特許第6263219号(P6263219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エア・ウォーター・マッハ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6263219-注入器 図000002
  • 特許6263219-注入器 図000003
  • 特許6263219-注入器 図000004
  • 特許6263219-注入器 図000005
  • 特許6263219-注入器 図000006
  • 特許6263219-注入器 図000007
  • 特許6263219-注入器 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263219
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】注入器
(51)【国際特許分類】
   A61D 19/04 20060101AFI20180104BHJP
   A61D 19/02 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   A61D19/04 A
   A61D19/02 D
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-68386(P2016-68386)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-176462(P2017-176462A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】598124249
【氏名又は名称】エア・ウォーター・マッハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】竹渕 豊
(72)【発明者】
【氏名】大森 幸次
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−090670(JP,A)
【文献】 特開2001−017026(JP,A)
【文献】 特開2001−120581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61D 19/04
A61D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮体内に受精卵や人工授精用の精子を注入する注入器であって、
子宮体内挿入用のガイド管と、
該ガイド管内に通され、当該ガイド管より寸法が長い注入管と、
該注入管の先端部に連結されたノズル体と、
を有し、
前記ノズル体は、前記注入管と連結される筒状の連結部と、前記連結部に先端側で連接し、外周面でノズル穴が開口する胴部と、前記ガイド管の内径より外径が大の段部を介して前記胴部に先端側で連接する頭部と、を備え、
前記頭部の外周面には、前記段部から先端側に向けて溝状に延在する凹部が周方向の複数個所に設けられ、前記凹部は、前記ノズル体の軸線方向の両側に向けて開放状態にあることを特徴とする注入器。
【請求項2】
前記ノズル穴は、前記胴部の外周面のうち、前記凹部と前記軸線方向で隣り合う位置で開口していることを特徴とする請求項1に記載の注入器。
【請求項3】
前記ノズル穴は、前記胴部の外周面のうち、前記段部側の端部で開口していることを特徴とする請求項2に記載の注入器。
【請求項4】
前記ガイド管の前記ノズル体とは反対側の端部には、前記注入管が貫通する穴が形成されたフランジ部材が設けられ、
前記穴の内周面には、前記注入管の外周面と当接する凸部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の注入器。
【請求項5】
前記ノズル体は、樹脂製あるいはゴム製であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の注入器。
【請求項6】
前記ノズル体は、軟質の樹脂製、あるいはゴム製であることを特徴とする請求項5に記載の注入器。
【請求項7】
前記ガイド管および前記注入管は、樹脂製であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の注入器。
【請求項8】
