【文献】
JiLei LIANG et al.,Effect of Solution pH on the Carbon Microsphere Synthesized by Hydrothermal Carbonization,Procedia Environmental Sciences,2011年,Vol.11,p.1322-1327,doi:10.1016/j.proenv.2011.12.198
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用電極の導電助剤1質量部に対し、電極活物質を16〜48質量部、及び樹脂バインダーを0.5〜2質量部含有する非水電解質二次電池用電極の合材層。
非晶質球状カーボンと水を含有するスラリー、或いは非晶質球状カーボンとセルロースナノファイバーと水を含有するスラリーを噴霧乾燥して、造粒体を得る工程(I)、並びに
得られた造粒体を、還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程(II)
を備える非水電解質二次電池用電極の導電助剤の製造方法。
工程(I)で用いるスラリーにおける非晶質球状カーボン及びセルロースナノファイバーの合計含有量が、水100質量部に対して5〜50質量部である請求項5に記載の非水電解質二次電池用電極の導電助剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の非水電解質二次電池用電極の導電助剤は、非晶質球状カーボン由来の炭素のみからなり、或いは非晶質球状カーボン由来の炭素とセルロースナノファイバー由来の炭素とからなり、すなわち少なくとも非晶質球状カーボンが焼成されてなる炭素からなるものであって、かかる非晶質球状カーボン由来の炭素単独からなるものであってもよく、又はかかる非晶質球状カーボン由来の炭素とセルロースナノファイバーが炭化されてなる炭素とからなるものであってもよい。
【0012】
非晶質球状カーボンとは、水とグルコース等の水溶性炭質材料の混合溶液を水熱反応させ、得られた反応後のスラリー水を高温で噴霧乾燥することで得られる微小な炭素結晶の集合体であって、焼成することによって炭素の結晶性が向上し、優れた導電性を有する導電助剤となる。かかる非晶質球状カーボンの平均粒径は、50nm〜100μmである。
【0013】
セルロースナノファイバーは、非晶質球状カーボンとともに用いられ、焼成されることによって炭化される。かかるセルロースナノファイバーとは、全ての植物細胞壁の約5割を占める骨格成分であって、かかる細胞壁を構成する植物繊維をナノサイズまで解繊等することにより得ることができる軽量高強度繊維であり、セルロースナノファイバーを構成するセルロース分子鎖は、炭素による周期的構造で形成されている。かかるセルロースナノファイバーは、繊維径が1〜500nm、繊維長が1〜500μmであり、水への良好な分散性を有している。用いるセルロースナノファイバーの繊維長は、好ましくは1〜470μmであり、より好ましくは1〜450μmであり、さらに好ましくは1〜430μmであり、例えば、セリッシュ
(登録商標)FD−200L(繊維長:15μm、ダイセルファインケム株式会社製)等の市販品を好適に用いることができる。
【0014】
非晶質球状カーボンを含むスラリー、又は非晶質球状カーボンとセルロースナノファイバーとを含むスラリーは、噴霧乾燥した後、還元雰囲気焼成又は不活性雰囲気焼成によって、非晶質球状カーボンを炭化させ、又は非晶質球状カーボンとともにセルロースナノファイバーを炭化させ、これら炭素からなる本発明の導電助剤を得ることができる。得られる導電助剤は、比表面積が小さいため、これとともに電極活物質、樹脂バインダー、及び電解液を用いて電極スラリーを形成した際、電解液等の溶媒の吸収量を有効に低減することができ、高密度かつ良好な電池特性を有する電極を得ることができる。具体的には、本発明の導電助剤のBET比表面積は、溶媒や樹脂バインダーの使用量を低減する観点から、好ましくは5〜60m
2/gであり、より好ましくは5〜55m
2/gであり、さらに好ましくは5〜50m
2/gである。
【0015】
本発明の導電助剤は、非晶質球状カーボン由来の炭素を含む凝集体を呈し、セルロースナノファイバーを用いた場合には、かかる凝集体にセルロースナノファイバーの繊維体又は凝集体構造を破壊して小径化されたセルロースナノファイバー由来の炭素が含まれる。かかる凝集体の平均粒子径は、好ましくは100nm〜20μmであり、より好ましくは100nm〜10μmであり、さらに好ましくは100nm〜8μmである。より具体的には、本発明の導電助剤が非晶質球状カーボン由来の炭素のみからなる場合、好ましくは100nm〜15μmであり、より好ましくは100nm〜10μmであり、さらに好ましくは100nm〜8μmである。また、本発明の導電助剤が非晶質球状カーボン由来の炭素とセルロースナノファイバー由来の炭素とからなる場合、好ましくは100nm〜20μmであり、より好ましくは100nm〜10μmであり、さらに好ましくは100nm〜10μmである。
