特許第6263260号(P6263260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263260求核剤感受性架橋性組成物のための脂肪族ジアミドから製造された添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263260
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】求核剤感受性架橋性組成物のための脂肪族ジアミドから製造された添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20180104BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20180104BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20180104BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180104BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C08L101/12
   C08K5/20
   C09D201/00
   C09D7/12
   C09J201/00
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-527410(P2016-527410)
(86)(22)【出願日】2014年10月21日
(65)【公表番号】特表2016-536400(P2016-536400A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】FR2014052669
(87)【国際公開番号】WO2015063389
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2016年6月20日
(31)【優先権主張番号】1360675
(32)【優先日】2013年10月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール,ミシェル・イグレク
(72)【発明者】
【氏名】フォーケ,ジェルマン
(72)【発明者】
【氏名】ルピネ,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ルロイ,バンサン
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−026723(JP,A)
【文献】 特開昭63−015876(JP,A)
【文献】 特開2010−242068(JP,A)
【文献】 特開2004−315806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C09D
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 92重量%から100重量%の1つ以上の脂肪酸ジアミドであって、該ジアミドは中和剤によってその場で処理され、1つ以上の脂肪酸ジアミド中の残留アミン含有率がmg KOH/gで表される残留アミン価で0.05未満まで低下したジアミド、
該中和剤は、1未満のpKaを有する強い無機酸または有機酸から選択され、
該ジアミドa)は、
−1モルの直鎖脂肪族C2からC6ジアミンと2モルの12−ヒドロキシステアリン酸とのジアミドである対称ジアミド、あるいは
−1モルの直鎖脂肪族C2からC6ジアミンと1モルのC5からC12モノカルボン酸および1モルの12−ヒドロキシステアリン酸とのジアミドである非対称ジアミドである、
含むことを特徴とする、脂肪酸ジアミド基づく組成物
【請求項2】
さらに、
b) 1重量%から8重量%の、60℃を超えるTgを有し、数平均分子量が5000未満である少なくとも1つの非晶質または半結晶性オリゴマー、ここで、当該オリゴマーb)は、無水マレイン酸またはアクリル酸またはメタクリル酸と少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとのコポリマーである、
を含み、但し、a)+b)の重量%の合計はジアミド系組成物の100重量%に等しく、a)およびb)は溶融状態において混合物として混和性であり、オリゴマーb)はいかなる求核基または構造も有さないことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