前記ガイド管および前記注入管は、透光性を有する樹脂製であることを特徴とする請求項6に記載の注入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛等の動物に受精卵や人工授精用の精子を注入する注入器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
牛等の動物の子宮内に受精卵や人工授精用の精子を注入する注入器としては、子宮体内挿入用のガイド管に通された注入管の先端部にノズル体が連結された構成が提案されている。かかる注入器を用いて受精卵や精子を注入するには、ガイド管を膣口から子宮体内に差し込んだ後、注入管の先端部をガイド管の先端から押し出し、ノズル体を子宮角の深部まで到達させる。次に、注入管の基端側からノズル体に受精卵や精子を供給して、受精卵や精子をノズル体から吐出した後、注入器を膣口から引き抜く。ここで、ノズル体は、ガイド管の内径より大きな大径部分を有しており、注入管をガイド管内に引き込んだ際に大径部分と隣り合うテーパ部分がガイド管内に引き込まれてガイド管と干渉した状態なる。このため、注入管がそれ以上、ガイド管内に引き込まれることが阻止される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の注入器では、注入管をガイド管内に引き込まれた状態でノズル体に外力が加わって、注入管がさらにガイド管内に押し込まれると、テーパ部分がガイド管に強く嵌ってしまうことがある。このような事態になると、注入管をガイド管の先端から押し出することが困難になるので、好ましくない。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ノズル体がガイド管に嵌って注入管をガイド管から押し出せないという事態を回避することのできる注入器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、子宮体内に受精卵や人工授精用の精子を注入する注入器であって、子宮体内挿入用のガイド管と、該ガイド管内に通され、当該ガイド管より寸法が長い注入管と、該注入管の先端部に連結されたノズル体と、を有し、前記ノズル体は、前記注入管と連結される筒状の連結部と、前記連結部に先端側で連接し、外周面でノズル穴が開口する胴部と、前記ガイド管の内径より外径が大の段部を介して前記胴部に先端側で連接する頭部と、を備え、前記頭部の外周面には、前記段部から先端側に向け
て溝状に延在する凹部が周方向の複数個所に設けられ、前記凹部は、前記ノズル体の軸線方向の両側に向けて開放状態にあることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る注入器においては、ガイド管を膣口から子宮体内に差し込んだ後、注入管の先端側をガイド管の先端から押し出し、ノズル体を子宮体の深部まで到達させる。そして、注入管を介してノズル体に受精卵や精子を供給してノズル体のノズル穴から受精卵や精子を吐出させ、その後、注入器を膣口から引き抜く。ここで、ノズル体は、胴部と頭部との間に、ガイド管の内径より外径が大の段部を有しているため、注入管をガイド管内に引き込んだ際に段部がガイド管の先端部と干渉し、注入管がそれ以上、ガイド管内に引き込まれることが阻止される。また、ノズル体に外力が加わって注入管がガイド管内に押し込まれようとしても、段部であれば、テーパ面と違ってガイド管に嵌るという事態が発生しない。従って、注入管が押し出し不能となる事態を回避することができる。また、胴部と頭部との間に段部を設けた場合、ノズル穴から子宮体内に受精卵や精子を吐出した後、子宮体内から注入器を引き抜く際、受精卵や精子が段部で掻き出されるおそれがあるが、ノズル体の頭部の外周面には、段部から先端側に向けて溝状に延在する凹部が周方向の複数個所に設けられ、凹部は、ノズル体の軸線方向の両側に向けて開放状態にあるので、受精卵や精子が掻き出されることを抑制することができる。
【0008】
本発明において、前記ノズル穴は、前記胴部の外周面のうち、前記凹部と前記軸線方向で隣り合う位置で開口している態様を採用することができる。かかる構成によれば、ノズル穴から子宮体内に受精卵や精子を吐出した後、子宮体内から注入器を抜く際、受精卵や精子が段部に引っ掛かって掻き出されることを抑制することができる。
【0009】
本発明において、前記ノズル穴は、前記胴部の外周面のうち、前記段部側の端部で開口している態様を採用することができる。かかる構成によれば、ノズル穴から子宮体内に受精卵や精子を注入した後、子宮体内から注入器を抜く際、受精卵や精子が段部やノズル穴に引っ掛かって掻き出されることを抑制することができる。
【0010】