【0016】
なお、本発明の導電助剤が非晶質球状カーボン由来の炭素とセルロースナノファイバー由来の炭素とからなる場合、非晶質球状カーボン由来の炭素とセルロースナノファイバー由来の炭素の混合割合に、特に制限はない。
【0017】
本発明の非水電解質二次電池用電極の合材層は、上記導電助剤を用いて得られ、電極活物質、樹脂バインダー、及び本発明の導電助剤を含有し、非水電解質二次電池用電極に備えられるものである。
合材層に含有される電極活物質は、二次電池の正極活物質、又は二次電池の負極活物質のいずれであってもよく、特に制限されないが、具体的には、例えば正極活物質としては、LiFePO
4、Li
2MnSiO
4、NaFePO
4の酸化物を用いたものが挙げられ、負極活物質としては、Li
4Ti
5O
12の酸化物を用いたものが挙げられる。
【0018】
合材層に含有される結着剤とは、電極の構成材料同士を接着するために用いられるもので、例えば正極では、上記正極活物質に用いられる酸化物、導電助剤、および集電体とを接着するために、また負極では、上記負極活物質に用いられる酸化物、導電助剤、および集電体とを接着するために用いられる。より具体的には、例えば正極に用いられる結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が挙げられ、負極に用いられる結着剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)が挙げられる。
なお、正極活物質、及び負極活物質ともに、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを用いる場合、ポリフッ化ビニリデンは水に溶解又は分散しないため、有機溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を併用する必要がある。
【0019】
かかる合材層は、本発明の導電助剤1質量部に対し、好ましくは電極活物質を16〜48質量部、及び樹脂バインダーを0.5〜2質量部含有し、より好ましくは電極活物質を17〜48質量部、及び樹脂バインダーを0.5〜1.5質量部含有する。具体的には、これら導電助剤、電極活物質、及び樹脂バインダーを含むスラリーを調製し、後述する製造方法によって形成することができる。
【0020】
本発明の非水電解質二次電池用電極の導電助剤の製造方法は、非晶質球状カーボンと水を含有するスラリー、或いは非晶質球状カーボンとセルロースナノファイバーと水を含有するスラリーを噴霧乾燥して、造粒体を得る工程(I)、並びに
得られた造粒体を、還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程(II)
を備える。
【0021】
工程(I)は、非晶質球状カーボンと水を含有するスラリー、或いは非晶質球状カーボンとセルロースナノファイバーと水を含有するスラリーを噴霧乾燥して、造粒体を得る工程である。かかるスラリー中における非晶質球状カーボン及びセルロースナノファイバーの合計含有量は、水100質量部に対し、好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは8〜25質量部である。
なお、非晶質球状カーボンとセルロースナノファイバーと水を含有するスラリーを用いた場合、非晶質球状カーボンとセルロースナノファイバーの混合割合に、特に制限はない。
【0022】
上記スラリーは、撹拌するのが好ましく、スラリー中に非晶質球状カーボン、又は非晶質球状カーボンとセルロースナノファイバーとを良好に分散させる観点から、かかる攪拌には分散機(ホモジナイザー)を用いることが好ましい。かかる分散機としては、例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。なかでも、分散効率の観点から、超音波攪拌機が好ましい。スラリー中における非晶質球状カーボン及びセルロースナノファイバーの分散の程度は、例えば、UV・可視光分光装置を使用した光線透過率や、E型粘度計を使用した粘度で定量的に評価することができ、また目視によって白濁度が均一であることを確認することで、簡便に評価することもできる。分散機で撹拌する時間は、好ましくは0.5〜6分間であり、より好ましくは1〜4分間である。
