特許第6263195号(P6263195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263195
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】脱脂混合物
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/10 20060101AFI20180104BHJP
   C01B 33/26 20060101ALI20180104BHJP
   C01B 33/40 20060101ALI20180104BHJP
   C01B 33/42 20060101ALI20180104BHJP
   C01B 33/24 20060101ALI20180104BHJP
   C23G 5/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   B01J20/10 A
   B01J20/10 B
   C01B33/26
   C01B33/40
   C01B33/42
   C01B33/24 101
   C23G5/00
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-543416(P2015-543416)
(86)(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公表番号】特表2016-508861(P2016-508861A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2013074314
(87)【国際公開番号】WO2014079899
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】202012104510.9
(32)【優先日】2012年11月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515135550
【氏名又は名称】オイロテク・フェアトリープスゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンケルケッター・マルティーナ
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許第01757677(EP,B1)
【文献】 特開2001−353441(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/007051(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 − 20/34
C01B 33/20 − 39/54
C23G 1/00 − 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面から脂肪、油又はそのような疎水性の成分を除去するための脱脂混合物であり、その際、
−該脱脂混合物が、50質量%超の溶媒不含のケイ酸塩混合物を主成分として含有し、
−該ケイ酸塩混合物が、粒状のフィロケイ酸塩及び粒状のテクトケイ酸塩を含有し、その際、該ケイ酸塩混合物が、40〜80質量%のフィロケイ酸塩及び20〜60質量%のテクトケイ酸塩を有し、
−該ケイ酸塩混合物中に含有される粒子の90質量%までが60μm未満の粒度を有し、その際、さらに、
−該粒状のフィロケイ酸塩の最大粒度が、該テクトケイ酸塩の最大粒度よりも小さく、そして、その際、
−前記フィロケイ酸塩が、25μm〜65μmの最大粒度を有し、かつ、前記テクトケイ酸塩が、55μm〜85μmの最大粒度を有する、
上記の脱脂混合物。
【請求項2】
前記脱脂混合物が、少なくとも90質量%のケイ酸塩混合物、及び、吸着剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の脱脂混合物。
【請求項3】
前記ケイ酸塩混合物中に含有されるテクトケイ酸塩粒子の半分超が、20μm超の径を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の脱脂混合物。
