(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
− 燃料を供給される少なくとも1つの始動インジェクタ(10)が開口する燃焼室(4)であり、前記始動インジェクタが、燃料を点火することによって前記燃焼室において燃焼を開始させるのに適している、燃焼室(4)と、
− 燃焼室において燃料の燃焼から生じるガスによって回転される、タービン(5)と
を含むタービンエンジンの前記始動インジェクタの目詰まり度を監視するための方法であって、
− タービンエンジンを始動させる段階時に、タービンの出口において排気ガスの温度を測定するステップ(1100)と、
− このように測定された温度の経時的な変化から、始動インジェクタの目詰まり度を判定するステップ(1200)と
を含むことを特徴とする、方法。
連続する始動時にタービンの出口におけるガスの温度の低下の振幅の変化が、少なくとも1つの所定の閾値と比較され(1220)、始動インジェクタの目詰まり度が、前記比較の結果から推論される(1240)、請求項2に記載の監視するための方法。
タービンの出口において排気ガスの温度を測定するステップ(1100)時に、タービンの回転速度の測定をさらに含み、始動インジェクタの目詰まり度の推論(1240)が、ガスの温度の経時的な変化、およびタービンの回転速度の測定値から行われる、請求項2または3のいずれか一項に記載の監視するための方法。
始動インジェクタの目詰まり度が前記タービンエンジンを始動させることが不可能になるレベルに達する前に、始動インジェクタの目詰まり度から、タービンエンジンの残りの始動数の推論をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
始動インジェクタの目詰まり度が前記タービンエンジンを始動させることが不可能になるレベルに達する前に、始動インジェクタの保守または交換が行われるような、警報の作動(1300)を含む、請求項6に記載の方法。
− 燃料を供給される少なくとも1つの始動インジェクタ(10)が導かれる燃焼室(4)であり、前記始動インジェクタが、燃料を点火することによって前記燃焼室において燃焼を開始させるのに適している、燃焼室(4)と、
− 燃焼室において燃料の燃焼から生じるガスによって回転される、タービン(5)と
を含む、タービンエンジンの始動インジェクタの動作状態を監視するためのシステム(200)であって、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を実施するのに適しており、
− タービン(5)の出口におけるガスの少なくとも1つの温度センサ(210)と、
− 始動インジェクタの目詰まり度を判定するために温度測定値を処理するのに適しているメモリ(223)および処理手段(222)を備える処理ユニット(220)と
を含む、監視するためのシステム。
タービンの回転速度の少なくとも1つのセンサ(212)をさらに含み、処理ユニット(220)の処理手段(222)が、始動インジェクタの目詰まり度を判定するために、タービンの回転速度の測定値を処理するのにさらに適している、請求項8に記載の監視するためのシステム(200)。
センサ(210、220)が、1Hzよりも大きいかまたはそれに等しい頻度で測定を行うのに適している、請求項8または9のいずれか一項に記載の監視するためのシステム(200)。
− 燃料を供給される少なくとも1つの始動インジェクタ(10)が導かれる燃焼室(4)であり、前記始動インジェクタが、燃料を点火することによって前記燃焼室において燃焼を開始させるのに適している、燃焼室(4)と、
− 燃焼室において燃料の燃焼から生じるガスによって回転される、タービン(5)と
を含むタービンエンジン(1)であって、
請求項8から10のいずれか一項に記載の監視するためのシステム(200)をさらに含むことを特徴とする、タービンエンジン(1)。
− 燃料が供給される少なくとも1つの始動インジェクタ(10)が導かれる燃焼室(4)であり、前記始動インジェクタが、燃料を点火することによって前記燃焼室において燃焼を開始させるのに適している、燃焼室(4)と、
− 燃焼室において燃料の燃焼から生じるガスによって回転される、タービン(5)と
