特許第6263277号(P6263277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シージェイ チェルジェダン コーポレイションの特許一覧

特許6263277新規なバクテリオファージおよびこれを含む組成物
<>
  • 特許6263277-新規なバクテリオファージおよびこれを含む組成物 図000005
  • 特許6263277-新規なバクテリオファージおよびこれを含む組成物 図000006
  • 特許6263277-新規なバクテリオファージおよびこれを含む組成物 図000007
  • 特許6263277-新規なバクテリオファージおよびこれを含む組成物 図000008
  • 特許6263277-新規なバクテリオファージおよびこれを含む組成物 図000009
  • 特許6263277-新規なバクテリオファージおよびこれを含む組成物 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263277
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】新規なバクテリオファージおよびこれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/00 20060101AFI20180104BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20180104BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20180104BHJP
   A23K 10/18 20160101ALI20180104BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20180104BHJP
   C12R 1/92 20060101ALN20180104BHJP
【FI】
   C12N7/00ZNA
   A61K35/76
   A61P31/04 171
   A23K10/18
   !C12N15/00 A
   C12N7/00ZNA
   C12R1:92
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-562871(P2016-562871)
(86)(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公表番号】特表2017-521043(P2017-521043A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】KR2015003706
(87)【国際公開番号】WO2015160166
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2016年12月14日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0044995
(32)【優先日】2014年4月15日
(33)【優先権主張国】KR
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM11464P
(73)【特許権者】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】シン,ウンミ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ボキュン
(72)【発明者】
【氏名】ベ,ギドク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェウォン
【審査官】 小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/042964(WO,A1)
【文献】 Food Microbiol.,2013年,Vol. 36,p. 275-285
【文献】 Mol. Microbiol.,2013年,Vol. 87, No. 4,p. 818-834
【文献】 Appl. Environ. Microbiol.,2010年,Vol. 76, No. 5,p. 1704-1706
【文献】 Appl. Environ. Microbiol.,2010年,Vol. 76, No. 15,p. 5327-5332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/00 − 7/08
C12N 15/00 − 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サルモネラ菌に対する特異的死滅能を有し、配列番号1ないし3のいずれか一つのDNA塩基配列を含む、寄託番号がKCCM11464PであるバクテリオファージΦCJ26。
【請求項2】
請求項1に記載のバクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む、サルモネラ菌による感染症を予防または治療するための組成物。
【請求項3】
前記感染症が食中毒であることを特徴とする、請求項2に記載のサルモネラ菌による感染症を予防または治療するための組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のバクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む、抗生剤。
【請求項5】
請求項1に記載のバクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む、飼料添加剤。
【請求項6】
請求項5に記載の飼料添加剤を含む、飼料。
【請求項7】
請求項1に記載のバクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む、飲用水添加剤。
【請求項8】
請求項7に記載の飲用水添加剤を含む、飲用水。
【請求項9】
請求項1に記載のバクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む、消毒剤。
【請求項10】
請求項1に記載のバクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む、洗浄剤。
【請求項11】