【0023】
次いで工程(I)では、上記スラリーを噴霧乾燥して造粒体を得る。非晶質球状カーボンと水を含有するスラリーを用いた場合、得られる造粒体は非晶質球状カーボンのみからなり、非晶質球状カーボンとセルロースナノファイバーと水を含有するスラリーを用いた場合、得られる造粒体は非晶質球状カーボンとセルロースナノファイバーからなる。かかる造粒体の粒径は、レーザー回折・散乱法に基づく粒度分布におけるD
50値で、好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは0.1〜15μmである。ここで、粒度分布測定におけるD
50値とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られる値であり、D
50値は累積50%での粒径(メジアン径)を意味する。また、噴霧乾燥には、スプレードライヤーを用いるのが好ましく、適宜スプレードライヤーの運転条件を最適化することにより、かかる造粒体の粒径を所望の値に調整すればよい。
噴霧乾燥の温度は、得られる造粒体中に、凝集体として非晶質球状カーボンやセルロースナノファイバーを含有させる観点から、好ましくは100〜320℃であり、より好ましくは150〜250℃である。
【0024】
工程(II)は、工程(I)で得られた造粒体を、還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程である。これにより、非晶質球状カーボン由来の結晶度の高い炭素を含む導電助剤が得られる。かかる工程(II)の焼成条件は、還元雰囲気又は不活性雰囲気中で、焼成温度が、好ましくは700〜1200℃、より好ましくは800〜1200℃であり、焼成時間が、好ましくは5分〜3時間、より好ましくは5分〜1.5時間である。工程(II)は、工程(I)で得られた造粒体のみを焼成する工程であって、造粒体のみの事情を考慮して焼成条件を選択することができるため、高温かつ長時間の焼成が可能であることから、結晶度が高く導電性に優れた炭素質導電助剤を得ることができる。
【0025】
本発明の非水電解質二次電池用電極の導電助剤の製造方法は、さらに工程(II)で得られた導電助剤を粉砕する工程(III)を備えてもよい。かかる工程(III)を経ることによって、導電助剤を容易に小径化することができ、特にセルロースナノファイバーを用いた場合には、炭化される前から炭化された後にわたり維持されているかかるセルロースナノファイバーの繊維体又は凝集体構造を良好に破壊しつつ、導電助剤に含ませることができる。ただし、かかる工程(III)では、導電助剤に過剰な圧縮力等が加わることで過度に粉砕されるのを防ぐ観点から、媒体を投入することなく導電助剤のみを投入した容器を転動させるか、或いは小径の媒体を少量で投入したボールミル粉砕を数十秒行うのがよい。
【0026】
本発明の非水電解質二次電池用電極の導電助剤とともに電極活物質、及び樹脂バインダーを用いることにより合材層を形成して非水電解質二次電池電極を得た後、非水電解質二次電池用電極を得ることができる。合材層は、具体的には、まず、本発明の導電助剤1質量部に対し、電極活物質を好ましくは16〜48質量部、及び樹脂バインダーを0.5〜2質量部で混合し、或るいは電極活物質をより好ましくは17〜48質量部、及び樹脂バインダーを0.5〜1.5質量部で混合する。次いで、電解液を加えて充分混練し、電極スラリー(極合材)を調製して厚さ5〜40μmのアルミニウム箔等からなる集電体に塗布し、乾燥することにより形成する。その後、得られた合材層が形成された集電体を所定の形状、大きさに打ち抜いた後、プレスして電極とする。得られた電極(正極又は/及び負極)と別途準備したセパレータを、組み込み収容することにより、非水電解質二次電池が得られる。
【0027】
上記の電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池の電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0028】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、リチウムイオン二次電池の場合、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4及びLiAsF
6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO
3CF
3、LiC(SO
3CF
3)