を備える少なくとも1つのタービンエンジン(1)含む、航空機であって、
請求項8から10のいずれか一項に記載の監視するためのシステム(200)をさらに含むことを特徴とする、航空機。
【背景技術】
【0002】
タービンエンジンは、従来、燃焼室において、空気および燃料から成る混合気の燃焼から生じる排気ガスによって回転されるタービンを含む。
【0003】
この点で、タービンエンジンは、空気/燃料混合気を点火することによって燃焼を開始させることができる始動インジェクタと、いったん燃焼が開始されていると該燃焼を維持し、始動インジェクタの流量よりも高い流量を有する主インジェクタとの中から、燃焼室にいくつかのタイプの燃料インジェクタを備える。主インジェクタは、同じ機能を果たす噴射ホィールによって置き換えられることができ、これは、燃料を遠心分離によって燃焼室に噴霧する。
【0004】
図1aおよび
図1bを参照して、タービンエンジンのインジェクタに燃料を供給するための従来の回路が示されている。
【0005】
この回路100は、始動インジェクタ10の供給管110に燃料を分配するための管130と、主インジェクタの、または遠心噴射ホィール20の供給管120とを含む。
【0006】
噴射ホィールの供給管120は、チェック弁121を備え、これは、回路の燃料の流量が予め確定された閾値を超えると開く。したがって、タービンエンジンを始動させる段階時に、回路の燃料の流量は小さく、始動インジェクタのみが供給される。次いで、燃焼が開始されていると、燃料の流量は、主インジェクタまたは噴射ホィールが同様に供給されるように増加し得る(
図1aに示される状況)。
【0007】
そのうえ、回路100は、前記インジェクタの供給管110に接続される始動インジェクタの大気へのパージ回路111を備える。これらの管は、電気的に制御される電気弁112によって分配管から隔離され得る。
【0008】
特に、弁112は、インジェクタへの燃料の流れを許すために開くように、または始動インジェクタのパージを可能にするために閉じるように制御され得る。
【0009】
いったん燃焼が開始されていると、電気弁112が始動インジェクタのための供給を中断するように作動されるまで、2つのタイプのインジェクタには、燃料が供給される。次いで、燃料は、単一の噴射ホィールによって、または主インジェクタによって燃焼室に噴霧され、始動インジェクタは、コークスの形成を回避するために、およびインジェクタが詰まらないように燃焼室の加圧空気によって換気される。
【0010】
それにもかかわらず、始動インジェクタのパージにもかかわらず、コークスが思いかけず生じてしまい、始動インジェクタの進行性の目詰まりが生じるようである。
【0011】
現在のところ、この目詰まりの現象を抑制し、または遅らせることができる技術的解決策が無い。したがって、始動インジェクタは、タービンエンジンを始動させるのが困難であるか、または不可能でさえあるような目詰まり度に達するまで、徐々に詰まらされる。
【0012】
始動困難の場合は、操作者は、タービンエンジンの保守マニュアルに説明されている分解調査作業を行う。これらの調査は、通常、長々しく、極めて効率がよくなく、なぜなら、インジェクタの目詰まりのこの場合は、始動困難の原因を見付ける前に時としてかなりの時間を費やすことが必要であるからである(実際、非常に多くの他の原因が予想され得る)。
【0013】
そのうえ、これらの調査作業は、タービンエンジンの、およびしたがってその中に取り付けられる航空機の予期しない使用不能を意味し、さらに、これは、1つまたは複数の予定された飛行ミッションのキャンセルを必要とする場合がある。したがって、これらの動作は、かなりのコストになる。
【0014】
また、この方法に頼らないために、始動インジェクタを時としておよび予防的に交換することが知られている。これは、時として、インジェクタの交換に関連づけられる不必要なコストを必要とする。そのうえ、この解決策は、部品の供給の困難に直面する。
【0015】
