(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263192
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ワイヤ放電加工によるターボ機械の翼の製造方法、翼およびターボ機械
(51)【国際特許分類】
F01D 9/02 20060101AFI20180104BHJP
F01D 9/04 20060101ALI20180104BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20180104BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
F01D9/02 104
F01D9/02 102
F01D9/04
F01D25/00 X
F01D25/24 G
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-538463(P2015-538463)
(86)(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公表番号】特表2015-533398(P2015-533398A)
(43)【公表日】2015年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2013072383
(87)【国際公開番号】WO2014067868
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年10月17日
(31)【優先権主張番号】CO2012A000054
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513243790
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】NUOVO PIGNONE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】グリリ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ジュスティ,エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】アルチオーニ,マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】チェッコーニ,マッシミリアーノ
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−195021(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0202889(US,A1)
【文献】
実開昭60−057706(JP,U)
【文献】
国際公開第2009/157817(WO,A1)
【文献】
実開昭57−071702(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 1/00
F01D 9/02
F01D 9/04
F01D 25/00
F01D 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線織面で横方向に画定され、第1の端部から第2の端部まで長手方向に延びる内部空洞を有する翼形部の前記内部空洞の前記線織面を、ワイヤ放電加工によって生成するステップと、
前記第1の端部で前記内部空洞と合う第1のスリーブを有する基部の前記第1のスリーブ、および、前記第2の端部で前記内部空洞と合わせれる第2のスリーブを有する囲い部の前記第2のスリーブのうち少なくとも一方の外側面を加工して形成するステップと、
前記基部および前記囲い部と前記翼形部とを合わせて、蝋付けするステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記基部および前記囲い部のうち少なくとも一方に、ワイヤ放電加工によって貫通穴を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基部を前記タービンの内側リングにレーザ溶接するステップと、
前記囲い部を前記タービンの外側リングにレーザ溶接するステップと、
