特許第6263255号(P6263255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263255
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/18 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   F16J15/18 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-506563(P2016-506563)
(86)(22)【出願日】2015年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2015056600
(87)【国際公開番号】WO2015133595
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2016年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-43578(P2014-43578)
(32)【優先日】2014年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】辺見 耕太
(72)【発明者】
【氏名】波多野 誠
(72)【発明者】
【氏名】義経 修司
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−068467(JP,A)
【文献】 特開2013−119884(JP,A)
【文献】 特開2004−225778(JP,A)
【文献】 特開2002−161983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する二部材間に配置されて密封流体をシールする密封装置であって、
前記二部材のうちの一方の部材に設けた装着溝に装着されて他方の部材に密接するシールリングと、前記シールリングの反密封流体側に配置される比較的硬質の第1バックアップリングと、前記シールリングおよび前記第1バックアップリング間に配置される比較的軟質の第2バックアップリングとを有し、
前記装着溝は断面矩形状の溝とされ、
前記第1バックアップリングは、前記装着溝の反密封流体側側面部に接触する軸直角平面状の端面部、前記他方の部材に接触する円筒面状の周面部ならびに前記端面部および前記周面部に対し交差する斜面部を備えて断面三角形状に形成され、
前記第2バックアップリングは、前記シールリングが接触する軸直角平面状の端面部、前記装着溝の底面部に接触する円筒面状の周面部および前記第1バックアップリングの斜面部に対応して設けられた斜面部を備えて断面三角形状に形成され、
前記第1バックアップリングにおける前記端面部および前記斜面部が交差する角部にカット部を設け、
前記第2バックアップリングにおける前記周面部および前記斜面部が交差する角部にもカット部を設け、
前記第2バックアップリングにおける前記端面部および前記斜面部が交差する角部は尖端状に形成されていることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
請求項1記載の密封装置において、
前記第1バックアップリングに設けたカット部は当該第1バックアップリングの中心軸線に対し平行な向きにカットされ、
前記第2バックアップリングに設けたカット部は当該第2バックアップリングの中心軸線に対し直交する向きにカットされていることを特徴とする密封装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の密封装置において、
前記第1バックアップリングにおける前記カット部の軸方向幅yを、前記二部材の偏心量に対して0.2〜2.5倍の大きさとすることを特徴とする密封装置。
【請求項4】
請求項3記載の密封装置において、
前記二部材の偏心量は、前記二部材間の径方向隙間cと同等の大きさであることを特徴とする密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール技術に係る密封装置に関する。本発明の密封装置は特に、高圧用シールとして用いられるのに適している。
【背景技術】
【0002】
従来から高圧用シールとして図4(A)に示す密封装置1が知られており、この密封装置1は、互いに対向する二部材51,52間に配置されて高圧側Hの密封流体が低圧側Lへ漏洩しないようシールするものであって、二部材51,52のうちの一方の部材51に設けた装着溝53に装着されて他方の部材52に密接するシールリング11と、シールリング11の反密封流体側(低圧側L)に配置される比較的硬質の第1バックアップリング21と、シールリング11および第1バックアップリング21間に配置される比較的軟質の第2バックアップリング31との組み合わせとされている。
