特許第6263287号(P6263287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263287側鎖含有ポリウレタン−ポリ尿素の製造方法及びそれの水性分散液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263287
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】側鎖含有ポリウレタン−ポリ尿素の製造方法及びそれの水性分散液
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/65 20060101AFI20180104BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20180104BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20180104BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20180104BHJP
   C09D 175/00 20060101ALI20180104BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20180104BHJP
   C14C 11/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C08G18/65 011
   C08G18/00 C
   C08G18/10
   C08G18/38 019
   C09D175/00
   C09D5/02
   C14C11/00
【請求項の数】22
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-7145(P2017-7145)
(22)【出願日】2017年1月19日
(62)【分割の表示】特願2014-520543(P2014-520543)の分割
【原出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2017-106024(P2017-106024A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年2月17日
(31)【優先権主張番号】102011107873.1
(32)【優先日】2011年7月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514229775
【氏名又は名称】シュタール・インターナツィオナール・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ミュンター・ユルゲン
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−56758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/65
C08G 18/00
C08G 18/10
C08G 18/38
C09D 5/02
C09D 175/00
C14C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み込まれた側鎖を有する主として線状のポリウレタン−ポリ尿素を含む水性ポリウレタン−ポリ尿素分散液を製造する方法であって、
A)先ず、次の反応ステップ、すなわち、
成分A1)第一及び/または第二モノアミンまたはジアミンを、
成分A2)一つのヒドロキシル基を含む環状カーボネートと反応させるステップであって、その際、成分A2)は、4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンであり、
この際、成分A1)と成分A2)とのモル比は、成分A1)がモノアミンの場合には、環状カーボネート基に対する第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として0.8〜1.2が達成されるように、そして成分A1)がジアミンの場合には、環状カーボネート基に対する第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として1.8〜2.2が達成されるように算定され、そして
その際、成分A1)がジアミンの場合には、残った第一及び第二アミン基を、イソシアネート反応性基が生じないように、第一または第二アミンと付加反応で反応する一つの官能基を有する化合物の成分A3)と反応させ、
この際、成分A3)の物質量は、該成分A3)中のアミン反応性基に対する、成分A1)と成分A2)との反応の後に計算上残る第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として0.8〜1.2が達成されるように、算定され、
この際、成分A3)との反応は、成分A2)との反応の後に、またはそれと同時に、またはその前に行うことができ、及び成分A1)と成分A2)との反応は溶剤無しで行なわれる、上記の反応ステップ、

B)次いで、以下の反応によりNCO基含有ポリウレタンプレポリマーを生成するステップであって、
成分B1)ポリイソシアネートと、
成分B2)数平均分子量が400超〜8,000g/モルのポリマー性ポリオール及び/またはポリアミンを、ステップB)の反応成分の全重量に基づいて30〜80重量%の量で、
及び
成分B5) ステップA)からの反応生成物、
を反応させてNCO基含有ポリウレタンプレポリマーを生成するステップ、そして、

C)ステップB)からのプレポリマーを水中に分散させるステップ

を含み、
その際、成分A1)が、次の構造式(1)のモノアミン、
【化1】
式中、
R1は、部分的に及び/または完全にフッ素化された炭素原子数4〜18の炭化水素及び/又は分子量が400〜5,000g/モルのポリシロキサンから選択され、
R2は、水素または炭素原子数1〜18の炭化水素であり、そして、
nは、0〜12である、及び/又は、次の構造式(4)のジアミンである、
【化2】
式中、
R3は、部分的に及び/または完全にフッ素化された炭素原子数4〜18の炭化水素及び/又は分子量が400〜5,000g/モルのポリシロキサンから選択され、そして、
p及びqは、互いに独立して0〜6である、上記の方法。
【請求項2】
D)プレポリマーの未だ遊離のNCO基を、イソシアネート反応性のモノアミン、ポリアミン、ヒドラジン及び/またはヒドラジド類の成分D1)と反応させるステップであって、
この際、該プレポリマー、及び該イソシアネート反応性のモノアミン、ポリアミン、ヒドラジン及び/またはヒドラジド類の量は、NCO基に対するイソシアネート反応性NH基の計算上の比率として0〜1.2が達成されるように算定され、ここで、ステップD)における反応は、分散ステップC)の前にまたはその最中に、部分的にまたは完全に行うことができる、該ステップ、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップB)において、さらに成分B3)モノ−及びポリアルコール、モノ−及びポリアミン、並びにアミノアルコールからなる群から選択される、数平均分子量が17〜400g/モルの低分子量化合物と反応させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップB)において、さらに成分B4)イソシアネート反応性でイオン性または潜在的にイオン性の親水性化化合物、及び/またはイソシアネート反応性で非イオン性の親水性化化合物と反応させる、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記成分A3)との反応が、成分A2)との反応の前または後に行われ、そして、成分A3)との反応が、脂肪族ケトンまたはエステル中で行われ、及び/または、
ステップB)において前記プレポリマーが、脂肪族ケトンまたはエステル中のいずれかで製造され、及び/または
ステップB)における反応の後に、ステップB)から得られたプレポリマーが脂肪族ケトンまたはエステル中に溶解もしくは希釈される、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
ステップA)〜D)の後で最後に、溶剤を留去するステップをさらに含む、請求項2〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
成分A3)がモノイソシアネートである、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
成分A3)は、それのイソシアネート基が芳香族基と直接結合していないモノイソシアネートである、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
成分B1)がジイソシアネートである、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
成分B1)がジイソシアネートであり、そのイソシアネート基は、芳香族基に直接結合していない、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
成分B2)及び成分D1)、又は成分B2)及び成分B3)及び成分D1)、又は成分B2)及び成分B3)及び成分B4)及び成分D1)の合計が、モルで表して、70%超がイソシアネートに対して反応性の基を二つ有する化合物からなり、95%超がイソシアネート基に対して反応性の基を一つまたは二つ有する化合物からなり、この際、カルボン酸基は、イソシアネートに対して非反応性と見なす、請求項2〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
プロセスステップD)において、NCO基に対するイソシアネート反応性NH基の計算上の比率として0.7〜1.2が達成される、請求項2〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
NCO基含有ポリウレタン−プレポリマーが、10〜45重量%の成分B1)、30〜80重量%の成分B2)、0〜10重量%の成分B3)、0〜20重量%の成分B4)及び0.1〜40重量%の成分B5)の反応によって得られ、この際、上記の全ての成分の合計は加算して100重量%となる、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
組み込まれた側鎖を有する主として線状のポリウレタン−ポリ尿素鎖を含む水性ポリウレタン−ポリ尿素分散液を製造する方法であって、
A)先ず、次の反応ステップ、すなわち、
成分A1)第一及び/または第二モノアミンまたはジアミンを、
成分A2)一つのヒドロキシル基を含む環状カーボネートと反応させるステップであって、その際、成分A2)は、4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンであり、
この際、成分A1)と成分A2)とのモル比は、成分A1)がモノアミンの場合には、環状カーボネート基に対する第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として0.8〜1.2が達成されるように、そして成分A1)がジアミンの場合には、環状カーボネート基に対する第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として1.8〜2.2が達成されるように算定され、
その際、成分A1)がジアミンの場合には、残った第一及び第二アミン基を、イソシアネート反応性基が生じないように、第一または第二アミンと付加反応で反応する一つの官能基を有する化合物の成分A3)と反応させ、
この際、成分A3)の物質量は、該成分A3)中のアミン反応性基に対する、成分A1)と成分A2)との反応の後に計算上残る第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として0.8〜1.2が達成されるように、算定され、
この際、成分A3)との反応は、成分A2)との反応の後に、またはそれと同時に、またはその前に行うことができ、及びA1)とA2)との反応は溶剤無しで行なわれる、上記の反応ステップ、

B)次いで、以下の反応によりNCO基含有ポリウレタンプレポリマーを生成するステップであって、
成分B1)ポリイソシアネートと、
成分B2)数平均分子量が400超〜8,000g/モルのポリマー性ポリオール及び/またはポリアミンを、ステップB)の反応成分の全重量に基づいて30〜80重量%の量で、
及び
成分B5) ステップA)からの反応生成物、
を反応させてNCO基含有ポリウレタンプレポリマーを生成するステップ、そして、

