特許第6263244号(P6263244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263244
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】噴霧型日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61Q 17/04 20060101AFI20180104BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   A61Q17/04
   A61K8/37
   A61K8/25
   A61K8/86
   A61K8/89
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-198402(P2016-198402)
(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公開番号】特開2017-71602(P2017-71602A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2016年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-201595(P2015-201595)
(32)【優先日】2015年10月9日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】八巻 悟史
(72)【発明者】
【氏名】原田 太一
(72)【発明者】
【氏名】松田 崇志
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−091374(JP,A)
【文献】 特開2001−187711(JP,A)
【文献】 特開2011−111401(JP,A)
【文献】 特開2007−332295(JP,A)
【文献】 特開2005−053846(JP,A)
【文献】 特開2012−197241(JP,A)
【文献】 特開平08−217618(JP,A)
【文献】 特開平09−255543(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/049248(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)6〜40質量%の紫外線吸収剤、
(B)有機変性粘土鉱物、
(C)前記(B)以外の油相増粘剤、
(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤、
(E)球状樹脂粉末、及び
(F)揮発性シリコーン油を含有し、
[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(G)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の比率が0.04以上0.68未満である、油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項2】
(F)揮発性シリコーンが揮発性ジメチコンである、請求項1に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項3】
噴霧して使用される、請求項1又は2に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項4】
(E)球状樹脂粉末が、球状有機樹脂粉末と球状シリコーン樹脂粉末の、3:1〜1:3の混合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項5】
(A)紫外線吸収剤が、油溶性の紫外線吸収剤のみからなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項6】
(A)紫外線吸収剤が、オクチルメトキシシンナメート、オクトクリレン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及びポリシリコーン−15から選択される少なくとも一種である、請求項5に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項7】
(H)油溶性被膜剤をさらに含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項8】
(I)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンジアルキルエーテルをさらに含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は噴霧型日焼け止め化粧料に関する。さらに詳しくは、皮膚に噴霧した直後でも白くならず、なおかつ水や汗等と接触することにより噴霧(塗布)直後よりも紫外線防御効果が向上するという従来にない特性を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線の害から皮膚を守ることはスキンケア、ボディケアにおける重要な課題の一つであり、紫外線が皮膚に与える悪影響を最小限に抑えるために種々のUVケア化粧料が開発されている。UVケア化粧料の1種である日焼け止め化粧料(サンスクリーン化粧料)は、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を配合することによりUVA及びUVBの皮膚への到達を遮り、紫外線の害から皮膚を保護する(非特許文献1)。
【0003】
日焼け止め化粧料として、容器に収容された乳液を手にとって皮膚に塗布する剤型のものや、皮膚に直接噴霧する剤型のもの等が知られており、各剤型に応じて様々な性能が要求される。例えば噴霧型の日焼け止め化粧料では、紫外線散乱剤等の粉末成分が凝集してノズルの詰まりを生じることを防止する必要がある。
【0004】
特許文献1には、エアゾールタイプの日焼け止め化粧料において、特定の親油性溶媒(エステル油)とアルコールと紫外線吸収剤とを含む油性液体に紫外線散乱剤等の無機酸化物粉体を分散させることにより、粉体の分散性を向上させたことが記載されている。しかしながら、乳液タイプの日焼け止め化粧料は手で塗りのばすために白さが緩和されるが、エアゾール等の噴霧型日焼け止め化粧料は皮膚に噴霧した後に塗りのばさないことが多いため、噴霧直後から透明であることが求められる。そのため、白さの原因となる紫外線散乱剤を配合しないのが好ましい。