【0003】
装着溝53は、加工が容易であることから断面矩形状の溝とされている。第1バックアップリング21は、装着溝53の反密封流体側側面部53bに接触する軸直角平面状の端面部21a、他方の部材52に接触する円筒面状の周面部21bならびに端面部21aおよび周面部21bに対して交差する斜面部21cを備え、断面三角形状に形成されている。第2バックアップリング31は、シールリング11が接触する軸直角平面状の端面部31a、装着溝53の底面部53aに接触する円筒面状の周面部31bおよび第1バックアップリング21の斜面部21cに対応して設けられた斜面部31cを備え、同じく断面三角形状に形成されている。
【0004】
上記構成の密封装置1においては、シールリング11の反密封流体側(低圧側L)に第1バックアップリング21が配置されているため、シールリング11が二部材51,52間の隙間54にはみ出して破損するのを防止することが可能とされ、またシールリング11および第1バックアップリング21間に第2バックアップリング31が配置されているため、シールリング11が第1バックアップリング21および他方の部材52間の隙間(図示せず)にはみ出して破損するのを防止することが可能とされている。
【0005】
しかしながら上記密封装置1においては、第1バックアップリング21における端面部21aおよび斜面部21cが交差する角部21dが尖端状とされ、第2バックアップリング31における周面部31bおよび斜面部31cが交差する角部31dも尖端状とされているため、以下の問題が指摘される。
【0006】
すなわち図4(B)に示すように二部材51,52が互いに偏芯したとき、第1バックアップリング21の尖端状の角部21dが円周上一部の図上C部にて装着溝53の底面部53aと干渉し、つぶされる。したがって比較的硬質の第1バックアップリング21がこのようにつぶされることにより、第1バックアップリング21にクラック等の破損が発生することがある。角部21dは、装着溝53における底面部53aおよび側面部53bが交差する内角部に位置するため、荷重を受けても逃げ場がない。したがって、つぶされやすく、破損しやすいものである(干渉による不具合その1)。
【0007】
また、同じく図4(B)に示すように二部材51,52が互いに偏芯したとき、第2バックアップリング31の尖端状の角部31dが円周上一部の図上D部にて装着溝53の側面部53bと干渉し、つぶされる。そして、こちらのほうは比較的軟質のためクラック等の破損は発生しないが、つぶされた角部31dは、やはり逃げ場がないため、第1バックアップリング21に押し付けられ、これにより第1バックアップリング21との間に隙間が生じ、第2バックアップリング31が傾くことになる。したがって第2バックアップリング31および装着溝53の底面部53a間に隙間(図示せず)が発生し、この隙間にシールリング11がはみ出して破損することがある(干渉による不具合その2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−68467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の点に鑑みて、断面矩形状の装着溝に装着されるシールリング、第1バックアップリングおよび第2バックアップリングの組み合わせよりなる密封装置において、断面三角形状のバックアップリングに干渉による不具合が発生するのを抑制することができる密封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による密封装置は、互いに対向する二部材間に配置されて密封流体をシールする密封装置であって、前記二部材のうちの一方の部材に設けた装着溝に装着されて他方の部材に密接するシールリングと、前記シールリングの反密封流体側に配置される比較的硬質の第1バックアップリングと、前記シールリングおよび前記第1バックアップリング間に配置される比較的軟質の第2バックアップリングとを有し、前記装着溝は断面矩形状の溝とされ、前記第1バックアップリングは、前記装着溝の反密封流体側側面部に接触する軸直角平面状の端面部、前記他方の部材に接触する円筒面状の周面部ならびに前記端面部および前記周面部に対し交差する斜面部を備えて断面三角形状に形成され、前記第2バックアップリングは、前記シールリングが接触する軸直角平面状の端面部、前記装着溝の底面部に接触する円