C)ステップB)からのプレポリマーを水中に分散させるステップ

を含み、
その際、成分A1)が、次の構造式(2)のジアミン、
【化3】
式中、
R3は、部分的に及び/または完全にフッ素化された炭素原子数4〜18の炭化水素及び/又は分子量が400〜3,000g/モルのポリシロキサンから選択され、
R4及びR5は、互いに独立して、水素又は炭素原子数1〜18の炭化水素であり、そして、
p及びqは、互いに独立して0〜12である、上記の方法。
【請求項15】
D)プレポリマーの未だ遊離のNCO基を、イソシアネート反応性のモノアミン、ポリアミン、ヒドラジン及び/またはヒドラジド類の成分D1)と反応させるステップであって、
この際、該プレポリマー、及び該イソシアネート反応性のモノアミン、ポリアミン、ヒドラジン及び/またはヒドラジド類の量は、NCO基に対するイソシアネート反応性NH基の計算上の比率として0〜1.2が達成されるように算定され、ここで、ステップD)における反応は、分散ステップC)の前にまたはその最中に、部分的にまたは完全にも行うことができる、該ステップ、をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
成分A3)がモノイソシアネートである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
成分A3)は、それのイソシアネート基が芳香族基と直接結合していない、請求項14〜16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
成分B1)がジイソシアネートである、請求項14〜17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
成分B1)がジイソシアネートであり、そのイソシアネート基は、芳香族基に直接結合していない、請求項14〜18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
成分B2)及び成分D1)、又は成分B2)及び成分B3)及び成分D1)、又は成分B2)及び成分B3)及び成分B4)及び成分D1)の合計が、モルで表して、70%超がイソシアネートに対して反応性の基を二つ有する化合物からなり、95%超がイソシアネート基に対して反応性の基を一つまたは二つ有する化合物からなり、この際、カルボン酸基は、イソシアネートに対して非反応性と見なす、請求項15〜19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
プロセスステップD)において、NCO基に対するイソシアネート反応性NH基の計算上の比率として0.7〜1.2が達成される、請求項15〜20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
NCO基含有ポリウレタン−プレポリマーが、10〜45重量%の成分B1)、30〜80重量%の成分B2)、0〜10重量%の成分B3)、0〜20重量%の成分B4)及び0.1〜40重量%の成分B5)の反応によって得られ、この際、上記の全ての成分の合計は加算して100重量%となる、請求項14〜21のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として線状のポリウレタン−ポリ尿素鎖に側鎖を組み入れる方法、それの水性分散液、及びフレキシブルな平坦基材のコーティングの一部としての前記分散液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プレポリマー−アイオノマー法またはアセトン法を用いた水性ポリウレタン−ポリ尿素分散液の製造は、例えばProg.Org.Coat.9(1981)281−340(非特許文献1)などから、かなり前から知られている。この場合、イソシアネート基含有プレポリマーを塊状でまたは溶液で製造し、場合により反応の実行後に溶剤中に溶解する。次いで、そのプレポリマーまたはプレポリマー溶液を水中に分散し、そしてポリアミンを用いて鎖延長反応を行う。この鎖延長反応は、分散の前に部分的にまたは完全にも行うこともできる。最後に場合により、溶剤を留去する。
【0003】
カルボキシレート基による静電気的安定化の他に、水性ポリウレタン分散液は、非イオン性、親水性で立体安定化作用のある基によっても製造される。それ故、ポリウレタン分散液のこの立体安定化の達成のためには、ジメチロールプロピオン酸のように二つのヒドロキシル基を介してポリウレタンプレポリマー中に取り入れることができる、長く親水性でイソシアネートと反応しない側鎖が必要である(DE2551094(特許文献1))。この際、同じ分子末端に二つの遊離で近接したヒドロキシル基と、アルコキシ末端を持つ長いポリアルキレン側鎖とを有するポリエーテル(ポリアルキレングリコール)が特に適していることが分かっている(S.Dedrichs,European Coating Journal,565頁,5,2002(非特許文献2)、J.Fock,DE3049746A1(特許文献2))。
【0004】
しかし、このような系の製造は、非常に煩雑かつコスト高であり、そしてグリセリンまたはトリメチロールプロパンなどの三官能性アルコールから出発して四段階を経て進行する(J.Fock,DE3049746A1(特許文献2)、EP0043966(特許文献3))。
【0005】
DE102006036220(特許文献4)は、α−アミノ−ω−アルコキシポリアルキレングリコールを二当量のアルキレンオキシドと反応させることによって類似の化合物を製造することを記載している。しかし、アルキレンオキシド、特にエチレンオキシドは、それの高い反応性の故に取り扱いが難しく、多くの大規模な工業的なプラントでは加工することができない。
【0006】
Makromolecules 2008,41,4622−4630(非特許文献3)では、Fournier及びDu Prezが、いわゆる“クリック”ケミストリーを介して如何にして様々な官能基を側鎖としてポリウレタンに導入できるかを開示している。この場合、先ずアセチレン官能基を有するポリウレタンを合成し、次いでアセチレンにアジドを付加することによって側鎖を生成する。アジドは、特に大量の場合には、しばしば製造及び取り扱いが困難である。
【0007】
更に、例えばH.Tomita et al.Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry 2001(39),162−168頁(非特許文献4)からは、アミンと環状カーボネートとを、開環させて付加反応において反応させてヒドロキシウレタンとすることが知られている。
【0008】
ポリウレタン中の側鎖についての上述の例は、ポリウレタン−ポリ尿素分散液の製造において的確に側鎖を導入し得ることが如何に重要かを示している。
【0009】
それ故、上記の従来技術から出発して、主として線状のポリウレタン−ポリ尿素鎖中に側鎖を導入することを可能にする、簡単で、幅広く使用でき、簡単に取り扱いができ、そして経済的な方法を提供するという課題があった。
【0010】
驚くべきことに、第一及び/または第二モノアミンまたはジアミンと、正確に一つのヒドロキシル基を含む環状カーボネートとの反応、場合により及びジアミンの第二のアミン官能基と、付加反応において第一もしくは第二アミンと反応する正確に一つの官能基を有する化合物との反応が、非常に簡単にかつ経済的に、中間生成物をもたらし、この中間生成物とポリイソシアネート及び他のイソシアネート反応性化合物との反応が、ポリウレタン−ポリ尿素プレポリマーを製造でき、これを水中で分散しそしてイソシアネート反応性ポリアミンで延長することによって、分散された側鎖含有ポリウレタン−ポリ尿素ポリマーがもたらされ、それ故、上記の課題を解消することがここに見出された。
【0011】
それ故、本発明の対象は、水性ポリウレタン−ポリ尿素分散液の製造方法であって、
A)先ず、
A1)第一及び/または第二モノアミンまたはジアミンを、
A2)正確に一つのヒドロキシル基を含む環状カーボネートと反応させ、この際、A1)とA2)とのモル比は、モノアミンA1)の場合には、環状カーボネート基に対する第一及び第二アミン基との合計の計算上の比率として0.8〜1.2が達成されるように、そしてジアミンA1)の場合には、環状カーボネート基に対する第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として1.8〜2.2が達成されるように、算定され、及び
A3)ジアミンA1)の場合には、残った第一及び第二アミン基を、イソシアネート反応性基が生じないように、第一もしくは第二アミンと付加反応で反応する正確に一つの官能基を有する化合物と反応させ、この際、A3)の物質量は、A3)中のアミン反応性基に対する、A)とA2)との反応後に計算上残る第一及び第二アミン基の計算上の比率として0.8〜1.2が達成されるように、算定され、
この際、A3)との反応は、A2)との反応の後に、それと同時にまたはその前に行うことができ、
B)次いで、NCO基含有ポリウレタン−プレポリマーを、
B1)ポリイソシアネートと、
B2)数平均分子量が400超〜8,000g/モルのポリマー性ポリオール及び/またはポリアミン、
B3)場合により、モノ−及びポリアルコール、モノ−及びポリアミン並びにアミノアルコールからなる群から選択される、数平均分子量が17〜400g/モルの低分子量化合物、
B4)場合により、イソシアネート反応性でイオン性もしくは潜在的にイオン性の親水性化化合物、及び/またはイソシアネート反応性で非イオン性の親水性化化合物、及び
B5)A)からの反応生成物、
との反応によって生成し、
C)B)からのプレポリマーを水中に分散させ、そして
D)場合により、前記プレポリマーのなおも遊離のNCO基を、イソシアネート反応性モノアミン、ポリアミン、ヒドラジン及び/またはヒドラジド類と反応させ、この際、その物質量は、NCO基に対するイソシアネート反応性NH基の計算上の比率として0〜1.2が達成されるように算定され、この際、反応D)は、分散ステップC)の前またはその最中に部分的にまたは完全にも行うことができる、方法である。
【0012】
本発明の本質は、一つのイソシアネート反応性アミン官能基から二つのイソシアネート反応性アルコール官能基が製造され、及び場合により、更に別のイソシアネート反応性アミン官能基をイソシアネートに対して非反応性にして、A1)のアミン官能基に接続している基をポリウレタン−ポリ尿素ポリマー中に、ポリマー主鎖の一部としてではなく、側鎖として取り入れる、ステップA)での反応にある。
【0013】
本発明の更に別の対象の一つは、上記の方法に従い製造することができる、水性ポリウレタン−ポリ尿素分散液である。
【0014】
本発明の更に別の対象の一つは、フレキシブルな平坦基材、特に皮革のコーティングのための、本発明に従い製造されたポリウレタン−ポリ尿素分散液の使用である。
【0015】
本発明の更に別の対象の一つは、フレキシブルな平坦基材、特に皮革のコーティング方法であって、フレキシブルな平坦基材、特に皮革上に本発明のポリウレタン−ポリ尿素分散液を塗布する方法である。
【0016】
適当なA1)の第一及び第二モノアミンは、好ましくは、次の構造式(1)の化合物である。
【0017】
【化1】