【0005】
しかしながら、紫外線散乱剤を含まない日焼け止め化粧料において優れた紫外線防御効果(高SPF(Sun Protection Factor)及び高PA(Protection Grade of UVA))を得るためには、UVA及びUVB領域の紫外線吸収剤を多配合する必要があり、それら紫外線吸収剤を溶解するための油性溶媒(極性油等)の配合量も必然的に増加する結果、使用感が油っぽくなったり、べたついたりするという問題があった。
【0006】
特許文献2には、紫外線散乱剤等の粉末成分を実質的に含まず、紫外線吸収剤でUVAからUVB領域の紫外線を防御するスプレータイプの日焼け止め化粧料が開示されており、低級アルコールの配合量を80〜85質量%とし、シリコーン及び水の配合量を約5質量%以下とすることにより、清涼感を持続し、きしみを生じさせない化粧料が得られることが記載されている。しかしながら、多量に配合されたアルコールで全ての紫外線吸収剤を溶解することは困難であり、経時的な紫外線吸収剤の析出といった問題が危惧される。
【0007】
一方、皮膚に塗布された日焼け止め化粧料が水や汗と接触すると、塗布した化粧料から紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が流出し、紫外線防御効果が低下することが避けられない。例えば、化粧料に耐水性を付与するための樹脂や被膜剤を多配合しても、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤等の流出を完全に阻止することは難しかった。また、たとえ紫外線吸収剤等の流出を完全に阻止できた場合であっても、得られる紫外線防御効果は塗布直後を上回ることはないと考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−201541号公報
【特許文献2】特開2014−224075号公報
【0009】
【非特許文献1】「新化粧品学」第2版、光井武夫編、2001年、南山堂発行、第497〜504頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、白さの原因となる紫外線散乱剤を実質的に含まずに塗布/噴霧直後から透明で、優れた紫外線防御効果を有するとともに使用感も良好な噴霧型の日焼け止め化粧料であって、なおかつ水や汗等と接触しても紫外線防御効果が低下せず逆に効果が向上するという従来にない革新的な特性を有する噴霧型日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、有機変性粘土鉱物及び油相増粘剤を、シリコーン油を除く不揮発性液状油分に対して所定の質量比となるように配合し、特定の粉末成分と揮発性油分を配合することにより、前記目的とする新規な特性を有する日焼け止め化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、
(A)6〜40質量%の紫外線吸収剤、
(B)有機変性粘土鉱物、
(C)前記(B)以外の油相増粘剤、
(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤、
(E)球状樹脂粉末、及び
(F)揮発性シリコーン油を含有し、
[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(G)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の比率が0.04以上0.68未満である、
油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供するものである。
本発明の日焼け止め化粧料はスプレー等で噴霧して使用するのに特に適している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の日焼け止め化粧料は、紫外線散乱剤を実質的に含んでいないので、皮膚に噴霧した直後でも白くならず、紫外線吸収剤によって優れた紫外線防御効果を発揮する。一方、配合された粉末の分散性が改善され、粉末沈降や固化を起こさず、油っぽさやべたつきを感じさせずに軽くさらさらとした感触を与えることもできる。
さらに、本発明の日焼け止め化粧料は、水や汗等と接触した後の紫外線防御効果が、化粧料を肌に塗布した直後よりも顕著に向上する。即ち、本発明に係る油中水型乳化日焼け止め化粧料は、従来の日焼け止め化粧料において効果劣化の原因とされていた水分との接触により紫外線防御効果が向上するという、従来の常識とは逆の特性を有する革新的な日焼け止め化粧料である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記の通り、本発明の油中水型日焼け止め化粧料は、(A)6〜40質量%の紫外線吸収剤、(B)有機変性粘土鉱物、(C)前記(B)以外の油相増粘剤、(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤、(E)球状樹脂粉末、及び(F)揮発性シリコーン油を含有し、[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(G)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の比率が0.04以上0.68未満であり、噴霧して使用するのに特に適することを特徴としている。本発明の各必須要件について以下に順次詳述する。
【0015】
<(A)紫外線吸収剤>
本発明に係る油中水型乳化日焼け止め化粧料に配合される(A)紫外線吸収剤(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)は、日焼け止め化粧料に通常配合されるものから選択でき、特に限定されるものではない。
具体例としては、オクチルメトキシシンナメート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、ポリシリコーン−15、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オキシベンゾン−3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ポリシリコーン−15、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシル等の有機紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0016】
