(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
局側からの通信回線を終端する回線終端部と、前記回線終端部が前記通信回線から受信したパケットをルーティングするルータ部と、前記ルータ部と前記回線終端部とに接続される統合制御部とを具備する加入者線終端装置であって、
前記統合制御部は、前記ルータ部の異常と前記回線終端部の異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部が前記ルータ部の異常を検出した場合に、ルータリセット信号を出力し、前記異常検出部が前記回線終端部の異常を検出した場合に、ONUリセット信号を出力するリセット信号出力部とを具備し、
前記ルータ部は、前記ルータリセット信号を受信した場合に、該ルータ部をリセットするルータリセット部を具備し、
前記回線終端部は、前記ONUリセット信号を受信した場合に、該回線終端部をリセットするONUリセット部を具備し、
前記ルータ部は、パケットを処理するルータ主信号部と、
前記ルータ主信号部がDHCPサーバからIPアドレスを取得できない場合に、前記ルータ主信号部の故障を表すルータ故障情報を出力するルータ故障検出部とを備え、
前記異常検出部は、前記ルータ故障情報を受信した場合、前記ルータ部の異常を検出したこととする
ことを特徴とする加入者線終端装置。
局側からの通信回線を終端する回線終端部と、前記回線終端部が前記通信回線から受信したパケットをルーティングするルータ部と、前記ルータ部と前記回線終端部とに接続される統合制御部とを具備する加入者線終端装置が行う復旧方法であって、
前記統合制御部は、前記ルータ部の異常と前記回線終端部の異常を検出する異常検出ステップと、前記異常検出ステップで前記ルータ部の異常を検出した場合に、ルータリセット信号を出力し、前記異常検出ステップで前記回線終端部の異常を検出した場合に、ONUリセット信号を出力するリセット信号出力ステップとを行い、
前記ルータ部は、前記ルータリセット信号を受信した場合に、該ルータ部をリセットするルータリセットステップを行い、
前記回線終端部は、前記ONUリセット信号を受信した場合に、該回線終端部をリセットするONUリセットステップを行い、
前記ルータ部は、パケットを処理するルータ主処理ステップと、
前記ルータ主処理ステップでDHCPサーバからIPアドレスを取得できない場合に、前記ルータ主処理ステップの故障を表すルータ故障情報を出力するルータ故障検出ステップとを行い、
前記異常検出ステップは、前記ルータ故障情報を受信した場合、前記ルータ部の異常を検出したこととする
ことを特徴とする復旧方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
図1に、本実施の形態の加入者線終端装置1の機能構成例を示す。加入者線終端装置1は、ルータ部10と、回線終端部20と、統合制御部30とを具備する。
【0016】
回線終端部20は、(ONU:Optical Network Unit)のことであり、一般的には光加入者線終端装置と称され、局側(OLT: Optical Line Terminal)からの通信回線の終端部に接続されるものである。ルータ部10は、回線終端部20が通信回線から受信したパケットをルーティングするものである。
【0017】
統合制御部30は、ルータ部10と回線終端部20とに接続される。このように、加入者線終端装置1は、光加入者線終端装置とルータとを一体化したものである。
【0018】
統合制御部30は、異常検出部31とリセット信号出力部32を具備する。異常検出部31は、ルータ部10の異常と回線終端部20の異常を検出する。
【0019】
リセット信号出力部32は、異常検出部31がルータ部10の異常を検出した場合に、ルータリセット信号を出力し、異常検出部31が回線終端部20の異常を検出した場合に、回線終端部20をリセットするONUリセット信号を出力する。
【0020】
ルータ部10は、ルータ制御部11と、ルータ主信号部12と、ルータリセット部13と、を具備する。ルータ制御部11は、ルータ部10を経由するパケットを処理するルータ主信号部12を制御する。ルータリセット部13は、ルータ制御部11とルータ主信号部12の両者をリセットする。
【0021】
回線終端部20は、ONU制御部21と、ONU主信号部22と、ONUリセット部23とを具備する。ONU制御部21は、回線終端部20を経由するパケットを処理するONU主信号部22を制御する。ONUリセット部23は、ONU制御部21とONU主信号部22の両者をリセットする。
【0022】