したがって、好ましくはタービンエンジンの始動の困難さまたは不可能性に遭遇するような程度に達してしまう前に、始動インジェクタの目詰まりを検出することができる必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、始動インジェクタの目詰まり度を監視するための方法を提案することによって、前述の問題を克服するという目的を有する。
【0017】
本発明のもう1つの目的は、始動インジェクタの目詰まり度がタービンエンジンを始動させることが不可能であるようなレベルに達する瞬間を予測し、予期することができることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この点で、本発明の主題は、
− 燃料を供給される少なくとも1つの始動インジェクタが導かれる燃焼室であり、始動インジェクタが、燃料を点火することによって前記燃焼室において燃焼を開始させるのに適している、燃焼室と、
− 燃焼室において燃料の燃焼から生じるガスによって回転される、タービンと
を含むタービンエンジンの前記始動インジェクタの目詰まり度を監視するための方法であって、
− タービンエンジンを始動させる段階時に、タービンの出口において排気ガスの温度を測定するステップと、
− このように測定された温度の経時的な変化から、始動インジェクタの目詰まり度を判定するステップと
を含むことを特徴とする方法、である。
【0019】
有利なことに、しかし任意選択的に、本発明による方法は、次の特徴のうちの少なくとも1つをさらに含むことができ、すなわち、
− タービンの出口における排気ガスの温度の経時的な変化に応じて始動インジェクタの目詰まり度を判定するステップが、
・ 前記温度の上昇の段階時の温度の低下の段階の検出と、
前記低下の検出が無いことが、始動インジェクタの目詰まりが無いことに対応し、
・ 前記低下の振幅の測定とを含む。
− 連続する始動時にタービンの出口におけるガスの温度の低下の振幅の変化が、少なくとも1つの所定の閾値と比較され、始動インジェクタの目詰まり度が、前記比較の結果から推論される。
− 本方法は、タービンの出口において排気ガスの温度を測定するステップ時に、タービンの回転速度の測定をさらに含み、始動インジェクタの目詰まり度の推論が、ガスの温度の経時的な変化、およびタービンの回転速度の測定値から行われる。
− 始動インジェクタの目詰まり度を判定するステップが、
・ 前記温度の下降を開始させるタービンの出口におけるガスの温度の変曲点の瞬間における、タービンの回転速度の値の測定と、
・ 連続する始動時における前記値の変化の所定の閾値との比較と、
・ 温度の低下の振幅、およびタービンの速度の値の変化をそれらのそれぞれの閾値と比較することによる、始動インジェクタの目詰まり度の推論と
を含む。
− 本方法は、始動インジェクタの目詰まり度が前記タービンエンジンを始動させることが不可能になるレベルに達する前に、始動インジェクタの目詰まり度から、タービンエンジンの残りの始動数の推論をさらに含む。
− 本方法は、始動インジェクタの目詰まり度が前記タービンエンジンを始動させることが不可能になるレベルに達する前に、始動インジェクタの保守または交換が行われるような、警報の作動を含む。
【0020】
また、本発明の主題は、
− 燃料を供給される少なくとも1つの始動インジェクタが導かれる燃焼室であり、前記始動インジェクタが、燃料を点火することによって前記燃焼室において燃焼を開始させるのに適している、燃焼室と、
− 燃焼室において燃料の燃焼から生じるガスによって回転される、タービンと
を含むタービンエンジンの始動インジェクタの動作状態を監視するためのシステムであり、
監視するための本システムは、以前に説明された監視するための方法を実施するのに適しており、
− タービン(5)の出口におけるガスの少なくとも1つの温度センサと、
− 始動インジェクタの目詰まり度を判定するために温度測定値を処理するのに適しているメモリおよび処理手段を備える処理ユニットと
を含む。
【0021】
有利なことに、しかし任意選択的に、本発明によるシステムは、次の特徴のうちの少なくとも1つをさらに含み、すなわち、
− 本システムは、タービンの回転速度の少なくとも1つのセンサをさらに含み、処理ユニットの処理手段が、始動インジェクタの目詰まり度を判定するために、タービンの回転速度の測定値を処理するのにさらに適しており、
