(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263258
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】凝集反応の結果を決定するための方法、およびその方法を実施するための制御ユニットを備える試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20180104BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20180104BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20180104BHJP
G01N 21/82 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
G01N33/543 581H
G01N33/48 D
G01N35/02 A
G01N21/82
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-520585(P2016-520585)
(86)(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公表番号】特表2016-533486(P2016-533486A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2014071399
(87)【国際公開番号】WO2015052162
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】13187975.1
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516036456
【氏名又は名称】ヤンタイ・アウスビオ・ラボラトリーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】マン、ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チャオチン
【審査官】
海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−502795(JP,A)
【文献】
特開2011−133364(JP,A)
【文献】
特開2010−060417(JP,A)
【文献】
特開平01−163662(JP,A)
【文献】
特開2003−083972(JP,A)
【文献】
HARMENING D. M. ET AL,CHAPTER 15: Alternative Technologies and Automation in Routine Blood Bank Testing,MODERN BLOOD BANKING AND TRANSFUSION PRACTICES 5TH EDITION,2005年 1月 1日,PP.293-302
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集反応の結果を決定するための方法であって、
試料をウェル(2)内の試薬と反応させる反応ステップであって、2次元アレイに配置された複数のウェル(2)を有するマイクロプレート(1)が使用される反応ステップと、
前記ウェル(2)の底壁(4)が回転軸(24)に対して外方向に配置されるように前記マイクロプレート(1)を回転させる遠心分離ステップにおいて、凝集された試料物質が、ゲル物質またはビーズマトリックスなどの分離物質によって、凝集されていない試料物質から分離される遠心分離ステップと、
前記マイクロプレート(1)の上側の少なくとも1つの画像および前記マイクロプレート(1)の下側の少なくとも1つの画像を撮影する撮像ステップと、
前記試料ウェル(2)内の前記試料を、凝集反応に関して陽性または陰性であると決定する決定ステップであって、前記マイクロプレートの前記上側と前記下側の前記画像内の前記ウェルの色強度および/またはグレーレベルが比較される決定ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記遠心分離ステップにおいて、前記マイクロプレート(1)が水平軸の周りで回転される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遠心分離ステップの前にインキュベートするステップをさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離物質が、前記試薬を含む懸濁液中に混合される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記試薬が、前記分離物質の上に提供される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記試料が、血液細胞の試料を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試薬が、所定の抗体および/または抗原を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロプレートが、前記方法の最初に、空のウェルを含み、前記反応ステップの前に、前記ウェルの少なくとも幾つかが、前記分離物質、前記試薬、および前記試料物質を充填される請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