【請求項4】
前記ケイ酸塩混合物のフィロケイ酸塩の含有量が、該ケイ酸塩混合物のテクトケイ酸塩の含有量よりも高い、請求項1〜のいずれか一つに記載の脱脂混合物。
【請求項5】
前記ケイ酸塩混合物が、30〜50質量%のテクトケイ酸塩を含有し、そしてその際、該ケイ酸塩混合物が、50〜70質量%のフィロケイ酸塩を含有する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の脱脂混合物。
【請求項6】
前記テクトケイ酸塩及び/又はフィロケイ酸塩が、それぞれアルミノケイ酸塩である、請求項1〜のいずれか一つに記載の脱脂混合物。
【請求項7】
前記フィロケイ酸塩が、三層の膨張可能なフィロケイ酸塩であり、そしてその際、シリケート骨格として、ゼオライトの群から選択される少なくとも一種の成分が該ケイ酸塩混合物中に含有される、請求項1〜のいずれか一つに記載の脱脂混合物。
【請求項8】
前記フィロケイ酸塩が、“ベントナイト、カオリナイト、パリゴルスカイト、イライト、雲母、緑泥、パイロフィライト、イモゴライト、モンモリロナイト”の群から選択される少なくとも一種のフィロケイ酸塩である、請求項1〜のいずれか一つに記載の脱脂混合物。
【請求項9】
前記フィロケイ酸塩がカルシウム−ベントナイトである、請求項1〜のいずれか一つに記載の脱脂混合物。
【請求項10】
前記ベントナイトが炭酸ナトリウムによって活性化されている、請求項1〜のいずれか一つに記載の脱脂混合物。
【請求項11】
脂肪、油又はそのような疎水性の成分を基板の表面から除去するためのクリーニングスティックであって、その際、該クリーニングスティック(1)が、把持部分(2)及び請求項1〜10のいずれか一つに記載の脱脂混合物(5)を含有するアプリケーションデバイスを有する、上記のクリーニングスティック。
【請求項12】
脂肪、油又はそのような疎水性の成分を基板の表面から除去するためのクリーニングクロスであって、その際、該クリーニングクロス(7)が、繊維材料からなる少なくとも一つのクロス層(8、9)を有し、そして、その際、該クロス層(8、9)が、請求項1〜10のいずれか一つに記載の脱脂混合物(10)を含有する、上記のクリーニングクロス。
【請求項13】
脂肪、油又はそのような疎水性の成分を基板の表面から除去するための中空糸であって、その際、該中空糸(14)の空洞部(15)が、請求項1〜10のいずれか一つに記載の脱脂混合物によって少なくとも部分的に充填され、及び/又は、その際、該中空糸(14)の外側表面(17)及び/又は内側表面(18)が、請求項1〜10のいずれか一つに記載の脱脂混合物によって少なくとも部分的にコーティングされている、上記の中空糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油、脂肪又はそのような疎水性の成分を基板の表面から除去するための脱脂混合物に関する。その基板とは、好ましくは、金属表面又はプラスチック表面であり、当然ながら、それらの組み合わせも含まれる。
【背景技術】
【0002】
上述の種類の脱脂混合物は、慣例から知られている。さらに、欧州特許第1 757 677 B1号(特許文献1)を参照すると、脱脂混合物として乾燥粉末が採用されている。この乾燥粉末は、それ自体が、テクトケイ酸塩及びフィロケイ酸塩からなる混合物として形成することができる。
【0003】
同様に、表面上の油状の汚れを除去する方法を記載する米国特許出願公開第2005/037937 A1号明細書(特許文献2)が係属している。この目的のために、関連する表面に多孔質の乾燥粉末が散布される。この問題の粉末は、疎水性の成分を吸着した後に表面から除去される。しかしながら、さらなる詳細は開示されたままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1 757 677 B1号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/037937 A1号明細書
【特許文献3】ドイツ国実用新案出願公開第20 2004 021 666 U1号
