特許第6263209号(P6263209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263209
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】角度可変形太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02S 20/32 20140101AFI20180104BHJP
   H02S 20/10 20140101ALI20180104BHJP
   H02S 20/30 20140101ALI20180104BHJP
【FI】
   H02S20/32
   H02S20/10 B
   H02S20/30 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-30567(P2016-30567)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2017-153167(P2017-153167A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年5月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503059921
【氏名又は名称】株式会社ジェンク
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】柳 富雄
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−234861(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3168360(JP,U)
【文献】 特許第5726361(JP,B1)
【文献】 特開2015−153055(JP,A)
【文献】 特開2001−044688(JP,A)
【文献】 特開2009−041582(JP,A)
【文献】 特開2007−019331(JP,A)
【文献】 特開2008−192794(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3156576(JP,U)
【文献】 特開2003−322418(JP,A)
【文献】 特開2014−234973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 20/32
H02S 20/10
H02S 20/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラパネルを水平状態から一方向のみ任意の傾角に傾斜する範囲で揺動可能に支持する支持部と、該支持部を下側から鉛直軸回りに回転可能に支持する旋回部とを備えた太陽光発電システムにおいて、
前記支持部は、ソーラパネルのパネル中央裏側に設けた回転軸と、該回転軸から一体的に下方斜めに突設して、前記ソーラパネルの揺動方向に往復動するアクチュエータと、該アクチュエータを前記往復動可能に操作する支持部用動力源とを備え、
前記アクチュエータは前記ソーラパネルの揺動時に、前記水平状態における水平線よりも下向きに揺動する側のパネル面と鋭角をなすように前記回転軸に突設すると共に、
前記支持部用動力源は、電動モータにより駆動するリールと、このリールから繰り出されるワイヤを掛ける一対のプーリとを備え、
前記アクチュエータの下端部に前記ワイヤを接続したことを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
旋回部は、上記鉛直軸を対称軸としてソーラパネルの揺動範囲を反転可能に上記支持部を回転可能に支持し、当該旋回部の回転前後を通じて前記ソーラパネルを双方向に同じ範囲で揺動可能とした請求項1記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
旋回部は、上記鉛直軸回りに180度の範囲で正逆に回転可能である請求項2記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
ソーラパネルが水平状態にあるとき旋回部が回転駆動する請求項1、2または3記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
支持部と旋回部とが同時並行して駆動する請求項1、2または3記載の太陽光発電システム。
【請求項6】
ソーラパネルの任意の傾角は最大45度である請求項1から5のうち何れか一項記載の太陽光発電システム。
【請求項7】
旋回部は、筒上部に支持部を水平方向に回転可能に支持する回転ドラムと、該回転ドラムの筒壁と外周面が接し、水平方向に回転自在なローラと、該ローラに動力を付与して前記回転ドラムを回転駆動する旋回部用動力源とを備えた請求項1からうち何れか一項記載の太陽光発電システム。
【請求項8】
回転ドラムは中空円筒状であり、その内部にローラを設けた請求項記載の太陽光発電システム。