2及びLiN(SO
3CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2及びLiN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。また、ナトリウムイオン二次電池の場合、NaPF
6、Nb1F
4、NaClO
4及びNa1sF
6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、NaSO
3CF
3、NaC(SO
3CF
3)
2及びNaN(SO
3CF
3)
2、NaN(SO
2C
2F
5)
2及びNaN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
[製造例1:非晶質球状カーボンの製造]
水4750mL及びグルコース250gを混合して溶液を得た。次いで、得られた溶液をオートクレーブに投入し、170℃で3時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は、0.8MPaであった。得られたスラリー水を攪拌しながら、180℃で噴霧乾燥(スプレードライヤー;藤崎電機(株)製 MDL−050M)を行い、非晶質球状カーボンの粉末を得た。得られた非晶質球状カーボンの粒径は、100nm〜10μmであった。
【0032】
[製造例2:正極活物資(LiFePO
4/C)の製造]
LiOH・H
2O 1272g、及び水4000mLからなるスラリー水に、85%のリン酸水溶液1153gを滴下して、Li
3PO
4を含有するスラリーを得た。次いで、得られたスラリーにFeSO
4・7H
2O 2780gを添加して混合液を得た後、得られた混合液を水熱合成反応に付してLiFePO
4を得た。得られたLiFePO
4 1000gに水1000gとグルコース(無水結晶ぶどう糖、日本食品化工(株)製)100gを加えて噴霧乾燥して複合体を得た後、かかる複合体を還元雰囲気焼成に付して、グルコース由来の炭素が担持されたLiFePO
4/C(炭素の量=2.0質量%)を得た。
【0033】
[製造例3:正極活物資(Li
2MnSiO
4/C)の製造]
LiOH・H
2O 2141g、Na
4SiO
4・nH
2O 10479g及び水15000mLからなるスラリー水に、MnSO
4・5H
2O 6027gを添加して混合液を得た後、得られた混合液を水熱合成反応に付してLi
2MnSiO
4を得た。得られたLi
2MnSiO
4 1000gに水1000gとグルコース225gを加えて噴霧乾燥して複合体を得た後、かかる複合体を還元雰囲気焼成に付して、グルコース由来の炭素が担持されたLi
2MnSiO
4/C(炭素の量=4.5質量%)を得た。
【0034】
[製造例4:正極活物資(NaFePO
4/C)の製造]
NaOH 1200g、及び水18000mLからなるスラリー水に、85%のリン酸水溶液1154gを滴下して、Na
3PO
4を含有するスラリーを得た。次いで、得られたスラリーにFeSO
4・7H
2O 2780gを添加して混合液を得た後、得られた混合液を水熱合成反応に付してNaFePO
4を得た。得られたNaFePO
4 1000gに水1000gとグルコース100gを加えて噴霧乾燥して複合体を得た後、かかる複合体を還元雰囲気焼成に付して、グルコース由来の炭素が担持されたNaFePO
4/C(炭素の量=2.0質量%)を得た。
【0035】
[製造例5:負極活物資(Li
4Ti
5O
12/C)の製造]
アナターゼ型TiO
2 1597g、Li
2CO
3 1478g、及びエタノール 30gをボールミルで混合し、大気雰囲気焼成してLi
4Ti
5O
12を得た。得られたLi
4Ti
5O
12 1000gに水1000gとグルコース100gを加えて噴霧乾燥して複合体を得た後、かかる複合体を還元雰囲気焼成に付して、グルコース由来の炭素が担持されたLi
4Ti
5O
12/C(炭素の量=2.0質量%)を得た。
【0036】
[実施例1]
非晶質球状カーボンを、アルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)1000℃で1時間焼成した後、焼成した非晶質球状カーボン100質量部に対し、φ10mmのアルミナボールを1000質量部充填したボールミルで、30秒間粉砕した。得られた導電助剤の平均粒子径は3μmであった。
【0037】
[実施例2]
水 4000mLに、非晶質球状カーボン75g、及びセルロースナノファイバー281.3g(ダイセルファインケム製セリッシュ