請求項1に記載のバクテリオファージΦCJ26または請求項2に記載の組成物をヒト以外の動物に投与する工程を含む、サルモネラ菌による感染症を予防または治療するための方法。
【請求項12】
前記動物が家禽であることを特徴とする、請求項11に記載のサルモネラ菌による感染症を予防または治療するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サルモネラ菌に対する特異的死滅能を有する新規なバクテリオファージ、これを含む組成物および該新規なバクテリオファージまたは該組成物を用いてサルモネラ菌による感染症を予防または治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サルモネラ菌は腸内細菌科のグラム陰性通性嫌気性細菌の一属であり、周毛性鞭毛による運動性を有する無芽胞桿菌である。サルモネラ菌は種々の家畜のみならずヒトにも感染して様々な疾病を引き起こす病原性微生物である。
【0003】
ヒトのサルモネラ菌感染症の原因は、主として豚などの畜産物の摂取である。報告によれば、サルモネラ菌のいくつかの株は家禽類に対する特異性を有し、家禽類に感染して家禽農家および消費者に甚大な経済的損害を与えることがある。また、サルモネラ菌に感染した家禽類やそのような感染家禽の摂取が、ヒトの食中毒を引き起こすことが知られている。
【0004】
具体的には、アメリカ疾病管理予防センターの2005年の統計によると、サルモネラ菌による食中毒を起こしたヒトから検出されたサルモネラ菌のうち、9種の菌株が家禽由来のサルモネラ菌株と一致し、食中毒を起こしたヒトからの検出頻度の最も高いサルモネラ菌と、鶏肉からの検出頻度の最も高いサルモネラ菌との一致が確認された。
【0005】
バクテリオファージは、特定の細菌に感染して当該細菌の増殖を抑制し阻害する細菌特異的ウイルスを言う。バクテリオファージは抗生剤と比べて宿主特異性が強く、また最近になって抗生剤に耐性のある菌が出現したり動物における抗生剤の残留が深刻になったりしていることから、バクテリオファージの応用への関心が高まっている。
【0006】
しかし、バクテリオファージに関する研究のほとんどは大腸菌、リステリア菌、クロストリジウム菌の制御に重点を置いたものである。サルモネラ菌もまた人獣いずれにも伝染する性質を有し、感染症を発生させ続けている。また、細菌を食する貪食細胞内で増殖し、それによって抗生剤に対する耐性を獲得することができる。したがって、サルモネラ菌を効果的に制御できるバクテリオファージの開発が必要とされており、特に、家禽類内のサルモネラ菌を制御することで家禽類内のサルモネラ菌による感染症を予防するための、また家禽類を介して起こるヒトの食中毒を予防するための、バクテリオファージおよび関連技術の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、サルモネラ菌による感染症を効率的に予防および治療することを目指して研究を重ねた結果、サルモネラ菌に対する特異的死滅能を有する新規なバクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)を提供するに至った。
【0008】
本発明はまた、抗生剤の使用による耐性菌の出現および食肉における残留抗生剤の問題を解決するために、前記バクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)を有効成分として含む抗生剤、飼料添加剤、飲用水添加剤、飼料、飲用水、消毒剤または洗浄剤を提供する。
【0009】
また、家禽類におけるサルモネラ菌による感染症のみならず、ヒトの食中毒を予防および/または治療するための、新規なバクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)を有効成分として含む組成物ならびにこれを利用した疾病の予防または治療のための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、サルモネラ菌に対する特異的死滅能を有する新規なバクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)が提供される。
【0011】
本発明の別の一態様によれば、前記バクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)を有効成分として含む、サルモネラ菌による感染症を予防または治療するための組成物が提供される。
【0012】
本発明のさらにまた別の一態様によれば、前記バクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)を有効成分として含む、抗生剤、飼料添加剤、飲用水添加剤、飼料、飲用水、消毒剤または洗浄剤が提供される。
【0013】
本発明のさらにまた別の一態様によれば、前記バクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)またはこれを有効成分として含む組成物をヒト以外の動物に投与する工程を含む、サルモネラ菌による感染症を予防または治療するための方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)は、サルモネラ菌を死滅させる特異的効果を有する。
【0015】
また、本発明のバクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)は、優れた耐酸性、耐熱性および耐乾性を有し、様々な温度範囲、pH域および乾燥条件域においてサルモネラ菌による感染症を予防または治療する薬剤として使用できるだけでなく、バクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)を有効成分として含む抗生剤、飼料添加剤、飲用水添加剤、飼料、飲用水、消毒剤または洗浄剤として使用できる。
【0016】
また、本発明は前記バクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)またはこれを有効成分として含む抗生剤を提供するが、このような抗生剤は従来の抗生剤と比べてサルモネラ菌に対する特異性が高く、益菌は殺さずに特定病原菌のみ死滅させることが可能であり、かつ薬物耐性を誘導しないため、従来の抗生剤と比べて製品寿命が長い。
【0017】