筒面状の周面部および前記第1バックアップリングの斜面部に対応して設けられた斜面部を備えて断面三角形状に形成され、前記第1バックアップリングにおける前記端面部および前記斜面部が交差する角部にカット部を設け、前記第2バックアップリングにおける前記周面部および前記斜面部が交差する角部にもカット部を設け、前記第2バックアップリングにおける前記端面部および前記斜面部が交差する角部は尖端状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2による密封装置は、上記した請求項1記載の密封装置において、前記第1バックアップリングに設けたカット部は当該第1バックアップリングの中心軸線に対し平行な向きにカットされ、前記第2バックアップリングに設けたカット部は当該第2バックアップリングの中心軸線に対し直交する向きにカットされていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3による密封装置は、上記した請求項1または2記載の密封装置において、前記第1バックアップリングにおける前記カット部の軸方向幅yを、前記二部材の偏心量に対して0.2〜2.5倍の大きさとすることを特徴とする。
【0013】
更にまた、本発明の請求項4による密封装置は、上記した請求項3記載の密封装置において、前記二部材の偏心量は、前記二部材間の径方向隙間と同等の大きさであることを特徴とする。
【0014】
上記構成を備える本発明の密封装置においては、断面三角形状の第1バックアップリングにおける端面部および斜面部が交差する角部にカット部が設けられているため、二部材が互いに偏芯しても、この角部が装着溝の底面部と干渉してつぶされると云う事態が発生しない。また、断面三角形状の第2バックアップリングにおける周面部および斜面部が交差する角部にもカット部が設けられているため、二部材が互いに偏芯しても、この角部が装着溝の側面部と干渉してつぶされると云う事態が発生しない。したがってこれらバックアップリングに干渉が生じにくいため、干渉による不具合が発生するのを抑制することが可能とされる。
【0015】
カット部におけるカットの方向は特に限定されず、またカット部は断面直線状であっても曲線状であっても良いが、第1バックアップリングに設けるカット部を当該第1バックアップリングの中心軸線に対し平行な向きにカットすると、このカット部は断面直線状となり円筒面状となる。また、第2バックアップリングに設けるカット部はこれを当該第2バックアップリングの中心軸線に対し直交する向きにカットすると、このカット部は断面直線状となり軸直角平面状となる。このような形状のカット部は何れも加工が容易で、バックアップリングを製造しやすいものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0017】
すなわち本発明においては以上説明したように、断面三角形状の第1バックアップリングにおける端面部および斜面部が交差する角部にカット部が設けられているため、二部材が互いに偏芯しても角部が装着溝の底面部と干渉してつぶされる事態が発生しない。したがって比較的硬質の第1バックアップリングに角部のつぶしによるクラック等の破損が発生するのを抑制することができる。また、断面三角形状の第2バックアップリングにおける周面部および斜面部が交差する角部にもカット部が設けられているため、二部材が互いに偏芯しても角部が装着溝の側面部と干渉してつぶされる事態が発生しない。したがって比較的軟質の第2バックアップリングに角部のつぶしによる大きな傾きが発生し、第2バックアップリングおよび装着溝の底面部間に隙間が発生し、この隙間にシールリングがはみ出して破損するのを抑制することができる。
【0018】
また、第1バックアップリングに設けるカット部を第1バックアップリングの中心軸線方向に対し平行な向きにカットすること、および第2バックアップリングに設けるカット部を第2バックアップリングの中心軸線方向に対し直交する向きにカットすることにより、加工が容易で製造しやすいバックアップリング部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)は本発明の実施例に係る密封装置の断面図、(B)は同密封装置の偏芯した状態を示す断面図
図2】同密封装置に備えられる第1バックアップリングの断面形状を示す説明図
図3】同密封装置に備えられる第1バックアップリングおよび第2バックアップリングの断面形状の他の例を示す説明図
図4】(A)は従来例に係る密封装置の断面図、(B)は同密封装置の偏芯した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0021】