【請求項9】
回転ドラムの外側に補強用ドラムをベアリングを介して同心上に設置した請求項7または8記載の太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ソーラパネルの角度を予め決められた角度範囲で変化させる角度可変形太陽光発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、太陽光発電システムにおいては、ソーラパネルを屋根や架台に固定した固定型が主流であるが、受光面の角度が固定されているため、最も発電効率が高くなる太陽光の垂直入射時間も限られていた。
【0003】
この課題を解決するために、太陽の動きに追従してソーラパネルの角度を可変制御する追尾型太陽光発電システムも提案されている(特許文献1〜8)。この追尾型では、日の出から日の入りまで、ソーラパネルの受光面を太陽光が垂直に入射する、あるいはそれに近い角度とすることができるため、固定型よりも発電量が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2014−522624号公報
【特許文献2】特開2011−253997号公報
【特許文献3】特開2011−35337号公報
【特許文献4】特開2003−324210号公報
【特許文献5】特開2001−91818号公報
【特許文献6】特許第5057412号公報
【特許文献7】特許第4873279号公報
【特許文献8】特許第3539729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ソーラパネルの中央を回転軸を介して架台に支持し、日中、太陽の傾きに応じてソーラパネルの傾角を可変するようにした追尾型の太陽光発電システムにおいて、例えば、ソーラパネルを東側と西側それぞれで最大45度ずつ傾ける場合、従来は、日の出時に東側に45度傾いた状態から日没にかけて西側に45度傾ける合計90度の全範囲でソーラパネルの傾き(揺動)を制御していたが、ソーラパネルの重量や風による回転軸への負担等を考慮すれば、ソーラパネルの傾き制御角(回転角度)はできるだけ小さくすることが好ましい。
【0006】
また、モータを動力源として、45度に傾いたソーラパネルを水平状態に移行する動作と、水平状態から45度に傾いた状態に移行する動作とでは、片側に傾いたソーラパネルを水平状態に起こし上げる前者動作の方が、水平状態のソーラパネルを反対側に傾ける後者動作よりも大きなトルク(消費電力)を必要とするが、従来は、24時間の間に、日の出から正午の間と、日没後、西側に45度傾いたソーラパネルを翌日の発電に備えて東側に45度に傾ける途中の水平状態に移行する間の少なくとも二回にわたって、ソーラパネルの起こし上げ動作を伴うものであるから、モータの消費電力の面でも改善の余地があった。
【0007】
なお、上述した点について、ソーラパネルの最大傾角を片側45度から30度に小さくすれば、ソーラパネルの傾き制御角を小さくなるが、そうすると太陽を追尾する範囲(太陽光に正対する範囲)が縮小して、発電量も小さくため、太陽追尾型とした技術的意義が損なわれる。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、太陽の追尾範囲を狭めることなく、ソーラパネルの傾き制御角を小さくした角度可変形太陽光発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明では、ソーラパネルを水平状態から一方向のみ任意の傾角に傾斜する範囲で揺動可能に支持する支持部と、該支持部を下側から鉛直軸回りに回転可能に支持する旋回部とを備えという手段を用いた。
【0010】
上記手段によれば、支持部はソーラパネルを片側一方向にしか揺動しないため、傾き制御角を小さくできる一方、旋回部によって前記支持部を水平方向に180度回転すればソーラパネルも180度回転して揺動範囲が反転の状態となり、当該反転の前後を通じてソーラパネルを両側に同じ角度範囲で揺動することができる。このため、例えば、任意に設定される傾角を最大45度とすれば、合計90度の角度範囲で太陽を追尾できることになり、従来のシステムと太陽追尾範囲が同じとなる。
【0011】
支持部におけるソーラパネルの傾角の設定や旋回部の回転角度など、支持部や旋回部をどのように制御するかは任意であるが、太陽の日中の動きに追尾するには、旋回部は、上記鉛直軸を対称軸としてソーラパネルの揺動範囲を反転可能に上記支持部を回転可能に支持し、当該旋回部の回転前後を通じて前記ソーラパネルを双方向に同じ範囲で揺動可能とすることが好ましい。より具体的には、旋回部は、上記鉛直軸回りに180度の範囲で正逆に回転可能であることが好ましい。
【0012】
さらに、支持部と旋回部の駆動制御についても任意であるが、ソーラパネルが水平状態にあるとき旋回部が回転駆動するようにすれば、ソーラパネルによる空気抵抗が最も小さい状態で支持部を回転させることができる。一方、支持部と旋回部とが同時並行して駆動するようにすれば、春から秋の間よりも南中高度が低くなる秋から春の間に、より効果的にソーラパネルを太陽光と正対させることができる。