− センサは、1Hzよりも大きいかまたはそれに等しい頻度で測定を行うのに適している。
【0022】
また、本発明の主題は、
− 燃料を供給される少なくとも1つの始動インジェクタが導かれる燃焼室であり、前記始動インジェクタが、燃料を点火することによって前記燃焼室において燃焼を開始させるのに適している、燃焼室と、
− 燃焼室において燃料の燃焼から生じるガスによって回転される、タービンと
を含むタービンエンジンであって、
タービンエンジンは、本発明によって提案された監視するためのシステムをさらに含む。
【0023】
最後に、本発明の主題は、航空機であり、
− 燃料を供給される少なくとも1つの始動インジェクタが導かれる燃焼室であり、前記始動インジェクタが、燃料を点火することによって前記燃焼室において燃焼を開始させるのに適している、燃焼室と、
− 燃焼室において燃料の燃焼から生じるガスによって回転される、タービンと
を備える少なくとも1つのタービンエンジン含む航空機であって、
航空機は、本発明によって提案された監視するためのシステムをさらに含む。
【0024】
このように提案された監視するための方法により、始動インジェクタの目詰まり度を評価し、それによって、保守を行い、かつタービンエンジンの始動が前記保守に至るまで可能であることを保証すると同時にこの保守をまさに予定することが必要であるか否かをそれから推論することができる。
【0025】
また、インジェクタの交換のために部品を供給するための物流回路が、より良好に組織化される。
【0026】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、単に例示であって非限定的であり、添付の図面に関して読まれるべきである以下に続く説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図2を参照して、前記タービンエンジンの中に流れる空気流に対して上流から下流に、空気取入口通路2、圧縮機3、燃焼室4、タービン5、およびガスの排気管6を連続的に含む、ターボシャフトエンジンタイプのタービンエンジン1が示されている。
【0029】
それ自体が知られている方法で、空気は、空気取入口通路2を介してタービンエンジンに入り込み、圧縮機3によって圧縮される。
【0030】
複数の始動インジェクタ10および主インジェクタ20(
図2に矢印によって符号で表されている)は、燃料を点火するように燃焼室4に入り込み、燃焼が、圧縮アセンブリ3からの空気の供給によって可能にされる。
【0031】
燃料の噴射が、
図1aおよび
図1bに示されるそれらに従って、まずに吸い込まれた空気と燃料の燃焼を開始させるための始動インジェクタ10によって、次いで噴射ホィールまたは主インジェクタによって燃焼室4内で行われる。
【0032】
燃焼は、図において点線で表されるタービンエンジンの軸X−Xを中心にタービンを回転駆動し、それ自体は、前記軸に対して中心を外れたプロペラを駆動する。燃焼から生じるガスは、ノズル6を介して排出される。
【0033】
そのうえ、図に概略的に示されているように、タービンエンジン1は、始動インジェクタの目詰まり度を監視するためのシステム200を含んでいる。
【0034】
このシステムは、第1の温度センサ210を含み、これは、タービンの出口において排気ガスの温度を測定するために、ガス発生器のタービン5の下流に配置され得る。
【0035】
システムは、タービンのシャフトの回転速度を測定するのに適している、少なくとも1つの第2のセンサ212をさらに含むことができる。このセンサは、たとえば、ホニックモータに対向して配置される電磁式のものであり、その回転速度は、タービンのシャフトの回転速度に比例する。
【0036】
また、システムは、判定された頻度において排気ガスの温度を取得するために、温度センサ210を制御するように構成される処理ユニット220を含む。この頻度は、1Hzよりも大きいかまたはそれに等しいことが有利である。
【0037】
