特許第6263266号(P6263266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社武蔵野レンズ研究所の特許一覧

<>
  • 特許6263266-有水晶体眼内レンズ 図000002
  • 特許6263266-有水晶体眼内レンズ 図000003
  • 特許6263266-有水晶体眼内レンズ 図000004
  • 特許6263266-有水晶体眼内レンズ 図000005
  • 特許6263266-有水晶体眼内レンズ 図000006
  • 特許6263266-有水晶体眼内レンズ 図000007
  • 特許6263266-有水晶体眼内レンズ 図000008
  • 特許6263266-有水晶体眼内レンズ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263266
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】有水晶体眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   A61F2/16
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-535618(P2016-535618)
(86)(22)【出願日】2014年7月25日
(86)【国際出願番号】JP2014069742
(87)【国際公開番号】WO2016013121
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】398066859
【氏名又は名称】有限会社武蔵野レンズ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 公也
(72)【発明者】
【氏名】大沼 一彦
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0097177(US,A1)
【文献】 米国特許第05480428(US,A)
【文献】 特表2013−508095(JP,A)
【文献】 特表2015−504691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虹彩と水晶体との間に移植される有水晶体眼内レンズであって、
レンズ中央部に配置され、同心円状に複数の溝が形成された回折格子と、
前記回折格子の外側に配置され前記回折格子を支持する支持部とを備え、
前記回折格子の中心には孔が形成され
前記回折格子は、前記回折格子の中心から離れるに従って前記複数の溝の間隔が小さく設定され、前記複数の溝には鋸歯状部が形成され前記鋸歯状部の高さDが、
D(nL−NW)=λ
(λは光の波長、nLは眼内レンズの屈折率、NWは房水の屈折率)に調整されることにより単焦点を形成する有水晶体眼内レンズ。
【請求項2】
前記孔の直径は、0.25mm〜0.5mmである請求項1記載の有水晶体眼内レンズ。
【請求項3】
前記孔の代わりに、前記回折格子の中心付近に3つの孔が形成され、前記3つの孔は、前記回折格子の中心に対して直径が1.5mm以内に設けられ、前記3つの孔の各々の直径は、0.1mmである請求項1記載の有水晶体眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折格子を用いたレンズ有水晶体眼内レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
有水晶体眼内レンズは、眼鏡やコンタクトレンズ以外の視覚の疾患を補正する一つの手段として認識されている。この有水晶体眼内レンズとしては、虹彩と水晶体との間に移植されるレンズが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された有水晶体眼内レンズは、中央光学部分と、周辺ハブティック部分と、前面開口部及び後面開口部を有する貫通された孔とを有し、溝が中央光学部分の境界部又は外側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−534360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有水晶体眼内レンズで、凸レンズの場合、レンズの中央部分が厚くなるため、凸レンズの中央部分に孔を空けると、光学的機能が低下する。
【0006】