a) 92重量%から99重量%の1つ以上の前記脂肪酸ジアミド、
b) 1重量%から8重量%の前記オリゴマー
を含むことを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項4】
中和剤は、残留アミンと反応する少なくとも1つの官能基を含み、中和されたジアミドは最後には請求項1に従って規定されたアミン価を有し、少なくとも130℃の沸点を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
中和剤は残留アミン価に対して少なくとも化学量論量で存在し、中和生成物はそのように処理されたジアミド中にその場で残ることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
なくとも次の段階
i) mg KOH/gで表されるアミン価が0.05未満であるように、中和剤による溶融状態のジアミドa)の中和のための処理、およ
ii) 段階i)の混合物の冷却、および15μm未満の体積平均サイズを得るための、機械的粉砕またはエアジェットによる微粉化
を含むことを特徴とする請求項に記載の組成物の調製方法。
【請求項7】
なくとも次の段階
i) 溶融状態のジアミドa)と溶融状態のオリゴマーb)の均質混合、
ii) mg KOH/gで表されるジアミドa)アミン価が0.05未満であるように、中和剤による溶融状態の、段階i)の混合物の中和のための処理、
iii) このように処理された段階ii)の混合物の冷却、および15μm未満の体積平均サイズを得るための、機械的粉砕またはエアジェットによる微粉化
を含むことを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に従って定義した少なくとも1つのジアミド系組成物を含み、および該組成物の反応性成分の少なくとも1つが求核官能基の存在に対して敏感であり、当該反応性成分がポリイソシアネートであることを特徴とする架橋性組成物。
【請求項9】
成分または一成分組成物であることを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項10】
コーティングのための組成物またはコーティングの組成物、または気密材、マスチック、もしくは接着剤の組成物、または成形用組成物であることを特徴とする請求項またはに記載の組成物。
【請求項11】
求核性官能基に敏感な少なくとも1つの反応性成分を含む架橋性組成物中でのレオロジー添加剤としての、請求項1からのいずれか一項に従って定義された組成物の使用。
【請求項12】
請求項11に従って定義された使用から生じることを特徴とする架橋された完成品。
【請求項13】
塗料、インクまたは接着剤のフィルムである塗膜であることを特徴とする請求項12に記載された完成品。
【請求項14】
気密材、マスチックまたは接着性シールであることを特徴とする請求項12に記載された完成品。
【請求項15】
成形部品に関することを特徴とする請求項12に記載された完成品。
【請求項16】
a) 92重量%から100重量%の1つ以上の脂肪酸ジアミドであって、該ジアミドは中和剤によってその場で処理され、1つ以上の脂肪酸ジアミド中の残留アミン含有率がmg KOH/gで表される残留アミン価で0.05未満まで低下したジアミド、
該中和剤は、1未満のpKaを有する強い無機酸または有機酸から選択され、
該ジアミドa)は、
−1モルの直鎖脂肪族C2からC6ジアミンと2モルの12−ヒドロキシステアリン酸とのジアミドである対称ジアミド、あるいは
−1モルの直鎖脂肪族C2からC6ジアミンと1モルのC5からC12モノカルボン酸および1モルの12−ヒドロキシステアリン酸とのジアミドである非対称ジアミドであり、
b) 1重量%から8重量%の、60℃を超えるTgを有し、数平均分子量が5000未満である少なくとも1つの非晶質または半結晶性オリゴマー、ここで、当該オリゴマーb)は、無水マレイン酸またはアクリル酸またはメタクリル酸と少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとのコポリマーである、