本発明において、前記ガイド管の前記ノズル体とは反対側の端部には、前記注入管が貫通する穴が形成されたフランジ部材が設けられ、前記穴の内周面には、前記注入管の外周面と当接する凸部が設けられている態様を採用することができる。かかる構成によれば、注入管と凸部との摺動抵抗によって、ガイド管の内側で注入管が不用意に動くことを抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記ノズル体は、樹脂製あるいはゴム製であることが好ましい。寒冷地で使用した際、ノズル体が金属製である場合には温度が低下して凍結等の問題が発生しやすいが、樹脂製あるいはゴム製であれば、かかる問題が発生しにくい。また、ノズル体を安価に製造することがきるので、注入器のコストを低減することができる。この場合、前記ノズル体は、軟質の樹脂製、あるいはゴム製であることが好ましい。かかる構成によれば、ノズル体によって子宮を傷つけるという事態の発生を抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記ガイド管および前記注入管は、樹脂製であることが好ましい。寒冷地で使用した際、ガイド管や注入管が金属製である場合には温度が低下して凍結等の問題が発生しやすいが、樹脂製であれば、かかる問題が発生しにくい。また、ガイド管および注入管が樹脂製であれば、ガイド管および注入管を安価に製造することがきるので、注入器のコストを低減することができる。この場合、前記ガイド管および前記注入管は、透光性を有する樹脂製であることが好ましい。かかる構成によれば、人工授精用の精子等の注入操作を終えた後、注入器を抜けば、注入管の内部に人工授精用の精液等が残っているか否かを外部から視認することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る注入器において、ノズル体は、胴部と頭部との間に、ガイド管の内径より外径が大の段部を有しているため、注入管をガイド管内に引き込んだ際に段部がガイド管の先端部と干渉し、注入管がそれ以上、ガイド管内に引き込まれることが阻止される。また、ノズル体に外力が加わって注入管がガイド管内に押し込まれようとしても、段部であれば、テーパ面と違ってガイド管に嵌るという事態が発生しない。従って、注入管が押し出し不能となる事態を回避することができる。また、胴部と頭部との間に段部を設けた場合、ノズル穴から子宮体内に受精卵や精子を吐出した後、子宮体内から注入器を引き抜く際、受精卵や精子が段部で掻き出されるおそれがあるが、頭部の外周面には、段部から先端側に向けて溝状に延在する凹部が周方向の複数個所に設けられ、凹部は、ノズル体の軸線方向の両側に向けて開放状態にあるので、受精卵や精子が掻き出されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用した注入器の説明図である。
図2】本発明を適用した注入器の主な構成部品を示す説明図である。
図3】本発明を適用した注入器に用いたノズル体の斜視図である。
図4】本発明を適用した注入器に用いたノズル体の詳細構成を示す説明図である。
図5】本発明を適用した注入器において、注入管をガイド管に引き込んだ様子の説明図である。
図6】本発明を適用した注入器に用いたフランジ部材の説明図である。
図7】本発明を適用した注入器に用いた別のノズル体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した注入器1の説明図であり、図1(a)、(b)、(c)には、注入器1を牛の子宮体の内部まで挿入した様子、ノズル体4を子宮角深部まで進入させた様子、および子宮角深部に受精卵を注入する様子が示されている。図2は、本発明を適用した注入器1の主な構成部品を示す説明図であり、図2(a)、(b)、(c)には、ガイド管2内に注入管3を引き込んだ様子、ガイド管2から注入管3の先端側を押し出した様子、およびガイド管2から注入管3を抜いた様子が示されている。
【0017】
図1および図2に示すように、本形態の注入器1は、牛等の哺乳類に受精卵や人工授精用の精子を注入する注入器であって、概ね、子宮体内挿入用のガイド管2と、このガイド管2内に通された注入管3と、この注入管3の基端側に筒状のコネクタ6を介して接続された注射器等の流体供給器8とを有している。ガイド管2は、基端部にフランジ部材7が設けられた樹脂製の管であり、剛性を有している。注入管3は、少なくとも先端部が可撓性を有しており、ガイド管2より寸法が長い。注入管3の先端部にはノズル体4が連結され、注入管3の基端部にはコネクタ6が連結されている。流体供給器8は、注入管3の基端側にコネクタ6を介して接続されており、コネクタ6を介して、注入管3の内部に受精卵や人工授精用の精子を含む液状物を注入する。なお、コネクタ6の内部に受精卵や人工授精用の精子が保持されることもあり、この場合、流体供給器8は、受精卵や人工授精用の精子を注入管3の内部で流動させる流体を供給する。