また、従来の有水晶体眼内レンズでは、縮瞳した場合、孔が中央になく周辺にある場合、虹彩によって塞がれるため、房水の流れが障害される。
【0007】
本発明は、レンズの厚みを薄くことができ、房水の流れを良くすることができる有水晶体眼内レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る有水晶体眼内レンズは、虹彩と水晶体との間に移植される有水晶体眼内レンズであって、レンズ中央部に配置され、同心円状に複数の溝が形成された回折格子と、前記回折格子の外側に配置され前記回折格子を支持する支持部とを備え、前記回折格子の中心には孔が形成され、前記回折格子は、前記回折格子の中心から離れるに従って前記複数の溝の間隔が小さく設定され、前記複数の溝には鋸歯状部が形成され前記鋸歯状部の高さDが、D(nL−NW)=λ(λは光の波長、nLは眼内レンズの屈折率、NWは房水の屈折率)に調整されることにより単焦点を形成する
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の実施例1に係る有水晶体眼内レンズの構成を示す図である。
図2図2は本発明の実施例1に係る有水晶体眼内レンズを有する眼の断面側面図である。
図3図3は本発明の実施例1に係る有水晶体眼内レンズに有する溝が形成された回折格子の概略構成を示す図である。
図4図4は本発明の実施例1に係る有水晶体眼内レンズに有する鋸歯状の溝が形成された回折格子による単焦点を説明するための図である。
図5図5図4に示す鋸歯状の溝が形成された回折格子の詳細を示す図である。
図6図6は従来の有水晶体眼内レンズに有する鋸歯状の溝が形成された回折格子による2焦点を説明するための図である。
図7図7は従来の有水晶体眼内レンズに有する鋸歯状の溝が形成された回折格子の詳細を示す図である。
図8図8は本発明の実施例2に係る有水晶体眼内レンズの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例1に係る有水晶体眼内レンズを、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1に係る有水晶体眼内レンズの構成を示す図である。本発明の実施例1に係る有水晶体眼内レンズ1は、コラーゲンの共重合体素材、コラマー(Collamer)からなり、虹彩と水晶体との間に移植される。有水晶体眼内レンズ1は、レンズ中央部2に配置され同心状に溝が形成された回折格子5と、回折格子5の外側に配置され且つ回折格子5を支持する支持部3とを備えている。
【0012】
4a,4bは、有水晶体眼内レンズのマーキングであり、レンズ中央部2の外側に設けられている。
【0013】
回折格子5の中心には1つの円状の孔6が形成されており、孔6の直径は、0.25mm〜0.5mmである。
【0014】
図2は本発明の実施例1に係る有水晶体眼内レンズを有する眼の断面側面図である。図2に示すように、眼8は、角膜9、水晶体10、虹彩11、前房13、後房14を有している。有水晶体眼内レンズ1は、虹彩11と水晶体10との間に移植される。有水晶体眼内レンズ1と水晶体10との間には、ギャップ12が設けられている。後房14に有する房水は、ギャップ12と回折格子5の孔6とを通り前房13に流れるようになっている。
【0015】
図3は本発明の実施例1に係る有水晶体眼内レンズに有する溝が形成された回折格子の概略構成を示す図である。図3では、溝がスリットであり、回折格子の基本的な構成を示す。
【0016】
図3に示すように、回折格子5には、同心円状に溝5a〜5dが形成されている。溝5a〜5dは、回折格子5の中心から離れるに従って溝と溝との間隔が小さく設定されている。即ち、溝5bと溝5cとの間隔は、溝5aと溝5bとの間隔より小さく、溝5dと溝5cとの間隔は、溝5bと溝5cとの間隔より小さく設定されている。回折格子5の中心Oから同心円状の各々の溝5a〜5dまでの高さhは、式(1)で表される。
【0017】
h=(2Rmλ)1/2 …(1)
ここで、λは光の波長であり、mは整数であり、Rは回折格子5の中心Oと焦点Pとの距離である。mが1のときの高さhは、中心Oから溝5aまでの距離である。mが2のときの高さhは、中心Oから溝5bまでの距離である。以下、mが3以上のときの高さhは、前述したものと同様である。
【0018】
図4は本発明の実施例1に係る有水晶体眼内レンズに有する鋸歯状の溝が形成された回折格子による単焦点を説明するための図である。図5図4に示す鋸歯状の溝が形成された回折格子の詳細を示す図である。