前記内側リングおよび前記外側リングのうちの少なくとも一方の全周に延びて、前記内部空洞を連通する空洞を形成するステップと、
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本稿に開示する主題の実施形態は、概してターボ機械用の翼、そのような翼を使用するターボ機械、およびそのような翼の製造方法に関し、より具体的に、蒸気タービン用の静止翼、そのような翼を使用する蒸気タービン、およびそのような翼の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンにおいては、それらの1つまたは複数の最終段で蒸気の部分凝縮が生じる。
【0003】
特に、凝縮は、典型的にタービンの最終段である所謂「凝縮段」の静止翼の翼形部で生じる。
【0004】
凝縮の結果物として小滴が発生する場合、小滴は、静止する静止翼を離れ、回転する回転翼にぶつかり、したがって回転翼に損傷が生じ得る。
【0005】
小滴により生じる損傷を低減するために、回転翼の回転スピードが低減され得るが、こうしてタービンの効率も低減する。
【0006】
代替的に、回転翼の任意の損傷を低減するために、小滴の発生前に凝縮物を収集するための解決策が存在する。
【0007】
これらの解決策の最も典型的なものは、凝縮が生じ易い中空静止翼を使用し、翼の翼形部を通り翼形面から内側空洞まで延びる孔および/または溝を設け、任意の凝縮物が翼形面を離れ内側空洞に進入するように内側空洞から吸引することを含む。こうして、静止翼の翼形面に小滴が発生も放出もされず、正確には小滴の発生が完全に回避されることはないが、簡単に非常に低減される。
【0008】
蒸気タービン用の中空静止翼の製造は、従来、2つの金属シートから始められ、その後に2つの金属シートが2つの半シェルを形成するような方法で成形され、次いで2つの半シェル同士が溶接され、最後に幾らかの仕上げがしばしば行われた。
【0009】
時折、最近になって異なる製造方法が使用されており(例えば
図1を参照)、
−金属製の2つの棒材を取り、
−内側空洞の面を画定するように棒材を別々に圧延し(mill)、(例えば
図1Aを参照)、
−中空部品を得るように棒材同士を溶接し(例えば
図1Bを参照)、
−翼形面を画定するように中空部品を圧延仕上げする(例えば
図1Cを参照)。
【0010】
この製造方法は、翼の内側面すなわち内側空洞の面をかなり正確に画定することを可能にし、翼の外側面すなわち翼形面をかなり正確に画定することを可能にする。とにかく、(外側および内側の)圧延作業が比較的緩慢であるので、かなり高価である。
【0011】
タービン、特にガスタービンにおいて、中空翼は、回転要素の重量を低減するために回転翼に時折使用される。これらの中空翼は、極めて正確な形状およびサイズを有する回転要素を得るために、鋳造、特に「インベストメント鋳造」によって典型的に得られ、とにかく、この製造方法は、特に小ロット生産(例えば100〜1000個)に使用されるときに、非常に高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/202889号明細書
【発明の概要】
【0013】
したがって、形状および/またはサイズの正確さを犠牲にせずに、より容易かつ経済的な製造を可能にする、翼、特に蒸気タービン中空翼の解決策に一般的な必要性がある。特に、型を必要とせず、圧延および/または仕上げの必要性が限定されまたは必要性がなく、鋳造とは異なる、製造方法の必要性がある。
【0014】
加えて、翼形部のみならず基部および囲い部も一体である単一部品の中空翼を得ることが望ましい。
【0015】
とにかく、翼形部、基部および囲い部が3つの別々の部品である場合には、それらを容易に接合することが望ましい。
【0016】
最後に、一組の蒸気タービン中空翼を備えるモジュールを容易な方法で製造することが望ましい。
【0017】
究極的なゴールの一つは、比較的容易な方法および適正なコストで、良好な性能を有する蒸気タービンを製造することにあると考えられたい。
【0018】
本発明者らは、蒸気タービン中空翼の場合、内側空洞の面の形状が特に重要ではないという認識から始めており、このことは、他の種類の中空翼の内側空洞とはかなり異なる。他方で、翼形面の形状は、非常に重要である。
【0019】