図1(A)は、本発明の実施例に係る密封装置1の要部断面を示している。当該実施例に係る密封装置1は、インジェクタ等の油圧機器における高圧シール部に用いられるものであって、以下のように構成されている。
【0022】
すなわち当該密封装置1は、互いに対向する二部材としての軸51およびハウジング52間の環状隙間に配置されて、図上右方向の高圧側Hに存在する密封流体が図上左方向の低圧側(大気側)Bへ漏洩しないようにこれをシールするものであって、軸51の周面に設けた環状の装着溝53に装着されてハウジング52の軸孔内周面に密接するシールリングとしてのOリング11と、Oリング11の反密封流体側(低圧側L)に配置されて同じく装着溝53に装着される第1バックアップリング21と、Oリング11および第1バックアップリング21の間に配置されて同じく装着溝53に装着される第2バックアップリング31とを有している。Oリング11はこれに代えて、DリングやXリングなどの他の断面形状のシールリングであっても良い。
【0023】
Oリング11は、ゴム状弾性体によって成形されている。第1バックアップリング21は、第2バックアップリング31よりも硬質の、例えばナイロン樹脂によって成形されている。第2バックアップリング31は、第1バックアップリング21よりも軟質の、例えばPTFE樹脂によって成形されている。
【0024】
装着溝53は、加工が容易であることから断面矩形状の矩形溝として形成されている。したがって溝内にテーパ形状の類は設けられておらず、装着溝53は円筒面状の底面部53aおよび軸直角平面状の両側面部53bのみの組み合わせとされている。
【0025】
第1バックアップリング21は、装着溝53の側面部53bに接触する反密封流体側(低圧側L)の軸直角平面状の端面部21aと、ハウジング52の軸孔内周面に接触する外周側の円筒面状の周面部21bと、端面部21aおよび周面部21bに対し交差するテーパ面状の斜面部21cとを備え、断面三角形状(直角三角形状)に形成されている。斜面部21cは断面直線状とされ、そのテーパの向きを密封流体側(高圧側H)から反密封流体側(低圧側L)へかけて径寸法が徐々に縮小する向きとされている。
【0026】
第2バックアップリング31は、シールリング11が接触する密封流体側(高圧側H)の軸直角平面状の端面部31aと、装着溝53の底面部53aに接触する内周側の円筒面状の周面部31bと、端面部31aおよび周面部31bに対し交差するテーパ面状の斜面部31cとを備え、断面三角形状(直角三角形状)に形成されている。斜面部31cは断面直線状とされ、そのテーパの向きを密封流体側(高圧側H)から反密封流体側(低圧側L)へかけて径寸法が徐々に縮小する向きとされている。
【0027】
第1バックアップリング21の斜面部21cと第2バックアップリング31の斜面部31cは互いに対応して設けられ、その傾斜角度、斜面長さ、最大外径寸法および最小内径寸法などを同等ないし略同等に形成されている。
【0028】
また、第1バックアップリング21における端面部21aおよび斜面部21cが交差する角部にカット部22が設けられている。このカット部22は環状に形成されるとともに第1バックアップリング21の中心軸線0方向に対し平行な向きにカットされ、よってカット部22は円筒面状に形成されている。カット部22の径寸法は装着溝53の底面部53aの径寸法より大きく形成されている。
【0029】
また、第2バックアップリング31における周面部31bおよび斜面部31cが交差する角部にカット部32が設けられている。このカット部32は環状に形成されるとともに第2バックアップリング31の中心軸線0方向に対し直交する向きにカットされ、よってカット部32は軸直角平面状に形成されている。
【0030】
上記構成の密封装置1においては、シールリング11の反密封流体側(低圧側L)に第1バックアップリング21が配置されているため、シールリング11が軸51およびハウジング52間の隙間54にはみ出して破損するのを防止することが可能とされ、またシールリング11および第1バックアップリング21間に第2バックアップリング31が配置されているため、シールリング11が第1バックアップリング21およびハウジング52間の隙間(図示せず)にはみ出して破損するのを防止することが可能とされている。
【0031】
また、断面三角形状の第1バックアップリング21における端面部21aおよび斜面部21cが交差する角部にカット部22が設けられているため、図1(B)に示すように軸51およびハウジング52が互いに偏芯しても、この角部が装着溝53の底面部53aと干渉してつぶされることがない。したがって比較的硬質の第1バックアップリング21に角部のつぶしによるクラック等の破損が発生するのを抑制することが可能とされている。