また、本発明によれば、前記バクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)またはこれを有効成分として含む組成物を家禽類に投与することによって、サルモネラ菌による感染症を予防または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】新規なバクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)(以下、「ΦCJ26」)の電子顕微鏡写真である。
図2】新規なバクテリオファージΦCJ26のパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)の結果を示す。
図3】新規なバクテリオファージΦCJ26のポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)の結果を示す。
図4】新規なバクテリオファージΦCJ26の耐酸性実験の結果を示すグラフである。
図5】新規なバクテリオファージΦCJ26の耐熱性実験の結果を示すグラフである。
図6】新規なバクテリオファージΦCJ26の耐乾性実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態をより詳細に説明する。当業者にとって自明の詳細な説明は、本明細書には記載しない。
【0020】
本発明の一実施形態は、サルモネラ亜種(Salmonella ssp.)に対する特異的死滅能を有する、新規なバクテリオファージΦCJ26(KCCM11464P)(以下、「ΦCJ26」)を提供する。
【0021】
サルモネラ菌は様々な家畜に感染して様々な疾病を引き起こす病原性微生物であり、特にサルモネラ菌に汚染された鶏肉を摂取したヒトに食中毒を起こさせることがあり、韓国における食品媒介疾患の原因病原体のうち、最もありふれた食中毒原因菌であることが知られている。
【0022】
これまでの報告によれば、サルモネラ菌には2,500種を超える血清型が存在し、動物に対して宿主特異性を示す菌種と示さない菌種とに大別することができ、様々な動物の寄生菌として発見されている。
【0023】
血清学的分類によれば、サルモネラ菌としては、サルモネラ・センフテンベルグ(salmonella senftenberg)、サルモネラ・ダービー(Salmonella derby)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・パラチフスA菌またはC菌(Salmonella paratyphus A or C)、サルモネラ・スコットムレリ(Salmonella schottmulleri)、サルモネラ・コレラエスイス(Salmonella choleraesuis)、サルモネラ・モンテビデオ(Salmonella montevideo)、サルモネラ・ニューポート(Salmonella newport)、サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis)、サルモネラ・ガリナルム(Salmonella gallinarum)、サルモネラ・プロルム(Salmonella pullorum)、サルモネラ・ムバンダカ(Salmonella mbandaka)、サルモネラ・アボルツソビ(Salmonella abortusovi)、サルモネラ・アボルタスエクイ(Salmonella abortusequi)、サルモネラ・ダブリン(Salmonella dublin)、サルモネラ・ソフィア(Salmonella sofia)、サルモネラ・トムソン(Salmonella Thomson)、サルモネラ・ハバナ(Salmonella havana)、サルモネラ・ボビスモルビフィカンス(Salmonella bovismorbificans)、サルモネラ・ケンタッキー(Salmonella kentucky)、サルモネラ・インファンティス(Salmonella infantis)、サルモネラ・ハダール(Salmonella hadar)、サルモネラ・アリゾナエ(Salmonella arizonae)およびサルモネラ・アナタム(Salmonella anatum)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
具体的には、本発明の一実施形態のサルモネラ菌は家禽類に由来する菌株であってよく、例えば、サルモネラ・センフテンベルグ(Salmonella senftenberg)、サルモネラ・モンテビデオ(Salmonella montevideo)、サルモネラ・ニューポート(Salmonella newport)、サルモネラ・ケンタッキー(Salmonella Kentucky)、サルモネラ・ムバンダカ(Salmonella mbandaka)、サルモネラ・インファンティス(Salmonella infantis)、サルモネラ・ハダール(Salmonella hader)、サルモネラ・ダービー(Salmonella derby)、サルモネラ・トムソン(Salmonella thomson)およびサルモネラ・コレラエスイス(Salmonella choleraesuis)からなる群より選択される1種以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明において「家禽類」は、家畜としての鳥類の総称である。家禽類は特に限定されず、ニワトリ、アヒル、七面鳥などからなる群より選択される1種であってもよい。より具体的には、本実施形態のサルモネラ菌は、ニワトリに由来するものであってもよい。
【0026】
本実施形態のサルモネラ菌は通常の培地でよく増殖し、約7℃〜48℃の温度において増殖可能であり、増殖の最適温度は約35℃〜37℃である。特に、約42℃において病原性因子の発現が効果的に行われる。また、サルモネラ菌はpH4.5〜pH9.0の範囲において増殖可能である。
【0027】
バクテリオファージは、特定の細菌に感染して当該細菌の増殖を抑制し阻害する細菌特異的ウイルスであり、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAを遺伝物質として含むウイルスを言う。
【0028】