本発明の化粧料では、紫外線散乱剤を含まなくてもUVAからUVBに渡る広い波長領域で優れた紫外線防御効果を発揮するために、UVA領域に吸収ピークを持つ紫外線吸収剤(UVA吸収剤)とUVB領域に吸収ピークを持つ紫外線吸収剤(UVB吸収剤)とを各々少なくとも一種ずつ組み合わせて配合するか、UVAからUVB領域に渡る広域吸収帯を持つ紫外線吸収剤を少なくとも一種配合するのが好ましい。ただし、水分等と接触したときの紫外線防御効果向上という特異な効果を確実にするために、水溶性の紫外線吸収剤、例えばフェニルベンズイミダゾールスルホン酸を配合せず、油溶性紫外線吸収剤のみを配合するのが好ましい。
【0017】
(A)成分の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、6質量%以上、さらに好ましくは6〜40質量%、より好ましくは7〜30質量%である。(A)成分の配合量が6質量%未満では十分な紫外線防御効果が得られにくく、40質量%を超えて配合しても配合量に見合った紫外線防御効果の増加を期待できず、安定性が悪くなるなどの点から好ましくない。
【0018】
<(B)有機変性粘土鉱物>
(B)有機変性粘土鉱物(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)としては、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、下記一般式(1)で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものを好ましく使用することができる。
(X,Y)2―3(Si,Al)10(OH)1/3・nHO (1)
(但し、X=Al,Fe(III),Mn(III),Cr(III)、Y=Mg,Fe(II),Ni,Zn,Li、Z=K,Na,Ca)
【0019】
具体的にはモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト等の天然または合成(この場合、式中の(OH)基がフッ素で置換されたもの)のモンモリロナイト群(市販品ではビーガム、クニピア、ラポナイト等がある。)およびナトリウムシリシックマイカやナトリウムまたはリチウムテニオライトの名で知られる合成雲母(市販品ではダイモナイト:トピー工業(株)等がある。)等の粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られる。
【0020】
ここで用いられる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は、下記一般式(2)で表されるものである。
【化1】
(式中、Rは炭素数10〜22のアルキル基またはベンジル基、Rはメチル基または炭素数10〜22のアルキル基、RおよびRは炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、Xはハロゲン原子またはメチルサルフェート残基を表す。)
【0021】
かかる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、例えばドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、アラキルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルエチルアンモニウムクロリド、アラキルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルメチルアンモニウムクロリド、アラキルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベジルメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、および相当するブロミド等、更にはジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。本発明の実施にあたっては、これらのうち一種または二種以上が任意に選択される。
【0022】
(B)成分の代表的なものとしては、ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライト、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。なかでも、ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライトが特に好ましい。市販品としては、ベントン27(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)およびベントン38(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)が好ましい。
【0023】
(B)成分の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、0.1〜3質量%、さらに好ましくは0.2〜2質量%、より好ましくは0.4〜1質量%である。(B)成分の配合量が0.1質量%未満では十分な安定性が得られにくく、3質量%を超えて配合すると高粘度となり、肌上での伸びが重くなるなどの使用性の点で好ましくない。
【0024】
<(C)油相増粘剤>
(C)油相増粘剤(以下、単に「(C)成分」と称する場合がある)は、油相の粘度を調整することができる物質(ただし、前記(B)成分に該当する物質以外)であり、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、あるいは脂肪酸又はその塩等が好ましく、これらから選択される2種以上を配合するのが特に好ましい。
デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンまたは還元デキストリンと高級脂肪酸とのエステルであり、化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用することができる。デキストリンまたは還元デキストリンは平均糖重合度が3〜100のものを用いるのが好ましい。また、デキストリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、炭素数8〜22の飽和脂肪酸を用いるのが好ましい。具体的には、パルミチン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸)デキストリン等を挙げることができる。
【0025】
ショ糖脂肪酸エステルは、その脂肪酸が直鎖状あるいは分岐鎖状の、飽和あるいは不飽和の、炭素数12から22のものを好ましく用いることができる。具体的には、ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等を挙げることができる。
【0026】
脂肪酸は、常温で固形のものを使用することができ、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等を挙げることができる。また、脂肪酸の塩としては、これらのカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等を挙げることができる。
【0027】
(C)成分の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは0.4〜8質量%である。(C)成分の配合量が0.1質量%未満では十分な安定性が得られにくく、15質量%を超えて配合すると高粘度となり、肌上での伸びが重くなるなどの使用性の点で好ましくない。
【0028】
<(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤>
(D)シリコーン系界面活性剤(以下において、単に「(D)成分」と称する場合がある)は、シリコーン骨格(ポリシロキサン構造)を有し、HLBが8未満の界面活性剤であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、及び/又はポリグリセリン・アルキル共変性シリコーンの使用が好ましく、なかでも、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・アルキル変性シリコーンがより好ましい。
本発明において用いられるポリオキシアルキレン変性シリコーンは、直鎖又は分岐鎖のオルガノポリシロキサンを主骨格として、側鎖にポリオキシアルキレン基を有するものであり、例えば、下記一般式(3)で示されるものが挙げられる。
【0029】
【化2】
一般式(3)において、Rは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基(好ましくはメチル基)、R’は水素又は炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは水素又はメチル基)、qは1〜50(好ましくは3)、mは1〜100、n、xはそれぞれ1〜50、yは0〜50である。ポリオキシアルキレン変性シリコーンの好適な例の一つとして、KF−6017(PEG−10ジメチコン、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0030】
また、上記式(3)において、オルガノポリシロキサン主骨格は、別のオルガノポリシロキサン鎖を側鎖に有していてもよい。このようなポリオキシアルキレン変性シリコーンの好適な例の一つとして、KF−6028(PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0031】
本発明において用いられるポリオキシアルキレン・アルキル変性シリコーンは、直鎖又は分岐鎖のオルガノポリシロキサンを主骨格として、側鎖にポリオキシアルキレン基と炭素数4以上のアルキル基とを有するものであり、例えば、下記一般式(4)で示されるものが挙げられる。
【0032】
【化3】
一般式(4)において、Rは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基(好ましくはメチル基)、R’は水素又は炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは水素)、pは6〜30(好ましくは10〜18、特に好ましくは12〜16)、qは1〜50(好ましくは3)、mは1〜100、n、w、xはそれぞれ1〜50、yは0〜50である。ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーンの好適な例の一つとして、ABIL EM90(セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン、Evonik Goldschmidt社製)が挙げられる。
【0033】
また、上記一般式(4)において、オルガノポリシロキサン主骨格は、別のオルガノポリシロキサン鎖を側鎖に有していてもよい。このようなポリオキシアルキレン・アルキル変性シリコーンの好適な例の一つとして、KF−6038(ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0034】
ポリグリセリン変性シリコーンとしては、例えば、下記式(5)で示される直鎖型のポリグリセリン変性シリコーン(=両末端シリコーン化ポリグリセリン)が挙げられる。
【化4】
[式中、R1は炭素原子数1〜12の直鎖または分岐鎖のアルキル基、若しくはフェニル基を示し、R2は炭素原子数2〜11のアルキレン基を示し、pは10〜120であり、qは1〜11である]。具体例としては、ビスブチルジメチコンポリグリセリル−3等が含まれる。
ポリグリセリン・アルキル共変性シリコーンは、直鎖又は分岐鎖のオルガノポリシロキサンを主骨格として、側鎖にポリグリセリン基と炭素数4以上のアルキル基とを有するものであり、KF−6105(ラウリルポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0035】
(D)成分の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、0.1〜8質量%、さらに好ましくは0.2〜7質量%、より好ましくは0.4〜5質量%である。(D)成分の配合量が0.1質量%未満では十分な安定性が得られにくく、8質量%を超えて配合すると高粘度となり、肌上での伸びが重くなるなどの使用性の点で好ましくない。
【0036】
<(E)球状樹脂粉末>