【特許文献4】ドイツ国特許出願第10 2007 020 552 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、油脂などに対する高い吸収能によって特徴づけられ、さらに、基板表面上への適用を容易にし、そして高い効率を有する脱脂混合物の技術的な問題に基づいている。
【0006】
この技術的な問題を解決するために、本発明は、請求項1に記載の脱脂混合物を教示する。この文脈において、粒状の、又は粗粒状の脱脂混合物を、例えば、ノズルを用いて脱脂すべき表面上に施用するのに有用であることが実証される。その脱脂混合物の清浄作用を向上させるために、その脱脂混合物を、機械的な作用、例えば、ブラシがけによって、清浄すべき表面上に施用することが欧州特許第1 757 677 B1号(特許文献1)によって知られている。ドイツ国実用新案出願公開第20 2004 021 666 U1号(特許文献3)もまた参照される。すなわち、本発明の脱脂混合物は、例えば、粉体塗装から知られているように、静電的な銃及び機器などを用いる吹き付けによって全体的に施用することができる。また。この脱脂混合物は、プレスによっても施用できる。ノズルを用いて適用する場合、一般に、脱脂混合物の流体化が起こる。本発明の脱脂混合物によって、実際に知られている脱脂混合物を超えてその性能を全体として向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くことに、この文脈において、本発明が、ケイ酸塩混合物の粒度を特定することによって、いずれの基板の表面からも疎水性の成分を、とりわけ効果的に除去することができるということが最初に見出される。実際に、本発明の脱脂混合物の主成分は、まさにケイ酸塩混合物から構成され、その際、この点において、好ましくは、脱脂混合物は、少なくとも90質量%、そして好ましくは少なくとも95質量%のケイ酸塩混合物を含有する。さらに、この脱脂混合物を形成させるために、一種の添加剤又は二種以上の添加剤をこのケイ酸塩混合物に加えることさえ可能である。この添加剤は、典型的に、0〜10質量%、そして好ましくは0〜5質量%の量で該脱脂混合物中に存在させる。
【0008】
いずれの場合においても、ケイ酸塩混合物は主成分であり、それ故、これは脱脂混合物中に50質量%超存在する。該ケイ酸塩混合物中に90質量%まで含有される粒子が、60μm未満の粒度を有するという、さらなる事実に関連して、粒子が、主として60μm未満の粒度を有するように設計された、溶媒不含の脱脂混合物が観察される。そのことによって、例えば、脂肪又は油も、そして特に金属表面又はプラスチック表面のような基板の油膜を、好ましく効果的に除去することができる。これは、シリコーン及びその他の分離剤にも適用される。
【0009】
その際、1.2g/mのコーティング量の油及び様々な長さの炭化水素鎖を有する軽質鉱油による通常の汚染の場合に基づいて、そのような油膜又は脂肪膜は、一般的に、0.15μmまでの層の厚さに調整される(例えば、ドイツ国特許出願第10 2007 020 552 A1号(特許文献4)の例1)との比較)。その結果、粒度は、層の厚さの100倍超を有するため、層自体を、機械的なエネルギーの低い個々の粒子において破壊することができる。この機械的なエネルギーは、例えば、前述のノズルによって、又はブラシがけによって付与することができる。
【0010】
同時に、そのような油膜又は脂肪膜の層の厚さと、本発明の脱脂混合物の粒度との間の上述の粒度の比によって、油又は脂肪は個々の粒子中に、又は、慣用的な物理的吸着によって該粒子に容易に取り込まれる。この場合、一般的なファン−デル−ワールス力を利用できる。その際、吸着された油分子又は脂肪分子は、物理力によって、粒子に又は粒子中に結合される。いずれの場合においても、除去する油膜又は脂肪膜の層の厚さの100倍超の粒度という前述の粒度の比によって、該当の膜が破壊され除去されるだけでなく、生じた油滴又は脂肪滴がそれぞれの粒子に及び/又はそれぞれの粒子の内部に取り込まれる。
【0011】
さらに、フィロケイ酸塩及びテクとケイ酸塩のいずれも、それぞれが多孔質の表面を有することで知られている。事実、この文脈において、孔がナノメートルの範囲内の典型的な径を有し、そしてそのため、層から溶出した油滴が特に効果的にその内部に取り込まれることができることが観察され、このことは基本的に知られている(例えば、欧州特許1 757 677 B1号(特許文献1)並びに米国特許出願公開第2005/037937 A1号明細書(特許文献2)。