からなることを特徴とする脂肪酸ジアミドに基づく組成物であって、但し、a)+b)の重量%の合計はジアミド系組成物の100重量%に等しく、オリゴマーb)はいかなる求核基または構造も有さない組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性組成物、特に、「一成分」又は1K組成物、より具体的には架橋性ポリウレタン組成物のように、求核剤に対し敏感な成分を含む組成物において、レオロジー添加剤として適した脂肪酸ジアミドに基づく特定の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マスチックおよび接着剤組成物に使用される脂肪酸ジアミド、特に12−ヒドロキシステアリン酸に基づくジアミドであるレオロジー添加剤が既に存在する。これらのジアミドは、5から20μmの範囲の平均粒径を有する微粉化粉末の形態で提供されるが、これは有機ゲル化剤であり、即ち、比較的低い重量濃度ですら、全ての種類の有機溶媒をゲル化することができる小さい有機分子である。それらの媒体では、それらは多くの場合繊維として配置され、そのことがそれらの有機ゲル化およびレオロジー調整効果を説明する。有機媒体中での粉末の形態から繊維の形態への変化は活性化として知られている。この活性化は、使用に適した温度で高せん断することにより得られる。
【0003】
これらのジアミドによって、「MS−ポリマー(R)」(アルコキシル化シラン末端または封鎖シラン末端によるポリウレタン/シラン技術に基づくハイブリッドポリマーである)のマスチックで良好な性能を有することが可能になるが、それらは時期尚早の架橋、および組成物を不安定にする使用における制限されたポットライフによって、これらのマスチックの安定性についての問題を生じるおそれがある場合には、それらはポリウレタン組成物、特に、略記「1K−PU」に象徴される一成分ポリウレタン組成物の技術にはあまり適していない。
【0004】
処理シリカおよびポリ尿素等の添加剤が代替経路として存在する。
【0005】
しかし、シリカは、アミドまたはポリ尿素のような有機添加剤と比較して、大気中に放出された非常に微細な粉塵のためにその取り扱い中に健康および安全性についての問題、性能、再現性および沈降についての問題を提起する。多くの場合、ポリウレタン自体の考案者によって測定されるために開発されたポリ尿素である「有機」添加剤の中に知られた代替物が存在する。イソシアネートおよびアミンから作られたポリ尿素は、他方で、構造、性能ならびに性能および製造の再現性(再現性は、尿素結合の非常に凝集した構造の点で、溶解度、および製造または応用媒体との適合性の問題に関連している)の点で添加剤として制御することが困難であるという欠点を有する。このような尿素系レオロジー添加剤は、例えば、US6548593号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6548593号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、求核剤に敏感な配合物、特に1K−PUだけでなく、2K−PU、より具体的には1K−PUのようなポリウレタン中で低温で「活性化可能な」添加剤であって、効果的なレオロジー溶液を提供し、求核剤に敏感な配合物、特にポリウレタン、より具体的には1K−PUマスチック、または求核剤に敏感な他の組成物の安定性を保持することを可能にする添加剤を対象とする。従って、解決すべき主な技術的課題は、貯蔵中に前記敏感な配合物の安定性を保持することを可能にする手段を探すことである。その後、活性化処理に本質的に関連するレオロジー性能に関しては、この性能は、温度および最終応用媒体に応じて使用される可塑剤の選択に依存する。
【0008】
本発明は、より具体的には、組成物の安定性の低下または時期尚早のゲル化(ここでは不可逆的な架橋を意味する)を防止しつつ、従来技術に記載の欠点がない、求核剤に敏感な配合物の組成中で組成物を有機ゲル化剤、特にレオロジー添加剤として使用することを可能にするアミド添加剤を有する組成物を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の主題は、脂肪酸ジアミドに基づく組成物であって、以下を含む、特には以下からなる組成物である。
a) 92重量%から100重量%の1つ以上の脂肪酸ジアミドであって、前記ジアミドは中和剤によってその場で処理され、1つ以上の脂肪酸ジアミド中の残留アミン含有率がmg KOH/gで表される残留アミン価で0.5未満、好ましくは0.15未満、より好ましくは0.1未満、さらに好ましくは0.05未満まで低下したジアミド、
b) 場合により8重量%まで、好ましくは1重量%から8重量%の、60℃を超える、好ましくは70℃を超えるTgを有する少なくとも1つの非晶質または半結晶性オリゴマー、