この点において、処理ユニット220は、有線ベースであるかまたは遠隔であってもよい、センサを有する通信手段221と、ならびに取得されたデータを処理する手段222と、メモリ223とを備え、処理手段およびメモリにより、測定されたデータの経時的な変化を確定し、以下に説明されるように始動インジェクタの目詰まり度を指標から計算することができる。
【0038】
処理手段は、取得されたデータの処理のために構成されるプログラムがインストールされるプロセッサを含むことが有利である。
【0039】
処理手段222は、行われた測定値の正規化を可能にするように、すなわち、取得の背景から生じ得るある種の変動、たとえば気象タイプの変動を測定値から除去するように構成されることが有利である。
【0040】
したがって、監視システムは、
− 周囲の大気圧センサ、
− 周囲の温度センサ、
− 圧縮アセンブリの出口の空気圧センサ、等
の中の追加のセンサ230をさらに含むことができる。
【0041】
監視システムは、タービンエンジンのスタータの端子の電圧と、タービンエンジンの始動時に前記スタータによって消費される電流とを測定するための手段240をさらに含むことができ、これらの量はまた、始動インジェクタの目詰まり度の判定時に考慮され得る。
【0042】
最後に、監視するためのシステムは、取得された測定値を通信するために、航空機に搭載されたシステムとの、または遠隔基地との通信手段250を含むことができ、始動インジェクタの目詰まり度は、タービンエンジンを始動させることが不可能になるレベルに達しているかまたはそれに近い場合、タービンエンジンの保守警報を発生させる必要がある場合に、前記測定値から推論される。
【0043】
有利なことに、いくつかのタービンエンジンを備える航空機の場合は、監視システムは、前記各タービンエンジンに共通である。この場合、各タービンエンジンの作動に特有のセンサ(たとえば、ガスの温度または回転速度のセンサ)が、各タービンエンジンに備えるために増加される。
【0044】
そのうえ、システム200は、この場合、タービンエンジンの始動命令を検出するための手段を含むことができる。
【0045】
図3を参照して、上に説明されたシステム200によって実施される始動インジェクタの目詰まり度を監視するための方法1000が次に説明されることになる。
【0046】
本方法は、タービンエンジンのために説明されるが、システム200が同じ航空機のいくつかのタービンエンジンの監視を行う場合に適用できる。
【0047】
本方法は、タービンエンジンの始動の段階時に、温度の時間的展開を前記段階時に得るために、決定された頻度で、タービンの出口において排気ガスの温度Tを測定する第1の測定ステップ1100を含む。
【0048】
図4aにおいては、「健全な」タービンエンジンについて、太い曲線で示されるこの種の時間的展開の実施例が示されており、すなわち、その場合、始動インジェクタは詰まらされておらず、また
図4bにおいては、始動インジェクタが「予め詰まらされている」、すなわち、目詰まり皆無と、タービンエンジンを始動させることが不可能であるような目詰まり度との間の中間の目詰まり度を有する場合の、(同様に太い曲線で示される)同じ時間的展開が示されている。
【0049】
図4aでは、健全なタービンエンジンにおいては、排気ガスの温度は、平坦部に達するまで急激な上昇の第1の段階を有し、次いで、その温度は、第1の段階より下の第2の平坦部に達するまで徐々に低下することが認められるであろう。
【0050】
第1の上昇段階は、タービンエンジンの始動段階に対応する。
【0051】
図4bにおいては、排気ガスの温度の急激な上昇の段階は、図において2つの、そこから温度が低下する変曲点Aとそこから温度の上昇が回復する変曲点Bとの間にある、著しい低下によって中断される。
【0052】
これらの変曲点AおよびBは、実際、始動インジェクタが少しも予め詰まらされていない場合(たとえば、これらが新しい場合)には決して現われない。それにもかかわらず、これらは、ある一定の大気条件で現われる場合がある。この理由で、温度の低下の単なる存在は、始動インジェクタの目詰まり度の信頼性のある指標を構成しない。
【0053】
他方では、曲線がこの低下を示す場合は、始動インジェクタが高い目詰まり度を示せば示すほど、変曲点Aの温度と変曲点Bの温度との間の温度の低下はそれだけより急激であり重要であることが分かっている。