【0012】
本発明の範囲において、粒状のフィロケイ酸塩の最大粒度を、テクトケイ酸塩の最大粒度よりも小さく設定することによって、特に驚くべき効果が得られるというさらなる利点及び特徴が見られる。実際に、粒度を、前述した範囲のような主として60μm未満に限定する寸法基準と同じように、脂肪、油又はそのような疎水性の成分を取り込む高い能力が、好ましい清浄効果と共に観察される。ここで、本発明は、物質を取り込んだ際に、テクトケイ酸塩がその格子構造が不変であるというさらなる利点をもたらす。これは、疎水性の成分を取り込む際に、一般に、その層の状態が変化することにより膨張するフィロケイ酸塩とは異なる点である。この事実は、粒状のフィロケイ酸塩の最大粒度が、テクトケイ酸塩の最大粒度よりも小さく設定するという本発明の概念を踏まえている。
【0013】
その結果、疎水性の成分をフィロケイ酸塩中に取り込み、そしてそれに伴って、実際に、取り込む際に格子構造が不変であるテクトケイ酸塩に匹敵する粒度のフィロケイ酸塩の場合に、そのフィロケイ酸塩が変化しながら膨張することが観察されることが考慮される。一般的な場合に、テクトケイ酸塩の最大粒度は、フィロケイ酸塩の最大粒度のおおよそ1.5倍〜2.0倍である。それにより、本発明は、使用したフィロケイ酸塩が、疎水性の成分を取り込んだ際に膨張するという事実を考慮するものである。実際には、このフィロケイ酸塩の変化という現象は二回まで観察される。
【0014】
このことにより、疎水性の成分が全体的に、粒子の粒度の均一な分布によりケイ酸塩混合物中に取り込まれた後に、廃棄又はさらなる加工を容易にすることが予想される。それから、そのような粒子の粒度の均一な分布は、容易に選出できないだけでなく、必要な場合に再循環させることができる。このことにおいて、本質的な利点が見いだされる。
【0015】
ケイ酸塩混合物中に含有される粒子の粒子寸法又は粒度は、基本的に、ふるいがけによって決定することができる。粒度分布又は頻度分布は、それぞれの粒子の分類された均等な径又はその粒度が、粒子の質量%での百分率割合で比較できるように決定される。その際、本発明の脱脂混合物の油取り込み量は、全体で、20g〜40gの油/100gの脱脂混合物の範囲内となり得る。
【0016】
好ましくは、フィロケイ酸塩及び/又はテクトケイ酸塩の粒子の60質量%が、5μm〜55μmの大きさを有する。さらに、基板は、一般に、金属表面及び/又はプラスチック表面及び/又はテキスタイル表面である。その際、脱脂混合物は、金属表面及び/又はプラスチック表面及び/又はテキスタイル表面の油脂を除去するのに合目的的に使用される。テクトケイ酸塩及び/又はフィロケイ酸塩は、いずれも、多孔質の表面によって実証されたような能力を有する。特に好ましくは、フィロケイ酸塩及び/又はテクトケイ酸塩は、主として、又は本質的に微小細孔及びメソ細孔を有する。微小細孔とは、好ましくは、2nmまでの径を有する孔を意味する。メソ細孔とは、本発明の範囲において、例えば、2nm〜50nmの径を有することを意味する。実施形態によれば、フィロケイ酸塩及び/又はテクトケイ酸塩は、例えば、有機イオン及び/又は無機イオン及び錯体によって活性化される。好ましい実施形態によれば、フィロケイ酸塩及び/又はテクトケイ酸塩は、酸、例えば、硫酸、塩酸、有機酸などの酸での処理によって活性化される。
【0017】
すなわち、当のフィロケイ酸塩又はテクトケイ酸塩は、天然の産出物として、又は上述の意味において使用される処理された製品として見いだすことができる。関連する製品を、所望の粒度に鑑みてふるいがけ及び/又は粉砕によって調整することもまた可能であり、かつ考慮できる。フィロケイ酸塩及び/又はテクトケイ酸塩の活性化によって、細孔の細孔分布及び/又は大きさ及び/又は表面特性を調整可能であることが望ましい。表面の特性とは、本発明の範囲において、細孔の内表面の有機親和性又は親水性を意味する。実施形態によれば、テクトケイ酸塩及び/又はフィロケイ酸塩の細孔は、活性化によって取り込む粒子に応じて調整可能である。
【0018】