これらの観察の観点において、発明者らは、(A)単一部品の翼を実現すること、(B)その形状が極めて正確であるように翼形面に圧延を使用すること、(C)実現が十分に簡単かつ容易であり、その形状が十分に正確である、すなわち、翼の内側面が翼の外側面とともに非常に十分に良好であるように、内側空洞にワイヤ放電加工すなわちワイヤEDMを使用することを考慮した。
【0020】
ワイヤEDMの使用によって、内側空洞の面が「規則面(ruled surface)」である。
【0021】
こうして、翼の製造に溶接が不要であり、翼の加工面の1つ以上の正確さが極めて高く、翼の翼形部の横壁の厚さが非常に小さくなり得る。
【0022】
この製造方法は、小ロット生産(例えば100〜1000個)に特に適しており便利である。
【0023】
本発明者らは、中空タービン翼の内側面の形成のみならず、翼の内側面と外側面の両方の形成にもワイヤEDMが適しており、これらの面が「規則面」またはそのような種類の面に非常に近似した面として設計される場合には、長い翼(例えば最大1000mm)にも適していることをその後に認識した。
【0024】
本発明の第1の態様は、ターボ機械用の翼である。
【0025】
第1の態様の実施形態によれば、ターボ機械用の翼は、翼形部を備え、前記翼形部は、所定の長さで長手方向に延び、第1の端部および第2の端部を有し、前記翼形部は、翼形面によって横方向に画定され、前記翼形面は、規則面である。
【0026】
第1の態様の代替的な実施形態によれば、ターボ機械用の翼は、翼形部を備え、前記翼形部は、所定の長さで長手方向に延び、第1の端部および第2の端部を有し、前記翼形部は、翼形面によって横方向に画定され、前記翼形部は、前記長さの全体に沿って延びる内側空洞を有し、前記内側空洞は、規則面によって横方向に画定される。
【0028】
翼は、蒸気タービン用の静止翼として構成され得、基部、囲い部および翼形部を備え、前記翼形部は、所定の長さで長手方向に延び、第1の端部および第2の端部を有し、前記第1の端部は、前記基部に隣接し、前記第2の端部は、前記囲い部に隣接し、前記翼形部は、翼形面によって横方向に画定され、前記翼形部は、前記長さの全体に沿って延びる内側空洞を有し、前記内側空洞は、規則面によって横方向に画定される。
【0029】
翼形部の任意の点で前記翼形面と前記規則面の間の距離(翼を横断して測定される。)は、可変であり得る。
【0030】
翼形部の任意の点で前記翼形面と前記規則面の間の距離(翼を横断して測定される。)は、1mmよりも大きく5mmよりも小さくあり得る。
【0031】
前記第1の端部で前記翼形面と前記規則面の間に第1のオフセットがあり、前記第1のオフセットは、一定であり得、1mm〜5mmの範囲であり得る。
【0032】
前記第2の端部で前記翼形面と前記規則面の間に第2のオフセットがあり、前記第2のオフセットは、一定であり得、1mm〜5mmの範囲であり得る。
【0033】
前記基部、前記囲い部および前記翼形部は、単一部品であり得、前記規則面は、前記基部および前記囲い部も通って延び得る。
【0034】
前記基部および前記囲い部は、前記第1および第2の端部で前記翼形部に接合され得る。この場合、前記基部は、前記第1の端部での前記規則面の形状に対応する形状を有する第1の(貫通)孔を有し、前記囲い部は、前記第2の端部での前記規則面の形状に対応する形状を有する第2の(貫通)孔を有する。
【0035】
前記基部は、前記翼形部の前記第1の端部での前記規則面と嵌合する外側面を有する第1のスリーブを備え得る。この場合、前記第1のスリーブは、規則面によって横方向に画定された第1の貫通孔を有し得る。
【0036】
前記囲い部は、前記翼形部の前記第2の端部での前記規則面と嵌合する外側面を有する第2のスリーブを備え得る。この場合、前記第2のスリーブは、規則面によって横方向に画定された第2の貫通孔を有し得る。
【0037】
翼は、単一の基部、単一の囲い部および複数の翼形部を備え得、前記翼形部のそれぞれは、所定の長さで長手方向に延び、第1の端部および第2の端部を有し、前記第1の端部のそれぞれは、前記基部に隣接し、前記第2の端部のそれぞれは、前記囲い部に隣接し、前記翼形部のそれぞれは、翼形面によって横方向に画定され、前記翼形部のそれぞれは、前記長さの全体に沿って延びる内側空洞を有し、前記内側空洞は、規則面によって横方向に画定される。
【0038】