【0054】
したがって、始動が進行している時の、タービンエンジンの始動の段階時のタービンの出口における排気ガスの温度の低下の振幅の漸進的増加は、インジェクタの目詰まりの指標であることがそれから推論される。
【0055】
その結果として、測定ステップ1100の後に、本方法は、取得された測定値から、始動インジェクタの目詰まり度を判定するステップ1200を含む。
【0056】
この方法は、処理ユニット220の処理手段222によって実施される判定アルゴリズムの形で
図3に示され、下に示されるように行われる。
【0057】
第1のサブ−ステップ1210時に、決定された時間ウィンドウによって確認することができる、タービンエンジンの始動段階時のガスの温度の全般的な上昇の段階時に、前記温度の低下が検出される。
【0058】
時間ウィンドウは、検出されたガスの温度の低下が上に説明された低下に対応することを保証するように調整され、これは、変曲点Aのレベルで始まる。実際には、温度のこの第1の低下の後に、次いで、温度上昇は再び(点Cから)もう1つの低下の段階を有し、また、これは、始動サイクルの終わりに対応し、従来、(
図4aの場合のような、インジェクタが詰まっていない場合を含めて)どんな始動インジェクタの目詰まり度でも現われる。したがって、時間ウィンドウは、この点Cより先に起こる温度の上昇の一般的段階に向けられる。これは、タービンエンジンの特徴に応じて当業者によって決定される。
【0059】
変曲点Aが検出されない場合は、この場合、始動インジェクタが詰まっていないことがサブ−ステップ1211時にそれから推論される。
【0060】
変曲点Aが検出される場合は、本方法は、第2の変曲点Bの検出ステップ1220をさらに含み、そこから温度が再び増加して、低下段階の終わりと、点Aと点Bとの間の温度の低下の振幅の測定値、すなわち点Aと点Bとの間の温度差の絶対値とを確認することができる。
【0061】
前述のステップは、タービンエンジンの各始動において行われることが好ましく、点Aと点Bとの間の温度の低下の振幅は、温度の低下の経時的な変化を確定することができるように、測定の日付とともにステップ1221の間に記録される。
【0062】
次いで、各始動においてまた、測定ステップの終わりに、直前の始動(複数可)と比べたAとBとの間の温度の低下の振幅の変化が、サブ−ステップ1230時に少なくとも1つの所定の閾値S
Δと比較される。
【0063】
正確には、点Aと点Bとの間の排気ガスの温度の低下の振幅Δ
ABを書き留めることによって、1日当たりの程度の変化を得るために、測定の日jにおけるΔ
AB(j)と、測定の前日のΔ
AB(j−1)との間のΔ
ABの変化Δ
AB(j)−Δ
AB(j−1)を計算することができる。
【0064】
あるいは、タービンエンジンが1日に数回始動される場合は、その間に測定が行われる始動dにおけるΔ
AB(d)と、直前の始動におけるΔ
AB(d−1)との間のΔ
AB(d)−Δ
AB(d−1)を計算することによって、1つの始動から次の始動までのガスの温度の低下の振幅の変化を計算することができる。
【0065】
閾値S
Δは、計算された変化のタイプ(1日当たりまたは1始動当たり)に、および比較から検出することができそうである目詰まり度に依存する。たとえば、閾値S
Δは、30℃/日であってもよい。閾値は、温度の低下の振幅が始動インジェクタの目詰まり度とともに増加するので正であることが留意されるであろう。
【0066】
ガスの温度の低下の振幅の計算された変化が負である場合は、始動インジェクタが詰まっていないかまたは測定誤差が存在することがそれから推論される。
【0067】
変化が正である場合は、これは、閾値S
Δと比較される。
【0068】
各比較の結果に応じて、処理手段は、始動インジェクタの目詰まり度をステップ1240時に推論する。
【0069】
この目詰まり度は、AとBとの間の温度の差を調査するのに使用される閾値の数に応じてほぼ正確であり得る。
【0070】
たとえば、単一の閾値S
Δが使用される場合は、2つの目詰まり度の間で識別することができるだけであり、AとBとの間の温度の低下の振幅の変化が0と閾値との間に含まれる場合は、「低い」目詰まり度をインジェクタに帰することができ、かつ低下の振幅の変化が前記の閾値S