【0018】
このように構成した注入器1を用いて、例えば、牛の子宮体内に受精卵を注入するには、まず、図1(a)に示すように、注入管3をガイド管2内に引き込んだ状態でガイド管2を膣口から子宮体A1の内部に差し込む。その際、ビニル製等の薄いカバー(図示せず)を被せた片手を肛門から直腸B1に挿入し、直腸B1から子宮頸管A12を把持することによってガイド管2を子宮体A1の内部に導く。
【0019】
次に、図1(b)に示すように、注入管3の基端側を操作してガイド管2の先端から注入管3の先端側を押し出してノズル体4を子宮角A11の深部まで到達させる。そして、図1(c)に示すように、流体供給器8のピストン81を押圧する。ここで、注入管3の内部やコネクタ6の内部には受精卵や人工授精用の精子を含む液状物が保持され、流体供給器8には、空気や液体等の流体が充填されている。このため、流体供給器8から供給された流体によって、注入管3の内部やコネクタ6の内部に保持されていた受精卵や人工授精用の精子は、注入管3を介してノズル体4に供給され、ノズル体4から子宮角A11の深部に注入される。しかる後には、注入器1を膣口から引き抜く。
【0020】
かかる注入作業の際、例えば、注入器1のうち、少なくとも子宮体A1内に挿入される
部分にビニル製等の薄いカバー(図示せず)を被せた状態でガイド管2を子宮体A1の内部に差し込んだ後、カバーから注入器1の先端部を突出させ、その後、注入管3をガイド管2の先端から繰り出してノズル体4を子宮角A11の深部まで到達させる。
【0021】
(注入器1の詳細構成)
図3は、本発明を適用した注入器1に用いたノズル体4の斜視図であり、図3(a)、(b)には、ノズル体4を先端側からみた斜視図、およびノズル体4を基端側からみた斜視図を示してある。図4は、本発明を適用した注入器1に用いたノズル体4の詳細構成を示す説明図であり、図4(a)、(b)には、ノズル体4の側面図、およびノズル体4の断面図を示してある。図5は、本発明を適用した注入器1において、注入管3をガイド管2に引き込んだ様子の説明図であり、図5(a)、(b)には、注入管3をガイド管2に引き込んだ状態の側面図、および注入管3をガイド管2に引き込んだ状態の断面図を示してある。
【0022】
図2において、注入管3は、シリコーン樹脂や塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂製であり、先端部にノズル体4が連結されている。ガイド管2もシリコーン樹脂や塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂製である。本形態において、注入管3は、注入管3の先端側を構成する可撓性の第1管部3aと、第1管部3aより剛性が大で、注入管3の基端側を構成する第2管部3bとを備えており、第1管部3aの先端部にノズル体4が連結されている。かかる構成の注入管3は、例えば、第2管部3bを構成する剛性のパイプに対して、第1管部3aを構成する可撓性のチューブを接続することにより構成することができる。また、上記の構成の注入管3は、注入管3の長さの全体にわたって延在する可撓性のチューブの基端側に剛性のスリーブを外側から装着することによって構成することもできる。この場合、可撓性のチューブと剛性のスリーブとが設けられている部分によって第2管部3bが構成され、可撓性のチューブのみが設けられている部分によって第1管部3aが構成される。
【0023】
図3および図4に示すように、ノズル体4は、注入管3と連結される筒状の連結部41と、連結部41に先端側で連接する胴部42と、胴部42に先端側で連接する頭部43とを有しており、胴部42の外周面420では、連結部41内の流路410と連通するノズル穴44が開口している。本形態において、胴部42には、連結部41内の流路410と接続する流路440が胴部42を軸線L方向と直交する方向で貫通するように形成されており、流路440の両端部がノズル穴44として開口している。本形態において、ノズル体4は樹脂製あるいはゴム製である。本形態において、ノズル体4は、シリコーン樹脂、軟質ポリ塩化ビニル、軟質ポリプロピレン、軟質ポリエチレン等の軟質の樹脂製、あるいはシリコーンゴム等のゴム製である。
