孔(すなわち、50nm未満の孔径を有する)の、あるいはナノ細孔とマクロ細孔(すなわち、50nmより大きい孔径を有する)とが共存する、低密度の構造を得ることができる。
【0036】
本発明の他の特性、利点および詳細は、非限定的な実例として与えられる以下の幾つかの本発明の実施例の説明を読めば明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明による調製例
以下の例は、2つの「対照」有機モノリスゲルG0およびG0’、5つの本発明による有機モノリスゲルG1〜G5、ならびに、対応する「対照」多孔質炭素C0およびC0’ならびに本発明による多孔質炭素C1〜C5の調製を説明するものであり、それらは、出発試薬として
− Acros Organics製レゾルシノール(R)、純度98%、
− Acros Organics製ホルムアルデヒド(F)、純度37%、
− ゲルG1〜G4用に塩酸、ゲルG5用に炭酸ナトリウムからなる触媒(C)、および
− ゲルG1〜G5用に、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(P)、純度35%(水W中溶液)
を用いる。
【0038】
これらのゲルG0、G0’およびG1〜G5を、以下のように調製した。
【0039】
最初のステップで、レゾルシノールRおよび高分子電解質P(ゲルG0およびG0’を除く)を、水を含有する容器中に溶解させる。次いで、完全に溶解した後に、ホルムアルデヒドFを添加した。得られたポリマー溶液を、触媒Cで適切なpHに調整した。但し、これらの操作のすべては周囲温度で(およそ22℃で)行った。第2のステップで、得られた溶液をTeflon(登録商標)の金型に移し、次いでゲル化を行うために90℃のオーブンに24時間入れた。
【0040】
次いでこのゲルを、
− ゲルG0’、G2、G4およびG5を得るために、湿度90%の加湿チャンバ中、85℃で17時間、または
− エアロゲルG0、G1およびG3を得るために、トリフルオロ酢酸浴中3日間、次いで無水エタノール浴中4日間での溶媒交換の後に、超臨界CO
2を使用して
乾燥させた。
【0041】
最後に、多孔質モノリス炭素C0、C0’およびC1〜C5を得るために、有機ゲルG0、G0’およびG1〜G5を、窒素下、800℃の温度で熱分解した。
【0042】
以降の表1において、
− R/Fは、レゾルシノールとホルムアルデヒドのモル比であり、
− R/Wは、レゾルシノールと水の質量比であり、
− Pは、高分子電解質の質量分率を示し、
− P/(R+F)は、高分子電解質とレゾルシノール−ホルムアルデヒド前駆体の質量比であり、
− P/(R+F+W)は、高分子電解質と、水を補足したレゾルシノール−ホルムアルデヒド前駆体の質量比であり、および
− CO
2scは、本発明で使用可能なオーブン乾燥に対して、超臨界CO
2を使用して乾燥させることを示す。
【0043】
ゲルG0、G2およびG4の熱伝導率(表2参照)および多孔質炭素C0、C2およびC4の熱伝導率(表3参照)を、熱線技法に従ってNeotim導電率計を用いて22℃で測定し、ゲルG4および対応する多孔質炭素C4の3点圧縮および引張力における機械的性質を、「対照」シリカエアロゲルG0”の性質と比較して(表4参照)、規格ASTM C165−07に従ってMTS引張/圧縮試験機を用いて測定した。
【0044】
各多孔質炭素C0、C0’およびC1〜C5について、比表面積、細孔容積および平均孔径を、Micromeritics製のTristar 3020測定器を使用して測定した(表2)。
【0048】
「対照」多孔質炭素C0およびC0’と本発明の多孔質炭素C1〜C5の比較から、カチオン性高分子電解質Pを添加すると、オーブン乾燥であっても、得られた低密度、ナノメータ構造を維持することが可能となるのに対して(多孔質炭素C0の値と同程度である、C2、C4およびC5の比表面積、細孔容積および平均孔径の値を参照されたい)、この高分子電解質がないと、多孔質炭素C0のこうしたナノ構造を保持するために超臨界CO
2を用いる乾燥を使用することが必要となることが明らかに示される。
【0049】
これらの条件下で、本発明によるナノ構造化ゲルG1〜G5および炭素C1〜C5の密度は常に0.4以下である。
【0050】
pHを1に調整した場合、これらの結果は、はるかに密度の低い(0.06以下)モノリス材料(本発明のゲルG3およびG4ならびに炭素C3およびC4を参照されたい)を得ることができることも示している。
【0051】
最後に、本発明のゲルG5および対応する炭素C5について得られた結果から、酸性度を低くした媒体およびやや塩基性の媒体(pH>6)中でも合成が実行可能であることが示される。
【0053】
表4は、本発明によるゲルおよび多孔質炭素は、既知のシリカエアロゲルのものと比較して、非常に際立って向上した機械的性質を有することを示している。