前記基部は、プレートであり得またはプレートを備え得、前記プレートは、略平坦または湾曲しており、孔を有する。
【0039】
前記囲い部は、プレートであり得またはプレートを備え得、前記プレートは、略平坦または湾曲しており、孔を有する。
【0040】
前記翼形部は、前記翼形部から前記内側空洞まで延びる孔または溝を典型的に有する。
【0041】
本発明の第2の態様は、ターボ機械である。
【0042】
第2の態様の実施形態によれば、ターボ機械は、上述したような複数の翼を備える。
【0043】
ターボ機械は、蒸気タービンとして構成され得、上述したような複数の静止翼(特に、内側空洞が規則面によって横方向に画定され、基部、囲い部および翼形部が一体である。)を備える。
【0044】
ターボ機械は、複数の段を備え得、上述したような静止翼(特に、内側空洞が規則面によって横方向に画定され、基部、囲い部および翼形部が一体である。)が最終段にのみ使用される。
【0045】
ターボ機械は、第1の段から始まり最終段で終わる複数の段を備え得、(典型的に唯一の)前記最終段は、上述したような複数の静止翼(特に、内側空洞が規則面によって横方向に画定され、基部、囲い部および翼形部が一体である。)を備える。
【0046】
ターボ機械は、内側リングおよび上述したような複数の静止翼を備え得、前記静止翼の基部のそれぞれは、前記内側リングに固定される(すなわち、溶接あるいは挿入および溶接あるいは押込み嵌めおよび溶接)。
【0047】
ターボ機械は、外側リングおよび上述したような複数の静止翼を備え得、前記静止翼の囲い部のそれぞれは、前記外側リングに固定される(すなわち、溶接あるいは挿入および溶接あるいは押込み嵌めおよび溶接)。
【0048】
ターボ機械は、軸流タービンであり得る。
【0049】
本発明の第3の態様は、ターボ機械用の翼の製造方法である。
【0050】
第3の態様の実施形態によれば、翼形部を備えるターボ機械用の翼の製造方法では、前記翼形部の外側および/または内側面の少なくとも一方が、ワイヤ放電加工によって得られる。
【0051】
前記翼形部は、所定の長さで長手方向に延び得、第1の端部および第2の端部を有し、前記翼形部は、翼形面によって横方向に画定され得、前記翼形面は、ワイヤ放電加工によって得られ得る。
【0052】
前記翼形部は、所定の長さで長手方向に延び得、第1の端部および第2の端部を有し、前記翼形部は、翼形面によって横方向に画定され、前記翼形面は、前記長さの全体に沿って延びる内側空洞を有し得、前記内側空洞は、内側面によって横方向に画定され、前記内側面は、ワイヤ放電加工によって得られ得る。
【0053】
製造方法は、
A)金属製の棒材を用意する工程と、
B)前記棒材の外側を圧延する工程と、
C)貫通孔が規則面により画定されて得られるように、前記棒材の内側をワイヤ放電加工する工程とを含み得る。
【0054】
前記貫通孔は、50mmよりも大きく1000mmよりも小さい長さを有し得る。
【0055】
製造方法は、前記棒材を圧延する前に棒材を鋳造する更なる工程を含み得る。
【0056】
工程Bによって、前記基部、前記囲い部および前記翼形部の外側面が得られ得る。
【0057】
工程Bによって、前記翼形部の外側面のみが得られ得る。
【0058】
前記第1の端部で前記翼形面と前記規則面の間に第1のオフセットがあり、工程Cは、前記第1のオフセットが一定であるように行われ得る。
【0059】
前記第2の端部で前記翼形面と前記規則面の間に第2のオフセットがあり、工程Cは、前記第2のオフセットが一定であるように行われ得る。
【0060】
前記基部は、前記第1の端部で前記翼形部に(レーザ)溶接され得る。
【0061】
前記囲い部は、前記第2の端部で前記翼形部に(レーザ)溶接され得る。
【0062】
複数の翼形部は、同一の基部に(レーザ)溶接され得る。
【0063】
複数の翼形部は、同一の囲い部に(レーザ)溶接され得る。
【0064】
前記基部と前記翼形部は、前記第1の端部で蝋付けされ得る。
【0065】
前記囲い部と前記翼形部は、前記第2の端部で蝋付けされ得る。
【0066】
前記基部は、第1の貫通孔を有し得、前記第1の貫通孔は、ワイヤ放電加工によって得られ得る。
【0067】
前記囲い部は、第2の貫通孔を有し得、前記第2の貫通孔は、ワイヤ放電加工によって得られ得る。
【0068】
前記基部は、蒸気タービンの内側リングに(レーザ)溶接され得る。
【0069】