【0024】
連結部41は、注入管3の第1管部3aが外側から嵌るように胴部42の外径より小径に構成されている。連結部41は、胴部42から離間する側に向けて外径が連続的に縮小している第1連結部分411と、第1連結部分411の最も大径の部分413と胴部42とを繋ぐ第2連結部分412とを有しており、第2連結部分412は、外径が一定である。第2連結部分412は、第1連結部分411の最も大径の部分413より外径が小である。このため、第1連結部分411の最も大径の部分413は、注入管3の抜けを防止する抜け止め部413aになっている。
【0025】
頭部43は、先端側(胴部42と反対側)に向かって半球状の凸曲面を向けた形状を有している。本形態において、頭部43は、基端側(胴部42の側)に位置する第1部分431と、第1部分431に先端側で連接する第2部分432とを有している。第1部分431は、同一の外径をもって軸線L方向に延在し、第2部分432は、第1部分431の
側から先端側に向けて外径が連続して縮小した半球状の凸曲面になっている。
【0026】
頭部43の第1部分431の外径は、胴部42の外径より大である。このため、頭部43と胴部42との間には、ガイド管2の内径より外径が大の段部45が設けられており、頭部43は、ガイド管2の内径より外径が大の段部45を介して胴部42に先端側で連接している。また、段部45において、胴部42の側に向く端面450は、軸線Lと直交する面になっている。
【0027】
このため、図5に示すように、注入管3をガイド管2内に引き込んだ際に段部45の端面450がガイド管2の先端部21と干渉し、注入管3がそれ以上、ガイド管2内に引き込まれることが阻止される。
【0028】
図4および図5に示すように、頭部43の外周面430には、段部45から先端側に向けて溝状に延在する凹部46が周方向の複数個所に設けられている。凹部46は、軸線L方向において、第1部分431の全体にわたって形成されているとともに、第2部分432の途中位置まで形成されている。このため、凹部46は、軸線L方向の両側に向けて開放状態にある。凹部46の底部460は、円弧状に湾曲している。
【0029】
本形態において、凹部46は、等角度間隔に8つ形成されており、ノズル穴44は、胴部42の外周面420のうち、8つの凹部46のうち、180°離間する位置に設けられた2つの凹部46に対して軸線L方向で隣り合う位置の各々で開口している。また、ノズル穴44は、胴部42の外周面420のうち、段部45側の端部で開口している。
【0030】
(フランジ部材7の構成)
図6は、本発明を適用した注入器1に用いたフランジ部材7の説明図であり、図7(a)、(b)、(c)には、フランジ部材7の平面図、側面部および断面図を示してある。
【0031】
図1および図2に示すように、ガイド管2のノズル体4とは反対側の端部22にはフランジ部材7が設けられている。フランジ部材7は樹脂製である。図6に示すように、フランジ部材7は、注入管3が貫通する穴74が形成された樹脂成型品である。本形態において、フランジ部材7は、ガイド管2の端部22が内側に連結された第1筒部71と、第1筒部71と連通する第2筒部72と、第1筒部71と第2筒部72との間で拡径したフランジ部73とを有している。フランジ部材7には、第1筒部71、フランジ部73および第2筒部72を貫通する穴74が形成されており、穴74には、注入管3が貫通している。
【0032】
フランジ部73は、第1筒部71と第2筒部72との間から外側に突出した角形の板部である。本形態において、フランジ部73は四角形の板部である。このため、注入器1をテーブル等に置いた際、注入器1の転動は、フランジ部73によって阻止される。
【0033】
本形態において、穴74の内周面には、注入管3の外周面30と当接する凸部75が設けられている。本形態において、凸部75は、穴74の内周面から略三角形の断面形状をもって円環状に突出し、注入管3の外周面30に全周にわたって当接している。このため、注入管3と凸部75との摺動抵抗によって注入管3に負荷を加えることができるので、ガイド管2の内側で注入管3が不用意に動くことを抑制することができる。また、ガイド管2は、端部22が凸部75に当接するように第1筒部71の内側に差し込まれている。
【0034】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の注入器1においては、図5等を参照して説明したように、ノズル体4は、胴部42と頭部43との間に、ガイド管2の内径より外径が大の段部4