リセットとは、ルータ部10又は回線終端部20を初期化することであり、例えば、それぞれの電源をON→OFF→ON(電源リセット)することである。
【0023】
電源リセットを行うと、機器が正常な動作に回復する場合があることはよく知られている。よって、本実施形態の加入者線終端装置1の統合制御部30は、ルータ部10と回線終端部20の少なくとも一方の異常を検出し、当該異常を検出した部分に電源リセットを施すことで、正常な動作状態に復帰させることができる。
【0024】
この統合制御部30とルータリセット部13とONUリセット部23の作用によって、加入者線終端装置1は、ルータ部10又は回線終端部20の異常状態からの復旧を自立的に行う。その結果、平均復旧時間(MTTR:Mean Time To Recovery)を短くできる。また、ウォッチドックやEther−OAM等の方法では検出できない異常からも復旧できる効果を奏する。
【0025】
次に、異常(故障)検出の具体的な方法について説明する。
【0026】
異常検出部31は、例えば、ルータ部10と回線終端部20の少なくとも一方の動作停止を異常として検出する。
図2に、異常検出部31がルータ部10と回線終端部20の動作停止を検出する動作シーケンス図を示す。
【0027】
統合制御部30内の異常検出部31は、ルータ制御部11に、例えばPingコマンドを送信する(ステップS1)。ルータ制御部11は、正常であればPingコマンドの応答を返信する(ステップS2)。
【0028】
ルータ制御部11が動作を停止していると、ステップS2の応答が得られない。異常検出部31は、所定の時間、応答を待つ(死活検出)(ステップS3)。所定の時間内に応答が確認されない場合(ステップS4のYES)、異常検出部31は、ルータ部10の動作停止を検出する。
【0029】
ルータ部10の動作停止を検出した異常検出部31は、ルータリセット信号を出力する(ステップS5)。ルータリセット部13は、ルータリセット信号を受信してルータ部10をリセットする(ステップS6)。
【0030】
所定の時間内に応答が確認された場合(ステップS4のNO)、異常検出部31は、次に回線終端部20の動作が停止しているか死活検出を行う。以降の動作は、上記のルータ10の死活検出と同じであり、一部の説明を省略する。
【0031】
所定の時間内に、ONU制御部21からの応答が確認されない場合(ステップS10のYES)、異常検出部31は、回線終端部20の動作が停止していることを検出する。回線終端部20の動作停止を検出した異常検出部31は、ONUリセット信号を出力する(ステップS11)。ONUリセット部23は、ONUリセット信号を受信して回線終端部20をリセットする(ステップS12)。
【0032】
所定の時間内に、ONU制御部21からの応答が得られた場合(ステップS10のNO)、異常検出部31は、ルータ部10の動作停止を検出する死活検出(ステップS3)と回線終端部20の死活検出(ステップS9)を、ステップS1から繰り返す。このように、ルータ部10の動作停止を検出する死活検出(ステップS3)と回線終端部20の死活検出(ステップS9)とは、繰り返し行われるので、それぞれの動作停止は即座に検出できる。
【0033】
異常検出部31は、ルータ制御部11の動作停止を検出した場合、ルータリセット信号を出力する。また、異常検出部31は、ONU制御部21の動作停止を検出した場合、ONUリセット信号を出力する。
【0034】
したがって、ルータ部10と回線終端部20のそれぞれは、動作を停止した異常状態から即座に復旧することができる。
〔ルータ部の故障検出〕
次に、ルータ制御部11が行う、異常(故障)検出方法について説明する。以降の説明において、「異常」と「故障」の文言は同義とする。
【0035】
ルータ制御部11は、ルータ故障検出部110と、第2ルータ故障検出部111とを具備する。ルータ故障検出部110は、ルータ主信号部12を経由してDHCPサーバからIPアドレスを取得できない場合に、ルータ主信号部12の故障を表すルータ故障情報を出力する。
【0036】
DHCPサーバは、IPアドレスを割り当てるサーバである。なお、
図1において、DHCPサーバはOLT側に配置されるが、その表記は省略している。
【0037】
図3に、ルータ故障検出部110が行う故障検出の動作フローを示す。ルータ制御部11は、DHCPサーバにIPアドレス取得要求を行う(ステップS20)。次にルータ故障検出部110は、IPアドレスが取得できた否かを判定する(ステップS21)。
【0038】
IPアドレスが取得できた場合は、ルータ主信号部12を介した通信が正常である。IPアドレスが取得できない場合は、ルータ主信号部12を介した通信に異常がある。