但し、オリゴマーb)が存在する場合、a)+b)の重量%の合計はジアミド系組成物の100重量%に等しく、a)およびb)は特に溶融状態において混合物として混和性であり、オリゴマーb)はいかなる求核基または構造も有さない。
【0010】
代替形態によれば、組成物は以下を含み、特に以下からなる。
a) 92重量%から99重量%の1つ以上の前記脂肪酸ジアミド、
b) 1重量%から8重量%の前記オリゴマー。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記のアミン価は、1/2の体積比の、トルエン/n−ブタノール溶媒中の試薬としての0.1M HClを用いる電位差滴定により測定される。生成物は前記溶媒混合物に80℃で溶解することができる。
【0012】
本発明によれば、上述した「溶融状態」は、ジアミドが溶融状態にある温度で起こることを意味し、そのことはb)は、もし存在するなら同じ温度で溶融しなければならないことを意味する。用語「混和性」は、相分離することなく、溶融状態において均質で透明であることを意味する。
【0013】
TgはDSC測定によって決定され、10℃/分の加熱速度で2回目のパスでの変曲点の温度に相当する。
【0014】
より具体的には、前記ジアミド系組成物について、オリゴマーb)の数平均分子量Mnは10000未満、好ましくは5000未満である。前記重量Mnは、標準として用いられるポリスチレン当量として、THF中のGPCによって測定される。
【0015】
特に好ましい選択肢によれば、脂肪族ジアミドは、ジアミンとヒドロキシル化脂肪族一酸との反応生成物である。より具体的には、ヒドロキシル化脂肪酸は、12−ヒドロキシステアリン酸(12−HSA)、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸および14−ヒドロキシエイコサン酸の群の少なくとも1つのヒドロキシル化脂肪酸から選択され、好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸である。第1の代替形態によれば、ジアミドa)は対称であり、1モルの脂肪族CからCジアミンと2モルの、12−ヒドロキシステアリン酸(12−HSA)、9−および/または10−ヒドロキシステアリン酸または14−ヒドロキシエイコサン酸からのヒドロキシル化脂肪族一酸、好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸の反応生成物である。
【0016】
第1のより具体的な代替形態によれば、ジアミドa)は対称であり、1モルの直鎖脂肪族CからCジアミンと2モルの12−ヒドロキシステアリン酸(12−HSA)の反応生成物に相当する。
【0017】
適切なCからCジアミンとしては、以下、即ち、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンをより具体的に挙げることができる。
【0018】
別の代替形態によれば、ジアミドa)は少なくとも1つの不斉ジアミド、即ち、1モルの直鎖脂肪族CからCジアミンと1モルのCからC12モノカルボン酸および1モルの、12−ヒドロキシステアリン酸(12−HSA)、9−および/または10−ヒドロキシステアリン酸または14−ヒドロキシエイコサン酸からのヒドロキシル化脂肪族一酸、好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸との反応生成物を含む。
【0019】
この代替形態によれば、ジアミドa)はより具体的には、1モルの直鎖脂肪族CからCジアミンと1モルの12−ヒドロキシステアリン酸(12−HSA)および1モルのCからC12モノカルボン酸との反応生成物に相当する少なくとも1つの不斉ジアミドを含む。
【0020】
適切なCからC12モノカルボン酸としては、以下、即ち、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸またはドデカン酸(もしくはラウリン酸)をより具体的に挙げることができる。
【0021】
より具体的には、本発明によれば、中和剤は、中和されたジアミドが最後には上記で規定されたアミン価を有するように、残留(または遊離)アミンと反応する少なくとも1つの官能基を含む。好ましくは、中和剤は、少なくとも130℃、より好ましくは少なくとも150℃の沸点を有し、これは、特に溶融状態での、添加の容易さおよびジアミド中の残留アミンの中和の有効性のゆえである。より具体的には、中和剤は以下から選択することができる。