Δを超える場合は、「高い」目詰まり度をインジェクタに帰することができる。
【0071】
明らかに、閾値の数が高ければ高いほど、始動インジェクタの目詰まり度がそれだけより正確に定量化され得る。
【0072】
この目詰まり度は、持続時間に、またはタービンエンジンを始動させることが不可能になる目詰まりのレベルに達する前に残っているいくつかの始動に言い換えられることが有利である。
【0073】
前述の実施例においては、「低い」目詰まり度は、たとえば20個の追加の始動後の、または2週間の使用後の、非始動の中期的リスクに対応し得る。
【0074】
また、「高い」目詰まり度はそれ自体、すなわち6個の追加の始動後の、または3日間の追加使用後の、非始動の短期的リスクに対応する。
【0075】
有利なことに、本方法は、検出される目詰まり度に、またはこの目詰まり度がタービンエンジンの始動の不可能性に到達する前の残りの日数または始動数に応じて、警報の発生ステップ1300を含むことができる。
【0076】
前述の実施例を考慮すると、非始動の短期的リスクに対応する「高い」目詰まり度の場合は、できるだけ早く始動インジェクタを交換する必要性を示す警報が起動され得る。
【0077】
次の計画された保守動作時に始動インジェクタを交換する必要性を示す、たとえば「低い」目詰まり度の場合は、もう1つのタイプの警報が提供され得る。
【0078】
また、警報は、保守の計画を起動させ得る。
【0079】
警報は、操作者がこれを検出することができるように、航空機に搭載されたシステムとの、または遠隔基地との通信手段250によって与えられ得る。
【0080】
いかなる始動インジェクタの目詰まりも検出されていない場合は、通信手段はまた、ルーチン測定として、またはインジェクタの経時的な監視を行うために、この情報を中継することができる。
【0081】
図5に示される、本方法に実施の変形が、次に説明されることになる。
【0082】
この変形においては、監視するためのシステムは、タービンの出口における排気ガスの温度を測定するためのセンサ210は別として、タービンのシャフトの回転速度のセンサ212を含む。
【0083】
さらに、方法1000は、タービンエンジンの始動の段階時に、判定された頻度で、温度の低下の経時的な変化を前記段階時に得るために、タービンの出口において排気ガスの温度を測定するステップ1100を含む。
【0084】
そのうえ、このステップ1100は、タービンエンジンの始動段階時に、判定された頻度で、有利なことに温度の測定と同じく前記速度の時間的展開を得るために、タービンの回転速度の測定ステップをさらに含む。
【0085】
この経時的な変化は、太くない実線での
図4aおよび
図4bの第2の曲線である。
【0086】
発明者らは、インジェクタが詰まらされれば詰まらされるほど、変曲点Aはそれだけより低いタービンの回転速度で検出されることに留意している。
【0087】
したがって、始動インジェクタの目詰まりのもう1つの指標は、始動が進行している時の、排気ガスの温度の低下を開始させる変曲点Aが現われる瞬間t
Aにおけるタービンの回転速度Vの値の変化の測定値であり、速度はV
tAで示される。
【0088】
次いで、始動インジェクタの目詰まり度の評価ステップ1200が、2つの指標を比較することによって行われる。
【0089】
より詳細には、処理ユニット220の処理手段222によって実施される本方法は、次の通り行われる。
【0090】
サブ−ステップ1210時に、タービンの出口におけるガスの温度の上昇の段階時に先に述べたように、低下は、判定された時間ウィンドウの範囲内で、前記温度において検出される。
【0091】
先に述べたように、時間ウィンドウは、ガスの温度の低下が変曲点Aにおける始動段階に対応することを保証するように調整される。
【0092】
いかなる低下も前記時間ウィンドウの範囲内に検出されない場合は、始動インジェクタが詰まらされていないことがサブ−ステップ1211時にそれから推論される。
【0093】