【0039】
ルータ故障検出部110は、ルータ主信号部12の異常を検出した場合に、ルータ主信号部12の故障を表すルータ故障情報を出力する。異常検出部31は、ルータ故障情報が入力されると、ルータリセット信号を出力する。
【0040】
つまり、ルータ故障検出部110がルータ主信号部12の異常を検出した場合は、異常検出部31がルータ部10の異常を検出したことになる。その結果、ルータリセット部13は、ルータ部10をリセットできる。
【0041】
なお、IPアドレスの取得ができないことでルータ部10をリセットした後に、再びDHCPサーバからIPアドレスが取得できない場合は、DHCPサーバダウンの可能性がある。よって、IPアドレスの取得ができないことでルータ部10をリセットする動作は、2度行う必要はない。
【0042】
次に、第2ルータ故障検出部111が行う、異常(故障)検出方法について説明する。
図3に、第2ルータ故障検出部111が行う故障検出の動作フローを示す。ルータ部10に、例えばパーソナルコンピュータ(以降、PC)が接続されていると仮定すると、PCからルータ主信号部12に上りパケットが送信される。上りパケットが送信されている状況においては、ルータ主信号部12からPCへ下りパケットが送信される。
【0043】
この下りパケットの有無に基づいてルータ主信号部12の異常を検出することができる。第2ルータ故障検出部111は、上りパケットの通過数をカウント出来ている状況(ステップS30の「あり」)で、且つ、下りパケットの通過数をカウント出来ない状況(ステップS31の「なし」)を、ルータ主信号部12の故障として検出する(ステップS31の「なし」)。パケットの通過数をカウント出来ていることは、パケットが観測される状況である。
【0044】
第2ルータ故障検出部111は、ルータ主信号部12の異常を検出した場合に、ルータ主信号部12の故障を表す第2ルータ故障情報を出力する。異常検出部31は、第2ルータ故障情報が入力されると、ルータリセット信号を出力する。つまり、第2ルータ故障検出部111が第2ルータ故障情報を出力した場合は、異常検出部31がルータ部10の異常を検出したこととなる。
【0045】
〔回線終端部の故障検出〕
次に回線終端部20が行う故障検出について説明する。ONU故障検出部210は、局側との接続の状況を表す網接続状態と認証状態とに基づいてONU主信号部22が故障しているか否かを判定し、ONU主信号部22が故障している場合に、ONU主信号部の故障を表すONU故障情報を出力する。網接続状態は、PON−LINK情報とも称され、センター局との接続状況を表す情報である。網接続状態は、回線終端部20がOLTと接続していれば「UP」、接続していなければ「DOWN」となる。なお、PONとは、アクセス網形態の一つである「Passive Optical Network」の略称である。
【0046】
また、認証状態は、回線終端部20が局側(OLT)に認証されているか否かを表す情報である。認証状態は、回線終端部20が認証されていれば「認証済み」、認証されていなければ「認証断」となる。
【0047】
図5に、ONU故障検出部210が行う故障検出の動作フローを示す。ONU制御部21は、ONU主信号部22から網接続状態と認証状態を取得する(ステップS40)。
【0048】
ONU故障検出部210は、ONU主信号部22から取得した網接続状態と認証状態とが、「DOWN」及び「認証断」である場合(ステップS41のYES)に、ONU主信号部22の故障を表すONU故障情報を出力する(ステップS42)。ONU故障検出部210がONU故障情報を出力した場合は、異常検出部31が回線終端部20の異常を検出したこととする。このことは、上記のルータ故障情報、第2ルータ故障情報と同じである。つまり、ONU故障検出部210がONU故障情報を出力すると、回線終端部20はONUリセット部23によってリセットされる。
【0049】
次に、第2ONU故障検出部211が行う、異常(故障)検出方法について説明する。第2ONU故障検出部211は、ONU主信号部22を介して局側(OLT)に、自身(回線終端部20)の認証を要求した場合において、局側から送信される識別子を受信できない場合に、ONU主信号部22の故障を表す第2ONU故障情報を統合制御部30に送信する。
【0050】
図6に、第2ONU故障検出部211が行う故障検出の動作フローを示す。本実施の形態の加入者線終端装置1(回線終端部20)を、光ファイバを介してOLTに接続すると、OLTは回線終端部20を自動的に発見し、通信リンクを自動的に確立する。