【0013】
支持部の具体的構成例としては、ソーラパネルのパネル中央裏側に設けた回転軸と、該回転軸から一体的に下方斜めに突設して、前記ソーラパネルを揺動可能に左右に往復動するレバー状のアクチュエータと、該アクチュエータを前記往復動可能に操作する支持部用動力源とを備え、前記アクチュエータは前記ソーラパネルの揺動時に、前記水平状態における水平線よりも下向きに揺動する側のパネル面と鋭角をなすように前記回転軸に突設することが好ましい。つまり、アクチュエータをパネル面に対して垂直に設けると、ソーラパネルが上記角度範囲で揺動する間、アクチュエータはパネル中心から片側の範囲で偏って往復動することになるが、アクチュエータに角度を付けることによって、パネル中心の左右に同角度の範囲で往復動させることができて、支持部用動力源からアクチュエータに対する動力伝達構造も左右対称とすることができる。
【0014】
一方、旋回部の具体的構成例としては、筒上部に支持部を水平方向に回転可能に支持する回転ドラムと、該回転ドラムの筒壁と外周面が接し、水平方向に回転自在なローラと、該ローラに動力を付与して前記回転ドラムを回転駆動する旋回部用動力源とを備えることが好ましい。
【0015】
また、回転ドラムを中空円筒状として、その内部にローラを設置すれば、風雨からローラを保護し、その劣化を防止することができる。
【0016】
さらに、回転ドラムの外側に補強用ドラムをベアリングを介して同心上に設置すれば、補強用ドラムによって回転ドラムの倒壊防止など、システム全体の耐風性を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ソーラパネルを水平状態から片側一方向に揺動させるものであるから、両側の全範囲で揺動させる従来システムよりも、ソーラパネルの傾き制御角を半減することができて、ソーラパネルの回転制御の簡素化と省電力化が図られる一方、ソーラパネルを反転可能な旋回部を備えるから、前記半減した傾き制御角にて従来システムと同じ範囲で太陽を追尾することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る太陽光発電システムの斜視図
図2】同、側面視断面図
図3】同、支持部2の簡略説明図
図4】同、支持部2の斜視図
図5】同、旋回部3の一部を切欠した斜視図
図6】同、旋回部3の平面図
図7】同、旋回部3の側面視断面図
図8】同、旋回部3における補強構造を示す断面図
図9】同、旋回部3の変形例を示す側面視断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は本発明の一実施形態に係る太陽光発電システムを内部構造を透過して示す斜視図、図2は同側面図であって、図中、上部の箱形の構造物はソーラパネル1の支持部、下部の円筒形の構造物は旋回部1である。
【0020】
支持部2は、ソーラーパネル1を方角上、東西に対応する左右一方向(図面上も左右にて同一)に一定角度範囲で揺動可能に支持するものである。その具体的構造は、図2図4にて明らかにしたように、金属板等の適当な素材からなるハウジング4内に動力源として電動モータ5により駆動するリール6をハウジング底板4a上に固定設置すると共に、ハウジング4の左右両側板4b・4bの同一高さ位置には前記リール6から繰り出されるワイヤ7を掛けるプーリ8を一対設けている。また、ハウジング天板4c上には、前後方向(方角上、南北方向)に伸びる水平な回転軸9と、該回転軸9を正逆双方向に回転自在に挿入する軸受10とを設けている。この実施形態において軸受10は、図4に示すように、前後方向に一定間隔を空けて一対設けている。
【0021】
また、回転軸9の両端には取付部9aを設けて、これをソーラパネル1の裏側中央に前後方向に沿って設けた横桟1aと接合することによって、ソーラパネル1と回転軸9とを一体化している。
【0022】
さらに、回転軸9からはアクチュエータ11が下向きに突出している。このアクチュエータ11は、レバー状にて、その上端部を回転軸9の中央に一体的に固着することにより、回転軸9を支点として下端部を左右に往復動自在とし、この往復動作によって回転軸9を正逆に回転させる、いわば振り子の役割をなしている。
【0023】
そして、この実施形態では、アクチュエータ11は、ハウジング天板4cの軸受10の間に貫設したスリット4dを介してハウジング4内に突出させ、その下端部の一点にプーリ8を介してリール6から繰り出されるワイヤ7の両端それぞれを接続している。したがって、電動モータ5を駆動してリール6を回転駆動すれば、ワイヤ7の片側がリール6に巻き取られて、その方向にアクチュエータ11の下端部を引き寄せることによって回転軸9を回転させ、電動モータ5を逆回転にて駆動すれば、今度は、ワイヤ7の反対側がリール6に巻き取られて、アクチュエータ11の下端部を反対方向に引き寄せることで、回転軸9を逆回転させる。
【0024】