適切には、フィロケイ酸塩は、25μm〜65μmの最大粒度を有する。好ましくは、フィロケイ酸塩の最大粒度は60μm以下である。好ましい実施形態において、テクトケイ酸塩は、55μm〜85μmの最大粒度を有する。推奨されるのは、テクトケイ酸塩の最大粒度が63μm以下である。粒度は、例えば、ふるいがけによって画定できる。それ以外には、粉砕によって選択的に粒度を調整することができる。
【0019】
本発明の範囲において、ケイ酸塩混合物中に含有される粒子の90質量%までは、60μm未満の粒度を有する。本発明の範囲において、質量%とは、ケイ酸塩混合物中に含有される粒子の質量で、所定の粒度のケイ酸塩混合物の粒子の質量を割った商を意味する。推奨されるのは、ケイ酸塩混合物中に含有される粒子の50質量%までが、25μm未満の粒度を有することである。本発明の範囲において、粒子とは、テクトケイ酸塩の粒子及び/又はフィロケイ酸塩の粒子を意味する。特に好ましくは、ケイ酸塩混合物中に含有されるフィロケイ酸塩及び/又はテクトケイ酸塩の粒子のおおよそ10質量%が5μm未満、そして好ましくは3μm未満である。
【0020】
第一の実施形態において、ケイ酸塩混合物は、そのケイ酸塩混合物の粒子の99質量%が52μm未満の粒度を有する。好ましくは、第一の実施形態において、粒子の98質量%が47μm未満の粒度を有する。第一の実施形態において、ケイ酸塩混合物の粒子の97質量%が43μm未満の粒度を有することが実証された。好ましくは、第一の実施形態において、ケイ酸塩混合物の粒子の90質量%は、31μm未満の大きさを有する。第二の実施形態において、ケイ酸塩混合物中に含有される粒子の90質量%は、60μm未満の大きさを有する。好ましくは、第二の実施形態において、ケイ酸塩混合物の粒子の50質量%は、21μm未満の大きさを有する。特に好ましくは、ケイ酸塩混合物中に含有されるテクトケイ酸塩の半分超が、20μm超の径を有する。
【0021】
本発明の範囲において、ケイ酸塩混合物のフィロケイ酸塩含有量は、好ましくは、該ケイ酸塩混合物のテクトケイ酸塩含有量より、好ましくは1.1〜2倍高い。つまり、ケイ酸塩混合物のフィロケイ酸塩含有量は、ケイ酸塩混合物のテクトケイ酸塩の1.1倍〜2倍である。この計量基準は、フィロケイ酸塩が、テクトケイ酸塩よりも安価であるという実情を反映している。それにも拘わらず、ケイ酸塩混合物の所望される特性は維持される。
【0022】
ケイ酸塩混合物は、20〜60質量%、そして好ましくは30〜50質量%のテクトケイ酸塩を含有することが推奨される。特に好ましくは、ケイ酸塩混合物は、40〜80質量%、そして好ましくは50〜70質量%のフィロケイ酸塩を含有する。例えば、ケイ酸塩混合物は、おおよそ50質量%のフィロケイ酸塩を含有する。ケイ酸塩混合物が、おおよそ40質量%のテクトケイ酸塩を含有することが可能である。
【0023】
テクトケイ酸塩及び/又はフィロケイ酸塩のいずれもアルミノケイ酸塩であることが推奨される。好ましくは、フィロケイ酸塩は、三層の膨張性フィロケイ酸塩が優先される。テクトケイ酸塩として、ゼオライトの群から選択される少なくとも一種の成分をケイ酸塩混合物中に含有される。テクトケイ酸塩(テクトシリケート)は、高い比表面積を有する多孔質系を有するため、疎水性及び/又は親水性の成分を吸着する様々な可能性をもたらす。例えば、テクトケイ酸塩は、天然に産出されるクリノプチロライト及び/又は菱沸石である。
【0024】
一実施形態によれば、フィロケイ酸塩は、“ベントナイト、カオリナイト、パリゴルスカイト、イライト、雲母、緑泥石、パイロフィライト、イモゴライト、モンモリロナイト”の群から選択される少なくとも一種のフィロケイ酸塩である。推奨されるのは、フィロケイ酸塩が、スメクタイト系の粘土鉱物である。特に好ましくは、フィロケイ酸塩は、カルシウムベントナイトである。有利には、そのベントナイトは、例えば、炭酸ナトリウムによって活性化される。この関連する粘土鉱物又はフィロケイ酸塩は、カルシウム、マグネシウム及び/又はナトリウムで覆ってもよい。
【0025】
脱脂混合物は、添加剤として、“活性炭、タルカム”の群から選択される吸着剤である、少なくとも一種の粒状の吸着剤を含有することが推奨される。一実施形態によれば、その吸着剤は、例えば、100μm未満、より適切には、80μm未満、そして好ましくは60μm未満の粒度を有する。特に好ましくは、該吸着剤は、45μm未満の粒度を有する。