前記囲い部は、蒸気タービンの外側リングに(レーザ)溶接され得る。
【0070】
工程Bによって、前記翼形部の少なくとも外側面が得られ得、この場合、前記外側面から前記(長手方向の)貫通孔まで延びる(横方向の)孔または溝を作る更なる工程が工程Cの後に行われる。前記孔または溝は、放電加工によって有利に得られる。
【0071】
工程Bによって、前記翼形部の少なくとも外側面が得られ、この場合、前記外側面から前記(長手方向の)貫通孔まで延びる(横方向の)孔または溝を作る更なる工程が工程Cの前に行われる。前記孔または溝は、レーザ削孔または切断によって有利に得られる。
【0072】
本稿に組み込まれ本明細書の一部を成す添付図面は、本発明の実施形態を図示しており、これらの実施形態を詳細な説明と共に説明している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】従来技術によりまたは本発明により実施可能である蒸気タービン中空翼の製造方法を非常に模式的に示している。
【
図2】本発明による蒸気タービン中空翼の第1の製造方法を非常に模式的に示している。
【
図3】本発明による蒸気タービン中空翼の第2の製造方法を非常に模式的に示している。
【
図4】
図2に示す方法に従って、本発明による蒸気タービン中空翼を組み立てる第1の可能性を非常に模式的に示している。
【
図5】
図2に示す方法に従って、本発明による蒸気タービン中空翼を組み立てる第2の可能性を非常に模式的に示している。
【
図6】本発明による蒸気タービン中空翼モジュールを組み立てる第1の可能性を非常に模式的に示している。
【
図7】本発明による第1の蒸気タービン段を非常に模式的かつ部分的に示している。
【
図8】本発明による蒸気タービン中空翼モジュールを組み立てる第2の可能性を非常に模式的に示している。
【
図9】本発明による第2の蒸気タービン段を非常に模式的かつ部分的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0074】
例示的な実施形態の以下の説明は、添付図面を参照している。異なる図面中の同一の参照番号は、同一または類似の要素を指している。以下の詳細な説明は、本発明を限定しない。代わりに、本発明の範囲は、添付の請求項によって規定される。
【0075】
添付図面においては、時折、明確性のためにサイズが誇張されており、言い換えれば、それらは、相互間で縮尺が完全には一致していないことに留意されたい。
【0076】
本明細書を通じた「一実施形態」または「実施形態」の参照は、実施形態に関連して記述する特定の特徴、構造または性質が、開示する主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。よって、本明細書を通じた各種の箇所の「一実施形態において」または「実施形態において」という言い回しの出現は、必ずしも同一の実施形態を参照していない。さらに、特定の特徴、構造または性質は、1つ以上の実施形態において任意の適した方法で組み合わされ得る。
【0077】
ターボ機械(圧縮器、膨張器、タービン…)の翼は、翼形部から成り、または翼形部を備える。翼形部は、第1の端部と第2の端部の間で幾らかの長さで長手方向に延び、一般に、その断面は、その長さに沿って変化する。翼形部は、翼形部の動作にとって非常に重要であり、翼の「外側横面」または「翼形面」である、形成される1つの面を基本的に有する。幾つかの用途の場合、翼形部は、中空であり、すなわち、具体的な用途および具体的な設計に応じて、その長さの全体または一部に沿って延びる内側空洞を有し、例えば、
図1の翼では、内側空洞は、翼の全長に沿って延びている。内側空洞は、翼の「内側横面」または簡単に「内側面」と呼ばれ得る面によって横方向に画定され、一般に、内側空洞の断面は、その長さに沿って変化し、とにかく、具体的な用途および具体的な設計に応じて、内側空洞の断面の変化は、翼形部の断面の変化とは異なり得、言い換えれば、翼形部の横壁の厚さは、その長さに沿って、および点から点まででも変化し得る。
【0078】
本発明によれば、翼形部の外側または内側面の少なくとも一方は、ワイヤ放電加工すなわち「ワイヤEDM」によって得られる。このことは、「オイルおよびガス」用途のターボ機械の翼に特に当てはまり、蒸気タービンの最終段の場合、静止翼は、50mmから最大1000mmまでの範囲の長さを有する。
【0079】