【0051】
この通信リンクを自動的に確立するのは、MPCP(Multi Point Control Protocol)で行われる。MPCPは、先ずOLTからディスカバリーゲート信号をONU制御部21に送信する(ステップS50)。ONU制御部21は、ディスカバリーゲート信号の応答として登録要求を、ONU主信号部22を介してOLTに送信する(ステップS51)。
【0052】
登録要求をOLTに送信する際に、ONU主信号部22が故障していると仮定すると、登録要求はOLTに送信されない(
図6中の×)。そのため、ONU制御部21は、OLTから識別子を含む登録通知を受信できない。
【0053】
第2ONU故障検出部211は、OLTからの応答がない場合(ステップS54の「なし」)に、ONU主信号部22の故障を表す第2ONU故障情報を出力する(ステップS55)。第2ONU故障情報が出力された場合を、異常検出部31が回線終端部20の異常を検出したこととする点については、上記のONU故障情報等と同じである。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の加入者線終端装置1によれば、ルータ制御部11、ルータ主信号部12、ONU制御部21、ONU主信号部22、のそれぞれの異常を検出することができる。なお、本実施形態では、統合制御部30を、ルータ部10と回線終端部20とは分離した例で説明したがこの例に限定されない。統合制御部30の機能構成部は、ルータ部10に含めてもよい。また、統合制御部30の機能構成部を、回線終端部20に含めてもよい。
【0055】
図8に、加入者線終端装置1を変形した加入者線終端装置2の機能構成例を示す。加入者線終端装置2は、ルータ部210と、回線終端部220とを具備する。加入者線終端装置2は、統合制御部30を具備しない点で加入者線終端装置1(
図1)と異なる。
【0056】
統合制御部30の異常検出部31とリセット信号出力部32は、ルータ制御部211とONU制御部221とに、それぞれ分散して異常検出部212,222及びリセット信号出力部213,223として配置される。異常検出部212は、回線終端部220の異常を検出する。また、異常検出部222は、ルータ部210の異常を検出する。それぞれが異常を検出した後の動作は、上記の実施形態の動作と同じである。このように、統合制御部30の機能部は、加入者線終端装置1の内部であれば何れの構成に持たせてもよく、本実施形態に限定されない。
【0057】
〔リセット部〕
図7に、ルータ部10をリセットするルータリセット部13の具体例を示す。
図7のルータリセット部13は、PMOSTr130とNMOSTr131のゲート電極を共通に接続して入力端とし、ドレイン電極同士を共通に接続して出力端とするインバータで構成した例である。入力端にルータリセット信号が接続され、出力端からルータ部10の正電源V
+が供給される。
【0058】
ルータリセット信号が「偽」の場合は、PMOSTr130が導通してルータ部10に正電源V
+が供給される。ルータリセット信号が「真」の場合は、NMOSTr131が導通してルータ部10には負電源V
−しか供給されなくなり電源が遮断される(電源リセット)。
【0059】
ONUリセット部23も、同様に構成してもよい。また、MOSTr以外のトランジスタを用いてもよい。また、ルータリセット部13とONUリセット部23にリレーを用いてもよい。
【0060】
なお、回線終端部20をリセットするONUリセット部23は、ルータリセット部13と同様に構成する。また、本実施の形態のリセットは、電源リセットに限られない。ルータ部10の故障を検出した場合は、ルータ部10を、ソフトウェアで初期化してもよい。具体的には、例えば上記のMPCPで行う登録処理を、異常を検出した場合に実行するようにしてもよい。ソフトウェアで初期化してもよいことは、回線終端部20についても同様である。
【0061】
以上説明したように本実施形態の加入者線終端装置1によれば、ソフトウェアとハードウェアの両者の異常によって発生する通信不可能状態を、当該装置のみで検出して復旧することができる。また、本実施形態の復旧方法は、人手を介さずに自動的に行うことが可能であることから、故障発生から復旧までの平均復旧時間の最小化に寄与する。
【0062】
なお、本実施形態の説明を、PONシステムを例に行ったが、本実施形態に示した技術思想は、PONシステム以外のネットワークにも適用することが可能である。このように本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。