式中、
R1は、分子量が最大6,000g/モルのポリアルキレングリコール、炭素原子数1〜16の炭化水素、1〜20個の炭素原子、0〜41個の水素原子及び1〜15個のヘテロ原子としてのホウ素、ケイ素、窒素、リン、酸素、硫黄、塩素、臭素及び/またはヨウ素からなる化合物、部分的に及び/または完全にフッ素化された炭素原子数1〜26の炭化水素、または分子量が最大で5,000g/モルのポリシロキサンの群から選択され、
R2は、水素または炭素原子数1〜18の炭化水素であり、そして
nは、0〜12である。
【0018】
本発明の特に好ましい実施形態の一つでは、R1は、分子量が400〜3,000g/モルのポリアルキレングリコールの群から選択される。
【0019】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、R1は、炭素原子数4〜18の炭化水素の群から選択される。R1が脂肪族炭化水素であることが更に好ましい。
【0020】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、R1は、4〜18個の炭素原子、4〜37個の水素原子、及び1〜15個のヘテロ原子としてのホウ素、ケイ素、窒素、リン、酸素、硫黄、塩素、臭素及び/またはヨウ素からなる化合物の群から選択される。
【0021】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、R1は、部分的に及び/または完全にフッ素化された炭素原子数4〜18の炭化水素の群から選択される。
【0022】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、R1は、分子量が400〜3,000g/モルのポリシロキサンの群から選択される。
【0023】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、R2は水素を表す。
【0024】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、nは1〜6の数を表す。
【0025】
A1)の第一モノアミンの中で特に好ましいものは、式中、
R1が、分子量が最大で6,000g/molの分子量を有するポリアルキレングリコール、炭素原子数1〜26の炭化水素、1〜20個の炭素原子、0〜41個の水素原子及び1〜15個のヘテロ原子としてのホウ素、ケイ素、窒素、リン、酸素、硫黄、塩素、臭素及び/またはヨウ素からなる化合物、部分的に及び/または完全にフッ素化された炭素原子数1〜26の炭化水素、または分子量が最大で5,000g/モルのポリシロキサンの群から選択されるものであり、特に好ましくは、R2が水素であり、そしてnが0〜6のA1)の第一モノアミンである。
【0026】
適当なA1)の第一及び第二ジアミンは、好ましくは、次の構造式(2)の化合物である。
【0027】
【化2】

式中、
R3は、分子量が最大で6,000g/モルのポリアルキレングリコール、炭素原子数1〜26の炭化水素、1〜20個の炭素原子、0〜41個の水素原子及び1〜15個のヘテロ原子としてのホウ素、ケイ素、窒素、リン、酸素、硫黄、塩素、臭素及び/またはヨウ素からなる化合物、部分的に及び/または完全にフッ素化された炭素原子数1〜26の炭化水素、または分子量が最大で5,000g/モルのポリシロキサンの群から選択され、R4及びR5は、互いに独立して、水素または炭素原子数1〜18の炭化水素であり、そして
p及びqは、互いに独立して、0〜12である。
【0028】
本発明の特に好ましい実施形態の一つでは、R3は、分子量が400〜3,000g/モルのポリアルキレングリコールの群から選択される。
【0029】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、R3は、炭素原子数4〜18の炭化水素の群から選択される。R1が脂肪族炭化水素であることが更に好ましい。
【0030】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、R3は、4〜18個の炭素原子、4〜37個の水素原子、及び1〜15個のヘテロ原子としてのホウ素、ケイ素、窒素、リン、酸素、硫黄、塩素、臭素及び/またはヨウ素からなる化合物の群から選択される。
【0031】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、R3は、部分的に及び/または完全にフッ素化された炭素原子数4〜18の炭化水素の群から選択される。
【0032】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、R3は、分子量が400〜3,000g/モルのポリシロキサンの群から選択される。
【0033】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、R4及びR5は水素を表す。
【0034】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、p及びqは、互いに独立して、1〜6の数を表す。
【0035】
A1)の第一ジアミンの中で、好ましいものは、式中、
R3が、分子量が最大で6,000g/モルのポリアルキレングリコール、炭素原子数1〜26の炭化水素、1〜20個の炭素原子、0〜41個の水素原子及び1〜15個のヘテロ原子としてのホウ素、ケイ素、窒素、リン、酸素、硫黄、塩素、臭素及び/またはヨウ素からなる化合物、部分的に及び/または完全にフッ素化された炭素原子数1〜26の炭化水素、または分子量が最大で5,000g/モルのポリシロキサンの群から選択され、R4及びR5が、水素であり、そして
p及びqが、互いに独立して、0〜6であるものである。
【0036】
A2)のヒドロキシル基を有する適当な環状カーボネートは、好ましくは次の構造式(5)に相当する。
【0037】
【化3】