具体的には、本実施形態のバクテリオファージΦCJ26は選択的にサルモネラ菌に感染する種特異性を有するバクテリオファージであり、形態学的には正二十面体の頭部と収縮性のない長い尾から構成されたシホビリダエ(Siphoviridae)に属するバクテリオファージである(図1参照)。バクテリオファージΦCJ26の塩基配列と他のバクテリオファージの解読塩基配列の相同性を比較した結果を表1に示す。バクテリオファージΦCJ26は、pH4.0〜pH5.5において活性を失うことなく安定した耐酸性を示し(図4)、耐熱性に関しては、60℃に2時間曝されても活性の低下はなかった(図5)。耐乾性に関しては、乾燥後のバクテリオファージΦCJ26は、約1ログ程度減少した(図6)。バクテリオファージΦCJ26のDNAの部分塩基配列を、配列表の配列番号1〜3に示す。
【0029】
バクテリオファージΦCJ26は、本発明者らが新規に単離したバクテリオファージであり、2013年10月25日に韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、ソウル市西大門区弘濟1洞361−221)に寄託番号KCCM11464Pとして寄託したものである。
【0030】
本発明の別の一実施形態によれば、バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む、サルモネラ菌による感染症を予防または治療するための組成物が提供される。
【0031】
バクテリオファージΦCJ26は特異的にサルモネラ菌を死滅させる抗菌活性を示すため、サルモネラ菌の感染によって起こる疾病を予防または治療する目的で使用することができる。サルモネラ菌による感染症としては、サルモネラ症が挙げられるが、これに限定されない。
【0032】
本明細書における「サルモネラ症」は、サルモネラ菌の感染による急性または慢性の消化器伝染病であり、主な症状は発熱、腸炎、敗血症であり、肺炎、脳炎、関節炎、流産、発熱、下痢、チアノーゼなどを伴うこともある。原因菌の亜種の中には、人獣共通伝染病の原因となり得るものもあり、サルモネラ菌に汚染された家畜の肉の摂取による食中毒などが起こる。
【0033】
本発明における「予防」は、前記バクテリオファージΦCJ26および/または前記バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む組成物を対象に投与することによって当該疾病を抑制したりその進行を遅延させたりすること、またはその発病を遅延させたりするあらゆる行為を言う。
【0034】
本発明における「治療」は、前記バクテリオファージΦCJ26および/または前記バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む組成物を対象に投与することによって当該疾病の症状を改善または緩和するあらゆる行為を言う。
【0035】
サルモネラ菌による感染症を予防または治療するための本実施形態の組成物は、5×10〜5×1012pfu/mLの前記バクテリオファージΦCJ26を、特に1×10〜1×1010pfu/mLの前記バクテリオファージΦCJ26を含んでいてもよい。
【0036】
サルモネラ菌による感染症を予防または治療するための本実施形態の組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでいてもよく、該担体とともに製剤化されて食品、医薬品、飼料添加剤または飲用水添加剤などとして提供されてもよい。
【0037】
本発明における「薬学的に許容可能な担体」は、生物を刺激することも投与化合物の生物学的活性および特性を阻害することもない担体または希釈剤を言う。
【0038】
本実施形態において使用可能な前記担体の種類は特に限定されず、当技術分野で通常使用され、薬学的に許容される担体であればよい。該担体としては、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールなどが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
また、本発明の組成物には、必要に応じて別の一般的な添加剤、例えば抗酸化剤、緩衝液および/または細胞増殖抑制剤などを添加して使用することができ、さらに希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および/または潤滑剤などを添加して水性液剤、懸濁剤、乳剤などの注射用剤形、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、錠剤などとすることができる。
【0040】
サルモネラ菌による感染症を予防または治療するための本実施形態の組成物の投与方法は特に限定されず、当技術分野で通常使用される方法を使用することができる。そのような投与方法としては、組成物の経口投与または非経口投与が挙げられる。
【0041】
経口投与のための剤形としては、トローチ剤、ドロップ剤、錠剤、水性懸濁剤、油性懸濁剤、調合粉末剤、顆粒剤、乳剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、シロップ剤またはエリキシル剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本実施形態の組成物は、製剤化して錠剤またはカプセル剤などの剤形とするために、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アミロペクチン、セルロースもしくはゼラチンなどの結合剤;第二リン酸カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプンもしくはサツマイモデンプンなどの崩壊剤;またはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウムもしくはポリエチレングリコールワックスなどの潤滑剤などを含んでもよく、またカプセル剤とする場合には、上述した物質以外に脂肪油などの液体担体などをさらに含んでもよい。
【0043】
本実施形態の組成物を非経口投与する方法としては、例えば静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与または局部投与などを利用することが可能であり、前記組成物を疾患部位に塗布または噴霧する方法も利用することができるが、投与方法はこれらに限定されない。
【0044】