本発明の化粧料に球状樹脂粉末(単に「(E)成分」と称する場合がある)を配合すると、使用感を更に改善してさらさらとした良好な感触を得ることができる。
本発明に用いられる球状樹脂粉末は、一般に化粧品等において球状樹脂粉末として用いられ得るものであれば特に制限されることなく任意に使用し得る。例えば、(メタ)アクリル酸エステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、スチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末、及びトリメチルシルセスキオキサン粉末等(以下、「球状有機樹脂粉末」と称する)、並びにオルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末またはこれを母粉末とする複合球状粉末(以下、「球状シリコーン樹脂粉末」と称する)を挙げることができる。配合される球状樹脂粉末の粒径等は特に限定されるものでないが、例えば、粒径1〜50μm程度のものが好適に用いられる。また、これらの樹脂粉末は疎水化処理されていてもよい。
【0037】
市販の球状有機樹脂粉末としては、例えば、ガンツパール(アイカ工業社製)が挙げられ、市販の球状シリコーン樹脂粉末としては、例えば、トレフィルE−505C、トレフィルE−506C、トレフィルE−506S、トレフィルHP40T(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、トスパール145A(東芝シリコーン社製)、シリコーンパウダーKSP−100、KSP−300(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0038】
本発明では、これら球状樹脂粉末の中から一種または二種以上を任意に選択して用いることができる。特に、球状有機樹脂粉末と球状シリコーン樹脂粉末とを組み合わせて配合するのが好ましく、球状有機樹脂粉末と球状シリコーン樹脂粉末との配合量比率を3:1〜1:3とするのが好ましく、2:1〜1:2とするのがより好ましく、約1:1(例えば、1.5:1〜1:1.5、1.2:1〜1:1.2等)とするのが更に好ましい。
(E)球状樹脂粉末の配合量は特に限定されないが、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは7〜20質量%である。
【0039】
<油分>
本発明の化粧料は油中水型乳化化粧料であり、外相(連続相)を構成する油分を必ず含有している。本発明における油分は揮発性油分及び不揮発性液状油分を含んでいる。
【0040】
<揮発性油分>
本発明の化粧料に配合される揮発性油分には、揮発性炭化水素油及び揮発性シリコーン油が含まれる。
揮発性炭化水素油は、従来から化粧料等に使用されている常温(25℃)で揮発性を有する炭化水素油であれば特に限定されない。具体例としては、例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテン等を挙げることができる。
揮発性シリコーン油には、従来から化粧料等に使用されている常温で揮発性を有するシリコーン油、例えば、揮発性の直鎖状シリコーン油(揮発性ジメチコン)及び揮発性の環状シリコーン油(揮発性シクロジメチコン)が含まれる。揮発性ジメチコンとしては、デカメチルテトラシロキサン等の低粘度(例えば、30℃における粘度が100〜500mPa・s程度の)ジメチルポリシロキサンを用いることができ、市販品としては、KF−96L−1.5cs、KF−96L−2cs(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。揮発性シクロメチコンとしては、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)等が挙げられる。
【0041】
本発明の化粧料においては、揮発性油分として(F)揮発性シリコーン油(以下、単に「(F)成分」とも称する)を必須成分として含有する。揮発性シリコーン油を配合して揮発性を調整することにより、化粧料ののびの軽さ及び被膜感のなさにおいて優れた化粧料とすることができる。また、(F)成分として揮発性ジメチコンを配合すると、揮発性シクロメチコンのみを配合した場合に比較して、さらに感触に優れた化粧料とすることができる。なお、揮発性油分の全配合量に占める揮発性シリコーン油の比率は特に限定されないが、例えば、50質量%以上、例えば60質量%〜80質量%とすることができる。
【0042】
本発明の化粧料における(F)揮発性シリコーン油の配合量は特に限定されないが、好ましくは1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは8〜30質量%である。
【0043】
<不揮発性液状油分>
本明細書における「不揮発性液状油分」とは、常温(25℃)・常圧(1気圧(9.8×10Pa))で揮発性を示さず(例えば、常圧での沸点が約200℃以上の油分が含まれる)、常温・常圧で流動性を有し、固形でない液状の油分を意味し、シリコーン油及びシリコーン油以外の不揮発性油(炭化水素油、エステル油等)を包含する。
本発明においては、(G)シリコーン油以外の不揮発性液状油分を(G)成分と呼ぶこととする。(G)不揮発性液状油分成分(ただしシリコーン油以外)には、前記(A)成分に該当する油溶性の紫外線吸収剤も含まれ得る。従って、本発明では、(G)成分の全部が(A)油溶性紫外線吸収剤からなる場合もある。
【0044】
(G)成分に含まれるが、(A)紫外線吸収剤には該当しない不揮発性液状油分には、例えば、炭化水素油、植物油等の液状油脂、エステル油、高分子量のポリオキアルキレングリコールなどが含まれる。