(登録商標)FD−200L(繊維長:15μm、含水量20質量%)を混合してスラリー水を作製した以外、実施例1と同様にして導電助剤(非晶質球状カーボン由来の炭素:セルロースナノファイバー由来の炭素=75:25(質量比))を得た。得られた導電助剤の平均粒子径は5μmであった。
【0038】
[実施例3]
水 4000mLに、非晶質球状カーボン50g、及びセルロースナノファイバー562.6g(ダイセルファインケム
(登録商標)製セリッシュFD−200L(繊維長:15μm、含水量20質量%)を混合してスラリー水を作製した以外、実施例1と同様にして導電助剤(非晶質球状カーボン由来の炭素:セルロースナノファイバー由来の炭素=50:50(質量比))を得た。得られた導電助剤の平均粒子径は4μmであった。
【0039】
[比較例1](アセチレンブラック)
導電助剤として、市販のアセチレンブラック(電気化学工業社製粒状グレード、平均粒子径は40nm)を用いた。
【0040】
[比較例2](ケッチェンブラック)
導電助剤として、市販のケッチェンブラック(ライオン社製EC300J、平均粒子径は40nm)を用いた。
【0041】
《導電助剤のBET比表面積の測定》
比表面積測定装置((株)島津製作所製FlowSorbIII 2305)を用いて、実施例及び比較例で得られた導電助剤の窒素吸着法によるBET比表面積を測定した。
結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
《二次電池を用いた充放電特性の評価》
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた導電助剤を用い、リチウムイオン二次電池及びナトリウムイオン電池の正極及び負極を作製した。具体的には、製造例2〜5で得られた各正極活物質又は負極活物質、実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた導電助剤、ポリフッ化ビニリデンを重量比90:5:5の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、正極もしくは負極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。負極スラリーの場合には、銅箔への塗工を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極もしくは負極とした。
次いで、上記の正極又は負極を用いてコイン型リチウムイオン二次電池又はナトリウムイオン二次電池を構築した。対極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔(リチウムイオン電池の場合)もしくはナトリウム箔(ナトリウムイオン電池の場合)を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、LiPF
6(リチウムイオン二次電池の場合)もしくはNaPF
6(ナトリウムイオン二次電池の場合)を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンなどの高分子多孔フィルムなど、公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
【0044】
製造した二次電池を用い、下記方法にしたがって、充放電試験を行った。
正極活物質の場合には、充電条件を電流密度170mA/g、電圧4.5Vの定電流定電圧充電とし、放電条件を電流密度170mA/g、終止電圧2.0V、及び電流密度1700mA/g、終止電圧2.0Vの2種類の定電流放電について、放電容量を求めた。
負極活物質の場合には、充電条件を電流密度175mA/g、電圧3.0Vの定電流定電圧充電とし、放電条件を電流密度175mA/g、終止電圧1.0V、及び電流密度1750mA/g、終止電圧2.0Vの2種類の定電流放電について、放電容量を求めた。
結果を表2〜5に示す。
なお、各表に示す容量比率(%)は、下記式から求めたレート特性の指標であって、値が大きいほど高速充放電が可能であることを示す。
容量比率(%)={電流密度1700mA/gの場合の放電容量(mA/g)/
電流密度170mA/gの場合の放電容量(mA/g)×100}
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
上記結果より、実施例の導電助剤は、比較例の導電助剤に比して、BET比表面積が小さいことから有効に電解液等の溶媒の吸収量を低減しつつ、かかる溶媒や樹脂バインダーの使用量を低減することができるため、得られる電池において同等以上の性能を発揮できることがわかる。