【0019】
回折格子5にレンズ作用を持たせるために、溝に鋸歯状部5A〜5Cが形成されている。鋸歯状部5A〜5Cは、同心円状に形成され、鋸歯状部5Aの幅よりも鋸歯状部5Bの幅が小さく、鋸歯状部5Bの幅より鋸歯状部5Cの幅が小さく設定されている。
【0020】
鋸歯状部5A〜5Cの各々の屈折率をnLとし、鋸歯状部5A〜5C以外の領域の屈折率をnWとする。屈折率nLは、光の進行を遅らせるために、1より大きいものとする。
【0021】
図4に示す鋸歯状の溝が形成された回折格子5は、全ての位相が揃えられて、単焦点Pを得ている。この単焦点Pを得るために、図5に示す例えば鋸歯状部5Bの上と下とを通過した光が丁度、一波長ずれることが必要である。即ち、長さ×屈折率=光路長であるから、式(2)が成立する。
【0022】
D(nL−nW)=λ …(2)
ここで、波長λが0.546μm(e線)、nLが1.46(レンズの屈折率)、nWが1.336(房水の屈折率)とすると、高さDは4.4μmとなる。各鋸歯状部5A〜5Cの高さDも4.4μmとなる。
【0023】
図6は従来の有水晶体眼内レンズに有する鋸歯状の溝が形成された回折格子による2焦点を説明するための図である。図7は従来の有水晶体眼内レンズに有する鋸歯状の溝が形成された回折格子の詳細を示す図である。
【0024】
図6では、溝に鋸歯状部5−1〜5−3が形成されている。鋸歯状部5−1〜5−3は、2焦点にするために、全ての位相を揃えないようにする。平行に出ていく光が強め合い、高さDを小さくすることで重なった光の強度は弱くなる。高さDは、2つの焦点に振り分ける強度の比率を5:5とした場合、式(3)が成立する。
【0025】
D(nL−nW)=0.5λ …(3)
2焦点の屈折率nL、nW、波長λを、単焦点の屈折率nL、nW、波長λと同じに設定した場合、高さDは2.2μmとなる。即ち、図4に示す鋸歯状部5A〜5Cの各々の高さはDとなるのに対して、図6に示す鋸歯状部5−1〜5−3の各々の高さはD/2となる。
【0026】
このように実施例1に係る構成された有水晶体眼内レンズ1によれば、レンズ中央部2に同心円状に溝が形成された回折格子5を配置したので、回折格子5は、凸レンズとして機能し、有水晶体眼内レンズ1の厚みを薄くことができる。これにより、レンズ中央部2に形成された回折格子5の中心に孔6を容易に空けることができる。また、回折格子5は、薄いので、有水晶体眼内レンズの光学的な機能が低下しなくなる。
【0027】
また、回折格子5の中心に空けられた孔6は、虹彩11と水晶体10との間の瞳孔に位置されるで、房水は、後房14からギャップ12を介して回折格子5の中心に空けられた孔6を通り、前房13に容易に流れる。従って、房水の流れを良くすることができる。また、孔6を設けていても、孔6がないときの光学的特性とほぼ同様な光学的特性を得ることができる。
【0028】
また、回折格子5は、回折格子5の中心から離れるに従って溝の間隔が小さく設定され、溝には鋸歯状部5A〜5Cが形成され、鋸歯状部5A〜5Cの高さDが式(2)により所定値に調整されているので、単焦点を形成することができる。従って、有水晶体眼内レンズの光学的な機能が低下しなくなる。
【0029】
(実施例2)
図8は本発明の実施例2に係る有水晶体眼内レンズの構成を示す図である。図8に示す実施例2に係る有水晶体眼内レンズは、回折格子5の中心付近に3つの孔6a,6b,6cを設けたことを特徴とする。
【0030】
3つの孔6a,6b,6cは、回折格子5の中心に対して直径1.5mm以内に設けられており、各々の孔6a,6b,6cの直径は、0.1mmである。
【0031】
このように回折格子5の中心付近に3つの孔6a,6b,6cを設けた場合にも、実施例1に係る有水晶体眼内レンズの効果と同様な効果を得ることができる。
【0032】
実施例2では、回折格子5の中心に対して直径1.5mm以内に3つの孔を設けたが、例えば、回折格子5の中心に対して直径1.5mm以内に2つの孔を設けても良い。この場合には、2つの孔の各々の直径は0.15mmである。
【0033】
即ち、複数の孔を設けた場合の各々の孔の面積の総和が、1つの孔を設けた場合の孔の面積以下に設定する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、虹彩と水晶体との間に移植される眼内レンズに適用可能である。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8