遠心分離機(14)と、反応ウェル(2)の上側を検出するためのカメラ(44)と、前記反応ウェルの下側を検出するためのカメラ(45)と、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を実施するための制御ユニットとを備える試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集反応の結果を決定するための方法、および凝集反応の生成物を決定するためのマイクロプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
血液型判定、抗原もしくは抗体試験、または他の関連の免疫血液的用途もしくは使用のために、ゲルカードまたはビードカセットなどの試験要素を利用することが知られている。これらの試験要素は、一般に平坦な基材を含み、基材は、複数の光学的に透明であり垂直に配置されるカラムまたは反応ウェルを支持する。各反応ウェルは、抗原もしくは抗体を含む懸濁液中に混合された、またはそのような懸濁液と結合されたガラスビーズまたはゲル物質など、ある量の不活性物質を留めておく。使用時、患者試料が不活性物質の上で反応させられる。次いで、試料は
インキュベートされ、凝集反応を加速させるために遠心分離される。赤血球が集塊化し、不活性物質マトリックスによって濾過される。不活性物質は、濾過材として働く。通常、カードまたはカセットは、カラムまたは反応ウェルの列を備え、透明な材料からなる。ゲル物質またはビーズマトリックスの濾過機能により、集塊化された血液細胞と集塊化されていない血液細胞が互いに分離され、濾過材の上に留められるか、または濾過材を通過し、対応する反応ウェルの底部区域に達する。集塊化された血液細胞が集塊化されていない血液細胞から分離された反応ウェルの列は、カメラによってスキャンすることができ、カメラの視野方向は、カラムまたは反応ウェルの列の側面に向けられる。したがって、全ての反応ウェルを1つの写真で同時に検出することができる。
【0003】
米国特許第8,076,126号明細書は、そのような臨床試験装置に適した単一カラム試験要素を開示している。各試験要素は、不活性物質と、抗原もしくは抗体または担体結合抗原もしくは抗体とを含む懸濁液を含む単一の反応ウェルと、反応ウェルを覆うラップまたはシールとを備える。シールは、反応ウェルの内容物へのアクセスを可能にするために穿孔可能である。複数の試験要素を保持するフレームを備えるカートリッジが設けられ、試験要素は1列に配置される。
【0004】
国際公開第95/31731号公報は、血液型抗原および抗体の検出のための方法および装置を開示している。そこでは、免疫反応親和性クロマトグラフィ技法が、これらの抗原および抗体を検出するために採用される。この方法は、例えばタンパク質Aやタンパク質Gなどの免疫グロブリン結合配位子を有する複数の粒子を含む反応管に、試験対象の赤血球を加えることを含む。このステップに続いて、遠心分離および検出ステップが行われ、それにより管の内容物が側面から分析される。
【0005】
D. Harmening et al. “Modern Blood Banking and Transfusion Practices”, Fifth Edition, Chapter 15: “Alternative Technologies and Automation in Routine Blood Bank Testing”, 1 January 2005, MODERN BLOOD BANKING AND TRANSFUSION PRACTICES 5TH EDITION, F:A: DAVIS COMPANY, USA, PAGE(S) 293−302, ISBN: 0−8036−1248−6は、既知の方法を自動化する必要性および利益を論じる、通常の血液バンク試験における技術の論評である。
【0006】
米国特許出願公開第2012/0288887号明細書は、血液細胞凝集画像決定のためのさらなる方法、および対応する装置を開示している。この方法では、2次元アレイに配置される複数の反応ウェルを有するマイクロプレートが使用される。反応ウェルは、実質的に円錐形状を有する底壁を備える。底壁の内面は、同心円状に形成された複数の段を備える段状部分として形成される。反応ウェルで、凝集反応が行われ、凝集反応の結果に応じて、より多数またはより少数の段状部分が反応生成物で覆われる。反応生成物の直径は、カメラによって光学的に検出される。測定される直径に基づいて、凝集反応の結果を自動的に決定することができる。この方法は、凝集反応を加速させ、反応生成物を下方向へ円錐底壁に押し向けるための遠心分離ステップおよび傾斜ステップを備える。
【0007】
Ashraf Agaylan et al. “A highly sensitive particle agglutination assay for the detection of P53 autoantibodies in patients with lung cancer”, CANCER, vol. 110, No. 11 , 1 January 2007, pages 2502−2506, ISSN: 0008−543X, DOI: 10.1002/cncr.23057は、大きい体積の血清試料からのp53自己抗体、p53タンパク質、およびp53タンパク質−抗体複合体に関する、超常磁性粒子を使用する非常に高感度であり単純な粒子凝集免疫学的検定を開示している。