− 強い無機酸または有機酸、特に2未満(<2)、好ましくは1未満(<1)のpKa(Kaは酸性度定数である)を有する酸および/または
− モノカルボン酸のハロゲン化物、特にモノカルボン酸塩化物、
− 10未満の炭素原子数を有する炭素鎖を含むポリカルボン酸のハロゲン化物。
【0022】
強い無機酸または有機酸は、ブレンステッドまたはルイス酸であることができる。強い無機酸は、特にハロゲン化スルホニル、特に塩化スルホニル、例えば、塩化トシル(塩化4−トルエンスルホニル)であることができる。
【0023】
強い有機酸は、例えば、カルボキシルまたはスルホニルであってもよい酸部分を有する鎖中でハロゲン化された有機酸または有機酸無水物であることができる。このような場合、ハロゲンはClまたはFから選択することができる。適切な強い有機酸の例としては、トリクロロ酢酸またはトリフルオロ酢酸またはトリフルオロメタンスルホン酸(トリフリン酸としても知られる)が挙げられる。
【0024】
強い無機酸の好適な例としては、硫酸または塩化トシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
モノカルボン酸ハロゲン化物(ハロゲン化アシル)の例としては、塩化ベンゾイルまたは塩化ヘキサノイルが挙げられる。
【0026】
ポリカルボン酸ハロゲン化物の例としては、塩化グルタロイル、塩化アジポイル、塩化ピメロイル、塩化スベロイル、塩化セバコイルまたは塩化o−フタロイルが挙げられる。
【0027】
特に好ましくは、中和剤は残留アミン価、即ち中和前のジアミドa)のアミン価に対して少なくとも化学量論量で存在し、中和生成物はそのように処理されたジアミド中にその場で残る。
【0028】
オリゴマーb)は、存在する場合、特には、好ましくはカルボン酸官能基によって官能化されていてもよく、またはオリゴマーは官能化されていなくてもよい。オリゴマーb)は、ポリアミド、ポリエステル、無水マレイン酸またはアクリル酸またはメタクリル酸と少なくとも1つの他のコモノマーとの少なくとも1つのコポリマー、特にマレイン化オリゴエチレンからのコポリマー、ビニル芳香族モノマーのマレイン化樹脂、無水マレイン酸またはアクリル酸またはメタクリル酸と少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとのコポリマー、好ましくはスチレン/無水マレイン酸コポリマー、スチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー、脂環式モノマーに基づくマレイン化樹脂、マレイン化半結晶性ワックス、(石油)炭化水素のマレイン化樹脂、ロジンのマレイン化エステルをはじめとするロジンのマレイン化樹脂から選択することができる。好ましいオリゴマーの中から、ポリアミド、および無水マレイン酸またはアクリル酸またはメタクリル酸と少なくとも1つの他のコモノマー、例えば、スチレンとのコポリマー、または前記のマレイン化樹脂を挙げることができる。
【0029】
オリゴマーb)は、存在する場合、上記で定義された解決すべき技術的課題を考えると、いかなる求核性基または構造も含まない。オリゴマーの構造から除外される基の例としては、例えば、アミンまたはヒドロキシルが挙げられる。実際には、オリゴマーb)は最終用途の架橋性組成物中の成分と反応できてはいけない。
【0030】
より具体的には、オリゴマーb)は、存在する場合、ジアミドa)の調製後またはジアミドa)の調製前に、溶融状態の混合物[a)+b)]に添加される中和剤による処理と同じ反応器内で溶融状態でその場で製造された点で、ジアミドa)との混合物として存在することができるポリアミドである。
【0031】
特定の代替形態によれば、オリゴマーb)の存在は、脂肪族ジアミド組成物には必須ではない。
【0032】
オリゴマーb)の有無によって2つの添加剤の選択肢は、配合物への適切な活性化によって満足なレオロジー性能を配合物に与えながら、求核剤に敏感な配合物中での優れた安定性性能を示す。これは活性化が、使用される配合物の組成、特に可塑剤の性質および配合物に対し調整できる活性化温度に依存するからである。
【0033】
別の代替形態によれば、オリゴマーb)は脂肪族ジアミド組成物中に存在する。
【0034】
本発明の第2の主題は、本発明に従って定義されたジアミド系組成物を調製する方法であって、以下の選択肢A)またはB)に従って以下の段階を少なくとも含む方法である。
【0035】