第1の可能性は、外側面すなわち翼形面のみをワイヤEDMによって形成することであり、例えば、ワイヤEDMは、
図1では、
図1Bの部品を加工し、
図1Cの部品を得るために、
図2では、
図2Aの部品を加工し、
図2Bの部品を得るために使用され得る。
【0080】
第2の可能性は、内側面すなわち内側空洞の面のみをワイヤEDMによって形成することであり、例えば、ワイヤEDMは、
図1では、2つの別々の棒材を加工し、
図1Aの2つの部品を得るために、
図2では、
図2Bの部品を加工し、
図2Cの部品を得るために使用され得る。
【0081】
第3の可能性は、翼形部の外側面と内側面の両方をワイヤEDMによって形成することである。
【0082】
ワイヤEDMによって「規則面」のみが得られ得、この用語によって、「単純な」規則面のみならず、例えば、底部にある大きな円錐面および頂部にある小さな円筒面等、2つ以上の規則面の組合せから導出される「複雑な」規則面も意味されることに注目されたい。
【0083】
ワイヤEDMによって様々な多くの面が得られ得るが、この技術が使用される場合、翼の設計は、例えば、正確な規則面または規則面に十分に近似した面である翼の面の理想形状を見出すことを目的とすることを考慮されたい。このことが可能でないときには、ワイヤEDMに代えて圧延が使用され得、具体的な用途に応じて、ワイヤEDMに代わる圧延の必要性が任意の翼形面に当てはまり得ることに注目されたい。確実に、ワイヤEDMは、蒸気タービンの静止翼の内側空洞の面の場合のように、形状およびサイズの精度が極めて高くないときに、非常に有利に使用され得る。
【0084】
図2を参照すると、翼形部202のみを有する翼201の製造方法は、
A)金属製の棒材を用意する工程(
図2A)と、
B)棒材の外側を圧延する工程(
図2B)と、
C)貫通孔205が規則面により画定されて得られるように、棒材の内側をワイヤ放電加工する工程(
図2C)とを含む。
【0085】
図3を参照すると、翼301の製造方法は、金属製の棒材を用意する工程と、棒材を鋳造する工程(
図3A)と、棒材の外側を圧延する工程(
図3B)と、貫通孔305が規則面により画定されて得られるように、棒材の内側をワイヤ放電加工する工程(
図3C)とを含む。
【0086】
図3の実施形態によれば、まず鋳造し、次いで圧延することによって、翼形部302の外側面のみならず、翼形部302に両方とも隣接する基部303および囲い部304の外側面も得られ、貫通孔305は、翼形部302の全長に沿ってのみならず、基部303および囲い部304の内側にも延び、この場合、基部および囲い部は、翼形部と一体である。
【0087】
翼形部が基部および囲い部と一体ではない、本発明のそれらの実施形態によれば、製造方法の一工程は、翼形部の外側面のみの形成に使用される(例えば
図2Bを参照)。
【0088】
この場合、翼形部の第1の端部(
図2Cの2021)には、翼形面と規則面の間に第1のオフセットがあり、この第1のオフセットが一定であるようにワイヤEDMが行われ得る。
【0089】
この場合、翼形部の第2の端部(
図2Cの2022)には、翼形面と規則面の間に第2のオフセットがあり、この第2のオフセットが一定であるようにワイヤEDMが行われ得る。
【0090】
典型的に、これらの2つの特徴部は、あわせて実施される。
【0091】
図4の実施形態は、翼形部402、基部403および囲い部404を備える翼401であり、翼形部402は、
図2の翼形部202と同様に製造され得る。
【0092】
基部403は、翼形部402に、その第1の端部4021で溶接され、有利にはレーザ溶接される。
【0093】
囲い部404は、翼形部402に、その第2の端部4022で溶接され、有利にはレーザ溶接される。
【0094】
類似の製造アプローチは、
図6の翼601に使用される。この場合、翼は、複数の翼形部602(
図6Aを参照)、特に3つ(適した数は、2〜5の範囲である。)の翼形部を備え、翼形部602は、同一の単一の囲い部604(
図6Bを参照)に溶接され、有利にはレーザ溶接され、単一の基部603についても同じであり、こうして、複数翼または「翼モジュール」601が得られる(
図6Cを参照)。基部603および囲い部604が湾曲プレートの形態であることに注目されたい。
【0095】
翼形部を基部および/または囲い部と接合する代替的な方法において、蝋付けが用いられる。