【0008】
欧州特許出願公開第0797097号は、凝集によって試料液体中の検体を検出するための方法に言及しており、そこでは、試料液体が、凝集された試薬と接触させられ、検体と凝集された試薬との反応が決定される。さらに、上記の方法を行うための反応容器および試薬が開示されている。分離のために、規定の直径を有するチャネルを備えるコンパクトなマトリックスが採用される。
【0009】
欧州特許出願第1450159号は、凝集検定、および特にこれらの検定を実施するための装置に関する。そこでは、この装置は、凝集物を分離するために分離区域を備える。この分離区域は、ヘッド状の粒子またはゲルではなく、基材に固定された要素を使用する([0028]を参照されたい)。さらに、欧州特許出願公開第1450159号は、より高い速度及び精度で凝集検定を実施することを可能にする自動システムを開示している。
【0010】
国際公開第2009/120516号公報は、支持部材と、試験物質を含む少なくとも1つの試験カラムと、少なくとも1つの試験要素の上部を覆うラップとを含む免疫診断試験に言及している。国際公開第2009/120516号公報で採用される管は、カード内に配置される。
【0011】
米国特許出願公開第2004/002415号明細書は、生物学的物質を含む液体を自動的に遠心分離させるための自動遠心分離機システムに関する(要約書を参照されたい)。
【0012】
欧州特許出願公開第2124054号は、遠心分離サイクル中の凝集評価を事前に提供するための少なくとも1つのイメージャーを有する免疫診断試験装置を開示している(発明の名称を参照されたい)。
【0013】
本発明の目的は、自動で実行することができ、信頼性が高く、高いスループットを提供する凝集反応の結果を決定するための方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、高い信頼性と高いスループットを有する凝集反応の結果を決定するための方法を実施することを可能にするマイクロプレートを提供することである。
【0015】
本発明の目的は、独立請求項で定義される方法およびマイクロプレートによって解決される。本発明の有利な実施形態は、対応する従属請求項で定義される。
【0016】
凝集反応の結果を決定するための方法が、
試料をウェル内の試薬と反応させる反応ステップであって、2次元アレイに配置された複数のウェルを有するマイクロプレートが使用される反応ステップと、
ウェルの底壁が回転軸に対して外方向に配置されるようにマイクロプレートを回転させる遠心分離ステップを含み、遠心分離ステップにおいて、凝集された試料物質が、ゲル物質またはビーズマトリックスなどの分離物質によって、凝集されていない試料物質から分離される遠心分離ステップと、
マイクロプレートの上側の少なくとも1つの画像およびマイクロプレートの下側の少なくとも1つの画像を撮影する撮像ステップと、
上記試料ウェル内の試料を、凝集反応に関して陽性または陰性であると決定する決定ステップであって、マイクロプレートの上側と下側の画像内の上記ウェルの色強度および/またはグレーレベルが比較される決定ステップと
を含む。
【0017】
この方法によって、ウェルの上側と下側での特定のウェルの色強度および/またはグレーレベルの差が決定される。そのような差は、高精度で検出することができる。背景光などの妨害条件は、通常、ウェルの上側と下側のどちらの写真にも同じ影響を有し、したがって、対応する反応ウェルの上側と下側の色強度および/またはグレーレベルを比較することによってそれらの妨害条件はなくされる。これは、この方法を非常にしっかりとした信頼性の高いものにする。この方法は、人が介入することなく、自動的に数千または数百万の試料を試験するための産業上の用途に適している。
【0018】
さらに、2次元アレイの提供は、複数の凝集反応、および複数の凝集反応の決定を同時に実施することを可能にする。下側と上側からのウェルの検出により、例えば米国特許第8,076,126号明細書から知られているように反応ウェルの1次元配置のみを使用する必要はない。
【0019】
好ましくは、マイクロプレートは、遠心分離ステップにおいて水平軸の周りで回転される。これは、自動システムへの遠心分離ステップの統合を容易にする。水平回転軸を有する試料搬送型の遠心分離機は、国際公開第2013/117606号公報および欧州特許出願第13179437.2号に記載されている。欧州特許出願第13179437.2号はまだ公開されていない。国際公開第2013/117606号公報および欧州特許出願第13179437.2号は、参照により本明細書に援用する。
【0020】
好ましい実施形態によれば、凝集反応を加速させるための遠心分離ステップの前に
インキュベートするステップを行うことができる。
【0021】
ゲル物質またはビーズマトリックスなど分離物質によって、遠心分離ステップにおいて、反応生成物、すなわち凝集されたプローブ試料部分が、反応抽出物、すなわち凝集されていないプローブ試料部分から分離される。ビーズマトリックスは、濾過材として働き、これは、凝集された試料部分、特に集塊化された血液細胞をビーズマトリックスの上に留め、凝集されていない試料部分は、ビーズマトリックスを通過し、対応するウェルの底部で収集される。ゲルマトリックスを使用して、遠心分離ステップ中に、凝集されていない試料部分がゲルマトリックスを通過して反応ウェルの底部に至ることによって、凝集されていない試料部分が凝集された試料部分から分離され、より大きな凝集された試料部分は、ゲルマトリックスの上側またはゲルマトリックス内に留められる。