【0032】
また、断面三角形状の第2バックアップリング31における周面部31bおよび斜面部31cが交差する角部にカット部32が設けられているため、図1(B)に示すように軸51およびハウジング52が互いに偏芯しても、この角部が装着溝53の側面部53bと干渉してつぶされることがない。したがって比較的軟質の第2バックアップリング31に角部のつぶしによる大きな傾きが発生し、第2バックアップリング31および装着溝53の底面部53a間に隙間が発生し、この隙間にシールリング11がはみ出して破損するのを抑制することが可能とれている。
【0033】
また、第1バックアップリング21に設けるカット部22が第1バックアップリング21の中心軸線0方向に対し平行な向きにカットされているため、第1バックアップリング21は形状が簡素であって、加工が容易で製造しやすいものである。また、第2バックアップリング31に設けるカット部32が第2バックアップリング31の中心軸線0方向に対し直交する向きにカットされているため、第2バックアップリング31はこれも形状が簡素であって、加工が容易で製造しやすいものである。したがってカット部22,32を有していながら加工が容易で製造しやすいバックアップリング部品を提供することが可能とされている。
【0034】
尚、当該実施例では、図1(B)のE部に示すように第2バックアップリング31における端面部31aおよび斜面部31cが交差する角部31eにカット部は設けられていないため、この角部31eは尖端状であって、軸51およびハウジング52が互いに偏芯したときにハウジング52の軸孔内周面に対して干渉することになる。しかしながらこの角部31eの密封流体側(高圧側H)は空間であってここに逃げ場が確保されている。したがってこの角部31eにカット部を設ける必要はなく、カット部を設けないほうがシールリング11のはみ出しを抑制しやすい。
【0035】
第1バックアップリング21に設けるカット部22については、その軸方向幅yを二部材(軸51およびハウジング52)の偏心量に対して0.2〜2.5倍の大きさとするのが好適である。これは以下の理由による。
【0036】
すなわち図2に示すように、本発明の密封装置1をインジェクタ用シールとして用いる場合、第1バックアップリング21の径方向幅dは実寸で1〜4mmとされ、これに合わせて第1バックアップリング21の軸方向幅wは1〜2mmとされることが多い。また、このときの端面部21aおよび斜面部21cがなす角度θは14°〜65°の範囲となる。本発明では、第1バックアップリング21における端面部21aおよび斜面部21cが交差する角部に偏心量分のカット部22を設ける構成であるので、このカット部22の径方向幅をxとし、カット部22の軸方向幅をyとした場合、yを求める式は下記となる。
y=x×tanθ
ここで、θは上記のとおり、θ=14°〜65°であるので、
y=(0.25〜2.14)・x
となり、0.25〜2.14の数値幅に寸法公差等を加えた結果として、第1バックアップリング21に設けるカット部22についてはその軸方向幅yを二部材の偏心量に対して0.2〜2.5倍の大きさとするのが好適である。
【0037】
また、二部材(軸51およびハウジング52)の偏心量については、二部材が同軸上に位置するときの、二部材の径方向隙間c(図1(A)参照)が最大値となるので、この二部材の径方向隙間cを二部材の偏心量(最大偏心量)とする。
【0038】
また、上記実施例では、第1バックアップリング21の斜面部21cおよび第2バックアップリング31の斜面部31cを共に傾斜角度が一定の断面直線状を呈するテーパ面としたが、これら斜面部21c,31cは傾斜角度が徐々に変化する断面曲線状のテーパ面であっても良い。
【0039】
この場合の例として、図3示す例では、第1バックアップリング21の斜面部21cが、内径側から外径側へかけて傾斜角度が徐々に小さくなる断面曲線状のテーパ面とされ、これに対応して、第2バックアップリング31の斜面部31cも同様に、内径側から外径側へかけて傾斜角度が徐々に小さくなる断面曲線状のテーパ面とされている。
【符号の説明】
【0040】
1 密封装置
11 シールリング
21 第1バックアップリング
21a,31a 端面部
21b,31b 周面部
21c,31c 斜面部
21d,31d,31e 角部
22,32 カット部
31 第2バックアップリング
51 軸(一方の部材)
52 ハウジング(他方の部材)
53 装着溝
53a 底面部
53b 側面部
54 はみ出し隙間
図1
図2
図3
図4