具体例としては、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、アルモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、卵黄油、肝油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル等の液状油脂;オクタン酸セチル等のオクタン酸エステル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット等のイソオクタン酸エステル、ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル、パルミチン酸オクチル等のパルミチン酸エステル、ステアリン酸イソセチル等のステアリン酸エステル、イソステアリン酸イソプロピル等のイソステアリン酸エステル、イソパルミチン酸オクチル等のイソパルミチン酸エステル、オレイン酸イソデシル等のオレイン酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル等のアジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエチル等のセバシン酸ジエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等のリンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油;流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油;ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
【0045】
<[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(G)成分の合計量]の比率>
本発明に係る油中水型乳化日焼け止め化粧料では、油相の粘度調節に関わる前記(B)成分及び(C)成分の合計量が、(G)シリコーン油を除く不揮発性液状油分の合計量に対して、所定の比率を有することを必要とする。
即ち、[(B)及び(C)成分の合計量]/[(G)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の比率(以下、「油相増粘剤比率」と表記する場合がある)が、0.04以上0.68未満であることを必須とし、さらにこの比率が0.045以上0.5未満であることがより好ましい。当該比率が0.04未満又は0.68以上では、水分との接触による紫外線防御効果の向上が見られなくなる。
【0046】
<任意成分>
本発明では、上記(A)〜(G)という必須成分に加え、さらに、(H)油溶性被膜剤(以下、単に「(H)成分」と称する場合がある)を配合することができる。(H)成分を配合することにより、紫外線吸収剤の流出や衣服等によるこすれ落ちに対する抵抗性をさらに高めることができる。
【0047】
(H)成分としては、化粧料に通常用いられるものであれば特に制限されず、具体的には、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVP/ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体、PVP/エイコセン共重合体、PVP/メタクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体、PVP/ヘキサデセン共重合体、PVP/VA共重合体、PVP/ビニルアセテート/イタコン酸共重合体、スチレン/PVP共重合体等のPVP系被膜剤;アクリル酸エチル/アクリル酸アミド/アクリル酸共重合体、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸エチル/メタクリル酸エチル共重合体、アクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸オクチル/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸オクチル/スチレン共重合体、アクリル酸ブチル/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸ブチル/ヒドロキシメタクリル酸エチル共重合体、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸メトキシエチル/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸ラウリル/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリスチレンアクリル酸樹脂等のアクリル酸系被膜剤;ポリ酢酸ビニル等の酢酸ビニル系被膜剤;ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸オクチル酸、ジエチル硫酸ビニルピロリドン/N,N’−ジメチルアミノメタクリル酸共重合体等のメタクリル酸系被膜剤;ビニルメチルエーテル/マレイン酸エチル共重合体、ビニルメチルエーテル/マレイン酸ブチル共重合体等のビニルメチルエーテル系皮被膜剤;スチレン/メチルスチレン/インデン共重合体等のスチレン系被膜剤;シクロヘキサン系アルキッド樹脂等のアルキッド樹脂系被膜剤;トリメチルシロキシケイ酸等のシリコーン樹脂系被膜剤等が挙げられる。これらの中でも、トリメチルシロキシケイ酸が耐水性及び耐油性の点から好ましい。
【0048】
(H)成分を配合する場合、その配合量は、[(H)成分の配合量]/[(G)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の比率(以下、「被膜剤比率」と表記する場合がある)を0.5未満とする量が好ましい。当該比率が0.5以上では、被膜感が強くなり、使用性や洗浄性が低下する傾向がある。また、被膜剤比率の下限は特に限定されないが、被膜剤の十分な配合効果を得るには0.01以上とするのが好ましい。
【0049】
本発明では、さらに、(I)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンジアルキルエーテル(以下、単に「(I)成分」と称する場合がある)を配合することができる。
【0050】
(I)成分は、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンのランダムまたはブロック共重合体のジアルキルエーテルであり、具体的には、ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ランダム共重合体ジメチルエーテルが挙げられる。(I)成分の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、0.001〜5質量%とするのが好ましい。