5を有しているため、注入管3をガイド管2内に引き込んだ際に段部45がガイド管2の先端部21と干渉し、注入管3がそれ以上、ガイド管2内に引き込まれることが阻止される。また、ノズル体4に外力が加わって注入管3がさらにガイド管2内に押し込まれようとしても、段部45であれば、テーパ面と違ってガイド管2に嵌るという事態が発生しない。従って、注入管3が押し出し不能となる事態を回避することができる。
【0035】
また、ノズル体4において、胴部42と頭部43との間に段部45を設けた場合、子宮体A1の内で注入管3をガイド管2内に引き込んだ際や、子宮体A1から注入器1を引き抜く際、受精卵や精子が段部45で掻き出されるおそれがある。しかるに本形態では、頭部43の外周面には、段部45から先端側に向けて溝状に延在する凹部46が周方向の複数個所に設けられているので、注入管3をガイド管2内に引き込んだ際や、子宮体A1から注入器1を引き抜く際、受精卵や精子は凹部46を通り抜ける。従って、段部45によって受精卵や精子が掻き出されることを抑制することができる。
【0036】
また、ノズル穴44は、胴部42の外周面420のうち、凹部46と軸線L方向で隣り合う位置で開口しているため、子宮体A1の内で注入管3をガイド管2内に引き込んだ際、受精卵や精子は凹部46を通り抜けやすい。従って、段部45によって受精卵や精子が掻き出されることを抑制することができる。
【0037】
また、ノズル穴44は、胴部42の外周面420のうち、段部45側の端部で開口しているため、ノズル穴44と段部45との間に、受精卵や精子を含む液状物が大量に溜まるような凹部が存在しない。従って、子宮体A1内から注入器1を抜く際、受精卵や精子が段部45やノズル穴44に引っ掛かって掻き出されることを抑制することができる。
【0038】
また、ノズル体4、ガイド管2、フランジ部材7および注入管3がいずれも樹脂製であるため、これらの部材を安価に製造することがきる。従って、注入器1のコストを低減することができる。また、注入器1のコストを低減することができれば、注入器1を使い捨てにすることができ、使用した注入器1を消毒して再利用する必要がない。また、寒冷地で使用した際、ノズル体4、ガイド管2、注入管3等が金属製である場合には温度が低下して凍結等の問題が発生しやすいが、樹脂製やゴム製であれば、かかる問題が発生しにくい。また、ノズル体4を軟質の樹脂製やゴム製とすれば、ノズル体4によって子宮を傷つけるという事態の発生を抑制することができる。また、ガイド管2および注入管3を透光性を有する樹脂製とすれば、人工授精用の精子等の注入操作を終えた後、注入器1を膣口から抜けば、注入管3の内部に人工授精用の精液等が残っているか否かを外部から視認することができる。それ故、人工授精用の精子等の注入操作を行えたか否かを確認することができる。
【0039】
[ノズル体4の変形例]
図7は、本発明を適用した注入器1に用いた別のノズル体4の斜視図であり、図7(a)、(b)には、ノズル体4を先端側からみた斜視図、およびノズル体4を基端側からみた斜視図を示してある。なお、本形態の基本的な構成は、上記実施の形態と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0040】
上記実施の形態では、ノズル穴44が胴部42の外周面420のうち、段部45側の端部で開口していたが、図7に示すように、胴部42の外周面420のうち、軸線L方向の中間あるいは略中間位置でノズル穴44が開口している態様を採用してもよい。
【0041】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、牛への受精卵や精子の注入を例示したが、牛以外の哺乳類への受精卵や精子の注入に注入器1を用いてもよい。上記実施の形態では、ガイド管2、注入管
3およびノズル体4のいずれもが樹脂製である場合を中心に説明したが、ガイド管2、注入管3およびノズル体4のいずれか、あるいは全てが金属製である場合に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…注入器、2…ガイド管、3…注入管、3a…第1管部、3b…第2管部、4…ノズル体、6…コネクタ、7…フランジ部材、8…流体供給器、21…先端部、41…連結部、42…胴部、43…頭部、44…ノズル穴、45…段部、46…凹部、74…穴、75…凸部、81…ピストン、413a…抜け止め部、431…第1部分、432…第2部分、450…端面、460…底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7