上述の動作によって、ソーラパネル1は回転軸9を支点として水平状態と一方向に任意の傾角で傾斜した状態との間の一定角度範囲を行き来するように揺動するのであるが、本発明においては、ソーラパネル1は水平状態から左右それぞれに同じ角度範囲で揺動するのではなく、水平状態から左右何れか片側一方に揺動させるように構成しており、これによってソーラパネル1の傾き制御角を小さくし、大面積で重量物であるソーラパネル1の揺動を容易且つ確実にしている。
【0025】
つまり、この実施形態においては、図3に簡略的に示すように、アクチュエータ11は、ソーラパネル1のパネル面と垂直ではなく、角度を付けて設けている。具体的には、ソーラパネル1が水平状態から、その水平線よりも下向きに揺動する側のパネル面、即ち、横桟1aを中心線として区画される左右のパネル面1b・1cのうち、左側のパネル面1bと鋭角をなすように、アクチュエータ8を角度を付けて回転軸9にその上端部を取付固定している。したがって、アクチュエータ8が回転軸9を縦に通る鉛直線を境として左右に往復動する間、この実施形態では、ソーラパネル1は水平状態から左側のみに傾斜する。
【0026】
ここで、アクチュエータ11の取付角度は任意であるが、ソーラパネル1が水平状態と最大傾斜状態にあるときのそれぞれで、上記鉛直線とのなす角度(振り角)が左右で同一となるように設定することが好ましい。ソーラパネル1を水平状態と最大傾斜状態との間を揺動させる際、動力源である電動モータ5及びリール6を正逆同じ回転角で駆動することができて、モータ制御が容易だからである。また、アクチュエータ11の振り角が左右対称となることによって、ハウジング4(支持部2)の重心を安定させることができるからである。
【0027】
上述のように、本発明の支持部2は、ソーラパネル1を左右何れか一方向に揺動する機能しか持ち合わせないが、さらに、本発明では、この支持部2を旋回部3で水平方向に回転可能に支持しているため、全体としては、ソーラパネル1を左右双方向に同一角度範囲で揺動することを実現している。
【0028】
この旋回部3は、図5〜7にて詳細に示したように、筒上部に支持部2を設置した中空円筒状の回転ドラム12を備え、その動力源として、回転ドラム12の内側に水平回転する三つのローラ13を配置すると共に、この三つのローラ13の中心に電動モータ14を設けている。
【0029】
回転ドラム12は、金属パイプなど適当な素材からなる中空筒状で筒軸を垂直として、その下部には円周方向に回転する複数のコロ(車輪)15を設けて筒軸(上記鉛直軸と同義)を中心として360度水平回転自在としたものである。なお、16は回転ドラム12の周囲に、その外周面と接するように設けたカムフォロアローラであって、回転ドラム12の回転位置を規制するものである。なお、コロ15とカムフォロアローラ16は部品として同一物を採用することができる。
【0030】
そして、その動力源は、本実施形態の場合、回転ドラム12の内部に構成しており、まず、その中心には、回転ドラム12の筒軸(回転軸)と同軸に電動モータ14を垂直方向に設置すると共に、その周囲に三つのローラ13を三角形をなすように配置している。電動モータ14のピニオン軸には三つのローラ13に内接する直径を有した円柱状のホイール14aが取り付けられており、電動モータ14を駆動することによってホイール14aを介して三つのローラ13を同方向に同時回転するようにしている。当然、電動モータ14を逆回転駆動すれば、三つのローラ13は同時に逆方向に回転する。なお、電動モータは一例としてギアードモータであることが好ましいが、他の電動モータであってもよい。
【0031】
そして、これら三つのローラ13は、その外周面が回転ドラム12の内周面に接しているため、電動モータ14を駆動することによって、三つのローラ13を介し、回転ドラム12が水平方向に回転するものである。
【0032】
なお、ローラ13は回転ドラム12と接する外周面がゴム層で構成されていることが好ましい。その摩擦力によって回転ドラム12を確実且つ正確に回転させることができるからであり、例えば、乗物用のタイヤを用いることができる。また、乗物用のタイヤであれば、パンク後も相当時間、回転ドラム12との接触圧(摩擦力)を維持することができるランフラットタイヤを採用することが、より好ましい。
【0033】
上述した旋回部3によれば、電動モータ14を駆動することによって、そのピニオン軸に取り付けたホイール13aと接する三つのローラ13が同時に、電動モータ14の回転方向と逆向きに回転駆動し、これによって回転ドラム12がローラ13と同方向に回転駆動する。そして、回転ドラム12の上部に設置した支持部2もソーラパネル1と共に水平方向に回転する。
【0034】
この旋回部3の動作により、回転ドラム12を180度回転させれば、ソーラパネル1は左右反転の状態となる。そして、再度、同方向または、逆方向に180度回転させれば、ソーラパネル1を元の左右状態に復帰させることができる。
【0035】
なお、ソーラパネル1が強風の煽りを受けると、回転ドラム12に強靱な力が作用する。そこで、回転ドラム12を補強するために、図8に示すように、回転ドラム12の外周に補強用のドラム17を同心上に固定し、両者ドラム12・17間にベアリング18を介在させることによって、回転ドラム12の水平回転を阻害することなく、回転ドラム12の倒壊等を防止することができる。