【0022】
試薬は、分離物質の上に提供することができ、または分離物質は、試薬を含む懸濁液中に混合することができる。試薬は、所定の試料と反応する抗体および/または抗原を含むことができる。ゲルマトリックスが試薬と混合される場合、ゲルマトリックス内で凝集反応が生じ、凝集された生成物は、反応が生じるゲルマトリックス内に留められる。
【0023】
抗原/抗体反応が見えるようにするために基材が必要とされる場合、ゲル中に基材も含むことができる。基材は、底部および上部位置にのみ配置することもできる。
【0024】
凝集反応の生成物を決定するためのマイクロプレートが、2次元アレイに配置される複数のウェルを備え、上記ウェルの少なくとも1つが分離区域を備え、分離区域が、ゲルまたはビーズマトリックスなどの分離物質を含み、分離区域が、下に向かって先細りにされた少なくとも1つの円錐部分を備え、それにより、分離物質を通過する試料物質が集中される。
【0025】
分離物質を通過する試料物質の濃度は、ウェルの下側の写真での色強度またはグレーレベルを高める。なぜなら、この試料物質が反応ウェルの中央に集中されるからである。これは、自動光学分析を容易にする。また、反応ウェルの上側と下側の色強度またはグレーレベルを比較するのを容易にするので、試験の信頼性を改良する。
【0026】
反応ウェルは、好ましくはウェルの上端部に充填区域を備え、充填区域の断面領域は、分離区域の断面領域よりも大きい。
【0027】
マイクロプレートは、好ましくは、少なくとも96個のウェルを備える。そのようなマイクロプレートは、少なくとも300個、特に384個、または少なくとも1000個、特に1536個のウェルを備えることができる。
【0028】
反応ウェルの内部高さは、好ましくは、5mm〜25mm、特に10mm〜20mmまたは10mm〜15mmの範囲内である。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、試験装置は、遠心分離機と、反応ウェルの上側を検出するためのカメラと、反応ウェルの下側を検出するためのさらなるカメラとを備える。この試験装置は、上述したような方法を実施するための制御ユニットを備える。
【0030】
好ましくは、試験装置は、遠心分離機内にマイクロプレートを水平に装填するため、および遠心分離機からマイクロプレートを水平に取り出すための装填メカニズムを備える。マイクロプレートの上面と下面を検出するために、マイクロプレートの装填経路に沿ってラインカメラを提供することができる。ラインカメラは、マイクロプレートの移動方向に対して横方向に延びる。
【0031】
試験装置は、好ましくは、ゲル物質などの分離物質を反応ウェルに自動的に充填するためのピペット手段を備える。これは、必要とされるマイクロプレートの反応ウェルのみを使用することを可能にする。他の反応ウェルは、空のままにすることができる。したがって、実際に使用される反応ウェルのみに分離物質および試薬が装填されるので、複数の反応ウェルを有するマイクロプレートの使用は、低コストで高いスループットを実現する。
【0032】
本発明を、添付図面に関連付けて以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1a】本発明によるマイクロプレートの一実施形態の上面図である。
【
図1b】
図1によるマイクロプレートの側面図である。
【
図1c】
図1によるマイクロプレートの側面図である。
【
図2】内縁部が破線で示される、
図1aによるマイクロプレートの1つの反応ウェルの側面図である。
【
図3】
図1aのマイクロプレートの1つの反応ウェルの斜視図である。
【
図4a】凝集反応を実施した後の試料を含む反応ウェルと、ウェルの上側からの写真(ウェルの上方)および下側からの写真(ウェルの下方)とをそれぞれ構成している図である。
【
図4b】凝集反応を実施した後の試料を含む反応ウェルと、ウェルの上側からの写真(ウェルの上方)および下側からの写真(ウェルの下方)とをそれぞれ構成している図である。
【
図4c】凝集反応を実施した後の試料を含む反応ウェルと、ウェルの上側からの写真(ウェルの上方)および下側からの写真(ウェルの下方)とをそれぞれ構成している図である。
【
図4d】凝集反応を実施した後の試料を含む反応ウェルと、ウェルの上側からの写真(ウェルの上方)および下側からの写真(ウェルの下方)とをそれぞれ構成している図である。
【
図4e】凝集反応を実施した後の試料を含む反応ウェルと、ウェルの上側からの写真(ウェルの上方)および下側からの写真(ウェルの下方)とをそれぞれ構成している図である。
【
図4f】凝集反応を実施した後の試料を含む反応ウェルと、ウェルの上側からの写真(ウェルの上方)および下側からの写真(ウェルの下方)とをそれぞれ構成している図である。
【
図5】ハウジングを省いた、凝集反応の結果を決定するための方法を実施するための装置をある視点で示す図である。
【
図6】ハウジングを省いた、凝集反応の結果を決定するための方法を実施するための装置をある視点で示す図である。
【
図7】ハウジングを省いた、凝集反応の結果を決定するための方法を実施するための装置をある視点で示す図である。
【
図8】ハウジングを省いた、凝集反応の結果を決定するための方法を実施するための装置をある視点で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1a〜1c乃至