式中、
R6は、水素または炭素原子数1〜18の炭化水素残基であり、
R7は、存在しないか、または炭素原子数1〜18の炭化水素残基であり、そして
rは、0〜3である。
【0038】
特に好ましいものは、式中、
R6が、水素または炭素原子数1〜12のアルキル基であり、
R7が、存在しないかまたは炭素原子数1〜12のアルカンジイル基であり、そして
rが、0または1である、
化合物である。
【0039】
非常に特に好ましくは、式(5)は、4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンを表す。
【0040】
R1及びR3についての上記の定義は、R1及びR3は、上記の種の化合物から、R1の場合には一つの水素原子を形式的に除いて、R3の場合には二つの水素原子を形式的に除いて得られるものと理解されたい。この意味でR1及びR3が、1〜20個の炭素原子、0〜41個の水素原子及び1〜15個のヘテロ原子としてのホウ素、ケイ素、窒素、リン、酸素、硫黄、塩素、臭素及び/またはヨウ素からなる化合物を表す場合には、これは、一般的に、ヘテロ原子を有する官能基を持つ炭化水素である。ヘテロ原子を有する官能基を持つこれらの炭化水素に属する好ましい化合物群は、ハロゲン化炭化水素、ヘテロ原子としてN、O、Sを有するヘテロ環式化合物、ウレタン、チオウレタン、尿素類、チオ尿素類、カルボン酸エステル及びカルボン酸アミド、炭酸エステル、ラクトン類、ラクタム類、カルボン酸無水物、カルボン酸イミド、カルボジイミド、ケトン、チオケトン、エーテル、チオエーテル、アセタール類、ケタール類、ニトリル、アミジン、アジド、ニトロ基、第三アミン、第四アンモニウム基、モノ−、ジ−もしくはトリアルコキシシラン、硫酸エステル及びそれの塩、スルホン酸エステル及びそれの塩、スルホン類、スルホン酸アミド、リン酸エステル及びそれの塩、ホスホン酸エステル及びそれの塩、ホスフィン類及びホスフィンオキシド類である。
【0041】
これらの中でも、ヘテロ原子としてN、O、Sを有するヘテロ環式化合物、ウレタン、尿素類、カルボン酸エステル及びカルボン酸アミド、炭酸エステル、ラクトン類、ラムタム類、ケトン、エーテル、アセタール類、ケタール類、第三アミン及び第四アンモニウム基、モノ−、ジ−もしくはトリアルコキシシラン、硫酸エステル及びそれの塩、スルホン酸エステル及びそれ塩が特に好ましい。
【0042】
A3)の適当な化合物は、イソシアネート反応性基が生じないように第一または第二アミンと付加反応で反応する正確に一つの官能基を持つ。更に、A3)の化合物は、イソシアネート反応性である他の基を持たない。
【0043】
イソシアネート反応性基が生じないように第一または第二アミンと付加反応で反応する官能基は、例えば、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボジイミド、ケテン、ニトリル、イソニトリル、ジカルボン酸の環状無水物またはオレフィンであることができる。好ましいA3)の化合物はモノイソシアネートである。特に好ましいA3)の化合物は、イソシアネート基が芳香族基と直接結合していないモノイソシアネートである。これは、特にアルキルモノイソシアネート、シクロアルキルモノイソシアネートまたはアリールアルキルモノイソシアネートであることができる。
【0044】
本発明の方法では、反応ステップA)において、成分A1)としてモノアミンが使用されるかまたはジアミンが使用されるかで手順が異なる。モノアミンA1)が使用される場合には、単に、成分A2)との反応が必要であり、成分A3)との反応は省略される。ジアミンA1)が使用される場合には、成分A2)及び成分A3)との反応が必要である。ジアミンA1)と成分A2)及びA3)との反応は、同時にまたは相前後して行うことができ、この際、その順番は任意である。モノアミンの場合も、ジアミンA1)の場合にも、成分A2)及び場合によりA3)との反応は、一つまたは複数のステップで行うことができる。好ましくは、A1)とA2)の反応は一つのステップで行われる。
【0045】
成分A1)及び成分A2)、場合により及びA3)の反応は、溶剤の存在下にまたは溶剤無しで塊状で、部分的にまたは完全に行うことができる。本発明の好ましい実施形態の一つでは、成分A1)と成分A2)との反応は、溶剤無しで塊状で行われる。溶剤を使用する場合には、これは、ステップB)の前に、除去できるかまたは混合物中に残したままにすることができる。溶剤を混合物中に残したままにするべき場合には、ケトン及びエステルが溶剤として好ましく、メチルエチルケトン、アセトン及び酢酸メチルが特に好ましい。
【0046】
成分A1)及び成分A2)、場合により及びA3)の反応は、好ましくは−10℃〜+100℃の温度で行われる。本発明の特に好ましい実施形態の一つでは、成分A1)と成分A2)との反応は15〜90℃の温度で、及び場合により成分A3)との反応は10〜50℃の温度で行われる。
【0047】
成分A1)及び成分A2)、場合により及びA3)の反応は、好ましくは0.8〜5barの圧力下に行われる。任意選択の溶剤の除去は、減圧下に行うこともできる。
【0048】
ジアミンA1)とA2)またはジアミンA1)とA3)との反応からの生成物は、直ぐに、A3)もしくはA2)との反応に更に使用するかまたは中間貯蔵することができる。同様に、プロセスステップA)からの生成物またはその溶液は、直ぐに反応B)に使用できるか、または中間貯蔵することができる。
【0049】
本発明の好ましい実施形態の一つでは、反応A)は、触媒を使用しないで行われる。
【0050】
プロセスステップA)での反応は、反応混合物において追跡することができる。このためには、採取した試料の分光分析的測定、例えば赤外もしくは近赤外分光分析、屈折率の測定、並びに化学的分析、例えば滴定を行うことができる。これらの測定方法は当業者には既知である。アミン基の残留含量は滴定を用いて測定できる。例えば、IR分光方を用いても、A1)とA2)との反応の時のように、カーボネートA2)のC=O二重結合の伸縮振動のバンドが消失すること、及び反応生成物のウレタンのC=O二重結合の伸縮振動のバンドが大きくなることを追跡することができる。A3)との反応の時は、例えば成分A3)の多重結合のバンドの消失を観察でき、これは特にイソシアネートA3)の時に首尾良く行われる。
【0051】
B1)の適当なポリイソシアネートは、式X(NCO)を有し、ここでpは、1超〜4、好ましくは2〜3、特に好ましくは2の数であり、そしてXは、脂肪族、環状脂肪族、芳香族または芳香脂肪族炭化水素残基である。好ましくは、Xは、炭素原子数3〜20の脂肪族炭化水素残基、炭素原子数5〜15の環状脂肪族炭化水素残基、炭素原子数6〜15の芳香族炭化水素残基、または炭素原子数7〜15の芳香脂肪族炭化水素残基を表す。特に好ましいものは、イソシアネート基が芳香族基に直接結合していないジイソシアネートである。異なる数のイソシアネート基を有する複数種の化合物の混合物である式X(NCO)のポリイソシアネートを使用する時は、pは、存在するイソシアネート基の平均数である。
【0052】
このようなジイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,2−ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−プロパン、トリメチルヘキサンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、p−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンの異性体、例えばトランス/トランス−、シス/シス−及びシス/トランス−異性体、並びにこれらの化合物からなる混合物である。
【0053】
B2)のポリマー性ポリオールまたはポリアミンは、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry 2005,DOI:10.1002/14356007.a21_665.pub2 “Polyurethane”,チャプター3,W.Friederichs(非特許文献5)から知られているように、典型的には、ヒドロキシル−またはアミノ基含有ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリオレフィン及びポリシロキサンの群に由来する。
【0054】
適当なポリカーボネートポリオールは、例えばホスゲンと過剰の多価アルコールとの反応によって得ることができるようなものである。二価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブテン−1,4−ジオール、ブチン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン類、例えば1,4−ビス(ヒドロキシ−メチル)シクロヘキサン、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ペチルペンタンジオール類、更にジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール及びポリブチレングリコール類など考慮される。
【0055】