【0051】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料には、上記必須成分以外に、化粧料に通常用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤(例えば、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール等)、油性活性剤、界面活性剤、水相増粘剤、アルコール類、球状以外の粉末成分、色剤、水性活性剤等を必要に応じて適宜配合してよく、常法により製造することができる。
なお、本発明の化粧料は、紫外線散乱剤を実質的に配合しないことにより噴霧時の白さを抑制しているが、本発明の目的を達成できる範囲で少量の紫外線散乱剤を配合することを排除するものではない。例えば、2質量%以下、あるいは1質量%以下程度の紫外線散乱剤を配合することにより紫外線防御効果を更に高めた化粧料も本発明の範囲内である。
【0052】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、ディスペンサー又はエアゾール容器に充填して、ノズルから噴霧して使用する噴霧型の日焼け止め化粧料として提供するのに特に適している。
ディスペンサー容器に充填された化粧料は、ディスペンサーのノズルからミスト状に噴霧される。エアゾール容器には、本発明の化粧料を原液とし、当該原液と噴射剤とともに充填する。
【0053】
本発明に用いる噴射剤は、エアゾール製品全般に用い得る噴射剤であれば、特に限定されない。例えば、各種の液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、液化石油ガスとジメチルエーテルの混合物のような液化ガスや、窒素ガスや炭酸ガスのような圧縮ガス等が用いられ得る。LPGはプロパン、ブタン、イソブタンを主成分とする液化石油ガスである。
なお、本発明の化粧料は、スキンケア化粧料のみならず、日焼け止め効果を付与したファンデーション等のメーキャップ化粧料や化粧下地にも適用可能である。
【実施例】
【0054】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0055】
下記の表1及び表2に掲げた組成を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を、油性成分を加温して溶解し粉末を分散させたものに、別途溶かした水相を添加し、攪拌処理にて乳化することにより調製した。得られた各例の化粧料について、以下の項目を評価した。
【0056】
以下の項目1及び2について目視観察した。
1.原液の粉末沈降及び固化
評価基準:
良好:化粧料の原液中で粉末の沈降及び固化が生じなかった。
不良:化粧料の原液中で粉末の沈降及び固化が生じた。
2.粉末再分散性(エアゾール容器に充填した状態で12時間静置した後)
良好:容器を振ることにより粉末が良好に再分散した。
不良:容器を振っても凝集した粉末が再分散しなかった。
【0057】
3.紫外線防御効果の測定
Sプレート(5×5cmのV溝PMMA板、SPFMASTER−PA01)に各例の化粧料(サンプル)を2mg/cmの量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥した後、その吸光度を株式会社日立製作所社製U−3500型自記録分光光度計にて測定した。紫外線吸収のないグリセリンをコントロールとし、吸光度(Abs)を以下の式で算出した。
Abs=−log(T/To)
T:サンプルの透過率、To:グリセリンの透過率
【0058】
測定したプレートを硬度50〜500の水に十分に浸し、30分間そのまま水に浸漬した。その後、表面の水滴がなくなるまで15〜30分程度乾燥させ、再び吸光度を測定し、水浴前後のAbs積算値からAbs変化率(以下の式)を紫外線防御能向上効果として算出した。
紫外線防御能向上効果:
Abs変化率(%)=(水浴後のAbs積算値)/(水浴前のAbs積算値)×100
本発明においては、前記Abs変化率が100(%)を超えた場合に、紫外線防御効果が向上したものと定義する。
【0059】
以下の項目4及び5については、10名の専門パネルに評価してもらい、下記の基準で評価した。
4.べたつきのなさ及びさらさら感
5.のびの軽さ及び被膜感のなさ
評価基準:
A:良好であると評価したパネルが7名以上
B:良好であると評価したパネルが5〜6名
C:良好であると評価したパネルが4名以下
【0060】
6.総合評価
以上の評価結果に基づいて、表2に掲げた各例の化粧料を以下の基準で総合評価した。
評価基準:
+++:Abs変化率が100(%)を超え、他の評価項目4つ全てが良好またはAである。
++:Abs変化率が100(%)を超え、他の評価項目中3つが良好またはAである。
+:Abs変化率が100(%)を超え、他の評価項目中1〜2が良好またはAである。
−:Abs変化率が100(%)を超えない。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1及び表2に示されるように、(A)成分として水溶性の紫外線吸収剤を含み、なおかつ(B)有機変性粘度鉱物も(C)油相増粘剤も含まない比較例1は、粉末の分散性が不良であり、紫外線防御力の向上効果も見られなかった。比較例1における水溶性の紫外線吸収剤を油溶性の紫外線吸収剤(ポリシリコーン−15)に置換し、粘土鉱物と油相増粘剤を添加した比較例2では、粉末の分散性は改善されたが、(B)有機変性粘度鉱物、(C)油相増粘剤及び(G)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の間の配合量が所定の関係を満たさず、紫外線防御剤の向上効果が見られない。粘土鉱物と油相増粘剤を増やした実施例1〜4においては、粉末の分散性も良好で紫外線防御効果が向上するという特性が見られた。また球状樹脂粉末の配合量を変化させた実施例2〜4では、球状樹脂粉末の配合量の増加及び球状有機樹脂粉末と球状シリコーン樹脂粉末との配合量比の調整によって使用感が改善された。
【0064】
揮発性シクロメチコンを配合した実施例5、それを揮発性ジメチコンに置換した実施例6〜9は、いずれも使用性(べたつき・さらさら感)及び粉末分散性ともに良好であり、水分と接触した際に紫外線防御効果が向上するという特性が得られた。特に、揮発性シリコーン油として揮発性ジメチコンを配合した実施例6〜9は、のびが軽くなり被膜感のない感触に改善された。
被膜剤を配合した実施例9は、使用感において若干の劣化が見られたが、水分と接触した際に紫外線防御効果が向上するという有利な特性が得られた。また粉末の再分散性が格段に優れていた。