選択肢Aに従う方法:
i) mg KOH/gで表されるアミン価が0.5未満、好ましくは0.15未満、より好ましくは0.1未満、さらに好ましくは0.05未満であるように、中和剤による溶融状態のジアミドa)の中和のための処理、および
ii) 場合により、オリゴマーb)が存在する場合、段階i)でこのように処理(中和)された溶融状態のジアミドa)と溶融状態のオリゴマーb)との均質混合、
iii) 段階i)の混合物またはb)が存在する場合、段階ii)の混合物の冷却、および好ましくは15μm未満、より好ましくは10μm未満の体積平均サイズを得るための、機械的粉砕またはエアジェットによる微粉化。
【0036】
サイズはレーザー回折により決定することができる。
【0037】
b)が存在する場合のみ、選択肢Bに従う方法:
i) 溶融状態のジアミドa)と溶融状態のオリゴマーb)の均質混合、
ii) mg KOH/gで表されるジアミドa)のアミン価が0.5未満、好ましくは0.15未満、より好ましくは0.1未満、さらに好ましくは0.05未満であるように、中和剤による溶融状態の、段階i)の混合物の中和のための処理、
iii) このように処理された段階ii)の混合物の冷却、および好ましくは15μm未満、より好ましくは10μm未満の体積平均サイズを得るための、機械的粉砕またはエアジェットによる微粉化。
【0038】
選択肢Bに従うこの方法の代替形態によれば、オリゴマーb)はポリアミドであり、前記方法は同じ反応器中でのその場のジアミドa)の調製前または後の溶融状態のポリアミドb)の調製段階であって、段階ii)に従う溶融状態における中和処理の前に段階i)に従うa)およびb)の均質混合物をもたらす段階を含む。
【0039】
本発明の第3の主題は、本発明に従って上に定義した、または本発明に従って上に定義した方法によって得られた、少なくとも1つのジアミド系組成物、およびアミンのような求核官能基の存在に対して敏感な架橋性組成物の反応性成分の少なくとも1つを含む、架橋性組成物である。
【0040】
最初の可能性によれば、組成物は、ポリイソシアネート、シラン変性オリゴマーもしくはポリマー(封鎖シラン末端を有する)、特にシラン変性ポリエーテルもしくはシラン変性ポリウレタン、ポリエポキシド、シリコーン、ポリスルフィド、ポリ無水物または2を超える平均官能性を有する多官能性アクリレート、好ましくはポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリ無水物、ポリスルフィド、多官能性アクリレート、より好ましくは、ポリイソシアネートからの少なくとも1つの成分を含む二成分または一成分組成物に関する。シラン変性オリゴマーまたはポリマーは、例えば、Bodo MullerおよびWalter Rathによる2010年European Coatings Tech Files中の「Formulating Adhesives & Sealants」に記述されている。
【0041】
多官能性アクリレート(MFA)の場合、感度は、残留アミンがアクリレート官能基に対しマイケル付加により反応することができ、アクリレートの不飽和へのアミンの付加によりアミノアクリレート結合が形成され、このため使用されるべき組成物を時期尚早に架橋させるという事実に関連する。
【0042】
他の場合では、アミンは、主たるバインダー、例えばポリイソシアネート、ポリエポキシドまたはポリ酸無水物と反応し得、または架橋反応に触媒作用を及ぼし、このため触媒反応の例としてポリスルフィドの場合と同様に、架橋を時期尚早に加速し得る。このように、前記成分の感度は、反応性の効果によって、またはアミンのような求核性官能基の触媒反応の効果のいずれかによって示され得る。
【0043】
1つの可能性によれば、上に記載した前記組成物は、コーティングのための組成物またはコーティングの組成物、特に塗料、インキもしくは接着剤のための組成物、または気密材、マスチック、もしくは接着剤の組成物、または成形用組成物、特に複合材料のための組成物に関する。
【0044】
本発明の別の主題は、求核性官能基に敏感な少なくとも1つの反応性成分を含む架橋性組成物、特に、その反応性組成物の少なくとも1つがアミンのような、求核性官能基の存在に敏感な(即ち反応性または触媒反応により敏感な)架橋性組成物、前述の組成物中でのレオロジー添加剤としての、本発明で定義されたまたは上述したように本発明の方法により得られる、ジアミド系組成物の使用に関する。
【0045】