好ましいものは、一般式HO−(CH−OHのアルコールであり、式中、xは1〜20の数、好ましくは2〜20の数である。xは、好ましくは偶数である。これの例は、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール及びドデカン−1,12−ジオールである。更に別の好ましいものは、ネオペンチルグリコール及び2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール及びメチルペンタンジオール類である。その一部として(Anteilig)、より価数の高いアルコール類、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリトリトール、キニトール、マンニトール及びソルビトールも使用することができる。
【0056】
更に、多価アルコール類と多価カルボン酸類との反応によって得られるポリエステルポリオールも挙げられる。遊離のポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物、または低級アルコールの対応するポリカルボン酸エステル、またはそれらの混合物も、ポリエステルポリオールの製造に使用することができる。ポリカルボン酸類は、脂肪族、環状脂肪族、芳香脂肪族、芳香族またはヘテロ環式であることができ、そして場合により、(例えばハロゲン原子で)置換されているか及び/または不飽和であることができる。これの例としては、スベリン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、ダイマー脂肪酸などが挙げられる。好ましいものは、一般式HOOC−(CH−COOH(式中、yは1〜20の数、好ましくは2〜20の偶数である)のジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びドデカンジカルボン酸である。多価アルコール、好ましくはジオールとしては、ポリカーボネートポリオールの構成成分として記載した低分子量アルコールが挙げられる。
【0057】
ラクトンベースのポリエステルジオールも好適であり、この際、これは、ラクトン類のホモ−もしくはコポリマー、好ましくは適当な多官能性スターター分子上へのラクトン類の末端ヒドロキシル基含有付加生成物である。ラクトン類としては、好ましくは、一般式HO−(CH−COOH(式中、zは1〜20の数であり、メチレン単位のH原子は、C〜Cアルキル基によって置換されていてもよい)の化合物から誘導されるものが好ましい。例は、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン及び/またはメチル−ε−カプロラクトン、並びにこれらの混合物である。適当なスターター成分は、例えばポリカーボネートポリオールのための構成成分として上述した低分子量多価アルコールである。ε−カプロラクトンの対応するポリマーが特に好ましい。低級ポリエステルジオールまたはポリエーテルジオールも、ラクトンポリマーを製造するためのスターターとして使用し得る。ラクトン類のポリマーの代わりに、ラクトン類に相当するヒドロキシカルボン酸の対応する化学的に等価な重縮合物も使用し得る。
【0058】
その他、ポリオールとしてはポリエーテルジオールも考慮される。これらは、特に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、エピクロロヒドリンまたは部分フッ素化または完全フッ素化されたこれら化合物の誘導体を、例えばBFの存在下に、それまたはそれら自体と重合させることによって、あるいはこれらの化合物を場合により混合物としてまたは順次に、アルコールもしくはアミンなどの反応性水素原子を有するスターター成分、例えば水、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、1,2−ビス(4−ヒドロキシジフェニル)プロパンまたはアニリンに付加することによって得ることができる。
【0059】
同様に、ポリヒドロキシオレフィン、好ましくは2つの末端ヒドロキシル基を有するポリヒドロキシオレフィン、例えばα−,ω−ジヒドロキシポリブタジエン、α−,ω−ジヒドロキシポリメタクリルエステル、またはα−,ω−ジヒドロキシポリアクリルエステルもモノマーとして適している。このような化合物は、例えばEP0622378A1(特許文献4)から知られている。更に別の好適なポリオール類は、ポリアセタール類、ポリシロキサン類及びアルキド樹脂である。
【0060】
B3)の適当な低分子量化合物は、ポリカーボネートポリオールの構成成分として上述した低分子量多価アルコール、好ましくはジオール及びトリオールである。
【0061】
その他、モノアルコール、好ましくは第一もしくは第二アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール及び1−エイコサノールも考慮される。
【0062】
同様に、アミン類またはアミノアルコール類、例えば先の二つの段落に挙げたアルコールのアルコール基をアミン基またはモノアルキルアミン基で交換することによって得られるアミン類またはアミノアルコール類も好適である。
【0063】
B4)のイオン性または潜在的にイオン性の親水性化化合物としては、イソシアネートに対して反応性の少なくとも一つの基、好ましくはヒドロキシル基またはアミノ基、並びにイオン性または潜在的にイオン性の少なくとも一つの官能基を有する全ての化合物と理解される。イオン性及び潜在的にイオン性の基の例は、−COOY、−SOY、−PO(OY)(Yは例えばH、NH、金属カチオンである)、−NR、−NR(R=H、アルキル、アリール)である。適当なイオン性または潜在的にイオン性の親水性化化合物は当業者には既知であり、例えばDE102004002526A1(特許文献5)の段落[0032]に記載、説明されている。
【0064】
B4)のイソシアネート反応性の非イオン性親水性化化合物とはポリオキシアルキレンエーテルと理解され、これは少なくとも一つのヒドロキシ基またはアミノ基を含む。適当な非イオン性親水性化化合物は当業者には既知であり、DE102004002526A1(特許文献6)の段落[0035]〜[0039]にまたはDE102006036220A1(特許文献7)に記載、説明されている。
【0065】
B5)の化合物が、B4)で記載のようにイオン性、潜在的にイオン性または非イオン性の親水性化基を含む場合には、B5)の化合物は、B4)の化合物の代わりとなることができ、そしてプレポリマーの分散性のためのそれの親水性化作用を担う。
【0066】
プレポリマーを分散させるためには、プレポリマー中に化学的に結合されない乳化剤及び界面活性剤も使用することができる。しかし、このやり方は好ましくはない。
【0067】
本発明の方法では、NCO−基含有ポリウレタンプレポリマーの製造のために、好ましくは10〜45重量%の成分B1)、30〜80重量%の成分B2)、0〜10重量%、特に0.1〜9重量%の成分B3)、0〜20重量%、特に0.1〜19重量%の成分B4)、及び0.1〜40重量%の成分B5)を反応させ、この際、成分全ての合計は加算して100重量%である。
【0068】
本発明の方法は、一般的に、構成分B1)を構成分B2)〜B5)、場合により及び溶剤と反応温度未満の温度で混合するステップを含む。成分B1)、成分B2)〜B5)、場合により及び溶剤の添加の順序は任意である。構成分B1)と構成分B2)〜B5)の反応は、好ましくは、温度の上昇によって開始される。好ましい溶剤は、ケトン類またはエステル類、特に好ましくはアセトンまたは酢酸メチルである。好ましくは、反応は50〜120℃の範囲の温度下に行われる。
【0069】
構成分B1)及び構成分B2)〜B5)の反応は、溶剤の存在下にまたは塊状で行うことができる。本発明の好ましい実施形態の一つでは、構成分B1)と構成分B2)〜B5)からのイソシアネート基含有プレポリマーを塊状でまたは溶液で製造し、そして場合により反応の実行の後に溶剤中に溶解する。次いで、プレポリマーまたはプレポリマー溶液を水中に分散させる。この際、好ましくは、プレポリマーまたはプレポリマー溶液を、予め仕込んだ水中に加えるか、または水を、予め仕込んだプレポリマー溶液に加え、そしてステップB)の鎖延長反応をポリアミンを用いて行う。延長反応は、分散の前に部分的にまたは完全にも行ってよい。最後に、場合により溶剤を留去する。
【0070】
水性PUR分散液を製造するための本発明の方法は、一つまたは複数の段階で、均一相中でまたは(多段階反応の場合には)部分的に分散相中で行うことができる。完全にまたは部分的に行われたB1)〜B5)の重付加の後に、分散、乳化または溶解ステップを行う。その後、場合により、更なる重付加または変性を分散相で行う。
【0071】
本発明の方法では、イソシアネート付加反応を促進するために既知の触媒、例えばトリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]−オクタン、ジブチルスズオキシド、スズジオクトエートまたはジブチルスズジラウレート、スズ−ビス−(2−エチルヘキサノエート)または他の有機金属化合物を、予め一緒に仕込むかまたは後で計量添加することができる。