【0036】
次に、上記太陽光発電システムの運用例(制御例)を説明すると、まず、その設置に関しては、ソーラパネル1が揺動する左右方向を方角上の東西にあわせておき、初期状態として、支持部2を制御して、ソーラパネル1を左側(東側)に45度傾けた状態として日の出まで待機する。日の出になれば、例えば光センサや照度センサなど、太陽光発電可能な日照を検知し、その検知信号により支持部2を制御して、ソーラパネル1を水平状態に向かう方向に回転する。通常、南中高度が最も高くなる正午にソーラパネル1を水平状態とすることが好ましい。
【0037】
そして、ソーラパネル1が水平状態となれば、これを水平器やリミットスイッチなどのセンサ類、正午の時刻を検知するアラーム付き時計などのタイマ、その他の手段によって検知し、旋回部3を制御する。即ち、ソーラパネル1が水平状態となれば、回転ドラム12を180度水平回転して、ソーラパネル1を左右反転の状態とする。
【0038】
この反転動作が完了すれば、継続して支持部2を制御して、今度は、支持部2における電動モータ5をそれまで(午前)とは逆向きに回転駆動することによって、ソーラパネル1を西側に45度傾くまで回転させる。
【0039】
このような動作により、ソーラパネル1を日中の太陽の動きに追従して左右90度の範囲で回転させることができる。
【0040】
そして、日没等によって上記日中の動作が完了すれば、旋回部3を制御して、再度、ソーラパネル1を左右反転することで、そのまま初期状態に復帰させることができる。
【0041】
このように、本実施形態による太陽光発電システムでは、支持部2によるソーラパネル1の傾き制御角は片側のみの45度であるが、旋回部3による反転動作によって両側に90度の範囲でソーラパネル1を揺動することができる。したがって、ソーラパネル1の傾き制御は、初期状態の45度から水平状態に移行する制御と、水平状態から45度に傾ける制御で構成され、特に大きなモータトルクを必要とする前者制御(午前の動作制御)が1回で済むから、電動モータ5の消費電力を従来よりも小さくすることができる。
【0042】
なお、本発明では、旋回部3にも電動モータ14を要し、ここでも電力を消費するが、その消費量は、ソーラパネル1を揺動するよりも小さく済む。また、上記動作例のように、正午の反転動作は、ソーラパネル1が水平状態であるため空気抵抗が小さく、より小さい消費電力となる。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限定されないことはもちろんであって、支持部2におけるソーラパネル1の揺動機構は、アクチュエータ8をワイヤ7で往復動させる代わりに、リンク機構等によって往復動させてもよく、アクチュエータ8そのものを省略して、電動モータ5の動力をギア等によって直接回転軸9に伝達してもよい。
【0044】
また、旋回部3においても、回転ドラム12を回転駆動する動力源は、ローラ13を回転ドラム12の外側に設置してもよいし、ローラ13をギアに変えて、回転ドラム12にも噛み合うギアを設けて、これらギア構造によって、回転ドラム12を水平回転させるようにすることも可能である。
【0045】
また、旋回部3は、図9に示したように、その動力部であるローラ13と電動モータ14を回転ドラム12の上面に設けた水平板19に対して、上記実施形態とは逆さの状態で配置してもよい。この変形例では、旋回部3の動力部が回転ドラム12の上方に位置して、装置全体の重心を安定させることができる。
【0046】
さらに、支持部2や旋回部3の駆動制御も任意であり、上記実施形態では、ソーラパネル1が45度傾斜した状態にあるときを初期状態として1日の動きを説明したが、水平状態を初期状態としてもよく、この場合、その日の始めは、上述した光センサ等によって太陽光(日の出)を検出したときにソーラパネル1を45度に傾斜駆動し、その後、水平状態まで揺動し、順次、旋回部3による反転及び反対側にて45度に傾斜駆動した後、光センサが太陽光を検出しなくなったとき(言い換えると、日没を検出すれば)、再度、初期状態の水平状態に復帰させる。このように水平状態を初期状態とすれば、ソーラパネル1が受ける風の抵抗が小さく、また、初期状態での夜間待機中にも風による破損等の問題を小さくすることができる。
【0047】
さらにまた、支持部2と旋回部3は同時並行して駆動してもよく、この場合、ソーラパネル1を三次元的にコントロールできるため、例えば日本の秋や冬、あるいは南中高度が低い土地において、より効果的にソーラパネル1を太陽光に正対させて、発電効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ソーラパネル
2 支持部
3 旋回部
4 ハウジング
5 電動モータ
6 リール
7 ワイヤ
8 プーリ
9 回転軸
10 軸受
11 アクチュエータ
12 回転ドラム
13 ローラ
14 電動モータ
14a ホイール
15 コロ
16 カムフォロアローラ
17 補強用ドラム
18 ベアリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9