図3は、本発明によるマイクロプレート1の一実施形態を示す。マイクロプレートは、16×24ウェルの2次元アレイに配置された384個の反応ウェル2を備える。
【0035】
マイクロプレート1は、ポリカーボネートなど透明な不活性のプラスチック材料から形成される。
【0036】
各ウェル2(
図2、3)は同一である。各反応ウェル2は、その上端部に開口3を有し、その底端部に底壁4を有する。所期の使用時、マイクロプレートは、開口が上に向けられ、底壁が下に向けられた状態で配置される。したがって、以下の説明では、用語「上に」は、開口3への向きとして使用され、用語「下に」は、底壁4への向きとして使用される。
【0037】
反応ウェル2は、上端部に充填区域5を備える。充填区域5は、正方形状の断面領域を有する。当然、円や矩形のような他の断面形状も可能である。しかし、単位面積当たりに特定の密度の反応ウェル2を有する構成に関して最大の断面積を与えるので、正方形状が好ましい。充填区域5の断面積が大きければ大きいほど、反応ウェル2に充填しやすくなる。
【0038】
充填区域5の下に移行区域6が設けられ、移行区域6は、充填区域5を分離区域7とつなぐ。分離区域7は、充填区域5よりも小さい断面領域を有し、したがって、移行区域6は、下に向かって先細りにされて、充填区域のより大きい断面領域から分離区域7のより小さい断面領域への移行を行う。
【0039】
分離区域7は、中空円筒体の形態での上側部分8を備える。この実施形態では、上側部分8は、正方形状の断面領域を有する。
【0040】
分離区域7の下側部分9は、下に向かって先細りにされた円錐部分として形成される。
【0041】
円錐部分9の下端部は、収集区域10に通じている。収集区域10は、中空円筒体の形態で形成される。この中空円筒体は、この実施形態では、円形の断面領域を有する。
【0042】
収集区域10の断面積は、分離区域7の上側部分8の断面積よりも実質的に小さい。下側部分または円錐部分9は、分離区域7の上側部分8と収集区域10との断面積の比を少なくとも2:1、好ましくは3:1、および特に好ましくは4:1に減少する。
【0043】
分離区域の主要部分に、ゲル物質またはビーズマトリックスなどの分離物質が充填される。そのような分離物質は、凝集された試料部分を凝集されていない試料部分から分離するために使用される。試料物質の凝集された部分および凝集されていない部分が、分離物質の上側に設けられ、反応ウェル2の上端部から底端部に向けられた遠心力を受ける場合、凝集されていない試料部分のみが、ゲル物質、またはビーズマトリックスなどの濾過材を通過する。したがって、凝集された試料部分を凝集されていない試料部分から分離し、凝集されていない試料部分を収集区域内に収集することが可能である。
【0044】
分離区域7の上側部分8から収集区域10への断面積の減少により、試料物質の通過部分は、反応ウェルの中央に集中される。したがって、試料物質の通過部分は、収集区域10の小さな体積内に集中される。その結果、収集区域10は、分離物質を通過した高い濃度の試料物質を含む。試料物質のそのような高い濃度は、光学的検出に有利である。
【0045】
この実施形態では、充填区域の高さは4.5mmであり、移行区域6の高さは3mmであり、分離区域7の上側部分8の高さは5mmであり、分離区域7の円錐部分9の高さは1mmであり、収集区域10の高さは1mmである。
【0046】
充填区域5の外縁部の長さは4.5mmである。反応ウェルの壁厚は、約0.7mmである。
【0047】
分離区域7の上側部分8の水平内縁部の長さは約2mmであり、したがって分離区域7の上側部分8の断面積は、約4mm
2である。収集区域10の断面領域の直径は1mm以下であり、したがって断面積は1mm
2よりも小さい。
【0048】
底壁4の内側から反応ウェル2の上端部に延びる反応ウェル2の合計の内部高さは、14.5mmである。
【0049】
上で与えた数値は、反応ウェル2の具体的な一例を表す。当然、寸法を変えることも可能である。マイクロプレート1がより少数の反応ウェル2を備える場合、同じサイズを有するマイクロプレートに関して、各反応ウェル2の断面積を大きくすることができる。
【0050】
使用される分離物質の種類に応じて、分離区域7の高さ寸法を変えることができる。分離物質7の主要部分に、分離物質が充填される。また、移行区域6、およびさらに充填区域5の下側部分に分離物質を充填することも可能である。
【0051】
図1bおよび1cで見ることができるように、充填区域5を定める壁はそれぞれ、これらの壁の各側にある2つの反応ウェル2の一部分となる。
【0052】
マイクロプレート1は、反応ウェル2のアレイを取り囲むフレーム11を備える。フレーム11は、垂直な側壁12によって支持される。
【0053】
この実施形態では、複数の反応ウェル2が、1つのマイクロプレート1に一体に形成される。これが好ましいが、ラック内に配置することができる単一の反応ウェルを使用することも可能である。ラックは、反応ウェルを保持するためのソケットを備え、ソケットは、好ましくは2次元アレイに配置される。
【0054】
図5は、凝集反応の結果を決定するための試験装置13を示す。
【0055】
遠心分離機14は、前側プラットフォーム15と、遠心区域16と、駆動区域17(
図6、7、8)とを備える。
【0056】