最後に、本発明は、上記で定義された使用から生じる架橋した完成品を対象とする。より具体的には、前記製品は塗膜、特に塗料、インクまたは接着剤のフィルムである。別の可能性によれば、前記製品は、気密材、マスチックまたは接着性シールであってもよい。最後に、別の選択肢によれば、前記製品は、成形部品、特に複合体(成形部品)に関し得る。
【0046】
以下の実施例は本発明およびその性能の説明のために与えられ、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0047】
実験パート
1−使用される出発物質
【表1】
【0048】
II− 使用される方法および試験
押出性試験
カートリッジ内に充填されたマスチックを、押出の間に250±10kPa(即ち、2.5バール±0.1バール)の範囲の圧縮空気の流量を制御することを可能にする圧力計を備えた空気圧縮機に接続されたエアガン(3M(R)空気作動柔軟性パッケージアプリケータータイプ)を使用して押し出す。5±0.3mmの直径を有するオリフィスを含む押出ノズルを使用する。
【0049】
所定の時間間隔にわたり押し出されたサンプルの重量を測定し、これによりg/分で表されるサンプルの押出性を見出すことが可能となる。
【0050】
粘度の評価
Brookfield(R) DV II+ Proタイプ粘度計をHelipath(R)ドライブモーターに取り付け、T−バー針(スピンドル:Helipath(R)スピンドルセット番号595)をこの目的のために設けられた接続を使用して粘度計に取り付ける。パイロットモーターはゆっくり昇降し、これにより粘度計は、T−バー針がサンプルを通る30秒の螺旋経路を移動することを可能にし、これによりチャネルの形成を回避する。このようにマスチックのように、流れないまたはゲル構造を有するシステムの粘度を測定することができる。
【0051】
粘度はmPa.sで表され、1分45および3つのスピンドル速度:1、5および10rpmに対して30秒毎に(Helipath(R)の移動の中央で)測定される。
【0052】
安定性試験
押出性および粘度の測定を貯蔵開始時および23℃で1か月の貯蔵後に行う。マスチックのレオロジーの安定性をこれら2つの測定値の関数として確立させる。
【0053】
カートリッジ内での時期尚早な架橋に対する抵抗性試験
カートリッジを、開始時、3日の貯蔵後および1ヶ月後に観察する。試験はカートリッジを開き、内部に存在する製品が押出可能であるかどうかを観察することにある。製品が貯蔵後に流体でない場合は、製品はもはや押出し可能ではない。
【0054】
III−比較例および本発明に従った実施例
[例1]:比較
25.8グラムのエチレンジアミン(即ち、0.43モル、0.86アミン当量)、135.52グラムの12−ヒドロキシステアリン酸(即ち、0.43モル、0.43酸当量)および49.94グラムのヘキサン酸(即ち、0.43モル、0.43酸当量)を、窒素流下で、温度計、ディーン・スターク装置、冷却器および攪拌機を備えた1リットルの丸底フラスコに導入する。混合物を、依然として窒素流下で200℃に加熱する。除去された水は、150℃からディーン・スターク装置に蓄積する。反応を酸価よびアミン価によって制御する。酸価およびアミン値がそれぞれ5および3.5mg KOH/gである場合、反応混合物を150℃に冷却した後、シリコーンモールドに排出する。室温に冷却した後、エアジェットミル内での粉砕により生成物を機械的に微粉化し、7μmの平均サイズを有する微細かつ制御された粒径を得るために篩かけする。
【0055】
[オリゴマーbのない本発明に従う実施例2]
25.8グラムのエチレンジアミン(即ち、0.43モル、0.86アミン当量)、135.52グラムの12−ヒドロキシステアリン酸(即ち、0.43モル、0.43酸当量)および49.94グラムのヘキサン酸(即ち、0.43モル、0.43酸当量)を、窒素流下で、温度計、ディーン・スターク装置、冷却器および攪拌機を備えた1リットルの丸底フラスコに導入する。混合物を、依然として窒素流下で200℃に加熱する。除去された水は、150℃からディーン・スターク装置に蓄積する。反応を酸価よびアミン価によって制御する。酸の値およびアミンの値がそれぞれ5および3.5mg KOH/gである場合、反応混合物を150℃に冷却し、0.65gの硫酸を添加する。30分後に測定されたアミン価は0.01mg KOH/g未満である。次いで、反応混合物をシリコーンモールドに排出する。室温に冷却した後、生成物を、同じ平均サイズを有するように、例1と同様に、エアジェットミル内で微粉化する。