【0072】
次いで、場合により反応の開始時にはまだ添加されていなかった構成分B1)〜B5)を計量添加する。
【0073】
ステップB)におけるポリウレタンプレポリマーの製造においては、B2)〜B5)からのイソシアネート反応性基の総量に対するB1)からのイソシアネート基の総量のモル物質量比は、1.0〜3.5、好ましくは1.2〜2.7である。
【0074】
プレポリマーを生成する成分B1)〜B5)の反応は、部分的にもしくは完全に、好ましくは完全に行われる。転化率は、通常は、反応混合物のNCO含有量を追跡することによって監視される。このためには、採取した試料の分光分析測定、例えば赤外線または近赤外線分光分析、屈折率の測定、並びに化学分析、例えば滴定を行うことができる。NCO基含量のこれらの測定方法は当業者には既知である。そうして、遊離のイソシアネート基を含むポリウレタンプレポリマーが塊状でまたは溶液で得られる。
【0075】
B1)〜B5)からのポリウレタンプレポリマーの製造の後にまたはその最中に、原料分子中でなおも行われていない場合には、アニオン及び/またはカチオン分散作用性基の部分的なまたは完全な塩の形成が行われる。このためには、アニオン基の場合には、塩基、例えばアンモニア、炭酸アンモニウムもしくは炭酸水素アンモニウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウム、好ましくはトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンまたはジイソプロピルエチルアミンが使用される。塩基のモル物質量は、アニオン性基の物質量の50〜150%、好ましくは85〜120%である。カチオン基の場合には、例えば硫酸ジメチルエステル、コハク酸またはギ酸が使用される。エーテル基を有する非イオン性に親水性化された化合物B4)のみが使用される場合には、この中和ステップは省略される。中和は、分散水が既に中和剤を含むことによって、分散と同時に行うこともできる。
【0076】
次のプロセスステップでは、D)からの化合物を、なおも残るイソシアネート基と反応させる。この際、この鎖延長/停止は、分散の前に溶剤中で、分散の間に、または好ましくは分散の後に水中でのいずれかで行うことができる。
【0077】
ステップD)でのなおも遊離のNCO基の反応のためには、アミノアルコール類、モノ−、ジ−もしくはポリアミン類、並びにヒドラジンまたはヒドラジド類が使用される。延長反応のための単官能性化合物は、B3)で記載のようなアミノアルコール類及びモノアミン類であることができ、好ましくはアミノアルコール類または長鎖モノアミン類、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、1−ヘキシルアミン、1−オクチルアミン、1−デシルアミン、1−ドデシルアミン、1−テトラデシルアミン、1−ヘキサデシルアミン、1−オクタデシルアミン、1−エイコシルアミンである。二官能性もしくは多官能性化合物としては、例えばエチレンジアミン、1,2−及び1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチル−ペンタメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、ナトリウム−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホネート、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,3−及び1,4−キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,3−及び1,4−キシリレンジアミン及び4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルエチレンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド、またはシュウ酸ジヒドラジドが使用できる。
【0078】
ステップD)においてなおも遊離のNCO基を反応させるためには、水を使用することもでき、これは、未反応イソシアネート基を、二酸化炭素を放出しながらアミンに転化し、これは、鎖延長の下に、更なるイソシアネート基と反応することができる。
【0079】
鎖延長度、すなわちプレポリマーの遊離のNCO基に対する、鎖延長のためにD)で使用される化合物の新たに加えられた反応性NH基の当量比は、好ましくは0〜1.2、特に好ましくは0.7〜1.2である。
【0080】
化合物D)は、場合によっては水及び/または溶剤で希釈して、本発明の方法に単独でまたは混合物として使用でき、この際、原則的に、任意の添加順序が可能である。
【0081】
好ましくは、本発明のポリウレタン−ポリ尿素分散液の製造は、溶剤不含のまたは溶解したプレポリマーまたは鎖延長したポリウレタンポリマーを、場合により強い剪断作用下に、例えば強い攪拌下に、分散水中に入れるか、または逆に、プレポリマーまたはポリマーまたはそれらの溶液に分散水を混ぜ入れることによって、行われる。
【0082】
こうして得られた分散液は、10〜70重量%、好ましくは15〜65重量%、特に好ましくは20〜60重量%の固形物含有率を有する。
【0083】
中和度及びイオン性基の含有量に依存して、該分散液は非常に微細に調製することができ、そうして実質的に溶液の外観を有するが、非常に粗粒での調製も可能であり、これも同様に十分に安定している。
【0084】
好ましくは成分B2)からB4)及びD)は、モル物質量の合計が、70%超が、イソシアネートに対し反応性の基を二つ有する化合物からなり、95%超が、イソシアネートに対し反応性の基を一つまたは二つ有する化合物からなるように選択され、この際、カルボン酸基は、イソシアネート基に対して非反応性と見なされる。
【0085】
本発明の更なる対象の一つは、コーティング組成物の調製に使用される、本発明のポリウレタン−ポリ尿素分散液と他の水性バインダー及び架橋剤との混合物である。この際、塗装技術からそれ自体既知の助剤及び添加剤、例えば増粘剤、フィラー、顔料、ワックス、触感向上剤(Griffmittel)、染料、溶剤、流展助剤(Verlaufshilfsmittel)並びに架橋剤を使用することもできる。特に好ましい助剤及び添加剤は、ナノ粒子、部分または完全フッ素化ポリマー及びシリコーンである。就中好ましい助剤及び添加剤は、DE4328917(特許文献7)、DE102004040266(特許文献8)、DE19649953(特許文献9)、WO2005/078182(特許文献10)、US6171515(特許文献11)、US4599438(特許文献12)、US5385999(特許文献13)、DE4240274(特許文献14)に記載されるような助剤及び添加剤である。
【0086】
本発明の更なる対象の一つは、任意の基材、例えば金属、木材、ガラス、ガラス繊維、炭素繊維、石、セラミック鉱物、コンクリート、様々な種類の硬質またはフレキシブルなプラスチック、織物及び不織布、皮革、床革、合成皮革、紙、硬繊維、藁及びビチューメン上での本発明のポリウレタン−ポリ尿素分散液及び/またはそれの上記混合物のコーティングであり、前記基材には、コーティングの前に場合により慣用の下塗りをまたはコーティングの後に場合により更に別のコーティングを供してもよい。
【0087】
好ましい基材は、皮革及び合成皮革である。特に好ましい基材は、フルグルレイン皮革及びバフ皮革、並びに床革である。
本発明の特徴は次のとおりである。
1. 組み込まれた側鎖を有する主として線状のポリウレタン−ポリ尿素を含む水性ポリウレタン−ポリ尿素分散液を製造する方法であって、
A)先ず、次の反応ステップ、すなわち、
成分A1)第一及び/または第二モノアミンまたはジアミンを、
成分A2)一つのヒドロキシル基を含む環状カーボネートと反応させるステップであって、
この際、成分A1)と成分A2)とのモル比は、成分A1)がモノアミンの場合には、環状カーボネート基に対する第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として0.8〜1.2が達成されるように、そして成分A1)がジアミンの場合には、環状カーボネート基に対する第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として1.8〜2.2が達成されるように算定され、そして
その際、成分A1)がジアミンの場合には、残った第一及び第二アミン基を、イソシアネート反応性基が生じないように、第一または第二アミンと付加反応で反応する一つの官能基を有する化合物の成分A3)と反応させ、
この際、成分A3)の物質量は、該成分A3)中のアミン反応性基に対する、成分A1)と成分A2)との反応の後に計算上残る第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として0.8〜1.2が達成されるように、算定され、
この際、成分A3)との反応は、成分A2)との反応の後に、またはそれと同時に、またはその前に行うことができ、及び成分A1)と成分A2)との反応は溶剤無しで行なわれる、上記の反応ステップ、