前側プラットフォーム15は、上面図で、標準的なマイクロプレートよりもわずかに大きい矩形状を有する。リム18は、遠心区域16に隣接する側縁部を除き、前側プラットフォーム15の全ての側縁部に設けられる。
【0057】
遠心区域16は、回転子19を備える。回転子19は、水平シャフト20(
図7)上に取り付けられる。回転子19は、1つのマイクロプレート1を受け取るためのレセプタクル区域を備える。レセプタクル区域は、プレートトレイ21として形成される。プレートトレイ21は、矩形の底面壁22と、2つのU字レール23とによって定められる。U字レール23は、それらの開いた側が向かい合うように配置される。プレートトレイの最低位置では、U字レール23は、底面壁22よりも下である。
図6では、プレートトレイ21は、プレートトレイ21内に保持されるマイクロプレート2およびマイクロプレートキャリア26が見えるように一部切り欠かれている。
【0058】
回転軸24に対するプレートトレイ21の距離は、好ましくは、反応ウェルユニットの側方への延び広がりよりも大きく、特に、反応ウェルユニットの側方への延び広がりの少なくとも1.5倍または2倍である。
【0059】
レセプタクル区域またはプレートトレイ21と直径方向で向かい合わせに、釣合い錘40が、脚部41によってフランジ39に固定される。釣合い錘40の代わりにさらなるプレートトレイが設けられてもよく、このプレートトレイは、マイクロプレート、またはマイクロプレートを有するマイクロプレートキャリアを受け取るように形成されて、プレートトレイ21で使用されるマイクロプレートの種類に対する調節可能な釣合い錘を形成する。
【0060】
前側壁28にある開口29は、プレートトレイ21の最低位置の高さに形成され、この位置は、回転子19の装填位置である。前側プラットフォーム15は、装填位置でプレートトレイ21の底面壁22と同じ高さに設けられ、それにより、マイクロプレート、またはマイクロプレートキャリア上のマイクロプレートは、前側プラットフォーム15から底面壁22上に、およびその逆に滑り動くことができ、マイクロプレート1の反応ウェル2の開口は、回転子19を保持するシャフト20に向けられる。
【0061】
この実施形態では、底面壁22と、U字レール23と、底面壁22間の区域とは、アルミニウムからなる単一部片から形成される。
【0062】
回転子19の前側で、プレートトレイ21が開いており、それによりマイクロプレートがプレートトレイ21内に滑り込むことができる。回転子19の後側には、ストッパ25が設けられている。ストッパ25は、好ましくは磁性要素を備える。
【0063】
慣性モーメントを最小限にするために、底面壁22間の区域はできる限りくり抜かれて、底面壁22に穴が設けられる。
【0064】
この実施形態では、プレートトレイ21は、マイクロプレートキャリア26と共にマイクロプレート1を受け取るように設計される。マイクロプレートキャリア26は、側縁部にリム42を有する矩形のフレームであり、リムの内面は、小さな遊びを有して、マイクロプレートキャリア26上でのマイクロプレートの位置を定める。リム42の上面は内方向に傾斜され、それにより、リムによって定められる区域内にマイクロプレートが滑り込む。
【0065】
マイクロプレートキャリア26は、1つの側縁部に、磁性材料、特に強磁性材料からなる結合要素43を備える。この結合要素27は、回転子19にあるストッパ25と協働することができる。
【0066】
前側壁28にある開口29は、矩形のスリッドの形態を有する。開口29を閉じるための自動ドアが設けられる。開口29は、前側プラットフォーム15の高さに配置される。装填位置で、回転子19は、その底面壁22を水平にして配置され、プレートトレイ21の底面壁は、前側プラットフォーム15と同じ高さに配置され、それにより、マイクロプレートキャリア26およびマイクロプレート1は、前側プラットフォーム15から下側プレートトレイ21内に、およびその逆に水平方向に滑り動くことができる。
【0067】
開口の上縁部には、マイクロプレート1の反応ウェル2内に試薬を分注するためのピペットノズルが設けられている。
【0068】
前側プラットフォーム15と回転子19との間の間隙に、上側ラインカメラ44が、その視野方向をマイクロプレート1の上面に向けて下向きにして、マイクロプレートの輸送経路の上方に配置される。下側ラインカメラ45が、その視野方向をマイクロプレート1(
図5)の底面に向けて上向きにして、マイクロプレートの輸送経路の下方に配置される。マイクロプレート1が開口29を通して移動されるとき、マイクロプレート1の上側と下側の全体の画像をラインカメラ44、45によって検出することができる。
【0069】
駆動区域17は、シャフト20および回転子19を回転させるためのモータ(図示せず)を備える。モータは、回転速度を制御するための制御ユニットに接続される。この遠心分離機は、マイクロプレート1に遠心力を作用させるために設計されている。マイクロプレートとシャフト20または回転軸24との間の距離が大きいので、異なる反応ウェル2内の流体にほぼ同じ遠心加速度が及ぼされる。したがって、流体が中央の反応ウェル内にあるか外側の反応ウェル内にあるかに関係なく、同じ遠心分離が実現される。
【0070】