非経口投与用の剤形とするために、本実施形態の組成物は、例えば皮下注射、静脈注射もしくは筋肉内注射などの注射用の形態;坐剤;または呼吸器から吸入できるエアロゾル剤などのスプレー用剤として製剤化することができるが、剤形はこれらに限定されない。注射用剤として製剤化するために、本実施形態の組成物を水中で安定剤または緩衝剤と混合して液剤または懸濁剤を調製し、これをアンプルまたはバイアルなどの単位投与用形態として製剤化することができる。エアロゾル剤などのスプレー用剤として製剤化する場合、濃縮物または湿潤粉末が水中に分散するように、添加剤とともに推進剤などを配合することができる。
【0045】
サルモネラ菌による感染症を予防または治療するために塗布、噴霧または投与される本実施形態の組成物の適切な量は、前記組成物の製剤化方法、投与方法、投与時間および/または投与経路ならびに投与対象となる動物の年齢、体重、および性別、疾病の重症度、摂取する食物、排泄速度などの要因によって異なるが、通常の知識を有する獣医師であれば、意図する治療に有効な投与量を容易に決定して処方することができる。
【0046】
本発明のまた別の一実施形態によれば、前記バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む抗生剤が提供される。
【0047】
本発明における「抗生剤」は、医薬の形態でヒトを含む動物に投与されて菌を死滅させる効果を有する製剤を言い、防腐剤、殺菌剤および抗菌剤の総称として用いられる。
【0048】
サルモネラ症を予防および治療するために、ワクチンおよび抗感染免疫に関する多くの研究が行われているが、これまで報告された2,500種を超えるサルモネラ菌属の血清型は特定の宿主領域を有さず、感染するまたは汚染される動物は1種以上であるため、サルモネラ菌を実際に根絶することはほぼ不可能であった。
【0049】
また、サルモネラ菌は、細菌を食する貪食細胞内でも増殖できるため、抗生剤によって治療することができず、抗生剤の使用によってサルモネラ菌陰性になったとしても、抗生剤の投与を中止するとサルモネラ菌に再感染しやすいため、サルモネラ菌に特異的な抗生剤の開発が必要とされる。
【0050】
バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む本実施形態の抗生剤は、従来の抗生剤とは異なりサルモネラ菌に対する特異性を有するため、益菌は殺さずに特定の病原菌のみ死滅させることができ、薬物耐性を誘導することがないため、従来の抗生剤と比べて製品寿命が長い。
【0051】
本発明のまた別の一実施形態によれば、前記バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む飼料添加剤または飲用水添加剤が提供される。
【0052】
前記飼料添加剤または飲用水添加剤は、前記バクテリオファージΦCJ26またはこれを含む組成物を使用して、飼料添加剤または飲用水添加剤として別途調製した後に飼料または飲用水と混合するか、飼料または飲用水を製造する際に、前記バクテリオファージΦCJ26またはこれを含む組成物を直接添加することによって使用することができる。
【0053】
前記飼料添加剤または飲用水添加剤として用いられる、前記バクテリオファージΦCJ26および/または前記バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む本実施形態の組成物は、液体の形態であっても乾燥形態であってもよく、例えば乾燥した粉末の形態であってもよい。
【0054】
本発明のバクテリオファージΦCJ26は、粉末形態として、飼料添加剤重量の0.05〜10重量%、特に0.1〜2重量%の割合で混合される。
【0055】
本実施形態の飼料添加剤または飲用水添加剤を乾燥して乾燥粉末とするための乾燥方法は特に限定されず、当技術分野における通常の方法であればいずれの方法を用いてもよい。前記乾燥方法としては、通風乾燥、自然乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは単独で、または2以上の方法を組み合わせて行うことができる。
【0056】
本実施形態の飼料添加剤または飲用水添加剤は、非病原性の別の微生物を含有していてもよい。そのような微生物は、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素および/または糖転換酵素の生産能を有する、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)などの枯草菌;ウシの胃のような嫌気的条件下で生理的活性および有機物分解能を有するラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)などの乳酸菌;動物の体重および産乳量増加させ、飼料の消化吸収率を高める効果を有するアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)などの糸状菌;およびサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母からなる群より選択されてもよい。これらの微生物は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
前記バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む本実施形態の飼料添加剤または飲用水添加剤は、必要に応じて別の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0058】
使用可能な添加剤としては、結合剤、乳化剤、飼料または飲用水の品質低下を防止するために添加される保存剤など;飼料または飲用水の有用性を高めるために添加されるアミノ酸、ビタミン、酵素、プロバイオティクス、香料、非タンパク質性窒素化合物、ケイ酸塩、緩衝剤、着色剤、抽出剤またはオリゴ糖;およびその他の飼料用添加剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの添加剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
本発明の前記飼料添加剤は、飼料100重量部に対して0.05〜10重量部含まれていてもよく、特に0.1〜2重量部含まれていてもよい。本発明の前記飲用水添加剤は、飲用水100重量部に対して0.0001〜0.01の重量部含まれていてもよく、特に0.001〜0.005重量部含まれていてもよい。この範囲内であれば、該添加剤を添加しても、サルモネラ菌に対するバクテリオファージΦCJ26の活性が十分に発揮される。