【0026】
本発明の脱脂混合物は、10質量%まで、適切には、1〜10質量%、好ましくは1〜8質量%、そして特に、0.5〜5質量%の粒状吸着剤を含有することが可能である。残部(約0.5質量%〜1質量%)は不純物であり得る。特に好ましくは、脱脂混合物は、少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%のケイ酸塩混合物を有する。本発明の脱脂混合物は、本質的に、ケイ酸塩混合物からなるか、又はケイ酸塩混合物及び吸着剤からなることが推奨される。
【0027】
本発明の脱脂混合物は、“石英、砂、ガラスビーズ、トウモロコシ粉、ナッツ類の殻、スチールビーズ、コランダム、マイクロファイバー複合製品並びにフリース、フェルト、及びゴム状のゴム製品”から選択される添加物の少なくとも一種を含有することができる。好ましくは、脱脂混合物及び添加物からなる混合物は、基板をサンドブラストするのに使用される。本発明の脱脂混合物は、例えば、Eurotec Vetriebsgesellschaft m.b.H.社の製品、Eurosorbである。
【0028】
さらに、本発明は、脂肪、油及びそのような疎水性の成分を、脂肪、油などで汚染された表面から除去するためのクリーニングクロスの技術的な問題の解決法を教示するものであり、その際、該クリーニングクロスは、繊維材料からなる少なくとも一つの布層を有し、そしてその際、該布層は、本発明の脱脂混合物を含有する。好ましくは、該布層はテキスタイルである。例えば、該テキスタイルは、布地、フリース、紙、フェルト、マイクロファイバークロスなどである。好ましくは、該テキスタイルは、多数の繊維、例えば、中空糸を有する。本発明の脱脂混合物は、繊維の少なくとも一部において、好ましくは中空糸中に含有させることができる。
【0029】
一実施形態によれば、該中空糸の中空領域は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、本質的に本発明の脱脂混合物で充填される。有利には、該中空糸の外側表面又は該糸から離間した表面は、部分的に、そして好ましくは完全に、あるいは本質的に完全に、本発明の脱脂混合物でコーティングされる。合目的的に、該中空糸の内側表面又は中空領域側の表面は、部分的に、そして好ましくは完全に、あるいは本質的に完全に、本発明の脱脂混合物で適切にコーティングされる。一実施形態によれば、外側表面及び/又は中空領域側に面した表面は、本発明の脱脂混合物でコーティングされる、及び/又は、中空糸の中空領域は、少なくとも部分的に本発明の脱脂混合物で充填される。該クリーニングクロスを二層のクリーニングクロスとして形成し、その際、下層の布層及び上層の布層の間に、本発明の脱脂混合物を配置することができる。言い換えると、好ましい一実施形態によれば、該クリーニングクロスは、布層/脱脂混合物/布層の層順を有するサンドイッチ構造を有する。本発明のクリーニングクロスは、例えば、一枚布である。本発明のクリーニングクロスは、クリーニングクロス巻きであることができる。基板の汚染された表面は、好ましくは、例えば、基板表面、プラスチック表面、テキスタイル表面又はヒトの皮膚である。
【0030】
さらに、本発明は、脂肪、油及びそのような疎水性の成分を、基板の汚染された表面から好ましく除去するためのクリーニングスティックの技術的な問題の解決法を教示し、その際、該クリーニングスティックは、把持部分及び脱脂混合物を含有するアプリケーター要素を有する。その把持部分は、ヒトが手で把持できるように設計される。アプリケーター要素は、例えば、少なくとも、その把持部分から離間した端部又は脱脂混合物を含まない端部に含まれる貯留部である。合目的的に、汚染された表面を該クリーニングスティックで処理し、その際、脱脂混合物を有するアプリケーター要素である該アプリケーター要素を、その汚染された表面上に押しつける。基本的に、該アプリケーター要素は、回転体として形成することが可能である。有利には、該クリーニングスティックはカートリッジ部を有し、その際、該回転体は、好ましくは、そのカートリッジ部中に収容された脱脂混合物でコーティングされる。該回転体を回転させることによって、回転体上に転写された脱脂混合物が、汚染された表面上に有利に移転される。汚染された表面は、例えば、テキスタイルである。合目的的に、脱脂混合物が提供されたアプリケーター要素が、油又は脂肪又は疎水性の成分を取り込む。