回転子の速度および加速度を制御するために、制御ユニットが設けられている。回転子の速度は、100RPM〜3000RPMの範囲内である。回転子の加速度および減速度は、100〜1200RPM/sの範囲内にある。回転子を始動させるとき、約180°の回転後に少なくとも1gの遠心加速度が加えられるように回転子が加速されるものとし、それにより、反応ウェルの開口が下方向に向いている状態でも流体が反応ウェルから落ちない。ディープウェル反応ウェルを有するマイクロプレートは、できるだけ速く加速させることができる。しかし、反応ウェルとして小さいウェルを有するマイクロプレートの加速は、加速による1つの反応ウェルから隣接する反応ウェルへの流体の跳ね飛びによって汚染を引き起こすことがある。そのような跳ね飛び汚染の危険は、反応ウェルの充填量および反応ウェルの形態に依存する。500RPM/s〜1200RPM/sまでの加速度では、跳ね飛びによる汚染が生じないことが判明している。
【0071】
駆動区域17は、マイクロプレート1を有する遠心分離機14を装填および装填解除するための装填メカニズム30も備える。
【0072】
装填メカニズム30は、マイクロプレート1、またはマイクロプレート1(
図5)を有するマイクロプレートキャリア26の伸長および収縮のための可撓性の細長いビーム31を備える。可撓性の細長いビーム31は、その長手方向への延び広がりに対して横方向でわずかに湾曲された金属シートのストライプからなる。したがって、金属シートは、直線状に延ばされている場合には特定の剛性を提供し、他方、長手方向での延び広がりに対して横方向では軸周りで湾曲させることができる。そのような湾曲された金属シートストライプは、金属測定テープからよく知られている。
【0073】
この実施形態では、ビーム31の一端は、垂直に駆動区域17の内壁32に固定され、ビームは、内壁32から後方に延びている。ビーム31はU字ターンによって湾曲され、ビームの自由端33は前方に向けられ、ビームは内壁32のスリッドを通って延びている。したがって、ビームは、内壁32に固定された上側ストランド34と、内壁32のスリッドを通って延びる下側ストランド35とを備える。内壁32を通って延びており、自由端33を備えるストランド35は、2つのホイール(図示せず)の間にクランプされ、2つのホイールの一方がステッパモータ37によって駆動される。2つのホイールの一方のみが図面に示されている。ビーム31の自由端33には、磁性要素38が設けられる。ビーム31は、ステッパモータ37によって作動させることができ、それにより、磁性要素38を有する自由端33は、遠心区域16を通して、および前側壁28にある開口29を通して伸長または駆動される。したがって、ビーム31の自由端33は、最大伸長位置で前側プラットフォーム15の領域に達する。最大収縮位置では、ビーム31の自由端33は、回転子19の後方に、特に遠心区域16の外に配置され、それにより回転子19を自由に回転させることができる。
【0074】
ビームの磁性要素38がマイクロプレートキャリア26の結合要素27を通って結合するまでビーム31を単に伸長させることによって、装填メカニズム30は、前側プラットフォーム15上に配置されたマイクロプレートキャリア26に結合させることができる。ビーム31を収縮させることによって、マイクロプレートキャリア26は、回転子19のプレートトレイ21の1つの中に引き入れられる。マイクロプレートキャリア26がストッパ25に当接するとき、ビーム31の磁性要素38とマイクロプレートキャリア26の結合要素27との結合は、ビームをさらに収縮させることによって解放され、それと同時に、マイクロプレートキャリア26の結合要素27は、ストッパ25の磁性要素に結合され、それにより回転子19内に所定位置で固定される。
【0075】
この装填メカニズム30は、自動労働ロボットにおけるマイクロプレートを輸送するための任意の輸送システムに遠心分離機14を結合することを可能にする。労働ロボットは、単に、前側プラットフォーム15に位置されたマイクロプレートキャリア26上にマイクロプレート1を置かなければならない。次いで、装填メカニズム30は、回転子19を装填および装填解除することができる。また、マイクロプレートを輸送するための輸送ベルトに直接隣接する前側プレートを設けずに遠心分離機14を配置することも可能であり、このとき、装填メカニズム30によってマイクロプレート1を輸送ベルトから引き抜くことができ、かつ再び輸送ベルト上に配置することができる。この実施形態では、結合要素27を有するマイクロプレートキャリア26が使用される。そのような結合要素27をマイクロプレート1に設けることも可能であり、それによりマイクロプレートキャリアは必要なくなる。
【0076】
さらなる利点は、装填メカニズム30が遠心区域16の後側に配置されることであり、それにより、中間デバイスを用いずに遠心分離機14を既存の実験室ロボットに結合させることができる。これは、既存の実験室ロボットへの遠心分離機の一体化を容易にする。
【0077】
以下、1つまたは複数の凝集反応の結果を決定するための、試験装置13における上記のマイクロプレート1の使用を述べる。
【0078】
この方法は、好ましくは空のマイクロプレート1から始まる。反応ウェル2に、ピペットデバイスによってゲル物質が充填される。実施すべき各凝集反応ごとに、個々の反応ウェル2にゲル物質が充填される。凝集反応の数が、1つのマイクロプレートに提供される反応ウェル2の数よりも小さい場合、必要とされない反応ウェルにはゲル物質が充填されない。
【0079】
それぞれの反応ウェルにそれぞれ特定量のゲル物質を充填した後、マイクロプレートは、ゲル物質を反応ウェルの下側部分に押し向けるように構成され、それにより、ゲル物質は、気泡を含むことなく、収集区域および分離区域7の主要部分を充填する。