B)次いで、以下の反応によりNCO基含有ポリウレタンプレポリマーを生成するステップであって、
成分B1)ポリイソシアネートと、
成分B2)数平均分子量が400超〜8,000g/モルのポリマー性ポリオール及び/またはポリアミンを、ステップB)の反応成分の全重量に基づいて30〜80重量%の量で、
及び
成分B5) ステップA)からの反応生成物、
を反応させてNCO基含有ポリウレタンプレポリマーを生成するステップ、そして、

C)ステップB)からのプレポリマーを水中に分散させるステップ

を含み、
その際、成分A1)が、次の構造式(1)のモノアミン、
【化4】
式中、
R1は、部分的に及び/または完全にフッ素化された炭素原子数4〜18の炭化水素及び/又は分子量が400〜5,000g/モルのポリシロキサンから選択され、
R2は、水素または炭素原子数1〜18の炭化水素であり、そして、
nは、0〜12である、及び/又は、次の構造式(4)のジアミンである、
【化5】
式中、
R3は、部分的に及び/または完全にフッ素化された炭素原子数4〜18の炭化水素及び/又は分子量が400〜5,000g/モルのポリシロキサンから選択され、そして、
p及びqは、互いに独立して0〜6である、上記の方法。
2. D)プレポリマーの未だ遊離のNCO基を、イソシアネート反応性のモノアミン、ポリアミン、ヒドラジン及び/またはヒドラジド類の成分D1)と反応させるステップであって、
この際、該プレポリマー、及び該イソシアネート反応性のモノアミン、ポリアミン、ヒドラジン及び/またはヒドラジド類の量は、NCO基に対するイソシアネート反応性NH基の計算上の比率として0〜1.2が達成されるように算定され、ここで、ステップD)における反応は、分散ステップC)の前にまたはその最中に、部分的にまたは完全に行うことができる、該ステップ、をさらに含む、上記の特徴1に記載の方法。
3. 前記ステップB)において、さらに成分B3)モノ−及びポリアルコール、モノ−及びポリアミン、並びにアミノアルコールからなる群から選択される、数平均分子量が17〜400g/モルの低分子量化合物と反応させる、上記の特徴1又は2に記載の方法。
4. 前記ステップB)において、さらに成分B4)イソシアネート反応性でイオン性または潜在的にイオン性の親水性化化合物、及び/またはイソシアネート反応性で非イオン性の親水性化化合物と反応させる、上記の特徴1〜3のいずれか一つに記載の方法。
5. 前記成分A3)との反応が、成分A2)との反応の前または後に行われ、そして、成分A3)との反応が、脂肪族ケトンまたはエステル中で行われ、及び/または、
ステップB)において前記プレポリマーが、脂肪族ケトンまたはエステル中のいずれかで製造され、及び/または
ステップB)における反応の後に、ステップB)から得られたプレポリマーが脂肪族ケトンまたはエステル中に溶解もしくは希釈される、上記の特徴1〜4のいずれか一つに記載の方法。
6. ステップA)〜D)の後で最後に、溶剤を留去するステップをさらに含む、上記の特徴2〜5のいずれか一つに記載の方法。
7. 成分A2)が構造式(5)の環状カーボネートである、上記の特徴1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【化6】
式中、
R6は、水素または炭素原子数1〜18の炭化水素残基であり、
R7は、存在していないか、または炭素原子数1〜18の炭化水素残基であり、そして
rは、0〜3である。
8. 成分A2)が4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンである、上記の特徴1〜7のいずれか一つに記載の方法。
9. 成分A3)がモノイソシアネートである、上記の特徴1〜8のいずれか一つに記載の方法。
10. 成分A3)は、それのイソシアネート基が芳香族基と直接結合していないモノイソシアネートである、上記の特徴1〜9のいずれか一つに記載の方法。
11. 成分B1)がジイソシアネートである、上記の特徴1〜10のいずれか一つに記載の方法。
12. 成分B1)がジイソシアネートであり、そのイソシアネート基は、芳香族基に直接結合していない、上記の特徴1〜11のいずれか一つに記載の方法。
13. 成分B2)及び成分D1)、又は成分B2)及び成分B3)及び成分D1)、又は成分B2)及び成分B3)及び成分B4)及び成分D1)の合計が、モルで表して、70%超がイソシアネートに対して反応性の基を二つ有する化合物からなり、95%超がイソシアネート基に対して反応性の基を一つまたは二つ有する化合物からなり、この際、カルボン酸基は、イソシアネートに対して非反応性と見なす、上記の特徴2〜12のいずれか一つに記載の方法。
14. プロセスステップD)において、NCO基に対するイソシアネート反応性NH基の計算上の比率として0.7〜1.2が達成される、上記の特徴2〜13のいずれか一つに記載の方法。
15. NCO基含有ポリウレタン−プレポリマーが、10〜45重量%の成分B1)、30〜80重量%の成分B2)、0〜10重量%の成分B3)、0〜20重量%の成分B4)及び0.1〜40重量%の成分B5)の反応によって得られ、この際、上記の全ての成分の合計は加算して100重量%となる、上記の特徴1〜14のいずれか一つに記載の方法。
16. 組み込まれた側鎖を有する主として線状のポリウレタン−ポリ尿素鎖を含む水性ポリウレタン−ポリ尿素分散液を製造する方法であって、
A)先ず、次の反応ステップ、すなわち、
成分A1)第一及び/または第二モノアミンまたはジアミンを、
成分A2)一つのヒドロキシル基を含む環状カーボネートと反応させるステップであって、
この際、成分A1)と成分A2)とのモル比は、成分A1)がモノアミンの場合には、環状カーボネート基に対する第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として0.8〜1.2が達成されるように、そして成分A1)がジアミンの場合には、環状カーボネート基に対する第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として1.8〜2.2が達成されるように算定され、
その際、成分A1)がジアミンの場合には、残った第一及び第二アミン基を、イソシアネート反応性基が生じないように、第一または第二アミンと付加反応で反応する一つの官能基を有する化合物の成分A3)と反応させ、
この際、成分A3)の物質量は、該成分A3)中のアミン反応性基に対する、成分A1)と成分A2)との反応の後に計算上残る第一及び第二アミン基の合計の計算上の比率として0.8〜1.2が達成されるように、算定され、
この際、成分A3)との反応は、成分A2)との反応の後に、またはそれと同時に、またはその前に行うことができ、及びA1)とA2)との反応は溶剤無しで行なわれる、上記の反応ステップ、

B)次いで、以下の反応によりNCO基含有ポリウレタンプレポリマーを生成するステップであって、
成分B1)ポリイソシアネートと、
成分B2)数平均分子量が400超〜8,000g/モルのポリマー性ポリオール及び/またはポリアミンを、ステップB)の反応成分の全重量に基づいて30〜80重量%の量で、
及び
成分B5) ステップA)からの反応生成物、
を反応させてNCO基含有ポリウレタンプレポリマーを生成するステップ、そして、