【0096】
図5の実施形態によれば、
図2の翼形部202と類似し得る翼形部502を用意し、第1の端部5021で基部503に蝋付けし、第2の端部5022で囲い部504に蝋付けすることによって、翼501が得られる。
【0097】
図5の特定の実施形態によれば、基部503は、(略平坦な)プレート5031およびスリーブ5032を備え、スリーブ5032は、翼形部502の内側空洞505に挿入される。スリーブ5032は、好適には、翼形部502の第1の端部5021での内側空洞505の規則面と嵌合する外側面を有し、こうして、良好な蝋付けが実現され得る。内側空洞505の内側面の形成にワイヤEDMが使用され、スリーブ5032の外側面の形成に圧延が使用される場合に、非常に良好な嵌合が実現され得、実際に、ワイヤEDMマシンおよび圧延マシンは、「コンピュータ支援」されており、したがって、2つの部品の別個の面に同一形状(または非常に類似した2つの形状)を設定することが可能である。また、スリーブ5032は、
図5に示すように典型的に中空であり、ワイヤEDMによって得られる。
【0098】
図5の実施形態によれば、
図2の翼形部202に類似し得る翼形部502を用意し、第1の端部5021で基部503に蝋付けし、第2の端部5022で囲い部504に蝋付けすることによって、翼501が得られる。
【0099】
図5の特定の実施形態によれば、囲い部504は、(略平坦な)プレート5041およびスリーブ5042を備え、スリーブ5042は、翼形部502の内側空洞505に挿入される。スリーブ5042は、好適には、翼形部502の第1の端部5021での内側空洞505の規則面と嵌合する外側面を有し、こうして、良好な蝋付けが実現され得る。内側空洞505の内側面の形成にワイヤEDMが使用され、スリーブ5042の外側面の形成に圧延が使用される場合に、非常に良好な嵌合が実現され得、実際に、ワイヤEDMマシンおよび圧延マシンは、「コンピュータ支援」されており、したがって、2つの部品の別個の面に同一形状(または非常に類似した2つの形状)を設定することが可能である。また、スリーブ5042は、
図5に示すように典型的に中空であり、ワイヤEDMによって得られる。
【0100】
蝋付けは、
図6の複数翼のように複数翼または「翼モジュール」にも、溶接に代えて使用され得る。
【0101】
例えば
図5の実施形態における蝋付けの代替として、適当な接着剤が使用され得、接着剤は、翼の動作条件(例えば、温度、圧力、流動物質)を考慮して選択されなければならない。
【0102】
基部および囲い部のうちの一方またはそれぞれは、貫通孔を有し得、このことは、例えば
図4、
図5、
図6の実施形態の場合にも当てはまる。
【0103】
この場合、例えば、これらの貫通孔は、ワイヤEDMによって得られ得、こうして、翼形部の端部での内側空洞の形状と、基部または囲い部の孔の形状との間の完全な一致が実現され得、完全な溶接が行われ得、実際に、ワイヤEDMマシンは、「コンピュータ支援」されており、したがって、別個の要素に同一形状(または非常に類似した2つの形状)を設定することが可能である。
【0104】
図7は、
図4の翼401の適用を示しており、代替的に、
図5の翼501または
図6の複数翼もしくは「翼モジュール」601が、
図4の翼401の代わりに使用され得る。この実施形態によれば、翼401の基部403のそれぞれは、タービンの内側リング708に溶接され、有利にはレーザ溶接され、翼401の囲い部404のそれぞれは、タービンの外側リング709に溶接され、有利にはレーザ溶接され、基部または囲い部と対応するリングとの間は、押込み嵌めによって、または簡単に嵌込みによって結合され得る。
【0105】
具体的に、
図7は、(軸流)蒸気タービンの最終段の静止翼の配列を部分的に示している。この構成は、組立の観点から非常に有利である。
【0106】
図8は、互いに隣接する、
図3の複数の翼301に対応する複数翼または「翼モジュール」807を示しており、翼301同士は、溶接されてもよく、溶接されなくてもよい。
【0107】
図9は、
図8の複数翼または「翼モジュール」807の適用を示している。この実施形態によれば、翼301の基部303のそれぞれは、タービンの内側リング908に溶接され、有利にはレーザ溶接され、翼301の囲い部304のそれぞれは、タービンの外側リング909に溶接され、有利にはレーザ溶接され、基部または囲い部と対応するリングとの間は、例えば、相補的な形状部および挿入ガイドによって結合され得る(