【0056】
[オリゴマーbを有する本発明に従う実施例3]
25.8グラムのエチレンジアミン(即ち、0.43モル、0.86アミン当量)、135.52グラムの12−ヒドロキシステアリン酸(即ち、0.43モル、0.43酸当量)および49.94グラムのヘキサン酸(即ち、0.43モル、0.43酸当量)を、窒素流下で、温度計、ディーン・スターク装置、冷却器および攪拌機を備えた1リットルの丸底フラスコに導入する。混合物を、依然として窒素流下で200℃に加熱する。除去された水は、150℃からディーン・スターク装置に蓄積する。反応を酸価よびアミン価によって制御する。酸の値およびアミンの値がそれぞれ5および3.5mg KOH/gである場合、反応混合物を150℃に冷却し、0.65gの硫酸を添加する。30分後に測定されたアミン価は0.01mg KOH/g未満である。次いで、反応混合物を150℃に冷却し、155℃のTg(DSC、10℃/分での第2パス)を有する16グラムのSMA(R) 1000を添加する。30分後、ジアミドおよびSMA(R)オリゴマーの混合物をシリコーンモールドに排出する。室温に冷却した後、生成物を、同じ平均サイズ(7μm)を有するように、例1と同様に微粉化する。
【0057】
IV−「1K−PU」マスチック配合物中のレオロジー性能の評価
1−1K−PUマスチック配合物の調製
非常に粘度の高い製品を混合することを可能にするだけでなく、非流動システム中に粉末を分散させることを可能にする分散ディスクおよびスクレーパーを備えた実験室「プラネタリー」ミキサー(Molteni(R) EMD 1タイプ)を使用して、配合物を調製する。このミキサーは、分散の間水分の侵入を防止することを可能にする真空ポンプを備えている。Molteni(R) EMD 1内部の温度は、スクレーパーに取り付けられたプローブによって記録され、バスを介して調節することができる。
【0058】
このミキサーは2kgのバッチを調製することができる。方法が完了すると、マスチックをカートリッジ内に配置する。
【0059】
【表2】
【0060】
本発明およびその性能を例示するために、4つの配合物:F1、F2、F3およびF4(表2中のこれらの配合物の組成を参照)を調製した。第1の段階および示される割合で、プレポリマーおよび可塑剤を添加し、均質化する。充填剤、顔料および(例1、実施例2または実施例3に従って)比較されるべき微粉化添加剤生成物を秤量し、第2段階で添加する。一緒にされた混合物を混合の間真空下に保つ。比較された添加剤を活性化するために、媒体の範囲を次のとおりにする。
− F1、F2に対し約50℃(即ち、50±2℃)で約30分間;
− F3、F4に対し約65℃(即ち、65±2℃)で約30分間。
【0061】
これが完了すると、接着促進剤、キシレン(A)および水捕捉剤を添加し、5分間均質化する。最後に、触媒およびキシレン(B)を約45℃の温度で添加した後、マスチックを排出し、それをカートリッジ内に配置する。
【0062】
2−配合物の安定性、レオロジー、および他の適用特性の評価結果(表3、4および5)。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
これらの比較結果から、例1(比較)に従う添加剤生成物に基づく配合物F1は3日間の貯蔵後に不安定であり、不可逆的に架橋し、使用できない生成物をもたらすことを観察することができる。
【0067】
実施例2(オリゴマーbなしの本発明)に従う生成物に基づく配合物F2は、1か月の貯蔵後の低い勾配(1rpm)で40Pa.sという粘度によって反映される低温(配合物F2において50℃)で活性化され、1か月の貯蔵後に非常に良好な安定性を示す。他方、配合物F4による、より高い温度(配合物F4において65℃)での活性化を実施すると、F2と同じ媒体(組成)ではるかに効果的な活性化が可能になり、この性能は、やく75倍高い、3E+06mPa.s(3000Pa.s)の粘度に反映されている。
【0068】
実施例3(オリゴマーbありの本発明)の添加剤生成物に基づく配合物F3は、1か月の貯蔵後に何の問題もなく安定性を可能にする。1か月貯蔵後の低い勾配(1rpm)でのその粘度はかなり高く、2500Pa.sであり、これは配合物F2の粘度よりも高く、F4とほぼ同じくらい良好である。
【0069】
これらの結果は、本発明の添加剤を含有する配合物は、適切な活性化後に添加剤によって与えられる非常に満足のいくレオロジー性能を示しつつ、1か月の貯蔵後に優れた貯蔵に対する安定性を示すことを明確に示す。