【0060】
本発明のさらにまた別の一実施形態によれば、前記バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む飼料添加剤または飲用水添加剤を飼料または飲用水に添加するか、前記バクテリオファージΦCJ26を飼料または飲用水に直接添加することによって調製された飼料または飲用水が提供される。
【0061】
本実施形態で用いられる飼料は、特に限定されず、関連分野において通常使用される飼料を用いることができる。そのような飼料としては、穀物、根菜、食品加工副産物、藻類、繊維質、製薬副産物、油脂、デンプン、穀物の副産物または残渣などの植物性飼料;タンパク質、無機物質、油脂、鉱物、単細胞タンパク質、動物性プランクトンまたは食物などの動物性飼料が挙げられるが、これらに限定されない。これらの飼料は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
本実施形態で用いられる飲用水は特に制限されず、関連分野において通常使用される飲用水を用いることができる。
【0063】
また、本実施形態の飼料は飲用水に混合して添加することができ、これによって腸内サルモネラ菌の数を持続的に抑えることが可能となり、サルモネラフリー家畜の生産への解決策となる。
【0064】
本発明のまた別の一実施形態によれば、前記バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む消毒剤または洗浄剤が提供される。前記消毒剤または洗浄剤の剤形は特に限定されず、関連分野で通常使用される任意の剤形が使用される。
【0065】
前記消毒剤は、サルモネラ菌を除去することを目的として、家禽類の生育環境、食肉処理場、へい死領域、調理場または調理設備などに撒布することができるが、散布対象はこれらに限定されない。
【0066】
前記洗浄剤は、サルモネラ菌に曝露されたか、あるいは曝露される可能性のある家禽類の皮膚表面または身体の各部位などを洗浄する用途で用いられるが、用途はこれらに限定されない。
【0067】
本発明のまた別の一実施形態によれば、前記バクテリオファージΦCJ26またはこれを有効成分として含む組成物を用いてサルモネラ菌による感染症を予防または治療する方法が提供される。
【0068】
具体的に言えば、本実施形態の予防方法または治療方法は、サルモネラ菌に感染したかまたは感染する恐れのある家禽類に前記バクテリオファージΦCJ26または前記バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む組成物の薬学的に有効な量を投与することを含む。前記バクテリオファージΦCJ26またはこれを含む組成物の1日当たりの適切な総用量は、適切な医学的判断の下、獣医師によって決定されてもよく、これは当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。
【0069】
家禽類に対する前記バクテリオファージΦCJ26または前記バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む組成物の具体的な薬学的有効量は、得ようとする反応の種類と程度、個体の年齢、体重、全般的な健康状態、性別または食餌に加え、前記バクテリオファージΦCJ26またはこれを含む組成物の投与時間および投与経路、組成物の分泌速度、治療期間などを考慮して決定してもよい。該有効量は、同時にあるいは時間をずらして併用される複数の医薬の複数の成分などを始めとする多数の因子および医薬分野においてよく知られている類似因子に依存して異なりうる。
【0070】
本実施形態のバクテリオファージΦCJ26またはバクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む組成物は、医薬製剤の形態として鳥類の鼻腔への噴霧により投与してもよく、鳥類の飼料または飲用水に直接添加し、これを摂取させることによりで投与してもよく、飼料添加剤または飲用水添加剤の形態で飼料または飲用水に混合して投与してもよい。
【0071】
本実施形態のバクテリオファージΦCJ26またはバクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む組成物の投与経路および投与方法は特に限定されず、所望の組織にバクテリオファージΦCJ26またはこれを含む組成物を到達させることが可能である限り、いかなる投与経路および投与方法で投与してもよい。
【0072】
すなわち、前記バクテリオファージΦCJ26または前記バクテリオファージΦCJ26を有効成分として含む組成物は経口または非経口の様々な経路で投与することができ、投与経路としては、経口、経直腸、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、経皮、鼻腔内または吸入などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
以下、実施例を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明がこれらの実施例に限定されるものでないことは理解されるべきである。
【実施例】
【0074】
[実施例1]サルモネラ菌に感染するバクテリオファージの単離
<実施例1−1>
バクテリオファージのスクリーニングおよび単一バクテリオファージの単離
韓国忠清道清原郡にある養鶏農場付近のニワトリの糞便から得た試料50mLを4,000rpmで10分間遠心分離した後、上清を0.45μmのフィルターで濾過して試料液を用意し、これを用いて軟寒天オーバーレイ法を行った。軟寒天オーバーレイ法は、トップアガー(0.7%の寒天を用い、固体培地上に載置したもの)上で増殖した宿主細胞を用いてバクテリオファージの溶菌を観察する方法を言う。
【0075】
具体的には、建国大学校獣医学部から入手したサルモネラ・センフテンベルグ(SS)の振とう培養液(OD600=2)150μLと10×LB培地(トリプトファン10g/L;酵母抽出物5g/L;NaCl10g/L)2mLと前記試料濾過液18mLとを混合し、37℃で18時間培養した後、培養液を4,000rpmで10分間遠心分離し、上清を0.45μmのフィルターで濾過した。次いで、LB平板培地上に0.7%(w/v)寒天3mLとSSの振とう培養液(OD600=2)150μLとの混合液を注いで固め、そこへ試料液10μLを滴下して37℃で18時間培養し、プラークの形成を確認した。