図9を参照)。
【0108】
具体的に、
図9は、(軸流)蒸気タービンの最終段の静止翼の配列を部分的に示している。この構成は、組立の観点から非常に有利である。
【0109】
本発明が蒸気タービンの静止翼に使用される場合、孔および/または溝は、典型的に凝縮物の吸収のために提供される。
【0110】
第1の可能性によれば、翼を横断し翼形部の外側面から翼形部の内側面まで延びる孔または溝は、翼の内側空洞の形成後に作られる。この場合、孔または溝は、放電加工によって得られる。
【0111】
第2の可能性によれば、翼を横断し翼形部の外側面から翼形部の内側面まで延びる孔または溝は、好適には、翼の内側空洞の形成によって作られる。この場合、孔または溝は、レーザ削孔または切断によって得られる。
【0112】
図7および
図9の内側リング708および908ならびに外側リング709および909は、リングの全周に延び翼の内側空洞と連通する内側空洞を有し、そのような解決策は、凝縮物の収集または他の目的(例えば流体の循環)に使用され得る。
【0113】
本発明による製造方法の使用によって、新規かつ進歩的なターボ機械の翼が得られる。
【0114】
本質的に、翼の翼形部の外側面または内側面の少なくとも一方は、「規則面」であり、この用語によって、「単純な」規則面のみならず、2つ以上の規則面の組合せから導出される「複雑な」規則面も意味されることに注目されたい。
【0115】
本発明の典型的な適用において、翼形部の全長の全体に沿って延びる内側空洞は、規則面によって横方向に画定される(例えば
図2を参照)。
【0116】
翼は、翼形部の任意の部分で、外側面と内側面の間の距離(翼を横断して測定される)が変化可能であるように設計され得、特に、この距離は、1mmよりも大きく5mmよりも小さいことが好ましい。
【0117】
翼形部の第1の端部には、外側面と内側面の間に第1のオフセットがあり、この第1のオフセットは、有利には一定であり、好適には1mm〜5mmの範囲である。
【0118】
翼形部の第2の端部には、外側面と内側面の間に第2のオフセットがあり、この第2のオフセットは、有利には一定であり、好適には1mm〜5mmの範囲である。
【0119】
有利な実施形態によれば、翼の基部、囲い部および翼形部は、単一の部品であり、この場合、内側空洞の規則面は、基部および囲い部も通って延びる(例えば
図3を参照)。
【0120】
代替的に、基部および囲い部は、それらの端部で翼形部に接合される(
図4および
図5を参照)。
【0121】
この場合、基部は、前記第1の端部での内側空洞の規則面の形状に対応する形状を有する第1の(貫通)孔を有し得、囲い部は、前記第2の端部での内側空洞の規則面の形状に対応する形状を有する第2の(貫通)孔を有し得る(
図4を参照)。
【0122】
なお、この場合、異なる製造方法によるが、基部は、翼形部の第1の端部での内側空洞の規則面と嵌合する外側面を有する第1のスリーブを備え、囲い部は、翼形部の第2の端部での内側空洞の規則面と嵌合する外側面を有する第2のスリーブを備える。この場合、第1のスリーブは、規則面により横方向に画定された第1の貫通孔を典型的に有し、第2のスリーブは、規則面により横方向に画定された第2の貫通孔を典型的に有する。
【0123】
僅かに記述した組立詳細は、「単一翼」(例えば、
図2の201、
図3の301、
図4の401、
図5の501)のみならず、「複数翼」または「翼モジュール」(例えば、
図6の601、
図8の807)にも実施され得る。
【0124】
僅かに記述した翼は、「単一翼」か「複数翼」かに拘らず、ターボ機械の段(例えば
図7および
図9を参照)、特に、蒸気タービンの、最終段の静止翼配列、特に正に最終の段で効果的かつ効率的に使用され得る。
【符号の説明】
【0125】
201、301、401、501、601、807 翼
202、302、402、502、602 翼形部
205、305、405、505、605 貫通孔、内側空洞
303、403、503、603 基部
304、404、504、604 囲い部
708、908 内側リング
709、909 外側リング
2021、4021、5021 第1の端部
2022、4022、5022 第2の端部
5031、5041 プレート
5032、5042 スリーブ