【0080】
遠心分離ステップにより、小さい直径を有する反応ウェルが使用される場合でさえ、現場で反応ウェルにゲル物質を充填することが可能である。分離物質を予め装填された反応ウェルは必要ない。当然、予め装填された反応ウェルを使用することも可能である。
【0081】
分離物質を含む反応ウェルには、特定の試薬を含有する懸濁液が装填される。異なる反応ウェルに異なる試薬を装填することもできる。試薬は、典型的には、抗原もしくは抗体、または既知の血液型の血液細胞を含む。
【0082】
試験対象の特定量の試料が、分離物質および試薬を含む反応ウェル内に分注される。好ましくは、同じ試料の試料物質が、異なる試薬を含む反応ウェルに分配され、異なる試料の物質は、異なるグループの反応ウェルに分配することができる。したがって、複数の異なる試料を同時に試験することが可能であり、各試料が複数の異なる試薬に関して試験される。
【0083】
試料、試薬、および分離物質を装填された反応ウェルを含むマイクロプレートが
インキュベートされ、ここで、所定の期間にわたって特定の温度にされる。この
インキュベートするステップは、別個の
インキュベータ内で実施することができる。任意選択で、遠心分離機は加熱手段を備え、それにより、マイクロプレートを遠心分離機内で
インキュベートすることができる。その後、マイクロプレートに遠心力を作用させ、凝集されていない試料部分が、反応ウェル2の底壁4に向かう方向にゲル物質を通過する。凝集されていない試料部分は、反応ウェル2の収集区域10内に収集される。凝集反応の結果が凝集の生じた部分である場合、凝集された試料物質は、分離物質(
図4a)の上側に残る。弱い凝集反応または遅い凝集反応しか生じない場合、凝集された集塊体は小さく、ゲル物質内部で止められ、反応ウェル2の底壁4または収集区域10に達しない。凝集されたゲル物質は、
図4bおよび4cで見られるように、ゲル物質中に留められ、その中で分散される。
図4d〜4fで見られるように、凝集反応が弱ければ弱いほど、凝集されていない試料部分の数が多くなり、より多くの試料部分が収集区域10に達する。
【0084】
遠心分離ステップ後、マイクロプレートは、遠心分離機から取り出され、ラインカメラによって反応ウェルの上側と下側から画像が撮影される。
【0085】
図4a〜4fはそれぞれ、それぞれの反応ウェル2の上方に上側の写真を示し、それぞれの反応ウェルの下方に下側の写真を示す。これら2つの写真のグレーレベルが自動的に比較され、グレーレベルの差が計算される。結果の5つのクラス、すなわち、0、1+、2+、3+、および4+が存在する。差の各レベルが特定のクラスに割り当てられ、凝集された試料物質しか存在しない場合、反応ウェルの上側は暗く、反応ウェルの下側は明るく、対応するクラスは4+であり、凝集反応が非常に弱い場合、全てまたはほぼ全ての試料部分が収集区域10に達し、反応ウェルの下側は暗く、上側は明るく(
図4、4f)、クラスは0(=凝集反応なし)である。
【0086】
試料物質が赤血球を含む場合、好ましくはカラー画像が撮影され、上側と下側の画像の赤色の色強度が比較される。
【0087】
この実施形態では、反応ウェル2の開口3の断面領域は正方形状であり、収集区域10は円の断面形状を有する。したがって、上側から撮影された写真は正方形を示し、下側から撮影された写真は円を示す。検出されるパターンの形状(円または正方形)によって、写真が反応ウェルの上側からのものか下側からのものかを判定することができる。これは、写真が手動で制御される場合に、下側と上側からの写真が互いに混同されないことを保証する。したがって、反応ウェル2の開口3と収集区域10との形状が異なることが好ましい。
【0088】
絶対色強度またはグレーレベルは、背景光、分離物質のタイプ、各反応ウェル内に分注される試料物質など複数の状況に依存する。反応ウェルの上側と下側の画像を比較することによって、これらの影響がなくされる。なぜなら、凝集反応が存在するか、それとも凝集反応が存在しないかの決定は、2つの画像の色強度および/またはグレーレベルの差のみに基づくからである。これは、試験を非常に信頼性が高く安定したものにする。さらに、様々な分離物質および様々な試薬に関して試験を較正することが容易であり、したがって、全体的なプロセスが非常に融通性のあるものとなる。このシステムは、高いスループットで、かつ低コストで大量の試料を試験するのに特に適している。
【0089】
上述した実施形態では、反応ウェルの上側と下側の2つの画像の色強度および/またはグレーレベルが比較される。さらに、画像を所定の試料画像と比較することもできる。
【符号の説明】
【0090】
1 マイクロプレート
2 反応ウェル
3 開口
4 底壁
5 充填区域
6 移行区域
7 分離区域
8 上側部分
9 下側部分(円錐部分)
10 収集区域
11 フレーム
12 側壁
13 試験装置
14 遠心分離機
15 前側プラットフォーム
16 遠心区域
17 駆動区域
18 リム
19 回転子
20 シャフト
21 プレートトレイ
22 底面壁
23 U字レール
24 回転軸
25 ストッパ
26 マイクロプレートキャリア
27 結合要素
28 前側壁
29 開口
30 装填メカニズム
31 可撓性の細長いビーム
32 内壁
33 自由端
34 上側ストランド
35 下側ストランド
36
37 ステッパモータ
38 磁性要素
39 フランジ
40 釣合い錘
41 脚部
42 リム
43 ピペットノズル
44 上側ラインカメラ
45 下側ラインカメラ