変曲点Aが検出される場合は、本方法は、一方では、それから温度が再び上昇する第2の変曲点Bの検出ステップ1220、および点Aと点Bとの間の温度の低下の振幅の測定ステップと、また他方では、前記低下を開始させる変曲点Aの瞬間におけるタービンの回転速度の測定ステップ1222とをさらに含む。
【0094】
そのうえ、AとBとの間の温度の低下の振幅の、およびt
Aにおける回転速度の値が、ステップ1211時に記録される。
【0095】
次いで、AとBとの間の温度の低下の振幅の変化が、先に述べたように少なくとも1つの所定の閾値と比較される1230。
【0096】
そのうえ、直前の始動(複数可)と比べた点Aのレベルにおけるタービンの回転速度の変化がまた、少なくとも1つの所定の変化閾値S
Δ’とサブ−ステップ1231時に比較される。
【0097】
AとBとの間の温度の低下の振幅の変化に関する限りでは、タービンの回転速度の変化は、1つの始動から次の始動まで、またはある日から次の日までに判定され得る。
【0098】
正確には、ある日から次の日までの回転速度の変化を得るために、測定の日jにおけるV
tA(j)と、測定の前日におけるV
tA(j−1)との間のV
tAの変化V
tA(j)−V
tA(j−1)を計算することができる。
【0099】
あるいは、タービンエンジンが1日に数回始動される場合は、その間に測定が行われる始動dにおけるV
tA(d)と、直前の始動におけるV
tA(d−1)との間のV
tA(d)−V
tA(d−1)を計算することによって、t
Aにおける回転速度の変化を計算することができる。
【0100】
有利なことに、タービンの回転速度は、タービンの公称回転速度の百分率で表示され、それにより、測定された量と本方法が実施されるタービンエンジンと無関係の閾値S
Δ’とを作ることができる。第1の場合においては、回転速度の変化は、1日当たりの%で表示され、第2の場合においては、最後の始動と比べた%で表示される。
【0101】
得られた変化が正である場合は、これは、t
Aにおける回転速度が直前の測定値と比べて増加していることを意味し、始動インジェクタが詰まっていないかまたは測定誤差が存在することがそれから推論される。
【0102】
変化が負である場合は、これは、負の閾値S
Δ’と比較される。
【0103】
閾値S
Δ’は、変化を計算する方法(1日当たりまたは1始動当たり)に、および比較から検出することができるようにしたい目詰まり度に依存する。たとえば、閾値S
Δ’は、−0.1%/日で選択され得る。
【0104】
これらの比較の結果に応じて、ステップ1240時の始動インジェクタの目詰まり度が推論される。
【0105】
各指標についての閾値の数、閾値の値、および所望のセキュリティレベルに応じて、始動インジェクタの目詰まりのレベルの属性のいくつかの可能性を予想することができる。
【0106】
非限定的な例示として、点Aと点Bとの間の温度の低下の振幅の変化が所定の閾値S
Δより小さい場合、および点Aにおけるタービンの回転速度の変化が閾値S
Δ’を超える場合は、「低い」目詰まり度に帰することができる。
【0107】
低下の振幅の変化が閾値S
Δを超える場合、およびt
Aにおけるタービンタービンの回転速度の変化が閾値S
Δ’より小さい場合は、インジェクタの「高い」目詰まり度がそれから推論される。
【0108】
最後に、AとBとの間の温度の低下の振幅の変化が閾値S
Δを超えるか−より小さい−場合、およびタービンの回転速度の変化が閾値S
Δ’を超えるか−より小さい(すなわち、2つの指標によって与えられた指示がインジェクタの目詰まり度に関して矛盾する)−場合は、たとえば、「中間の」目詰まり度をそれから推論し、または評価方法1000を再スタートすることができる。
【0109】
先に述べたように、始動インジェクタの目詰まり度は、持続時間に、またはタービンエンジンを始動させることが不可能であるような目詰まりのレベルに達する前の残りの始動数に言い換えられることが有利である。
【0110】
「低い」および「高い」目詰まり度について先に述べたように同じ値を考慮すると、「中間の」目詰まり度は、残る1週間の使用に、または約12回の始動に対応することもできる。
【0111】
先に述べたように、本方法は、警報ステップ1300を含むことができ、その性質は、検出される目詰まり度に応じて変化され得る。