C)ステップB)からのプレポリマーを水中に分散させるステップ

を含み、
その際、成分A1)が、次の構造式(2)のジアミン、
【化7】
式中、
R3は、部分的に及び/または完全にフッ素化された炭素原子数4〜18の炭化水素及び/又は分子量が400〜3,000g/モルのポリシロキサンから選択され、
R4及びR5は、互いに独立して、水素又は炭素原子数1〜18の炭化水素であり、そして、
p及びqは、互いに独立して0〜12である、上記の方法。
17. D)プレポリマーの未だ遊離のNCO基を、イソシアネート反応性のモノアミン、ポリアミン、ヒドラジン及び/またはヒドラジド類の成分D1)と反応させるステップであって、
この際、該プレポリマー、及び該イソシアネート反応性のモノアミン、ポリアミン、ヒドラジン及び/またはヒドラジド類の量は、NCO基に対するイソシアネート反応性NH基の計算上の比率として0〜1.2が達成されるように算定され、ここで、ステップD)は、分散ステップC)の前にまたはその最中に、部分的にまたは完全にも行うことができる、該ステップ、をさらに含む、上記の特徴16記載の方法。
18. 前記成分A2)が、構造式(5)の環状カーボネートである、上記の特徴16又は17に記載の方法。
【化8】
式中、
R6は、水素または炭素原子数1〜18の炭化水素残基であり、
R7は、存在しないか、または炭素原子数1〜18の炭化水素残基であり、そして
rは、0〜3である。
19. 成分A2)が4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンである、上記の特徴16〜18のいずれか一つに記載の方法。
20. 成分A3)がモノイソシアネートである、上記の特徴16〜19のいずれか一つに記載の方法。
21. 成分A3)は、それのイソシアネート基が芳香族基と直接結合していない、上記の特徴16〜20のいずれか一つに記載の方法。
22. 成分B1)がジイソシアネートである、上記の特徴16〜21のいずれか一つに記載の方法。
23. 成分B1)がジイソシアネートであり、そのイソシアネート基は、芳香族基に直接結合していない、上記の特徴16〜22のいずれか一つに記載の方法。
24. 成分B2)及び成分D1)、又は成分B2)及び成分B3)及び成分D1)、又は成分B2)及び成分B3)及び成分B4)及び成分D1)の合計が、モルで表して、70%超がイソシアネートに対して反応性の基を二つ有する化合物からなり、95%超がイソシアネート基に対して反応性の基を一つまたは二つ有する化合物からなり、この際、カルボン酸基は、イソシアネートに対して非反応性と見なす、上記の特徴17〜23のいずれか一つに記載の方法。
25. プロセスステップD)において、NCO基に対するイソシアネート反応性NH基の計算上の比率として0.7〜1.2が達成される、上記の特徴17〜24のいずれか一つに記載の方法。
26. NCO基含有ポリウレタン−プレポリマーが、10〜45重量%の成分B1)、30〜80重量%の成分B2)、0〜10重量%の成分B3)、0〜20重量%の成分B4)及び0.1〜40重量%の成分B5)の反応によって得られ、この際、上記の全ての成分の合計は加算して100重量%となる、上記の特徴16〜25のいずれか一つに記載の方法。
【実施例】
【0088】
ATR−FTIR測定は、ダイアマントATRユニットを備えたパーキンエルマーパラゴン1000を用いて行った。NCO値は、採取した試料を過剰のブチルアミンと反応させ、そして塩酸で逆滴定して求めた。NCO値は重量%で示す。
【0089】
例1
10g(77.4mmol)の1−オクチルアミンを25℃で仕込み、そして攪拌しながら9g(76.2mmol/98.4%)の4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンを添加する。この際、混合物は73℃まで昇温する。更に2時間75℃で攪拌する。IRスペクトルは完全な転化を示す(1792cm−1にもはやピーク無し、1691cm−1及び1540cm−1に新しいピーク)。こうして製造された生成物10gを、平均モル質量が2022g/モルのポリプロピレングリコール147.2g(72.8mmol)、平均モル質量が1020g/モルのポリプロピレングリコール41g(40.2mmol)及びジメチロールプロピオン酸12.1g(90mmol)と一緒に仕込み、そして十分に混合する。104.3g(470mmol)のイソホロンジイソシアネート及び7.1g(27mmol)のビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタンを添加し、そしてこの混合物を二時間90℃に加熱する。残留NCO値はこの時点で6.34%である。この混合物を60℃に冷却し、9.1gのトリエチルアミンを混ぜ入れ、そして全部を強く攪拌しながら835gの水(5℃)中に移し入れる。この分散液に、75gの水中の11.3g(226mmol)のヒドラジン一水和物の10℃の冷たい溶液をゆっくりと滴下する。乾燥物質含有率が25%の貯蔵安定性のポリウレタン分散液が得られる。
【0090】
例2:
10g(76.8mmol)のN−(2−アミノエチル)モルホリンを25℃で仕込み、そして攪拌しながら8.84g(74.9mmol/97.5%)の4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンを添加する。この際、混合物は68℃に昇温する。これを更に2時間70℃で攪拌する。IRスペクトルは完全な転化を示す(1793cm−1にもはやピーク無し;1693cm−1及び1534cm−1に新しいピーク)。このように製造された生成物18.84gを、平均モル質量が2011g/モルのポリテトラメチレングリコール402.2g(200mmol)及びジメチロールプロピオン酸26.8g(200mmol)と一緒に仕込み、そして十分に混合する。124.3g(560mmol)のイソホロンジイソシアネートと、2,2,4−及び2,4,4−トリメチルヘキサンメチレン−1,6−ジイソシアネート(40:60)からなる異性体混合物42g(200mmol)を加え、そしてこの混合物を三時間85℃に加熱する。残留NCO値はこの時点で3.62%である。この混合物を60℃に冷却し、21.2gのトリエチルアミンを混ぜ入れ、そしてその全部を強く攪拌しながら975gの水(5℃)に移し入れる。この分散液に、150gの水中の41.8g(246mmol)のイソホロンジアミンの10℃の冷たい溶液をゆっくりと滴下する。乾燥物質含有率が35%の貯蔵安定性のポリウレタン分散液が得られる。
【0091】
例3:
10g(70.3mmol)のN−(3−アミノプロピル)−2−ピロリジノンを25℃で仕込み、そして攪拌しながら8g(67.7mmol/96.3%)の4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンを添加する。この際、混合物は75℃に昇温する。これを更に5時間75℃で攪拌する。IRスペクトルは完全な転化を示す(1793cm−1でもはやピーク無し、1534cm−1で新しいピーク、及び1654cm−1でピークに新しいショルダー)。こうして製造された生成物18gを、平均モル質量が971.4g/モルのポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールをベースとする)194.3g(200mmol)、1,4−ブタンジオール1.8g(20mmol)及びジメチロールプロピオン酸26.8g(200mmol)と一緒に仕込み、そして十分に混合する。142.8g(850mmol)のヘキサメチレンジイソシアネートを添加し、そしてこの混合物を2.5時間85℃に加熱する。残留NCO値は、この時点で7.69%である。この混合物を200gの酢酸メチル中に溶解し、そして35℃に冷却する。20.2gのトリエチルアミンを混ぜ入れ、その後強く攪拌しながら795gの水(10℃)を添加する。この分散液に、75gの水中の16.7g(334mmol)のヒドラジン一水和物の10℃の冷たい溶液をゆっくりと滴下する。酢酸メチルを約200mbarで減圧蒸留して除去する。貯蔵安定性のポリウレタン分散液が得られ、これを水で乾燥物質含有率が30%となるように調節する。
【0092】
例4:
25g(38.2mmol)のメチルポリアルキレングリコールアミン(アルキレン比率 エチレン:プロピレン 3:1、平均モル質量 655g/モル)を25℃で仕込み、そして攪拌しながら4.1g(34.7mmol/90.8%)の4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンを添加する。この際、混合物は28℃に昇温する。これを三日間60℃で攪拌する。IRスペクトルは完全な転化を示す(1796cm−1にもはやピーク無し、1717cm−1及び1529cm−1に新しいピーク)。こうして製造された生成物29.1gを、平均モル質量が1975g/モルのポリカプロラクトンジオール(ネオペンチルグリコールで開始したもの)493.8g(250mmol)、ネオペンチルグリコール5.2g(50mmol)及びジメチロールプロピオン酸26.8g(200mmol)と一緒に仕込み、そして206gのアセトン中に溶解する。199.8g(900mmol)のイソホロンジイソシアネート及び2gのトリエチルアミンを添加し、そしてこの混合物を4時間還流下に加熱する。残留NCO値はこの時点で2.85%である。この混合物を30℃に冷却し、18.2gのトリエチルアミンを混ぜ入れ、そして強く攪拌しながら1500gの水(10℃)を添加する。この分散液に、100gの水中の17g(283mmol)のエチレンジアミンの10℃の冷たい溶液をゆっくりと滴下する。アセトンを約200mbarで減圧蒸留して除去する。貯蔵安定性のポリウレタン分散液が得られ、これを水で乾燥物質含有率が32%となるように調節する。
【0093】
例5:
50g(77.3mmol)のポリオキシアルキレンジアミン(アルキレン比率 エチレン:プロピレン 2:3、平均モル質量647g/モル)を25℃で仕込み、そして攪拌しながら9.2g(77.9mmol/100.8%)の4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンを添加する。この際、混合物は30℃に昇温する。これを三日間60℃で攪拌する。IRスペクトルは完全な転化を示す(1796cm−1でもはやピーク無し、1716cm−1及び1528cm−1で新しいピーク)。生成物を25℃に冷却した後、攪拌しながら7.3g(73.7mmol/96.3%)のn−ブチルイソシアネートを添加する。この際、温度が67℃に上昇する。25℃にゆっくりと冷却しながら1時間後に、IRスペクトルは完全な転化を示す(約2260cm−1でピーク無し、1639cm−1で新しいピーク、1528cm−1から1554cm−1にピーク拡大及びシフト)。こうして製造された生成物66.5gを、平均モル質量が1020g/モルのポリプロピレングリコール153g(150mmol)と一緒に仕込みそして十分に混合する。77.7(350mmol)のイソホロンジイソシアネート及び0.1gのジブチルスズジラウレートを添加し、そしてこの混合物を2.5時間75℃に加熱する。残留NCO値はこの時点で3.08%である。この混合物を100gのアセトン中に溶解し、そして30℃に冷却する。強く攪拌しながら615gの水(10℃)の水を添加する。この分散液に、75gの水中の7.7g(103.5mmol)のプロピレンジアミンの10℃の冷たい溶液をゆっくりと滴下する。アセトンを約200mbarで減圧蒸留して除去する。貯蔵安定性のポリウレタン分散液が得られ、これを水で乾燥物質含有率が30%となるように調節する。
【0094】
例6:
37.2gのα,ω−ジ(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(40mmol、平均モル質量931g/mol)を25℃で仕込み、そして攪拌しながら4.7g(40mmol/100%)の4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンを添加する。この際、混合物は40℃に昇温する。これを60℃で1時間攪拌する。IRスペクトルは完全な転化を示す(1796cm−1でもはやピーク無し、1702cm−1及び1541cm−1で新しいピーク)。この生成物を500gの酢酸メチル中に溶解し、そして25℃で4.1g(41mmol/102.5%)のn−ブチルイソシアネートを添加する。この際、温度は約3℃上昇する。10分後、IRスペクトルは完全な転化を示す(約2260cm−1でピーク無し、1632cm−1で新しいピーク、1541cm−1から1570cm−1にピーク拡大及びシフト)。500gの酢酸メチル中の46gの生成物のこうして製造された溶液を、平均モル質量が985.5g/モルのポリ(ヘキサンジオールアジペート)ジオール394.2g(400mmol)及びジメチロールプロピオン酸53.6g(400mmol)と一緒に仕込み、そして十分に混合する。360.8g(1625mmol)のイソホロンジイソシアネート及び3.04gのトリエチルアミンを添加し、そしてこの混合物を4時間還流下に加熱する。残留NCO値はこの時点で4.70%である。この混合物を40℃に冷却し、40.4gのトリエチルアミンを混ぜ入れ、そしてその後、強く攪拌しながら1760gの水(10℃)を添加する。この分散液に、175gの水中の36.1g(721mmol)のヒドラジン一水和物の10℃の冷たい溶液をゆっくりと滴下する。酢酸メチルを約200mbarで減圧蒸留して除去する。貯蔵安定性のポリウレタン分散液が得られ、これを水で乾燥物質含有率が30%となるように調節する。