【0076】
1つのプラークに存在するバクテリオファージは1種類であることが知られているため、発明者らは、形成されたプラークから単一のバクテリオファージを単離することを試みた。具体的には、プラークに400μLのSM溶液(NaCl 5.8g/L;MgSO7HO 2g/L;1M Tris−HCl(pH7.5)50mL)を加えて室温で4時間放置し、バクテリオファージ溶液を得た。
【0077】
次いで、前記バクテリオファージ溶液100μLと0.7%(w/v)寒天12mLとSSの振とう培養液(OD600=2)500μLとを混合し、直径150mmのLB平板培地を用いて軟寒天オーバーレイ法を実施し、バクテリオファージが完全に溶菌するまで培養を続けた。培養終了後、LB平板培地に15mLのSM溶液を加えて室温で4時間静置し、バクテリオファージ溶液を得た。
【0078】
前記溶液に1%(v/v)クロロホルムを加えて10分間混合し、4,000rpmで10分間遠心分離して上清を得た。この上清を0.45μmのフィルターで濾過し、最終試料を得た。
【0079】
<実施例1−2>
バクテリオファージの大規模培養と精製
実施例1−1で得たバクテリオファージを、サルモネラ・センフテンベルグ(SS)を用いて大規模に培養し、そこからバクテリオファージを精製した。
【0080】
具体的には、SSを振とう培養して1.5×1010cfuとなるように分注し、4,000rpmで10分間遠心分離した後、これを4mLのSM溶液に再懸濁した。ここに前記バクテリオファージを1.5×10pfuで接種し(感染多重度 MOI=0.0001)、室温で20分間静置した。
【0081】
次いで、これを150mLのLB培地に接種し、37℃で6時間培養した。培養終了後、最終体積の1%(v/v)となるようにクロロホルムを添加し、20分間撹拌した。制限酵素であるDNaseIとRNaseAとを、各々の最終濃度が1μg/mLとなるように添加し、30℃で30分間静置した。その後、最終濃度が各々1Mおよび10%(w/v)となるように塩化ナトリウムおよびポリエチレングリコール(PEG)を加えて4℃で3時間静置し、4℃、12,000rpmで20分間遠心分離して沈殿物を得た。
【0082】
得られた沈殿物を5mLのSM溶液に懸濁させて室温で20分間静置した後、クロロホルムを4mLを加えて撹拌し、4℃、4,000rpmで20分間遠心分離して上清を得た。この上清を0.45μmのフィルターで濾過した後、グリセロール密度勾配法(密度:40%、5%グリセロール)を用いた超遠心分離(35,000rpm、1時間、4℃)によってバクテリオファージを精製した。
【0083】
本発明者らは、農場のニワトリの糞便から得た試料から、サルモネラ菌に対する特異的死滅能を有するバクテリオファージを単離し、「バクテリオファージΦCJ26」と命名し、2013年10月25日に韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、ソウル市西大門区弘濟1洞361−221)に寄託番号KCCM11464Pとして寄託した。
【0084】
<実施例2>
ΦCJ26の形態観察
実施例1で精製したバクテリオファージΦCJ26を0.01%のゼラチン溶液で希釈し、2.5%グルタルアルデヒド溶液で固定した。これを炭素コーティングした雲母板(約2.5mm×2.5mm))に滴下して10分間順化させた後、蒸留水で洗浄した。
【0085】
次いで、前記炭素膜を銅グリッドに載せ4%酢酸ウラニルで60秒間染色して乾燥した後、透過電子顕微鏡(JEM−1011、80kV、倍率×200,000)で観察した(図1)。
【0086】
図1は、バクテリオファージΦCJ26の透過電子顕微鏡写真である。バクテリオファージΦCJ26は、形態学的性質として正二十面体の頭部と収縮性のない長い尾を有することから、形態型としてはシホビリダエに属することが示唆される。
【0087】
<実施例3>
ΦCJ26の全ゲノムDNAサイズ分析
実施例1で精製したバクテリオファージΦCJ26からゲノムDNAを抽出した。
【0088】
具体的には、精製したバクテリオファージΦCJ26の培養液に20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、50μg/mLのプロテイナーゼK、および0.5%(w/v)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えて50℃で1時間静置し、等量のフェノール(pH8.0)を撹拌下で加えた後、室温にて12,000rpmで10分間遠心分離し、上清を得た。
【0089】
この上清を等量のPC(フェノール:クロロホルム=1:1)と混合し、室温にて12,000rpmで10分間遠心分離し、上清を得た。この上清を等量のクロロホルムと混合し、室温にて12,000rpmで10分間遠心分離し、上清を得た。この上清に3M酢酸ナトリウムを全量の10%(v/v)となるように加えて混合し、2倍量の95%冷エタノールを加えて混合した後、−20℃で1時間静置した。
【0090】
次いで、0℃、12,000rpmで10分間遠心分離を行い、上清を除去して沈殿物を得た後、これに50μLのTE緩衝液(Tris−EDTA、pH8.0)を加えて溶解させた。抽出したDNAを10倍に希釈し、OD260で吸光度を測定することでDNA濃度を求めた。
【0091】
次いで、1μgのDNAを1%PFGE(パルスフィールドゲル電気泳動)アガロースゲルにロードし、バイオラッド(BIORAD)PFGEシステム7番プログラム(サイズ範囲25kb〜100kb;スイッチタイムランプ0.4秒〜2.0秒、線形;順方向電圧180V;逆方向電圧120V)を利用し、室温で20時間展開させた(図2)。
【0092】
図2はバクテリオファージΦCJ26のゲノムDNAの電気泳動写真であり、バクテリオファージΦCJ26のゲノムDNAのサイズは約90kbpであることがわかった。
【0093】
<実施例4>
ΦCJ26のタンパク質パターン分析
精製したバクテリオファージΦCJ26の溶液(1011pfu/mLタイター)15μLと5×SDS試料溶液3μLとを混合して5分間沸騰させた後、12%SDS−PAGEを行った(図3)。
【0094】
図3は、バクテリオファージΦCJ26に対して行ったSDS−PAGE結果を表す電気泳動写真であり、主要タンパク質のサイズは約12.1kDa、約16.4kDa、約44kDaおよび約54kDaであることがわかった。