【0031】
基板の表面上の油、脂肪又はそのような疎水性の成分を除去するために、例えば、ノズルによって脱脂混合物を施用することが可能である。一実施形態によれば、脱脂混合物は、基板の表面上に施用され、その際、少なくとも基板の表面、好ましくは、基板の全体、又は本質的に基板の全体が脱脂混合物中に浸漬される。脱脂混合物を、例えば、好ましくは、基板の汚染された表面上に散布することが推奨され、その際、好ましくは、基板又は基板の表面と、脱脂混合物との間の速い相対運動を生じさせる。
【0032】
場合によっては、脱脂混合物と基板の表面との間の速い相対運動を確保するために、例えば、脱脂混合物を表面上に施用する時に、好ましくは、脱脂混合物を施用された基板を振動させるか又は空気圧によって格納させる。有利な実施形態によれば、特に汚染された表面を有する基板を、ドラム体中で保持し、該ドラム体は、最初に脱し混合物が充填される。そのドラム体を回転させることによって、好ましく自由に流動する脱脂混合物は特に汚染された基板の表面上に均質か又は本質的に均質に分布される。
【0033】
本発明の範囲において、脱脂混合物は、サンドブラスト時に導入された添加物を伴い、そして、その添加物及び脱脂混合物からなる混合物は表面をサンドブラストし、そして、脂肪、油又はそのような疎水性の成分を表面から除去するのに使用されることが包含される。好ましくは、脱脂混合物だけが表面上に施用される。とりわけ、脱脂混合物は、基板の表面上に印刷又はプレスされる。
【0034】
一実施形態によれば、脱脂混合物の基板の表面上への施用は、圧延及び/又はパッド印刷によって行われる。しかしながら、基板、場合によっては及び混合物を、そのようないずれの場合にも静電的な電荷として供することによって、一般に、本発明の脱脂混合物を施用することができる。引き続きイオン化された空気流を吹き付けることによって、必要に応じて、飽和した粉末又は脱脂混合物を再度吹き付け、ブラシがけ、払拭、吸引等を行うことができる。油又は脂肪で汚染された表面を有する基板を脱脂混合物中に浸漬させることが有利に実証された。好ましい一実施形態によれば、脱脂混合物を静電的に帯電させ、そして好ましく接地させた基板表面上に施用する。さらなる実施形態に撚れば、脱脂混合物は、該脱脂混合物中にガスを導入することによって好ましく流体化され、そして、流動床方法で処理すべき汚染された基板の表面上に施用される。
【0035】
一実施形態によれば、第一の加工工程においてプレス、打ち抜き、穿孔及び/又は変形によって最初に基板を生産し、その際、該第一の加工工程に続く第二の工程において、道具を用いて少なくとも該基板の表面上に脱し混合物を施用する。基板上に存在している油、脂肪又はそのような疎水性の成分が、特に、脱脂混合物のケイ酸塩混合物の細孔中に吸着されることによって該油、脂肪又はそのような疎水性の成分が基板の表面から除去される。
【0036】
基本的には、脱脂混合物の基板表面上の施用は、好ましくは、追加的な機械的な方法で促進させることができる。例えば、基板表面上で、基板表面上に施用された脱脂混合物を基板表面に分布させるようなブラシデバイスを設けることが可能である。脱脂混合物の基板表面上への施用及び分布は、一実施形態によれば該ブラシデバイスによって行うことができる。
【0037】
基板表面から脂肪及び/又は油を取り込んだ脱脂混合物を除去し、そしてその後、浄化装置に供することが推奨される。その浄化装置では、例えば、脱脂混合物の細孔中に取り込まれた成分が除去される。乾燥粉末として形成された脱脂混合物は循環させることが可能であり、その際、適切には、疎水性の成分で飽和した脱脂混合物の粒子だけは適切に排出される。これは、サイクル毎に、疎水性の不純物で汚染された脱脂混合物の極一部だけを、未使用の脱脂混合物で置き換えなければならず、この未使用の脱脂混合物とは、基板表面とまだ接触していないものである。
【0038】
