【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は本発明の請求項1の特徴を有する医療用工具システムによって解決される。この新しい工具システムのさらなる発展形態は従属請求項2
ないし11に示される。
【0013】
本発明の骨の関節面
に凹部を設けるための新しい医療用工具システムは、まず公知の比較可能な工具システムと同じく、工具軸を中心として回転駆動するフライス工具を具備し、このフライス工具は、外周(末梢)
すなわち工具軸の径方向に作用するフライス刃と工具軸の軸方向端部で作用するフライス刃とを有する。さらに、フライス工具は、その公知の比較可能な工具システムと同じく、関節面に固定可能でフライス工具を案内するための型板部を有し、また、フライス工具の侵入深さを制限するストッパが設けられる。
【0014】
本発明の工具システムの特別な点は、型板部がキャリッジガイドを有する基礎部材を備え、また、ガイド面の案内レールに沿って、前記キャリッジガイドにおいて2つの端部ストッパの間で移動可能なキャリッジを有することにある。さらに本発明ではキャリッジ内にフライス工具を受けるための導管が設けられている。この導管では、その中に導入されたフライス工具が工具軸
と交差方向に案内される。すなわち、フライス工具は、導管と相対的に工具軸
と交差する方向には移動できないが、導管の中ではフライス工具は工具軸を中心に自由に回転でき、軸方向に移動できる。
【0015】
本発明の
医療用工具システムは、例えば膝関節の脛骨部分の顆表面に台形凹部を形成するために使用されることに特に適している。
【0016】
補綴インプラントを設置するために顆表面を調整する際には、まず工具システムは、脛骨の長手方向軸を横切って実施された切開、および、この切開部を横切って実施された除去切開した箇所に平坦なプラトー(いわゆる高原)が生じるように調整される。
【0017】
次いで、この平坦な高原に、適応するインプラントの典型的にフィンと呼ばれる固定用突起を嵌合できる台形凹型が設けられる。ここでは平坦な高原の調整後、高原の表面上に本発明の
医療用工具システムの型板部の基礎部材が載置されて固定される。
【0018】
キャリッジガイドの基礎部材上にて2つの端部ストッパ間で往復移動可能なキャリッジは、端部ストッパの間を往復滑動可能であり、相応なスペースが低侵襲外科技術の場合にも利用できる。
【0019】
キャリッジ中の導管を通じてフライス工具が導入されて回転する。そのときフライス工具は、あらかじめ設定されたガイド面に対する導管の傾斜位置角度において骨表面を切開する。
【0020】
導管内でのフライス工具
を回転させながら、最大限
(ストッパまで
)のキャリッジの往復運動、
および、フライス工具の前後運動によって相応な凹部が穿孔される。
【0021】
ストッパはフライス工具が骨に深く浸入しすぎることを防ぎ、凹部の深さを決定する。
【0022】
フライス工具が周囲方向にも軸方向にも作用するフライス刃を有することにより、キャリッジが最大限にキャリッジガイド中のフライス工具の送り方向に端部ストッパまで移動し、フライス工具が導管における停止位置まで挿入された際に、フライスの軸方向端部によって成形される側面の凹部は、平滑かつ清潔に穿孔されて空になる。その際に、キャリッジ上の導管の傾斜位置は、特にガイド面の案内をする部分が前方に位置するように、すなわち手術中に近位に配置されるキャリッジ端部に位置するように設定される。これによって導管の一種の楔形がキャリッジ上に形成され、低い高さを元来の膝関節の遠位端の方向に有し、それによって必要な作業高さが最も低く、手術中に典型的に形成中の凹部に移動する膝関節のさらなる部分、つまり軟組織、特に靭帯を有する大腿骨が手順を妨げず、相応に物質を保持しながら作業できる。
【0023】
例えばストライカー社の公知のシステムとは異なり、1つの工具、すなわちフライス工具のみによって凹部空間の完全な形成が達成され、骨用ドリルおよび骨用ドリルに次ぐ鏨工具での凹部空間内部の片付け等の準備作業が必要ない。