【0095】
<実施例5>
ΦCJ26の遺伝的特性分析
実施例1で精製したバクテリオファージΦCJ26の遺伝子的特性を調べるため、バクテリオファージΦCJ26のDNAを遺伝子分析装置であるFLXチタニウムシーケエンサー(Roche)を用いて分析した。マクロジェン社(Macrogen Inc.)にて、GSおよびデノボアセンブリソフトウェア(Roche)を用いて遺伝子の組換えを行った。GeneMArk.hmm、Glimmer v3.02およびFGENESBソフトウェアを用いてオープンリーディングフレームを特定し、BLASTPおよびインタープロスキャン(InterProScan)プログラムを用いてオープンリーディングフレームの注釈付けを行った。
【0096】
バクテリオファージΦCJ26の塩基配列は過去に報告されたバクテリオファージ(サルモネラファージ SPT−,大腸菌ファージ EC6,ブドウ球菌ファージ SA1)の塩基配列と様々な類似性を示したが、全てのフラグメントが100%一致するバクテリオファージは存在しないことがわかった。したがって、該バクテリオファージは新規に単離されたバクテリオファージである。
【0097】
表1は、バクテリオファージΦCJ26の塩基配列と過去に報告されたバクテリオファージの解読済み塩基配列との比較結果を示す。
【0098】
【表1】
【0099】
作製したバクテリオファージΦCJ26のDNAを、遺伝子分析装置を用いて分析した。塩基配列の分析結果の一部を、配列番号1〜3に示す。
【0100】
<実施例6>
ΦCJ26のpH安定性
バクテリオファージΦCJ26が胃の中と同じような低pHにおいて安定性を保つことができるか否かを確認するため、様々なpH(pH3.0、pH4.0、pH5.0およびpH5.5)においてΦCJ26の安定性を調べた。
【0101】
実験のために、pHの異なる種々の0.2M溶液(酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH4.0、pH5.0およびpH5.5)、クエン酸ナトリウム緩衝溶液(pH3.0))を調製した。
【0102】
各pH溶液180μLと10PFU/mLタイターのバクテリオファージ溶液20μLとを混合して、室温で2時間静置した。対照群としては、10PFU/mLタイターのバクテリオファージ溶液20μLとSM溶液180μLとを同様に混合した後、室温で2時間静置した。その後、これらの溶液を段階希釈し、軟寒天オーバーレイ法により各段階の希釈液10μLを37℃で18時間培養し、溶菌の有無に基づいてバクテリオファージのタイターを測定した(図4)。
【0103】
図4に、バクテリオファージΦCJ26の耐酸性実験結果を示す。図4から、バクテリオファージΦCJ26がpH4〜pH5.5において活性を失わず対照群と比べて安定であることがわかる。
【0104】
<実施例7>
ΦCJ26の温度安定性
バクテリオファージを、その種々の剤形のうちの飼料添加剤として用いる場合、製剤過程において熱が発生する可能性があるため、熱に対するバクテリオファージ安定性を確認する目的で下記の実験を行った。
【0105】
具体的には、濃度が10PFU/mLであるバクテリオファージΦCJ26の溶液200μLを60℃で10分間、30分間、60分間、120分間静置した後、この実験培養液を段階希釈し、軟寒天オーバーレイ法により各段階の希釈液10μLを37℃で18時間培養し、溶菌の有無に基づいてバクテリオファージのタイターを測定した(図5)。
【0106】
図5に、バクテリオファージΦCJ26の耐熱性実験結果を示す。図5からわかるように、60℃への曝露が120分に及ぶまで、バクテリオファージΦCJ26の活性の減少は見られなかった。
【0107】
<実施例8>
ΦCJ26の乾燥安定性
バクテリオファージを、その種々の剤形のうちの飼料添加剤として用いる場合、製剤過程において乾燥が行われるため、乾燥条件に対するΦCJ26の安定性を確認する目的で下記の実験を行った。
【0108】
耐熱性確認実験の結果に基づき、減圧濃縮装置(SpeedVac concentrator)を用いて乾燥実験を行った。10PFU/mLタイターのΦCJ26溶液200μLを60℃で2時間減圧乾燥し、得られたペレットを200μLのSM溶液に入れて4℃で1日間完全に再懸濁させた後、タイターを測定した(図6)。
【0109】
図6に示した通り、乾燥後、元のタイターとの比較および相対的安定性の比較から、60℃における2時間の乾燥によって活性が約1ログ減少することがわかった。
【0110】
<実施例9>
単離された野生型サルモネラ菌株に対するΦCJ26の感染範囲の検討
バクテリオファージΦCJ26の溶菌活性について、本実験で用いたサルモネラ・センフテンベルグに加えて、サルモネラ・センフテンベルグ9株、サルモネラ・モンテビデオ14株、サルモネラ・ニューポート12株、サルモネラ・ケンタッキー10株、サルモネラ・ムバンダカ13株、サルモネラ・インファンティス11株、サルモネラ・ハダール4株、サルモネラ・ダービー5株、サルモネラ・コレラエスイス4株およびサルモネラ・トムソン13株に対して試験を行った。これらはいずれも、建国大学校獣医学部の農場から入手し、単離した。
【0111】
具体的には、各菌株の振とう培養液(OD600=2)150μLを混合し、10pfu/mLタイターのバクテリオファージΦCJ26溶液10μLを滴下した後、軟寒天オーバーレイ法によって37℃で18時間の培養を行い、プラークの形成について観察した(表2および表3)。
【0112】
結果を表2および表3に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
表2および表3に示した通り、バクテリオファージΦCJ26は、一般養鶏農場におけるサルモネラ菌による感染症の原因菌である、S.senftenberg、S.montevideo、S.newport、S.kenturkey、S.mbandaka、S.infantis、S.hadar、S.derby、S.choleraesuis、S.Thomsonなどに対して効果的な感染能を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0116】
配列表を添付して提出。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]