本発明は、本発明の、そして規定に従って乾燥粉末として形成された脱脂混合物が、基板の表面から脂肪、油又はそのような疎水性の成分を除去する際の高い有効性によって特徴付けられる、という知見に基づくものである。本発明の脱脂混合物は、脂肪、油などに対する有利な吸着運動によって特徴付けられ、それ故、脱脂混合物の驚くほど短時間の基板表面への施用時間で、完全な脂肪の除去又は油の除去が達成される。本発明の脱脂混合物は溶媒不含であることが特に有利であることが見出されている。そのため、本発明の脱脂混合物の浄化も、そしてもはや浄化できない、例えば、疎水性の成分を取り込んだ脱脂混合物の廃棄も、簡単な実施可能性によって特徴付けられる。言い換えると、基板の表面上に存在する脂肪及び/又は油で汚れた溶媒を浄化する煩雑さが回避される。
【0039】
特に有利な方法において、本発明の脱脂混合物の処理すべき基板の表面上の施用は驚くほど簡単である。その場合、例えば、プレス機だけが必要とされ、そのプレス機を用いて、脱脂混合物を、処理すべき基板の表面上に施用すべきである。詳細には、粉塵を巻き起こす噴射は、本発明の脱脂混合物によって回避される。さらに、上述のプレス機の使用により、プレスを中断させることなく連続的な処理が可能となる。さらに、本発明の脱脂混合物は、例えば、該脱脂混合物の細孔の調節及び/又は活性化によって、基板表面上の除去すべき成分に適合させることができる。
【0040】
以下に、一つの実施形態を示す図面に基づいて本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1A図1Aは、本発明の脱脂混合物によって、油、脂肪及びそのような成分をテキスタイルから除去する工程を示している。
図1B図1Bは、図1Aによる工程において保護カバーのない場合を示している。
図2図2は、本発明の脱脂混合物を有するクリーニングクロスの断面図である。
図3図3は、第一の実施形態における本発明の中空糸の透視図である。
図4図4は、第二の実施形態における本発明の中空糸の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1A及び図1Bには、油、脂肪及びそのような疎水性の成分をテキスタイルから除去するためのクリーニングスティック1が示されている。クリーニングスティック1は、ハンドル部2として形成された把持部を備えており、該ハンドル部2には、カートリッジ部3として形成されたアプリケーター要素が連結されている。図1Aにおいて、カートリッジ部3が、保護カバー4によって損傷から保護されているクリーニングスティック1の状態が示されている。保護カバー4以外に、カートリッジ3は脱脂混合物5を備えており、それにより、該カートリッジ3のアプリケーター端部上に脱脂混合物5が適用される。
【0043】
図1Bには、図1Aから保護カバー4が取り除かれた場合のクリーニングスティック1が示されている。これは、カートリッジ部3が、アプリケーター端部6、つまり、ハンドル部2と対向するカートリッジ3の端部において、脱脂混合物5でコーティングされていることがわかる。そのアプリケーター端部6を、図示されていないテキスタイル上に押しつけることによって、テキスタイル中に含有される汚染物、又は油及び/又は脂肪は脱脂混合物5で吸着される。
【0044】
図2には、本発明によるクリーニングクロス7が示されており、図2によれば、これは二つの布層8、9を有する。布層8、9の間には、脱脂混合物5からなる層10が配置されている。図2において、該クリーニングクロスは、そのクリーニングクロス7中で脱脂混合物5の抑制されない移動を回避するために、相互に仕切られたセル部11、12、13を有する。図2中に図示されていない塗りつぶしによって、脂肪、油又はそのような疎水性の成分で汚染された表面は、クリーニングクロス7によって、汚染物が脱脂混合物5の細孔中に移動し、そしてそれにより、表面からのそれらの除去が達成される。
【0045】
図3には、中空糸14が示されており、その内部空間又は中空部15には、脱脂混合物5が部分的に充填されている。この実施形態によれば、中空糸14の壁部16は熱可塑性のプラスチックから形成される。図4は、第二の実施形態の中空糸14を示している。中空糸14の周囲面17及び中空部15で画定された内表面18は脱脂混合物5でコーティングされている。
図1A
図1B
図2
図3
図4