【0024】
本発明の他の形態に示されているように、基礎部材が板状で平坦に形成されていることが好ましい。
【0025】
板状で平坦な形状の基礎部材は、特に良好に顆切開後の典型的に平坦に準備された面に適合する。さらに板状の基礎部材は特にその高さを低くできるため、上述したような元来の関節構造への最小侵襲という目的に好適である。また、板状の基礎部材の強度は、通常充分に安定した確実なキャリッジの案内が可能であるとともに、最小限の強度を設定できるように選択可能である。
【0026】
本発明の工具システムのキャリッジガイドは、ガイドキャリッジのガイド突起が係合されて受けられる直線的に延在する長手方向スロットによって構成されてもよい。
【0027】
そのようなキャリッジガイドは、技術的に実現が容易で操作が簡単であるだけでなく、直線的に延在し、台形断面を有する凹部の形成のための理想的なガイドである。
【0028】
台形
断面を有する凹部は、凹部の土台および顆切開後に残った平坦な表面に対するフライス工具軸の傾斜位置に基づいて生じる。前方の境界面は、この軸位置に従って傾斜し、後方の境界面は軸端に作用するフライス刃のために傾斜して形成され、特に、フライス加工の際の工具軸に関して、軸端部に作用するフライス刃が回転軸に対して略垂直で平坦な面を切削する。
【0029】
フライスは、最も単純な場合、工具軸に対して略垂直に延在し、周囲に沿っておよび前端部にフライスエッジまたはフライス刃を有し、自由な軸端を有する筒
形の外輪郭を備えた構成にできる。
【0030】
導管は
、ガイド面に対して30°以上60°以下
の角度で傾斜しており、特に40°以上50°以下の角度で傾斜することが好ましく、45°の傾斜がさらに好ましい。
【0031】
これらの角度の範囲は
、フライス工具の長いフライス駆動と接続されるべきフライス軸とを考慮し、支障なく広範囲に実際の関節領域に侵入する傾斜位置を生じさせ
る。つまり間接領域の中で手術のために除去され加工されるべき関節面を有する骨と対となる骨があり、関節の軟組織がある領域である。
【0032】
したがって、本発明の解決法は、フライス軸の垂直のガイドのために大きな空間が必要となる独国特許出願公開
第60200401338
3号明細書(特許文献3)とは明確に異なる。
【0033】
特に導管は
ガイド面に対して45°の角度が好ましい。なぜなら、45°にすることによって、その側面にて傾斜して延在する2つの境界面が45°の角度で延びて
、凹部を形成するからである。第1の側面は、ガイド面に対する工具軸の傾斜に従い、第2の側面は、第1の側面の傾斜に応じて90°傾斜、つまりガイド面に対して別の方向に45°傾斜する。この90°の違いは、工具軸に対して垂直に延びる平面部を軸端に形成し、作用するフライス刃を有するフライス工具の形態によって決まる。
【0034】
発明のさらなる有利
な形態によると、導管は、キャリッジにおいて上縁部を有する筒状部分の中に配置される。
【0035】
こ
の形態においてフライス工具は
、回転軸
と交差する方向に突出する襟状部を有する。筒状部分の縁部および襟状部は
、凹部の深さを決定し厳密に規制するため、フライス工具の案内路への侵入深さおよび侵入による骨材中の作業深さを制限するストッパを構成する。
【0036】
型板部の簡単な洗浄および消毒のために、キャリッジと基礎部材とは互いに取外可能に接続されること好ましい。特に、この取外可能な構成は、移動可能な接続領域に生じる隙間の洗浄や消毒の必要性を省く。
【0037】
型板部を処置されるべき骨に固定して、型板部および恊働するフライス工具によって骨中に設置するべき凹部の状況を維持するために、型板部の基礎部材はピン孔を備えることが好ましい。このピン孔は、いわゆるプラグピンやネジ付き固定ピン等のピンおよびネジを、予め骨に設けた孔に固定するための通過開口部である。このようなピンは公知であり、広範囲に整形外科において補助装置および工具ガイドの固定に用いられている。
【0038】
型板部を正確に設置する際の簡単な位置決めのために、基礎部材に把持部を形成してもよい。